基板洗浄方法および基板洗浄装置
【課題】基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄方法および基板洗浄装置において、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することのできる技術を提供する。
【解決手段】基板Wの表面Wf(パターン形成面)については、凍結洗浄技術によってパーティクル等の除去を行う。一方、基板裏面については、回転する基板下面中心に向けて凝固点近傍温度まで冷却されたDIWと、DIWの凝固点温度よりも低温の冷却ガスとを吐出する。こうして冷やされたDIWが基板裏面Wbに沿って流れる際に、基板に付着したパーティクル等を除去する。
【解決手段】基板Wの表面Wf(パターン形成面)については、凍結洗浄技術によってパーティクル等の除去を行う。一方、基板裏面については、回転する基板下面中心に向けて凝固点近傍温度まで冷却されたDIWと、DIWの凝固点温度よりも低温の冷却ガスとを吐出する。こうして冷やされたDIWが基板裏面Wbに沿って流れる際に、基板に付着したパーティクル等を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄方法および基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための処理の1つとして凍結洗浄技術が知られている。この技術では、基板表面に形成した液膜を凍結させ、この凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクル等を凍結膜とともに除去している。例えば、特許文献1に記載の技術においては、洗浄液としてのDIW(脱イオン水)を基板表面に供給して液膜を形成した後、冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせることにより液膜を凍結させ、再度DIWを供給して凍結膜を除去することによって、基板表面からのパーティクルの除去を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−071875号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の洗浄技術においては、(1)液膜の形成、(2)液膜の凍結、(3)凍結膜の除去、という3段階の工程を順番に実行する必要があるため、処理に時間がかかってしまい、さらなるスループットの向上という点で改良の余地が残されている。特に、パーティクル等の除去能力を向上させようとすると、上記従来技術では形成する液膜の厚さを増大させたり、冷却ガスを供給する時間を長くすることが必要である。しかしながら、そのことがさらに処理時間を増大させてしまい、パーティクル等の除去能力と処理のスループットとを両立させることが難しい。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄方法および基板洗浄装置において、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板洗浄方法は、上記目的を達成するため、基板に向けて洗浄液を吐出供給しながら、吐出される洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する洗浄液供給工程と、前記洗浄液供給工程の後に、前記基板の表面に残留する洗浄液を除去する洗浄液除去工程とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板洗浄装置の第1の態様は、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に対し洗浄液を吐出供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄液供給手段から吐出される前記洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段とを備え、前記冷却ガス供給手段は、前記洗浄液供給手段から前記洗浄液の供給中に、該洗浄液に対し前記冷却ガスを供給することを特徴としている。
【0008】
詳しくは後述するが、本願発明者らの実験によれば、基板に洗浄液を供給する際に該洗浄液にその凝固点よりも低温の冷却ガスを触れさせて洗浄液を冷却すると、基板表面の液膜の全面が凍結していなくても従来の凍結洗浄技術と同等もしくはそれ以上のパーティクル除去効果を得ることが可能であることがわかった。また、洗浄液を供給しながら冷却ガスを供給するので、液膜の形成とその凍結とを順番に行っていた従来技術よりも高いスループットで処理を行うことが可能である。すなわち、本発明にかかる基板洗浄方法および基板洗浄装置では、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することができる。
【0009】
これらの発明では、前記基板を略水平に保持しながら回転させるとともに、その回転中心に向けて前記洗浄液を供給するようにしてもよい。このようにすると、基板の回転に起因して生じる遠心力によって洗浄液が基板の中心から端部へ向かって流れるため、洗浄液を基板全面に行き渡らせることができる。また基板の回転数とパーティクル除去効果との間に相関性があることも本願発明者らの実験によって確かめられており、基板を回転させることでパーティクル除去効果を高めることが可能である。
【0010】
この場合において、前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスによって冷やされた洗浄液が遠心力によって外側に広がってゆくため、冷却ガスの供給位置を変える必要がなく、冷却ガスノズルをスキャンさせていた従来技術に比べて装置構成を簡素化することができる。
【0011】
上記各発明においては、前記洗浄液と前記冷却ガスとを同時に供給開始するようにしてもよい。冷却ガスを伴わない洗浄液を基板表面に供給しても十分なパーティクル除去効果を得られないことがわかっている。また、洗浄液を供給する前に冷却ガスを供給しても基板を冷却するだけで無意味である。洗浄液と冷却ガスとを同時に供給開始することによって、使用する洗浄液および冷却ガスを有効に洗浄に寄与させることができる。
【0012】
また、前記洗浄液の供給を停止するよりも前に前記冷却ガスの供給を停止するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスの停止後は冷却されない洗浄液が基板表面に供給されることとなり、冷却された洗浄液の作用によって基板から遊離したパーティクルを洗い流して基板上に残留するのを防止することができる。
【0013】
また、基板に向け吐出する洗浄液については、予め凝固点近傍温度まで冷却した状態で前記基板に向け供給するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスによる洗浄液に対する冷却効果がより高まり、より高い基板の洗浄効果を得ることができる。
【0014】
また、上記した基板洗浄装置においては、前記基板の回転軸上で前記基板に向けて開口する第1吐出口と、前記第1吐出口の近傍に開口する第2吐出口とを有するノズルをさらに備え、前記洗浄液供給手段から供給される前記洗浄液は前記ノズルの前記第1吐出口から吐出される一方、前記冷却ガス供給手段から供給される前記冷却ガスは前記ノズルの前記第2吐出口から吐出されるように構成してもよい。
【0015】
また、この発明にかかる基板洗浄装置の第2の態様は、上記目的を達成するため、基板を略水平に保持しながら回転させる基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板の回転中心に向けて洗浄液を吐出する第1吐出口、および、前記第1吐出口の近傍に設けられて前記洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを吐出する第2吐出口を有するノズルとを備えることを特徴としている。このような構成によれば、上記した本発明にかかる第1の態様の基板洗浄装置と同様に、高いスループットでパーティクル等を効果的に除去することができる。
【0016】
また、本発明にかかる基板洗浄装置の各態様においては、前記ノズルにおいて、前記第2吐出口が前記第1吐出口と同軸に前記第1吐出口を取り囲むように設けられてもよい。このようにすると、基板の回転中心に向けて第1吐出口から吐出される洗浄液の周囲を取り囲むように冷却ガスが第2吐出口から吐出されて、洗浄液の効率よく冷却し洗浄効果を高めることができる。
【0017】
また、前記ノズルは、前記基板の下方に前記第1および第2吐出口を上向きにして設けられており、前記基板の下面に向けて前記洗浄液および前記冷却ガスを吐出するようにしてもよい。このような構成によれば、略水平に保持された基板の下面に対し洗浄液と冷却ガスとを供給して基板下面に付着したパーティクル等を除去することができる。冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせる従来の凍結洗浄技術を基板下面側に適用することは構造的に難しい。これに対し、本発明では、基板の回転中心近傍から洗浄液および冷却ガスを供給すればよいのでノズルのスキャンを必要とせず、基板下面の洗浄処理にも好適に適用することが可能である。また、基板の上面側での処理と組み合わせて実行することも可能であり、この場合、上面側での処理としては本発明による洗浄技術、公知の凍結洗浄のいずれをも採用することが可能である。
【0018】
また、これらの基板洗浄装置においては、前記洗浄液を予めその凝固点近傍温度まで冷却する予冷手段を備えるようにしてもよい。こうすることで、冷却ガスによる洗浄液に対する冷却効果がより高まり、より高い基板の洗浄効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基板に洗浄液を供給しながら該洗浄液を冷却する冷却ガスを供給しているので、洗浄液による液膜形成後に該液膜を凍結させる技術に比べより高いスループットで、しかも高い洗浄効果で基板表面に付着したパーティクル等を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板洗浄装置としての基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについては公知の凍結洗浄技術によってパーティクル等の除去を行うのと同時に、基板表面Wfとは反対側の基板裏面Wbについては本発明にかかる洗浄技術によってパーティクル等の除去を行う基板処理装置である。
【0021】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに処理液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液を吐出する薬液吐出ノズル6と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材9が設けられている。処理液としては、薬液または純水やDIW(deionized water;脱イオン水)等の洗浄液などが用いられる。
【0022】
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0023】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0024】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0025】
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
【0026】
