説明

成膜反応装置及び成膜基板製造方法

【課題】基板の膜厚制御性能を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】ガス流入口20Bの上流側で、ガス流の幅方向に独立してガス流量を制御可能な複数の部分制御範囲(LLゾーン、LRゾーン、Rゾーン)が構成されており、各部分制御範囲におけるガス流量を制御する制御装置66を備え、制御装置66は、ウェハ28を回転させつつ行われた回転成膜によりウェハ28上に形成された膜厚データに基づいて、ウェハ28上の種々の位置における膜成長速度と所定の目標膜成長速度との間の偏差を求め、部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、ウェハ28への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データ72を用いて、種々の位置における偏差を減らすように、部分制御範囲のそれぞれのガス流量を制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を回転させつつ成膜を行って成膜基板を製造する成膜反応装置及び成膜基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を回転させつつ成膜を行って成膜基板を製造する成膜反応装置が知られている。このような、成膜反応装置においては、ガスを導入する方向に平行であり、且つ基板を回転させる中心軸(基本的には、基板の中心軸)を通る回転基準線に対して、左右対称にガスを導入する構成を設け、左右対象のガス流となるように制御して基板への成膜を行っている。
【0003】
例えば、このような成膜成長装置において、反応ガスの流量を均一にするための給気開口部についての形状についての技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ガスの流量分布が左右対称となることにより、基板上の特定の位置での流量ムラの影響が重なることによる膜厚異常を防止する技術として、ガスの流れを仕切る仕切り板が回転基準線に対して左右で異ならせる技術(特許文献2参照)や、基準平面に対してガス流通孔の形成形態を左右非対称とする技術が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
また、各ガス流路におけるガス流量をそれぞれ独立して制御できる成膜成長装置が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−35720号公報
【特許文献2】特許第3516654号公報
【特許文献3】特開2003−168650号公報
【特許文献4】特開2007−324286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1乃至4に記載された技術は、成膜成長装置において左右対称のガスを流すと、基板上において左右対称にガス流が流れるとの考えのもとでの技術であった。このため、ガス流が左右対称であることを前提に種々の発明が行なわれている。
【0008】
これに対して、本出願の発明者は、基板を回転させていることによるガス流への影響を観察して以下のような状況を発見した。
【0009】
図1は、成膜反応装置におけるガス流を説明する図である。
【0010】
基板201をサセプタ202に載置して、サセプタ202を回転させるとともに、ガス流入口から図中の矢印に示すように右方向にガスを供給すると、基板201及びサセプタ202等の回転の影響を受けて、ガス流の進路は、図に示すように曲げられてしまう。このため、基板202の中心を通り、ガス供給方向に平行な回転基準線よりも回転上流側(ガス流入口から基板201を見て右側)と、回転基準軸よりも回転下流側(ガス流入口から基板201を見て左側)とで、ガス流が左右対称とはならない。
【0011】
また、近年では、基板の直径が300mm以上のものも登場しており、このように基板が大きくなればなるほど、ガス流の進路に対する基板の回転の影響がより顕著になる。
【0012】
このように、ガス流の進路が曲げられてしまうと、ガス流が左右対称に流れることを前提にした成膜成長装置においては、基板上の膜厚を均一化するように制御することが困難である。
【0013】
また、例えば、上記した特許文献2や特許文献3に記載の技術では、回転によるガス流の進路の曲がりの影響は、認識も考慮もされていないが、もし、仮に、これらに記載された炉内部材の構成によって左右非対称でガス流が流れるようにした技術を使うとすると、同一の成膜基板を複数の成膜成長装置により製造する場合においては、左右のガス流量比が装置構成によって固定化されてしまうので、異なる成膜成長装置間によって製造される成膜基板の膜厚にばらつきがでてしまう問題がある。
【0014】
これに対して、炉内部材を複数用意し、成膜成長装置毎に選択して使用することにより、これに対処することも考えられるが、炉内部材を複数用意する必要があるとともに、交換するために時間を要し、生産性が著しく低下する問題がある。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、基板を回転させつつ成膜を行う際における、基板の膜厚制御性能を向上させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的達成のため、本発明の第1の観点に係る成膜反応装置は、内部に基板が置かれる反応室を構成する反応室構成部と、反応室内の基板の周縁に沿った幅方向へ所定の範囲で延び、反応ガス流を前記反応室内に流入させるためのガス流入口を構成するガス流入口部を備えた基板上に成膜するための成膜反応装置において、ガス流入口の上流側に、個別にガス流量を制御可能な複数の部分制御範囲が構成されており、それぞれの部分制御範囲におけるガス流量を制御するガス流量制御部を備え、ガス流量制御部は、基板を回転させつつ行われた回転成膜により基板上に形成された膜厚データに基づいて、基板上の種々の位置における膜成長速度と所定の目標膜成長速度との間の偏差を求める手段と、複数の部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、種々の位置における偏差を減らすように、調整対象の部分制御範囲のそれぞれのガス流量を制御する手段とを有する。係る成膜反応装置によると、複数の部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、種々の位置における偏差を減らすように、調整対象の部分制御範囲のそれぞれのガス流量を制御するので、回転時における成膜の状況を適切に考慮してガス流量を制御でき、これにより、基板上の膜厚の均一化を図ることができる。
【0017】
上記成膜反応装置において、ガス流入口によるガス流れの方向に平行であり、且つ基板の回転中心軸を通る基準線に対して、回転上流側と、回転下流側とで、異なる部分制御範囲が構成されていてもよい。係る成膜反応装置によると、回転上流側と、回転下流側とで独立してガス流量を制御することができるので、基板の回転によるガス流の曲がりの影響を考慮してガス流量を制御できる。
【0018】
また、上記成膜反応装置において、基準線に対して回転下流側において、回転上流側と、回転下流側との少なくとも2つの部分制御範囲が構成されていてもよい。係る成膜反応装置によると、基準線に対して回転下流側において、回転上流側と、回転下流側とでガス流量を適切に制御することができる。
