説明

形状測定装置

【課題】半導体ウェーハなどの円盤状の測定対象物の端部の撮像画像に基づいて,その端部における面取り加工された端面以外の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,その面取り加工された端面の幅を測定でき,さらに,その測定を表裏各面それぞれの側について同時に行うことができること。
【解決手段】測定対象物1の端部に対しその測定対象物の表裏各面に平行な方向Rbから光束を投光する第1投光部10と,これにより光が照射された端部をその測定対象物1の表裏各面側におけるその表面に直角の方向Raから撮像する2つのカメラ30a,30bと,その撮像画像における明部の像の幅を面取り加工された端面の幅として検出する画像処理装置40とを備える。また,前記方向Raから平行光を投光する2つの第2投光部20a,20bによる投光時には,画像処理装置40は,撮像画像における暗部の像の幅を面取り加工された端面の幅として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,円盤状の測定対象物(主として半導体ウェーハ,その他,ハードディスク用のアルミサブトレート,ガラスサブストレートなど)の面取り加工された端部の形状を,その端部の撮像画像に基づいて測定する形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ(以下,ウェーハという)の製造時や,ウェーハを用いたデバイス製造時において,ウェーハの端部(縁部)が,他の部品やウェーハ保持部材と接触することによって傷ついたり,欠けたりする場合がある。さらに,その傷や欠けが原因で,ウェーハが割れることもある。このウェーハの端部における傷や欠けの生じやすさは,ウェーハの端面(いわゆるエッジプロファイル部)の形状と関係があると考えられている。このため,ウェーハの製造工程においては,その端部に傷が存在しないことを確認するとともに,その端部の形状を正しく測定してその形状が設計上の形状に対して許容誤差の範囲内にあることを確認することが重要である。
【0003】
図9は,ウェーハ1の端部の形状の一例を表す図である。
また,図9(a)は,円盤状のウェーハ1における面取り加工がなされた端部の側断面図の一例である。
図9(a)に示されるように,ウェーハ1の端部は,その端面(側面)が面取り加工されている。以下,面取り加工がなされた端面のことを面取り面1aと称する。
また,ウェーハ1の端部の形状を評価する場合,円盤状のウェーハ1をその表面に直角の方向(以下,表裏面法線方向Rbと称する)から見たときの,そのウェーハ1の端部における前記面取り面1a(面取り加工された端面)の幅W1が,設計上定められた幅に対して許容範囲内にあるか否かの評価が行われることが多い。前記面取り幅W1は,ウェーハ1の表裏の面(相互にほぼ平行な面)と前記面取り面1aとの境界位置Q1(又はQ2)から,前記面取り面1aの頂点までの幅(表裏の面に平行な方向(以下,表裏面平行方向Rxと称する)の長さ)である。図9(a)に示される前記表裏面平行方向Rbは,円盤状のウェーハ1の半径方向である。
【0004】
また,図9(b)は,円盤状のウェーハ1における面取り加工がなされた端部の他の一例であって,前記表裏面法線方向Raから見たときの輪郭が窪んで形成された部分1b(一般に,ノッチ部と称される)の平面図の一例である。このようなノッチ部1bも,前記面取り面1aを有している。
そして,前記ノッチ部1bについても,前記表裏面平行方向Rbにおける前記面取り面1aの幅(半径方向以外の方向の幅W2や,半径方向の幅W3等)が,設計上定められた幅に対して許容範囲内にあるか否かの評価が行われる。なお,以下の説明において,図9に示される幅W1〜W3を面取り幅Wと総称する。
【0005】
一方,特許文献1には,ウェーハのノッチ部の形状を測定するために,そのノッチ部に対して投光する3つの照明手段と,ウェーハのおもて面側における前記第1照明手段に対向する位置から前記ノッチ部を撮像するカメラとを備えた形状認識装置が示されている。ここで,前記3つの照明手段は,ウェーハのうら面側におけるその裏面に直角の方向から投光する第1照明手段と,前記ノッチ部の表面の法線方向から投光する第2照明手段と,前記ノッチ部の表面が影になる方向から投光する第3照明手段との3つである。
そして,特許文献1に示される形状認識装置において,前記第1照明手段及び前記第2照明手段のみにより照明された前記ノッチ部を,前記カメラにより撮像すれば,前記面取り面のみが暗部となり,その他の部分が明部となる撮像画像が得られる。その撮像画像に基づく画像処理を行うことにより,その撮像画像における帯状の暗部の幅を検出すれば,前記ノッチ部(端部)における前記面取り幅Wを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−38539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,特許文献1に示される装置は,ウェーハの表面(カメラにより観察される面取り面以外の面)及び面取り面の両方が鏡面ではない(非鏡面である)ことが前提となっており,それ以外の状況下では以下のような問題が生じる。