冷却ガス吐出ノズル3はガス供給部64(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給される。より具体的には、ガス供給部64に設けられた窒素ガス貯留部641から供給される窒素ガスが熱交換器642によりDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされ、こうして冷やされた窒素ガスが冷却ガスとして冷却ガス吐出ノズル3に供給される。冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに対向配置されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら該冷却ガス吐出ノズル3を基板の回転中心から外周部に向けて移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給できる。このとき、後述するように基板表面WfにDIWによる液膜が予め形成されていると、該液膜の全体を凍結させて基板表面Wfの全面にDIWの凍結膜を生成可能となっている。
【0027】
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。この二流体ノズルは、処理液としてのDIWと窒素ガスとを空中(ノズル外部)で衝突させてDIWの液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。
【0028】
また、スピンチャック2の外方には、第3の回動モータ67が設けられている。第3の回動モータ67には、第3の回動軸68が接続されている。また、第3の回動軸68には、第3のアーム69が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム69の先端に薬液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ67が駆動されることで、薬液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。薬液吐出ノズル6は薬液供給部61と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液が薬液吐出ノズル6に圧送される。
【0029】
なお、冷却ガス吐出ノズル3、二流体ノズル5および薬液吐出ノズル6ならびにこれらに付随するアームやその回動機構としては、例えば前記した特許文献1(特開2008−071875号公報)に記載されたものと同一構造のものを用いることができる。そこで、本明細書ではこれらの構成についてのより詳しい説明は省略する。
【0030】
スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
【0031】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0032】
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
【0033】
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は、ガス供給部64と接続されており、窒素ガス貯留部641から熱交換器642を通さずに供給される窒素ガスが乾燥ガスとして供給される。この実施形態では、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、ガス供給路95から遮断部材9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通した液供給管96が挿通されており、液供給管96の下端にノズル97が結合されている。液供給管96はDIW供給部62に接続されており、DIW供給部62よりDIWが供給され、ノズル97からDIWをリンス液として基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
【0034】
DIW供給部62はDIW貯留部621および熱交換器622を有しており、熱交換器622はDIW貯留部621から供給されるDIWをその凝固点近傍温度まで冷却する。すなわち、DIW供給部62はDIW貯留部621から供給される常温のDIW、または熱交換器622により凝固点近傍温度まで冷却されたDIWを供給可能となっている。
【0035】
スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに処理液を供給するための処理液供給管25が挿通されている。そして、回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。処理液供給管25およびガス供給路29は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けて処理液およびガスを吐出する下面ノズル27が設けられている。
【0036】
処理液供給管25は薬液供給部61およびDIW供給部62と接続されており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIWが選択的に供給される。一方、ガス供給路29は窒素ガス供給部64と接続されており、スピンベース23と基板裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガス供給部64からの窒素ガスを供給することができる。
【0037】
図3はスピンベースの構造を示す図である。より具体的には、図3(a)はスピンベース23の上面の構造を示す図であり、図3(b)はその断面図である。図3(a)に示すように、スピンベース23の上面23aの外周端部には複数のチャックピン24が立設されており、これらのチャックピン24によって処理対象となる基板Wを略水平に保持することができる。
【0038】
また、スピンベース上面23aの中心には下面ノズル27が設けられている。図3(a)および図3(b)に示すように、下面ノズル27は、基板の回転中心AOに向けて開口する第1吐出口271と、第1吐出口271と同軸にこれを取り巻くように開口する第2吐出口272とを備えている。第1吐出口271は処理液供給管25と連通しており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIWを基板下面(この実施形態ではパターンを形成されていない基板裏面Wb)に向けて吐出する。一方、第2吐出口272はガス供給路29と連通しており、窒素ガス供給部64からの窒素ガスを吐出する。したがって、吐出された窒素ガスは、基板下面のDIWを供給される位置、もしくはその位置を取り囲む周辺位置に向けて供給される。
【0039】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図4ないし図6を参照しつつ説明する。図4は図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。また、図5および図6は洗浄処理動作を示す模式図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここで、基板がその表面Wfに微細パターンを形成されたものである場合、該基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS101)。なお、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0040】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される(ステップS102)。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル97から常温のDIWを基板表面Wfに供給する。基板表面に供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される(ステップS103)。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
【0041】
この状態では、図5(a)に示すように、基板Wの表面Wfに所定厚さのパドル状液膜LPが形成されている。こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に退避させる(ステップS104)。その後、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbのそれぞれに対する以下の処理が併行して行われる。ここで、パドル状の液膜LPは、薬液吐出ノズル6から供給されるSC1液によって形成されてもよい。
【0042】
基板表面側では、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置から基板の回転中心の上方に移動させる。そして、図5(b)に示すように、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させていく(ステップS111)。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LPが冷やされて部分的に凍結し、図5(c)に示すように、凍結した領域(凍結領域FR)が基板表面Wfの中央部に形成される。そして、方向Dnへのノズル3のスキャンによって凍結領域FRは基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、図5(d)に示すように、最終的には基板表面Wfの液膜全面が凍結する。液膜全体が凍結すると、冷却ガス吐出ノズル3を退避させるとともに遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し(ステップS122)、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から基板表面Wfの凍結した液膜に向けて常温のDIWの供給を開始する。
【0043】
一方、基板裏面側では、スピンベース23に設けられた下面ノズル27の第1吐出口271からDIWを吐出して裏面洗浄液として基板裏面Wbに供給開始するとともに(ステップS121)、これと同時に、またはこれより少し遅れて、下面ノズル27の第2吐出口272から窒素ガスを吐出する(ステップS122)。その結果、図5(b)ないし(d)に示すように、基板裏面Wbの中心から外側に向かって広がるようにDIWによる液膜が形成され、最終的に基板端部でDIWが振り切られる。
【0044】
ここで、下面ノズル27から基板裏面Wbに供給されるDIWおよび窒素ガスは、それぞれ熱交換器622および642により冷却されたものである。後に詳述するが、本願発明者らの実験によれば、凝固点近傍温度まで冷やされたDIWと、DIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされたガス(冷却ガス)とを基板に向け吐出することによって、高いパーティクル除去効率を得ることができる。そして、冷却ガスの供給を所定時間、好ましくは基板表面側で液膜が完全に凍結するまでの間継続した後、冷却ガスの供給を停止する(ステップS123)。
【0045】
ここまでの処理が実行された時点では、図6(a)に示すように、基板Wが遮断部材9とスピンベース23との間に挟まれながら回転する状態で、基板Wの両面にDIWが供給されている。ここで、基板表面Wfに常温のDIWを供給するのに代えて、二流体ノズル5からDIWの液滴を供給するようにしてもよい。続いて基板両面へのDIWの供給をともに停止し(ステップS131)、基板を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS132)。すなわち、図6(b)に示すように、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル3から窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。このときに供給される窒素ガスは乾燥ガスとしての作用をするものであり、熱交換器642を通さない常温のガスである。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する(ステップS133)。
【0046】
