説明

層構造に多段リセスを形成する方法、及び多段リセスゲートを具備した電界効果トランジスタ

層構造に多段リセスを形成する方法であって、層構造上にフォトレジスト膜を形成する形成工程、リセスの1段目を形成するために、マスクとして使用されるフォトレジスト膜の開口を介して層構造をエッチングする第1エッチング工程(49、70)、第1エッチング工程後に、フォトレジスト膜の拡幅された開口を作成するために、フォトレジスト膜の開口を拡幅する拡幅工程、及び多段リセスの2段目を形成するために、フォトレジスト膜の拡幅された開口を介して層構造をエッチングする第2エッチング工程(58、72)を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層構造に多段リセスを形成する方法、及び該方法を用いて製造された多段リセスゲートを具備した電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
多段リセスはFET(電界効果トランジスタ)の半導体層構造においてゲート電極を受け入れるために使用され得る。このようなリセス構造はFETの性能を向上させる。多段リセスは、段(ステージ)と呼ばれる、相異なる深さで相異なる幅を有する少なくとも2つのリセスを含む。各ステージの幅は、ステージがリセスの底面に近付くにつれて狭くなる。
【0003】
二段リセスゲートを具備するトランジスタの製造方法が特許文献1にて開示されている。この方法は、トランジスタ構造の上部半導体層と、マスクとして使用されるゲートレベルのフォトレジスト膜との間の中間層として誘電体層を使用している。この中間層の機能は、最終的なパッシベーション層として更に形成される第2の誘電体層の機能とは異なっている。この中間層は、ゲート−ドレイン間の高電界領域の拡がりを制御し、トランジスタの破壊電圧を増大させるためのものである。
【0004】
特許文献1の方法は、特に、例えばHEMT等のヘテロ接合トランジスタに向けられたものである。この文献に従ったHEMTの製造法においては、ゲート−ドレイン領域に局在化される高電界を弱めるために、ストライプ状のゲート付近の半導体チャネルが2回にわたってリセスエッチングされており、これは破壊電圧にはっきりとした影響を及ぼすことが可能である。二段リセスチャネルの使用により、ゲートのドレイン端での電界分布が変えられ、ゲート−ドレイン間及びソース−ドレイン間の破壊電圧の増大と出力コンダクタンスの低減とがもたらされる。ゲート−ドレイン間の高電界領域の拡がりを更に制御することにより、HFETの最大利得が向上され得る。この制御は二段リセスチャネル形状の形成によって行われ、そのとき誘電体層が、製造プロセスにて使用されるゲートレベルのフォトレジスト膜と半導体との間の中間層として使用される。
【0005】
HFETを作成するためには、先ず、ヘテロ接合を有する多層半導体構造が形成される。ヘテロ構造のHFETは、当該HFETの層構造が相異なるバンドギャップを有する材料を含んでおり、さもなければ得られないような高い性能水準が得られる点で、ホモ構造のFETとは異なっている。ヘテロ構造で使用される各層の材料の組成及びドーピングは変えられることができ、より高い周波数で有意に向上された性能を有するHFETが得られる。特許文献1のFETのヘテロ構造はIII−V族材料を有している。基板は半絶縁性のInPからできている。ヘテロ接合はInGaAsから成る狭バンドギャップ層とInAlAsから成る広バンドギャップ層との間に形成される。広バンドギャップ層の上にはキャップ層と呼ばれるn+型にドーピングされたInGaAsがある。
【0006】
キャップ層上には、先ず、ソース及びドレインの金属が形成される。そして、キャップ層とソース及びドレインの表面に上述の中間層であるSiから成る誘電体層が堆積される。そして、この誘電体層上にフォトレジスト層が形成される。
【0007】
このフォトレジスト層をマスクとして用い、第1のエッチング工程にて、マスクの開口を忠実に複製することが可能な開口形成技術により、ゲートパターンが誘電体の中間層に転写される。特許文献1の方法はRIE(反応性イオンエッチング)と呼ばれるドライエッチング技術を使用している。RIEはフォトレジスト層のゲートパターンに対する誘電体層のアンダーカットを伴わず、故に、フォトレジストのゲート開口に対する誘電体層の開口の拡大を伴わないエッチングを実現するものである。このドライエッチング技術は“異方性”エッチング、すなわち、横方向エッチングを伴わない縦方向エッチングを実現する。
【0008】