【0019】
また、上記成膜反応装置において、基準線に対して回転上流側に1つの部分制御範囲が構成され、基準線に対して回転下流側において、回転上流側と、回転下流側との2つの部分制御範囲が構成されていてもよい。係る成膜反応装置によると、回転の影響の異なる3つの部分制御範囲におけるガス流を適切に制御することができる。
【0020】
また、上記成膜反応装置において、複数の部分制御範囲には、基板の中心近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第1の部分制御範囲と、基板の半径の略中間近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第2の部分制御範囲とがあるようにしてもよい。係る成膜反応装置によると、回転成膜時の基板における感度の高い部分が異なる2つの部分制御範囲を独立してガス流を制御することができるので、基板における膜厚の均一化を適切に図ることができる。
【0021】
また、上記成膜反応装置において、複数の部分制御範囲は、基板の中心近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第1の部分制御範囲と、基板の半径の略中間近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第2の部分制御範囲と、それ以外の部分制御範囲との3つの部分制御範囲であってもよい。係る成膜反応装置によると、3つの部分制御範囲におけるガス流量を制御すれば済むので、制御に係る構成を簡易にすることができる。
【0022】
また、上記成膜反応装置において、複数の部分制御範囲には、基板の外周近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第3の部分制御範囲があってもよい。係る成膜反応装置によると、外周近傍における膜厚についても適切に制御することができる。
【0023】
また、上記成膜反応装置において、複数の部分制御範囲は、第1の部分制御範囲と、第2の部分制御範囲と、第3の部分制御部分と、それ以外の部分制御範囲との4つの部分制御範囲であってもよい。係る成膜反応装置によると、4つの部分制御範囲におけるガス流量を制御すれば済むので、制御に係る構成を簡易にすることができる。
【0024】
また、上記成膜反応装置において、部分制御範囲におけるガス流量を調整するガス調整機構を、部分制御範囲毎に1つずつ備えてもよい。係る成膜反応装置によると、部分制御範囲の数だけガス調整機構を備えるだけで済むようになる。
【0025】
また、上記目的達成のため、本発明の第2の観点に係る成膜基板製造方法は、基板を回転させつつ成膜させることにより、成膜基板を製造する成膜基板製造方法において、基板への成膜のための反応ガス流を流すステップと、反応ガス流について、複数の部分制御範囲のそれぞれ毎にガス流量を所定の量に調整して前記基板を回転させつつ成膜させることにより成膜基板を製造するステップと、基板を回転させつつ行われた回転成膜により基板上に形成された膜厚データに基づいて、基板上の種々の位置における膜成長速度と所定の目標膜成長速度との間の偏差を求めるステップと、複数の部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、前記基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、種々の位置における偏差を減らすように、調整対象の部分制御範囲のそれぞれの調整するガス流量を決定するステップと、複数の部分制御範囲のそれぞれのガス流量を、決定したガス流量に調整して新たな基板を回転させつつ成膜させることにより前記成膜基板を製造するステップとを有する。係る成膜基板製造方法によると、部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、種々の位置における偏差を減らすように、部分制御範囲のそれぞれのガス流量を制御するので、回転時における成膜の状況を適切に考慮してガス流量を制御でき、これにより、膜厚が均一な成膜基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】成膜反応装置におけるガス流を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成膜反応装置の要部を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るガスの供給制御に関わるガス配管システムの構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るガス流量調整処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る膜成長速度偏差を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る回転時膜成長感度データの一例を示す図である。
【図8】成膜反応装置における成膜特性を試験するためのガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【図9】成膜反応装置における成膜特性を説明するための図である。
【図10】第1の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【図11】第2の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【図12】第3の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【図13】第4の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
まず、本発明の一実施形態に係る成膜反応装置について説明する。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態にかかる成膜反応装置の要部を示す断面図である。この成膜反応装置1は、例えばシリコンウェハのような半導体ウェハの表面に、シリコンのような半導体材料のエピタキシャル膜を形成するために使用することができる。
【0030】
図2に示すように、成膜反応装置1は、内部に反応室20Aをもつ反応器20を備える。反応室20Aの形状は、扁平なほぼ円柱形である。反応室20Aの上面の全域は、ほぼ円板形のアッパードーム21でカバーされる。つまり、アッパードーム21は、反応室20Aの天井壁を構成する。反応器20の底壁は、ほぼ円環形のロワーライナー24と、ロワーライナー24の内側の円形開口内に配置された円板形のサセプタ26とから構成される。
【0031】
アッパーライナー22はその周縁部の全周に、下方に突出した突出環状部22Aを有する。アッパーライナー22の突出環状部22Aは、ロワーライナー24の周縁部24Aに結合し、反応室20Aの側壁を構成する。サセプタ26上に、ウェハ(基板)28が載置されることになる。サセプタ26は、その下面にてサセプタサポートシャフト30に結合され、成膜工程中、ウェハ28の中心を回転中心として回転駆動されるようになっている。ウェハ28は、例えば、直径が300mmとなっている。