上記処理によって得られる洗浄効果について説明する。まず、基板表面Wfに対する処理は、公知の凍結洗浄処理である。上記のようにして液膜を凍結させると、基板表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0℃の水が摂氏0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクルが微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減され、さらにはパーティクルが基板表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、液膜の体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しく、つまりパターンに加えられる力が相殺される。そのため、パターンの剥離や倒壊を防止しながら、パーティクルのみを基板表面Wfから剥離させることができる。そして、新たに供給するDIWによって凍結した液膜を除去することにより、パーティクル等についても基板表面Wfから取り除くことができる。
【0047】
一方、基板裏面側では、DIWの供給を連続的に行っているので、液膜は凍結せず基板中心から端部に向けて流動した状態を保っている。この点において、基板裏面Wbにおける洗浄作用は、凍結洗浄処理とは全く異なる原理によるものであるということができる。このような構成を採るに至った経緯について、以下説明する。
【0048】
図7は本願発明者らの行った実験を説明する図である。本願発明者らは、図7に示すように、シリコン基板の中心に向けて開口する第1吐出口2701とその周囲を取り囲むように開口する第2吐出口2702とを有するノズル270が回転する基板Wの回転中心軸AO上に配置され、第1吐出口2701からDIWを吐出させながら第2吐出口2702から冷却ガスを吐出させることが可能な実験装置を用いて、その動作条件を種々に変化させてパーティクル(主としてシリコン屑)に対する除去効果を調べた。
【0049】
より具体的には、図7の実験装置における標準の動作条件を下記:
DIW液温度: 0℃;
DIW流量 : 1.2L/min;
ガス流量 : 100L/min;
ガス温度 : −170℃;
基板回転数 : 750rpm;
処理時間 : 10sec、
として、DIWの液温度、冷却ガスの温度および基板の回転数を上記標準値から変化させたときのパーティクル除去率(PRE)を測定した。その結果の一例を図8ないし図10に示す。
【0050】
図8はDIWの液温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。まず、冷却ガスを吐出せずに(あるいは常温のガスを吐出しながら)DIWを基板Wに供給した場合、図8に三角印で示すように、DIWの液温度にかかわらずパーティクル除去率(PRE)は2〜3%程度であった。これに対し、図8に丸印で示すように、冷却ガス(−170℃)を供給しながらDIWを基板Wに供給すると、特にDIWの液温度が2℃以下の場合にPREの顕著な向上がみられた。
【0051】
図9は冷却ガスの温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。また、図10は基板の回転数とパーティクル除去率との関係を示す図である。DIWの液温度を一定(0℃)として冷却ガスの温度を種々に変化させてみると、図9に示すように、冷却ガスの温度が低いほど、高いPREを得られることがわかった。また、図10に示すように、基板の回転数が高いほどPREも高くなることが確認された。
【0052】
このように、基板Wに供給するDIWの液温度を凝固点近くまで冷却し、さらに冷却ガスとともに基板Wに供給することによって、単に常温のDIWを供給し続ける場合よりもはるかに高いパーティクル除去効果を得られることが明らかになった。また、処理条件を適切に設定すれば、凍結洗浄処理において得られるPREを上回る。特に、上記実験では10secという短い処理時間で高いPREを得ており、液膜形成、液膜凍結および凍結膜除去という工程を有する従来の凍結洗浄処理に比べて、処理のスループットという点で大きな優位性を有していると言える。
【0053】
このような処理によってパーティクルが除去されるメカニズムについて、液温度および冷却ガス温度が低いほどパーティクル除去効果が高く、さらに基板の回転数が高いほどパーティクル除去効果が高いという実験事実から、本願発明者らは次のようなモデルを考えた。
【0054】
図11はこの洗浄技術におけるパーティクル除去メカニズムのモデルを示す図である。図11(a)に示すように、未処理の基板Wの表面にはパーティクル等の汚染物質Pが分散している。本洗浄技術では、このような基板Wを回転させながら、凝固点近傍まで冷却されたDIWと、DIWの凝固点よりもさらに低温の冷却ガスとを供給する。このようにすると、ノズル27から基板Wに向けて吐出されたDIWは基板Wに到達する前後に冷却ガスによりさらに冷やされて局所的に凍結し、図11(b)に菱形印で示すように微小な氷塊CがDIW液中に生成する。氷塊Cを含むDIWは基板Wの回転に起因して生じる遠心力によって中心から端部に向けて基板表面に沿って流れる。このとき、DIW中の氷塊Cが基板W表面に付着したパーティクルPと衝突し、これを基板W表面から遊離させる。基板Wから遊離したパーティクルPはDIWの流れによって基板端部方向へ流され、最終的には端部において振り切られるDIW液滴とともに基板W表面から取り除かれる。
【0055】
この意味において、冷却ガスの温度については、裏面洗浄液(この実施形態ではDIW)の凝固点よりも低温であることが必要である。また、冷却ガスの温度が低いほど洗浄効果を高めることができる。
【0056】
また、液体中に固体を分散させた洗浄液を用いた技術とも考えることができるが、固体成分が洗浄液と同一の組成であり、しかも常温では液体であることから、洗浄後の基板上に固体成分が残留することがない。
【0057】
なお、この洗浄技術では、液膜全体を凍結させることなく流動する液体(DIW)によってパーティクルを除去している。このため、液体が回り込みにくい微細なパターンの内部に入り込んだパーティクルの除去については、依然として公知の凍結洗浄技術が有効である。その一方で、液温度、冷却ガス温度および基板の回転数を適宜に設定することにより、本発明にかかる洗浄技術では凍結洗浄技術よりも短時間でより高いPREを得ることができる。
【0058】
そこで、この実施形態では、微細なパターン内部に入り込んだパーティクルまで除去するとの観点から、パターン形成面である基板表面Wfについては凍結洗浄技術を適用する一方、パターンを形成されていない基板裏面Wbについては洗浄液膜を厚く形成することができないとの観点から、上記した原理に基づく洗浄技術を適用することとしている。こうすることにより、基板Wの表面Wf、裏面Wbのいずれにおいても効率よくパーティクルの除去を行うことができる。また、基板表面Wfに対する処理と、基板裏面Wbに対する処理とを同時に実行することができるので、短時間で基板の両面を洗浄することができる。
【0059】
また、この洗浄技術では、基板の中心付近に供給するDIWの周囲に冷却ガスを供給しており、こうして冷やされたDIWが遠心力によって基板の端部にまで広がることによって基板全面の洗浄が行われる。すなわち、この洗浄技術では、冷却ガスを吐出するノズルを基板の回転中心近傍に固定配置すればよく、ノズルを移動させる必要がない。このため、ノズルをスキャンさせることが構造上難しい基板の下面に対しても、良好に洗浄処理を行うことが可能である。
【0060】
以上のように、この実施形態では、略水平方向に保持され回転する基板Wの裏面Wbに対し、その下方に設けた下面ノズル27から裏面洗浄液としてのDIWおよびこれを冷却する冷却ガスとを吐出することによって基板裏面Wbの洗浄を行っている。ここで、冷却ガスの温度を裏面洗浄液の凝固点温度よりも低温とすることによって、短い処理時間で高いパーティクル除去効果を得ることができる。特に、洗浄液を供給しながら冷却ガスを供給するので、液膜形成、その凍結および除去を順番に行う凍結洗浄技術よりも高いスループットで処理を行うことが可能である。さらに、洗浄液であるDIWを予めその凝固点近くまで冷却しておくことにより、パーティクル除去効果をより高めることができる。
【0061】
なお、冷却ガスの供給開始タイミングについては、DIWの供給開始とほぼ同時またはこれより僅かに後とすることが望ましい。冷却ガスを供給せずにDIWのみを供給しても洗浄効果が上がらないことは先の実験結果から明らかである。一方、DIWの供給に先立って冷却ガスを供給した場合、供給先の基板が冷やされるため吐出されたDIWがすぐに凍結してしまうことが考えられる。したがって、冷却ガスはDIWの供給開始とほぼ同時、または吐出されたDIWが基板表面に到達するタイミングに合わせDIWの供給開始よりも僅かに遅れて供給開始されるのが最も効率的である。
【0062】
また、冷却ガスを先に停止しその後もDIWの供給を続けるようにすることで、基板から遊離したパーティクル等をより確実に基板表面から洗い流すことが可能である。この意味においては、DIWの供給を停止するよりも前に冷却ガスの供給を停止することが好ましい。
【0063】
また、この洗浄技術では、基板上の液膜を全面的に凍結させず洗浄液を流動させているので、洗浄液および冷却ガスを基板の中心近傍に供給し、しかも基板を回転させることにより、基板全面に洗浄液を行き渡らせて洗浄を行うことができる。すなわち、冷却ガスを吐出するノズルを移動させることなく、基板全面で高い洗浄効果を得ることができる。そして、ノズルの移動を必要としないことから、水平に保持された基板の下面に対しても高い洗浄効果を得ることができる。
【0064】
また、このように水平に保持された基板の上面に対して行う洗浄処理と同時に下面の洗浄を行うことにより、基板の両面を短時間に洗浄することができる。この場合において、基板の一方面にパターンを形成されているときには、該パターン形成面を上向きに保持し上面については公知の凍結洗浄技術を適用する一方、パターン形成面とは反対面を上記した洗浄技術により洗浄することにより、パターンの損傷を防ぎつつ、基板の両面を効率よく洗浄することができる。
【0065】
次に、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、基板Wの上面の洗浄については公知の凍結洗浄技術を適用する一方、下面の洗浄に本発明にかかる洗浄技術を適用していた。しかしながら、本発明の洗浄技術は、基板の下面を洗浄する際のみならず、基板の上面を洗浄する場合にも適用することが可能である。さらには、以下に説明する第2実施形態のように、基板の上面および下面の両方を同時に本発明にかかる洗浄技術により洗浄することも可能である。
【0066】
図12はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態の装置構成は、図1に示す第1実施形態と比べて冷却ガス吐出ノズルおよびこれに付随する機構が省かれていることを除けば基本的に同じであり、その動作が一部異なるのみである。そこで、ここでは第1実施形態の装置と同一の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
この実施形態の基板処理装置では、遮断部材9に接続されたガス供給路95に対し窒素ガス供給手段64から供給する窒素ガスを、熱交換器642を通した冷却ガスとこれを通さない乾燥ガスとに切り替えることができる。すなわち、遮断部材9の下面からは、常温の乾燥ガスおよびDIWの凝固点より低温の冷却ガスとを選択的に吐出可能となっている。同様に、遮断部材9の下面に設けられたノズル97からは、DIW供給部62から供給される常温のDIWと、熱交換器622により凝固点近くまで冷やされたDIWとを選択的に吐出可能となっている。
【0068】