そして、第2のエッチング工程にて何れかの種類の化学エッチングを用いて、誘電体層の開口を介してキャップ層がエッチングされ、キャップ層に第1のゲートリセスが形成される。
【0009】
フォトレジストの開口を介して行われる第3のエッチング工程にて、プラズマエッチング技術を用い、誘電体の中間層がフォトレジストの開口に対して横方向に意図的にアンダーカットされる。これにより、誘電体層の開口が拡大される。
【0010】
第4のエッチング工程にて、誘電体層の拡大された開口を介して、キャップ層及びその下のチャネル層に第2のエッチング工程のような更なる化学エッチングが適用され、二段リセス構造が形成される。この二段リセス構造はチャネル層のリセスと、横方向により広いキャップ層のリセスとを有している。
【0011】
その後、第4エッチング工程によって得られた構造上にゲート金属層が熱蒸発によって堆積され、さらに、フォトレジスト層がアセトンを用いて除去される。これにより、先のフォトレジスト層の開口端に自己整合されたストライプ状のゲート金属が残される。このゲートは深いリセス内でチャネル層に接触している。
【0012】
特許文献1は、二段リセスゲートは、n+型キャップ層が意図的にゲートから後退させられており、ゲートのドレイン側の電界分布が緩和されるように付近の電界が弱められるので、より高い破壊電圧を得られて好ましいと教示している。
【0013】
特許文献1の方法は更に、ゲートの堆積の直後に、パッシベーション層と呼ばれる上部窒化シリコン層の堆積と、トランジスタの活性層とゲートのボンディングパッドとの間の空隙の形成とを有している。
【0014】
特許文献1の方法は、フォトレジスト膜、中間誘電体層、キャップ層及びチャネル層のエッチング工程の組み合わせを用いて二段リセスゲート構造の形成を可能にするものである。この文献は、従来の二段リセスプロセスは一般的に、第1のフォトレジスト膜として使用され、且つ第2のフォトレジスト膜として使用されるフォトレジスト膜として使用される中間誘電体層の代わりに、第1及び第2のフォトレジスト膜という2つの異なるレジスト膜を必要とすることを教示している。この文献は更に、2つの異なるフォトレジスト膜に起因する追加のゲートリソグラフィ工程はプロセスを一層と複雑且つ制御し難いものにすると教示している。特許文献1においては、中間誘電体層は完成したデバイス内になおも存在している。
【0015】
特許文献1にて開示された二段リセス技術には残念ながら幾つかの欠点が存在する。とりわけ、RIE装置を用いて実行されるドライエッチング技術が必要とされる。RIE装置が高価であるだけでなく、InAlAs層(又は、より一般的にはインジウムを含有する層)がエッチングされなければならないときRIE技術には制約がある。このような層は上述の高性能トランジスタにおいてしばしば存在するものであるが、揮発性の種を得るためにこのような層へのRIE作用は高温でのみ効率的である。これらの高温は上述の層群、特にインジウムを含有する層群、に極めて有害である。さらに、RIEドライエッチング技術は、高性能トランジスタで使用される非常に薄い活性層に深刻な損傷を生じさせる虞がある。RIEはまた、最終的なゲート電極、特に0.1μm未満(sub−0.1μm)のゲートやマッシュルーム形状のゲート、を形作るために使用される更なる多層レジストシステムの完全性に影響を及ぼす虞がある。
【特許文献1】米国特許第5364816号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、マルチリセス構造が中間誘電体層を用いることなく単一のフォトレジスト膜を用いて実現され、その結果、特許文献1にて開示されたHEMTに存在していたような中間誘電体層が完成構造に残存せず、また、2つのフォトレジスト膜の使用による複雑性も有さない、半導体マルチリセス構造を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に従って提案される方法は、エッチング機構に基づいて作用することに代えて、特に二段リセス構造を形成するために使用されるフォトレジスト膜に定められるゲート足部の寸法に基づいて作用する工程を有する。このフォトレジスト膜は、単純な(マッシュルームでない)ゲートを形成するための単一のフォトレジスト膜である。このフォトレジスト膜は、マッシュルーム形状のゲートを形成する場合に使用される多層レジストシステムの第1のフォトレジスト膜である。
【0018】
本発明に従った方法は:
多段リセスの1段目を形成するために、フォトレジスト膜の開口を介して半導体層構造をエッチングする第1エッチング工程;