【0032】
また、反応室20の上方と下方には、それぞれ、加熱用の多数のランプ32,32,…の円環形の列が配置される。ランプ32,32,…からの輻射熱がサセプタ26およびウェハ28に良好に伝わるよう、アッパードーム21、ロワードーム31の主要部は、石英のような光透過性の耐熱材料製である。
【0033】
成膜反応装置1の上述した基本的な構造は、公知であるから、それについてのより詳細な説明は、この明細書では省略する。以下では、成膜反応装置1におけるガス流を反応室20A内に供給するための構造について、詳細に説明する。
【0034】
図3は、ロワーライナー24およびサセプタ26とともに、ロワーライナー24に接続されたガス流供給のための各種の部品を、図2のA-A線で見て示した平面図である。以下、図2と図3を参照して、成膜反応装置1のガス流供給のための構造を説明する。
【0035】
反応室20Aの一側(図中左側)の端部にガス流入口20Bが形成される。また、反応室20Aのガス流入口20Bとは反対側(図中右側)の端部にガス排出口20Cが形成される。図2に示すように、ガス流入口20Bもガス排出口20Cも、ウェハ28の周縁の外側の近傍位置に配置され、ウェハ28の周縁に沿ってこれとほぼ平行に円弧状に延びている。ガス流入口20Bとガス排出口20Cがウェハ28の周縁に沿って延びている方向(図3中の縦方向)を、「幅方向」という。ガス流入口20Bとガス排出口20Cの幅方向の寸法、つまり幅は、サセプタ26上のウェハ28の直径よりも若干大きい。そして、ガス流入口20Bとガス排出口20Cのそれぞれの幅方向の中心位置は、ウェハ28の同幅方向での中心位置に一致する。従って、反応室20A内では、ガス流入口20Bからガス排出口20Cへ向かう方向へ、ウェハ28の全領域をカバーするための広い幅をもつ帯状の反応ガス流が流れる。ここで、ガス流入口20Bから流される反応ガス流の方向がウェハ28の回転中心を通る線を回転基準線ということとする。この帯状の反応ガス流が、ウェハ28の表面の全領域を通過しつつ、ウェハ28の表面上にエピタキシャル膜を形成する。この反応ガス流の幅方向の流速分布が、ウェハ28の表面上の形成されるエピタキシャル膜の膜厚分布を左右することになる。
【0036】
上述したガス流入口20Bを構成する構造(ガス流入口部)をより詳細に述べると、次の通りである。すなわち、ロワーライナー24の周縁部24Aに段状凹部24Bが形成されており、この段状凹部24Bは、図2に示すようにガス流方向に沿った断面(以下、ガス流方向の断面を「縦断面」という)視で、ロワーライナー24の他の部分より下方へ一段凹み、図3に示すように、幅方向においてウェハ28の直径よりも広い距離範囲にわたり円弧状に延びている。また、上記段状凹部24Bに対向するアッパーライナー22の突出環状部22Aの部分には、段状凸部22Bが形成され、この段状凸部22Bは、図2に示すように縦断面視で段状凹部24Bに対応して下方へ一段突出し、また、幅方向において段状凹部24Bと同じ距離範囲にわたり円弧状に延びている。そして、ロワーライナー24の周縁部24Bの段状凹部24Bが存在する範囲の部分と、アッパーライナー22の突出環状部22Aの段状凸部22Bが存在する範囲の部分との間に、上述したガス流入口20Bが形成される。ガス流入口20Bは、図2に示すように縦断面視で階段状に折れ曲がっており、そこを反応ガス流が、図2に点線矢印で示すような方向に流れる。そのため、反応ガス流は、ガス流入口20B内の途中で、段状凹部24Bの前壁24Cに当って上方へ昇ってから、反応室20A内に流入するようになっている。
【0037】
ガス排出口20Cの構造も、上述したガス流入口20Bのそれとほぼ同様である。
【0038】
反応器20のガス流入口20Bに対応する側の外面には、反応ガスを反応器20内に導入するためのインレットフランジ34が取り付けられる。インレットフランジ34内には、複数(例えば3個)のガス室34Aがある。インレットフランジ34には、複数本(例えば3本)のガス供給管35が接続され、各ガス供給管35は各ガス室34に連通する。
【0039】
インレットフランジ34とガス流入口20Bとの間に、図3に示されるように2つの平板状のインサータ36が介装される。2つのインサータ36の間の境界は、ガス流入口20Bの幅方向における中央(回転基準線上)に位置する。インサータ36内には、1本以上のガス流路36A(部分制御範囲)があり、2つのインサータ36内のガス流路36Aの合計本数は例えば3本である。本実施形態では、ウェハ28に向かって基準線に対して右側(回転上流側)のインサータ36には、1つのガス流路36A(Rゾーン)が形成され、ウェハ28に向かって基準線に対して左側(回転下流側)のインサータ36には、2つのガス流路36A(LRゾーン、LLゾーン)が形成されている。本実施形態では、LRゾーンと、LLゾーンとの幅は、ほぼ同じである。また、2つのインサータ36の両者合わせた幅は、ガス流入口20Bの幅とほぼ同じである。2つのインサータ36と、インレットフランジ34との間に、幅方向に細長い板状のバッフル38が介装される。バッフル38内には複数(例えば24個)の整流穴38Aがある。インレットフランジ34内の各ガス室34Aはバッフル38内の複数の整流穴38Aに連通し、バッフル38内の各整流穴38Aは2つのインサータ36内のいずれかのガス流路36Aに連通し、そして、2つのインサータ36内の複数本のガス流路36Aの全てがガス流入口20Bに連通する。
【0040】
また、反応器20のガス排出口20Cに対応する側の外面には、反応ガスを反応器20外へ排出するためのアウトレットフランジ42が取り付けられる。アウトレットフランジ42には、1本または複数本のガス排出管44が接続される。
【0041】
図2に点線矢印で示すように、反応ガスは、各ガス供給管35からインレットフランジ34内の各ガス室34Aに入り、バッフル38内の各整流穴38A及び2つのインサータ36内の各ガス流路36Aを通ってガス流入口20Bに入り、そして、ガス流入口20Bを通って帯状のガス流となって反応室20A内へ流入する。ガス流入口20Bから反応室20A内に流入した帯状のガス流は、サセプタ26上のウェハ28の表面の全ての領域上を通過して、ウェハ28の表面上にエピタキシャル膜を形成する。その後、反応ガス流は、ガス排出口20Cに入り、アウトレットフランジ42内を通ってガス排出管44へ出て行く。ウェハ28の表面上のエピタキシャル膜の膜厚分布は、反応室20A内での反応ガス流の幅方向のガス流速分布に左右され、そして、その反応室20A内でのガス流速分布は、2つインサータ36内の複数本のガス流路36Aのガス流速分布に左右される。
【0042】
以下では、特にインサータ36、バッフル38、インレットフランジ34及びガス流入口20Bの構造について、より詳細に説明する。
【0043】
各インサータ36内には、これをバッフル38側からガス流入口20B側へ向かう方向へ貫通する複数本のガス流路36Aが、幅方向に並んで配列されている。隣り合うガス流路36Aは、それらのガス流路36Aの側壁36Bによって互に隔離される。各ガス流路36Aをガス流に直角な方向で切った断面(以下、ガス流に直角な方向の断面を「横断面」という)の形状は、例えば長方形または円形またはそれに近い形状である。この実施形態では、2つのインサータ36内のガス流路36Aの本数は一例として3本である。