例えば,ウェーハにおける前記面取り面が非鏡面である場合,それ以外の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに応じて,3つの照明手段による照明のパターンを切り替えなければならず,それが手間であるという問題点があった。
即ち,前記面取り面以外の表面が鏡面である場合には,前記第3照明手段のみの照明を行うことによって前記面取り面のみが明部となる撮像画像が得られるようにし,前記面取り面以外の表面が非鏡面である場合には,前記第1照明手段及び前記第2照明手段のみの照明を行うことによって前記面取り面のみが暗部となる撮像画像が得られるようにするという照明パターンの切り替えが必要となる。
また,特許文献1に示される装置は,ウェーハにおける前記面取り面及びそれ以外の表面がともに非鏡面である場合,表裏各面について2組の装置が配置されたとしても,その2つの装置における2つのカメラによってウェーハの表裏両面それぞれの側の端部を同時に測定(撮像)できないという問題点もあった。この場合,一方の装置においてカメラに対する背景光を照射する前記第3照明手段が,他方の装置におけるカメラが撮像する前記面取り面を照明してしまい,前記面取り面及びその他の表面の両方が明部となる撮像画像が得られてしまうからである。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,半導体ウェーハなどの円盤状の測定対象物の端部の撮像画像に基づいて,その端部における面取り加工された端面以外の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,その面取り加工された端面の幅を測定することができ,さらに,その測定を表裏各面それぞれの側について同時に行うことができる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る形状測定装置は,半導体ウェーハ等の円盤状の測定対象物をその表面に直角の方向(図9における表裏面法線方向Raに相当)から見たときのその測定対象物の端部における面取り加工された端面の幅(前記面取り幅Wに相当)を測定する形状測定装置であり,次の(1)〜(3)に示される各構成要素を備えている。
(1)前記測定対象物の端部に対しその測定対象物の表裏各面に平行な方向(図9における表裏面平行方向Rbに相当)から光束を投光する第1の投光手段。
(2)前記第1の投光手段により光が照射された前記測定対象物の端部をその測定対象物の表面に直角の方向から撮像する撮像手段。
(3)前記撮像手段による撮像画像における明部の像の幅を前記面取り加工された端面の幅として検出する第1の端面幅検出手段。
本発明によれば,前記面取り加工された端面(前記面取り面1a)が非鏡面である場合,その面で前記第1の投光手段による照射光が散乱反射する。また,前記撮像手段が存在する側の前記測定対象物の表裏いずれかの面(以下,撮像側平面という)については,その面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,その面に平行に投光された前記第1の投光手段の光は,その直角方向に配置された前記撮像手段へはほとんど到達しない。そのため,前記撮像側平面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記撮像手段の撮像画像において,前記面取り加工された面の像のみが明部の像として表れる。従って,前記撮像手段の撮像画像における明部の像の幅を検出することにより,前記面取り加工された端面の幅を検出できる。しかも,それを実現するために,前記測定対象物の端部に対する投光手段(前記第1の投光手段)を1つしか必要とせず,装置構成がシンプルである。
【0009】
また,前記第1の投光手段の光は,前記面取り加工された端面の全体(おもて面側から裏面側へ渡る全体)を照らして散乱反射する。即ち,前記測定対象物の端部を,その表裏両面のいずれの側から見ても,その表面に直角の方向から撮像すれば,前記面取り加工された端面のみが明部となる撮像画像が得られる。
そこで,本発明に係る形状測定装置が,前記第1の投光手段により光が照射された前記測定対象物の端部をその測定対象物の表裏各面の側から撮像する2つの前記撮像手段を具備することが考えられる。
