説明

多階調フォトマスクの検査方法

【課題】実際の露光条件を適用したときに、多階調フォトマスクが形成する空間像を推測し、多階調フォトマスクを評価することができる多階調フォトマスクの検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明の多階調フォトマスクの検査方法は、透明基板上に透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンを備えた多階調フォトマスクの検査方法において、前記転写パターンの解像画像を取得し、前記解像画像に処理を施すことによって、前記転写パターンに所定の露光条件を適用したときに形成される空間像を得て、前記空間像により、前記転写パターンの実効透過率分布を得、実効透過率分布に基づいて評価することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー工程において使用される多階調のフォトマスクの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置などの電子デバイスの製造においては、フォトリソグラフィー工程を利用し、エッチングされる被加工層上に形成されたレジスト膜に対して、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて所定の露光条件下で露光を行ってパターンを転写し、該レジスト膜を現像することによりレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして被加工層をエッチングする。
【0003】
フォトマスクにおいては、露光光を遮光する遮光領域と、露光光を透過する透光領域と、露光光の一部を透過する半透光領域とを持つ多階調フォトマスクがある。このような遮光領域、半透光領域及び透光領域を含む多階調フォトマスクを用いて被加工層であるレジスト膜(ポジ型フォトレジスト)に所望のパターンを転写する場合、多階調フォトマスクの透光領域及び半透光領域を介して光が照射される。このとき、半透光領域を介して照射される光量は、透光領域を介して照射される光量よりも少ない。このため、このように光が照射されたレジスト膜を現像すると、照射された光量に応じてレジスト膜の残膜値が異なる。すなわち、多階調フォトマスクの半透光領域を介して光が照射された領域のレジスト残膜値は、遮光領域を介して光が照射された領域のレジスト残膜値よりも薄くなる。このように、多階調フォトマスクを用いて露光・現像を行うことにより、少なくとも3つの厚さの残膜値(残膜値ゼロを含む)を有するレジストパターンを形成することができる。
【0004】
このように残膜値が異なる領域を含むレジスト膜を用いて、レジスト膜が形成された被加工層をエッチングする場合においては、まず、残膜値ゼロの領域(被加工層が露出された領域:多階調フォトマスクの透光領域に対応する領域)をエッチングし、その後、アッシングによりレジスト膜を減膜する。これにより、相対的に厚さが薄いレジスト膜の領域(多階調フォトマスクの半透光領域に対応する領域)が除去されて、その部分の被加工層が露出する。そして、この露出された被加工層をエッチングする。したがって、複数の異なる残膜値を有するレジストパターンを実現する多階調フォトマスクは、使用するフォトマスクの枚数を減少させることにより、フォトリソグラフィー工程を効率化させることが可能となるので大変有用である。
【0005】
ここで用いられる多階調フォトマスクとしては、半透光領域が、露光機の解像限界以下の微細パターンで形成されている構造のもの及び、露光光を一部透過する半透光膜によって形成する構造のものが知られている。何れの構造のものであっても、この半透光領域での露光量を所定量少なくして露光することが出来、被加工層上に、レジスト残膜値の異なる2つの転写パターンを転写することができることから、1枚のグレートーンマスクを用いて従来のフォトマスク2枚分の工程が実施されることにより、液晶表示装置用の薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスを製造する際に、必要なマスク枚数が削減される。
【0006】