【0044】
バッフル38内には、これをインレットフランジ34側からインサータ36側へ向かう方向に貫通する複数個(例えば24個)の整流穴38Aが、幅方向に一列に配列されている。これらの複数の整流穴38Aは、インサータ36内のガス流路36Aに連通する。本実施形態では、複数の整流穴38Aが1つのガス流路36Aに連通する。各整流穴36Aの横断面の形状は、幅方向へ細長いスリット形状である。各整流穴38Aは、各ガス流路36A内のガス流速の分布を平坦にする役目を果たす。
【0045】
図2および図3に示すように、インレットフランジ34内には、互に隔離された複数個(例えば3個)のガス室34Aが形成されている。インレットフランジ34内の複数のガス室34Aは、バッフル38内の複数の整流穴38Aに連通する。インレットフランジ34内の複数のガス室34Aには、複数本(例えば3本)のガス供給管35が接続される。
【0046】
図2および図3に示すように、ガス流入口20Bの上流約半分の領域を占める段状凹部24Bには、ブレードユニット40がはめ込まれている。
【0047】
ブレードユニット40は、段状凹部24Bと同じ円弧状の平面形状をもつ平板状のベースプレート40Aと、このベースプレート40A上に垂直に立設された複数枚(例えば4枚)のブレード40Bとを有する。このブレードユニット40は、ロワーライナー24と一体化されていない(つまり、ロワーライナー24から分離可能な)独立した別部品であり、ロワーライナー24の段状凹部24B上に置かれている。そして、ブレードユニット40の複数枚のブレード40Bは、それぞれ、インサータ36内のガス流路36Aの側壁36Bの延長線上に位置する。従って、ガス流入口20Bの段状凹部24Bには、複数枚のブレード40Bにより互に隔離された複数個(例えば3個)のガス輸送溝40Cが形成されており、これらの複数のガス輸送溝40Cは、2つのインサータ36内の複数本のガス流路36Aにそれぞれ連通する。
【0048】
図4は、上述した反応器20の外部に設けられた、反応ガスを反応器20に供給するための配管システムの構成を示す配管線図である。
【0049】
反応ガスは例えばシリコンガスと水素ガスと所定のドーパントガスなどの複数の成分ガスの混合ガスである。そのため、図4に示すように、シリコンガス源、水素ガス源およびドーパントガス源などの複数の成分ガス源があり、これら複数の成分ガス源からそれぞれ来た複数本の成分ガス供給管50,51,52が、1本の反応ガス供給元管58に合流する。成分ガス供給管50,51,52のそれぞれには、ガス流量調節器53,54,55が設けられている。これらのガス流量調節器53,54,55は、コンピュータなどを用いた制御装置66より制御され、それにより、反応器20に供給される反応ガスの全体の流量と、反応ガスに示す各成分ガスの組成比が調節できる。
【0050】
反応ガス供給元管58は、複数本(例えば3本)の反応ガス供給枝管60に分岐し、それらの複数本の反応ガス供給枝管60は、それぞれ、インレットフランジ34内の複数個(例えば3個)のガス室34A,34A,・・・にそれぞれ接続される。
【0051】
本実施形態では、回転基準線に対して回転上流側(ウェハ28に向かって右側(図4では、下側))の1つのガス流路36A(ガス室34A)に連通する1本の反応ガス供給枝管60に対して、ガス流量を実質的に無段階(つまり連続的)に調節できるガス流量調節器(ガス調整機構)56が1つ設けられている。また、回転基準線に対して回転下流側(ウェハ28に向かって左側(図4では、上側))の2つのガス流路36A(ガス室34A)の内の回転上流側のガス流路36A(ガス室34A)に連通する1本の反応ガス供給枝管60に対してガス流量調節器56が1つ設けられ、回転下流側の1つのガス流路36A34A)に連通する1本の反応ガス供給枝管60に対してガス流量調節器56が1つ設けられている。上記した3個のガス流量調節器56は、制御装置66より制御され、それにより、ガス流入口20Bの回転上流側の領域(Rゾーン:部分制御範囲)のガス流路36Aと、回転下流側のうちの回転上流側の領域(LRゾーン:部分制御範囲)のガス流路36Aと、回転下流側のうちの回転下流側の領域(LLゾーン:部分制御範囲)のガス流路36Aとの3つの領域のガス流路36Aについて、それぞれを流れるガス流量(単位時間当たりに流れるガス容積)を領域毎に独立して任意の値に調整できるようになっている。このため、例えば、回転上流側と、回転下流側との領域でガス流量を異ならせることができる。
【0052】
さらに、いずれかのガス流量調節器56の不具合やその他の何らかの原因で反応ガス供給元管58のガス圧が異常に高くなった場合に、余剰ガスを反応室20A内へ放出してガス圧を下げるためのセフティリリーフ弁62をもつセフティリリーフ管64が、反応ガス供給元管58と、3本のガス流路36Aのうち一番外側に位置する一本のガス流路36Aに繋がる一本の反応ガス供給枝管60との間に接続されている。
【0053】
上述した図4に示すガス配管システムでは、Rゾーン、LRゾーン、LLゾーンのそれぞれの部分制御範囲に対応させて、それぞれ1つずつガス流量調節器56を設けて、各部分制御範囲毎にガス流量を互に独立して調整できるようにしている。
【0054】
以上のように構成された成膜反応装置の作用について、以下に説明する。
【0055】
ガス流入口20Bから反応室20Aに流入する反応ガス流の幅方向の流速分布は、ガス流入口20Bの幅方向の全範囲に配列された3本)のガス流路36Aにそれぞれ流れるガス流速によって制御されることになる。
【0056】
そして、各ガス流路36Aの上流に存在するバッフル38の各整流穴38が、各ガス流路36A内での流量分布を均一化するという作用をなす。それにより、上述した流速に関する条件が一層容易かつ良好に満たされるようになる。すなわち、各整流穴38は、各ガス流路36Aの幅方向に細長いスリット状の穴であり、その高さは各ガス流路36Aの幅方向にわたり一定である。このような細い各整流穴38をガス流が通ることで、各整流穴38を出た直後のガス流の幅方向でのガス流速分布は、各ガス流路36Aの幅方向にわたり一定であり、かつ、その流速分布がその後に各ガス流路36Aを流れる時のガス流速分布を決定付けることになる。
【0057】
さらに、図2,3を参照して説明したように、ガス流入口20B内の前半部分の段状凹部24B上に置かれたブレードユニット40が形成する複数のガス輸送溝40Cにより、インサータ36内の複数本のガス流路36Aにより形成されたガス流速分布が、段状凹部24B内でも良好に維持される。そして、ガス流が段状凹部24Bを抜ける際には、段状凹部24Bの前壁24Cに当って上方へ昇ってから反応室20A内に流入するようになっており、かつ、前壁24Cより下流のガス流入口20Bの部分は分割されずに幅方向に繋がっている。そのため、ブレード40Bによるガス流速分布の変動が、分割されていないガス流入口20Bの後半部分で希釈され、ガス流入口20Bから反応室20A内に流入するガス流の幅方向の流速分布の滑らかさが向上する。
【0058】
以上のような各部の作用が総合される結果、反応室20A内でのガス流の幅方向でのガス流速分布を所望の分布に制御することが可能になる。
【0059】
次に、図4に示した制御装置66が行なうガス流量の調整制御について詳細に説明する。
【0060】
