説明

夜間走行支援ナビゲーション装置

【課題】 夜間走行時に利用者の運転の負担を軽減し、夜間走行時の安全性を高めることができる誘導経路を提示する夜間走行支援ナビゲーション装置を得る。
【解決手段】 DMSP等による夜間衛星写真を利用して、道路リンク毎の明るさデータを作成し地図記録媒体に記録しておく。ナビゲーション装置は周辺の明るさを検出し、周囲が暗いときには道路の明るさデータを用いて、明るい道路を優先的に選択する夜間対応誘導経路を演算し、その誘導経路に沿って案内を行う。目的地迄の間に周囲が明るくなると予測されると、予測した地点から目的地迄通常の誘導経路を演算する。走行時の最初に周囲が明るく通常の誘導経路が演算されても、目的地迄の間に周囲が暗くなることが予測されると、予測した地点から目的地迄夜間対応誘導経路を演算する。走行中に道路の明るさが変化することを道路明るさデータから予測し、変化することを予め通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を誘導経路に沿って目的地に案内するナビゲーション装置に関し、特に夜間走行時にはできる限り明るい道路を選択して誘導経路を設定することができるようにした夜間走行支援ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載する一般のナビゲーション装置においては、地図を描画するための地図データ及び施設等を検索するための施設情報データを記録したCD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体と、この地図・情報データ記憶媒体のデータを取り込むデータ取込装置と、地図等を表示するモニタと、GPS受信機及び走行距離センサやジャイロ等を用いた自律航法装置を用い、車両の現在位置及び進行方向の方位を検出する車両位置検出装置を有し、車両の現在位置を含む地図データを地図・情報データ記憶媒体から取り込み、この地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像をモニタの画面に描画すると共に、車両位置マークをモニタ画面に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示し、或いは地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させ、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
CD−ROMやDVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体に記憶されている地図データは、各種の縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、道路等は経度及び緯度で表現されたノードの座標集合として記憶されている。道路は2つ以上のノードの連結からなり、地図データは、道路リスト、ノードテーブル及び交差点構成ノードリスト等からなる道路レイヤ、及び地図画面上に道路、建築物、施設、公園及び河川等を表示するための背景レイヤ等の地図データと、市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名及び施設の名前等の、文字や地図記号等を表示するための情報データなどから構成される。
【0004】
また、このナビゲーション装置においては、利用者が所望の目的地或いは経由地(以下「目的地」と称する)に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにするための経路誘導機能を備えている。この経路誘導機能によれば、利用者は誘導経路を決定する際の条件として、例えば、利用する道路の種別・移動距離・移動時間・料金など、利用者が優先したい項目を指示し設定することができる。また、一般的に誘導経路の算出に際しては、ネットワーク上に存在する2点間の最短距離・最短路を算出するためのアルゴリズムであるダイクストラ法を利用している。
【0005】
ナビゲーション装置の場合、上述したように利用者の誘導経路に対する様々な要求を満たすため、道路の距離に対して、計算時の条件や道路種別に合わせた特定の係数を掛けたものを、道路を通過するために必要なコストとして定義し、出発地と目的地を最小のコストで結ぶ道順を算出し、誘導経路としている。
【0006】
例えば、有料道路を優先した誘導経路を算出する際は、高速道路のコストを下げるように係数を掛けることによって、高速道路を優先的に利用する案内ルートを算出している。上記のような誘導経路の演算手法を用いて、出発地から目的地まで、これらの地点を結ぶ経路を利用者が設定した各種条件を加味して、利用者の指示に適合する経路を演算して提示するようになっており、利用者が設定した条件を最も満足する経路を算出し案内に利用している。
【0007】
また、利用者の指示に従って演算した最適誘導経路、或いは多数の候補の中から利用者が選択した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上に誘導経路を他の経路とは色を変えて太く描画して画面表示したり、車両が誘導経路上の右左折等の進路を変更すべき交差点に一定距離以内に近づいたときに、交差点を拡大表示し、交差点名称を案内し、周辺の目印となる施設を案内するなどし、更に進路を変更すべき方向を示す矢印等を描画して画面表示したり、音声で右左折の誘導を行うことで右左折すべき交差点を正しく通過できるように案内を行い、最終的に利用者を目的地まで案内することができるようにしている。
【0008】
一方、情報収集衛星の分野では、夜間に地上の光を観測することができる米国のDefense Meteorological Satellite Program(以下「DMSP」と称する)に代表される人工衛星が存在する。このような衛星からの情報をリアルタイムに受信・加工することによって、日本周辺海域に分布する漁場の操業状況の調査や森林火災の早期発見を行うためのサービスも広がりつつある。現在一般に利用に供されているDMSPの最大分解能は約1kmであるが、現在はより分解能が高いデータが利用できる衛星の打ち上げの準備が進んでいる。
【0009】
なお、ナビゲーション装置において、一般の地図データの他に記録されている交差点間の距離テーブルに基づいて、表示された地図上の2点間の最短距離を求めることにより、最適経路の探索における計算時間を短縮する技術は下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−317427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常の車両における夜間走行の状態を考えると、運転者は車のヘッドライトや街灯などの照明で照らされたごく一部の領域しか認識することができない。特に車のライトをロービームにしている場合は、前方約30m程度までの物しか識別することができない。そのため夜間に街灯などの照明が全く存在しない道路を走行している場合、ドライバーは歩行者や停車中の車などがヘッドライトの光で照らし出されてから、ようやくその存在に気付くことになり、場合よっては事故を避けきれないときもある。夜間の死亡事故が死亡事故全体の6割を占めていることから分かるように、このような認知の遅れが重大な事故の一要因となっている。