特開2004−309327(特許文献1)には、微細パターンを有するグレートーンマスクの検査方法であって、グレートーン部の画像データを作成し、それに基づき、グレートーン部における欠陥が識別可能となるような画像処理を施し、欠陥検査を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−309327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、半透光膜を用いた多階調フォトマスクにおける半透光領域の透過率の設定(膜質、膜厚の選択)は、該フォトマスクを使用して薄膜を加工するプロセスに基づいて決定される。すなわち、マスクユーザーは、露光によって、フォトマスクの転写パターンを被加工層上に転写し、得られるレジストパターンの形状を予測し、得ようとするレジストパターン中の、所定部分のレジスト残膜値、及びその許容変動レンジに基づいて、フォトマスクの半透光領域の透過率を決定し、これがフォトマスク製造に際しての管理値となる。
【0009】
例えば、多くの場合、ある波長(例えばg線)に対して、使用する半透光膜の透過率を指定し、さらにその面内分布として所定範囲内に管理することが行われている。それによって決定されるレジスト残膜厚(形状)とその分布を制御し、よって、適切な加工条件を設定し安定して、TFT等の所望のデバイスを製造できることを想定している。
【0010】
本発明者は、上記の管理方法による製品管理が必ずしも十分でないため、場合によっては、フォトマスクユーザによる加工条件の決定に大きな困難を与える可能性がある点に着目した。これは、上記多階調フォトマスクを実際に露光するとき、被加工層上に形成されるレジストパターンの残膜値、及びその面内分布を決定する要素は、所定波長における半透光領域の膜透過率(仮に膜透過率を厳格に制御できたとしても)のみでなく、転写パターンのパターンデザイン、さらには露光時に採用する光学条件によって変動するからである。
【0011】
例えば、図4(a)(b)に示すように、2つの遮光膜Aに隣接して挟まれた半透光領域を構成する半透光膜Bの透過光の光強度分布は、その半透光膜Bの線幅が小さくなると、全体に下がり、ピークが低くなる傾向がある。したがって、転写パターンのデザイン如何によって、半透光領域の透過率は異なる。特に、半透光領域の線幅一定以上の場合には問題は小さいが、線幅が微細になるとともに、露光光の回折の影響で、上記した透過率低下傾向が大きい。例えば、マスクパターンの線幅に対し、面内分布の許容範囲として200nm以内といった管理値を用いる場合が多いが、この面内分布が、上記透過率分布と重畳すると、形成されるレジストパターンの残膜値は、許容範囲を超えて変動する懸念がある。
【0012】
更に、半透光膜の膜透過率面内分布を所定量(たとえば2%)以下に管理しても、実際の露光によって、被加工層上のレジストパターン形成に寄与する光量は、2%より大きく変動している可能性が大きい。上述のように、透過率を代表波長(例えばg線)によって表現することができるが、これも場合によっては不十分である。これは、半透光領域の線幅が微小になると、露光光の回折の影響が無視できない点は上述の通りであるが、露光機の光源による分光特性に応じて、露光時に実際に生じる露光量が変動するためである。
【0013】
上記の要因を考慮すると、多階調フォトマスクによって、所望のレジストパターンを得ようとし、所望のレジスト残膜値を得ようとするときには、フォトマスクの半透光領域に用いた半透光膜の透過率に対し、そのフォトマスクの露光条件や、転写パターンのデザインを加味して、実際に被加工層上にあるレジスト膜が受ける照射光量を精度高く推定しなければ、不十分である。
【0014】
特に、TFTのデザインは微細化の方向にある。例えば、液晶動作速度を上げるため、更には、液晶の明るさを増すために、TFTを形成するパターンの線幅も小さくなる方向にある。
【0015】
上記文献の方法では、露光機の解像限界以下の遮光パターンの画像に対して、ガウシアン分布化する「ぼかし処理」を施している。しかしながら、パターン画像をガウシアン分布化するのみでは、実際の露光時にレジスト膜が受ける、光強度分布を示すものではないため、フォトマスクの評価には不十分である。実際の露光条件においては、露光光学系や光源の条件や、パターンの形状、さらには半透光領域に半透光膜を使用した場合には、その膜透過率や、透過率面内分布など、多くの要因が、形成されるレジストパターンに影響するからである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の多階調フォトマスクの検査方法は、透明基板上に形成された少なくとも遮光膜がパターニングされていることによって、透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンを備えた多階調フォトマスクの検査方法において、撮像手段により前記転写パターンの解像画像を取得する工程と、前記解像画像に処理を施すことによって、前記転写パターンに所定の露光条件を適用したときに形成される空間像を得る工程と、前記空間像により、前記転写パターンの実効透過率分布を得る工程と、前記実効透過率分布に基づき、前記多階調フォトマスクを評価する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、多諧調フォトマスクが適用される露光装置の露光条件を模した露光条件をソフトウエアシミュレーションによって再現し、当該露光条件下において多階調フォトマスクの透過光によって形成される転写パターンの空間像をシミュレーションするので、多階調フォトマスクの評価に適当である正確な画像データで多階調フォトマスクを評価することができる。