図13は図12の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。この動作において、基板Wが搬入され、遮断部材9が基板との対向位置に近接配置されるまでは第1実施形態と同じである(ステップS201、S202)。続いて、遮断部材9およびスピンベース23を同一方向、同一回転速度で回転させながら、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベースに設けられた下面ノズル27からそれぞれ凝固点近傍温度まで冷却された洗浄液としてのDIWを基板の回転中心に向け供給開始する(ステップS203)。さらに、これとほぼ同時に、または少し遅れて、遮断部材9およびスピンベース23から冷却ガスの供給を開始する(ステップS204)。
【0069】
こうすることにより、第1実施形態の基板下面Wbでの現象として先に説明した、冷却ガスによりさらに冷却されたDIWが基板Wに沿ってその中心から端部に向けて流れるという現象が、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの双方で生じることとなる。前記したように、基板Wを回転させながら基板Wに供給するDIWを冷却ガスによって冷却することにより、短時間で高いパーティクル除去効果を挙げることができる。この実施形態では、基板の表面Wfおよび裏面Wbの双方についてこの洗浄方法を同時に実行しているので、基板Wの両面を短時間で効果的に洗浄することができる。
【0070】
冷却ガスの供給を所定時間継続した後その供給を停止し(ステップS206)、DIWのみを供給することにより、基板上に残留するパーティクル等をより確実に基板上から取り除くことができる。その後、第1実施形態と同様に、DIWの供給を停止し(ステップS207)、乾燥処理を行って基板を搬出することにより(ステップS207、S208)、基板Wに対する洗浄処理が完了する。
【0071】
この実施形態によれば、基板Wの両面について高いパーティクル除去効果を得ることができる。特に、基板Wの上面側についても本発明にかかる洗浄技術を適用しているので、液膜の形成とその凍結、除去を順番に行う凍結洗浄技術による場合よりも短時間で洗浄効果を得ることができる。これにより、洗浄処理のスループットを格段に向上させることができる。また、冷却ガスをスキャン吐出させるための機構を必要としないので、装置構成も小型で簡素なものとすることができる。この実施形態は、表裏いずれの面にもパターンを未形成である基板を洗浄するのに特に好適なものである。
【0072】
以上説明したように、これらの実施形態においては、基板処理装置(図1、図12)が本発明の「基板洗浄装置」に相当しており、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、DIW供給部62が本発明の「洗浄液供給手段」として機能しており、熱交換器622が本発明の「予冷手段」として機能している。また、これらの実施形態においては、窒素ガス供給部64が本発明の「冷却ガス供給手段」として機能しており、下面ノズル27が本発明の「ノズル」に相当している。
【0073】
また、これらの実施形態においては、図4のフローチャートにおけるステップS121、S122および図13のフローチャートにおけるステップS204が本発明の「洗浄液供給工程」に相当している。さらに、図4のフローチャートにおけるステップS132および図13のフローチャートにおけるステップS207が本発明の「洗浄液除去工程」に相当している。
【0074】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記各実施形態では、DIWを本発明の「洗浄液」としているが、洗浄液はこれに限定されない。例えば、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸などを用いたり、DIWに少量の界面活性剤を加えたものを洗浄液としてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、冷却ガスおよび乾燥ガスとして同一の窒素ガス貯留部から供給されて互いに温度を異ならせた窒素ガスを用いているが、乾燥ガスおよび冷却ガスとしては窒素ガスに限定されない。例えば、乾燥ガスおよび冷却ガスのいずれか一方または両方を乾燥空気や他の不活性ガスとしてもよい。特に、冷却ガスは洗浄液を冷却するものであって基板に直接触れるものではないので、冷却ガスとして乾燥空気を好適に使用することができる。
【0076】
また、上記各実施形態ではDIWを吐出する第1吐出口と冷却ガスを吐出する第2吐出口とを同軸構造としているが、このような構造に限定されるものではなく、例えば、基板の回転軸上に洗浄液を吐出する第1吐出口を設ける一方、冷却ガスを吐出する第2吐出口を第1吐出口の横に並べて配置してもよい。このような構造では冷却ガスが基板回転軸に対し非対称に吐出されることになるが、基板を回転させているので実質的には等方的に処理が行われる。
【0077】
また、上記各実施形態では、洗浄液としてのDIWと冷却ガスとしての窒素ガスが同じ方向へ、つまりいずれも基板に向けて吐出されるようにしているが、冷却ガスについては基板に向けて吐出する必要は必ずしもなく、基板に向けて吐出される洗浄液の液柱に向けて吐出されるようにしてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、DIW貯留部621および窒素ガス貯留部641をいずれも装置内部に内蔵しているが、洗浄液およびガスの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の洗浄液やガスの供給源を利用するようにしてもよい。また、これらを冷却するための既設設備がある場合には、該設備によって冷却された洗浄液やガスを利用するようにしてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有するものであるが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。また、これらの実施形態の装置は基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。
【0080】
また、上記第1実施形態は基板表面を公知の凍結洗浄技術で、基板裏面を本発明にかかる洗浄技術によって洗浄するものである。一方、上記第2実施形態は基板の両面を本発明にかかる洗浄技術によって洗浄するものである。しかしながら、本発明の実施の態様はこれらに限定されず、基板の片面のみを洗浄する場合にも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置、液膜凍結方法および該液膜凍結方法を用いた基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】スピンベースの構造を示す図である。
【図4】図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。
【図5】洗浄処理動作を示す第1の模式図である。
【図6】洗浄処理動作を示す第2の模式図である。
【図7】本願発明者らの行った実験を説明する図である。
【図8】DIWの液温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図9】冷却ガスの温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図10】基板の回転数とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図11】この洗浄技術におけるパーティクル除去メカニズムのモデルを示す図である。
【図12】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図13】図12の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
2…スピンチャック(基板保持手段)
3…冷却ガス吐出ノズル
9…遮断部材
27…下面ノズル(ノズル)
62…DIW供給部(洗浄液供給手段)
622…熱交換器(予冷手段)
64…窒素ガス供給部(冷却ガス供給手段)
W…基板
Wf…基板表面(パターン形成面)
Wb…基板裏面
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄方法および基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための処理の1つとして凍結洗浄技術が知られている。この技術では、基板表面に形成した液膜を凍結させ、この凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクル等を凍結膜とともに除去している。例えば、特許文献1に記載の技術においては、洗浄液としてのDIW(脱イオン水)を基板表面に供給して液膜を形成した後、冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせることにより液膜を凍結させ、再度DIWを供給して凍結膜を除去することによって、基板表面からのパーティクルの除去を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−071875号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の洗浄技術においては、(1)液膜の形成、(2)液膜の凍結、(3)凍結膜の除去、という3段階の工程を順番に実行する必要があるため、処理に時間がかかってしまい、さらなるスループットの向上という点で改良の余地が残されている。特に、パーティクル等の除去能力を向上させようとすると、上記従来技術では形成する液膜の厚さを増大させたり、冷却ガスを供給する時間を長くすることが必要である。しかしながら、そのことがさらに処理時間を増大させてしまい、パーティクル等の除去能力と処理のスループットとを両立させることが難しい。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄方法および基板洗浄装置において、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板洗浄方法は、上記目的を達成するため、基板に向けて洗浄液を吐出供給しながら、吐出される洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する洗浄液供給工程と、前記洗浄液供給工程の後に、前記基板の表面に残留する洗浄液を除去する洗浄液除去工程とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板洗浄装置の第1の態様は、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に対し洗浄液を吐出供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄液供給手段から吐出される前記洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段とを備え、前記冷却ガス供給手段は、前記洗浄液供給手段から前記洗浄液の供給中に、該洗浄液に対し前記冷却ガスを供給することを特徴としている。
【0008】
詳しくは後述するが、本願発明者らの実験によれば、基板に洗浄液を供給する際に該洗浄液にその凝固点よりも低温の冷却ガスを触れさせて洗浄液を冷却すると、基板表面の液膜の全面が凍結していなくても従来の凍結洗浄技術と同等もしくはそれ以上のパーティクル除去効果を得ることが可能であることがわかった。また、洗浄液を供給しながら冷却ガスを供給するので、液膜の形成とその凍結とを順番に行っていた従来技術よりも高いスループットで処理を行うことが可能である。すなわち、本発明にかかる基板洗浄方法および基板洗浄装置では、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することができる。
【0009】