第1エッチング工程後に、フォトレジスト膜の拡幅された開口を作成するために、フォトレジスト膜の前記開口を拡幅する拡幅工程;及び
多段リセスの2段目を形成するために、フォトレジスト膜の拡幅された開口を介して半導体層構造をエッチングする第2エッチング工程;
を有する。
【0019】
この方法においては、フォトレジスト膜がマスクとして使用され、深いリセスを形成するためにフォトレジスト膜の開口が使用され、第1と第2のエッチング工程の間に、浅いリセスを形成するために使用される拡大された開口を形成するために、上記開口が拡幅される。結果として、このフォトレジスト膜の上記開口と上記拡幅された開口を介して、異なる幅の2つの段が形成される。
【0020】
本発明に係る方法の利点は、特許文献1にて提案された方法に従って第1の開口を有するフォトレジスト膜と第2の広い開口を有する誘電体層とを用いる代わりに、あるいは当業者に既知のように2つの異なる開口を有する2つの別々のフォトレジスト膜を用いる代わりに、単一のフォトレジスト膜が形成され、この単一のフォトレジスト膜に異なる幅の2つの開口を順次形成するために単一のフォトリソグラフィ工程が使用されることである。
【0021】
請求項2乃至4の特徴は製造コストを削減する効果を有する。請求項5の特徴は多段リセスの底面の位置を正確に制御できるという効果を有する。請求項6の特徴は電界効果トランジスタの破壊電圧の向上を可能にする。
【0022】
そして、もう1つの非常に重要な利点は、この方法はコストのかかるドライエッチング技術の代わりにウェットエッチング技術を用いて行われ得ることである。
【0023】
特許文献1におけるRIEエッチング工程の異方性は縦方向のみのエッチングを可能にするものであるが、二段リセスの製造においては、(ゲート外側の)アクセス領域の直列抵抗はこの異方性のために、ウェットエッチング工程を用いる二段リセスの製造法にて得られるアクセス領域の直列抵抗と比較して不利となる。なぜなら、ウェットエッチングは縦方向へのエッチングとともに横方向へのエッチングも行うからである(ウェットエッチングの等方性)。結果として、キャップ層に要求される重要な厚さにより、表面の影響が緩和される。このことも、例えばキンク効果などの更なる寄生効果を阻害しないために重要である。
【0024】
従って、本発明に係る方法はRIEの代わりにウェットエッチング技術を用いて好ましく行われ、それにより、半導体構造のもろい層や薄い層を損傷することが回避される。
【0025】
単一のフォトレジスト層及び単一のフォトリソグラフィ工程を使用することによる利点と、ウェットエッチングを使用することによる利点とを結合させることにより、集積回路の非常に興味深い製造方法が提供される。この前者及び後者の利点に加え、もう1つの重要な利点は、この方法は場合に応じてマッシュルーム状ゲート又は埋込ゲートを実現したままで、トランジスタのゲート長を0.1μm未満の領域まで縮小することを可能にすることである。この利点により、この方法は更に魅力あるものにされる。
【0026】
さらに、特許文献1にて例示されているHEMTは、およそ10nm(0.01μm)の厚さを有するキャップ層を示している。この厚さは非常に小さいものであり、低い抵抗値及び長期信頼性の観点からオーミックコンタクトの品質に不利なものである。これに代わって本発明によれば、高移動度トランジスタへの適用においてキャップ層は20nm以上の厚さであり、オーミックコンタクトの品質が改善される。
【0027】
請求項8の特徴は、例えばゲート長に近い等、ゲート電極足部の寸法に近い幅を有する、多段リセスの下側の段を製造することを可能にする。
【0028】
本発明に係る方法は、特にIII−V族HMET又はIII−V族MHEMT若しくはPHEMT素子を有するデバイスなどの、例えば200GHz以上の周波数で動作する種類など、高速、低ノイズ、且つ/或いは高パワーで動作する種類のIII−V族素子から成る能動素子が集積された半導体デバイスを製造することを可能にする。
【0029】
本発明に係る方法はトランジスタのゲート長を最小化することを可能にする。本発明に係る方法は、0.1μm未満の領域の二段リセスマッシュルーム状ゲートを具備した上述のような種類の能動素子が集積された半導体デバイスを製造することを可能にする。他の例では、本発明に係る方法は、二段リセス埋込ゲートを具備した上述のような種類の能動素子が集積された半導体デバイスを製造することを可能にする。
【0030】