また、評価にあたっては、実効透過率分布を用いるので、パターンの形状や露光条件によらず、実際に被加工層に形成されるべき空間像をシミュレーション可能である。
【0018】
本発明の多階調フォトマスクの検査方法は、前記解像画像に施す処理は、前記解像画像によって前記転写パターンの輪郭データを得る第1処理と、前記輪郭データに対し、予め設定した露光条件を適用し、前記空間像を得る第2処理を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の多階調フォトマスクの検査方法は、前記露光条件は、前記露光装置における投影光学系の開口数、照明光学系の開口数の前記投影光学系の開口数に対する比、及び露光波長の少なくともひとつを含むことが好ましい。
【0020】
本発明の多階調フォトマスクの検査方法において、前記半透光領域は、前記透明基板上に、露光光の一部を透過する半透光膜が形成されてなることができる。
【0021】
また、本発明の多階調フォトマスクの検査方法において、前記半透光領域は、前記透明基板上に、露光光の一部を透過する半透光膜が形成されてなり、前記露光条件は、前記半透光膜の、膜透過率を含むことができる。
【0022】
また、本発明の多階調フォトマスクの検査方法において、前記半透光領域は、前記透明基板上に、少なくとも、遮光膜からなる露光解像限界以下の寸法をもつ微細パターンを有してなることができる。
【0023】
本発明の多階調フォトマスクの製造方法は、透明基板上に形成された、少なくとも遮光膜がパターニングされていることによって、透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンを備えた多階調フォトマスクの製造方法において、前記転写パターンを形成する、パターン形成工程と、形成された前記転写パターンを評価する、パターン検査工程とを含み、前記パターン検査工程は、上記検査方法を用いることを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、多階調フォトマスクの使用時に形成する空間像を用いて評価された多階調フォトマスクを用いるので、露光条件の決定が容易であり、かつ正確に被加工層上に転写パターンを転写することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、実際の露光条件下において、多階調フォトマスクが形成する空間像をシミュレートし、その実効透過率をもとにマスクを評価することができ、これによって、被加工層上に形成されるレジストパターンを予測できる。このため、実際の露光を行わなくても、マスクの良否(出来栄え)が評価でき、TFT等の生産に優れた多階調フォトマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係る多階調フォトマスクの評価方法の処理ステップを示すフロー図
【図2】実施例において転写パターンの解像画像の取得から評価までの処理を行うためのシステム概念図
【図3】(a)転写パターンの一例を示す図であり、(b)実効透過率と同図(a)の転写パターンの位置との間の関係を示す図、(c)CDとしきい値との間の関係を示す図
【図4】(a)半透光領域幅4μmとした場合のマスクパターン及び透過光の光強度分布を示す図、(b)半透光領域幅2μmとした場合のマスクパターン及び透過光の光強度分布を示す図
【図5】本発明の検査方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明者は、既に、被加工層上に所望のレジスト残膜値を得るためには、多階調マスクの半透光領域に用いる、半透光膜自体の膜透過率を制御するのみでは不十分であることに着目し、マスクに形成されたパターンの形状や、露光に用いる光源の光学特性などによって、生じる光の回折現象を考慮しなければならないことを見出した。そこで、本発明者は、半透光膜自体の膜透過率Tに代わって、マスクを透過し、被加工層上のレジスト層に照射される光量を決定する実効的な光透過率(実効透過率)Tを規定し、この実効透過率を制御することについて提案した。実効透過率Tは、実際に用いる露光条件下において、該マスクの、例えば半透光領域が露光光を透過する透過率と考えることができる。露光光学系の解像度に比して、十分に広い透過領域の透過率を100%としたときの数値で表すことができる。この数値が、被加工層上のレジスト層(ポジレジストの場合)の、残膜の最小値に相関する。