【0011】
さらに、夜間に運転する際には、周囲の明暗の差が激しく、周囲が暗くて見えにくいため対象物を凝視したり、一方では対向車のライトがまぶしい、などの理由によりドライバーの目も疲労してしまい、集中力を維持し続けることは非常に困難である。そのため、夜間に走行する場合は、視認性の高い道路、即ち、街灯などの照明設備が十分に設置された明るい道路をできるだけ選んで走行し、事故に遭う、或いは事故を起こす可能性を極力減らすことが肝要である。
【0012】
さて、利用者が前記のようなナビゲーション装置の経路誘導機能を利用して走行する場合、利用者は現在位置から目的地までの地域に不慣れな場合が多い。従来のナビゲーション装置が提供する誘導経路は、利用する道路の種別、移動距離、移動時間、料金など利用者の設定した条件を最も満足するように算出されるため、昼夜を問わず同一の経路となり、その演算して得られた経路の中には、街灯などの照明設備がほとんどない暗い道路を含んでいる可能性がある。
【0013】
夜間に照明設備の少ない不慣れな道路を走行する場合、利用者が歩行者の飛び出しや車が停車している地点などを事前に推測することは非常に困難である。利用者は周囲に注意を払う必要性を感じるあまり、かなりの緊張を強いられることとなり、疲労による注意力の低下などを引き起こす可能性が高い。さらに、演算された経路が山間部などを通る場合は、見通しの悪いカーブや道路の狭さなどの要因により、利用者の緊張がより一層高まるであろうことは容易に想像できる。
【0014】
また、利用者はナビゲーション装置の案内にしたがって経路上を走行するが、昼間であれば容易に見つけることができる案内対象の交差点であっても、夜間にはその視認性の低さから案内対象となっている交差点や施設などを見つけることが困難になり、見過ごしてしまう場合もある。さらに、利用者が案内対象を見つけ出すことに集中するあまり、周囲への注意が十分払われない可能性も高い。
【0015】
以上説明したように、従来のナビゲーション装置における誘導経路案内は、単に目的地に到着することを目的としているため、夜間運転時に利用者の受ける心的負担や運転中の安全の確保のための考慮が十分になされていなかった。
【0016】
したがって本発明は、夜間に走行する場合にできるだけ視認性の高い、即ち、周囲に街灯などの照明設備が存在し周囲の状況の確認が容易な道路を優先的に利用した誘導経路を利用者に提供し、夜間の運転の安全性を高め、利用者の負担を軽減することができる夜間走行支援ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、従来のナビゲーション装置が有する機能に加えて、周辺が暗くなったことを検出し、視認性の高い道路を優先的に利用した経路を案内すべき状況であるか判断する案内条件判定手段と、夜間に視認性の高い道路を優先的に利用した経路を算出する誘導経路演算手段と、誘導経路演算手段によって算出された経路を案内する案内制御手段と、従来のナビゲーション装置が利用している地図データベースに加えて、夜間の道路の明るさに関する情報を追加した地図データベースから構成される。
【0018】
ナビゲーション装置が利用する地図データベースには、案内やルート計算を行うための情報として、道路リンクおよびノードが格納されている。通常、道路リンクおよびノードはある単位領域(パーセルやメッシュ)毎にまとめられている。ノードは地点の情報であり、位置情報および高速ジャンクション・一般交差点などの地点の種別から構成される。
【0019】
道路リンクは道路の情報であり、始点・終点の位置情報、道路の長さ、道路の属性から構成される。一般的に道路リンクの始点および終点はノードで表現されており、属性には、高速道路・一般道路などの道路の種別や幅員などが含まれる。また、道路リンクが道路の形状の情報を含まない場合、道路リンクの情報に道路の形状を表す形状リンクの格納先が追加される。ナビゲーションシステムはこれらデータベースに格納されている道路の情報を元に案内ルートを算出している。また、図8の例では、上述した情報に加え本発明で必要となる道路の明るさに関する情報を道路リンクの属性に追加している。
【0020】
このようなデータを用いて誘導経路を演算し、経路を案内するに際しては、最初に利用者が目的地を設定しナビゲーション装置が誘導経路演算を行うとき、若しくは、既に案内中の誘導経路が存在する場合に、案内条件判定手段は、ナビゲーション装置に接続した照度計やヘッドライトなどの状態から現在位置周辺の視認性が低下したと判断した場合、明るい道路を優先的に利用した誘導経路を案内する必要があると判断し、案内制御手段に通知する。このとき案内制御手段は、誘導経路演算手段に明るい道路を優先的に通る誘導経路を演算するように要求する。
【0021】
誘導経路演算手段は、誘導経路を算出する際に地図データベースに含まれる道路の明るさ情報を参照し、明るい道路のみにその通過コストを下げるように係数を掛けることによって、明るい道路を優先的に利用する誘導経路を演算する。案内制御手段は誘導経路演算手段が算出したルートを元に案内を行う。
【0022】
案内条件判定手段は、ナビゲーション装置に接続した照度計やヘッドライトの状態から現在位置周辺の視認性が十分に高くなったと判断した場合には通常の案内を行うように案内制御手段に通知する。案内制御手段は誘導経路演算手段に通常の誘導経路を算出するように要求し、誘導経路演算手段によって算出された誘導経路を案内する。
【0023】
また、案内制御手段は誘導経路の案内中に暗い道路、即ち、街灯などがほとんどなく周囲の視認性が非常に悪い道路が含まれている場合、誘導経路が明るい道路から暗い道路に切り替わる地点を求め、利用者に暗い道路を走行する必要があることを事前に案内するとともに、その距離を案内する。更に、誘導経路の演算後に、誘導経路に含まれる暗い道路の距離や開始地点について案内してもよい。
【0024】
