説明

多層配線の製造方法および多層配線

【課題】 溝配線形成の際の密着層カバレッジ不良とライナーエッチング後にボイドが発生することを同時に防止する。
【解決手段】 基板100上に、第1の配線層106a上での膜厚が第1の絶縁膜101上での膜厚よりも薄くなるように第2の絶縁膜107を形成する工程と、第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜108を形成する工程と、第3の絶縁膜を貫通して第2の絶縁膜に到達する接続孔109を、平面的に見て第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する工程と、接続孔の底面における第1の配線層とオーバーラップする領域では第1の配線層を露出するとともに、接続孔の底面における第1の配線層とオーバーラップしない領域では第2の絶縁膜が残存するように、接続孔の底面に露出した第2の絶縁膜をエッチング除去する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線の製造方法および多層配線、特に下層配線と上層配線とそれらを接続する接続孔を備えた多層配線の製造方法および多層配線に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化に伴う配線遅延低減のために、比抵抗の小さい配線材料としてCuが用いられるようになってきている。Cu配線を形成する一般的な手法としてダマシン技術が用いられている。この技術は、配線層間絶縁膜にビアホール、配線用溝等の凹部を形成した後に、スパッタ法、めっき法等を用いて導電膜を埋め込み、その後凹部以外の領域に形成されている導電膜を、化学的機械研磨法(CMP)を用いて除去することにより、配線を形成するものである。
【0003】
以下、従来の多層配線の製造方法について、図8,9を参照しながら説明する(例えば、特許文献1)。
【0004】
図8(a)に示すように、半導体基板100上に、SiOよりなる第1の絶縁膜101を堆積した後、絶縁膜101に対してリソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターンをマスクとして(図示省略)、絶縁膜101をドライエッチングする。このドライエッチングによって、図8(a)に示すように絶縁膜101に幅200nmの配線用溝102を形成する。
【0005】
次に、図8(b)に示すように、絶縁膜101上の全面にスパッタリング法を用いて、配線用溝102内に膜厚20nmの窒化タンタル膜からなる導電膜103、膜厚20nmのタンタル膜からなる導電膜104を順次堆積する。続いて、導電膜104の上にスパッタリング法を用いて膜厚100nmの銅からなる導電膜105を堆積する。
【0006】
次に、図8(c)に示すように、導電膜105をシード層として用い、電解めっき法を用いて導電膜105全面の上に配線用溝102が完全に埋め込まれるように銅膜106を形成する。その後、CMP法を用いて、形成された導電膜を配線用溝102内にのみ残すように、配線用溝102内以外の領域にある導電膜103,104,105,106を除去する。
【0007】
次に、図8(d)に示すように、CMP法によって平坦化された上面全体に膜厚150nmのSiからなる第2の絶縁膜107、続いて第2の絶縁膜107の上に膜厚900nmのSiOからなる第3の絶縁膜108、続いて反射防止膜としてシリコン酸窒化膜からなる第4の絶縁膜112を順次堆積する。その後、第3の絶縁膜108および第4の絶縁膜112に対してリソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターンをマスク(図示省略)として、第3の絶縁膜108および第4の絶縁膜112をドライエッチングを行い、底部が第2の絶縁膜107内に到達するように接続孔109を形成する。以下、本明細書ではこの工程のことをビアエッチングと称する。
【0008】
次に、図9(a)に示すように、リソグラフィー工程によりレジスト110を塗布し、接続孔109の周辺に配線溝形成用開口部パターンを形成すると共に、接続孔109の内部にレジスト110が埋め込まれて残存するようにパターニングを行う。
【0009】
続いて、図9(b)に示すように、レジスト110が残存した接続孔109を含む第3の絶縁膜108の配線溝形成用開口部をドライエッチングする。
【0010】
その後、図9(c)に示すように、アッシング、洗浄工程を経てレジスト110を除去することによって、絶縁膜108に幅200nm、深さ400nmの配線用溝111を形成する。以下、本明細書ではこの工程のことをトレンチエッチングと称する。
【0011】
続いて、図9(d)に示すように、第3の絶縁膜108および第4の絶縁膜112に対して全面ドライエッチングを行い、露出した接続孔109の底部の第2の絶縁膜をエッチング除去し、配線と接続する接続孔109を開口する。以下、本明細書ではこの工程のことをライナーエッチングと称する。
【特許文献1】特開2000−188329号公報
【特許文献2】特開平11−163127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の多層配線の製造方法においては、配線と接続孔のサイズが同じ(いわゆるボーダレスコンタクト)であると、図10(a)に示すように、重ね合わせずれが発生した場合、ライナーエッチング工程で接続孔の底部が溝配線上をはみ出す場合が発生し、この際抉れた形状をした隙間が形成される。
【0013】
このように隙間が形成された状態で、さらにライナーエッチング後の洗浄を行なうと、ボイドが発生する場合がある。これは、図10(b)に示すように、ライナーエッチング後の洗浄薬液が、主として希フッ酸を主原料とするもので構成されており、隙間に入った洗浄液が洗浄の工程で取り切れずに濃縮し、高濃度のフッ酸が形成されることによって、配線に隣接する酸化膜が溶出するためである。
【0014】
このボイドが発生した場合、後にスパッタリング法で密着層やシード層といった導電膜を堆積する際に段切れ等の不良が発生する。また、隣接する配線間のショート不良やCu配線の埋め込み不良が発生し、配線の信頼性が低下する可能性がある。
【0015】
かかる従来の多層配線の形成方法の課題を解決する方法として、配線上層にエッチング抑制層を形成する方法が特開平11−163127(特許文献2)に開示されている。この文献では、配線ドライエッチングの条件を変更することなく、配線構造を変えた配線形成方法が開示されている。
【0016】
ここでは、図11(1)に示すように、半導体基板11に窒化シリコン膜12を堆積し、その上に第1の絶縁層13を堆積する。続いて、エッチング抑制層14を堆積する。その後、通常のリソグラフィー法を用いてパターニング処理を行い、第1の絶縁層13とエッチング抑制層14を同時にエッチング処理し、溝配線15を形成する。その後、スパッタエッチング法によるクリーニング処理を行った後、遠距離スパッタ法を用いて上記配線溝15及びエッチング抑制層14にTi,TiNからなる密着層22を形成する。その後、金属配線23を配線溝15に埋め込む。
【0017】
次に、図11(2)に示すように、第2の絶縁層31を形成し、通常のリソグラフィー法とエッチングを行って開口部32を形成する。このとき、エッチング抑制層14は、第2の絶縁層31よりもエッチングし難い材料で形成されているため、開口部32が重ね合わせずれによって配線溝15からずれて形成されても、エッチングがエッチング抑制層14でストップするため、エッチングによるボイド形成を防止することができる。