また、上述のような高性能デバイスを製造するためには、オーミックコンタクトを改善しデバイスの長期信頼性を向上させるために、約0.02μmという厚めのキャップ層が必要である。この厚さは、特許文献1にて使用されている厚さより大きい厚さである。その上、この約0.02μm以上という厚さは、本発明に係る方法に従った多段リセスゲートの製造に最も都合のよい厚さである。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様は以下の記載、図面及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、半導体構造に多段リセスを形成する方法と、例えばゲート電極などの制御電極を受け入れる多段リセスを具備した電子素子の製造方法に関する。
【0033】
この電子素子について、単に例示のため、多層構造から形成されたIII−V族半導体材料を用いて製造されるFETという特別な場合にて説明する。一例として、III−V族半導体材料はガリウム砒素化合物を有し得る。
【0034】
このデバイスは幅が10μm未満の領域の多段リセスを有してもよい。好ましくは、このデバイスは幅が0.1μm未満の領域の多段リセスを有してもよい。リセスの最も深いレベルの幅はゲート電極の長さと同方向である。ガリウム砒素化合物の多層構造はInAlAs層(又は、より一般的にはインジウムを含有する層)を含んでもよい。
【0035】
本発明に係る方法はまた、例えばHEMT(高電子移動度トランジスタ)等のヘテロ接合トランジスタを製造することに適用可能である。
【0036】
高性能HEMTを製造するために、二段リセスチャネルと単純なゲートとの使用が行われてもよい。高性能MHEMT又はPHEMTを製造するためには、二段リセスチャネルとマッシュルーム状ゲートとの双方の使用が最も好ましい。これらのデバイスは好ましくは0.1μm未満のゲートを有し、この実現は0.1μm未満のゲートのフォトリソグラフィを用いて行われる。他の例では、二段リセスチャネルを用い、ゲートは埋込ゲートと呼ばれる種類であってもよい。
【0037】
本発明は、例えば、200GHz以上の高周波数で動作するIII−V族MHEMT若しくはPHEMTの個別デバイス、又はIII−V族MHEMT若しくはPHEMTに基づく集積回路などの、如何なる高速、低ノイズ、且つ/或いは高パワーのIII−V族デバイスを製造することにも適用可能である。具体的には、本発明に係る方法は0.1μm未満のゲートを受け入れるための多段リセスを具備したM(metamorphic)又はP(pseudomorphic)HEMTを製造することに適用可能である。一例として、図1は二段リセス4を具備したMHEMT(変成高電子移動度トランジスタ)2を例示している。リセス4は下段5及び上段6を有している。段5の幅は段6の幅より小さい。水平部分が段5を段6から区別している。図1は本発明の理解に必要な詳細部のみを示している。トランジスタ2は半導体多層構造を有しており、これらの層の各々は水平な層として例示されている。
【0038】
半導体多層構造は、基板の底部から始めて、以下の層:
基板7、
トランジスタの電気特性への基板7の影響を緩和するためのバッファ層8、
チャネル層10、
スペーサ層12、
太線で図示されている薄い供給層14、
ショットキー層16、及び
キャップ層18
を含んでいる。
【0039】
上述のトランジスタは、例えばモノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC)等の半導体デバイスを製造するために用いられてもよい。このようなデバイスは、半導体基板7に積層された少なくとも半導体活性層16を有する、図1A及び図1Bに示されるようなHEMTを含んでもよい。
【0040】
図1A及び図1Bを参照するに、好適な実施形態においては、活性層16は低抵抗率の半導体キャップ層18によって覆われている。この電界効果トランジスタはまた、半導体層上にソース電極20及びドレイン電極22を有しており、これらの間にチャネルが二段リセスによって設けられている。二段リセスは深くて狭い中央リセス5と、浅くて大きい周辺リセス6とを有している。このトランジスタは更に、中央リセス5内の活性層16に接触しているゲート電極26を有している。
【0041】
図1A及び図1Bにおいては、トランジスタは高電子移動度(HEMT)型であり、基板7に設けられた活性層を形成するための積層構成内に、第1の禁制帯幅を有する第1の材料から成る下部活性層10と、より広い禁制帯幅を有し、界面14を用いて第1の層10とヘテロ構造を形成する第2の材料から成る上部活性層16とを有するヘテロ接合を形成するように、異なる電子親和力を有する少なくとも2つの層を有している。
【0042】