これにより,前記面取り加工された端面の幅の測定を,表裏各面それぞれの側について同時に行うことができる。しかも,それを実現するために,前記測定対象物の端部に対する投光手段(前記第1の投光手段)を1つしか必要とせず,装置構成がシンプルである。
【0010】
また,前記第1の投光手段としては,例えば,次の(1−1)又は(1−2)に示される構成要素を備えたもの等が考えられる。
(1−1)光源の出射光を前記測定対象物の表裏各面に平行な平行光へコリメートして前記測定対象物の端部へ投光する光束とするコリメータレンズ。
(1−2)前記測定対象物の端部に向かう光源の出射光を拡散させる光拡散手段。
本発明に係る形状測定装置は,前記(1−1)の構成要素を備えることにより,前記測定対象物の端面(面取り部)が光沢性の低い拡散面(非鏡面)である場合に好適な装置となる。前記平行光は,前記測定物の端面以外の表裏各面に反射して前記撮像手段に向かう光成分が少なく,前記端面とそれ以外の表裏各面との境界が前記撮像手段の撮像画像において明瞭になるからである。
一方,本発明に係る形状測定装置は,前記(1−2)の構成要素を備えることにより,前記測定対象物の端面の光沢性が高い場合であっても利用可能となる。前記拡散手段を経た光は,鏡面である前記測定対象物の端面で拡散反射し,前記撮像手段の撮像画像において前記測定対象物の端面の像が明瞭になるからである。
【0011】
ところで,前記第1の投光手段及び前記第1の端面幅検出手段は,前記面取り加工された端面が非鏡面である場合には目的とする機能を果たす。また,前記第1の投光手段が,前記光拡散手段を通じて拡散光を前記面取り加工された端面に照射する場合,前記面取り加工された端面の光沢性が高くても目的とする機能を果たす。これにより,大部分の半導体ウェーハについて,形状測定が可能となる。
しかしながら,前記光拡散手段を用いても,以下のような場合には,前記第1の投光手段は目的とする機能を果たすことができない。それは,前記面取り加工された端面における前記測定対象物の表裏各面に近い部分が,照射光のほぼ全てを正反射させる鏡面であり,前記測定対象物の表裏各面に対する角度(面取り角度)が非常に小さい場合である。その場合,前記撮像画像において,前記面取り加工された端面の一部が暗部として表れてしまう。
そこで,本発明に係る形状測定装置が,さらに次の(4)〜(6)に示される各構成要素を備えることが考えられる。
(4)前記測定対象物の端部に対しその測定対象物の表裏両面それぞれの側におけるその表裏両面に直角の方向からそれぞれ平行光を投光する2つの第2の投光手段。
(5)前記第1の投光手段による投光と前記2つの第2の投光手段による投光とのいずれを行うかを切り替える投光切替手段。
(6)前記投光切替手段により前記2つの第2の投光手段による投光がなされたときの前記測定対象物の端部を前記撮像手段により撮像して得られる撮像画像における暗部の像の幅を前記面取り加工された端面の幅として検出する第2の端面幅検出手段。
前記面取り加工された端面は,前記測定対象物の表裏両面(端面以外の面)に対し平行ではないため,その端面が鏡面である場合,その端面に到達した前記第2の投光手段の光(平行光)は,前記撮像手段が存在する方向とは異なる方向へ正反射する。即ち,前記撮像画像において,前記面取り加工された端面は暗部となる。
一方,前記測定対象物に対し前記撮像手段の光軸方向に平行な方向に沿って前記撮像側平面に到達した前記第2の投光手段の光(平行光)は,その面が鏡面であるか非鏡面であるか(正反射するか散乱反射するか)に関わらず,前記撮像手段の方向へ反射する。即ち,前記撮像画像において,前記撮像側平面は明部となる。
また,前記測定対象物に対し前記撮像手段とは反対側に存在する前記第2の投光手段から前記測定対象物の端部の外側の領域に到達した光(平行光)は,そのまま前記撮像手段の方向へ向かい,背景光となる。即ち,前記撮像画像において,前記測定対象物の端部の外側の領域は明部となる。
以上より,前記2つの第2の投光手段による投光が行われたときの前記撮像画像においては,前記撮像側平面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記面取り加工された端面のみが暗部となる。従って,前記面取り加工された端面が鏡面であっても,前記撮像手段の撮像画像における暗部の像の幅を検出することにより,前記面取り加工された端面の幅を検出できる。しかも,前記撮像手段が,前記測定対象物の表裏各面について2つ存在すれば,表裏各面それぞれの側について同時に測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,半導体ウェーハなどの円盤状の測定対象物の端部の撮像画像に基づいて,その端部における面取り加工された端面以外の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,その面取り加工された端面の幅を測定することができる。さらに,撮像手段が測定対象物の表裏各面の測定用に2つ設けられれば,投光手段(光源)を増やすことなく,表裏各面それぞれの側についての測定を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1発明の第1実施形態に係る形状測定装置X1の概略構成図。
