成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するために、真空容器内にて複数の基板が載置される回転テーブルの周方向に第1の反応ガスが供給される第1の処理領域及び第2の反応ガスが供給される第2の処理領域と、前記周方向における処理領域間で複数の反応ガスが混合されることを防止するための分離ガスが供給される分離領域と、が設けられた成膜装置の前記分離ガスの使用量を抑えることが出来る成膜装置を提供する。
【解決手段】分離領域Dを形成するための分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する加熱部41c,42c,72c,73c,81cを設ける。加熱された分離ガスは膨張し、その流速が高くなった状態で分離ガス供給手段から供給されるので分離ガスの使用量を抑えることができる。
【解決手段】分離領域Dを形成するための分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する加熱部41c,42c,72c,73c,81cを設ける。加熱された分離ガスは膨張し、その流速が高くなった状態で分離ガス供給手段から供給されるので分離ガスの使用量を抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として、例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
【0004】
このような成膜方法を実施する装置としては、真空容器の上部中央にガスシャワーヘッドを備えた枚葉の成膜装置を用いて、基板の中央部上方側から反応ガスを供給し、未反応の反応ガス及び反応副生成物を処理容器の底部から排気する方法が検討されている。ところで上記の成膜方法は、パージガスによるガス置換に長い時間がかかり、またサイクル数も例えば数百回にもなることから、処理時間が長いという問題があり、高スループットで処理できる装置、手法が要望されている。
【0005】
上述の背景から、複数枚の基板を真空容器内の回転テーブルに回転方向に配置して成膜処理を行う装置を用いてALDまたはMLDを行うことが検討されている。より具体的に、このような成膜装置では、例えば前記真空容器内の回転テーブルの回転方向に互いに離れた位置に夫々異なる反応ガスが供給されて成膜処理が行われる処理領域が複数形成され、また、前記回転方向において処理領域と処理領域との間の領域は、これら処理領域の雰囲気を分離するための分離ガスが供給される分離ガス供給手段を備えた分離領域として構成される。
【0006】
成膜処理時には、前記分離ガス供給手段から分離ガスが供給され、その分離ガスが回転テーブル上を回転方向両側に広がり、分離領域にて各反応ガス同士の混合を阻止するための分離空間が形成される。そして、処理領域に供給された反応ガスは例えばその回転方向両側に広がった分離ガスと共に真空容器内に設けられた排気口から排気される。このように処理領域にて処理ガスを、分離領域にて分離ガスを夫々供給する一方で、前記回転テーブルを回転させてそのテーブルに載置されたウエハを一の処理領域から他の処理領域へ、他の処理領域から一の処理領域へと交互に繰り返し移動させ、ALDまたはMLD処理を行う。このような成膜装置では、上記のような処理雰囲気におけるガス置換が不要になり、また複数枚の基板に同時に成膜することができるので、高いスループットが得られることが見込まれる。
【0007】
ところで、その成膜装置では上記のように分離領域に各反応ガスが流入して、それら反応ガスが混合されると、ウエハに薄膜が形成されなくなったり、膜厚がばらついて、正常な成膜処理が行えなくなってしまうので、分離領域では各反応ガス同士の混合を確実に抑えるために、分離ガスが高い流速で供給される必要がある。そのためには、分離ガスの流量を大きくすることが考えられるが、そのように分離ガスの流量が大きくなった場合、処理領域にこの分離ガスが流入し、反応ガスが希釈され、成膜効率が低下してしまうおそれがある。それを防ぐためには、前記排気口からのガスの排気量を大きくすることが考えられるが、そうすると、当該排気口に接続された排気ポンプなどの真空排気手段の負荷が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
特許文献1には、扁平な円筒状の真空容器を左右に分離し、左側半円の輪郭と右側半円の輪郭の間、つまり真空容器の直径領域には分離ガスの吐出口が形成された成膜装置について記載されている。また、特許文献2には、ウエハ支持部材(回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等距離に配置する一方、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガス吐出ノズル及び第2の反応ガス吐出ノズルを回転方向に沿って等距離に配置しかつこれらノズルの間に分離ガスノズルを配置し、ウエハ支持部材を水平回転させて成膜処理を行う装置の構成が記載されている。しかしこれらの特許文献の成膜装置において、分離ガスの供給量を減少するような構成については示されておらず、上記の問題を解決できるものではない。
【0009】
更にまた特許文献3(特許文献4、5)には、ターゲット(ウエハに相当する)に複数のガスを交互に吸着させる原子層CVD方法を実施するにあたり、ウエハを載置するサセプタを回転させ、サセプタの上方からソースガスとパージガスとを供給する装置が記載されている。段落0023から0025には、チャンバの中心から放射状に隔壁が延びており、隔壁の下に反応ガスまたはパージガスをサセプタに供給するガス流出孔が設けられていること、隔壁からのガス流出孔から不活性ガスを流出させることでガスカーテンを形成することが記載されている。しかしこの例においてもパージガスの流量を少なくする手法については示されていない。
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図6(a)、(b)
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献4】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献5】米国特許公開公報2007−218702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、真空容器内にて基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、基板が載置される回転テーブルの周方向に沿って設けられる第1の反応ガスが供給される第1の処理領域の雰囲気と、第2の反応ガスが供給される第2の処理領域の雰囲気とを分離するための分離領域に供給される分離ガスの使用量を抑えることができることができる成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するために設けられた基板載置領域を備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記周方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガスを供給する分離ガス供給手段と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する第1の加熱部と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気するための排気口と、
基板に薄膜を積層するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記成膜装置には、例えば前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出口が形成された中心部領域を備え、前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記排気口から排気される。前記中心部領域は、例えば回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域である。前記第1の加熱部が設けられることに代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する第2の加熱部が設けられる。
【0013】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えていてもよい。また、前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段と、前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する第3の加熱部と、を備えていてもよい。さらに、前記排気口と当該排気口に接続された真空排気手段との間に設けられる排気路を流通するガスを冷却するための冷却部が設けられていてもよく、その場合前記冷却部は、前記排気路におけるガスの流れを規制してそのコンダクタンスを低下させると共に当該排気路におけるガスを冷却するための冷媒の流路を備えていてもよい。
【0014】