【0028】
実効透過率Tは、膜固有の透過率に加えて光学条件やパターンデザインを考慮した指標であるので、レジスト残膜値の状況を正確に反映した指標であり、レジスト残膜値の管理のための指標として適切なものである。なお、尚、半透光領域が、遮光領域と隣接して挟まれているような(多くのTFT用多階調フォトマスクの転写パターンに含まれるような)場合において、半透光領域の実効透過率が分布を示す場合には、該半透光領域内のピーク値を持つ部分の透過率で代表させることができる。これは、このフォトマスクを使用して、被加工層上にポジレジストのレジストパターンを形成したとき、半透光領域に生じるレジスト残膜値の最小値と相関を持つからである。このような実効透過率管理については、例えば、薄膜トランジスタのチャネル領域を、多階調フォトマスクの半透光領域で形成し、そのチャネル幅(チャネル・レングス)が5μm以下であるときに特に有効である。
【0029】
なお、実効透過率Tとして、ここでは、半透光領域における光強度分布曲線の最大値(これがレジスト残膜のボトムに相当する)における透過率で代表する。すなわち、実効透過率Tは、隣接する遮光膜に挟まれた半透光領域の場合に、透過光の光強度分布曲線は、釣鐘型のカーブとなり、そのピークに対応する透過率をいうものとする。この実効透過率は、実際の露光条件(光学的パラメータ、照射光の分光特性)と、現実のフォトマスクパターンとによって決まるものである。
【0030】
一方、膜透過率Tとは、透明基板上に半透光膜を形成して半透光領域となしたとき、露光条件における解像限界に対して十分に大きな面積における該半透光領域の透過率をいう。一方、実際の透過率は、パターンの線幅などの影響を受けるので、実際のパターンにおける半透光領域の露光光透過率は、実効透過率Tによって定義することが有用となる。半透光領域に半透光膜を設けず、遮光パターンにおける微細な線幅のスペースのみを半透光領域として機能させる場合には、該半透光領域の「膜透過率」は、透光部と等しく、100%となる。
【0031】
上述したように、多階調フォトマスクの半透光領域については、露光・転写プロセスで問題となるか否かの検査(評価)を容易かつ高精度に行う必要がある。
【0032】
本発明では、実際の多階調フォトマスクの転写パターンの解像画像を電子化することによって解像画像データを得て、これを用いてソフトウエアによるフォトリソグラフィシミュレーションで実際の露光装置における露光によって被加工層に転写されるパターンと近似する空間像データを得る。ソフトウエアによるフォトリソグラフィシミュレーションでは、実際の露光装置での露光条件を模した露光条件が設定される。
【0033】
露光条件を模したとは、露光波長が近似すること、例えば、露光光が波長域を有するものである場合には、最も光強度の大きい露光波長が同一であることをいう。又は、例えばi線、h線、g線を強度比1:1:1の割合で含む照射光を、実際の露光光と近似するものとして選択してもよい。また、露光条件を模したとは、光学系が近似すること、例えば、結像系のNA(開口数)が略同一、又はσ(コヒーレンス)が略同一であることをいう。ここで、NAが略同一とは、実際の露光装置のNAに対して、±0.005の範囲である場合が例示される。σが略同一であるとは、実際の露光装置のσに対して±0.005の範囲である場合が例示される。また、結合光学系のみでなく、照明系のNAも略同一の光学系条件を適用する。
【0034】
本発明においては、フォトリソグラフィシミュレーション用のソフトウエア上で、以上の露光条件を再現し、上記転写パターンの解像画像データから、多階調フォトマスクを露光した際に形成される空間像データをシミュレーションにより得る。
【0035】
このようなソフトシミュレーションによって得た空間像データを用いて多階調フォトマスクを評価する。たとえば、空間像データに対して、所望の線幅パターンを得るための実効透過率のしきい値を決定し、このしきい値で空間像データを二値化したときに、欠陥の有無を評価することができる。又は、所定の実効透過率を決定したときの、所定パターンの線幅を評価することもできる。この点は、図3を参照して後述する。