【0018】
しかしながら、この多層配線の形成方法はエッチング抑制層14と第1の絶縁膜を同時にエッチング処理を行って配線溝の形成を行っているため、エッチング抑制層14に比べてエッチングレートの早い第1の絶縁層が、横方向にもエッチングされ、エッチング抑制層よりも開口部が横方向に広がる。この結果、エッチング抑制層が庇のような形状で残り、後にこの部分に形成される密着層やバリアメタルがエッチング抑制層14の下部で堆積せず、カバレッジ不良となる。これによりCu膜の埋め込む際に段切れ等が発生し、めっき不良を発生させることになる。
【0019】
したがって、本発明の目的は、前記に鑑み、溝配線形成の際の密着層カバレッジ不良とライナーエッチング後にボイドが発生することを同時に防止する多層配線構造及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の多層配線の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、前記基板上に、前記第1の配線層上での膜厚が前記第1の絶縁膜上での膜厚よりも薄くなるように第2の絶縁膜を形成する第4工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第5工程と、前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第6工程と、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第7工程とを含む。
【0021】
上記多層配線の製造方法によれば、第1の配線層上での膜厚が第1の絶縁膜上での膜厚よりも薄くなるように第2の絶縁膜を形成する第4工程を行うので、第2の絶縁膜の配線上での厚さを配線上以外での厚さよりも薄くしている。このため、ライナーエッチングを行って接続孔を開口する際に、配線上の接続孔部が先に開口するため、それ以外の領域の第2の絶縁膜は貫通することがないのでボイドは発生せず、高い信頼性を持った多層配線を形成することができる。
【0022】
請求項2記載の多層配線の製造方法は、請求項1記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程は、少なくとも水素を含有するガスを用いたプラズマ処理により前記第1の配線層の表面を不活性化する工程と、前記表面が不活性化された第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に前記第2の絶縁膜を堆積する工程とを含む。
【0023】
上記多層配線の製造方法によれば、第4工程は、少なくとも水素を含有するガスを用いたプラズマ処理により第1の配線層の表面を不活性化する工程を行うので、この処理により第1の配線層上での第2の絶縁膜の成長を抑制することができる。
【0024】
請求項3記載の多層配線の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、前記第1の絶縁膜の表面高さを前記第1の配線層の表面高さより低くする第4工程と、前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するとともに、前記第2の絶縁膜の表面を平坦化する第5工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第6工程と、前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第7工程と、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第8工程とを含む。
【0025】
上記多層配線の製造方法によれば、第1の絶縁膜の表面高さを第1の配線層の表面高さより低くする第4工程と、第1の配線層上および第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するとともに、第2の絶縁膜の表面を平坦化する第5工程とを行うので、配線上の第2の絶縁膜の厚さを、それ以外の領域の第2の絶縁膜よりも薄くしている。このため、ライナーエッチングを行って接続孔を開口する際に、溝配線上以外の領域の第2の絶縁膜を貫通することがないのでボイドは発生せず、高い信頼性を持った多層配線を形成することができる。また、第4工程において、溝配線外の領域の第2の絶縁膜の厚さを任意に調整することができるため、プロセスのオーバーエッチング量に伴う溝配線上以外の領域の第2の絶縁膜の削れ量に対応することが容易である点で優れている。
【0026】
請求項4記載の多層配線の製造方法は、請求項3記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程は、化学的機械研磨法あるいはドライエッチング法を用いて行う。
【0027】
上記多層配線の製造方法によれば、第4工程は、化学的機械研磨法あるいはドライエッチング法を用いて行うので、第1の絶縁膜の表面高さを第1の配線層の表面高さより低くすることができる。
【0028】
請求項5記載の多層配線の製造方法は、請求項3または4記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表面高さを前記第1の配線層の表面高さより少なくとも10nm以上低くする。
【0029】
請求項6記載の多層配線の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、前記第1の絶縁膜の表層を改質する第4工程と、前記第1の配線層上および前記表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第5工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第6工程と、前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第7工程と、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記改質された第1の絶縁膜の表層が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第8工程とを含み、前記第4工程では、改質された前記第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さい。
【0030】
上記多層配線の製造方法によれば、第1の絶縁膜の表層を改質する第4工程と、第1の配線層上および表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第5工程とを行い、第4工程では、改質された第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さくするので、第1の絶縁膜の表層を第2の絶縁膜と同等以下のエッチングレートの膜に改質させる。これにより、溝配線上の第2の絶縁膜の厚さが、それ以外の領域の第2の絶縁膜よりも実効的に薄くなる。そのため、ライナーエッチングを行って接続孔を開口する際に、溝配線上以外の領域の第1の絶縁膜をエッチングすることがないのでボイドは発生せず、高い信頼性を持った多層配線を形成することができる。また、プラズマ処理等によって溝配線上以外の領域において第1の絶縁膜よりもエッチングレートが低い層を形成することができるため、プロセスが簡単で容易であるという点が優れている。