本発明の成膜方法は、真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置する工程と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記周方向において前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するためにこれら処理領域の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程と、
基板に前記薄膜を形成するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる工程と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気口を介して排気する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
例えば、前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置する中心部領域に設けられた吐出口から前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する工程を含み、
前記排気工程は、前記反応ガス、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスを共に前記排気口から排気する。
【0016】
また、前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程に代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する工程を備えていてもよく、前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段にパージガスを供給する工程と、前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する工程と、を備えていてもよい。前記排気口と真空排気手段とを接続する排気路におけるガスを冷却する工程を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の記憶媒体は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、上述の成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分離領域に設けられた分離ガス供給手段に供給される分離ガスが加熱部により加熱される。加熱された分離ガスは膨張し、その流速が増した状態で分離ガス供給手段から真空容器内の回転テーブルに供給されるので、分離ガスの使用量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態である成膜装置を図1に示す。この図1は、後述する分離ガスノズル41,42の伸長方向に沿って装置を縦断した断面図であり、図3のI−I’線に沿った断面図である。この図に示すように成膜装置は平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により封止部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0020】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0021】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハを載置するための基板載置領域である円形状の凹部24が設けられており、この凹部24はその直径がウエハの直径よりも僅かに大きく形成され、ウエハを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにする役割を有する。なお、図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。
【0022】
ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図である。図4(a)に示すようにウエハを凹部24に落とし込むと、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(ウエハが載置されない領域)とが略ゼロになるように凹部24が形成されており、ウエハの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差によって生じる圧力変動を抑え、膜厚の面内均一性を揃えることができるようになっている。
【0023】
また、真空容器1の側壁には図2、図3及び図5に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間でウエハの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0024】
図2及び図3に示すように真空容器1には、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置に第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41,42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて中心部から放射状に伸びている。これら反応ガスノズル31,32及び分離ガスノズル41,42は、例えば真空容器1の側周壁に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a,32a,41a,42aは当該側壁を貫通している。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計方向に配列されている。ところで、ガスノズル31、32、41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31、(32、41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0025】
反応ガスノズル31,32は、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されている。反応ガスノズル31,32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔がノズルの長さ方向に間隔をおいて配列されている。反応ガスノズル31,32は夫々第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段に相当し、その下方領域は夫々BTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0026】
分離ガス供給手段である分離ガスノズル41,42は、反応ガスノズル31,32と同様に構成されており、図1及び図6に示すように、分離ガスノズル41,42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば吐出孔40がノズルの長さ方向に間隔をおいて配列されている。また、分離ガスノズル41,42のガス供給ポート41a,42aの上流側は、夫々ガス供給管41b,42bを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源43に接続されている。ガス供給管41b,42bには加熱部41c,42cが夫々介設されており、また、これら加熱部41c及び42cとガス供給源43との間にはバルブやマスフローコントローラなどにより構成されたガス供給機器群44が介設されている。ガス供給機器群44は、制御部100からの制御信号に基づいて、ガス供給管41b、42b及び後述する真空容器1内へN2ガスを供給する各管におけるN2ガスの給断を制御する。
【0027】
加熱部41c及び42cはガス通流路にヒータを設けて構成されており、後述の制御部100によりそのヒータへ供給される電力が制御され、ガス供給管43,44を下流側へと流通するN2ガスの温度が制御される。加熱部41c,42cはこのガス供給源43から供給されたN2ガスを成膜処理に影響を与えずにその体積を十分に増加させることができる温度、例えば200℃〜300℃に加熱する。ここでは、ガス供給源43に貯留されているN2ガスの温度は例えば20℃であり、加熱部41c,42cはこのN2ガスを200℃に加熱するものとする。気体の体積は圧力が同じ場合に絶対温度に比例するので、図7(a)(b)に示すように、加熱されたN2ガス45は加熱される前に比べて、その体積が、273+200(K)/273+20(K)=約1.61倍に膨張して、その流量が増加する。そして、流量の増加に応じてその流速も増加し、このN2ガス45は分離ガスノズル41,42から真空容器1内に供給される。
【0028】
分離ガスノズル41,42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部5が設けられている。
【0029】
