説明

基板搬送装置

【課題】停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合でも、ハンド位置を検出することができる基板搬送装置を提供する。
【解決手段】ベルト駆動で伸縮する多関節アームを備えた基板搬送装置であって、ハンド62の位置を検出する検出手段(ハンド位置検出装置)120を備え、当該検出手段は、基台63に対して相対移動可能なロッド部材121と、ベルト部材の移動をロッド部材のその軸方向への移動に変換する変換機構122と、ロッド部材に装着された磁性ブロック123と、磁性ブロックの位置を検出する検出ユニット124を有する。本発明によれば、検出ユニットを用いた磁性ブロックの位置検出によってハンドの位置を検出することが可能となる。また、真空中におけるハンドの原点位置への復帰作業も容易となり、装置稼働時間の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板やガラス基板等の被処理基板を搬送するための基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板等の被処理基板を真空処理する基板処理装置として、搬送室の周囲にゲートバルブを介して複数の処理室を連結することで、種々の基板処理を真空中で一貫して行うようにしたマルチチャンバ装置が知られている。この種のマルチチャンバ型の真空処理装置は、搬送室から各々の処理室へ基板を自動的に搬入または搬出するための基板搬送装置が備えられている。
【0003】
基板搬送装置には、例えば図20に示すような平行リンク型のものが知られている(下記特許文献1参照)。図示する平行リンク型の基板搬送装置5は、少なくとも一方に駆動源が接続された一対の回動軸1,2と、回動軸1,2が一端に接続された第1アーム11,12と、これら第1アーム11,12の各々の他端に一端が回転可能に結合された一対の第2アーム21,22と、これら第2アーム21,22の各々の他端に回転可能に結合されたハンド4とを備えている。
【0004】
第1アーム11,12、第2アーム21,22は、それぞれ同一のアーム長を有しており、これらにより平行リンク機構が構成されている。したがって、回動軸1,2を互いに逆方向に回転させることで、第1アーム11,12と第2アーム21,22とのなす角θが変化し、ハンド4は図中上下方向に移動される。これにより、ハンド4上の基板Wを任意の位置へ搬送することが可能となる。
【0005】
図20に示した従来の平行リンク型の基板搬送装置5においては、基板Wを例えば前方位置から後方位置へ搬送する際、第1アーム11,12と第2アーム21,22とが互いに平行(θ=0°)となる位置を通過する必要がある。この位置は平行リンク機構の死点に対応し、基板Wの円滑な搬送を阻害する。そこで、図示する基板搬送装置5は、回動軸2に同心的に固定された第1プーリ6と、第1アーム11と第2アーム21との連結部に同心的に固定された第2プーリ7と、これら第1プーリ6と第2プーリ7との間に架け渡されたベルト8とからなる死点脱出機構を備えている。これにより、回動軸2の回転力をベルト8を介して第2アーム21にダイレクトに伝達し、円滑にリンクの死点位置を通過させて、基板Wの搬送を安定に行えるようにしている。
【0006】
しかしながら、平行リンク型の基板搬送装置においては、リンク機構の死点を円滑に通過するための上述したような死点脱出機構を設ける必要があり、装置構成が複雑化するという問題がある。また、平行リンク型の基板搬送装置は、基板の直進搬送性が必ずしも高くはなく、高い送り精度が得られにくいという問題もある。
【0007】
これに対して、ハンドをリニアガイドに沿って移動させる直動型の基板搬送装置が知られている(下記特許文献2参照)。直動型の基板搬送装置は、平行リンク型の基板搬送装置におけるような死点が存在しないため、構成を簡素化できるという利点がある。また、基板の直進搬送性に優れるため、高い送り精度が得られやすい。
【0008】
しかしながら、直動型の基板搬送装置においては、搬送する基板やハンドの自重がリニアガイドにダイレクトに作用する。リニアガイドは負荷特性が低く、高い負荷が作用した際に基板の搬送精度が低下し高精度な送り精度が得られなくなると共に、ベアリング(軸受)の耐久性が低下して、ベアリングが短期間で劣化するという問題を有していた。したがって、今後益々進展する基板の大型化に対応することが不可能となる。
【0009】
そこで、本出願人は先に、構成を複雑化することなく安定かつ高精度な搬送性を得ることを目的として、図21に示す基板搬送装置を提案した(特願2006−148259)。この基板搬送装置30は、先端部にハンド32が結合された多関節アーム31と、ハンド32を直線移動させるベルト駆動機構38とを備えている。なお、図21では、理解容易のため、ベルト駆動機構38の構成を簡略的に示している。
【0010】
多関節アーム31は平行リンク型で構成され、一端が基台33に回転可能に支持された一対の第1アーム41と、これら一対の第1アーム41の各々の他端に一端が回転可能に結合された一対の第2アーム42とを有している。ハンド32は、一対の第2アーム42と各々の他端に回転可能に結合されたブロック体34と、基板を支持するフォーク部35とで構成されている。
【0011】
上記構成の多関節アーム31の一端が設置される基台33には、ハンド32の移動量及び移動方向を制御するベルト駆動機構38と、ハンド32の直線移動を案内するリニアガイド36が設置されている。ベルト駆動機構38は、リニアガイド36のガイドレール37aに沿ってハンド32を直線的に移動させる。なお、基台33には回転機構部39が取り付けられており、この回転機構部39によって多関節アーム31が基台33とともに旋回可能とされている。
【0012】
図22及び図23は、ベルト駆動機構38の具体的な構成例を示す斜視図及び平面図である。ベルト駆動機構38は、駆動軸に連結された駆動プーリ43と、一対の従動プーリ44a,44bと、駆動プーリ43と従動プーリ44a,44bとの間に架け渡されたベルト部材46とを備えている。従動プーリ44aと従動プーリ44bの間の距離は、ハンド32の移動距離に応じて適宜設定される。各従動プーリ44a,44bと駆動プーリ43との間には、ベルト部材46の張力を調整するための補助プーリ45a,45bがそれぞれ設けられており、駆動プーリ43とベルト部材46との間の密着力向上が図られている。
