説明

導電層のエッチング装置およびエッチング方法

本発明は、透明基板(1)上の導電性層(2)を化学エッチングする装置に関し、該装置は、該基板(1)を支持する支持手段(4)と溶液(5)を吹き付ける手段とを備えている。本発明の特徴は、上記吹き付け手段(5)が上記基板上方に配置された複数のノズル(50)から成り、該ノズルは、エッチング対象である上記層上に少なくとも2種類の溶液(7、8)を、別々に、または相互に、またはノズル部での混合液として、同時に吹き付けことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板タイプの透明基板上に堆積された層、更に詳しくは電極などの導電要素を得るための少なくとも僅かでも導電性を有する層をエッチングする装置に関する。本発明は、上記のような導電層をエッチングする方法にも関する。
【0002】
本発明は特に、ドープされた金属酸化物ベースまたは金属ベースの層、望ましくは、固有の性質および厚さにより透明である層に適用するのに適している。しかし、本発明は不透明な層を排除するものではない。
【背景技術】
【0003】
ガラス基板をベースにした多くの製品は、導電要素、特に解像度が良好または非常に高いパターンとしての導電要素を必要としている。一例として、フラットスクリーン型の電解放出ディスプレー用ガラスパネルの電極として、光起電力電池の電極として、加熱ガラスあるいはアンテナ封入ガラスの導電要素として必要とされている。
【0004】
ヨーロッパ公開特許公報EP-1322145には、導電性金属酸化物層の化学エッチング技術が開示されている。エッチングする層の上にマスクを堆積し、マスクで覆われていない領域を酸性pHまたはアルカリ性Phの溶液と接触させかつ亜鉛またはアルミナの粉末を表面に吹き付けることによって上記領域をエッチングし、次いで上記層を水ベースの溶液および/または有機溶媒で洗浄することにより清浄化し、そして最後にマスクを除去する。
【0005】
しかし、この方法は、高いエッチング解像度が必要な用途に適用した場合、十分な結果が得られない。エッチングが不均一であり、マスクの下までエッチングされるオーバーエッチングが起きてしまい、電極間の距離が一定せず、実用に適さない。
【0006】
また、Snドープ酸化インジウム(ITO)ベースの層に適用すると、ITO粒子等のエッチング残滓が生じ、単純な水洗浄ではこれを完全に除去できない。そのため特殊な洗剤が必要になり、最終製品の製造コストが増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、上記の問題を解消し、エッチング品質を高めて工業規模での製造を可能とするために、導電性を有し少なくとも2種のエッチング溶液が必要な層を化学的にエッチングする新規で効果的な方法および容易に使用できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、「導電性を有する層」とは、比抵抗が最大で4×10−2Ωcmである層、特に約4×10−3から最小で4×10−4Ωcmまでの層を意味する。より詳しくは、全体的な層厚さ50〜1000nmについて、比抵抗が最大で1000Ω/□、望ましくは最大で500Ω/□である。
【0009】
上記の層をエッチングして種々の用途のための電極のアレーを得る。しかし、本発明のエッチング方法はこれに限定することなく、導電性が殆どまたは全く無い層であっても、装飾目的などでエッチングする利点があれば、適用できる。
【0010】
本発明によれば、透明基板上の導電性を有する層を化学エッチングする装置は、該基板を支持する支持手段と溶液を吹き付ける吹き付け手段とを備えた装置であって、
上記吹き付け手段は、上記基板の上方に配置された複数のノズルから成り、該複数のノズルは、エッチングする層に少なくとも2種類の溶液を別々に又は混合して、同時に吹き付けるようになっており、該混合はノズルまたはノズルより上流側で、吹き付け前30秒以内に行なうことを特徴とする装置である。
【0011】
望ましくは、ノズルは少なくとも1本の長いレールで支持されている。この場合、吹き付け手段は、基板の最長寸法方向に沿って延在し該最長寸法とほぼ同じ長さのレールを備えている。例えば、少なくとも2本のレールが基板の最長寸法全長に亘って延在し、相互の間隔が基板の最短寸法にほぼ対応している。吹き付け手段は更に、基板の最短寸法方向に沿って延在し該最短寸法にほぼ対応する長さの少なくとも1本のレールを備えていてもよい。あるいは、吹き付け手段は、基板の最長寸法全長に亘って延在し、相互の間隔が基板の最短寸法にほぼ対応している少なくとも2本のレールを備え、これら2本のレールを横断する方向に延在する少なくとも1本の付加的なレールを備えている。
【0012】