【図2】形状測定装置X1の一部の平面図。
【図3】形状測定装置X1によるウェーハの撮像画像及びエッジ抽出画像の例を表す図。
【図4】形状測定装置X1に採用され得る投光部の一例を表す図。
【図5】形状測定装置X1の投光部及びウェーハの寸法及び位置関係の説明図。
【図6】第2発明の実施形態に係る形状測定装置Y1の概略構成図。
【図7】形状測定装置Y1によるウェーハの撮像画像及びエッジ抽出画像の例を表す図。
【図8】第1発明の第2実施形態に係る形状測定装置X2の概略構成図。
【図9】半導体ウェーハの端部の形状の一例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0015】
以下,まずは第1発明について説明し,続いて第2発明について説明した後,それら両発明を組み合わせた例(第1発明の第2実施形態)について説明する。
第1発明の第1実施形態に係る形状測定装置X1及び第2発明の実施形態に係る形状測定装置X2,第1発明の第2実施形態に係る形状測定装置X2は,円盤状の測定対象物であるウェーハ1(半導体ウェーハ)を,その表面に直角の方向である表裏面法線方向Raから見たときのそのウェーハ1の端部における面取り加工された端面(面取り面1a)の幅Wを測定する装置である。
ウェーハ1は,例えば,半径150[mm]程度,厚み0.8[mm]程度の半導体からなり,その外周をなす端面(周面)が面取り加工されている。
以下,図1に示される側面図及び図2に示される平面図を参照しつつ,形状測定装置X1の構成について説明する。なお,図2において,図1に示す構成要素のうちの一部(カメラ30a,30b,画像処理装置40等)が省略されている。
図1及び図2に示されるように,形状測定装置X1は,中央吸着支持機2と,投光用の光学系である投光部10と,2つのカメラ30a,30bと,画像処理装置40,ミラー41’,42と,制御装置50とを備えている。
【0016】
前記中央吸着機構2は,円盤状のウェーハ1をその一方の面(例えば,下面)の中央部を真空吸着することにより支持する。さらに,前記中央吸着支持機構2は,ウェーハ1をその中央部を回転軸としてその周方向に回転駆動及び停止させることにより,ウェーハ1の周方向におけるいずれの位置の端部を測定部(撮像位置)として前記投光部20からの光束の光路中に位置させるかを調節する装置でもある。
前記中央吸着支持機構2は,ウェーハ1の支持角度(回転角度)を検出する角度検出センサとして不図示の回転エンコーダを備え,その検出角度に基づいてウェーハ1の支持位置(支持角度)の位置決めを行う。なお,前記中央吸着支持機構2は,前記制御装置50からの制御指令に従って,ウェーハ1の支持位置の位置決めを行う。
また,前記制御装置50は,CPU及びその周辺装置を備えた計算機であり,そのCPUが,予めその記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより,前記中央吸着支持機構2,前記投光部10及び前記画像処理装置40を制御する(制御指令を出力する)装置である。
例えば,前記制御装置50は,前記投光部10における点光源11の点灯及び消灯の制御や,前記画像処理装置40による画像処理の種類及びその実行の開始の制御を行う。なお,画像処理の開始の制御には,前記カメラ30a,30bからの撮像画像の取り込み開始の制御も含まれる。
【0017】
前記投光部10は,ウェーハ1の端部に対し,そのウェーハ1の表裏各面に平行な方向(前記表裏面平行方向Rb)から光束を投光する光学機器である(第1の投光手段の一例)。
前記投光部10は,点光源11,コリメータレンズ12,及びアパーチャ枠部材13を備えている。
前記点光源11は,例えば,発光ダイオード(LED)やハロゲンランプ等である。
また,前記コリメータレンズ12は,前記点光源11の出射光(放射光)を前記表裏面平行方向Rbに進行する平行光へコリメートして前記ウェーハ1の端部へ投光する光束とするレンズである。
また,前記アパーチャ枠部材13は,前記コリメータレンズ12から前記ウェーハ1側へ向かう光束の一部のみを通過させるスリット13aが形成され,前記ウェーハ1の厚みの範囲に対する両外側の範囲の光の通過を遮断するものである。前記スリット13aの幅は,例えば,ウェーハ1の厚み(0.8〜1.0mm程度)に対して2倍程度とされる。また,前記アパーチャ枠部材13は,前記スリット13aの幅方向(前記表裏面法線方向Ra)の中心位置と,ウェーハ1の厚み方向の中心位置とが概ね一致するよう配置される。