【0013】
駆動プーリ43、従動プーリ44a,44b及び補助プーリ45a,45bは、フレーム部材47に回転可能に支持されている。フレーム部材47は、従動プーリ44a,44bを支持するブラケット部48a,48b、補助プーリ45a,45bを支持するブラケット部49a,49b及び駆動プーリ43を支持するベース部50を備えている。なお、各ブラケット部48a,48b,49a,49bには、従動プーリ44a,44b、補助プーリ45a,45bの軸支持位置を調整するための調整機構部Sがそれぞれ設けられている。
【0014】
リニアガイド36のガイドレール37aは、フレーム部材47の逆L字状の直線的なアングル部47a上に設置されている。ガイドレール37aは、一方の従動プーリ44aから他方の従動プーリ44bに向かって直線的に延在するベルト部材46のベルト面と平行に配置されている。
【0015】
一方、ガイドレール37aと組になるリニアガイド36のスライダー37bは、連結部材51を介してベルト部材46及びハンド32に連結されている。すなわち、スライダー37bと一体的な連結部材51の下端部はベルト部材46に一体固定され、その上端部はハンド32のブロック体34に固定されている。したがって、ベルト部材46が走行すると、ハンド32は連結部材51及びスライダー37bを介してリニアガイド36のガイドレール37aに沿って直線的に移動される。
【0016】
以上の構成の基板搬送装置30においては、多関節アーム31は独自の駆動源を持たず、ベルト駆動機構38の駆動によって、ハンド32をリニアガイド36のガイドレール37aに沿って直線的に移動させる。このような構成の基板搬送装置30は、多関節アーム31でハンド32に作用する負荷を支持し、リニアガイド36でのハンド32の直進搬送性を確保する。これにより、死点を通過するための特別な機構を必要としないので構成の複雑化を防止できる。また、リニアガイドに直接負荷が作用することがないので、高い搬送精度と高いベアリング耐久性を得ることができる。
【0017】
【特許文献1】特開平9−283588号公報
【特許文献2】特開2004−228370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、この種の多関節アームを備えた基板搬送装置においては、ベルト駆動機構の駆動軸やアームの関節部等にインクリメンタルセンサ(回転センサ)を設置してハンド位置の検出を行っている。しかしながら、停電等の不慮の電力トラブルが発生した場合、ハンド位置の検出が行えなくなるという問題がある。
【0019】
例えば、図21に示した基板搬送装置30においては、多関節アーム31の第1,第2アーム41,42が互いに平行となる位置が原点(ホームポジション)とされ、その原点位置に対して前方及び後方に基板を搬送できる構成となっている。そして、この基板搬送ロボット30を真空維持された搬送室で使用する場合においては、稼働中に停電が生じると、記憶されているセンサの原点位置データが消失されるため、その復旧後に再稼動させる際、ハンドが前方位置にあるのか後方位置にあるのか特定することが不可能となり、駆動プーリ43をどちらの方向に回転すればハンド4が原点位置に復帰するのか判断ができない。このため、搬送室を一度大気に開放し、作業者によるハンド4の原点位置復帰作業を行う必要があり、装置稼動時間の低下を生じさせる原因となる。
【0020】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合でも、ハンド位置を検出することができる基板搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以上の課題を解決するに当たり、本発明の基板搬送装置は、一端が基台の支持軸に支持され、他端が基板支持用のハンドに接続された多関節アームと、前記ハンドの直線移動を案内するリニアガイドと、前記ハンドを前記リニアガイドのガイドレールに沿って移動させるベルト部材と、前記ベルト部材を駆動する駆動機構と、前記ハンドの位置を検出する検出手段とを備え、前記検出手段は、前記基台に対して相対移動可能なロッド部材と、前記ベルト部材の移動を前記ロッド部材のその軸方向への移動に変換する変換機構と、前記ロッド部材に装着された磁性ブロックと、前記磁性ブロックの位置を検出する検出ユニットを有することを特徴とする。
【0022】
本発明において、ロッド部材は、変換機構を介してベルト部材と同期移動する構成となっている。ロッド部材には、検出ユニットにより検出される磁性ブロックが装着されているので、当該磁性ブロックの位置検出を行うことによって、ハンド位置を間接的に検出することが可能となる。したがって、停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合であっても、当該磁性ブロックの位置検出を行うことでハンド位置を検出することが可能となる。また、真空中におけるハンドの原点位置への復帰作業も容易となり、装置稼動時間の低下を抑制することができる。
【0023】
ロッド部材は、ベルト部材と同期駆動されるが、ハンドの全移動行程にわたって同期駆動される場合に限られず、例えば、ハンドの原点位置近傍においてのみ同期駆動されるようにしても構わない。また、検出ユニットを構成する検出素子としては、公知の磁気センサやソレノイドセンサ等が適用可能である。
【0024】
本発明において、ロッド部材は、駆動機構の駆動軸を貫通しており、変換機構は、ベルト部材の移動と同期して基台に対して相対移動可能な移動ユニットと、移動ユニットの移動をロッド部材のその軸方向への移動に変換する変換ユニットを備えている。変換ユニットは、ロッド部材の上端部を支持する支持アームと、移動ユニットに結合され支持アームの上下移動をガイドする案内部材を有している。
【0025】