本発明に係る夜間走行支援ナビゲーション装置は上記のような概略構成をなし、上記のような動作を行うものであるが、特に、道路の明るさデータを用い、明るい道路を優先した誘導経路を演算する夜間対応誘導経路演算手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、車両の周囲の明るさを検出する車両周囲明るさ検出手段を備え、前記車両周囲明るさ検出手段で周囲が暗いことを検出したとき、前記夜間対応誘導経路演算手段により明るい道路を優先した誘導経路を演算することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、夜間走行支援誘導経路上で周囲が暗くなる地点または明るくなる地点を予測演算する予測演算手段を備え、前記予測演算手段により誘導経路上で周囲が所定以上暗くなる地点、または明るくなる地点を検出したときには、その地点から目的地まで前記夜間対応誘導経路演算手段により明るい道路を優先した誘導経路の演算を行うか、または明るい道路の優先を行わない通常の誘導経路の演算を行うことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、道路が暗い視認性不良道路を検出する視認性不良道路検出手段を備え、誘導経路走行中に前記視認性不良道路検出手段で視認性不良道路に所定距離以内に接近したことを検出とき、視認性不良道路接近の通知を行うことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、前記通知は、視認性不良道路を走行する迄の距離、または視認性不良道路から視認性の良い道路に出るまでの距離を通知することを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、夜間の衛星写真により道路の明るさを算出した、前記道路の明るさデータを地図データベースに格納したものであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、都市部とそれ以外の地域で、道路の明るさを定義する基準を変更したものを前記道路の明るさデータとすることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、時間帯毎に道路の明るさ情報を前記道路の明るさデータとして地図データベースに格納しており、前記夜間対応誘導経路演算手段は、前記道路の明るさデータを用い、走行時刻に応じて明るい道路を選択して誘導経路を演算することを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る他の夜間走行支援ナビゲーション装置は、前記夜間走行支援ナビゲーション装置において、前記夜間の衛星写真の情報を地図データベースに格納し、地図と重ね合わせて表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明は上記のように構成したので、夜間に明るい道路を優先的に通る誘導経路を提供できるようになり、それにより利用者の運転の負担を軽減し、夜間の走行の安全性を高めることができる。また、明るい道路を優先的に通るルートを案内するため、ナビゲーション装置が行う案内の案内対象を容易に見つけることができるので、案内ルートから逸れる可能性が低くなる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、夜間走行時に利用者の運転の負担を軽減し、夜間走行時の安全性を高める、という目的を、道路の明るさデータを用い、明るい道路を優先した誘導経路を演算する夜間対応誘導経路演算手段を備えるナビゲーション装置とすることによって実現する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。本発明の夜間走行支援ナビゲーション装置は種々の態様で実施することができるものであるが、図1には代表的な態様で実施される夜間走行支援ナビゲーション装置の主要機能部と、それらの相互関係を表す機能ブロック図を示している。以下、図1に示す実施例について説明する。なお、図1において各機能を行う機能部は、各機能を行う手段とも言うことができる。
【0036】
図1に示す例においては、従来のナビゲーション装置において、道路明るさデータを備えたデータ記録媒体を用い、周囲が暗くなって視認性が低下する夜間対応の誘導経路を演算し、また夜間対応の案内を行うことができるようにするための機能部を追加した例を示している。同図に示すナビゲーション装置は、従来のものと同様に、システム制御部10に各種の所定の機能を総合的に行うためのソフトウェアを記録したROM、そのソフトウェアを処理するためのCPU及びRAM等を備え、これと接続した各機能部を関連づけて総合的に制御している。
【0037】
図1のナビゲーション装置においては、このシステム制御部10に現在地から目的地までの誘導経路を演算し、これを記録して車両を目的地まで安全に誘導することができるようにするための誘導経路演算案内処理部11が接続している。この誘導経路演算案内処理部11には、車両位置検出部38で検出した現在地を入力すると共に、指示信号入力部35に利用者が目的地を各種の手法によって入力したとき、その目的地データを入力するための現在地・目的地入力部12を備えている。
【0038】
また、誘導経路の演算に際して、利用者が高速道路優先等の各種の指示を行ったときにはこれを誘導経路演算指示入力部13から入力するが、本発明においては特に夜間対応の誘導経路を演算して提示する機能を備えているので、利用者がその機能の利用を指示した時その信号も入力し、夜間対応誘導経路案内指示検出部14においてその信号の入力を検出するようにしている。この夜間対応誘導経路案内指示検出部14においては、このような信号の入力を検出するほか、車両周囲の視認性が悪いときには夜間対応誘導経路の案内を行うようにする旨の設定が初期設定として設定されていたときには、その信号も入力する。
【0039】
図1に示す誘導経路演算案内処理部11には、機能構成をわかりやすくするために、従来から行われている各種の誘導経路の演算を行う通常誘導経路演算部15と、後に詳述する夜間対応の誘導経路の演算を行う夜間対応誘導経路演算部16とを分けて示しているが、これを通常の誘導経路演算部の中の1機能として夜間対応誘導経路演算部を組み込んで示すこともできる。図1の例においては、通常誘導経路演算部15においては、従来のものと同様に、現在地・目的地入力部12で入力した現在地から目的地まで、その間の誘導経路をデータ取込部32を介して取り込んだ道路データに基づき、誘導経路演算指示入力部13による優先指示に従って誘導経路を演算し、利用者による確認を得た後これを誘導経路記憶部25に出力して記憶する。
【0040】
図1の夜間対応誘導経路演算部16には、このナビゲーション装置を搭載した車両が点灯したことを検出する車両点灯検出部17と、車外の明るさとしての照度を検出する車外照度計18を備え、これらの検出信号を車両点灯環境検出部19が取り込んでいる。それにより、利用者が誘導経路の演算を指示した時において周囲が暗くなったために車両の前照灯等を点灯したとき、或いは車両に前記のような車外照度計を取り付けているときに、その車外照度計によって車外の明るさが所定値以下になったとき、即ち所定以上暗くなったことを検出したときには、車両点灯環境検出部19は車両が点灯する環境になっていることを検出する。
【0041】