別の実施形態においては、ノズルは基板の面積に対応する面積を覆うように配設されている。
【0013】
1つの特徴によれば、複数のノズルは少なくとも1種類の溶液を連続してまたは交替で吹き付ける。
【0014】
他の特徴によれば、複数の溶液をいずれか1つの基板上へ一吹きでなく配送サイクルで吹き付けてもよい。その場合、2種類の溶液を配送サイクルに対応する期間に亘って吹き付け、2サイクル間の時間には例えば単一の溶液の拭き付けに用いてよく、この単一の溶液は上記2種類の溶液の一方または洗浄溶液のような別の溶液であってよい。
【0015】
ノズルへの溶液供給は種々の方法が可能である。個々のレールは別個の溶液の供給ラインを含み、いずれか1本のレールに保持された複数のノズルで同一の溶液を供給する。一つの変形態様として、少なくとも1本のレールが少なくとも2つの供給ラインを備え、各供給ラインはそれぞれ別種の溶液を別々にまたは並行して多数のノズルに配送する。もう一つの形として、基板の最長寸法方向に沿って延在する2本のレールには同一の溶液を供給し、横断方向に延在する付加的なレール(1本または複数本)には、もう一つ別種の溶液を供給することも可能である。
【0016】
基板の保持手段を固定式ノズルの下方で走行可能とし、かつ/または、ノズルを基板の上方で走行可能とし、基板を固定式または走行可能としてもよい。例えば、基板を固定式とし、第1溶液を噴出するノズルを固定式ノズルとし、それ以外の第2溶液噴出用ノズルを可動ノズルとする。こうすることによって、第1溶液を噴出するノズルを固定式レールに配設し、一方、少なくとも1本のレールは基板上方を移動し、前進・後進移動が可能であり、そのノズルから第2溶液を噴出させる、といった形態が可能である。
【0017】
もう一つの特徴によれば、ノズルを基板上方の1〜数十cmの高さに配置する。
【0018】
望ましくは、本発明の装置は、溶液吹き付け中にノズルおよび基板を覆うボックスを備えている。
【0019】
本発明の装置は特にエッチング対象として酸化錫ベースの層を含む基板に用いられ、複数のノズルによって塩酸溶液と亜鉛ベース溶液を同時に噴出させる。
【0020】
亜鉛ベース溶液は水に亜鉛粒子を分散させた溶液であり、溶液はノズルへの供給中に回転機構システムによって連続的に攪拌されている。
【0021】
また、吹き付け手段は洗浄溶液を噴出するように設計され、この洗浄用吹き付け手段は固定式または基板上方で可動式である。
【0022】
本発明んエッチング装置はこのようにして非常に多種類の層をエッチングでき、特に、フッ素ドープした酸化錫(SnO:F)、砒素ドープした酸化錫(SnO:As)、アンチモンドープした酸化錫(SnO:Sb)、周期律表VA族の金属をドープしたものなどのような、ドープされた金属酸化物の層をエッチングできる。更に、錫ドープした酸化インジウム(ITO)、または任意の層、例えば銀層をベースにした層もエッチングできる。これらの層は、比較的厚く、例えば数nm〜数百nmの厚さであってよい。すなわち、層の厚さは20〜1000nm、特に40nm以上、例えば200〜380nmであってよい。
【0023】
特に、本発明の装置はエッチング対象として酸化錫ベースの層を有する基板に用いることができ、ノズルは塩酸溶液と亜鉛ベース溶液を同時に噴出する。
【0024】
本発明のもう一つの主題は、ガラスタイプの透明基板上のドープされた金属酸化物タイプの導電性を有する層を化学エッチングする方法であり、該層上にマスクを堆積させる少なくとも1つの工程と、該層の該マスクに覆われていない領域をエッチングする工程とを含み、該エッチングする工程は、該層の該領域を酸性pHまたはアルカリ性pHの第1溶液に接触させる操作と、第2の亜鉛またはアルミニウムの溶液を吹き付ける操作とから成るエッチング方法において、上記マスクに覆われていない領域に上記第1溶液と上記第2溶液を同時に吹き付けることを特徴とするエッチング方法である。
【0025】
望ましくは、2種類の溶液を別々にまたは混合液として、同時に吹き付ける。この混合は、吹き付けの時点でまたは吹き付け前30秒以内に行なう。その理由は、2種類の溶液を混合する場合、混合は吹き付け時点より早すぎてはならず、両溶液が接触し合う時点でエッチングが起きるのが最適だからである。
【0026】
本発明の方法を実行するために前述した本発明の装置を用いると、別々の2種類の溶液を同時に吹き付けて、基板上に到達した時点で実効的に両溶液が混合し、均一なエッチングを行なうことができる。
【0027】
望ましくは、2種類の溶液を液滴の形で吹き付ける。液滴は、例えば霧や雨に似た形態であってよく、その微細さは、エッチングする層のタイプ(種類)、厚さ、ノズルと基板との距離、ノズルに対する相対的な基板の走行速度などに依存している。
【0028】