【0018】
ところで,形状測定装置X1に採用され得る投光部としては,図1に示される投光部10の他,図4に示されるような投光部10’も考えられる。
前記投光部10’は,前記点光源11と,ウェーハ1の端部に向かう前記点光源11の出射光(放射光)を拡散させる拡散板12’(光拡散手段に相当)とを備えている。前記点光源11は,前記投光部10が備えるものと同じものである。
以下,形状測定装置X1に前記投光部10’が採用された場合の前記投光部10’の寸法について説明する。図5は,前記投光部10’及びウェーハ1の寸法及び位置関係の説明図である
図5に示されるように,ウェーハ1の面取り面1aの面取り角度をθ,ウェーハ1の厚みをD,ウェーハ1の面取り幅をW1,前記拡散板12’からウェーハ1の面取り面1aの頭頂部までの距離をLs,ウェーハ1の厚み方向におけるウェーハ1の厚みの中心線から前記拡散板12’の拡散光出力面領域の端部までの長さをLrとする。
この場合,前記拡散板12’から出力される拡散光が,ウェーハ1の表裏各面との境界に位置する前記面取り面1aに正反射する場合,前記カメラ30a,30bで明瞭な前記面取り面1aが撮像されるためには,次の(1)式が成立する必要がある。
tan (2×θ) ≧ (Ls+W1)/[Lr−(D/2)] …(1)
ここで,一般的なウェーハ1において,D≦1.0[mm],W1≒0.5[mm],θ≧20°であるとする。また,ウェーハ1のハンドリングの関係で,距離Lsは2.5[mm]以上必要である。これらの条件を(1)式に適用すると,Ls≧4.1[mm]であること,即ち,前記拡散板12’のウェーハ1厚み方向における拡散光出力領域の寸法(2×Ls)が8.2[mm]以上であることが必要である。そこで,距離Lsや面取り幅W1のばらつき等を考慮すると,前記拡散板12’における前記寸法(2×Ls)は,少なくとも10[mm]程度であることが望ましい。
【0019】
また,2つの前記カメラ30a,30bは,前記投光部10により光が照射されたウェーハ1の端部を,前記表裏面法線方向Raから撮像する撮像する撮像手段である。2つの前記カメラ30aは,前記投光部10により光が照射されたウェーハ1の端部を,そのウェーハ1の表裏各面の側から撮像するものである。前記カメラ30a,30bは,例えば,CCDカメラ等である。
以下,ウェーハ1の表裏各面(平面)のうち,一方の前記カメラ30aにより撮像される側の面を第一表面(図1における上側の面),他方の前記カメラ30bにより撮像される側の面を第2表面(図1における下側の面)と称する。
図1に示される例では,ウェーハ1の端部の前記第1の表面の側を撮像する前記カメラ30aは,その端部を直接的に撮像するよう配置されている。また,ウェーハ1の端部の前記第2の表面の側を撮像する前記カメラ30bは,その端部を2つのミラー41,42を介して間接的に撮像するよう配置されている。
なお,2つの前記カメラ30a,30bが,ウェーハ1の端部を直接的に撮像するか,或いは間接的に撮像するかは,2つの前記カメラ30a,30bの配置位置の便宜に応じて任意に決定される。
【0020】
図3(a)は,形状測定装置X1の前記カメラ30a,30bによるウェーハ1の端部の撮像画像の例を表す図である。
形状測定装置X1においては,前記面取り面1aが非鏡面である場合,その面で前記投光部10による照射光が散乱反射する。また,前記カメラ30aが存在する側のウェーハ1の面(前記第1の表面)については,その面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,その第1の表面に平行に投光された前記投光部10(又は前記投光部10’)の光は,その直角方向に配置された前記カメラ30aへはほとんど到達しない。このことは,もう一方の前記カメラ30bについても同様である。そのため,図3(a)に示されるように,前記第1の表面及び前記第2の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記カメラ30a,30bの撮像画像において,前記面取り面1aの像のみが明部の像として表れる。
従って,前記カメラ30a,30bの撮像画像における明部の像の幅を検出することにより,前記面取り面1aの幅を検出できる。しかも,それを実現するために,ウェーハ1の端部に対する投光を行う前記投光部10を1つしか必要とせず,装置構成がシンプルである。
【0021】
また,前記画像処理装置40は,前記カメラ30a,30bの撮像画像に基づく画像処理を実行する演算装置であり,例えば,予めその記憶部に記憶された所定の画像処理プログラムを実行するプロセッサを備えたDSP(Digital Signal Processor)やパーソナルコンピュータ等である。