夜間対応誘導経路演算処理部20は、前記夜間対応誘導経路案内指示検出部14によって利用者が夜間対応誘導経路の演算を行う指示を行ったとき、或いは予め周囲の視認性が悪い場合には夜間対応誘導経路の案内を行うようにする旨の初期設定がなされていたときには、その信号を入力して、更に車両点灯環境検出部19が現在既に車両が点灯され、或いは車両を点灯する環境となっていることを検出したときに、現在地・目的地入力部12で入力した現在地から目的地について、その間の誘導経路を、データ取込部32を介して取り込んだ従来から用いられている道路データ、及び特に本発明において地図・情報データ記録媒体30に記録されている道路明るさデータ31を利用し、後述するような夜間対応の誘導経路を演算する。
【0042】
車両点灯・消灯地点予測演算部21では、その一つの機能として、前記のように現在既に車両が点灯され、或いは車両に点灯する環境になっていることにより、夜間対応誘導経路演算処理部20で夜間対応の誘導経路の演算が行われたときには、その誘導経路について現在地から目的地までの間に周囲が明るくなって車両の照明を消灯する地点があるか否か、またあるときにはその地点がおおよそどの地点かを演算する。その際には、視認性条件検出部22で検出した現在の時期の日の出の時刻、周辺の天候予測、周辺が山間部か平野部か等の地勢を内部データ、或いは別途通信手段で取り込んだ情報等を入力し、夜間対応の誘導経路ではなく通常の誘導経路を案内しても良い地点をできる限り正確に予測する演算を行う。
【0043】
また、この車両点灯・消灯地点予測演算部21では、別の機能として、現在車両が点灯されていない、或いは車両に点灯する環境になっていないことにより、夜間対応誘導経路演算処理部20で仮の通常の誘導経路の演算を行う、或いは通常誘導経路演算部15によって通常の誘導経路の演算を仮に行い、算出された誘導経路について現在地から目的地までの間に周囲が暗くなって車両を点灯する必要がある地点を演算する。その演算に際しては、前記と同様に視認性条件検出部22で検出した現在の時期の日の入りの時刻、周辺の天候予測、周辺が山間部か平野部か等の地勢を内部データ、或いは別途通信手段で取り込んだ情報等を入力して、できる限り正確な夜間対応の誘導経路を案内する地点の予測演算を行う。
【0044】
車両点灯・消灯地点予測演算部21で上記のように、最初に夜間対応誘導経路が演算されたときに、目的地まで到達する間に夜明けによって夜間対応の経路を走行する必要が無く、通常の誘導経路を走行しても良い地点が存在することが検出されたとき、或いは、最初に通常の誘導経路が仮に演算され、その経路を走行するとき目的地まで到達する間に日の入り等によって夜間対応の経路を走行することが好ましい地点が存在することが検出されたときには、夜間対応誘導経路演算処理部20は前記各地点をもとに、各条件に従った最終的な誘導経路の演算処理を行う。このようにして夜間対応誘導経路演算処理部20で最終的な誘導経路が演算されたときには、利用者による確認を得た後誘導経路記憶部25にこれを記憶する。
【0045】
夜間対応誘導経路演算部16には視認性不良道路検出処理部23を備え、夜間対応誘導経路の演算によっても視認性の悪い道路を走行しなければならない場合には、誘導経路中において視認性が悪くなる地点を検出する処理を行う。その処理の結果、該当地点が検出された場合、視認性悪化地点接近検出部24は現在地が当該地点から例えば300m手前のような所定距離以内になったときに、視認性が悪化する地点が接近したことを検出し、誘導経路案内出力部26における、特に視認性悪化地点接近案内出力部27にその旨の出力を行い、視認性悪化地点接近案内出力部27は、音声出力部40を介してスピーカ39から、道路が暗くなる旨の音声出力、或いは画像出力部42からモニタ41にその旨の画像出力を行うようにする。
【0046】
図1に示すナビゲーション装置においては、前記のような誘導経路演算案内処理部11の他、前記のように従来のナビゲーション装置と同様の各種機能部を備えており、誘導経路演算処理部11においてもこれらの各種機能部を利用するものであるが、図1に示すデータ取込部32では、CD−ROM、DVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記録媒体30から必要な地図データ、施設情報等を取り込み、更にそのデータ記録媒体がハードディスクのように容易にデータの書き込みができるような場合には、外部から取り込んだデータや、他の機能部で処理したデータを後に読み取って利用することができるように、そのデータ記録媒体にデータ入力もできるようにしている。特に図1の地図・情報データ記録媒体30は、前記のように道路明るさデータ31が、後述するような夜間の衛星撮影画像の利用によって、或いはそのほかの道路の明るさデータ収集システムによってデータが作成され、記録されており、そのデータが夜間対応誘導経路演算部16において用いられる。
【0047】
指示信号入力部35においては、このナビゲーション装置での利用者によるリモコン33等の指示信号を入力している。更に必要に応じて利用者の音声を認識する処理によって利用者の指示信号を入力する音声認識部34の信号も、この指示信号入力部35に入力している。この指示信号入力部35の作用によって、利用者による目的地の指示を入力可能としている。
【0048】
外部情報入力部36は、例えばVICS情報のような交通情報を入力すると共に、携帯電話によって情報センター等から各種のデータを入力することができ、その中には夜間対応誘導経路演算部16で用いる現在の日の出・日の入りの時刻、目的地までの経路における天気予報等の情報も取り込むことができるようにする。
【0049】
車両位置検出部38は、GPS受信器37の位置データを入力し、更に必要に応じて車速センサや角度センサによる走行距離・方位検出手段からの車両の移動データを入力することによって、車両の現在位置を正確に検出している。この車両位置検出部38の信号によって、誘導経路演算のための現在地を検出することができる。
【0050】
音声出力部40からスピーカ39に対して音声出力し、誘導経路の案内や前記視認性不良道路に近付くことにより視認性が悪化する地点が接近した情報も出力する。また、画像出力部42からモニタ41に対して画像出力し、地図画面や自車位置、誘導経路等の各種情報表示を行う。
【0051】
上記のような機能ブロックからなるナビゲーション装置において、特に夜間対応誘導経路の案内に際しては、例えば図2に示されるような作動フローからなる道路の明るさデータ作成処理によって、図1の地図・情報データ記録媒体30に道路明るさデータ31として書き込まれ、夜間対応誘導経路の演算及び案内のための基本的なデータとして利用される。以下、図2に示す道路の明るさデータの作成処理の例を、図6及び図7等を参照しつつ説明する。
【0052】