1つの特徴によれば、本発明の方法によるエッチングの対象は、ドープされた金属酸化物をベースにする層、特にフッ素、砒素、またはアンチモンをドープした酸化錫をベースにする層、または、錫ドープした酸化インジウム(ITO)である。
【0029】
層の性質および厚さを考慮して腐食性エッチング溶液の濃度およびエッチング時間を調整する。エッチング時間は一般に数分以内のオーダーである。本発明の方法は、SnOをベースとする層、特にSnO:Fをベースとする層をエッチングするのに特に効果的であることが分かった。これまでは、それとは反対にこの層は非常に硬質で化学的な耐性が強いためエッチングが困難であるとして知られていた。本発明により上記のタイプの層の用途が格段に広がり、特に電子分野において電極材料として通常用いられていたITOに替わり得る。ITOは有効ではあるが、必要なレベルの導電性を得るには一般にアニール処理が必要である。
【0030】
1つの特徴によれば、溶液の亜鉛またはアルミニウムは1種類または複数種類の有機および/または水性の溶媒に懸濁した状態であり、少なくともレオロジー特性の調整剤を任意に添加してある。
【0031】
酸性pH溶液は少なくとも1種類の水性溶媒またはアルコールタイプの有機溶媒を含み、望ましくは水/エタノールまたは水/イソプロパノールのタイプの水・アルコール混合液をベースとしてよい。その理由は、酸を含有する水にアルコールを加えると、亜鉛との接触で発生する水素バブルのサイズをより良く制御して、特にバブルサイズを小さくして層のエッチングをより「穏やかに」に行なうことができるからである(これにより、Hバブルの機械的な作用によりマスクが剥がれる危険性を回避できる)。アルコールを補完または代替するものとして、アニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤を適宜加えることによっても上記効果が得られる。塩基性pHの溶液は、少なくとも1種の水性溶媒、アルコール溶媒または水性/アルコール溶媒と、NaOHタイプの強塩基と、任意に界面活性剤タイプの添加剤とを含んで成る。
【0032】
もちろん本発明の方法は、エッチング工程の後に清浄化処理によって層を含む基板を清浄化し、そしてマスクを除去する。
【0033】
例えば、清浄化処理は、水および/または有機の溶媒をベースとする溶液を吹き付けるか該溶液中に浸漬して層を洗浄することにより行なうことができる。
【0034】
マスクの除去は種々の方法で行なうことができる。先ず選択されるのは化学処理であり、マスクを適当な溶媒、特に実質的に有機溶媒に溶解させる処理であるが、これに限定しない。有機溶媒としては、トルエン、テレピン油、トリクロロメタン、ブチルアセテートを用いることができる。
【0035】
有機廃液の再処理を望まない場合には、マスク除去を他の処理により行なうことが望ましい。除去を超音波処理によって行なうことができるが、これは小サイズの基板に適している。除去を熱処理によって行なうこともでき、例えば基板を高温の空気ナイフ中を走行させると空気ナイフによりマスクが軟化して液状化し、これを空気の衝風で除去する。もう1つの方法として、温度250℃以上、特に400〜450℃程度の炉内に基板を通過させ、マスクを燃やして破壊する。このように非常に高温の処理の利点は、基板および基板上の被膜に対してエッチング処理とは関係なく必要となる他の熱処理と兼用できることである。これが特に当てはまる場合として、電子用途のガラス基板、例えば電解放出ディスプレーの作製に用いられるガラス基板は、寸法を安定化するために少なくとも1回は高温熱処理を施さなくてはならない。
【0036】
別の方法としては、マスクを適度の温度で熱処理して軟化させて除去を容易にした状態で、マスクを引っ張って剥がす。
【0037】
本発明の更にもう1つの主題は、種々の工業分野において導電性の電極あるいは要素の製造に本発明の装置および方法を使用することである。1つはガラス工業分野であり、例えば抵抗加熱ガラスユニットやアンテナ内蔵ガラスユニットに用いる導電性アレーの製造がある。もう1つは光起電力電池である。最後に電子工業にも適用でき、プラズマディスプレーのようなフラットスクリーンの電解放出ディスプレーの前面および裏面、あるいはタッチパネル、更に一般的には、放射線、特に可視光線の受容、伝達、放出ができるスクリーン/ガラスの製造に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下の具体例において、基板は厚さ約2.8mmのフロートガラス基板で、プラズマディスプレー型の電解放出ディプレーの前面および裏面に用いる基板である。
【0039】
図1に示すように、ガラスタイプの透明基板1は導電性を有する層2を備え、パターニングされたマスク3がエッチング対象である層2の上に堆積されており、マスク3に覆われていない露出領域20がエッチング対象となる。