そして,前記画像処理装置40は,所定の画像処理プログラムを実行することにより,前記カメラ30a,30bによる撮像画像における明部の像g1の幅を前記面取り面1a(面取り加工された端面)の幅Wとして検出する端面幅検出処理を実行する(第1の端面幅検出手段の一例)。
例えば,前記画像処理装置40は,前記カメラ30a,30bそれぞれの撮像画像について,まず,エッジ抽出処理を施し,図3(b)に示されるようなエッジ抽出画像を導出する。図3(b)に示されるエッジ抽出画像は,エッジ部(暗部と明部との境界線の部分)が黒色で表されている。
そして,前記画像処理装置40は,そのエッジ抽出画像における対向するエッジ部の幅を検出することにより,前記面取り面1aの幅Wを検出する。なお,図3に示される例は,撮像位置が前記ノッチ部1bである例であり,そのノッチ部1bにおける前記面取り面1aの半径方向以外の方向の幅W2及び半径方向の幅W3が示されている。もちろん,撮像位置が前記ノッチ部1b以外である場合には,図9(a)に示したような前記面取り面1aの半径方向の幅W1が検出される。
その他,撮像画像に対して2値化処理を施し,得られた2値化画像における予め定められた領域について,複数の方向それぞれに沿う直線上の画素を走査し,その直線上に連続して並ぶ光輝度画素(白色画素)の数が最小となるときの画素数を前記面取り面1aの幅Wとして検出すること等も考えられる。
【0022】
以上に示した形状測定装置X1によれば,ウェーハ1の表裏各面(前記面取り面1a以外の部分)が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記面取り面1aの幅を検出できる。
また,形状測定装置X1によれば,前記面取り面1aの幅Wの測定を,表裏各面それぞれの側について同時に行うことができる。しかも,それを実現するために,前記投光部1を1つしか必要とせず,装置構成がシンプルである。
【0023】
次に,図6に示される側面図を参照しつつ,第2発明の実施形態に係る形状測定装置Y1の構成について説明する。なお,図6において,図1に示される前記形状測定装置X1における構成要素を同じものについては,同じ符号が付されている。
図6に示されるように,形状測定装置Y1は,前記中央吸着支持機2と,投光用の光学系である2つの投光部20a,20bと,2つの前記カメラ30a,30bと,前記画像処理装置40,ハーフミラー41及び前記ミラー42と,前記制御装置50とを備えている。
以下,便宜上,前記形状測定装置X1が備える前記投光部10を第1投光部10,形状測定装置Y1が備える前記投光部20a,20bを第2投光部20a,20bと称する。
形状測定装置Y1においても,2つの前記カメラ30a,30bは,ウェーハ1に対する配置状態が前記形状測定装置Y1の場合と同じである。即ち,2つの前記カメラ30a,30bは,光が照射されたウェーハ1の端部を,前記表裏面法線方向Raから撮像する。
【0024】
また,2つの前記第2投光部20a,20bは,ウェーハ1の端部に対し,前記表裏面法線方向Raからそれぞれ平行光を投光するものである(前記第2の投光手段の一例)。
図6に示される前記第2投光部20a,20bは,点光源21,コリメータレンズ22,及びハーフミラー23a又はミラー23bを備えている。
前記点光源21は,例えば,発光ダイオード(LED)やハロゲンランプ等である。
また,前記コリメータレンズ22は,前記点光源11の出射光(放射光)を平行光へコリメートして前記ウェーハ1の端部へ投光するための光束とするレンズである。
また,前記ハーフミラー23a及び前記ミラー23bは,前記コリメータレンズ12を通じて得られる平行光を,前記表裏面法線方向Raに沿って前記ウェーハ1の端部へ向かうよう変向するものである。
そして,前記第1の表面の側の前記カメラ30aは,前記ハーフミラー23aを通じてウェーハ1の端部を撮像する。また,前記第2の表面の側の前記カメラ30bは,前記ハーフミラー41及び前記ミラー42を介して,間接的にウェーハ1の端部を撮像する。
即ち,2つの前記第2投光部20a,20bは,2つの前記カメラ30a,30bそれぞれの光軸方向に沿って平行光をウェーハ1端部に向けて投光する。
また,前記第2投光部20a,20bからウェーハ1の端部へ向かう平行光は,その一部がウェーハ1の端部(前記面取り面1a及びその近傍)に照射されるとともに,残りの一部がウェーハ1の端部の外側を反対側へ通過する。
従って,前記第1の表面の側の前記カメラ30aの撮像範囲においては,前記第2の表面の側の前記第2投光部20bからの平行光は,ウェーハ1の背景光となる。同様に,前記第2の表面の側の前記カメラ30bの撮像範囲においては,前記第1の表面の側の前記第2投光部20aからの平行光が,ウェーハ1の背景光となる。