【0031】
請求項7記載の多層配線の製造方法は、請求項6記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程は、少なくとも窒素を含有するガスを用いたプラズマ処理により前記第1の絶縁膜の表面を窒化処理する工程を含む。
【0032】
上記多層配線の製造方法によれば、第4工程は、少なくとも窒素を含有するガスを用いたプラズマ処理により第1の絶縁膜の表面を窒化処理する工程を含むので、この窒化処理を行うことによって、第1の絶縁膜の上層から窒化層が形成される。
【0033】
請求項8記載の多層配線の製造方法は、請求項6または7記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表層を少なくとも10nm以上の深さまで改質する。
【0034】
請求項9記載の多層配線の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、前記第1の配線層の表面高さを前記第1の絶縁膜の表面高さより低くする第4工程と、前記第1の絶縁膜の表層を改質する第5工程と、前記第1の配線層上および前記表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第6工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第7工程と、前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第8工程と、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記改質された第1の絶縁膜の表層が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第9工程とを含み、前記第5工程では、改質された前記第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さい。
【0035】
上記多層配線の製造方法によれば、第1の配線層の表面高さを第1の絶縁膜の表面高さより低くする第4工程と、第1の絶縁膜の表層を改質する第5工程と、第1の配線層上および表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第6工程とを行い、第5工程では、改質された第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さいので、配線上面を第1の絶縁膜の上面よりも低くし、第1の絶縁膜の表層を第2の絶縁膜と同等以下のエッチングレートの膜に改質させ、かつその上に第2の絶縁膜を堆積している。このため、溝配線上の第2の絶縁膜の厚さを、それ以外の領域の第2の絶縁膜よりも薄くすることができる。これによって、ライナーエッチングを行って接続孔を開口する際に、溝配線上以外の領域の第1の絶縁膜をエッチングすることがないのでボイドは発生せず、高い信頼性を持った多層配線を形成することができる。
【0036】
請求項10記載の多層配線の製造方法は、請求項9記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程は、化学的機械研磨法を用いて行う。
【0037】
上記多層配線の製造方法によれば、第4工程は、化学的機械研磨法を用いて行うので、1の配線層の表面高さを第1の絶縁膜の表面高さより低くすることができる。
【0038】
請求項11記載の多層配線の製造方法は、請求項9または10記載の多層配線の製造方法において、前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表層を少なくとも10nm以上の深さまで改質する。
【0039】
請求項12記載の多層配線は、基板上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜中の配線溝内に形成された第1の配線層と、前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に形成された第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜と、前記第3の絶縁膜および前記第2の絶縁膜を貫通し、前記第1の配線層に到達する接続孔とを含み、前記接続孔は、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成され、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存している。
【0040】
上記多層配線によれば、請求項1または3記載の多層配線の製造方法で製造でき、同様の効果が得られる。
【0041】
請求項13記載の多層配線は、請求項12記載の多層配線において、前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の配線層上での膜厚が前記第1の絶縁膜上での膜厚よりも薄くなるように形成されている。
【0042】
請求項14記載の多層配線は、基板上に形成され、表層が改質された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜中の配線溝内に形成された第1の配線層と、前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に形成された第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜と、前記第3の絶縁膜および前記第2の絶縁膜を貫通し、前記第1の配線層に到達する接続孔とを備え、前記接続孔は、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成され、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記第1の絶縁膜の改質された表層が残存している。
【0043】
上記多層配線によれば、請求項6または9記載の多層配線の製造方法で製造でき同様の効果が得られる。
【0044】
請求項15記載の多層配線は、請求項14記載の多層配線において、前記第1の絶縁膜の改質された表層は、Si、Oを含有し、N、Cのうちいずれか1つを含む。
【0045】
請求項16記載の多層配線は、請求項14または15記載の多層配線において、前記第1の絶縁膜の改質された表層のエッチングレートは、前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さい。
【0046】
請求項17記載の多層配線は、請求項12,13,14,15または16記載の多層配線において、前記第2の絶縁膜は、前記第1および第3の絶縁膜よりもエッチングされ難く、前記第2の絶縁膜に対する前記第1または第3の絶縁膜のエッチングレートの選択比は少なくとも2以上である。
【0047】