【0040】
この目的は、層を高分解能でエッチングして、図示の例では平行な帯状の電極21(図2)を、例えば長さ100cm、幅500μmに形成することである。帯の間隔は例えば500μmである。
【0041】
プラズマディスプレー用として、形成される電極は幅300μm、間隔100μmの平行線やピクセルサイズの複雑形態を有する平行線にして、プラズマ放電を促進しディスプレーの輝度に作用することもできるし、あるいは、ハニカム状などの複雑な形状にすることもできる。
【0042】
堆積層は、例えばドープした金属酸化物系であり、用途に応じて厚さが100〜1000nmであって、CVD(化学蒸着法)によって連続してガラスリボン表面に直接堆積させるか、ガラスリボンを切断した複数のガラス基板の表面に順次に堆積させる。
【0043】
本発明のエッチング処理の工程は下記のとおりである。
【0044】
先ず、切断および適宜成形し、層2を被覆したガラス基板1を用いる。
【0045】
層全面にフォトレジスト樹脂マスク3を直接堆積させる。マスク3の厚さは典型的には3〜60μmである。マスク堆積方法は当業者に周知である。一例がアメリカ合衆国特許第3,837,944に開示されている。マスク3は図示の例では平行な帯状にパターニングされている。
【0046】
層2は、マスクで覆われていない露出領域20がエッチングされる。領域20も全体として平行な帯状である。
【0047】
次いで、後に説明する装置を用い、溶液を液滴として基板上に吹き付けて、層2の非マスク領域20を破壊する。例えばフッ素ドープ酸化錫(SnO:F)の層をエッチングする場合などのように、エッチングを実行するのに2種類の別個の溶液が必要な場合には、本発明の装置でこれら2種類の溶液を同時に吹き付けることができる。
【0048】
次いで、水とエタノール等のアルコールとの混合液などの浴で基板を洗浄する。別の洗浄方法として、基板上方から洗浄液を吹き付けてもよく、例えばノズル50に類似したノズルを固定式および/または、前進・後進する移動レール上に配置して基板上方で可動式にする。
【0049】
最後に、マスク3を除去する。これは、例えば基板をトリクロロメタンの浴中に浸漬することにより、あるいは、適当な炉中で基板に450℃×30minの熱処理を施すことにより行なう。これにより、21で示した形状にエッチングされた層が得られる。
【0050】
図3、4、5、6に、エッチング処理に必要な溶液吹き付け工程を行なうための本発明の装置の4種類の実施形態を模式的に示す。これらの実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明により少なくとも2種類の溶液を同時に吹き付ける装置はこれら以外にも考えられる。
【0051】
コンベヤベルトのように走行および停止ができる支持手段4の上に未エッチの基板1が載っており、少なくとも2種類の同時に吹き付けるための吹き付け手段5の下方に、基板が走行および一時的に位置決め可能になっている。吹き付け手段5は、保護ボックス6の内部に配設されており、保護ボックス6は両端が開放されていて、一端の入口から他端の出口まで基板が移動できる。
【0052】
これに対して、基板を静止させ、基板上方で吹き付け手段を移動させるか、あるいは、基板を吹き付け手段と同様にエッチング処理を実行するのに適したスピードで移動させることも考えられる。
【0053】
吹き付け手段5を構成する多数のノズル50は、この例では、エッチング対象である平行線に沿って配列され、1つまたはそれ以上の長手方向レールで支持されている。しかし、ノズルは別の形態で支持されていてもよく、エッチング対象の形状に応じて基板表面に対して種々の形態で配置されていてよい。
【0054】
望ましい実施形態においては、吹き付け手段5の下方に基板が固定配置されている場合、ノズルは基板の面積に対応する面積に亘って分布している。
【0055】
ノズルの出口オリフィスは、吹き付ける噴流に応じて円錐状や平坦状など種々の形状であってよく、望む液滴の微細さに応じて種々の寸法であってよい。
【0056】
望ましくは、ノズルを旋回可能とし、基板への噴流の吹き付け方向を、いずれか1本のレール内でまたは各レール内でノズル毎に変えられるようにする。
【0057】
各ノズルは、基板上方の位置に応じて、交代でまたは連続して作動させてよい。ただし、全体のうちの少なくとも幾つかは、少なくとも2種類の溶液を同時に配送する。
【0058】
1つのノズルをただ1種類の溶液に用いてもよいし、あるいは、1つのノズルで2種類の溶液の混合液を噴出させることでノズルのところで混合を起こさせ、混合液が基板へ吹き付けられる直前にあるいは、ノズルの上流側で混合液の噴出前30秒以内の時間内に、2種類の溶液間の相互作用を起こさせるようにしてもよい。