図5は、本発明の一実施形態に係るガス流量調整処理を示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施形態に係る膜成長速度偏差を説明する図である。図7は、本発明の一実施形態に係る回転時膜成長感度データの一例を示す図である。
【0061】
なお、このガス流量調整処理が行われる前においては、ウェハ28への試験的成膜処理と、試験的成膜により得られたウェハの測定処理とが行われているものとする。すなわち、製品としてのウェハ28への成膜と同様に、ウェハ28を回転させつつウェハ8への成膜を行う(試験的成膜処理)。そして、試験的成膜後に、形成された膜の膜厚が、ウェハ28の表面の多数の異なる位置にて測定する(測定処理)。この試験的成膜処理では、制御装置66は、ガス流量分布(つまり、複数のガス流量調節器56のガス流量)を、予め設定されている初期設定流量に制御する。初期設定流量には、例えば、経験上適切であろうとみなされた適当流量値を採用することができる。
【0062】
ガス流量調整処理では、制御装置66が、図6に示すように、試験的成膜により得られたウェハ28において測定された膜厚データに基づいて、ウェハ28の中心からの距離xの関数としての膜成長速度偏差ΔGR(x)を計算する(ステップS1)。例えば、膜厚データと膜成長に要した時間とに基づいて、図6に示すような膜成長速度94〔μm/min〕を、ウェハ中心からの距離xの関数として計算する。そして、制御装置66が膜成長速度94と、所定の目標膜成長速度(例えば、膜成長速度94中の最小速度、最大速度もしくは平均速度、または、予め設定された任意の速度値など)96との差を、膜成長速度偏差ΔGR(x)として算出する。本実施形態では、サンプリング点として予め設定された所定の多数の異なる距離x毎に膜成長速度偏差ΔGR(x)を計算している。
【0063】
その後、制御装置66が、計算された多数のサンプリング点の膜成長速度偏差ΔGR(x)に基づいて、流量調節器56毎の流量調整値を計算する(ステップS2)。この計算では、制御装置66に予め設定されている回転時膜成長感度データが参照される。回転時膜成長感度データは、図7に示すように、流量調節器56毎(換言すれば、各部分制御範囲毎)に予め設定された回転時膜成長感度関数S(x,n)〜S(x,n)の集合である。ここで、Nは部分制御範囲の数であり、図示の例ではN=3であるが、これは単なる例示にすぎない。また、図7では、n=1.5となっている。
【0064】
ここで、或る部分制御範囲Aに関する回転時膜成長感度関数S(x,n)は、次のように表される。すなわち、S(x,n)={GR(x,n)−GR(x,1)}/Lと表される。ここで、xは、ウェハの中心を通るガス流れの幅方向の直線の位置Xのウェハ中心からの距離[mm]を示し、GR(x,n)は、反応室内に流すガス流量をL(slm)とし、部分制御範囲A以外のバルブ開度を一定の値とし、部分制御範囲Aのバルブ開度を他のn倍とした条件において、ウェハを回転させつつ成膜させた場合におけるウェハ上の位置Xでの膜成長速度[μm/min]を示している。
【0065】
この回転時膜成長感度関数S(x,n)は、ウェハを回転させて成膜している際における、対応する部分制御範囲に流れるガス流量[slm]の変化に対するウェハ28上の膜成長速度[μm/min]の変化の割合[μm/min・slm]を、ウェハ中心からの距離xの関数として表している。
【0066】
例えば、1番目の回転時膜成長感度関数S(x,n)は、最も回転上流側に位置する部分制御範囲(図3に示す下方の流路36A:Rゾーン)に対応するものであり、2番目の回転時膜成長感度関数S(x,n)は、回転上流側から2番目に位置する部分制御範囲(LRゾーン)に対応するものであり、以後、回転時膜成長感度関数S(x,n)のサフィックス番号iが多くなるにつれて、順次より回転下流側に位置する部分制御範囲に対応するものとなり、最後のN番目(この例では3番目)の回転時膜成長感度関数S(x,n)(この例ではS(x,n))は、最も回転下流側に位置する部分制御範囲に対応するものである。
【0067】
例えば、図7に示す、最も回転上流側に位置する部分制御範囲(Rゾーン)に対応する回転時膜成長感度関数S(x,1.5)に着目すると、当該部分制御範囲のガス流量の変化は、ウェハ中心近傍(センタ部)における膜成長速度に対してより大きく影響することが分かる。また、回転下流側における回転上流側に位置する部分制御範囲(LRゾーン)に対応する回転時膜成長感度関数S(x,1.5)に着目してみると、当該部分制御範囲のガス流量の変化は、ウェハの半径の略中間近傍(ミドル部)の膜成長速度に対してより大きく影響することが分かる。また、回転下流側における回転下流側に位置する部分制御範囲(LLゾーン)に対応する回転時膜成長感度関数S(x,1.5)に着目してみると、当該部分制御範囲のガス流量の変化は、ウェハの外周近傍(エッジ部)の膜成長速度に対してより大きく影響することが分かる。
【0068】
図5の説明に戻り、制御部66は、図6に示したような膜成長速度偏差ΔGR(x)と、図7に示したような流量調節器56毎(部分制御範囲毎)の回転時膜成長感度関数S(x)〜S(x)とに基づいて、次のような回帰計算を行なって、流量調節器56毎(部分制御範囲毎)の流量調整値a〜aを算出する。
【0069】
すなわち、サンプリング点x毎の膜成長速度偏差ΔGR(x)について、次の方程式、ΔGR(x)=a・S(x)+a・S(x)+…+a・S(x)が立てられる。ここで、サンプリング点xがM個(ここで、M>N)ある場合、j=1〜MのM個の上記方程式が成立する。このM個の方程式を用いて公知の回帰計算が実行され、その結果、そのM個の方程式を同時に最も良く満たすような流量調節器56毎(部分制御範囲毎)の流量調整値a〜aが求められる。ここで、いずれかの部分制御範囲を調整対象とせずにガス流量を一定とする場合には、流量調整値が0であるので、上記方程式から、ガス流量が一定である部分制御範囲に対応する回転時膜成長感度関数の項を取り除くことができる。すなわち、上記方程式においては、流量が一定の部分制御範囲に対応する回転時膜成長感度関数の項については、省略することができる。
【0070】
このようにして流量調節器56毎(部分制御範囲毎)の流量調整値a〜aが求められると、制御部66が、流量調節器56毎(部分制御範囲毎)の現在の設定流量を、上記流量調整値a〜aにより調整する(ステップS3)。なお、ステップS3で調整された設定流量を用いてウェハを回転させて成膜させ、それにより得られたウェハの膜厚を測定し、再度、ステップS1からの処理を行って、設定流量を調整するようにしてもよい。
【0071】
このようにして調整された設定流量を用いて、ウェハを回転させて成膜させることが行われ、製品となるウェハ(成膜基板)が製造されることとなる。このように、調整された設定流量を用いることにより、図6に示したような不均一な膜成長速度94が改善され、目標膜成長速度96により近いより均一な膜成長速度が得られるようになる。この結果、ウェハの膜厚の均一性が向上することとなる。
【0072】
次に、本発明の変形例を説明する前に、成膜反応装置における成膜特性について説明する。
【0073】
図8は、成膜反応装置における成膜特性を試験するためのガス流供給のための一部の構成を示す図である。なお、図2に示す成膜反応装置と同様な部分には、同一符号を付している。
【0074】