請求項18記載の多層配線は、請求項12,13,14,15,16または17記載の多層配線において、前記第1および第3の絶縁膜は、フッ素含有シリコン酸化膜または有機無機ハイブリッド膜よりなる。
【0048】
請求項19記載の多層配線は、請求項12,13,14,15,16,17または18記載の多層配線において、前記第2の絶縁膜は、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、炭化シリコン膜のうちいずれか1つまたはそれらのうちの2つ以上の積層膜よりなる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、接続孔が配線とずれが生じた場合でも、接続孔を開口するライナーエッチングの際に、接続孔の底部は必ず上層の第2の絶縁膜内または改質された第1の絶縁膜の表層内に形成されることになる。つまり、ライナーエッチングで、下層の第1の絶縁膜がエッチングされることがないため、第1の絶縁膜に抉れた部分が発生しない。そのため、洗浄工程による酸化膜消失といった不良や、導電膜の埋め込み不良が発生するといった不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る多層配線の製造方法について図1〜図3に基づいて説明する。
【0051】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板100上に、例えばCVD法により膜厚1000nmのシリコン酸化膜からなる第1の絶縁膜101を堆積した後、絶縁膜101に対してリソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして、絶縁膜101の所定領域をドライエッチングし、溝幅200nm、溝深さ400nmの配線用溝102を形成する。
【0052】
次に、図1(b)に示すように、配線用溝102内を含む絶縁膜101の全面にスパッタリング法を用いて膜厚20nmの窒化タンタル膜からなる導電膜103、膜厚20nmのタンタル膜からなる導電膜104を堆積する。続いて、導電膜104の上にスパッタリング法を用いて膜厚100nmの銅膜からなる導電膜105を堆積する。
【0053】
次に、図1(c)に示すように、導電膜105をシード層として電解めっき法により該シード層の上に銅膜からなる導電膜106を、配線用溝が完全に埋まるように成長させる。このとき、配線用溝102が完全に埋まるように、配線用溝領域以外の銅膜の成長速度が抑制するように、成長抑制剤を添加する。
【0054】
次に、図1(d)に示すように、CMP法を用いてタンタル膜又は窒化タンタル膜のそれぞれの銅膜に対する研磨速度が1:40となるような研磨条件を用いて、銅膜を除去する。その後、タンタル膜又は窒化タンタル膜のそれぞれのシリコン酸化膜に対する研磨速度が40:1となるような研磨条件を用いて、タンタル膜、窒素タンタル膜をCMP法で研磨し、配線用溝領域以外の導電膜を完全に除去する。このようにして、埋め込み配線を完成させる。
【0055】
次に、図1(e)に示すように、水素プラズマ処理を用いて銅配線106aの上部を不活性化した後、窒化シリコン膜からなる膜厚150nmの第2の絶縁膜107を例えばプラズマCVD法で堆積する。ここで、水素プラズマ処理を用いて銅配線106aの上部を不活性化する理由は、この処理により銅配線106a上での窒化シリコン膜の成長を抑制するためである。これについては、後に詳細を説明する。
【0056】
上記プラズマ窒化膜の成長条件の一例としては、プロセスガスにSiH:500sccm、N:1400sccmとを用い、膜成長時の圧力を2Torr、装置のRFパワーを600Wに設定した。
【0057】
上記水素プラズマ処理条件の一例としては、プラズマ導入ガスにH:200sccmとAr:800sccmとを用い、チャンバー雰囲気の圧力を2Torr、基板温度を400℃に設定した。
【0058】
このようにして、溝配線106a上の第2の絶縁膜107の成長レートを低下させることによって、溝配線106a上の第2の絶縁膜107の膜厚は約110nmとなり、溝配線106a上の第2の絶縁膜107の厚さを溝配線上以外の領域の第2の絶縁膜107の厚さ150nmよりも薄く形成することができる。
【0059】
次に、図1(f)に示すように、シリコン酸化膜からなる膜厚900nmの第3の絶縁膜108を例えばCVD法で堆積し、続いて反射防止膜としてシリコン酸窒化膜からなる膜厚60nmの第4の絶縁膜112を例えばプラズマCVD法を用いて堆積する。続いて、リソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして、絶縁膜108,112をドライエッチングし、開口径200nmの接続孔を形成する。このとき、第2の絶縁膜107に対する第3の絶縁膜108のエッチング選択比が10以上となるドライエッチング条件を適用する。これにより、第2の絶縁膜107はほとんど削れず、接続孔の底部は第2の絶縁膜107内に形成される。
【0060】
上記ドライエッチング条件の一例としては、エッチングガスにC:20sccmとAr:600sccm、O:20sccmとを用い、エッチング雰囲気の圧力を15Pa、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、RFパワーを上部電極1600W、下部電極800W、基板温度を20℃に設定した。
【0061】
次に、図2(a)に示すように、リソグラフィー工程によりレジスト110を塗布し接続孔109の周辺に配線溝形成用開口部パターンを形成すると共に、接続孔109の内部にレジスト110が埋め込まれて残存するようにパターニングを行う。
【0062】
このレジストパターニングでは、配線溝を形成する部分に焦点を合わせるために接続孔109周辺部に配線溝のパターンを形成することができ、かつ接続孔内では露光の焦点が合わないために、ホールの中央部よりも底部に近い側にレジスト110を残存させることができる。
【0063】
次に、図2(b)に示すように、配線溝形成用開口部パターンをマスクとして絶縁膜108,112をドライエッチングし、幅200nm、深さ400nmの配線用溝111を形成する。
【0064】
上記ドライエッチング条件の一例としては、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、エッチングガスにC:25sccmとAr:600sccm、O:20sccmとを用い、エッチング雰囲気の圧力を10Pa、RFパワーを上部電極1500W、下部電極800W、基板温度を50℃に設定した。
【0065】
次に、図2(c)に示すように、アッシング、洗浄工程を経てレジスト110を除去する。これにより、接続孔内に残存していたレジストが除去される。その後、接続孔内に露出した絶縁膜107をドライエッチングすることによって、接続孔を開口する。
【0066】
上記ドライエッチング条件の一例としては、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、エッチングガスにCHF:10sccmとAr:600sccm、O:10sccmとを用い、エッチング雰囲気の圧力を15Pa、エッチング装置のRFパワーを上部電極1100W、下部電極800W、基板温度を20℃に設定した。
【0067】
以降は、溝配線106aを形成した手法と同様の手法を用いて銅配線を形成することによって溝配線を形成し、接続孔と上層配線を形成することができる。