【0059】
エッチング対象の層の種類および厚さに応じて、本発明の方法に用いる種々のパラメータを調整する。このパラメータとしては、基板および/またはノズルの走行速度、基板からノズルまでの高さ、ノズルの向き、ノズルオリフィスの寸法・形状、吹き付ける溶液の流量などがある。
【0060】
図3に示した実施形態においては、吹き付け手段5は少なくとも2つの長手方向レール51、52を備えている。レール51、52は、基板の最長寸法に沿って基板の走行方向に延在しており、両レールの間隔は基板の幅にほぼ対応する。
【0061】
2種類の溶液を同時に吹き付ける必要があるエッチングの場合は、第1レールのノズルに第1溶液を供給し、これと平行したレールに第2溶液を供給する。
【0062】
2本のレールに2つの供給ラインから溶液を供給し、各溶液をレール全体のノズルに別々に到達させることも考えられる。
【0063】
図4に示す別の実施形態は、複数の長手方向レール53がノズル50を備えており、基板の走行方向を横切る方向すなわち基板の最短寸法の方向に配列されている。
【0064】
横断レール53の間隔に応じて、1本または複数本のレールを用いて、走行している基板の十分な面積に溶液を吹き付ける。
【0065】
2種類の溶液を同時に吹き付けるには、各レールに別々の2つの供給ラインから該2種類の溶液を供給し、該レールのノズルに別々に配送することが望ましい。
【0066】
図5に示す第3の実施形態は、少なくとも図3の2本の長手方向レール51、52に複数の付加的な横断方向レール53を追加した形態である。
【0067】
2種類の溶液を同時に吹き付けるには、例えば第1溶液7を長手方向レール51、52のノズルから吹き付け、第2溶液8を横断方向レール53のノズルから吹き付ける。いずれか1本のレールの複数のノズルに2種類の溶液を別々に供給することも考えられる(図示せず)。
【0068】
SnO:F層は、2種類の溶液を吹き付けする必要がある一例であり、この場合、酸溶液と亜鉛溶液を用いる。図5に示した実施形態は、2種類の溶液を長手方向レールと横断方向レールにそれぞれ供給することが望ましい。
【0069】
塩酸(HCl)溶液8は水とHClから成り、望ましくは1〜2モル/リットルHClの体積濃度であり、例えば厚さ200nmのエッチング用である。
【0070】
亜鉛溶液7は亜鉛粉末(粒子径3〜40μm)を水中に分散して成る。この混合液を適当な回転機構システム9により連続的に攪拌して、ノズルへの供給用のレールに配送することができる。
【0071】
一つの形態として、亜鉛混合液に、無機または有機の添加成分として、例えば鉄粉末あるいはシリカ粉末を含有させることにより、亜鉛粉末を分散状態に維持する。混合液をこのように均質化してノズルに供給できる。
【0072】
また、幾つかのノズルは固定式とし、それ以外のノズルを基板上方で可動にして望ましくは吹き付け時には定位置で停止させるという実施形態も考えられる(図6)。固定式ノズルは例えば第1溶液を噴出し、例えば基板の最短寸法全体に亘って延在する少なくとも1本のレール53によって支持させることができる。可動ノズルは第2溶液を噴出し、例えばやはり基板の最短寸法全体に亘って延在するレール54によって支持させ、適当な案内手段により基板上方で固定式ノズルの高さより実質的に下方で前進・後進移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】エッチング前の基板の断面図。
【図2】図1の基板のエッチング後の断面図。
【図3】本発明の装置の非限定的な実施形態の一つを示す。
【図4】本発明の装置の非限定的な実施形態の一つを示す。
【図5】本発明の装置の非限定的な実施形態の一つを示す。
【図6】本発明の装置の非限定的な実施形態の一つを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板(1)上の導電性を有する層を化学エッチングする装置であって、該基板(1)を支持する支持手段(4)と、溶液を吹き付ける吹き付け手段(5)を備えた装置において、