成膜特定を試験するために、成膜反応装置1において、インサータ36に代えて、インサータ146を備え、インレットフランジ34に代えて、インレットフランジ144を備えた成膜反応装置を用意した。
【0075】
各インサータ146内には、複数(例えば、6本)のガス流路146Aが形成されている。ここで、右側のインサータ146のガス流路146Aを基準線に近いほうからR1、R2〜R6とし、左側のインサータ146のガス流路146Aを基準線に近いほうからL1、L2〜L6とする。ガス流路R1、L1は、それぞれウェハの中心線(基準線)からの距離が5.3mm〜32.9mmまでを占め、ガス流路R2、L2は、それぞれウェハの中心線からの距離が34.9mm〜62.2mmまでを占め、ガス流路R3、L3は、それぞれウェハの中心線からの距離が64.1mm〜91.3mmまでを占め、ガス流路R4、L4は、それぞれウェハの中心線からの距離が93.3mm〜120.5mmまでを占め、ガス流路R5、L5は、それぞれウェハの中心線からの距離が122.5mm〜149.7mmまでを占め、ガス流路R6、L6は、それぞれウェハの中心線からの距離が151.7mm〜178.9mmまでを占めている。
【0076】
また、インレットフランジ144には、それぞれのガス流路146Aに対応する位置に、バッフル38の整流穴38Aを介して連通するガス室144Aが設けられている。各ガス室144Aには、図示しないガス供給管が接続され、これらガス供給管が反応ガス供給元管58に合流している。反応ガス供給元管58と各ガス室144Aとの間には、それぞれに対してガス流量調整器56が設けられており、各ガス室144Aに対するガス流量を個別に調整できるようになっている。
【0077】
図9は、成膜反応装置における成膜特性を説明するための図である。図9は、成膜特性の一例として、BMV(Bellows Metering Valve:ベローズメータリングバルブ)感度を示しており、図9Aは、Lゾーン(基準線に対して左側:回転下流側)の各流路のBMV感度を示し、図9Bは、Rゾーンの各流路のBMV感度を示している。ここで、BMV感度とは、全てのバルブ開度を所定の値(例えば、0.5)にしてウェハに回転成膜させた場合における、ウェハの各位置における膜厚を参照値とし、対象とする1つのバルブ開度のみを大きい値(例えば、0.75)に変更して回転成膜させた場合における、ウェハの各位置における参照値からの膜厚の変化量を示している。なお、このBMV感度の各値を、エピタキシャル成長時間と、ガス総流量で徐算すると、回転時膜成長感度となるので、BMV感度と、回転時膜成長感度とは同様な傾向を示すようになっている。
【0078】
図9A及び図9Bに示すように、ウェハの中心から50mmの範囲(センタ部)に対しては、流路R1〜R4(その中でも特に、流路R2及びR3)のBMV感度が高く、センタ部の膜厚の制御に強く影響することがわかり、ウェハの中心から50mm〜100mmの範囲(ミドル部:ウェハの半径の略中間近傍)に対しては、流路L1〜L4(その中でも特に、流路L1)のBMV感度が高く、ミドル部の膜厚の制御に強く影響することがわかり、ウェハの中心から100〜150mmの範囲(エッジ部:外周部)に対しては、流路L3〜L6(その中でも特に、流路L5及びL6)のBMV感度が高く、エッジ部の膜厚の制御に強く影響することがわかる。ここで、流路L3、L4については、ミドル部及びエッジ部の両方にある程度の感度を持っているため、両方に対する膜厚の制御に影響することとなっている。
【0079】
上記した実施形態においては、センタ部における感度が特に強い流路R2及びR3に対応する領域を含むRゾーンと、ミドル部における感度が強い流路L1及びL2に対応する領域を含むLRゾーンと、エッジ部における感度が特に強い流路L5及びL6に対応する領域を含むLLゾーンとの三つの範囲に分けてそれぞれのゾーンのガス流量を調整できるようにしているので、ウェハにおけるセンタ部、ミドル部、エッジ部における膜厚の調整を適切に行うことができ、ウェハ全体における膜厚を適切に調整することができる。
【0080】
ガス流量を調整する範囲の分け方は、上記した実施形態に限られず、種々のやり方がある。以下に、ガス流量を調整する範囲の分け方を変えた変形例について説明する。
【0081】
図10は、第1の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【0082】
この成膜反応装置において、インサータ106は、図8の流路R1及びR2に相当する範囲の流路R11と、ウェハ28のセンタ部に対して感度の強い流路R3に相当する範囲の流路R12と、流路R4〜R6に相当する範囲の流路R13と、ウェハ28のミドル部に対して感度の強い流路L1に相当する範囲の流路L11と、流路L2〜L4に相当する範囲の流路L12と、ウェハ28のエッジ部に対して感度の強い流路L5に相当する範囲の流路L13と、流路L6に相当する範囲の流路L14とが形成されている。ここで、流路L11、L13、R12の幅は、10〜30mm程度であればよく、流路R12は、基準線より右側の0〜120mmの範囲内にあればよく、流路L11は、基準線より左側の0〜60mmの範囲内にあればよく、流路L13は、左側の90〜180mmの範囲内にあればよい。なお、流路L11、L13、R12がそれぞれ部分制御範囲に相当し、流路L12、L14、R11、及びR13が1つの部分制御範囲に相当する。
【0083】
インレットフランジ104には、流路L11〜L14、流路R11〜R13のそれぞれに対応し、連通するガス室104Aが形成されている。流路L11、流路L13、及び流路R12に連通するそれぞれのガス室104Aは、それぞれ異なるガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。従って、ウェハ28のミドル部に感度の強い流路L11と、ウェハ28のエッジ部に感度の強い流路L13と、ウェハ28のセンタ部に感度の強い流路R12とのそれぞれについて、個別にガス流量を調整することができる。このため、ウェハ28の各部における膜厚を適切に制御することができる。また、流路R11、R13、L12及びL14に連通するガス室104Aは、1つのガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。
【0084】
この成膜反応装置では、上記した図5に示すガス流量調整処理と同様な処理により、ウェハ28のミドル部に感度の強い流路L11と、ウェハ28のエッジ部に感度の強い流路L13と、ウェハ28のセンタ部に感度の強い流路R12と、それ以外の流路(R11、R13、L12及びL14)とのそれぞれについて、ガス流量を調整する。これにより、ウェハの膜厚を適切に制御することができる。
【0085】
図11は、第2の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【0086】
この成膜反応装置において、インサータ116には、図8の流路R1及びR2に相当する範囲の流路R21と、ウェハ28のセンタ部に対して感度の強い流路R3に相当する範囲の流路R22と、流路R4〜R6に相当する範囲の流路R23と、ウェハ28のミドル部に対して感度の強い流路L1に相当する範囲の流路L21と、流路L2〜L6に相当する範囲の流路L22とが形成されている。ここで、流路L21、R22の幅は、10〜30mm程度であればよく、流路R22は、基準線より右側の0〜120mmの範囲内にあればよく、流路L21は、基準線より左側の0〜60mmの範囲内にあればよい。