【0068】
第1の実施形態によると、第2の絶縁膜107の堆積直後の厚さは、下層配線の第1の溝配線106a上の厚さが110nm、溝配線外の厚さが150nmとなる。
【0069】
これは、図3に示す水素プラズマ処理時間とSiN膜成長レートの関係から次のように説明することができる。溝配線にプラズマ処理を実施した場合、処理を実施していないサンプルに比べて、溝配線上の初期のSiN膜の堆積レートが低いことがわかる。これは、水素処理を行うことで、Si基板上の水素終端効果と同様に金属表面の未結合手が終端されて、不活性状態になる。このことにより、銅配線上の初期に堆積する窒化シリコン膜の成長レートが抑制される。その結果、銅配線上の窒化シリコン膜が銅配線上以外の窒化シリコン膜厚よりも薄く形成される。
【0070】
なお、表面に異物が付着することを防止するために、水素プラズマ処理と窒化膜の堆積は同一チャンバーで実施することが望ましい。このことにより、第2の絶縁膜107の堆積直後の厚さは、下層配線の第1の溝配線106a上の厚さが110nm、溝配線106a外の厚さが150nmとなる。
【0071】
ビアエッチングのオーバーエッチングでたとえ第2の絶縁膜107が10nm程度削れても、図2(c)に示すように、第2の絶縁膜107は溝配線106a上で膜厚が100nm、溝配線上以外で膜厚が140nmとなる。さらに、下層配線の溝配線106aと接続孔109を開口するライナーエッチングを行う際に、開口不良をなくすために20%のオーバーエッチングをかけても、第2の絶縁膜107の削れ量は120nmであり、第2の絶縁膜107の溝配線106a外での膜厚は20nmとなり、第2の絶縁膜107が第1の絶縁膜101上に残り、ボイド等の発生を完全に防止することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、接続孔の上部に配線が形成されている場合について説明したが、接続孔単独であっても同様の効果が得られる。
【0073】
なお、第1の絶縁膜101、第3の絶縁膜108としては、例えばSiOF(フッ素含有シリコン酸化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)等の低誘電率膜や有機無機ハイブリッド膜等を単層ないし積層膜を用いることができる。特に、低誘電率膜を使用すると、配線間容量を低減することができるため好ましい。
【0074】
また、第2の絶縁膜107として、窒化シリコン膜に代えて、例えば誘電率の低いSiON(シリコン酸窒化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)、SiC(炭化シリコン膜)を用いることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る多層配線の製造方法について図4に基づいて説明する。
【0075】
まず、実施形態1と同様の方法に従い、図4(a)に示すように、配線用溝102までを形成する。
【0076】
次に、図4(b)に示すように、CMP法を用いて酸化シリコン膜の銅膜に対する研磨速度が40:1となるような研磨条件を用いて、第1の絶縁膜101を研磨し溝配線106aの上面を第1の絶縁膜101よりも約50nm上面に露出させる処理を行う。
【0077】
従来の実施例では、配線用溝に導電膜を堆積し、導電膜を残すように研磨を実施するだけであり、溝配線の上面は第1の絶縁膜よりも下面に形成されており、この点が本発明と大きく異なる点である。
【0078】
次に、図4(c)に示すように、窒化シリコン膜からなる膜厚200nmの第2の絶縁膜107を例えばプラズマCVD法で堆積する。その後、CMP法を用いて第2の絶縁膜107を約100nm研磨し、平坦化処理を施す。これにより、溝配線106a上では窒化シリコン膜は約50nm、第1の絶縁層101上では窒化シリコン膜は約100nm堆積していることになる。
【0079】
次に、図4(d)に示すように、シリコン酸化膜からなる膜厚900nmの第3の絶縁層108を例えばCVD法で堆積し、続いて反射防止膜としてシリコン酸窒化膜からなる膜厚60nmの第4の絶縁膜112を例えばプラズマCVD法を用いて堆積する。続いて、絶縁膜108,112に対してリソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして、絶縁膜108,112をドライエッチングし、開口径200nmの接続孔109を形成する。このとき、第2の絶縁膜107に対する第3の絶縁膜108のエッチングの選択比は、10以上となるドライエッチング条件を適用する。これにより、第2の絶縁膜107はほとんど削れない。
【0080】
上記ドライエッチング条件の一例としては、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、エッチングガスにC:20sccmとAr:600sccm、O:20sccmとを用い、エッチング雰囲気の圧力を15Pa、上部電極のRFパワーを1500W、下部電極のRFパワーを800W、基板温度を20℃に設定した。
【0081】
以降の工程は、第1の実施形態と同様の手法を用いて処理し、図4(e)に示す多層配線を形成する。
【0082】
第2の実施形態によると、第2の絶縁膜107を堆積し研磨した直後の厚さは、下層配線の溝配線106a上での厚さが50nm、溝配線以外での厚さが100nmとなる。
【0083】
ビアエッチングのオーバーエッチングでたとえSiN膜厚が10nm程度削れても、図4(d)に示すように、第2の絶縁膜107は溝配線106a上で膜厚が40nm、溝配線上以外で膜厚が90nmとなる。さらに、下層配線の溝配線106aと接続孔109を開口するライナーエッチングを行う際に、開口不良をなくすために20%のオーバーエッチングをかけても、第2の絶縁膜107の削れ量は48nmであり、溝配線106a上以外の領域では、溝配線の上面から8nm程度しか削れないため、ボイド不良の発生を完全に防止することができる。
【0084】
本実施形態では第1の絶縁膜101を研磨し溝配線106aの上面を第1の絶縁膜101よりも上面に露出させる工程において、溝配線外の領域の第2の絶縁膜107の厚さを任意に調整することができる。このため、プロセスのオーバーエッチング量に伴う溝配線上以外の領域の第2の絶縁膜107の削れ量に対応することが容易である点で優れている。
【0085】
なお、第1の絶縁膜101、第3の絶縁膜108としては、例えばSiOF(フッ素含有シリコン酸化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)等の低誘電率膜や有機無機ハイブリッド膜等を単層ないし積層膜を用いることができる。特に、低誘電率膜を使用すると、配線間容量を低減することができるため好ましい。
【0086】
また、第2の絶縁膜107として、窒化シリコン膜に代えて、例えば誘電率の低いSiON(シリコン酸窒化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)、SiC(炭化シリコン膜)を用いることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る多層配線の製造方法について図5および図6に基づいて説明する。
【0087】
まず、実施形態1と同様の方法に従い、図5(a)に示すように、配線用溝102までを形成する。