多関節アームの構成例としては、一端が支持軸の周りに回動可能に支持された第1アームと、第1アームの他端に一端が回転可能に結合された第2アームとを有し、ハンドは、第2アームの各々の他端に回転可能に結合されている。第1アームと第2アームとが互いに平行となる位置は、ハンドの原点(ホームポジション)とされる。そして、この原点位置の直上には、ハンドを撮像するための撮像手段が設置される。これにより、ハンドの原点位置への復帰を自動的にかつ高精度に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明の基板搬送装置によれば、停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合であっても、ハンド位置を検出することが可能となる。また、真空中におけるハンドの原点位置への復帰作業も容易となり、装置稼動時間の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の基板搬送装置は、図示せずとも真空搬送室の周囲に複数の真空処理室が配置されたマルチチャンバ装置において、その真空搬送室内に設置され、ロード/アンロード室を含む複数の真空処理室間で半導体ウエハやガラス基板等の被処理基板を自動搬送する基板搬送装置として構成されている。
【0028】
図1及び図2は本発明に実施形態による基板搬送装置60の構成を示す斜視図である。この基板搬送装置60は、先端部にハンド62が結合された多関節アーム61と、ハンド62を直線移動させるベルト駆動機構68とを備えている。
【0029】
なお、図1は、ハンド62が原点位置にあるときの多関節アーム61の様子を示しており、図2は、ハンド62が前方位置にあるときの多関節アーム61の様子を示している。また、図1及び図2においては、理解容易のため、ベルト駆動機構68の構成を簡略的に示している。
【0030】
本実施形態において、多関節アーム61は平行リンク型で構成され、一端が基台63に回転可能に支持された一対の第1アーム71A,71Bと、これら一対の第1アーム71A,71Bの各々の他端に一端が回転可能に結合された一対の第2アーム72A,72Bを有している。第2アーム72A,72Bのアーム長は、第1アーム71A,71Bのアーム長よりも長く構成されているが、同一のアーム長で構成されていても構わない。ハンド62は、一対の第2アーム72A,72Bの各々の他端に回転可能に結合されたブロック体64と、基板を支持するフォーク部65とで構成されている。
【0031】
第1アーム71A,71Bの一端は、基台63側に設置された第1支持軸91(図2)に支持されている。第1アーム71A,71Bの他端側と第2アーム72A,72Bの一端側との間には第2支持軸92が設置されている。そして、第2アーム72A,72Bの他端側とハンド62のブロック体64との間には、第3支持軸93が設置されている。これら第1,第2アーム71A,71B,72A,72Bが支持軸91〜93のまわりに回動することによって、多関節アーム61は、図1に示すハンド62の原点位置と、図2に示す前方への伸長位置あるいは図示しない後方への伸長位置との間を伸縮動作する。
【0032】
上記構成の多関節アーム61の一端が設置される基台63の上にはベースプレート70が固定されている。ベースプレート70には、ハンド62の移動量及び移動方向を制御するベルト駆動機構68と、ハンド62の直線移動を案内するリニアガイド66が設置されている。リニアガイド66は、直線的なガイドレール67aとその上を移動するスライダー67bで構成されている。ベルト駆動機構68は、リニアガイド66のガイドレール67aに沿ってハンド62を直線的に移動させる。なお、基台63には回転機構部69が取り付けられており、この回転機構部69によって多関節アーム61が基台63及びベースプレート70とともに旋回可能とされている。
【0033】
ベルト駆動機構68は、駆動軸に連結された駆動プーリ73と、駆動プーリ73を挟んで配置された一対の従動プーリ74a,74bと、駆動プーリ73と従動プーリ74a,74bとの間に架け渡されたベルト部材76とを備えている。駆動プーリ73はベースプレート70上に回転可能に配置されている。従動プーリ74a,74bの間の距離は、ハンド62の移動距離に応じて適宜設定される。各従動プーリ74a,74bと駆動プーリ73との間には、ベルト部材76の張力を調整するための補助プーリ75a,75bがそれぞれ設けられており、駆動プーリ73とベルト部材76との間の密着力向上が図られている。
【0034】
ベルト調整機構68は、駆動プーリ73の回転運動をベルト部材76の直線走行運動に変換する。特に、図示せずとも、駆動プーリ73の周面に複数の係合突起を形成し、ベルト部材76のベルト面にはこれらの係合突起に係合する係合孔を複数設けるのが好適である。これにより、駆動プーリ73とベルト部材76との間の滑りを防止し、駆動プーリ73の回転力をベルト部材76に確実に伝達することができる。
【0035】
従動プーリ74a,74bはそれぞれ、フレーム78a,78bによって回転可能に支持されている。フレーム78a,78bは、ベースプレート70に設置された直線的なアングル部材77に一体固定されている。補助プーリ75a,75bはそれぞれ、ベースプレート70上において、アングル部材77に一体固定されたフレーム79a,79bによって回転可能に支持されている(図3)。
【0036】
従動プーリ74a,74bと補助プーリ75a,75bはそれぞれの軸心部が同一直線上に整列配置されている。ベルト部材76は、ステンレス鋼等の金属製エンドレスベルトであり、基板搬送面である水平面内において各プーリ間に架け渡されている。これにより、ベルト駆動機構68の構成のコンパクト化が図られる。また、ベルト駆動機構68の真空搬送室内への設置が容易となる。
【0037】
図3は、ベルト駆動機構68の要部斜視図、図4は、ハンド62とベルト部材76との間の連結構造を示す部分断面正面図である。図3において、一方側(図中手前側)の第1アーム71Aの図示は省略している。リニアガイド66のガイドレール67aは、アングル部材77の上に敷設されている。ガイドレール67aは、一方の従動プーリ74aから他方の従動プーリ74bに向かって直線的に延在するベルト部材76のベルト面と平行に配置されている。
【0038】