該吹き付け手段(5)は、該基板の上方に配置された多数のノズル(50)から成り、かつ、少なくとも2種類の溶液(7、8)を別々にまたは混合液としてエッチング対象である該層に同時に吹き付け、該混合液の混合は、ノズルにおいてまたはノズルより上流側において、吹き付け前30秒以内に行なわれることを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ノズル(50)が、少なくとも1本の細長いレール(51、52、53)によって支持されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2において、上記吹き付け手段(5)が、上記基板の最長寸法全体に亘って延在しかつ該最長寸法にほぼ対応する長さを有する少なくとも1本のレール(51)を含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2において、上記吹き付け手段(5)が、上記基板の最長寸法全体に亘って延在しかつ該基板の最短寸法にほぼ対応する相互間隔を有する少なくとも2本のレール(51、52)を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項2において、上記吹き付け手段(5)が、上記基板の最短寸法全体に亘って延在しかつ該基板の該最短寸法にほぼ対応する長さを有する少なくとも1本のレール(53)を含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項2から5までのいずれか1項において、上記吹き付け手段(5)が、上記基板の最長寸法全体に亘って延在しかつ該基板の最短寸法にほぼ対応する相互間隔を有する少なくとも2本のレール(51、52)と、これらのレール(51、52)を横断して延在する少なくとも1本の付加的レール(53)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項において、上記ノズル(50)が上記基板の面積と等価な面積を覆うように分布していることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項において、上記ノズル(50)が各々連続してまたは交互に少なくとも1種類の溶液を吹き付けることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項において、上記溶液が噴出サイクルをもって1つの基板に吹き付けられることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2から6までのいずれか1項において、上記レールの各々がそれぞれ別の溶液を供給するラインを含み、いずれか1本のレールの上記ノズル(50)が同一の溶液を噴出することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項2から6までのいずれか1項において、少なくとも1本のレールが、別々の2種類の溶液をそれぞれ供給する少なくとも2つのラインを備えており、該2種類の溶液は別々にまたは同時に上記多数のノズル(50)にそれぞれ配送されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項6において、上記基板の最長寸法に沿って延在する上記2本のレール(51、52)は1種類の同一の溶液を供給され、上記横断方向の付加的な単一は複数のレール(53)は、もう1種類の別の溶液を供給されることを特徴とする装置。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか1項において、上記基板を支持する手段(4)が上記ノズル(50)の下方を走行可能であり、該ノズル(50)は固定式であるか、かつ/または、該基板の上方を走行可能であり、その際に該基板は静止位置にあるか、または、走行中であることを特徴とする装置。
【請求項14】
先行する請求項のいずれか1項において、上記基板が固定式であり、第1溶液を噴出するノズルは固定式ノズルであり、第2溶液を噴出する他のノズルは可動ノズルであることを特徴とする装置。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか1項において、上記ノズル(50)が上記基板から1〜数十cmの高さに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
先行する請求項のいずれか1項において、上記溶液の吹き付け中に上記ノズルおよび上記基板を覆うボックス(6)を含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか1項において、酸化錫ベースのエッチング対象層を有する基板に用いられる装置であり、上記ノズル(50)が塩酸溶液と亜鉛ベースの溶液とを同時に噴出することを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17において、上記亜鉛ベースの溶液は亜鉛粒子を水に分散させた溶液であり、該溶液は上記ノズル(50)に供給されている最中に回転機械的システム(9)により連続して混合されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