【0087】
インレットフランジ114には、流路L21〜22、流路R21〜R23のそれぞれに対応し、連通するガス室114Aが形成されている。流路L21、流路R22に連通するそれぞれのガス室114Aは、それぞれ異なるガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。従って、ウェハ28のミドル部に感度の強い流路L21と、ウェハ28のセンタ部に感度の強い流路R22とのそれぞれについて、個別にガス流量を調整することができる。このため、ウェハ28のセンタ部及びミドル部における膜厚を適切に制御することができる。また、流路R21、R23、及びL22に連通するガス室114Aは、1つのガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。
【0088】
この成膜反応装置では、まず、図5に示すガス流量調整処理を行う前に、以下に示すように、ウェハに対して回転成膜を繰り返して実行することにより、ウェハのエッジ部の膜厚が略所望の膜厚となるように、ガス流量調整器53によりSiガス濃度を調整する。すなわち、ガス流量調整器56の開度を所定の値にした状態で、ウェハへの回転成膜を行い、ウェハの膜厚を測定し、その結果に基づいてガス流量調整器53によりSiガス濃度を調整する処理を繰り返して行うことにより、ウェハのエッジ部の膜厚が所望の膜厚近傍となるようにガス流量調整器53の調整を行う。これにより、ウェハのエッジ部については、所望の膜厚を得ることができるように調整できる。
【0089】
その後、図5に示すガス流量調整処理を行うことにより、ガス流量調整器56の調整を行う。これによって、ウェハのミドル部、センタ部についても、所望の膜厚を得ることができるようになる。これにより、ウェハの膜厚を適切に制御することができる。
【0090】
図12は、第3の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。
【0091】
この成膜反応装置において、インサータ126には、図8の流路R1及びR2に相当する範囲の流路R31と、流路R3及びR4に相当する範囲の流路R32と、流路R5及びR6に相当する範囲の流路R33と、流路L1及びL2に相当する範囲の流路L31と、流路L3及びL4に相当する範囲の流路L32と、流路L5及びL6に相当する範囲の流路L33とが形成されている。
【0092】
インレットフランジ124には、流路L31〜33、流路R31〜R33のそれぞれに対応し、連通するガス室124Aが形成されている。各流路L31〜L33、R31〜R33に連通するそれぞれのガス室124Aは、それぞれ異なるガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。従って、各流路L31〜L33、R31〜R33のそれぞれについて、個別にガス流量を調整することができる。このため、ウェハの各部における膜厚を適切に制御することができる。この構成によると、比較的少ないガス流量調整器56により、ウェハの膜厚を適切に制御することができる。
【0093】
図13は、第4の変形例に係る成膜反応装置におけるガス流供給のための一部の構成を示す図である。図13Aは、インレットフランジ134の断面図を示し、図13Bは、一部の構成の上面図を示している。
【0094】
この成膜反応装置において、インサータ136には、図8の流路R1及びR2に相当する範囲の流路R41と、流路R3に相当する範囲の流路R42と、流路R4〜R6に相当する範囲の流路R43と、流路L1に相当する範囲の流路L41と、流路L2及びL3に相当する範囲の流路L42と、流路L4に相当する範囲の流路L43と、流路L5に相当する範囲の流路L44と、流路L6に相当する範囲の流路L45とが形成されている。ここで、流路L41、L44、R42の幅は、10〜30mm程度であればよく、流路R42は、基準線より右側の0〜120mmの範囲内にあればよく、流路L41は、基準線より左側の0〜60mmの範囲内にあればよく、流路L44は、基準線より左側の90〜180mmの範囲内にあればよい。流路R42、L41、L44においては、流路の上側(紙面垂直上側)と下側(紙面垂直下側)とにおいて異なる流量のガスを流すことが可能となっている。
【0095】
図13Aに示すように、バッフル138の下側(図13A左側)には、各流路に対応するように、幅方向へ細長いスリット形状となっている複数の整流穴138Aが形成されている。また、バッフル138の上側には、流路L41,44、R42に対応する位置に整流穴138Aが形成されている。
【0096】
インレットフランジ134には、上下方向に2段のガス室134Aが形成されており、下段には、流路L41、L42、R41及びR42の下側に、整流穴138Aを介して連通するガス室134ABと、流路L43、L44、及びL45の下側に整流穴138Aを介して連通するガス室134ABと、流路R43の下側に整流穴138Aを介して連通するガス室134ABとが設けられ、上段には、流路L44の上側に整流穴138Aを介して連通するガス室134AAと、流路L41の上側に整流穴138Aを介して連通するガス室134AAと、流路R42の上側に整流穴138Aを介して連通するガス室134AAとが設けられている。
【0097】
ガス流入口のほぼ中央に位置する流路L41、L42、R41及びR42に連通するガス室134ABは、1つのガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。また、ガス流入口の外側に位置する流路L43〜L45に連通するガス室134ABと、流路R43に連通するガス室134ABとは、同じガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。これら2つのガス流量調整器56を調整することにより、幅方向の全体に対してガスを流すことができるようになっている。また、流路L41、L44、R42のそれぞれに連通するガス室134AAは、それぞれ異なるガス流量調整器56を介して反応ガス供給元管58に接続されている。従って、流路L41,L44、R42については、2つのガス供給系路が存在している。
【0098】
この成膜反応装置では、まず、図5に示すガス流量調整処理を行う前に、流路R43及び流路L43,L44,L45に下側で連通するガス室134ABのガス流量をガス流量調整器56により調整するとともに、流路R41,R42、L41、及びL42に下側で連通するガス室134ABのガス流量をガス流量調整器56により調整することにより、ウェハに対して回転成膜を繰り返して実行し、ウェハの膜厚が或る程度所望の膜厚に近づくようにする。
【0099】
その後、図5に示すガス流量調整処理により、流路L41、L44及びR42の上側の領域を調整対象として、ガス流量の制御を行う。すなわち、ガス流量調整処理により、流路L41の上側で連通するガス室134AA、流路L44の上側で連通するガス室134AA、流路R42の上側で連通するガス室134AAのそれぞれに接続されたガス流量調整器56の開度の調整を行う。これによって、ウェハ28のミドル部、センタ部、エッジ部について適切な膜厚を得ることができるようになる。