このガイドレール67aの上を移動するスライダー67bは、連結部材81を介してベルト部材76及びハンド62に連結されている。連結部材81は、スライダー67bと一体的に固定された本体部81aと、この本体部81aとベルト部材76との間を固定するベルト連結部81bと、ハンド62のブロック体64の下面に設けられた取付部64aと本体部81aとの間を固定するハンド連結部81cとを備えている。したがって、ベルト部材76が走行すると、ハンド62は連結部材81及びスライダー67bを介してリニアガイド66のガイドレール67aに沿って直線的に移動される。
【0039】
本実施形態の基板搬送装置60においては、多関節アーム61は独自の駆動源を有しておらず、ベルト駆動機構68の駆動によって、ハンド62をガイドレール67aに沿って直線的に移動させる。このような構成の基板搬送装置60は、多関節アーム61でハンド62に作用する負荷を支持し、リニアガイド66でのハンド62の直進搬送性を確保する。そして、第1アーム71A,71Bと第2アーム72A,72Bとが互いに平行となるリンクの死点位置(図1に示すハンド62の原点位置)を通過するための特別な機構を必要としないので、構成の複雑化を回避できる。また、リニアガイド66に直接負荷が作用することがないので、高い搬送精度と耐久性を得ることができる。
【0040】
一方、ハンド62が原点位置で停止したとき、多関節アーム61は、第1アーム71A,71Bと第2アーム72A,72Bが互いに平行に重なり合った姿勢をとる。この状態において、例えば回転機構部69の駆動により多関節アーム61が基台63とともに旋回した場合、多関節アーム61が第1支持軸91及び第3支持軸93の周りに揺動して姿勢が不安定となる。このため、本実施形態の基板搬送装置60は、第1アーム71A,71Bと第2アーム72A,72Bのアーム長を異ならせることで、原点位置における多関節アームの揺動を抑えるようにしている。
【0041】
しかしながら、実際には、各アームの長さや重量、軸受構造の差分、組付け公差等の影響により、原点位置において多関節アーム61の揺動が発生する場合がある。揺動の程度は、アーム長が長いほど大きくなる。つまり、多関節アーム61の各アームがリンク機構的に不動となる位置にあっても、実際に装置を構成すると、製作上の要因で所望の精度にアーム位置を規制することができない。
【0042】
そこで、本実施形態では、第1アーム71A,71Bと第2アーム72A,72Bがほぼ平行となるハンド62の原点位置で、支持軸91(93)の周りへの多関節アーム61の回動を規制するロック機構100を備えている。以下、このロック機構100の詳細について説明する。
【0043】
ロック機構100は、基台63及びベースプレート70に対してハンド62の進行方向に相対移動するロックバー101と、第1アーム71A,71Bと一体的に回動するとともにロックバー101との接触により第1アーム71A,71Bの回動を規制する一対の保持アーム102とを備えている。
【0044】
ロックバー101は、ベースプレート70に対して相対移動可能な移動ユニット103に固定されている。ロックバー101は一対備えられ、それぞれは移動ユニット103のハンド進行方向に関して前方側端部および後方側端部に取り付けられている。また、保持アーム102は、第1支持軸91の周りに第1アーム71A,71Bと一体的に回動する本体部102A(図3,図5)を有し、この本体部102Aに各ロックバー101に対応して一対設けられている。
【0045】
図5は、ロック機構100の要部斜視図であり、図6は、移動ユニット103を下方から見たときの要部斜視図である。図5において第1アーム71Bの図示は省略している。移動ユニット103は、ベースプレート70の下面側においてこのベースプレート70に対してハンド62の移動方向へ相対移動可能な一対の可動部材104と、ベースプレート70の下面側に設置されこれら可動部材104の移動を案内する複数のガイド軸受105と、基台63とベースプレート70との間で可動部材104を移動自在に支持する支持機構等で構成されている。
【0046】
なお、上記支持機構は、図ではその詳細を省略しているが、ベースプレート70で可動部材104を移動自在に懸吊する機構、あるいは、基台63上で可動部材104の下面を移動自在に支持する機構等が採用されている。
【0047】
一対のロックバー101は、可動部材104の両端部にそれぞれ取り付けられている。多関節アーム61の第1,第2アーム71A,71B,72A,72Bが互いに平行となるハンド62の原点位置においては、これらロックバー101の先端部101Eが、保持アーム102の先端部102Eに接触している(図1,図5,図7)。したがって、この状態において、多関節アーム61は、第1支持軸91(第3支持軸93)を中心とする回動動作が、ロックバー101への保持アーム102の接触によって規制される。
【0048】
図7〜図9は、ロックバー101と保持アーム102との間の位置関係を示す要部の平面図である。ここで、図7はハンドが原点位置にある状態を示し、図8はハンドが原点位置から前方へ若干量移動した状態を示している。そして、図9は、ロック機構100によるロック状態が解除された状態の一例を示している。なお、原点位置から後方へのハンドの移動も同様に表される。
【0049】
ロックバー101は、後述するように、ベルト部材76(及びハンド62)の移動と同期して、このベルト部材63の移動方向に移動する。一方、各保持アーム102は、ベルト部材76の移動に応じて第1アーム71A,71Bと一体的に回動する。したがって、図8に示すようにベルト部材76が左右へ移動した際には、保持アーム102は支持軸91を中心として反時計方向に回動する。一方、ベルト部材76が左方へ移動した際には、保持アーム102は支持軸91を中心として時計方向に回動する。保持アーム102の回動量は、ベルト部材76の移動量に応じて決定される。そして、ベルト部材76の移動量が大きくなると、ロックバー101と保持アーム102の間の接触状態が解消することで、ロック機構100による第1アーム71A,71Bの回動規制が解除される(図9)。
【0050】