また,前記制御装置50は,前記形状測定装置X1の場合と同様に,前記中央吸着支持機構2の制御に加え,前記第2投光部20a,20bの点灯及び消灯の制御,前記画像処理装置40による画像処理の開始の制御を行う。
【0025】
図7(a)は,形状測定装置X2の前記カメラ30a,30bによるウェーハ1の端部の撮像画像の例を表す図である。
前記面取り面1aは,ウェーハ1の表裏両面(端面以外の面)に対し平行ではないため,その面取り面1aが鏡面である場合,その面に到達した前記第2投光部20a,20bの光(平行光)は,前記カメラ30a,30bが存在する方向とは異なる方向へ正反射する。即ち,前記カメラ30a,30bの撮像画像において,前記面取り面1aは暗部となる。
一方,ウェーハ1に対し前記カメラ30a,30bの光軸方向に平行な方向に沿ってウェーハ1の表裏各面に到達した前記第投光部20a,20bの光(平行光)は,その面が鏡面であるか非鏡面であるか(正反射するか散乱反射するか)に関わらず,前記カメラ30a,30bの方向へ反射する。即ち,前記カメラ30a,30bの撮像画像において,前記第1の表面及び前記第2の表面は明部となる。
また,ウェーハ1に対し前記カメラ30a,30bとは反対側に存在する前記第2投光部20b,20aからウェーハ1の端部の外側の領域に到達した光(平行光)は,そのまま前記カメラ30a,30bの方向へ向かって背景光となる。即ち,前記カメラ30a,30bの撮像画像において,ウェーハ1の端部の外側の領域は明部となる。
以上より,2つの前記第2投光部20a,20bによる投光が行われたときの撮像画像においては,図7(a)に示されるように,前記第1の表面及び前記第2の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記面取り面1aのみが暗部となる。
従って,前記カメラ30a,30bの撮像画像における暗部の像の幅を検出することにより,前記面取り面1aの幅Wを検出できる。しかも,2つの前記カメラ30a,30bが,ウェーハ1のの表裏各面について存在するため,表裏各面それぞれの側について同時に測定を行うことができる。
【0026】
また,前記画像処理装置40は,所定の画像処理プログラムを実行することにより,前記カメラ30a,30bによる撮像画像における暗部の像g2の幅を前記面取り面1a(面取り加工された端面)の幅Wとして検出する端面幅検出処理を実行する(第2の端面幅検出手段の一例)。以下,便宜上,前記形状測定装置X1における明部の像g1(図3参照)の幅を前記面取り面1aの幅Wとして検出する処理を第1端面幅検出処理と称する。また,形状測定装置Y1における暗部の像g2の幅を前記面取り面1aの幅Wとして検出する処理を第2端面幅検出処理と称する。
例えば,前記画像処理装置40は,前記カメラ30a,30bそれぞれの撮像画像について,まず,エッジ抽出処理を施し,図7(b)に示されるようなエッジ抽出画像を導出する。図7(b)に示されるエッジ抽出画像は,エッジ部(暗部と明部との境界線の部分)が黒色で表されている。
そして,前記画像処理装置40は,そのエッジ抽出画像における対向するエッジ部の幅を検出することにより,前記面取り面1aの幅Wを検出する。なお,図7に示される例は,撮像位置が前記ノッチ部1bである例であり,そのノッチ部1bにおける前記面取り面1aの半径方向以外の方向の幅W2及び半径方向の幅W3が示されている。もちろん,撮像位置が前記ノッチ部1b以外である場合には,図9(a)に示したような前記面取り面1aの半径方向の幅W1が検出される。
形状測定装置Y1によれば,前記面取り面1aが鏡面である場合に,前記第1の表面及び前記第2の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに関わらず,前記カメラ30a,30bの撮像画像における暗部の像の幅を検出することにより,前記面取り面1aの幅Wを検出できる。
【0027】
次に,図8を参照しつつ,第1発明の第2の実施形態に係る形状測定装置X2について説明する。なお,図8において,図1に示される前記形状測定装置X1及び図6に示される前記形状測定装置Y1における構成要素を同じものについては,同じ符号が付されている。
以下,形状測定装置X2について,前記形状測定装置X1と異なる部分についてのみ説明する。
形状測定装置X2は,前記形状測定装置X1に,前記形状測定装置Y1における前記第2投光部20a,20bが付加され,前記第1投光部10(前記投光部10と同じ)による投光と前記第2投光部20a,20bによる投光とを切り替え可能に構成された装置である。
即ち,形状測定装置X2における前記制御装置50は,前記第1投光部10(又は10’)による投光と,2つの前記第2投光部20a,20bによる投光とのいずれを行うかを切り替える投光切替処理を実行する。
