説明

封止用樹脂組成物および半導体封止装置

【課題】Pd−Au、Ag等のプレプレーティングフレームとの接着性が高く、赤外線リフロー後の耐湿性に優れる等の長期使用に対する信頼性が高く、かつ成形性のよい封止用樹脂組成物、および、これを用いた高信頼性の半導体封止装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、(D)トリフェニルフォスフィン、および(E)無機充填剤を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)成分を0.01〜5重量%、前記(D)成分を0.001〜1重量%、前記(E)成分を25〜95重量%の割合で含有してなる封止用樹脂組成物、および、その硬化物により半導体素子を封止した半導体封止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の封止に用いられる封止用樹脂組成物、およびこれを用いた半導体封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体装置では、半田メッキに換えて、PdやPd−Au等のプレプレーティングを施したフレームを採用した半導体パッケージが増加している。
【0003】
従来のエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂および無機充填剤からなる樹脂組成物によって封止した、PdやPd−Au等のプレプレーティングフレームを採用した半導体封止装置は、プレプレーティングフレームと封止樹脂との接着性が不十分であった。特に吸湿した半導体装置を赤外線(IR)リフロー方式で表面実装すると、封止樹脂とリードフレーム、あるいは封止樹脂と半導体チップとの間に剥がれが生じて耐湿劣化を起こし、電極の腐食による断線や水分によるリーク電流を生じ、その結果、半導体封止装置は長期の信頼性を十分に保証することができないという問題があった。このため、耐湿性の影響が少なく、半導体装置全体のIRリフローによる表面実装を行っても耐湿劣化の少ない成形性のよい材料の開発が強く要望されていた。
【0004】
このような、Pd−Au等のプレプレーティングフレームとの接着性の高い封止用樹脂組成物の開発に対する強い要望に応えるために、樹脂組成物に上記フレームとの接着性を向上させる添加剤を導入する技術が提示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、Pd−Au等のプレプレーティングフレームに十分に接着し、かつ成形性を損なわない封止用樹脂組成物は未だ得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平11−12441号公報
【特許文献2】特開平11−80513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解消し、上記要望に応えるためになされたものであって、Pd−Au、Ag等のプレプレーティングフレームとの接着性が高く、赤外線リフロー後の耐湿性に優れる等の長期使用に対する信頼性が高く、かつ成形性のよい封止用樹脂組成物、および、これを用いた高信頼性の半導体封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を主成分とする封止用樹脂組成物に、分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物とトリフェニルフォスフィンを添加することによって、Pd−Auプレプレーティングフレーム等との十分な接着性を得ることができ、成形性がよく、赤外線リフロー後の耐湿性にも優れた封止用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、(D)トリフェニルフォスフィンおよび(E)無機充填剤を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物を0.01〜5重量%、前記(D)トリフェニルフォスフィンを0.001〜1重量%、前記(E)無機充填剤を25〜95重量%の割合で含有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導体封止装置は、前記本発明の封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体素子が封止されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な成形性を保ちながら、高い接着性、特にPd−Au、Ag等の金属表面を有するフレームに対する十分な接着性を有するとともに、赤外線リフロー後の耐湿性に優れる等の長期使用に対する信頼性が高い封止用樹脂組成物およびこのような封止用樹脂組成物で封止された高信頼性の半導体封止装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の封止用樹脂組成物に用いる各成分について説明する。
【0012】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造および分子量など特に制限はなく、一般に封止用材料として使用されているものを広く包含することができる。具体的には、下記一般式(1)で示される化合物等のビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、下記一般式(2)で示されるようなフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の他、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、多官能型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
【化1】

(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
【0014】
【化2】

(但し、式中、RおよびRは、水素原子またはアルキル基を、nは1以上の整数をそれぞれ表す)
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物における、(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物全体に対して、5〜50重量%であることが好ましく、7〜15重量%であることがより好ましい。この含有量が5重量%未満では樹脂組成物の流動性が低く成形が困難な場合があり、50重量%を超えると硬化物の吸湿量が多くなり半導体封止装置の信頼性が低下することがある。
【0016】
本発明に用いる(B)フェノール樹脂としては、前記(A)のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有するものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、トリフェニルメタン型樹脂、下記一般式(3)に示されるフェノールアラルキル型樹脂、下記一般式(4)に示されるフェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
【化3】