ロック機構100は、以上のようにして、第1アーム71A,71Bと第2アーム72A,72Bが互いに平行となる位置からハンド62が所定距離移動するまでの間にわたり、ロックバー101と保持アーム102との間の接触状態を維持する。上記所定距離は、ロックバー101の幅に相当する大きさである。したがって、ロックバー101の形成幅を任意に設定することで、多関節アーム61の回動規制を行えるハンド位置の範囲が調整可能となる。
【0051】
本実施形態では、ロックバー101の直線移動時及び保持アーム102の回動時に両者が互いに干渉することを防ぐ目的で、ロックバー101の先端部101Eは、保持アーム102の回動方向に沿ったテーパ形状に形成されている。テーパ面は平坦面でもよいし曲面であってもよい。更に、保持アーム102の先端部102Eはローラで構成されており、当接状態にあるときのロックバー101の先端部101Eに対する円滑な相対移動性が確保されている。また、ロックバー101の先端部101Eが上述したテーパ形状に形成されることで、ハンド62が原点位置から移動する際、ロックバー101による押圧操作により保持アーム102は適正な方向への回動が促される。これにより、多関節アーム61の円滑な伸長動作が確保される。
【0052】
次に、移動ユニット103のベルト部材63に対する同期駆動機構について説明する。
【0053】
図5及び図6に示すように、移動ユニット103の一方側の可動部材104には、ベルト部材76に所定長にわたって対向する支持部材106が取り付けられている。支持部材106の延在方向略中央部には、ピニオンギヤ107の回転軸部107aが回転自在に取り付けられている。
【0054】
図4に示すように、ベルト部材76は、ピニオンギヤ107に向かって突出する操作軸部108を有している。操作軸部108は、連結部材81のベルト連結部81bの下端をベルト部材76に固定する固定具を兼ねている。ピニオンギヤ107の回転軸部107aの内部には、操作軸部108の先端部を収容可能な係合孔109(図10)が設けられている。そして、基台63の上には、ピニオンギヤ107と噛合するラックギヤ110が設置されている。ラックギヤ110は、基台63に対して取付部材111を介して固定されている。
【0055】
以上の構成により、ハンド62が原点位置から前進移動又は後退移動するとき、操作軸部108と回転軸部107aとの係合によりベルト部材76とピニオンギヤ107が一体的に移動する。これにより、ピニオンギヤ107を支持する移動ユニット103は、ベルト部材76と同期して移動することが可能となる。
【0056】
本実施形態において、移動ユニット103は、ハンド62が原点位置から所定距離前進移動又は後退移動するまでの間にわたってベルト部材76との係合状態が維持され、ハンド62の移動距離が当該所定距離を越えた時点でベルト部材76との係合が解除される。その詳細について図10を参照して説明する。
【0057】
図10は、ピニオンギヤ107をその回転軸部107a側から見た側面図である。上述のように、回転軸部107aの内部には、操作軸部108を収容する係合孔109が設けられている。操作軸部108の周囲には軸受113が装着されており、ベルト部材76の移動時に係合孔109の内周面を転接しながらピニオンギヤ107との係合関係を維持する。これにより、ピニオンギヤ107は、ベルト部材76の移動と同期してラックギヤ110の上を走行し、移動ユニット103をベースプレート70に対して相対移動させる。
【0058】
ピニオンギヤ107の回転軸部107aには、係合孔109と連通し操作軸部108の通過を許容する大きさの切欠き部112が設けられている。切欠き部112は、図10において実線で示す原点位置において上方に開口しており、ピニオンギヤ107の回転量に応じて開口の向きが変化する。そして、ベルト部材76が移動し多関節アーム61の伸長動作が開始されると、ピニオンギヤ107も回転し、切欠き部112の開口の向きがベルト部材76の進行方向と一致した時点で、操作軸部108が断面U字状の係合孔109から切欠き部112を介して外部へ離脱する。これにより、ピニオンギヤ107と操作軸部108の間の係合関係が解除されるため、多関節アーム61は伸長を続けるが、ピニオンギヤ107はその回転駆動力を消失し、移動ユニット103の移動は停止する。
【0059】
ピニオンギヤ107と操作軸部108の間の係合解除は、例えば図9に示すように、ロックバー101と保持アーム102の間の接触状態が解消されているときに行われる。これにより、多関節アーム61の伸長作用がロックバー101と保持アーム102の間の干渉によって阻害されることを回避できる。また、上述のタイミングで操作軸部108との係合が解除されるように、ピニオンギヤ107のギヤ径が設定されている。
【0060】
一方、多関節アーム61が伸長位置から原点位置へ復帰するとき、操作軸部108は再びピニオンギヤ107の回転軸部107aと係合し、ベルト部材76の移動と同期してピニオンギヤ107を回転させる。これにより、移動ユニット103は原点位置へ復帰することが可能となる。
【0061】
ここで、ピニオンギヤ107に対する操作軸部108の適正な係合動作を確保するために、操作軸部108との係合が解除されてから再び操作軸部108と係合するまでの間、ピニオンギヤ107の回転位置を、操作軸部108との係合が解除された回転位置に保持する必要がある。本実施形態では、図6に示すように、ベースプレート70の下面に取り付けた強磁性体からなる保持ピン114と、ロックバー101の上面に取り付けたマグネット115との間の磁気吸着作用によって、ベースプレート70に対する移動ユニット103の相対位置を保持する。
【0062】
図11A〜Cは、上記保持手段の作用を説明する要部の概略側面図である。マグネット115A,115Bは、各ロックバー101の上面に取り付けられている。保持ピン114A,114Bは、一対のマグネット115A,115Bの間に位置するようにベースプレート70の下面に取り付けられている。図11Aに示すように、ハンドが原点位置にあるとき、保持ピン114A(114B)とマグネット115A(115B)の組み合わせからなる各組は、互いに一定距離離間している。この距離は、切欠き部112の開口の向きが原点位置における上方位置から、操作軸部108が離脱する水平方向に遷移するまでのピニオンギヤ107の円周長に相当する。そして、ベルト部材76を走行させてロックバー101をベースプレート70に対して相対移動させると、移動方向に関して後方側に対向する保持ピンとマグネットの組が接触する。これにより、ロックバー101の移動が規制されるとともに当該ロックバー101がマグネットの磁気吸着によって位置決めされる。図11Bは、ロックバー101が右方向へ移動したときの状態を示し、図11Cは、ロックバー101が左方側へ移動したときの状態をそれぞれ示している。