【0036】
すなわち、本発明の骨子は、透明基板上に形成された少なくとも遮光膜がパターニングされていることによって、透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンの解像画像を撮像する。これをもとに、解像画像データを得ることができる。さらに、この解像画像を用いて露光条件下における転写パターンの空間像データをソフトシミュレーションによって取得し、前記空間像データに基づいて、該転写パターンの実効透過率分布を得る。これにより、前記転写パターンを評価することにより、実際の露光条件を用いて、多階調フォトマスクを使用したときに形成される、被加工層上のレジストパターンを精緻に予測し、多階調フォトマスクを評価することである。
【0037】
(実施例)
図1は本発明の一実施例に係る多階調フォトマスク評価方法の処理ステップを示すフロー図である。
【0038】
本発明に係る評価方法の対象である多階調フォトマスクとして、次のような多階調フォトマスクを作製する(図1のステップS1)。
【0039】
透明基板上に形成された少なくとも遮光膜がパターニングされていることによって、透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンを備えた、遮光領域、透光領域、半透光領域を含む3階調以上のフォトマスクを作製する。この多階調フォトマスクにおいては、遮光領域、透光領域の他に半透光領域を有することによって、被加工層上に形成されるレジストパターンに、複数の膜厚を有する領域を形成することができる。遮光領域は実質的に露光光を遮光し、透光領域は透明基板のような透明領域が露出してなることができる。半透光領域は、透光領域より透過率が相対的に小さい部分であり、被加工層上に所望のレジスト残膜を形成する領域である。この半透光領域は、例えば、透明基板上に所定の膜透過率をもった半透光膜を成膜して形成することができる。半透光膜の膜透過率は、透光領域を100%とするとき、10%〜70%、より有用なものとしては20%〜60%である。なお、透明基板上に形成された遮光膜に、露光機の解像限界以下の線幅のパターンを形成することによって、半透光領域としても良い。また、本発明は、3つ以上のレジスト残膜値を持つレジストパターンを有する4階調以上のフォトマスクにも同様に適用することができる。
【0040】
本態様では、半透光領域がチャネル部に対応し、それを挟む形で隣接する遮光部がソース、ドレインに対応する、TFT製造用の転写パターンを例として用いて説明する。
【0041】
透明基板としては、ガラス基板などを挙げることができる。また、露光光を遮光する遮光膜としては、クロム膜などの金属膜、シリコン膜、金属酸化膜、モリブデンシリサイド膜のような金属シリサイド膜などを挙げることができる。また、該遮光膜は表面に反射防止膜をもつことが好ましく、該反射防止膜の材料としては、クロムの酸化物、窒化物、炭化物、弗化物などを挙げることができる。露光光を一部透過させる半透光膜としては、クロムの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物、又は、金属シリサイドなどを用いることができる。特に、酸化クロム膜、窒化クロム膜、モリブデンシリサイド膜のような金属シリサイド膜や、その酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物などが好ましい。
【0042】
この多階調フォトマスクは、透明基板上に、半透光膜と遮光膜をこの順に積層し、それぞれをフォトリソグラフィによってパターニングすることにより、所望の転写パターンをもつ多階調(たとえば3階調)フォトマスクを形成することができる。
【0043】
更に、多階調フォトマスクの転写パターンとしては、透明基板上に遮光膜を形成し、該遮光膜を露光機解像度以下の微細パターンにパターニングして光の回折効果により中間調(半透光領域)を出す転写パターンであっても良い。
【0044】
いずれの場合にも、多階調の転写パターンは公知のパターニングプロセスにより、形成することができる。
【0045】
次に、顕微鏡に代表される撮像手段を用いて、上記多階調フォトマスクの解像画像を取得する(図1のステップ2)。
【0046】
図2は解像画像の取得手段である撮像装置を含んだ概念図である。撮像装置31に含まれた結合光学系の焦点を、ステップS1で作製した多階調フォトマスクに合わせ、所望倍率の解像画像を撮影し、電子化した転写パターンの解像画像データを取得する。
【0047】