(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
【0018】
【化4】

(但し、式中、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を、nは0または1以上の整数をそれぞれ表す)
【0019】
本発明の封止用樹脂組成物における、(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の配合割合は、前述した(A)エポキシ樹脂のエポキシ基(a)と(B)フェノール樹脂のフェノール性水酸基(b)との当量比(a)/(b)の値が0.1〜10の範囲内である配合割合が好ましい。より好ましい(a)/(b)の範囲は、0.5〜1.5である。前記当量比(a)/(b)が0.1未満あるいは10を超えると、組成物の耐湿性、耐熱性および成形作業性、並びに硬化物の電気特性等が不良となることがある。
【0020】
本発明に用いる(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物は、樹脂組成物の硬化性を低下させることなく、各種半導体素子、リードフレーム材等、特にPd−Auプレプレーティングフレーム等の金属表面を有するフレームに対する接着性を高める働きを有する成分である。(C)成分の官能基中の硫黄原子は、非鉄金属である金、銀、銅との親和力が高く、これにより前記接着性を向上させる作用が得られる。
【0021】
このような(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物の具体例としては、4,4’−ジチオジモルフォリン、4,4’−テトラチオジモルフォリン等のポリチオジモルフォリン類(但し、硫黄原子数は2〜4)、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のテトラアルキルチウラムポリスルフィド類(但し、ポリスルフィド部分の硫黄原子数は2〜4)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリメトキシシリルエチル)テトラスルファン等のビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルファン類(但し、硫黄原子数は2〜4)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
これらのなかでも、(A)成分および(B)成分との相溶性の観点から、本発明に好ましく用いられる(C)成分としては、下記式(5)に示される4,4’−ジチオジモルフォリン、下記式(6)に示されるジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、下記式(7)に示されるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン等が挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
なお、本発明の封止用樹脂組成物に用いる上記(C)成分としては、市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、川口化学工業社製のアクターR(4,4’−ジチオジモルフォリン)、川口化学工業社製のアクセルTRA(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)、日本ユニカー社製のA−1289(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン)等が挙げられる。
【0027】
本発明の封止用樹脂組成物における(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物の配合割合は、樹脂組成物全体に対して0.01〜5重量%であり、好ましい配合割合は、0.02〜1重量%である。(C)成分の配合割合が0.01重量%未満では、各種半導体装置材料、特にPd−Auプレプレーティングフレーム等の金属表面を有するフレームに対する接着性向上の効果が得られず、また、5重量%を超えると成形時の封止樹脂の硬化が不良となる。
【0028】
本発明に用いる(D)トリフェニルフォスフィンは、本発明の封止用樹脂組成物を十分な物性をもった硬化物として硬化させるために必須の成分である。本発明の封止用樹脂組成物および後述する半導体封止装置は、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物および(D)トリフェニルフォスフィンを用いることにより、本発明の目的とする特性が得られるものである。すなわち、樹脂組成物に(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、および(D)トリフェニルフォスフィンを配合することにより、十分な成形性を保ちながら、Pd−Auプレプレーティングフレーム等に対する十分な接着性が得られ、半導体封止装置においてIRリフロー後の長期にわたる耐湿性等の信頼性を向上させることが可能となる。
【0029】
本発明の封止用樹脂組成物における(D)トリフェニルフォスフィンの配合割合は、樹脂組成物全体に対して0.001〜1重量%であり、好ましい配合割合は、0.01〜0.5重量%である。(D)トリフェニルフォスフィンの配合割合が0.001重量%未満では、樹脂組成物のゲルタイムが長く、硬化特性も不良となる。また、1重量%を超えると極端に流動性が悪くなって成形性に劣り実用に適さなくなる。
【0030】
本発明に用いる(E)無機充填剤としては、一般に使用されているものが広く使用可能であり、具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができる。本発明の封止用樹脂組成物においては、これらのなかでも特に溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナの各粉末が好ましい。本発明の封止用樹脂組成物における(E)無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体に対して25〜95重量%の範囲であり、好ましい配合割合は、50〜95重量%である。(E)無機充填剤の配合割合が25重量%未満では、樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、半田耐熱性、機械的特性および成形性が低下し、また、95重量%を超えるとかさばりが大きくなり、成形性に劣り実用に適さなくなる。