図2に示す道路の明るさデータの作成処理においては、最初に夜間衛星写真データを拡大し、最小単位領域毎の輝度を演算する(ステップS1)。即ち、前記のように情報収集衛星の分野では、夜間に地上の光を観測することができる、米国のDMSPに代表される人工衛星が存在し、このような衛星からの情報をリアルタイムで利用可能となっている。現在一般に利用に供されているDMSPの最大分解能は約1kmであるが、現在はより分解能が高い画像の撮影が可能になると予測されている。
【0053】
現在提供されている衛星写真データは例えば図6に示されるようなものであり、同図において白色で示した部分は照明などの光が存在する領域であり、黒色で示されたその他の部分は照明などの光が存在しない領域である。また、白色の濃淡は光の強さを示しており、図中の輝度が高いほど照明などの光源が数多く密集している領域である(実際の画像はNational Geophysical Data Centerなどに掲載されている)。この画像を拡大していくことにより、明るさの程度の判別が限界となる例えば図7に示すような最小単位領域毎に分割し、各領域の輝度を演算することによって明るさデータが得られる。
【0054】
次いで、夜間衛星写真と道路データを重ね合わせて、道路リンク毎の平均輝度から明るさを演算する(ステップS2)。図7はDMSPによって得た衛星写真と地図データベースに格納されている道路データに基づく道路を重ね合わせ、その一部を拡大した例である。一つ一つの四角形(ピクセル)は、ある分解能で撮影した衛星写真の最小単位を示している。それらの上に道路データに基づく道路リンクを重ね合わせたときの例を示している。
【0055】
このデータによって、各道路リンクが複数の領域を通過するとき、平均輝度を演算することによって各道路リンクの明るさのデータが得られる。即ち、図2のステップS2に示しているとおり、
各道路リンクの明るさ=(各道路リンクが通過する領域の輝度の総和)/(道路が通過する領域の数)
の式によって求めることができる。なお、道路リンクの明るさを得るには、上記手法の他、従来から用いられている各種の平均値算出手法を用いることができる。
【0056】
上記のようにして得られた各道路リンクの明るさのデータは、例えば図8に示すように、従来の各種データに加えて本発明で必要となる道路の明るさに関する情報を、道路リンクの属性に追加し、このような道路リンクテーブルと、従来と同様のノードテーブルによって道路を地図上に表示し、且つそれらの道路の明るさデータ等の各種情報を利用することができるようになる。
【0057】
通常、道路リンクおよびノードはある単位領域(パーセルやメッシュ)毎にまとめられている。ノードは地点の情報であり、位置情報および高速ジャンクション・一般交差点などの地点の種別から構成される。道路リンクは道路の情報であり、始点・終点の位置情報、道路の長さ、道路の属性から構成される。一般的に道路リンクの始点および終点はノードで表現されており、属性には、高速道路・一般道路などの道路の種別や幅員などが含まれる。また、道路リンクが道路の形状の情報を含まない場合、道路リンクの情報に道路の形状を表す形状リンクの格納先が追加される。
【0058】
ナビゲーション装置はこれらデータベースに格納されている道路の情報を元に案内ルートを算出している。したがって、上記のような明るさデータが道路リンクに存在するときには、誘導経路の演算に際して、地図データベースに含まれる道路の明るさ情報を参照し、明るい道路のみにその通過コストを下げるように係数を掛けることによって、明るい道路を優先的に利用する誘導経路を演算することができる。
【0059】
次いで、図2に示す例においては、各道路リンクを都市部とそれ以外に選別(ステップS3)し、その道路リンクが例えば図6において、高い輝度が所定面積以上ある地域を都市部として、道路リンクが都市部に存在するときにはステップS5に進んで、当該道路リンクの明るさは比較的明るい値である第1の所定値A1(>A2)以上であるか否かを判別する。それに対して、ステップS4において都市部ではないと判別したときには、当該道路リンクの明るさは比較的暗い値である第1の所定値A2(<A1)以上であるか否かを判別する(ステップS8)。ここで、上記第1の所定値A1は第2の所定値A2よりも明るい値となっている。
【0060】
ステップS5において、当該道路リンクの明るさは第1の所定値A1以上であると判別したときには、その道路を明るい道路(A1U)と判別し、また、第1の所定値A1以上ではないと判別したときには暗い道路(A1B)と判別する。また、ステップS8において、当該道路リンクの明るさは第2の所定値A2以上であると判別したときには、その道路を明るい道路(A2U)と判別し、第2の所定値A2以上ではないと判別したときには暗い道路(A2B)と判別する。
【0061】
上記のような当該道路リンクが都市部であるか否かによって明るい道路か暗い道路かを分ける基準、即ち明るさを定義する基準を異ならせるのは、車両の運転者が都市部の走行に際しては周囲の商店や街灯によって充分明るい道路を走行しているため、少し暗くなるだけでも非常に暗くなった感じになり、逆に周囲が比較的暗い、都市部ではない道路を走行しているとき、少し明るい道路を走行しただけで充分明るい道路である、と認識する傾向があることに対応するためである。また、前記道路の明るさデータは、時間帯毎に道路の明るさ情報を地図データベースに格納しており、夜間対応誘導経路演算手段は、前記道路の明るさデータを用い、走行時刻に応じて明るい道路を選択して誘導経路を演算するようにしても良い。
【0062】
これらの各種演算及び判別の結果に応じて、各道路リンクにフラグを付与する(ステップS11)。その際、各道路リンクに平均輝度を各々記録し、後にそのデータの利用を可能とし、更に各道路が明るい道路であるか暗い道路であるかのデータ或いはフラグも記録し、明るい道路から暗い道路を走行するときの運転者に対する注意案内の出力基準データ等に用いる。その際の道路の明るさのデータとして前記ステップS6、7、9、10で判別した(A1U)、(A1B)、(A2U)、(A2B)等の都市部か否かを考慮した明るさデータを記録しておいても良い。
【0063】
上記のような処理の結果、本発明においては、図1の地図・情報データ記録媒体としてのCD−ROM、DVD−ROM、或いはハードディスク等に、各道路リンクに対して道路明るさデータ31としての前記のようなデータが記録されることとなり、特に夜間対応誘導経路演算部16では、このデータを有効に利用する。
【0064】
本発明が適用されるナビゲーション装置においては、このようなデータを用い、例えば図3に示されるような作動フローによって誘導経路の案内処理を行うことができる。図3に示す例においては、誘導経路の案内処理に際して従来と同様に、最初に現在地と目的地の入力を行い(ステップS11)、次いで誘導経路の演算指示を行う(ステップS12)。