これらの発明では、前記基板を略水平に保持しながら回転させるとともに、その回転中心に向けて前記洗浄液を供給するようにしてもよい。このようにすると、基板の回転に起因して生じる遠心力によって洗浄液が基板の中心から端部へ向かって流れるため、洗浄液を基板全面に行き渡らせることができる。また基板の回転数とパーティクル除去効果との間に相関性があることも本願発明者らの実験によって確かめられており、基板を回転させることでパーティクル除去効果を高めることが可能である。
【0010】
この場合において、前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスによって冷やされた洗浄液が遠心力によって外側に広がってゆくため、冷却ガスの供給位置を変える必要がなく、冷却ガスノズルをスキャンさせていた従来技術に比べて装置構成を簡素化することができる。
【0011】
上記各発明においては、前記洗浄液と前記冷却ガスとを同時に供給開始するようにしてもよい。冷却ガスを伴わない洗浄液を基板表面に供給しても十分なパーティクル除去効果を得られないことがわかっている。また、洗浄液を供給する前に冷却ガスを供給しても基板を冷却するだけで無意味である。洗浄液と冷却ガスとを同時に供給開始することによって、使用する洗浄液および冷却ガスを有効に洗浄に寄与させることができる。
【0012】
また、前記洗浄液の供給を停止するよりも前に前記冷却ガスの供給を停止するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスの停止後は冷却されない洗浄液が基板表面に供給されることとなり、冷却された洗浄液の作用によって基板から遊離したパーティクルを洗い流して基板上に残留するのを防止することができる。
【0013】
また、基板に向け吐出する洗浄液については、予め凝固点近傍温度まで冷却した状態で前記基板に向け供給するようにしてもよい。このようにすると、冷却ガスによる洗浄液に対する冷却効果がより高まり、より高い基板の洗浄効果を得ることができる。
【0014】
また、上記した基板洗浄装置においては、前記基板の回転軸上で前記基板に向けて開口する第1吐出口と、前記第1吐出口の近傍に開口する第2吐出口とを有するノズルをさらに備え、前記洗浄液供給手段から供給される前記洗浄液は前記ノズルの前記第1吐出口から吐出される一方、前記冷却ガス供給手段から供給される前記冷却ガスは前記ノズルの前記第2吐出口から吐出されるように構成してもよい。
【0015】
また、この発明にかかる基板洗浄装置の第2の態様は、上記目的を達成するため、基板を略水平に保持しながら回転させる基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板の回転中心に向けて洗浄液を吐出する第1吐出口、および、前記第1吐出口の近傍に設けられて前記洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを吐出する第2吐出口を有するノズルとを備えることを特徴としている。このような構成によれば、上記した本発明にかかる第1の態様の基板洗浄装置と同様に、高いスループットでパーティクル等を効果的に除去することができる。
【0016】
また、本発明にかかる基板洗浄装置の各態様においては、前記ノズルにおいて、前記第2吐出口が前記第1吐出口と同軸に前記第1吐出口を取り囲むように設けられてもよい。このようにすると、基板の回転中心に向けて第1吐出口から吐出される洗浄液の周囲を取り囲むように冷却ガスが第2吐出口から吐出されて、洗浄液の効率よく冷却し洗浄効果を高めることができる。
【0017】
また、前記ノズルは、前記基板の下方に前記第1および第2吐出口を上向きにして設けられており、前記基板の下面に向けて前記洗浄液および前記冷却ガスを吐出するようにしてもよい。このような構成によれば、略水平に保持された基板の下面に対し洗浄液と冷却ガスとを供給して基板下面に付着したパーティクル等を除去することができる。冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせる従来の凍結洗浄技術を基板下面側に適用することは構造的に難しい。これに対し、本発明では、基板の回転中心近傍から洗浄液および冷却ガスを供給すればよいのでノズルのスキャンを必要とせず、基板下面の洗浄処理にも好適に適用することが可能である。また、基板の上面側での処理と組み合わせて実行することも可能であり、この場合、上面側での処理としては本発明による洗浄技術、公知の凍結洗浄のいずれをも採用することが可能である。
【0018】
また、これらの基板洗浄装置においては、前記洗浄液を予めその凝固点近傍温度まで冷却する予冷手段を備えるようにしてもよい。こうすることで、冷却ガスによる洗浄液に対する冷却効果がより高まり、より高い基板の洗浄効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基板に洗浄液を供給しながら該洗浄液を冷却する冷却ガスを供給しているので、洗浄液による液膜形成後に該液膜を凍結させる技術に比べより高いスループットで、しかも高い洗浄効果で基板表面に付着したパーティクル等を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板洗浄装置としての基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについては公知の凍結洗浄技術によってパーティクル等の除去を行うのと同時に、基板表面Wfとは反対側の基板裏面Wbについては本発明にかかる洗浄技術によってパーティクル等の除去を行う基板処理装置である。
【0021】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに処理液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液を吐出する薬液吐出ノズル6と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材9が設けられている。処理液としては、薬液または純水やDIW(deionized water;脱イオン水)等の洗浄液などが用いられる。
【0022】
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0023】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0024】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0025】
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
【0026】
冷却ガス吐出ノズル3はガス供給部64(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給される。より具体的には、ガス供給部64に設けられた窒素ガス貯留部641から供給される窒素ガスが熱交換器642によりDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされ、こうして冷やされた窒素ガスが冷却ガスとして冷却ガス吐出ノズル3に供給される。冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに対向配置されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら該冷却ガス吐出ノズル3を基板の回転中心から外周部に向けて移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給できる。このとき、後述するように基板表面WfにDIWによる液膜が予め形成されていると、該液膜の全体を凍結させて基板表面Wfの全面にDIWの凍結膜を生成可能となっている。
【0027】
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。この二流体ノズルは、処理液としてのDIWと窒素ガスとを空中(ノズル外部)で衝突させてDIWの液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。
【0028】
また、スピンチャック2の外方には、第3の回動モータ67が設けられている。第3の回動モータ67には、第3の回動軸68が接続されている。また、第3の回動軸68には、第3のアーム69が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム69の先端に薬液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ67が駆動されることで、薬液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。薬液吐出ノズル6は薬液供給部61と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液が薬液吐出ノズル6に圧送される。
【0029】
なお、冷却ガス吐出ノズル3、二流体ノズル5および薬液吐出ノズル6ならびにこれらに付随するアームやその回動機構としては、例えば前記した特許文献1(特開2008−071875号公報)に記載されたものと同一構造のものを用いることができる。そこで、本明細書ではこれらの構成についてのより詳しい説明は省略する。
【0030】
スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
【0031】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0032】
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
【0033】
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は、ガス供給部64と接続されており、窒素ガス貯留部641から熱交換器642を通さずに供給される窒素ガスが乾燥ガスとして供給される。この実施形態では、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、ガス供給路95から遮断部材9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通した液供給管96が挿通されており、液供給管96の下端にノズル97が結合されている。液供給管96はDIW供給部62に接続されており、DIW供給部62よりDIWが供給され、ノズル97からDIWをリンス液として基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
【0034】
DIW供給部62はDIW貯留部621および熱交換器622を有しており、熱交換器622はDIW貯留部621から供給されるDIWをその凝固点近傍温度まで冷却する。すなわち、DIW供給部62はDIW貯留部621から供給される常温のDIW、または熱交換器622により凝固点近傍温度まで冷却されたDIWを供給可能となっている。
【0035】
スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに処理液を供給するための処理液供給管25が挿通されている。そして、回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。処理液供給管25およびガス供給路29は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けて処理液およびガスを吐出する下面ノズル27が設けられている。
【0036】
処理液供給管25は薬液供給部61およびDIW供給部62と接続されており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIWが選択的に供給される。一方、ガス供給路29は窒素ガス供給部64と接続されており、スピンベース23と基板裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガス供給部64からの窒素ガスを供給することができる。
【0037】