図1A及び図1Bにおいては、HEMTの構造を形成するため、有利には、強くn++型にドーピングされたキャップ層18が存在する。このキャップ層は、ソース及びドレインのオーミックコンタクト20、22の下に位置する領域の半導体材料の導電率を増大させることによって、トランジスタのソースとドレインの抵抗を低減する機能を有する。このキャップ層はまた、オーミックコンタクト20及び22を構築する材料の融合中に、この材料が金属−半導体合金を形成する共晶材料であるという事実によって機械的及び電気的に阻害されるものである、ソース及びドレインのオーミックコンタクト20、22の下にある領域とチャネル領域との間の空間的分離を形成する機能とを有する。リセス5、6はキャップ層18に設けられる。本発明に従って、キャップ層は好ましくは20nm(0.02μm)以上の厚さを有する。
【0043】
HEMT構造はまたゲート26の金属パッドを有し、この金属パッドはショットキー障壁を形成するように上部活性層16の材料上に直接的に堆積される。このショットキー障壁は、活性層16の底面、すなわち、ヘテロ構造の界面14、から非常に正確な距離だけ離されている。この距離は上部活性層16の実効的な厚さを表すとともにトランジスタ動作すなわちピンチオフ電圧を決定するものであり、これによりエンハンスメント型又は対照的にディプレッション型のトランジスタが形成される。
【0044】
このHEMTは改善された飽和電圧を示すだけでなく、増大された破壊電圧、及び低アクセス抵抗をも示す。破壊電圧値はゲート金属26の端部をリセス5、6の端部から分離している間隔に依存する。上述のトランジスタにおいては、中央の深いリセスの下に位置する活性層16の部分は好ましくは、意図的にはドーピングされない。
【0045】
上述のような二段リセスゲートとソース及びドレインとを具備する電界効果トランジスタを実現する有利なプロセスは、図1A、図1B、図3A、図3B、図5A及び図5Bに例示される幾つかの工程を含んでもよい。
【0046】
本発明に係る方法は、ヘテロ接合トランジスタだけでなく全ての種類のトランジスタに有益なものである。
【0047】
図1A及び図1Bに従って、電界効果トランジスタを形成するため、プロセスは半絶縁性ガリウム砒素(GaAs)からの基板7の形成と、ショットキー層と呼ばれるインジウムアルミニウム砒素(InAlAs)から成る活性層16の形成とを含んでもよい。
【0048】
好適な一実施形態においては、トランジスタHEMTを形成するため、プロセスは:
半絶縁性ガリウム砒素からの基板7;
インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)から成るバッファ層8;
20%から80%程度のインジウム濃度を有し、且つおよそ10nmから30nmの間の厚さを有する、ガリウムインジウム砒素(GaInAs)から成るチャネル層10;
2nmから5nmのスペーサ層;
薄い供給層を形成するドーピングされた面14;
5nmから30nmの厚さを有し、閾値電圧を定める、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)から成るショットキー層16;
強くn++型にドーピングされ、且つおよそ20nm以上の厚さを有する、インジウムガリウム砒素(GaInAs)から成るキャップ層18
を形成することを含んでもよい。
【0049】
面14及びキャップ層18を除いた全ての層は意図的にはドーピングされない。
【0050】
ガリウムインジウム砒素(GaInAs)チャネル層10は所与の禁制帯幅を有し、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)から成るショットキー層16はそれより大きい禁制帯幅を有する。この構成に従ったHEMTはP(pseudomorphic)型と呼ばれており、材料の禁制帯幅の差が大きいために向上された性能を有する。2次元電子ガスがHEMT内の相異なる禁制帯幅を有する層の界面14に構築される。
【0051】
半導体材料層の積層体が、例えば分子ビームエピタキシ又は有機金属気相堆積など、当業者に既知の技術が好ましく使用されるエピタキシャル成長などによって完成される。
【0052】
次の工程はソース及びドレインのオーミックコンタクトを形成する工程であることが有利である。これらの工程は従来のものであって当業者に周知であるので、以降では述べないこととする。キャップ層18の頂部にて、ソース金属20及びドレイン金属22がリセス4のそれぞれ左側と右側に形成される。
【0053】