その後、夜間対応誘導経路案内指示の有無を判別し(ステップ13)、夜間対応誘導経路案内の指示があると判別したときにはステップS14に進んで、図4及び図5に示す夜間対応誘導経路の演算処理を行う。
【0065】
前記の夜間対応誘導経路案内指示の有無の判別に際しては、誘導経路の演算の指示を行うとき、利用者がモニタに表示された夜間対応誘導経路の要求指示部に対応する指示を行ったことを検出することにより判別でき、或いは予めナビゲーション装置の初期設定において、誘導経路の提示に際して夜間対応の誘導経路も提示する旨の設定を行っていたときには、これを検出しても良い。
【0066】
前記判別処理は図1の誘導経路演算案内処理部11において、誘導経路演算指示入力部13で利用者の各種の演算指示が入力されるとき、夜間対応誘導経路案内指示検出部14が、それらの指示の中に夜間対応の誘導経路の案内指示の有無を検出することにより判別する。また、この夜間対応誘導経路案内指示検出部14で、夜間対応誘導経路の案内指示があることが検出されたときには、その信号を夜間対応誘導経路演算部16に出力し、夜間対応誘導経路演算部16において図4及び図5に示すような処理を順に行う。
【0067】
図4に示す夜間対応誘導経路の演算処理においては、最初現在の車両の点灯環境の検出と入力を行い(ステップS31)、次いで現在の車両の点灯の有無、または点灯する環境の発生の有無を判別する(ステップS32)。この処理は図1の夜間対応誘導経路演算部16における車両点灯検出部17が、車両の各種機器を制御する車内LANから信号を入力する等により、このナビゲーション装置を搭載している車両において、現在前照灯等のライトの点灯の有無を検出することにより行われ、また、この車両に車外照度計18を備えているときには、車外の明るさが車両の前照灯等のライトを点灯した方がよい程度の暗さになっている事の有無を検出することにより行うことができる。
【0068】
そのほか、前記車外照度計のデータを常時入力し、周囲が暗くなったときには夜間対応誘導経路の演算を行うように、予め設定しておいても良い。更に、ヘッドライトの故障のときには自動的に夜間対応誘導経路の演算を行うように設定し、目的地をできる限り近い修理工場等を選択して設定するようにすることもできる。
【0069】
ステップS32で現在の車両は点灯しているかまたは点灯する環境になっていると判別したときにはステップS38に進んで、車両点灯・予測地点の設定において、車両点灯地点として現在地を設定する。一方、前記判別で、現在の車両は点灯していないか、或いは点灯する環境になっていないと判別したときにはステップS33に進み、通常の誘導経路を仮演算する。この処理は、図1の車両点灯環境検出部19が現在の車両は点灯していないか点灯する環境になっていないことを検出したとき、その信号を夜間対応誘導経路演算処理部20に出力し、夜間対応誘導経路演算処理部20ではその一つの機能として備えている夜間対応誘導経路の演算処理の前に行う通常誘導経路の仮演算機能によって行うことができる。そのほか、車両点灯環境検出部19が現在の車両は点灯していないか点灯する環境になっていないことを検出したとき、その信号を通常誘導経路演算部15に出力し、そこで得られた通常の誘導経路を取り込んでこれを利用することもできる。
【0070】
次いでステップS34において、仮通常誘導経路上の地勢・日没時刻・天候等の各種条件の取込を行う。これらの情報の一部は図1の地図・情報データ記録媒体30としてのハードディスク等に予め記録しておき、それを読み込むことによって行うこともできるが、外部情報入力部36から携帯電話等を介して情報センターに接続し、予め設定した夜間誘導経路演算用の情報を取り込むことによって行うこともできる。
【0071】
その後ステップS35において、走行経路上の各種条件から車両の点灯予測時刻を演算する。この演算に際して、現在時刻を検出して、誘導経路上における各地点の到達予測時刻を演算し、それらの地点の地勢データから山間部であるか平野であるかを検出し、現在の天候、できるならばそれらの地点の通過予測時刻におけるそれらの地点の天気予報データにより、晴れ、曇り、雨のいずれであるかを検出し、現在の標準日没時刻を参考に各地点での日没発生の有無を検出する等によって、車両を点灯することとなる時刻を予測演算する。
【0072】
なお、車両を点灯することとなる時刻とは、周囲の視認性が悪く、運転者が明るい道路を走行した方がよいと判断される時刻と同趣旨の時刻のことである。また、住宅街は夕方から夜半にかけて明るくても深夜になると暗くなるというように、夜間の明るさも時間帯によって変化することが考えられるので、それらの条件を入力することが好ましい。
【0073】
次いで図4の例においては、車両の点灯必要時刻の目的地到着予測時刻に対する位置を判別し(ステップS36)、ここで目的地到着予測時刻の前ではないと判別したときにはステップS39に進んで、前記のようにして得られた仮通常誘導経路を、誘導経路として設定し、その後図5のステップS52に進んでその誘導経路の確定を行う。即ち、現在の仮通常誘導経路を走行した場合、特に渋滞等がなければ周囲の視認性が悪くなる前に目的地に到着することができることがここで判別されることにより、先に演算した仮通常誘導経路を誘導経路と設定し、その結果従来の誘導経路演算で得られるものと同様の誘導経路が設定されることとなる。
【0074】
また、ステップS36の判別で車両の点灯必要時刻が目的地到着予測時刻の前であると判別したときには、上記のようにして演算された車両の点灯必要時刻において、仮演算された通常誘導経路上での車両走行地点を予測演算する(ステップS37)。これらの処理は図1の車両点灯・消灯地点予測演算部21において、視認性条件検出部22の各種データを入力して演算を行うことによりなされる。
【0075】
ステップS37において、仮に演算された通常の誘導経路上で、車両に点灯する必要がある程度に周囲が暗くなる地点が演算されたときには、その地点を車両の点灯予測地点として設定する。また、前記ステップS32において現在の車両は既に点灯しているかまたは点灯する環境になっていると判別されたときには現在地を車両点灯地点として設定する(ステップS38)。
【0076】
その後は図5に示す処理が継続され、車両点灯予測地点から目的地までの夜間用仮誘導経路を演算する(ステップS40)。即ち、現在既に周囲の視認性が悪くなっているとき、或いは走行中に周囲の視認性が悪くなる地点が存在するときには、それぞれ夜間対応の誘導経路の演算を行う。但し、その夜間対応の誘導経路においては、後述するようにその誘導経路走行中に夜が明ける等によって夜間対応誘導経路を走行する必要が無くなることが考えられるため、ここでは夜間用の仮誘導経路の演算がなされる。これらの演算は、図1の夜間対応誘導経路演算処理部20における各種演算機能の一つとしてなされる。
【0077】