【0088】
次に、図5(b)に示すように、窒素プラズマ処理を用いて第1の絶縁膜101の上部を窒化処理する。この窒化処理を行うことによって、第1の絶縁膜の101の上層から約40nmの窒化層107Aが形成される。
【0089】
上記窒素プラズマ処理条件の一例としては、プラズマ導入ガスにN:1400sccmとAr:800sccmとを用い、チャンバー雰囲気の圧力を2Pa、基板温度を400℃に設定した。
【0090】
次に、図5(c)に示すように、窒化シリコン膜からなる膜厚150nmの第2の絶縁膜107を例えばプラズマCVD法で堆積する。このようにすることによって、配線用溝102上の第2の絶縁膜107の厚さは150nm、配線用溝102上以外の領域では約40nmの窒化層107Aと150nmの第2の絶縁膜107を合わせた190nmの膜が形成されている。続いて、シリコン酸化膜からなる膜厚900nmの第3の絶縁膜108を例えばCVD法で堆積し、続いて反射防止膜としてシリコン酸窒化膜からなる膜厚60nmの第4の絶縁膜112を例えばプラズマCVD法を用いて堆積する。
【0091】
続いて、リソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして、第3の絶縁膜108および第4の絶縁膜112をドライエッチングし、開口径200nmの接続孔109を形成する。このとき、第2の絶縁膜107に対する第3の絶縁膜108のエッチングの選択比が10以上となるドライエッチング条件を適用する。これにより、第2の絶縁膜107はほとんど削れない。
【0092】
上記ドライエッチング条件の一例としては、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、エッチングガスにC:20sccmとAr:600sccm、O:20sccmとを用い、RFパワーを上部電極1500W、下部電極800W、エッチング雰囲気の圧力を15Pa、基板温度を20℃に設定した。
【0093】
以降の工程は、第1の実施形態と同様の手法を用いて処理し、図5(d)に示す多層配線を形成する。
【0094】
第3の実施形態によると、第1の絶縁膜101の表層に窒化層107Aを形成することができる。この窒化層107Aの深さについて、図6に窒素プラズマ処理時間との関係を示す。
【0095】
図6からプラズマ処理時間が長くなるにつれて、窒化が第1の絶縁膜の深さ方向に進行することがわかるが、30sec以上処理が進むと窒化の進行が止まる。これは、第1の絶縁膜101の表層の窒化が完了し緻密な膜が形成されたためと考えられる。この窒素プラズマ処理によって第1の絶縁膜101の上層から約40nmの窒化層107Aが形成される。
【0096】
また、窒素プラズマ処理により第1の配線106aの表面は窒化されるが、接続孔109を開口するライナーエッチング工程で、配線表面の窒化層は除去されるため、配線層間の導通は確保され、問題はない。
【0097】
堆積直後の第2の絶縁膜107の膜厚は150nmであるが、ビアエッチングのオーバーエッチングでSiN膜厚が10nm程度削れるため、図5(c)に示すように、第2の絶縁膜107の厚さは140nmとなる。続いて、下層配線の第1の溝配線106aと接続孔109を開口するライナーエッチングを行う際に、開口不良をなくすために20%のオーバーエッチングをかけると、第2の絶縁膜107の削れ量は168nmとなる。しかし、溝配線106a上以外の領域では、第2の絶縁膜107をエッチングした後に窒化層107Aが存在しており、この窒化層107Aのエッチングレートは第2の絶縁膜107とほぼ同等であるため28nm程度しか削れず、その結果、窒化層107Aが12nm残り、接続孔109の底部は第1の絶縁膜101まで到達せず、ボイド不良の発生を完全に防止することができる。
【0098】
もし、窒化層107Aがなければボイドが発生し、その結果、導電膜103,104,105を堆積するときに段切れ等が発生するためボイド不良となる。
【0099】
第3の実施形態では、プラズマ処理によって溝配線106a上以外の領域において第1の絶縁膜101よりもエッチングレートが低い層を形成することができるため、第2の実施形態に比べ、プロセスが簡単で容易であるという点が優れている。
【0100】
なお、本実施形態では、接続孔109の上部に配線が形成されている場合について説明したが、接続孔単独であっても同様の効果が得られる。
【0101】
なお、第1の絶縁膜101、第3の絶縁膜108としては、例えばSiOF(フッ素含有シリコン酸化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)等の低誘電率膜や有機無機ハイブリッド膜等を単層ないし積層膜を用いることができる。特に、低誘電率膜を使用すると、配線間容量を低減することができるため好ましい。
【0102】
また、第2の絶縁膜107として、窒化シリコン膜に代えて、例えば誘電率の低いSiON(シリコン酸窒化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)、SiC(炭化シリコン膜)を用いることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施の形態に係る多層配線の製造方法について図7に基づいて説明する。
【0103】
まず、実施形態1と同様の方法に従い、図7(a)に示すように、配線用溝102までを形成する。
【0104】
次に、図7(b)に示すように、CMP法を用いて銅膜の酸化シリコン膜に対する研磨速度が40:1となるような研磨条件を用いて、溝配線106aを研磨し溝配線106aの上面を第1の絶縁膜101よりも約40nm下面に研磨させる処理を行う。
【0105】
次に、第3の実施形態と同様に、図7(c)に示すように、窒素プラズマ処理を用いて第1の絶縁膜101の上部を窒化処理する。この窒素プラズマ処理によって第1の絶縁膜101の上面から約40nmの窒化層107Aが形成される。
【0106】
次に、図7(d)に示すように、窒化シリコン膜からなる膜厚150nmの第2の絶縁膜107を例えばプラズマCVD法で堆積する。このようにすることによって、配線用溝102上の第2の絶縁膜107の膜厚は150nm、配線用溝102上以外の領域では約40nmの窒化層107Aと150nmの第2の絶縁膜107を合わせた190nmの膜が形成されている。
【0107】
続いて、シリコン酸化膜からなる膜厚900nmの第3の絶縁膜108を例えばCVD法で堆積し、続いて反射防止膜としてシリコン酸窒化膜からなる膜厚60nmの第4の絶縁膜112(図5(c)等参照)を例えばプラズマCVD法を用いて堆積する。
【0108】
続いて、リソグラフィー工程を経て形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして、第3の絶縁膜108および第4の絶縁膜112をドライエッチングし、開口径200nmの接続孔を形成する。このとき、第2の絶縁膜107に対する第3の絶縁膜108のエッチングの選択比が10以上となるドライエッチング条件を適用する。これにより、第2の絶縁膜107はほとんど削れない。
【0109】
上記ドライエッチング条件の一例としては、2周波RIE方式のエッチング装置を用い、エッチングガスにC:20sccmとAr:600sccm、O:20sccmとを用い、RFパワーを上部電極1500W、下部電極800W、エッチング雰囲気の圧力を15Pa、基板温度を20℃に設定した。