【0031】
本発明の封止用樹脂組成物は、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、(D)トリフェニルフォスフィンおよび(E)無機充填剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、例えば、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン系等の離型剤、エポキシ変性ポリブタジエン、シリコーンオイル等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、カップリング剤等の無機充填剤の処理剤、種々の硬化促進剤などを適宜、添加配合することができる。
【0032】
なお、上記硬化促進剤として具体的には、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン等のジアザビシクロ化合物およびこれらの塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のトリフェニルフォスフィン以外の有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0033】
また、上記カップリング剤として具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤や、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する方法としては、一般的な方法をとることが可能である。具体的には、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、(D)トリフェニルフォスフィンおよび(E)無機充填剤の必須成分の所定量および適宜選択されるその他の成分の適当量を配合し、これらをミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による加熱混合処理(加熱温度は概ね70〜100℃)を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体封止をはじめとする電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0035】
本発明の半導体封止装置は、上記のようにして得られた本発明の封止用樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止することにより容易に製造することができる。封止の方法は特に限定されるものではなく、最も一般的な方法である低圧トランスファー成形法の他に、射出成形、圧縮成形および注型などによる封止の方法をとることも可能である。封止用樹脂組成物は封止成形の際の加熱によって硬化し、最終的にはこの組成物の硬化物によって封止された半導体封止装置が得られる。本発明の封止用樹脂組成物においては、硬化の際の加熱温度は、150℃以上とすることが好ましい。硬化にかかる時間は、用いる樹脂組成物の組成、硬化温度にもよるが、おおむね1〜4時間で硬化を完了させることができる。
【0036】
本発明の封止用樹脂組成物を用いて封止を行う半導体装置としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタおよびダイオード等で特に限定されるものではない。なお、本発明の封止用樹脂組成物を、Ag、Pd、Au、Pd−Au等の金属表面を有するフレーム上に半導体素子を封止する際に使用すれば、高接着性を有する、特に該フレームに対して十分に接着性をもった封止が可能なことから、本発明はこのようなフレームを有する半導体装置に好適に用いられる。また、金属表面を有するフレームとは、フレーム表面の一部または全部がAg、Pd、Au、Pd−Au等の金属で構成されたフレームをいい、例えば、メッキ、蒸着、プレプレーティング等のいずれの処理で形成された金属表面であっても、本発明でいう金属表面に含まれるものである。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
(A)成分:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、商品名:ESCN−190、エポキシ当量215)11重量%(得られる樹脂組成物全体に対する重量%。以下、各成分の配合量はすべて「得られる樹脂組成物全体に対する重量%」で示す。)に、(B)成分:ノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:BRG−557、フェノール当量107)5.7重量%、(C)成分:4,4’−ジチオジモルフォリン(川口化学工業社製、商品名:アクターR)0.05重量%、(D)成分:トリフェニルフォスフィン(北興化学社製、商品名:PP−200)0.2重量%、(E)成分:溶融シリカ粉末(溶融球状シリカ)(電気化学工業社製、商品名:FB−100)81.85重量%、および、カルナバワックス(セラリカ野田社製、商品名:カルナバワックスNo1)0.3重量%、着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:MA−100)0.3重量%、シランカップリング剤:3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、商品名:Y−9669)0.3重量%、液状低応力添加剤:エポキシ変性ポリブタジエン(日本石油化学社製、商品名:E−700−6.5)0.3重量%を配合し、常温で混合し、さらに90〜95℃で混錬してこれを冷却粉砕して封止用樹脂組成物を調製した。
【0039】
[実施例2〜6]
表1に示す(A)〜(E)成分およびその他成分を表1に示す量用いた以外は、実施例1と同様にして、封止用樹脂組成物を調製した。
【0040】
【表1】