図3はスピンベースの構造を示す図である。より具体的には、図3(a)はスピンベース23の上面の構造を示す図であり、図3(b)はその断面図である。図3(a)に示すように、スピンベース23の上面23aの外周端部には複数のチャックピン24が立設されており、これらのチャックピン24によって処理対象となる基板Wを略水平に保持することができる。
【0038】
また、スピンベース上面23aの中心には下面ノズル27が設けられている。図3(a)および図3(b)に示すように、下面ノズル27は、基板の回転中心AOに向けて開口する第1吐出口271と、第1吐出口271と同軸にこれを取り巻くように開口する第2吐出口272とを備えている。第1吐出口271は処理液供給管25と連通しており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIWを基板下面(この実施形態ではパターンを形成されていない基板裏面Wb)に向けて吐出する。一方、第2吐出口272はガス供給路29と連通しており、窒素ガス供給部64からの窒素ガスを吐出する。したがって、吐出された窒素ガスは、基板下面のDIWを供給される位置、もしくはその位置を取り囲む周辺位置に向けて供給される。
【0039】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図4ないし図6を参照しつつ説明する。図4は図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。また、図5および図6は洗浄処理動作を示す模式図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここで、基板がその表面Wfに微細パターンを形成されたものである場合、該基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS101)。なお、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0040】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される(ステップS102)。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル97から常温のDIWを基板表面Wfに供給する。基板表面に供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される(ステップS103)。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
【0041】
この状態では、図5(a)に示すように、基板Wの表面Wfに所定厚さのパドル状液膜LPが形成されている。こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に退避させる(ステップS104)。その後、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbのそれぞれに対する以下の処理が併行して行われる。ここで、パドル状の液膜LPは、薬液吐出ノズル6から供給されるSC1液によって形成されてもよい。
【0042】
基板表面側では、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置から基板の回転中心の上方に移動させる。そして、図5(b)に示すように、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させていく(ステップS111)。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LPが冷やされて部分的に凍結し、図5(c)に示すように、凍結した領域(凍結領域FR)が基板表面Wfの中央部に形成される。そして、方向Dnへのノズル3のスキャンによって凍結領域FRは基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、図5(d)に示すように、最終的には基板表面Wfの液膜全面が凍結する。液膜全体が凍結すると、冷却ガス吐出ノズル3を退避させるとともに遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し(ステップS122)、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から基板表面Wfの凍結した液膜に向けて常温のDIWの供給を開始する。
【0043】
一方、基板裏面側では、スピンベース23に設けられた下面ノズル27の第1吐出口271からDIWを吐出して裏面洗浄液として基板裏面Wbに供給開始するとともに(ステップS121)、これと同時に、またはこれより少し遅れて、下面ノズル27の第2吐出口272から窒素ガスを吐出する(ステップS122)。その結果、図5(b)ないし(d)に示すように、基板裏面Wbの中心から外側に向かって広がるようにDIWによる液膜が形成され、最終的に基板端部でDIWが振り切られる。
【0044】
ここで、下面ノズル27から基板裏面Wbに供給されるDIWおよび窒素ガスは、それぞれ熱交換器622および642により冷却されたものである。後に詳述するが、本願発明者らの実験によれば、凝固点近傍温度まで冷やされたDIWと、DIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされたガス(冷却ガス)とを基板に向け吐出することによって、高いパーティクル除去効率を得ることができる。そして、冷却ガスの供給を所定時間、好ましくは基板表面側で液膜が完全に凍結するまでの間継続した後、冷却ガスの供給を停止する(ステップS123)。
【0045】
ここまでの処理が実行された時点では、図6(a)に示すように、基板Wが遮断部材9とスピンベース23との間に挟まれながら回転する状態で、基板Wの両面にDIWが供給されている。ここで、基板表面Wfに常温のDIWを供給するのに代えて、二流体ノズル5からDIWの液滴を供給するようにしてもよい。続いて基板両面へのDIWの供給をともに停止し(ステップS131)、基板を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS132)。すなわち、図6(b)に示すように、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル3から窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。このときに供給される窒素ガスは乾燥ガスとしての作用をするものであり、熱交換器642を通さない常温のガスである。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する(ステップS133)。
【0046】
上記処理によって得られる洗浄効果について説明する。まず、基板表面Wfに対する処理は、公知の凍結洗浄処理である。上記のようにして液膜を凍結させると、基板表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0℃の水が摂氏0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクルが微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減され、さらにはパーティクルが基板表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、液膜の体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しく、つまりパターンに加えられる力が相殺される。そのため、パターンの剥離や倒壊を防止しながら、パーティクルのみを基板表面Wfから剥離させることができる。そして、新たに供給するDIWによって凍結した液膜を除去することにより、パーティクル等についても基板表面Wfから取り除くことができる。
【0047】
一方、基板裏面側では、DIWの供給を連続的に行っているので、液膜は凍結せず基板中心から端部に向けて流動した状態を保っている。この点において、基板裏面Wbにおける洗浄作用は、凍結洗浄処理とは全く異なる原理によるものであるということができる。このような構成を採るに至った経緯について、以下説明する。
【0048】
図7は本願発明者らの行った実験を説明する図である。本願発明者らは、図7に示すように、シリコン基板の中心に向けて開口する第1吐出口2701とその周囲を取り囲むように開口する第2吐出口2702とを有するノズル270が回転する基板Wの回転中心軸AO上に配置され、第1吐出口2701からDIWを吐出させながら第2吐出口2702から冷却ガスを吐出させることが可能な実験装置を用いて、その動作条件を種々に変化させてパーティクル(主としてシリコン屑)に対する除去効果を調べた。
【0049】
より具体的には、図7の実験装置における標準の動作条件を下記:
DIW液温度: 0℃;
DIW流量 : 1.2L/min;
ガス流量 : 100L/min;
ガス温度 : −170℃;
基板回転数 : 750rpm;
処理時間 : 10sec、
として、DIWの液温度、冷却ガスの温度および基板の回転数を上記標準値から変化させたときのパーティクル除去率(PRE)を測定した。その結果の一例を図8ないし図10に示す。
【0050】
図8はDIWの液温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。まず、冷却ガスを吐出せずに(あるいは常温のガスを吐出しながら)DIWを基板Wに供給した場合、図8に三角印で示すように、DIWの液温度にかかわらずパーティクル除去率(PRE)は2〜3%程度であった。これに対し、図8に丸印で示すように、冷却ガス(−170℃)を供給しながらDIWを基板Wに供給すると、特にDIWの液温度が2℃以下の場合にPREの顕著な向上がみられた。
【0051】
図9は冷却ガスの温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。また、図10は基板の回転数とパーティクル除去率との関係を示す図である。DIWの液温度を一定(0℃)として冷却ガスの温度を種々に変化させてみると、図9に示すように、冷却ガスの温度が低いほど、高いPREを得られることがわかった。また、図10に示すように、基板の回転数が高いほどPREも高くなることが確認された。
【0052】
このように、基板Wに供給するDIWの液温度を凝固点近くまで冷却し、さらに冷却ガスとともに基板Wに供給することによって、単に常温のDIWを供給し続ける場合よりもはるかに高いパーティクル除去効果を得られることが明らかになった。また、処理条件を適切に設定すれば、凍結洗浄処理において得られるPREを上回る。特に、上記実験では10secという短い処理時間で高いPREを得ており、液膜形成、液膜凍結および凍結膜除去という工程を有する従来の凍結洗浄処理に比べて、処理のスループットという点で大きな優位性を有していると言える。
【0053】
このような処理によってパーティクルが除去されるメカニズムについて、液温度および冷却ガス温度が低いほどパーティクル除去効果が高く、さらに基板の回転数が高いほどパーティクル除去効果が高いという実験事実から、本願発明者らは次のようなモデルを考えた。
【0054】
図11はこの洗浄技術におけるパーティクル除去メカニズムのモデルを示す図である。図11(a)に示すように、未処理の基板Wの表面にはパーティクル等の汚染物質Pが分散している。本洗浄技術では、このような基板Wを回転させながら、凝固点近傍まで冷却されたDIWと、DIWの凝固点よりもさらに低温の冷却ガスとを供給する。このようにすると、ノズル27から基板Wに向けて吐出されたDIWは基板Wに到達する前後に冷却ガスによりさらに冷やされて局所的に凍結し、図11(b)に菱形印で示すように微小な氷塊CがDIW液中に生成する。氷塊Cを含むDIWは基板Wの回転に起因して生じる遠心力によって中心から端部に向けて基板表面に沿って流れる。このとき、DIW中の氷塊Cが基板W表面に付着したパーティクルPと衝突し、これを基板W表面から遊離させる。基板Wから遊離したパーティクルPはDIWの流れによって基板端部方向へ流され、最終的には端部において振り切られるDIW液滴とともに基板W表面から取り除かれる。