【0063】
以上のようにして、操作軸部108とピニオンギヤ107の間の係合状態が解除されている間、ピニオンギヤ107の回転位置が保持される。これにより、切欠き部112の開口の向きを係合孔109に対する操作軸部108の係合方向に合わせることが可能となるので、ピニオンギヤ107に対する保持部材108の係合作用を確実に行わせることができる。
【0064】
続いて、本発明に係るハンド検出機構について説明する。
【0065】
本実施形態の基板搬送装置60においては、ハンド位置の検出にインクリメンタルセンサ等のエンコーダセンサを用い、図1に示すハンド原点位置(ホームポジション)を起点とする第1,第2アーム71A,71Bの回動量を電気的に検出して、ハンド62のストローク位置を特定するようにしている。したがって、装置稼働中に停電等の不慮の電力トラブルが発生した場合、センサに記憶されている原点位置が消失することで、ハンド62の位置検出が不可能となる。このため、この基板搬送装置60が設置されている搬送室内を大気に開放し、作業者によるハンド62の原点位置復帰作業を行う必要があり、装置稼働時間の低下を生じさせる原因となる。
【0066】
そこで本実施形態では、上記センサによらないでハンド62の位置検出を行うことができるハンド位置検出装置(検出装置)を別途設けて、停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合においてもハンド62の位置検出を可能とし、更に、搬送室内を大気に開放せずにハンド62を原点位置へ復帰させることを可能としている。
【0067】
図12はハンド位置検出装置120の概略構成を示す要部断面図である。ハンド位置検出装置120は、基台63に対して相対移動可能なロッド部材121と、ベルト部材76の移動をロッド部材121のその軸方向への移動に変換する変換機構122と、ロッド部材121に装着された磁性ブロック123と、磁性ブロック123の位置を検出する検出ユニット124を有している。
【0068】
ロッド部材121は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材料からなり、駆動プーリ73の軸心部に連結された駆動軸85の内部を貫通している。ロッド部材121は、この駆動軸85に対して軸方向に相対移動可能とされている。磁性ブロック123は、永久磁石材料からなり、ロッド部材121の下端部に取り付けられている。
【0069】
変換機構122は、ベルト部材76の移動と同期して基台63に対して相対移動可能な移動ユニット103と、移動ユニット103の移動をロッド部材121のその軸方向への移動に変換する変換ユニット128を備えている。なお、移動ユニット103は、上述したロック機構100における移動ユニットと同一のものが用いられている。
【0070】
変換ユニット128は、ロッド部材121の上端部を支持する支持アーム125と、移動ユニット103に結合され支持アーム125の上下移動をガイドする案内部材127を有している。案内部材127は、ベースプレート70に形成されたスロット部130を介して、移動ユニット103を構成する一方の可動部材104に結合されている。案内部材127には、図12に示すように、ハンド62の前進方向に下り傾斜となるガイド溝127aが形成されており、支持アーム125に固定された係合ピン126がこのガイド溝127aに係合されている。
【0071】
したがって、駆動プーリ73の駆動により移動ユニット103が移動すると、案内部材127によって支持アーム125が上方又は下方へ移動される。これにより、支持アーム125に支持されるロッド部材121も同様に、駆動軸85の内部において軸方向に移動される。支持アーム125には、図3に示すように、ベースプレート70に立設されたガイドレール131の上を走行するリニア軸受132が固定されており、これらにより、支持アーム125の上下移動がガイドされる。ロッド部材121の上下方向のストローク量は、移動ユニット103の水平方向の移動量で決まる。
【0072】
図12に示すように、検出ユニット124は、ベルト駆動機構68の駆動軸85と連絡する回転機構部69の底部に設置されている。図13に、検出ユニット124の概略構成を示す。検出ユニット124は、ロッド部材121が挿通される非磁性材料からなる管部材133と、その周囲に配置された検出素子SW1,SW2と、それらを囲む非磁性材料からなるキャップ129とにより構成されている。
【0073】
検出素子SW1,SW2は、磁性ブロック123の高さ位置を検出できる素子であれば特に制限されない。本実施形態において、検出素子SW1,SW2は、磁性ブロック123の形成磁界によって誘導される電流の有無で磁性ブロック123を検出するソレノイドセンサで構成されている。これら検出素子SW1,SW2は、管部材133の軸方向に沿って所定の間隙をおいて対向配置されている。そして、各検出素子SW1,SW2の出力に基づいて、ハンド62が原点位置に関して前進方向に位置しているのか、後退方向に位置しているのかを検出する。なお、検出素子SW1,SW2は、電流発生時にON信号を、電流消失時にOFFを出力するように構成されている。
【0074】
図14は、検出素子SW1,SW2を用いたハンドの検出方法を説明する図であり、ハンド62のストローク位置とロッド部材121のストローク位置との関係を示している。これら両ストローク位置の関係は図示するような一次関数となり、その勾配は、図3に示した案内部材127のガイド溝127aの傾斜勾配に対応する。また、図中の原点Oは、ハンド62の原点位置(図1)に対応する。検出素子SW1,SW2は、ロッド部材121の下死点および上死点位置でON信号を出力することが可能な位置にそれぞれ構成されている。