転写パターンの解像画像データは評価装置本体32に入力される。評価装置本体32は、フォトリソグラフィシミュレーションをソフトウエア上で行うソフトシミュレーション用のソフトウエア、二値化処理及び輪郭抽出処理等の画像処理を行う画像処理用ソフトウエアがインストールされたコンピュータで構成され、ユーザが露光条件等のデータを入力する入力デバイス33、ソフトシミュレーションによって得られた空間像データおよび評価結果を表示する表示装置34が接続される。
【0048】
本発明でいう解像画像とは、後述する空間像の基となる画像であって、上記転写パターンに対して本発明の検査を行うに十分な解像度で把握できるものをいう。たとえば、解像限界寸法が0.2以下であるような画像である。すなわち、解像限界寸法が0.2μm以下となるような、光学条件下で取得した画像とすることができる。より好ましくは、解像限界が0.1μm以下であるような画像とすることができる。したがって、上記解像限界を充足するような光学条件(波長に応じたNA、σなど)を適宜決定して撮像すればよい。
【0049】
撮像装置31により取得された解像画像(図5(a))を基に、解像画像データが生成される。
【0050】
次に、この解像画像データに処理を施し、転写パターンに所定の露光条件を適用したときに形成される空間像を得る。具体的には、以下の手順で行うことができる。
【0051】
まず、得られた解像画像データの輪郭を抽出する第1の処理を行う(図5(b)、(c))。ここでは、ポジレジストを使用した場合に、透光領域を画定する二値化により(b)の輪郭データを得、半透光領域と遮光領域を分ける二値化により(c)の輪郭データを得ている。二値化画像から抽出した輪郭データを図5(d)(e)に示す。このような輪郭抽出ステップが図1におけるステップS3である。
【0052】
第1の処理では更に、この輪郭データ(図5(d)(e))からフォトリソグラフィシミュレーションソフトにおいて扱えるデータ形式に変換する(図1のステップS4)。フォトリソグラフィシミュレーションソフトがマスクCADデータを扱えるソフトであれば、処理可能なデータ形式としてGDSファイル(図5(f))が挙げられる。
【0053】
次に、第2の処理として、GDSデータ化した上記輪郭データを、あらかじめ用意した、フォトリソグラフィシミュレーションソフトウエアによって処理する。このとき、フォトマスクを現実に使用する際の、適切な露光条件を入力する(図1のステップS5)。具体的には、露光条件は、上記多階調フォトマスクを用いる際のNA、σ、波長を用いる。例えば、図5(a)に示す転写パターン(チャネル長さ:5.0μm、膜透過率40%)の解像画像を、NA=0.08、σ=0.8、露光波長g/h/i=1/1/1である露光条件下でソフトシミュレーションしたときの空間像が図5(g)に示すものである。なお、ソフトシミュレーションであるので露光条件は自在に設定可能である。
【0054】
図5(g)においては、実効透過率に変化がある部分には、実効透過率の等高線が示されている。このような空間像によって、多階調フォトマスクを評価することができる(図1のステップS6)。
【0055】
フォトマスクを用いて得られる、被加工層上のレジストパターンの線幅と実効透過率には、図3に示すような関係がある。例えば、図3(a)に示すような転写パターン、すなわち、2つの遮光膜21の間に半透光膜22が設けられた転写パターンにおいて、A−B間の実効透過率を求めると、図3(b)に示すようになる。この工程における実効透過率のしきい値とは、図3(c)に示す特性曲線に対するしきい値(TH1,TH2,TH3)である。しきい値の差はフォトマスクに与える露光量の差である。
【0056】
従って、図5(g)のような空間像において、所望の線幅を決定すれば、それを実現するための実効透過率が求められる。次に、欠陥が存在することが予めわかっている多階調フォトマスクについて、図5(g)のような空間像を得て、上記で決定した実効透過率を閾値として二値化したとき、得ようとする転写パターンに対して、上記欠陥が、問題になるか否か(被加工層上に転写されてしまうか否か)を、実際の露光を行うことなく、判断することができる。
【0057】
又は、所望の実効透過率の閾値を決定すれば、その時の線幅が求められる。これによって、得ようとするデバイス(TFTなど)が所望の範囲にあるか否かを、実際の露光工程を経ることなく判断することができる。
【0058】