なお,形状測定装置X2においては,前記形状測定装置X1における前記ミラー41’が,前記形状測定装置Y1における前記ハーフミラー41に置き換えられている。
そして,前記画像処理装置40は,前記制御装置50によって前記第1投光部10(又は10’)による投光がなされている場合には,ウェーハ1の端部を前記カメラ30a,30bにより撮像して得られる撮像画像について,明部の像の幅を前記面取り面1aの幅Wとして検出する前記第1端面幅検出処理(前記形状測定装置X1における処理)を実行する。
また,前記画像処理装置40は,前記制御装置50によって2つの前記第2投光部20a,20bによる投光がなされている場合には,ウェーハ1の端部を前記カメラ30a,30bにより撮像して得られる撮像画像について,暗部の像の幅を前記面取り面1aの幅として検出する前記第2端面幅検出処理(前記形状測定装置Y1における処理)を実行する。
図8に示される形状測定装置X2によれば,前記面取り面1aが非鏡面及び鏡面のいずれであっても,前記第1投光部10による投光と前記第2投光部20a,20bによる投光との切り替えにより,前記面取り面1aの幅Wを検出できる。
なお,以上に示した各実施形態は,ウェーハ1の表裏両側の測定が可能なように2つの前記カメラ30a,30bが設けられた例であるが,一方のカメラ30b及びそのカメラ30bへの導光用のミラー等が省略された形状測定装置も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は,主として半導体ウェーハ,その他,ハードディスク用のアルミサブストレートやガラスサブストレート等の円盤状の測定対象物の端面の幅の測定装置への利用が可能である。
【符号の説明】
【0029】
X1,X2,Y1:形状測定装置
1 :ウェーハ
1a:面取り加工された端面(面取り面)
2 :中央吸着支持機構
10,10’:投光部(第1投光部)
20a,20b:投光部(第2投光部)
11,21:点光源
12,22:コリメータレンズ
12’:拡散板
13:アパーチャ枠部材
13a:スリット
30a,30b:カメラ
40:画像処理装置
50:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の測定対象物をその表面に直角の方向から見たときの該測定対象物の端部における面取り加工された端面の幅を測定する形状測定装置であって,
前記測定対象物の端部に対し該測定対象物の表裏各面に平行な方向から光束を投光する第1の投光手段と,
前記第1の投光手段により光が照射された前記測定対象物の端部を該測定対象物の表面に直角の方向から撮像する撮像手段と,
前記撮像手段による撮像画像における明部の像の幅を前記面取り加工された端面の幅として検出する第1の端面幅検出手段と,
を具備してなることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記第1の投光手段により光が照射された前記測定対象物の端部を該測定対象物の表裏各面の側から撮像する2つの前記撮像手段を具備してなる請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記第1の投光手段が,
光源の出射光を前記測定対象物の表裏各面に平行な平行光へコリメートして前記測定対象物の端部へ投光する光束とするコリメータレンズを具備してなる請求項1又は2のいずれかに記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記第1の投光手段が,
前記測定対象物の端部に向かう光源の出射光を拡散させる光拡散手段を具備してなる請求項1又は2のいずれかに記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物の端部に対し該測定対象物の表裏両面それぞれの側における該表裏両面に直角の方向からそれぞれ平行光を投光する2つの第2の投光手段と,
前記第1の投光手段による投光と前記2つの第2の投光手段による投光とのいずれを行うかを切り替える投光切替手段と,
前記投光切替手段により前記2つの第2の投光手段による投光がなされたときの前記測定対象物の端部を前記撮像手段により撮像して得られる撮像画像における暗部の像の幅を前記面取り加工された端面の幅として検出する第2の端面幅検出手段と,
を具備してなる請求項1〜4のいずれかに記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−181249(P2010−181249A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24453(P2009−24453)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】