【0055】
この意味において、冷却ガスの温度については、裏面洗浄液(この実施形態ではDIW)の凝固点よりも低温であることが必要である。また、冷却ガスの温度が低いほど洗浄効果を高めることができる。
【0056】
また、液体中に固体を分散させた洗浄液を用いた技術とも考えることができるが、固体成分が洗浄液と同一の組成であり、しかも常温では液体であることから、洗浄後の基板上に固体成分が残留することがない。
【0057】
なお、この洗浄技術では、液膜全体を凍結させることなく流動する液体(DIW)によってパーティクルを除去している。このため、液体が回り込みにくい微細なパターンの内部に入り込んだパーティクルの除去については、依然として公知の凍結洗浄技術が有効である。その一方で、液温度、冷却ガス温度および基板の回転数を適宜に設定することにより、本発明にかかる洗浄技術では凍結洗浄技術よりも短時間でより高いPREを得ることができる。
【0058】
そこで、この実施形態では、微細なパターン内部に入り込んだパーティクルまで除去するとの観点から、パターン形成面である基板表面Wfについては凍結洗浄技術を適用する一方、パターンを形成されていない基板裏面Wbについては洗浄液膜を厚く形成することができないとの観点から、上記した原理に基づく洗浄技術を適用することとしている。こうすることにより、基板Wの表面Wf、裏面Wbのいずれにおいても効率よくパーティクルの除去を行うことができる。また、基板表面Wfに対する処理と、基板裏面Wbに対する処理とを同時に実行することができるので、短時間で基板の両面を洗浄することができる。
【0059】
また、この洗浄技術では、基板の中心付近に供給するDIWの周囲に冷却ガスを供給しており、こうして冷やされたDIWが遠心力によって基板の端部にまで広がることによって基板全面の洗浄が行われる。すなわち、この洗浄技術では、冷却ガスを吐出するノズルを基板の回転中心近傍に固定配置すればよく、ノズルを移動させる必要がない。このため、ノズルをスキャンさせることが構造上難しい基板の下面に対しても、良好に洗浄処理を行うことが可能である。
【0060】
以上のように、この実施形態では、略水平方向に保持され回転する基板Wの裏面Wbに対し、その下方に設けた下面ノズル27から裏面洗浄液としてのDIWおよびこれを冷却する冷却ガスとを吐出することによって基板裏面Wbの洗浄を行っている。ここで、冷却ガスの温度を裏面洗浄液の凝固点温度よりも低温とすることによって、短い処理時間で高いパーティクル除去効果を得ることができる。特に、洗浄液を供給しながら冷却ガスを供給するので、液膜形成、その凍結および除去を順番に行う凍結洗浄技術よりも高いスループットで処理を行うことが可能である。さらに、洗浄液であるDIWを予めその凝固点近くまで冷却しておくことにより、パーティクル除去効果をより高めることができる。
【0061】
なお、冷却ガスの供給開始タイミングについては、DIWの供給開始とほぼ同時またはこれより僅かに後とすることが望ましい。冷却ガスを供給せずにDIWのみを供給しても洗浄効果が上がらないことは先の実験結果から明らかである。一方、DIWの供給に先立って冷却ガスを供給した場合、供給先の基板が冷やされるため吐出されたDIWがすぐに凍結してしまうことが考えられる。したがって、冷却ガスはDIWの供給開始とほぼ同時、または吐出されたDIWが基板表面に到達するタイミングに合わせDIWの供給開始よりも僅かに遅れて供給開始されるのが最も効率的である。
【0062】
また、冷却ガスを先に停止しその後もDIWの供給を続けるようにすることで、基板から遊離したパーティクル等をより確実に基板表面から洗い流すことが可能である。この意味においては、DIWの供給を停止するよりも前に冷却ガスの供給を停止することが好ましい。
【0063】
また、この洗浄技術では、基板上の液膜を全面的に凍結させず洗浄液を流動させているので、洗浄液および冷却ガスを基板の中心近傍に供給し、しかも基板を回転させることにより、基板全面に洗浄液を行き渡らせて洗浄を行うことができる。すなわち、冷却ガスを吐出するノズルを移動させることなく、基板全面で高い洗浄効果を得ることができる。そして、ノズルの移動を必要としないことから、水平に保持された基板の下面に対しても高い洗浄効果を得ることができる。
【0064】
また、このように水平に保持された基板の上面に対して行う洗浄処理と同時に下面の洗浄を行うことにより、基板の両面を短時間に洗浄することができる。この場合において、基板の一方面にパターンを形成されているときには、該パターン形成面を上向きに保持し上面については公知の凍結洗浄技術を適用する一方、パターン形成面とは反対面を上記した洗浄技術により洗浄することにより、パターンの損傷を防ぎつつ、基板の両面を効率よく洗浄することができる。
【0065】
次に、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、基板Wの上面の洗浄については公知の凍結洗浄技術を適用する一方、下面の洗浄に本発明にかかる洗浄技術を適用していた。しかしながら、本発明の洗浄技術は、基板の下面を洗浄する際のみならず、基板の上面を洗浄する場合にも適用することが可能である。さらには、以下に説明する第2実施形態のように、基板の上面および下面の両方を同時に本発明にかかる洗浄技術により洗浄することも可能である。
【0066】
図12はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態の装置構成は、図1に示す第1実施形態と比べて冷却ガス吐出ノズルおよびこれに付随する機構が省かれていることを除けば基本的に同じであり、その動作が一部異なるのみである。そこで、ここでは第1実施形態の装置と同一の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
この実施形態の基板処理装置では、遮断部材9に接続されたガス供給路95に対し窒素ガス供給手段64から供給する窒素ガスを、熱交換器642を通した冷却ガスとこれを通さない乾燥ガスとに切り替えることができる。すなわち、遮断部材9の下面からは、常温の乾燥ガスおよびDIWの凝固点より低温の冷却ガスとを選択的に吐出可能となっている。同様に、遮断部材9の下面に設けられたノズル97からは、DIW供給部62から供給される常温のDIWと、熱交換器622により凝固点近くまで冷やされたDIWとを選択的に吐出可能となっている。
【0068】
図13は図12の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。この動作において、基板Wが搬入され、遮断部材9が基板との対向位置に近接配置されるまでは第1実施形態と同じである(ステップS201、S202)。続いて、遮断部材9およびスピンベース23を同一方向、同一回転速度で回転させながら、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベースに設けられた下面ノズル27からそれぞれ凝固点近傍温度まで冷却された洗浄液としてのDIWを基板の回転中心に向け供給開始する(ステップS203)。さらに、これとほぼ同時に、または少し遅れて、遮断部材9およびスピンベース23から冷却ガスの供給を開始する(ステップS204)。
【0069】
こうすることにより、第1実施形態の基板下面Wbでの現象として先に説明した、冷却ガスによりさらに冷却されたDIWが基板Wに沿ってその中心から端部に向けて流れるという現象が、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの双方で生じることとなる。前記したように、基板Wを回転させながら基板Wに供給するDIWを冷却ガスによって冷却することにより、短時間で高いパーティクル除去効果を挙げることができる。この実施形態では、基板の表面Wfおよび裏面Wbの双方についてこの洗浄方法を同時に実行しているので、基板Wの両面を短時間で効果的に洗浄することができる。
【0070】
冷却ガスの供給を所定時間継続した後その供給を停止し(ステップS206)、DIWのみを供給することにより、基板上に残留するパーティクル等をより確実に基板上から取り除くことができる。その後、第1実施形態と同様に、DIWの供給を停止し(ステップS207)、乾燥処理を行って基板を搬出することにより(ステップS207、S208)、基板Wに対する洗浄処理が完了する。
【0071】
この実施形態によれば、基板Wの両面について高いパーティクル除去効果を得ることができる。特に、基板Wの上面側についても本発明にかかる洗浄技術を適用しているので、液膜の形成とその凍結、除去を順番に行う凍結洗浄技術による場合よりも短時間で洗浄効果を得ることができる。これにより、洗浄処理のスループットを格段に向上させることができる。また、冷却ガスをスキャン吐出させるための機構を必要としないので、装置構成も小型で簡素なものとすることができる。この実施形態は、表裏いずれの面にもパターンを未形成である基板を洗浄するのに特に好適なものである。
【0072】
以上説明したように、これらの実施形態においては、基板処理装置(図1、図12)が本発明の「基板洗浄装置」に相当しており、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、DIW供給部62が本発明の「洗浄液供給手段」として機能しており、熱交換器622が本発明の「予冷手段」として機能している。また、これらの実施形態においては、窒素ガス供給部64が本発明の「冷却ガス供給手段」として機能しており、下面ノズル27が本発明の「ノズル」に相当している。
【0073】
また、これらの実施形態においては、図4のフローチャートにおけるステップS121、S122および図13のフローチャートにおけるステップS204が本発明の「洗浄液供給工程」に相当している。さらに、図4のフローチャートにおけるステップS132および図13のフローチャートにおけるステップS207が本発明の「洗浄液除去工程」に相当している。
【0074】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記各実施形態では、DIWを本発明の「洗浄液」としているが、洗浄液はこれに限定されない。例えば、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸などを用いたり、DIWに少量の界面活性剤を加えたものを洗浄液としてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、冷却ガスおよび乾燥ガスとして同一の窒素ガス貯留部から供給されて互いに温度を異ならせた窒素ガスを用いているが、乾燥ガスおよび冷却ガスとしては窒素ガスに限定されない。例えば、乾燥ガスおよび冷却ガスのいずれか一方または両方を乾燥空気や他の不活性ガスとしてもよい。特に、冷却ガスは洗浄液を冷却するものであって基板に直接触れるものではないので、冷却ガスとして乾燥空気を好適に使用することができる。
【0076】
また、上記各実施形態ではDIWを吐出する第1吐出口と冷却ガスを吐出する第2吐出口とを同軸構造としているが、このような構造に限定されるものではなく、例えば、基板の回転軸上に洗浄液を吐出する第1吐出口を設ける一方、冷却ガスを吐出する第2吐出口を第1吐出口の横に並べて配置してもよい。このような構造では冷却ガスが基板回転軸に対し非対称に吐出されることになるが、基板を回転させているので実質的には等方的に処理が行われる。
【0077】