次いで、上記のようにして演算された夜間用仮誘導経路の、先に演算していた仮通常誘導経路との同一性を判別する(ステップS41)。ここで夜間用仮誘導経路は仮通常誘導経路と異なる経路であるとき、即ち本発明によって道路明るさデータを用いて得られた夜間対応誘導経路が通常の誘導経路とは異なる有用なものであるときには、それを夜間対応誘導経路として設定するものであるが、その夜間対応誘導経路走行中に夜が明ける等により通常の誘導経路を走行した方がよい場合が生じることを考慮し、ここでは仮の夜間対応誘導経路としておく。
【0078】
ステップS41で夜間用仮誘導経路は仮通常誘導経路と異ならない、即ち両者は同じであると判別したときには、先に得られた仮通常誘導経路を、これからの演算のために一応夜間用仮誘導経路としておく(ステップS42)。ステップS41で夜間用仮誘導経路は仮通常誘導経路と異なると判別したときには、その夜間用仮誘導経路のデータを用い、またステップS42で仮通常誘導経路を夜間用仮誘導経路としたときには仮通常誘導経路のデータを用いて、その夜間用仮誘導経路上における地勢・日の出時刻・天候等の条件の取込を、前記図4のステップS34と同様の手法によって行う(ステップS43)。
【0079】
先にステップS41において夜間用仮誘導経路が仮通常誘導経路と同じであると判別したときには、ステップS34においてその経路上の種々のデータを取り込んでいるが、ここでは特に日の出時刻を取り込むこととなる。但し、ステップS34で既に日の出時刻も取り込んでいるときには、ここで改めてデータを取り込む必要は特にない。
【0080】
次いで走行経路上の前記各種条件から、車両の消灯予測時刻を演算する(ステップS44)。なお、車両の消灯予測時刻は、車両の前照灯等を点灯しているときに、運転者が周囲の視認性が良くなることにより消灯しても良いと考える時刻であり、したがって視認性が良くなる時刻と同趣旨である。
【0081】
その後、車両の消灯予測時刻の目的地到達予測時刻に対する位置を判別し(ステップS45)、前であると判別したときには車両の消灯予測時刻での車両走行地点を予測演算する(ステップS46)。これは前記図4のステップS37と同様の手法によって行うことができる。次いで上記の演算によって得られた車両の消灯予測地点の設定を行い(ステップS47)、その車両消灯予測地点から目的地までの通常の誘導経路の演算を行う(ステップS48)。即ち、夜間対応誘導経路を走行中に夜が明けて周囲が明るくなり、視認性が良くなったときには、通常の誘導経路よりも遠回りする傾向のある夜間対応誘導経路の走行は不要となり、通常の経路を走行すればよいので、ここからは通常の誘導経路を走行するための演算を行う。
【0082】
その演算の結果、車両消灯予測地点から目的地までの通常誘導経路の、先に得られている夜間用仮誘導経路との同一性を判別する(ステップS49)。この判別は前記ステップS41と同様であり、ここで異なると判別したとき、即ち夜間用の誘導経路よりも良いと思われる通常の誘導経路が得られたときには、現在地から目的地までの新たな誘導経路を、夜間対応誘導経路として設定する(ステップS50)。一方、前記ステップS45において、車両の消灯予測時刻は目的地到達予測時刻の前ではない、即ち目的地に到達するまでの間に夜が明けないと判別したとき、及びステップS49において車両消灯予測地点から目的地までの通常誘導経路は夜間用仮誘導経路と異ならない、即ち同じ経路であると判別したときには、いずれもステップS51に進み、夜間用仮誘導経路を夜間対応誘導経路として設定する。
【0083】
図4のステップS39で仮通常誘導経路を誘導経路として設定し、またステップS50で新たな誘導経路を夜間対応誘導経路として設定し、更にステップS51で夜間用仮誘導経路を夜間対応誘導経路として設定した場合には、いずれもステップS52において誘導経路の確定処理を行って(ステップS52)、図4から図5に示す一連の夜間対応誘導経路の演算処理を終了する。
【0084】
図3におけるステップS14において、前記のようにして夜間対応誘導経路の演算処理が行われ、誘導経路が確定した後は、車両がその誘導経路にしたがって安全に走行できるように案内を行う(ステップS15)。その後、視認性の悪い、暗い道路に所定距離以内に近付いたか否かの判別を行う(ステップS16)。その判別の結果、視認性の悪い、暗い道路に例えば300m等の所定距離以内に近付いたと判別したときには、ステップS17に進んで視認性の悪い暗い道路に近付いたことと、そこまでの距離を音声等によって案内する。これらの処理は図1の視認性不良道路検出処理部23で検出した道路について、視認性悪化地点接近検出部24でその道路を走行することとなる地点に所定距離以内になったことを検出し、誘導経路案内出力部26の視認性悪化地点接近案内出力部27から外部出力することによって行われる。また、利用者に対する案内出力として、例えば視認性の悪い暗い道路を走行しているとき、視認性の良い明るい道路に至るまでの距離を案内しても良い。
【0085】
このような案内を行った後、また前記ステップS16で視認性の悪い道路に未だ所定距離以内に近付いていないと判別したときには、目的地への到着の有無を判別し(ステップS18)、未だ目的地に到着していないときにはステップS15に戻って先の誘導経路に従って走行案内を継続して、前記作動を繰り返す。
【0086】
前記ステップS13において、夜間対応誘導経路の案内指示が利用者等から無かったと判別したときには、ステップS19に進んで従来と同様に通常用の誘導経路の演算処理を行い、その後この通常用誘導経路の確定を行い(ステップS20)、その誘導経路にしたがって走行案内を行い(ステップS21)、目的地到着の有無を判別して(ステップS22)、未だ目的地に到着していないときにはステップS21に戻って通常用誘導経路の走行案内を継続する。ステップS18及びステップS22において目的地に到着したと判別したときには、上記誘導経路の案内処理を終了する(ステップS23)。
【0087】
上記のように作動する本発明においては、例えば図9(a)に示されるように、車両の現在位置と目的地との間に明るい道路と暗い道路が存在するとき、従来は同図(b)に黒い太線で示すように道路の明るさに関係なく、走行距離の短い経路を誘導経路に設定していたものであるが、本発明において利用者ができるだけ明るい道を走行したいと望むときには、同図(b)の太い破線で示すように、少々遠回りとなるが明るい道路を選択して走行することができるようになる。このように明るい道路を利用することによって、利用者の精神的な負担の軽減や運転の安全性の確保が可能になる。
【0088】
上記の例においては、車両の出発前に夜間対応誘導経路を演算し、それにしたがって走行案内を行う例を示したが、そのほか、通常の誘導経路を走行中に周囲が暗くなってきたときのように、利用者が急に夜間対応の誘導経路の提示を必要としたときでも、その旨の指示を行うことにより、現在地から目的地までの夜間対応誘導経路を同様の処理によって演算し、提示することができる。
【0089】