【0110】
以降の工程は、第1の実施形態と同様の手法を用いて処理し、図7(e)に示す多層配線を形成する。
【0111】
第4の実施形態によると、第2の絶縁膜107の堆積直後の厚さは、下層配線の第1の溝配線106a上での厚さが150nm、溝配線外の厚さが、第2の絶縁膜107が150nm、窒化層107Aが40nmとなり、合わせて190nmとなる。
【0112】
ビアエッチングのオーバーエッチングでたとえ第2の絶縁膜107が10nm程度削れても、図7(d)に示すように、溝配線106a上で膜厚が140nm、溝配線上以外で膜厚が180nmとなる。さらに、下層配線の溝配線106aと接続孔を開口するライナーエッチングを行う際に、開口不良をなくすために20%のオーバーエッチングをかけても、第2の絶縁膜107と窒化層107Aの削れ量は合わせて168nmであり、溝配線上以外での膜厚は12nmとなり、第2の絶縁膜107が第1の絶縁膜101上に残る。このため、ボイド等の発生を完全に防止することができる。なお、このとき第2の絶縁膜107と窒化層107Aのエッチングレートはほぼ同等である。また、仮にオーバーエッチング量が多くなり溝配線上以外でも第2の絶縁膜107が残存しない状態になっても、下層の窒化層107Aは残存する。このため、ボイド等の発生を完全に防止することができる。
【0113】
また、第4の実施形態では、図7(b)におけるCMP法による溝配線106aの高さ制御および図7(c)における窒化層107Aの膜厚制御により、窒化層107Aが第1の溝配線106a表面の高さよりも上にのみ形成されるように制御することが可能である。このようにすれば、溝配線106aの横部に窒化層107Aが形成されない。このため、隣接する配線との層間容量を上昇させることがないという効果が得られる。
【0114】
なお、本実施形態では、接続孔109の上部に配線が形成されている場合について説明したが、接続孔単独であっても同様の効果が得られる。
【0115】
なお、第1の絶縁膜101、第3の絶縁膜108としては、例えばSiOF(フッ素含有シリコン酸化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)等の低誘電率膜や有機無機ハイブリッド膜等を単層ないし積層膜を用いることができる。特に、低誘電率膜を使用すると、配線間容量を低減することができるため好ましい。
【0116】
また、第2の絶縁膜107として、窒化シリコン膜に代えて、例えば誘電率の低いSiON(シリコン酸窒化膜)、SiOC(炭素含有シリコン酸化膜)、SiC(炭化シリコン膜)を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る多層配線の製造方法および多層配線は、溝配線形成の際の密着層カバレッジ不良とライナーエッチ後にボイドが発生することを同時に防止できるものであり、特に下層配線と上層配線とそれらを接続する接続孔を備えた多層配線の製造方法および多層配線において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る多層配線の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図2】図1の次の各工程を示す断面図である。
【図3】SIN堆積時間とSiN堆積膜厚の関係をHプラズマ処理を実施したものと、していないものを比較した図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る多層配線の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る多層配線の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】窒化処理時間と第1の絶縁膜の表層の窒化量を示した図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る多層配線の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図8】従来の多層配線の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】図8の次の各工程を示す断面図である。
【図10】(a)、(b)は、従来の多層配線の製造方法により発生した不良の断面模式図である。
【図11】(1)、(2)は、先行文献の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0119】
100 半導体基板
101 第1の絶縁膜
102 配線用溝第1の絶縁膜
103 窒化タンタル膜
104 タンタル膜
105 銅膜
106 銅膜
107 第2の絶縁膜(Si)
108 第3の絶縁膜(SiO)
109 接続孔
110 レジスト
111 配線用溝
112 第4の絶縁膜(SiON)
107A 窒化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、
前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、
前記基板上に、前記第1の配線層上での膜厚が前記第1の絶縁膜上での膜厚よりも薄くなるように第2の絶縁膜を形成する第4工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第5工程と、
前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第6工程と、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第7工程とを含む多層配線の製造方法。
【請求項2】
前記第4工程は、少なくとも水素を含有するガスを用いたプラズマ処理により前記第1の配線層の表面を不活性化する工程と、前記表面が不活性化された第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に前記第2の絶縁膜を堆積する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の多層配線の製造方法。
【請求項3】
基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、
前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、
前記第1の絶縁膜の表面高さを前記第1の配線層の表面高さより低くする第4工程と、
前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するとともに、前記第2の絶縁膜の表面を平坦化する第5工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第6工程と、
前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第7工程と、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第8工程とを含む多層配線の製造方法。
【請求項4】