また、上記各実施形態では、洗浄液としてのDIWと冷却ガスとしての窒素ガスが同じ方向へ、つまりいずれも基板に向けて吐出されるようにしているが、冷却ガスについては基板に向けて吐出する必要は必ずしもなく、基板に向けて吐出される洗浄液の液柱に向けて吐出されるようにしてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、DIW貯留部621および窒素ガス貯留部641をいずれも装置内部に内蔵しているが、洗浄液およびガスの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の洗浄液やガスの供給源を利用するようにしてもよい。また、これらを冷却するための既設設備がある場合には、該設備によって冷却された洗浄液やガスを利用するようにしてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有するものであるが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。また、これらの実施形態の装置は基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。
【0080】
また、上記第1実施形態は基板表面を公知の凍結洗浄技術で、基板裏面を本発明にかかる洗浄技術によって洗浄するものである。一方、上記第2実施形態は基板の両面を本発明にかかる洗浄技術によって洗浄するものである。しかしながら、本発明の実施の態様はこれらに限定されず、基板の片面のみを洗浄する場合にも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置、液膜凍結方法および該液膜凍結方法を用いた基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】スピンベースの構造を示す図である。
【図4】図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。
【図5】洗浄処理動作を示す第1の模式図である。
【図6】洗浄処理動作を示す第2の模式図である。
【図7】本願発明者らの行った実験を説明する図である。
【図8】DIWの液温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図9】冷却ガスの温度とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図10】基板の回転数とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【図11】この洗浄技術におけるパーティクル除去メカニズムのモデルを示す図である。
【図12】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図13】図12の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
2…スピンチャック(基板保持手段)
3…冷却ガス吐出ノズル
9…遮断部材
27…下面ノズル(ノズル)
62…DIW供給部(洗浄液供給手段)
622…熱交換器(予冷手段)
64…窒素ガス供給部(冷却ガス供給手段)
W…基板
Wf…基板表面(パターン形成面)
Wb…基板裏面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に向けて洗浄液を吐出供給しながら、吐出される洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する洗浄液供給工程と、
前記洗浄液供給工程の後に、前記基板の表面に残留する洗浄液を除去する洗浄液除去工程と
を備えることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液供給工程では、前記基板を略水平に保持しながら回転させるとともに、その回転中心に向けて前記洗浄液を供給する請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液供給工程では、前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給する請求項2に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液供給工程では、前記洗浄液と前記冷却ガスとを同時に供給開始する請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液供給工程では、前記洗浄液の供給を停止するよりも前に前記冷却ガスの供給を停止する請求項4に記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄液供給工程では、予め凝固点近傍温度まで冷却した前記洗浄液を前記基板に向け供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に対し洗浄液を吐出供給する洗浄液供給手段と、
前記洗浄液供給手段から吐出される前記洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と
を備え、前記冷却ガス供給手段は、前記洗浄液供給手段から前記洗浄液の供給中に、該洗浄液に対し前記冷却ガスを供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
前記基板保持手段は前記基板を略水平に保持しながら回転させるように構成され、前記洗浄液供給手段は前記基板の回転中心に向けて前記洗浄液を供給する請求項7に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記冷却ガス供給手段は前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給する請求項8に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記基板の回転軸上で前記基板に向けて開口する第1吐出口と、前記第1吐出口の近傍に開口する第2吐出口とを有するノズルを備え、
前記洗浄液供給手段から供給される前記洗浄液は前記ノズルの前記第1吐出口から吐出される一方、前記冷却ガス供給手段から供給される前記冷却ガスは前記ノズルの前記第2吐出口から吐出される請求項8または9に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
基板を略水平に保持しながら回転させる基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の回転中心に向けて洗浄液を吐出する第1吐出口および前記第1吐出口の近傍に設けられて前記洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを吐出する第2吐出口を有するノズルと
を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項12】
前記ノズルにおいて、前記第2吐出口は、前記第1吐出口と同軸に前記第1吐出口を取り囲むように設けられている請求項10または11に記載の基板洗浄装置。
【請求項13】
前記ノズルは、前記基板の下方に前記第1および第2吐出口を上向きにして設けられており、前記基板の下面に向けて前記洗浄液および前記冷却ガスを吐出する請求項10ないし12のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項14】
前記洗浄液を予めその凝固点近傍温度まで冷却する予冷手段を備える請求項7ないし13のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項1】
基板に向けて洗浄液を吐出供給しながら、吐出される洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する洗浄液供給工程と、
前記洗浄液供給工程の後に、前記基板の表面に残留する洗浄液を除去する洗浄液除去工程と
を備えることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液供給工程では、前記基板を略水平に保持しながら回転させるとともに、その回転中心に向けて前記洗浄液を供給する請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液供給工程では、前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給する請求項2に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液供給工程では、前記洗浄液と前記冷却ガスとを同時に供給開始する請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液供給工程では、前記洗浄液の供給を停止するよりも前に前記冷却ガスの供給を停止する請求項4に記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄液供給工程では、予め凝固点近傍温度まで冷却した前記洗浄液を前記基板に向け供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に対し洗浄液を吐出供給する洗浄液供給手段と、
前記洗浄液供給手段から吐出される前記洗浄液に対し該洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と
を備え、前記冷却ガス供給手段は、前記洗浄液供給手段から前記洗浄液の供給中に、該洗浄液に対し前記冷却ガスを供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
前記基板保持手段は前記基板を略水平に保持しながら回転させるように構成され、前記洗浄液供給手段は前記基板の回転中心に向けて前記洗浄液を供給する請求項7に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記冷却ガス供給手段は前記基板上における前記洗浄液の供給位置に向けてまたは該供給位置の周囲に向けて前記冷却ガスを供給する請求項8に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記基板の回転軸上で前記基板に向けて開口する第1吐出口と、前記第1吐出口の近傍に開口する第2吐出口とを有するノズルを備え、
前記洗浄液供給手段から供給される前記洗浄液は前記ノズルの前記第1吐出口から吐出される一方、前記冷却ガス供給手段から供給される前記冷却ガスは前記ノズルの前記第2吐出口から吐出される請求項8または9に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
基板を略水平に保持しながら回転させる基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の回転中心に向けて洗浄液を吐出する第1吐出口および前記第1吐出口の近傍に設けられて前記洗浄液の凝固点よりも低温の冷却ガスを吐出する第2吐出口を有するノズルと
を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項12】
前記ノズルにおいて、前記第2吐出口は、前記第1吐出口と同軸に前記第1吐出口を取り囲むように設けられている請求項10または11に記載の基板洗浄装置。
【請求項13】
前記ノズルは、前記基板の下方に前記第1および第2吐出口を上向きにして設けられており、前記基板の下面に向けて前記洗浄液および前記冷却ガスを吐出する請求項10ないし12のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項14】
前記洗浄液を予めその凝固点近傍温度まで冷却する予冷手段を備える請求項7ないし13のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−80584(P2010−80584A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245564(P2008−245564)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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