先行する請求項のいずれか1項において、上記吹き付け手段(5)が洗浄溶液を吹き付けるように設計されており、該洗浄用吹き付け手段は固定式または基板上方で可動式であることを特徴とする装置。
【請求項20】
ガラスタイプの透明基板(1)上のドープされた金属酸化物タイプの、導電性を有する層を化学エッチングする方法であって、エッチング対象の上記層上にマスク(3)を堆積させる少なくとも1つの工程と、該層(2)の、該マスクに覆われていない領域(2’)をエッチングする工程とを含み、該エッチングする工程が、上記層の上記領域(2’)を酸性pHまたはアルカリ性pHの第1溶液(7)に接触させる処理と、第2の亜鉛またはアルミニウムの溶液(8)を吹き付ける処理とから成るエッチング方法において、
上記第1溶液(7)および上記第2溶液(8)を、上記マスクで覆われていない上記領域(2’)に同時に吹き付けることを特徴とするエッチング方法。
【請求項21】
請求項20において、上記2種類の溶液を別々にまたは混合液として一緒に同時に吹き付け、該混合液の混合は、吹き付けのときにまたは吹き付け前30秒以内に行なうことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20または21において、上記2種類の溶液を液滴として吹き付けることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20から22までのいずれか1項において、ドープされた金属酸化物をベースにした層、特にフッ素、砒素、またはアンチモンをドープした酸化錫をベースまたは錫をドープした酸化インジウム(ITO)をベースにした層をエッチングすることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20から23までのいずれか1項において、上記溶液の亜鉛またはアルミニウムが1または2以上の有機および/または水性の溶媒に懸濁した状態であり、レオロジー調整剤が任意に添加されていることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20から24までのいずれか1項において、酸性pHまたはアルカリ性pHの上記第1溶液が、少なくとも1種の水性溶媒、アルコール性溶媒または水性・アルコール性溶媒と、HClタイプの強酸またはNaOHタイプの強塩基とをそれぞれ含み、更に任意に界面活性剤タイプの添加物を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20〜25までのいずれか1項において、上記エッチング工程の後に、上記層(2)を有する上記基板(1)を清浄化する清浄化処理と、上記マスク(3)の除去とを行なうことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20から26までのいずれか1項において、上記清浄化処理を、水および/または有機溶媒をベースとする溶液を上記基板(1)に吹き付けまたは該溶液に該基板(1)を浸漬することにより行なうことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26または27において、上記マスク(3)の除去を、適当な溶媒、特に実質的に有機の溶媒に溶解するか、または、超音波処理するか、または、該マスクを軟化させた後に剥離するか、または、熱処理するか、のいずれかにより行うことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項1から19までのいずれか1項記載の装置の、ガラス工業、特に加熱ガラスおよびアンテナガラスの分野、電子工業、特にプラズマディスプレーのようなフラットスクリーンタイプの電解放出ディスプレーまたはタッチパネルの分野、および光起電力電池における導電性の電極または要素の製造への使用。
【請求項30】
請求項20〜29までのいずれか1項記載の方法の、ガラス工業、特に加熱ガラスおよびアンテナガラスの分野、電子工業、特にプラズマディスプレーのようなフラットスクリーンタイプの電解放出ディスプレーまたはタッチパネルの分野、および光起電力電池における導電性の電極または要素の製造への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−517453(P2008−517453A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536232(P2007−536232)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050799
【国際公開番号】WO2006/042985
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】