【0075】
図15は、原点付近に位置するハンド62と、原点位置よりも前進方向側および後退方向側に位置するハンド62F,62Bをそれぞれ示している。図15において原点付近に円で示される領域は、ハンド62の原点位置の直上に設置されたCCDカメラ等の撮像手段による認識範囲を示している。
【0076】
図14及び図15を参照して、ハンド62が原点位置を中心とする前後方向の所定範囲内にあるとき、各検出素子SW1,SW2はON信号を出力する。これに対して、ハンド62が上記所定範囲を超えて前進方向に位置するとき(例えばハンド62Fの位置にあるとき)、ロッド部材121の上昇動作によって、下方側に位置する検出素子SW1の出力信号がOFFとなる。一方、ハンド62が上記所定範囲を超えて後退方向に位置するとき(例えばハンド62Bの位置にあるとき)、ロッド部材121の下降動作によって、上方側に位置する検出素子SW2の出力信号がOFFとなる。
【0077】
以上のように、CCDカメラの認識範囲外にハンド62が位置する場合においても、検出素子SW1,SW2の出力に基づいて、ハンド62が前進方向に位置しているのか後退方向に位置しているのかを特定することができる。また、これら検出素子SW1,SW2の出力とCCDカメラの画像処理技術を用いて、ハンド62を原点位置へ復帰(イニシャライズ)させることができる。
【0078】
図16はハンド62のイニシャライズ工程を示している。図16に示した例では、まず、一方の検出素子SW1の出力を判定する(ステップS1)。検出素子SW1の信号がONの場合、図14に示したように、ハンド62は原点位置近傍から後退方向の位置にあることが特定される。次に、他方の検出素子SW2の出力を判定する(ステップS2)。この検出素子SW2の出力信号がONの場合、ハンド62は原点位置近傍に位置することが特定される。CCDカメラの認識範囲135(図15)は、2つの検出素子SW1,SW2がいずれもON信号を出力するストローク領域を認識できる範囲に設定される。したがって、ステップS2において検出素子SW2の信号がONの場合には、ハンド62はCCDカメラの認識範囲135に位置していると特定される。その後、CCDカメラの画像処理技術を用いてハンド62を原点位置へ移動させ、イニシャライズ処理を行う(ステップS3,S4)。
【0079】
また、ステップS2において、検出素子SW2の出力信号がOFFの場合、ハンド62は、CCDカメラの認識範囲135よりも後退方向側に位置していると特定される(図15においてハンド62Bの位置)。この場合、駆動プーリ73を反時計方向(CCW)に回転させてハンド62を前進方向へ所定量移動させる(ステップS5)。以降、検出素子SW2の出力がONになるまで同様の動作が繰り返される。検出素子SW2の出力がONになった後は、上述したイニシャライズ処理を行う(ステップS3,S4)。
【0080】
一方、ステップS1において、検出素子SW1の出力がOFFの場合、ハンド62は、CCDカメラの認識範囲135よりも前進方向側に位置していると特定される(図15においてハンド62Fの位置)。この場合、駆動プーリ73を時計方向(CW)に回転させてハンド62を後退方向へ所定量移動させる(ステップS6)。その後、ステップS7において検出素子SW1の出力がONであるか否かを判定し、ONの場合はハンド62のイニシャライズ処理を行い(ステップS3,S4)、OFFの場合はONになるまでステップS6,S7の動作を繰り返す。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、停電等の不慮の電力トラブルが生じた場合であっても、作業者の目視によらずハンド62のストローク位置を特定することができる。また、真空搬送室内を大気に開放することなく、ハンド62を原点位置に復帰させて、必要なイニシャライズ処理を自動的にかつ高精度に行うことが可能となる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0083】
例えば以上の実施形態では、多関節アーム61を平行リンク型で構成したが、これに限られない。また、基板搬送系は真空雰囲気中に限らず、大気雰囲気中での基板搬送にも本発明は適用可能である。
【0084】
また、ハンド62のフォーク部(ピックアップ)65の構成材料には、高剛性、低熱膨張、コスト等の観点からアルミナが広く用いられている。ここで、アルミナは比較的輻射率が高い。一方、基板の搬送中、基板温度の変動は回避したい。したがって、ハンド62の前方側端部及び後方側端部に未処理の基板と処理済の基板を2枚同時に載せた場合、一方の処理済の基板温度がハンド62を介して他方の未処理の基板に伝達し、当該未処理の基板に対しその後の基板処理に悪影響を与えるおそれがある。
【0085】
そこで、図17に示すように、フォーク部65の基板支持領域である先端側をシールド部材140で被覆することで、基板支持領域におけるフォーク部65の輻射熱の低減を図ることが可能となる。図18Aはシールド部材140を上方側から見た斜視図であり、図18Bはシールド部材140を下方側から見た斜視図である。図中141は基板の滑りを防止するための保持パッド、142は基板の脱落を防止するストッパ、145はシールド部材140をフォーク部先端に固定する保持具である。
【0086】
シールド部材は、断面コ字状に折り曲げ形成されたアルミニウム板で構成されている。図19は保持具145の構成を示す斜視図である。保持具145の両側部には、シールド部材の両側部に形成された突片143と係合する切欠き146が設けられているとともに、フォーク部65の下面を押圧する弾性片147が設けられている。これにより、フォーク部65先端に対してシールド部材140が安定に保持される。
【0087】