前記第4工程は、化学的機械研磨法あるいはドライエッチング法を用いて行うことを特徴とする請求項3記載の多層配線の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表面高さを前記第1の配線層の表面高さより少なくとも10nm以上低くすることを特徴とする請求項3または4記載の多層配線の製造方法。
【請求項6】
基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、
前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、
前記第1の絶縁膜の表層を改質する第4工程と、
前記第1の配線層上および前記表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第5工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第6工程と、
前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第7工程と、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記改質された第1の絶縁膜の表層が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第8工程とを含み、
前記第4工程では、改質された前記第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さいことを特徴とする多層配線の製造方法。
【請求項7】
前記第4工程は、少なくとも窒素を含有するガスを用いたプラズマ処理により前記第1の絶縁膜の表面を窒化処理する工程を含むことを特徴とする請求項6記載の多層配線の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表層を少なくとも10nm以上の深さまで改質することを特徴とする請求項6または7記載の多層配線の製造方法。
【請求項9】
基板上に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の絶縁膜中に第1の配線溝を形成する第2工程と、
前記第1の配線溝内に導電膜を埋め込み、第1の配線層を形成する第3工程と、
前記第1の配線層の表面高さを前記第1の絶縁膜の表面高さより低くする第4工程と、
前記第1の絶縁膜の表層を改質する第5工程と、
前記第1の配線層上および前記表層が改質された第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する第6工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する第7工程と、
前記第3の絶縁膜を貫通して前記第2の絶縁膜に到達する接続孔を、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成する第8工程と、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップする領域では前記第1の配線層を露出するとともに、前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記改質された第1の絶縁膜の表層が残存するように、前記接続孔の底面に露出した前記第2の絶縁膜をエッチング除去する第9工程とを含み、
前記第5工程では、改質された前記第1の絶縁膜の表層のエッチングレートが前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さいことを特徴とする多層配線の製造方法。
【請求項10】
前記第4工程は、化学的機械研磨法を用いて行うことを特徴とする請求項9記載の多層配線の製造方法。
【請求項11】
前記第4工程では、前記第1の絶縁膜の表層を少なくとも10nm以上の深さまで改質することを特徴とする請求項9または10記載の多層配線の製造方法。
【請求項12】
基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜中の配線溝内に形成された第1の配線層と、
前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜および前記第2の絶縁膜を貫通し、前記第1の配線層に到達する接続孔とを含み、
前記接続孔は、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成され、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では前記第2の絶縁膜が残存していることを特徴とする多層配線。
【請求項13】
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の配線層上での膜厚が前記第1の絶縁膜上での膜厚よりも薄くなるように形成されている請求項12記載の多層配線。
【請求項14】
基板上に形成され、表層が改質された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜中の配線溝内に形成された第1の配線層と、
前記第1の配線層上および前記第1の絶縁膜上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜および前記第2の絶縁膜を貫通し、前記第1の配線層に到達する接続孔とを備え、
前記接続孔は、平面的に見て前記第1の配線層と少なくとも一部がオーバーラップする位置に形成され、
前記接続孔の底面における前記第1の配線層とオーバーラップしない領域では少なくとも前記第1の絶縁膜の改質された表層が残存していることを特徴とする多層配線。
【請求項15】
前記第1の絶縁膜の改質された表層は、Si、Oを含有し、N、Cのうちいずれか1つを含む請求項14記載の多層配線。
【請求項16】
前記第1の絶縁膜の改質された表層のエッチングレートは、前記第2の絶縁膜のエッチングレートと同等かあるいはそれよりも小さい請求項14または15記載の多層配線。
【請求項17】
前記第2の絶縁膜は、前記第1および第3の絶縁膜よりもエッチングされ難く、前記第2の絶縁膜に対する前記第1または第3の絶縁膜のエッチングレートの選択比は少なくとも2以上である請求項12,13,14,15または16記載の多層配線。
【請求項18】
前記第1および第3の絶縁膜は、フッ素含有シリコン酸化膜または有機無機ハイブリッド膜よりなる請求項12,13,14,15,16または17記載の多層配線。
【請求項19】
前記第2の絶縁膜は、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、炭化シリコン膜のうちいずれか1つまたはそれらのうちの2つ以上の積層膜よりなる請求項12,13,14,15,16,17または18記載の多層配線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−339479(P2006−339479A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163630(P2005−163630)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】