【0100】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
【0101】
例えば、上記実施形態では、全てのゾーン(部分制御範囲)をガス流量の調整を行う対象としていたが、例えば、少なくとも1つのゾーンを調整対象から外し、すなわち、予めガス流量を固定し、又は、他のゾーンに従属してガス流量が調整されるようにしておき、残りのゾーンのガス流量を調整するようにしてもよい。この場合においては、上記した膜成長速度偏差ΔGR(x)についての方程式における、ガス流量が固定されているゾーンに関する項については省略でき、また、ガス流量が他のゾーンに従属して調整されるゾーンに関する項は、当該ゾーンに影響を及ぼす他のゾーンの流量調整値によって表すようにすればよい。例えば、上記実施形態において、LLゾーンのガス流量を個別で調整できるガス流量調整器56を備えずともよい。この場合には、LLゾーンのガス流量が、Rゾーンと、LRゾーンとのガス流量調整器56の開度に応じて決定されるので、上記方程式におけるLLゾーンに関する項の流量調整値については、LLゾーンとLRゾーンとの流量調整値により表すようにすればよい。なお、LLゾーンのガス流量を個別で調整できない場合には、ウェハのエッジ部の膜厚が所望の厚さになるように予めSiガス濃度を調整しておき、その後、図5に示すようなガス流量調整処理を行うようにすればよい。
【0102】
また、上記実施形態では、LRゾーンを基準線から左側のほぼ90mmまでとしていたが、本発明はこれに限られず、LRゾーンの幅は10mm以上であればよく、基準線の左側の90mm以内の範囲に位置すればよい。
【符号の説明】
【0103】
1 成膜反応装置、20 反応器、20A 反応室、20B ガス流入口、20C ガス排出口、24 ロワーライナー、24A 段状凹部、26 サセプタ、28 ウェハ、34 インレットフランジ、34A ガス室、36 インサータ、36A ガス流路、38 バッフル、38A 整流穴、40 ブレードユニット、40B ブレード、40C ガス輸送管、56 ガス流量調整器、58 反応ガス供給元管、60 反応ガス供給枝管、62 セフティリリーフバルブ、64 セフティリリーフ管、66 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板が置かれる反応室を構成する反応室構成部と、
前記反応室内の前記基板の周縁に沿った幅方向へ所定の範囲で延び、反応ガス流を前記反応室内に流入させるためのガス流入口を構成するガス流入口部と
を備えた基板上に成膜するための成膜反応装置において、
前記ガス流入口の上流側に、ガス流量を制御可能な複数の部分制御範囲が構成されており、
複数の前記部分制御範囲におけるガス流量を制御するガス流量制御部を備え、
前記ガス流量制御部は、
前記基板を回転させつつ行われた回転成膜により前記基板上に形成された膜厚データに基づいて、前記基板上の種々の位置における膜成長速度と所定の目標膜成長速度との間の偏差を求める手段と、
複数の前記部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、前記基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、前記種々の位置における偏差を減らすように、調整対象の前記部分制御範囲のそれぞれのガス流量を制御する手段と
を有する成膜反応装置。
【請求項2】
前記ガス流入口によるガス流れの方向に平行であり、且つ前記基板の回転中心軸を通る基準線に対して、回転上流側と、回転下流側とで、異なる部分制御範囲が構成されている
請求項1に記載の成膜反応装置。
【請求項3】
前記基準線に対して前記回転下流側において、回転上流側と、回転下流側との少なくとも2つの部分制御範囲が構成されている
請求項2に記載の成膜反応装置。
【請求項4】
前記基準線に対して前記回転上流側に1つの部分制御範囲が構成され、前記基準線に対して前記回転下流側において、回転上流側と、回転下流側との2つの部分制御範囲が構成されている
請求項3に記載の成膜反応装置。
【請求項5】
複数の前記部分制御範囲には、前記基板の中心近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第1の部分制御範囲と、前記基板の半径の略中間近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第2の部分制御範囲とがある
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の成膜反応装置。
【請求項6】
複数の前記部分制御範囲は、前記基板の中心近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第1の部分制御範囲と、前記基板の半径の略中間近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第2の部分制御範囲と、それ以外の部分制御範囲との3つの部分制御範囲である
請求項5に記載の成膜反応装置。
【請求項7】
複数の前記部分制御範囲には、前記基板の外周近傍における膜形成に寄与する傾向が高い第3の部分制御範囲がある
請求項5に記載の成膜反応装置。
【請求項8】
複数の前記部分制御範囲は、前記第1の部分制御範囲と、前記第2の部分制御範囲と、前記第3の部分制御部分と、それ以外の部分制御範囲との4つの部分制御範囲である
請求項7に記載の成膜反応装置。
【請求項9】
前記部分制御範囲におけるガス流量を調整するガス調整機構を、前記部分制御範囲毎に1つずつ備えている
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の成膜反応装置。
【請求項10】
基板を回転させつつ成膜させることにより、成膜基板を製造する成膜基板製造方法において、
前記基板への成膜のための反応ガス流を流すステップと、
前記反応ガス流について、複数の部分制御範囲のそれぞれ毎にガス流量を所定の量に調整して前記基板を回転させつつ成膜させることにより前記成膜基板を製造するステップと、
前記基板を回転させつつ行われた回転成膜により前記基板上に形成された膜厚データに基づいて、前記基板上の種々の位置における膜成長速度と所定の目標膜成長速度との間の偏差を求めるステップと、
複数の前記部分制御範囲のそれぞれのガス流量の変化が、前記基板への回転成膜時において膜成長速度分布の変化に及ぼす感度を定義した回転時膜成長感度データを用いて、前記種々の位置における偏差を減らすように、調整対象の前記部分制御範囲のそれぞれの調整するガス流量を決定するステップと、
複数の前記部分制御範囲のそれぞれのガス流量を、前記決定したガス流量に調整して新たな基板を回転させつつ成膜させることにより前記成膜基板を製造するステップと
を有する成膜基板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−258169(P2010−258169A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105619(P2009−105619)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000184713)SUMCO TECHXIV株式会社 (265)
【Fターム(参考)】