本発明に係る検査方法を含めて多階調フォトマスクを製造する場合、透明基板上に、少なくとも遮光膜を形成し、前記遮光膜のパターニングを行って転写パターンを形成し、形成された転写パターンを上記方法で評価する。そして、この評価において、フォトマスクの出来栄えを評価し、または欠陥の判定が行える。欠陥修正が必要であれば、欠陥修正し、さらに同様の方法で評価を行うことも可能である。このような評価を経て得られた多階調フォトマスクは、多階調フォトマスクの評価に適当である実露光条件下での空間像で評価されたものであるので、実際のマスク使用において問題のない多階調フォトマスクである。特に、この評価方法を用いることにより、被加工層上に転写されたときの転写パターンの面内の線幅分布が0.15μm以下となる高品質の多階調フォトマスクを製造することが可能となる。
【0059】
このようにして得られた多階調フォトマスクは、被加工層上に転写パターンを転写することができる。この多階調フォトマスクは、多階調フォトマスクの評価に適当である正確な画像データで評価されたものであるので、正確に被加工層上に転写パターンを転写することができる。
【0060】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における材質、パターン構成、部材の個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
21 遮光膜
22 半透光膜
31 撮像装置
32 評価装置本体
33 入力デバイス
34 表示装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された少なくとも遮光膜がパターニングされていることによって、透光領域、遮光領域、及び半透光領域を含む転写パターンを備えた多階調フォトマスクの検査方法において、
撮像手段により前記転写パターンの解像画像を取得する工程と、
前記解像画像に処理を施すことによって、前記転写パターンに所定の露光条件を適用したときに形成される空間像を得る工程と、
前記空間像により、前記転写パターンの実効透過率分布を得る工程と、
前記実効透過率分布に基づき、前記多階調フォトマスクを評価する工程を含む、
多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項2】
前記解像画像に施す処理は、前記解像画像によって前記転写パターンの輪郭データを得る第1処理と、前記輪郭データに対し、予め設定した露光条件を適用し、前記空間像を得る第2処理を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項3】
前記露光条件は、露光装置における投影光学系の開口数、照明光学系の開口数の前記投影光学系の開口数に対する比、露光波長の少なくともひとつを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項4】
前記半透光領域は、前記透明基板上に、露光光の一部を透過する半透光膜が形成されてなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項5】
前記半透光領域は、前記透明基板上に、露光光の一部を透過する半透光膜が形成されてなり、前記露光条件は、前記半透光膜の、膜透過率を含むことを特徴とする、請求項4に記載の多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項6】
前記半透光領域は、前記透明基板上に、少なくとも、遮光膜からなる露光解像限界以下の寸法をもつ微細パターンを有してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の多階調フォトマスクの検査方法。
【請求項7】
透明基板上に形成された少なくとも遮光膜がパターニングされることにより、透光領域、遮光領域、および半透光領域を含む転写パターンを備えた多階調フォトマスクの製造方法であって、
転写パターンを形成する、パターン形成工程と、
形成された前記転写パターンを評価する、パターン検査工程とを含み、
前記パターン検査工程は、請求項1〜6のいずれかに記載の検査方法を用いることを特徴とする、
多階調フォトマスクの製造方法。
【請求項8】
請求項7の製造方法による多階調フォトマスクに、i線〜g線の露光光を照射し、被加工層上のレジスト膜に前記転写パターンを転写することを含む、パターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−191398(P2010−191398A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38599(P2009−38599)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】