トランジスタ2は更に、リセス4の中央に縦方向に堆積されたゲート電極26を有する。この電極26は有利には、拡幅された頭部30が該頭部より小さい所定幅を有する足部32に接続されたマッシュルーム形状を示している。図1においては、足部32は段5の中心に位置付けられており、その自由端はショットキー層16に接触している。マッシュルーム状ゲートの大きい頭部はゲート電極の抵抗を低減し、トランジスタ2の性能向上を可能にする。
【0054】
典型的に、本発明に係る方法は、足部32の幅が0.1μm未満であるトランジスタを、繰り返し時の正確性を均一にして、且つ低コストにて、容易に製造することを可能にする。このようなトランジスタは大きな性能向上を示す。この方法は、集積回路を形成することに関し、極めて高い集積密度を実現するものである。
【0055】
続いて、図1A、図2、図3A及び図3Bを参照しながらトランジスタ2の製造方法を説明する。以降においては、本発明を理解するのに必要な工程のみ詳細に述べることとする。トランジスタ2を製造するための他の工程は従来のものであり、説明しない。
【0056】
二段リセスチャネルの製造に関し、本発明に従った方法は以下の工程を有する。
【0057】
図1Aの半導体多層構造が構築されると、工程40にて、図3Aに例示されるように、キャップ層18の頂部にフォトレジストパターン42が形成される。図3A及び図3Bにおいては、層16及び18のみが表されている。処理45にて、先ずフォトレジスト膜44がキャップ層18上に堆積される。そして処理47にて、露光及び現像によって膜44にゲート開口46が描写される。これによってフォトレジストパターン42が形成される。例えば、フォトレジスト膜の露光には、電子ビーム又は他の露光手段が用いられてもよい。
【0058】
開口46の幅は、好ましくは、ウェットエッチングによる段5の拡大を補償するために、足部32によって表されるゲート長に所望される幅より狭い。故に、段5の拡大は十分に制御される。これにより、ウェットエッチング技術を用いるときであっても、ゲート長と呼ばれる足部32の幅に等しいか、僅かにのみ大きいかの幅を有する第1の段5の形成が可能になる。その結果として、この方法は0.1μm未満のゲート電極に使用され得る。
【0059】
例えば、開口46の幅は50nm(0.05μm)以下にされてもよい。本発明に係る方法を用いて、開口46の幅は従来技術に対して大幅に縮小され得る。マイクロ波用途の集積回路に重大な改善をもたらす約20nm(0.02μm)の幅も得ることが可能である。
【0060】
レジストパターン42が形成されると、工程48にて、キャップ層18に段5が形成される。これを行うため、処理49にて、レジストパターン42をマスクとして用いて、第1のウェットエッチングが開口46を介して実行される。結果として、二段ゲート4の第1の段5がキャップ層18に設けられる。ウェットエッチング処理49はキャップ層18を縦方向及び横方向の双方に、ほぼ同量だけエッチングする。このウェットエッチング技術は全方向に同一の作用を有し、等方性と呼ばれている。故に、図3Aに例示されるように処理49の終了時点において、段5の幅は開口46の幅より大きくなっている。
【0061】
その後、工程50にて、拡幅された開口52をもたらすために、フォトレジスト層の開口46の幅が水平方向に拡大される。この工程はフォトレジスト膜44の過現像(over−development)によって実現される。最初の現像で形成された当初の開口46の拡大を制御しながら行うために、過現像処理が従来の現像処理と同様にして行われる。
【0062】
従って、この新たな現像処理の前に新たな露光は行われない。例えば、この過現像処理は開口46の幅を0.01μmだけ増大させるように制御される。工程50から得られる拡幅開口52は図3Bに例示されている。図3Bにおいては、以前の開口46は点線で示されている。続いて工程56にて、二段リセス4の段6が拡幅開口52を介してキャップ層18に形成される。これは処理58にて、マスク42の拡幅開口52を介してキャップ層18の選択性ウェットエッチングを行うことにより為される。ウェットエッチング処理58にて、段5もまた水平方向に拡幅されるとともに縦方向に深くされる。選択性エッチングが行われるので、段5が深くされることはショットキー層材料16に到達したときに自動的に停止する。
【0063】
結果として、二段リセス4がキャップ層18に形成される。
【0064】