アルミニウムはアルミナよりも輻射率が低いので、アルミナ製フォーク部で直接基板を支持する場合と比較して、フォーク部から基板に向かう熱輻射を低減することができる。なお、シールド部材140は、基板と接触するフォーク部の先端にのみ設置する例に限らず、フォーク部全体を当該シールド材で被覆する構成も採用可能である。また、アルミナ製のフォーク部の表面にアルミニウムの溶射被膜を形成して輻射熱のシールド効果をもたせることも可能であるが、この場合コスト的に不利となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態による基板搬送装置を示す斜視図であり、ハンドが原点位置で停止している状態を示している。
【図2】本発明の実施形態による基板搬送装置を示す斜視図であり、ハンドが前進方向へ伸長した状態を示している。
【図3】本発明の実施形態による基板搬送装置のベルト駆動機構の要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による基板搬送装置のベルト部材とハンドとを連結する連結部材の正面図である。
【図5】本発明の実施形態による基板搬送装置の移動ユニットの構成を説明する要部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態による基板搬送装置の移動ユニットの構成を説明する要部斜視図である。
【図7】本発明の実施形態による基板搬送装置のロック機構の作用を説明する要部平面図である。
【図8】本発明の実施形態による基板搬送装置のロック機構の作用を説明する要部平面図である。
【図9】本発明の実施形態による基板搬送装置のロック機構の作用を説明する要部平面図である。
【図10】本発明の実施形態による基板搬送装置の操作軸部とピニオンギヤとの関係を説明する要部平面図である。
【図11】本発明の実施形態による基板搬送装置のロックバーの位置保持構造を説明する概略側メンズである。
【図12】本発明の実施形態による基板搬送装置のハンド位置検出装置(検出手段)の構成を説明する要部断面図である。
【図13】本発明の実施形態による基板搬送装置のハンド位置検出装置を構成する検出ユニットの概略構成図である。
【図14】上記検出ユニットの作用の一例を説明する図である。
【図15】本発明の実施形態による基板搬送装置のハンドのストローク位置を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明の実施形態による基板搬送装置のハンドのイニシャライズ工程を説明するフロー図である。
【図17】本発明の実施形態による基板搬送装置のハンドの構成の変形例を示す斜視図である。
【図18】図17に示したハンドのフォーク部先端を覆うシールド部材の構成を示す斜視図である。
【図19】上記シールド部材の保持具の構成を示す斜視図である。
【図20】従来の基板搬送装置の概略構成を示す平面図である。
【図21】ベルト駆動で伸縮する多関節アームを備えた基板搬送装置を示す斜視図である。
【図22】図21に示した基板搬送装置のベルト駆動機構を示す斜視図である。
【図23】図21に示した基板搬送装置のベルト駆動機構を示す平面図である。
【符号の説明】
【0089】
60 基板搬送装置
61 多関節アーム
62 ハンド
63 基台
65 フォーク部
66 リニアガイド
67a ガイドレール
67b スライダー
68 ベルト駆動機構(駆動機構)
70 ベースプレート
71A,71B 第1アーム
72A,72B 第2アーム
73 駆動プーリ
74a,74b 従動プーリ
76 ベルト部材
81 連結部材
100 ロック機構
101 ロックバー
102 保持アーム
103 移動ユニット
104 可動部材
120 ハンド位置検出装置(検出手段)
121 ロッド部材
122 変換機構
123 磁性ブロック
124 検出ユニット
125 支持アーム
127 案内部材
128 変換ユニット
140 シールド部材
145 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が基台の支持軸に支持され、他端が基板支持用のハンドに接続された多関節アームと、前記ハンドの直線移動を案内するリニアガイドと、前記ハンドを前記リニアガイドのガイドレールに沿って移動させるベルト部材と、前記ベルト部材を駆動する駆動機構と、前記ハンドの位置を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、
前記基台に対して相対移動可能なロッド部材と、
前記ベルト部材の移動を前記ロッド部材のその軸方向への移動に変換する変換機構と、
前記ロッド部材に装着された磁性ブロックと、
前記磁性ブロックの位置を検出する検出ユニットを有する
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記ロッド部材は、前記駆動機構の駆動軸を貫通しており、
前記変換機構は、
前記ベルト部材の移動と同期して前記基台に対して相対移動可能な移動ユニットと、
前記移動ユニットの移動を前記ロッド部材のその軸方向への移動に変換する変換ユニットを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記変換ユニットは、
前記ロッド部材の上端部を支持する支持アームと、
前記移動ユニットに結合され前記支持アームの上下移動をガイドする案内部材を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記多関節アームは、一端が前記支持軸の周りに回動可能に支持された第1アームと、前記第1アームの他端に一端が回転可能に結合された第2アームとを有し、前記ハンドは、前記第2アームの各々の他端に回転可能に結合されており、
前記第1アームと前記第2アームとが互いに平行となる前記ハンドの原点位置の直上には、前記ハンドを撮像する撮像手段が設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記ハンドは、その少なくとも一部の表面に、アルミニウム製のシールド部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−43799(P2009−43799A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204912(P2007−204912)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】