【0041】
[比較例1]
表2に示す各種成分を表2に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成において(C)成分および(D)成分を含有しない組成の比較例1の封止用樹脂組成物を調製した。
【0042】
[比較例2]
表2に示す各種成分を表2に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成において(C)成分を含有しない組成の比較例2の封止用樹脂組成物を調製した。
【0043】
[比較例3]
表2に示す各種成分を表2に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成において(D)成分を含有しない組成の比較例3の封止用樹脂組成物を調製した。
【0044】
[比較例4]
表2に示す各種成分を表2に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成において(C)成分0.05重量%の代わりに、硫黄原子1個を有する有機化合物であるγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、商品名:Y−1504)0.2重量%を含有する組成の比較例4の封止用樹脂組成物を調製した。
【0045】
[比較例5]
表2に示す各種成分を表2に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成において(C)成分の代わりに硫黄(和光純薬社製:硫黄(連続する硫黄原子数約8個))を同量含有する組成の比較例5の封止用樹脂組成物を調製した。
【0046】
【表2】

【0047】
上記各実施例および各比較例で得られた封止用樹脂組成物について、下記に示す方法により樹脂組成物、硬化物、成形品(半導体封止装置)としての各種特性を評価した。なお、封止用樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間2分間の条件で行い、その後175℃、4時間の後硬化を行った。
【0048】
<樹脂組成物の特性評価>
[最低溶融粘度]
高化式フロー測定装置(島津製作所製、CFT−500C)を用いて封止用樹脂組成物を175℃、剪断応力1.23×10Paの環境下に配置し、最低溶融粘度(η1)を測定した。
【0049】
[硬化時間]
175℃に保たれた熱盤上で一定量(1.0g)の封止用樹脂組成物を直径4〜5cmの円状に広げ一定速度(1回/2.5秒)で練り合わせ、試料が増粘し最終的に粘りがなくなるまでの時間を計測した。
【0050】
[成形性]
トランジスタ半導体装置80個を、封止用樹脂組成物を用いて上記条件でトランファー成形し、成形物の表面巣の発生を観察した。なお、評価は以下のようにして実施した。
○:巣の発生なし(0/80)、
△:巣がわずかに発生(1〜5/80)、
×:巣が多数発生(6〜80/80)
ただし、括弧内の数字は、「巣が発生した個数/試料数(80個)」を表す。
【0051】
<硬化物の特性評価>
[吸水率]
上記条件によるトランファー成形によって直径50mm、厚さ3mmの円板状の硬化物を得た。これを127℃、2.5気圧の飽和水蒸気中に24時間放置して、増加した重量を求め、試験に用いた封止用樹脂組成物重量に対する増加重量の百分率を吸水率(%)とした。
【0052】
[接着性]
上記条件によるトランスファー成形によって接着面積4mmの成形品を、Pd−Auプレプレーティングされたフレーム上に成形した後、ボンドテスター((株)セイシン企業製)を用いて、横方向から力を加え、剥離に要する力(剪断接着力)を測定した。
【0053】
<成形品の特性評価>
[耐湿信頼性]
封止用樹脂組成物を用いて、2本以上のアルミニウム配線を有するシリコン製チップ(テスト用素子)をPd−Auプレプレーティングフレーム上に接着するかたちに、175℃で120秒間トランスファー成形して、QFP−208パッケージ、2.8mm厚の成形品を作製し、これについて175℃、4時間の後硬化を行った。
【0054】
このようにして得られた成形品を、予め、40℃、相対湿度90%で、100時間吸湿処理した後、最高温度260℃のIRリフロー炉に4回通した。その後、この成形品について127℃、2.5気圧の飽和水蒸気中でPCTを行い、100時間後、200時間後および300時間後の、アルミニウムの腐食による断線を不良として成形品20個中の不良数を評価に用いた。
【0055】
得られた評価結果を実施例1〜6については表1の最下欄に、比較例1〜5については表2の最下欄に示す。
【0056】
表1および表2から明らかなように、本発明の封止用樹脂組成物を用いれば、成形性もよく、Pd−Auメッキのインサートとの接着性にも優れ、IRリフロー後においても剥離することなく、耐湿性に優れ、その結果、電極の腐食による断線や水分によるリーク電流の発生を著しく低減することができ、しかも長時間にわたって信頼性を保証することができる半導体封止装置を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物、(D)トリフェニルフォスフィンおよび(E)無機充填剤を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物を0.01〜5重量%、前記(D)トリフェニルフォスフィンを0.001〜1重量%、前記(E)無機充填剤を25〜95重量%の割合で含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物が、ポリチオジモルフォリン類、テトラアルキルチウラムポリスルフィド類およびビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルファン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)分子中に連続した2〜4個の硫黄原子を含む有機化合物が、4,4’−ジチオジモルフォリン、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドおよび(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体素子が封止されてなることを特徴とする半導体封止装置。
【請求項5】
Ag、Pd、AuおよびPd−Auから選ばれる金属表面を有するフレーム上に半導体素子が封止されていることを特徴とする請求項4記載の半導体封止装置。

【公開番号】特開2010−83956(P2010−83956A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253155(P2008−253155)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】