そして工程62にて、二段リセス内にゲート電極26が形成される。工程62においては、例えば、金属ゲート電極を堆積し、ゲートパッド周辺のゲート材料をリフトオフする処理と、ゲート形状を定めるために使用された更なるフォトレジスト層の除去とによって、ゲート電極26のマッシュルーム形状が得られる。ゲート形成処理は、典型的に、例えば2層、3層、又は更には4層のレジストシステムなどの多層レジストシステムを用いることによって達成されてもよい。この場合、本発明に従って図3A及び3Bに示され、“単一のフォトレジスト層44”として先述されたフォトレジスト膜44は、多層レジストシステムの最下層のフォトレジスト層である。そして、マッシュルーム状ゲートを定めるためのフォトレジスト層は、層44上に前もって形成された更なる層である。
【0065】
本発明によれば、マルチリセスの形成は1つのフォトレジスト層及び1つのフォトリソグラフィ工程(露光工程)のみを使用する。
【0066】
図4、図1B、図5A及び図5Bは、FETの製造方法の他の一実施形態を例示している。これらの図においては、図1A、図2、図3A及び図3Bにて既述の要素は同一の参照符号を有している。この方法は図2の方法と、処理49及び58が処理70及び72に置換されていることを除いて同じである。
【0067】
処理70は、図5Aに例示されるように、段5の底面がショットキー層材料16に到達するとキャップ層18のエッチングが自動的に停止するような選択性ウェットエッチングである。
【0068】
処理72は、図5Bに例示されるように、工程56の終了時点にて段5の底面を層16内に位置させるが層14には接触させないような非選択性ウェットエッチングである。二段リセスのこのような構成は、製造されたFETの破壊電圧を増大させることを可能にする。
【0069】
図2及び図4の方法は、トランジスタのゲートを構築する目的で使用され得る多層フォトレジスト膜システムの最下層のフォトレジスト膜のみを使用して二段リセスを形成するのに効果的である。結果として、これらの方法を例示している図は、二段リセスを形成するためにキャップ層18の頂部にフォトレジスト膜44を堆積する唯一の処理を例示している。従って、これらの方法は、例えば中間誘電体層のような、あるいは第2のフォトレジスト層のような、追加マスク層の形成を必要としない。
【0070】
これらの方法はまた、マスク開口パターンを半導体層内に転写するための費用のかかる技術を使用する必要がないのでコストを削減する。例えば、0.1μm未満のゲート電極を有するトランジスタに関してであっても、反応性イオンエッチングを含む工程は不要である。
【0071】
0.1μm未満のゲートそのものの製造に関し、ゲートのフォトリソグラフィは一般的に多層レジストシステム(2層、3層、更には4層のシステム)の使用を必要とする。なお、この多層レジストシステムにおいて、上述の“単一の”フォトレジスト層は“第1の層”又は“最下層”の位置に該当する。この種のゲートフォトリソグラフィは、上記の多層レジストシステムを露光する電子ビーム技術を用いて行われてもよい。これらの多層システムは当業者には周知であり、マッシュルーム状ゲートを具備する高性能ミリ波デバイスの製造に関する文献にて広く報告されている。一般的に、2層レジストシステムにおいては、下側のレジストはゲート長でもあるゲート足部を定め、上側の層はマッシュルームの頭部を定める。更なるレジストは具体的なレジストの輪郭による良好な金属リフトオフを達成する助けとなる。
【0072】
図示されていない他の一実施形態においては、浅いリセスが拡幅されるように、過現像は上述の実施形態においてより大きくされてもよい。そして、ゲート金属は浅いリセスの一部と深いリセスとを覆ってもよい。従って、ゲート金属は深いリセス全体を覆い、且つ深いリセスの外側まで延在することになり、ゲート長はゲート長の方向に、深いリセスの幅より大きくなる。この型のゲートは“埋込ゲート”と呼ばれている。これはトランジスタの飽和電圧を増大させ、閾値電圧の制御性を向上させ得るものである。この実施形態は特にエンハンスメント型トランジスタに有用である。
【0073】
数多の更なる実施形態が可能である。例えば、3段、4段又は5段以上の多段リセスを作り出すために、マスクとして使用されるフォトレジスト膜における拡幅工程と拡幅された開口を介してのウェットエッチング工程とが、何回か繰り返されてもよい。拡幅工程は過現像処理の代わりにプラズマデスカミング浴(plasma descumming bath)を用いて実現されてもよい。
【0074】
上述の方法は、マッシュルーム形状を有するゲートという特別な場合について説明されてきたが、他の形状、すなわち、スティック又はロッドのような形状を有するゲート電極にも適用されるものである。
【0075】