また、上記実施例では夜間対応誘導経路の案内指示があったときに、車両走行中に視認性の悪い道路に近付いたときその旨の案内を行う例を示したが、夜間対応の誘導経路の案内を行っていない通常の誘導経路を走行している時も、道路の明るさデータを有効に利用して、視認性の悪い道路に近付いたときに、その旨の案内を行うようにしても良い。
【0090】
通常、ナビゲーション装置は、よく知らない目的地に行く場合に利用することが多いが、本発明は、利用者の生活圏においても周囲が暗い場合に利用することで、歩行者の飛び出し・路上に駐車している車などの危険を回避することが可能になる。
【0091】
衛星写真を撮影する時間帯を複数設け、道路の明るさを特定の時間帯毎に格納することによって、道路を通過する時刻に応じて最も明るい道路を利用したルートを算出することが可能になる。
【0092】
さらに、メッシュ状の輝度情報をデータベースに格納し、ナビゲーションシステムが表示する地図上に夜間の衛星写真を重ね合わせて表示することによって、海外などで十分に地図が整備されていない地域を走行する場合でも、利用者はできるだけ明るい領域を選びながら走行することが可能になる。
【0093】
また、地図データベースに含まれる道路の明るさ情報を利用して、例えば道路の色の彩度を変化させるなどして地図上に道路の明るさを表現しても良い。これにより、利用者は案内ルートがない場合 即ち 目的地を設定していない場合でも、できるだけ明るい道路を選択して走行することが可能になる等、本発明は種々の態様で実施することができる。
【0094】
さらに、地図データベースに、各種自治体で管理している街灯などの設置場所、或いは地図に記載された街灯の設置場所のデータを加えることでも本発明を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は車両に搭載したナビゲーション装置以外に、車両に持ち込んで使用するナビゲーション装置、或いは携帯電話に同様の機能を備えたもの等、ナビゲーション機能をなす種々の装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例における道路の明るさデータの作成処理を行う作動フロー図である。
【図3】同実施例における誘導経路の案内処理を行う作動フロー図である。
【図4】図3のステップS14における夜間対応誘導経路の演算処理を行う作動フロー図である。
【図5】図4のステップS38に引き続いて行われる作動フロー図である。
【図6】DMSPによる夜間の地上撮影画像の例を示す図である。
【図7】同撮影画像の分析により得られるメッシュ毎の明るさデータと、それに重ね合わせた道路の例を示す図である。
【図8】誘導経路を演算する際に利用する道路リンクテーブルとノードテーブルの例を示す図である。
【図9】(a)は現在地から目的地周辺迄の道路における明るい道路と暗い道路の例を示し、(b)はその道路において本発明により得られる明るい道路を優先することによって得られた誘導経路と、従来の誘導経路とを比較して示す図である。
【符号の説明】
【0097】
11 誘導経路演算案内処理部
12 現在地・目的地入力部
13 誘導経路演算指示入力部
14 夜間対応誘導経路案内指示検出部
15 通常誘導経路演算部
16 夜間対応誘導経路演算部
17 車両点灯検出部
18 車外照度計
19 車両点灯環境検出部
20 夜間対応誘導経路演算処理部
21 車両点灯・消灯地点予測演算部
22 視認性条件検出部
23 視認性不良道路検出処理部
24 視認性悪化地点接近検出部
25 誘導経路記憶部
26 誘導経路案内出力部
27 視認性悪化地点接近案内出力部
31 明るさデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の明るさデータを用い、明るい道路を優先した誘導経路を演算する夜間対応誘導経路演算手段を備えたことを特徴とする夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項2】
車両の周囲の明るさを検出する車両周囲明るさ検出手段を備え、
前記車両周囲明るさ検出手段で周囲が暗いことを検出したとき、前記夜間対応誘導経路演算手段により明るい道路を優先した誘導経路を演算することを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項3】
誘導経路上で周囲が暗くなる地点または明るくなる地点を予測演算する予測演算手段を備え、
前記予測演算手段により誘導経路上で周囲が所定以上暗くなる地点、または明るくなる地点を検出したときには、その地点から目的地まで前記夜間対応誘導経路演算手段により明るい道路を優先した誘導経路の演算を行うか、または明るい道路の優先を行わない通常誘導経路の演算を行うことを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項4】
道路が暗い視認性不良道路を検出する視認性不良道路検出手段を備え、
誘導経路走行中に前記視認性不良道路検出手段で視認性不良道路に所定距離以内に接近したことを検出したとき、視認性不良道路接近の通知を行うことを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記通知は、視認性不良道路を走行する迄の距離、または視認性不良道路から視認性の良い道路に出るまでの距離を通知することを特徴とする請求項5記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記道路の明るさデータは、夜間の衛星写真により道路の明るさを算出し、地図データベースに格納したものであることを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記道路の明るさデータは、都市部とそれ以外の地域で、道路の明るさを定義する基準を変更したものであることを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記道路の明るさデータは、時間帯毎に道路の明るさ情報を地図データベースに格納しており、
前記夜間対応誘導経路演算手段は、前記道路の明るさデータを用い、走行時刻に応じて明るい道路を選択して誘導経路を演算することを特徴とする請求項1記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記夜間の衛星写真の情報を地図データベースに格納し、地図と重ね合わせて表示することを特徴とする請求項6記載の夜間走行支援ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−300571(P2006−300571A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119118(P2005−119118)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】