最後に、この方法はFETを製造することに関して説明されてきたが、ここで開示された教示は多段リセスを具備する全てのマイクロエレクトロニクスデバイスに適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1A】二段リセスを具備する電子デバイスを示す概略図である。
【図1B】二段リセスを具備する電子デバイスを示す概略図である。
【図2】図1Aの二段リセスの製造方法を示すフローチャートである。
【図3A】図2の製造方法における特定の工程の際の図1Aのデバイスを示す概略図である。
【図3B】図2の製造方法における特定の工程の際の図1Aのデバイスを示す概略図である。
【図4】図1Bの二段リセスの製造方法を示すフローチャートである。
【図5A】図4の方法における特定の工程の際のデバイスを示す概略図である。
【図5B】図4の方法における特定の工程の際のデバイスを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構造に多段リセスを形成する方法であって:
前記層構造上にフォトレジスト膜を形成する形成工程;
前記リセスの1段目を形成するために、マスクとして使用される前記フォトレジスト膜の開口を介して前記層構造をエッチングする第1エッチング工程;
前記第1エッチング工程後に、前記フォトレジスト膜の拡幅された開口を作成するために、前記フォトレジスト膜の前記開口を拡幅する拡幅工程;及び
前記多段リセスの2段目を形成するために、前記フォトレジスト膜の前記拡幅された開口を介して前記層構造をエッチングする第2エッチング工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記第1及び第2エッチング工程がウェットエッチング工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拡幅工程が前記フォトレジスト膜の過現像を用いて達成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記拡幅工程がプラズマデスカミング浴を用いて達成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
下側の半導体層に重ねられた頂部半導体層を有する半導体層構造に多段リセスを形成するための請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法であって、前記第2エッチング工程が前記頂部層のみに多段リセスを形成する選択性エッチング工程である方法。
【請求項6】
下側の半導体層に重ねられた頂部半導体層を有する半導体層構造に多段リセスを形成するための請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法であって、前記第2エッチング工程が前記頂部層と前記下側の層とに多段リセスを形成する非選択性エッチング工程である方法。
【請求項7】
多段リセスを具備する電界効果トランジスタの製造方法であって、前記多段リセスが請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法を用いて形成される製造方法。
【請求項8】
ゲート電極、及び前記多段リセス内に受け入れられている前記ゲート電極の足部を有する電界効果トランジスタを製造する請求項7に記載の製造方法であって、前記第2エッチング工程がウェットエッチング工程であり、前記第1エッチング工程の前に当該製造方法が:
前記半導体層構造の頂部に前記フォトレジスト膜を堆積する工程、及び
前記第1エッチング工程にて、マスクとして使用される前記フォトレジスト膜に前記開口を形成する工程であり、該開口の幅が前記ゲート電極の足部の幅より小さい、形成する工程、
を有する製造方法。
【請求項9】
0.1μm未満のゲート電極を受け入れる多段リセスを具備するMHEMT又はPHEMTの製造方法であって、前記多段リセスが請求項7又は8に記載の方法を用いて形成される製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−511980(P2008−511980A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529104(P2007−529104)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052804
【国際公開番号】WO2006/025006
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】