分離ガスノズル41,42は、この凸状部5における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部51内に収められている。即ち分離ガスノズル41,42の中心軸から凸状部5である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。なお、溝部51は、本実施形態では凸状部5を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部51から見て凸状部5における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部51を形成してもよい。
【0030】
従って分離ガスノズル41,42における前記周方向両側には、前記凸状部5の下面である例えば平坦な低い天井面52(第1の天井面)が存在し、この天井面52の前記周方向両側には、当該天井面52よりも高い天井面53(第2の天井面)が存在することになる。
【0031】
この凸状部5の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面52と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面52に隣接する第2の天井面53の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部5の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部5内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部5の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面52の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部5の面積などにより異なるといえる。またウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0032】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部54が設けられている。この突出部54は凸状部5における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部5の下面(天井面52)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面53よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部54と凸状部5とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0033】
この例では分離ガスノズル41、42及び反応ガスノズル31、32において、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。また、この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合凸状部5は、回転中心から140mm離れた突出部54との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部5の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
【0034】
また、図4(b)に示すように凸状部5の下面即ち天井面52における回転テーブル2の表面からの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部5の大きさや凸状部5の下面(第1の天井面52)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。
【0035】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面52とこの天井面52よりも高い第2の天井面53とが周方向に存在するが、図8(a)では、高い天井面53が設けられている領域についての縦断面を示しており、図8(b)では、低い天井面52が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部5の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図8(b)に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部55を形成している。この屈曲部55も凸状部5と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられている。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面52の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0036】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図6及び図8(b)に示すように前記屈曲部55の外周面と接近して垂直に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図8(a)に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。
【0037】
この窪んだ部分を排気領域6と呼ぶことにすると、この排気領域6の底部においては2つの排気口61,62が設けられている。図3に示すように、排気口61はBTBASガス及びN2ガスを排気するために第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられ、排気口62はO3ガス及びN2ガスを排気するために第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。
【0038】
これら排気口61,62は、図2及び図8(a)に示すように各々排気管63を介して例えば真空ポンプなどによって構成された共通の真空排気手段64に接続されている。図中65は排気管63に介設された圧力調整手段である。圧力調整手段65の上流側にて、排気管63にはその管路の一部が拡径された、拡径部66が形成されている。その拡径部66においては管路の一部を遮るように板状の冷却部67が設けられており、拡径部66におけるガスのコンダクタンスは、排気管63においてその拡径部66よりも上流側におけるコンダクタンスに比べて低くなっている。冷却部67の内部には不図示の冷媒の流路が形成されており、その冷媒が流通することにより拡径部66に流入したガスを冷却することができる。
【0039】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図2及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハをプロセスレシピで決められた温度例えば350℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から分離領域Dに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むように、カバー部材71が設けられている。
【0040】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間74になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間74は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間74内に供給してパージするためのパージガス供給管72の一端が接続されている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間75をパージするためのパージガス供給管73が接続されている。
【0041】
パージガス供給管72,73には加熱部41c及び42cと同様に構成された加熱部72c,73cが夫々介設されており、加熱部72c,73cの上流側にはガス供給機器群44が介設されている。そして、パージガス供給管72,73の上流端は、N2ガス供給源43に接続されている。
【0042】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより、図9にN2ガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域6を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0043】
真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管81の下流端が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間82に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。分離ガス供給管81の上流端は、ガスの上流側へ向かって、加熱部41cと同様に構成された加熱部81c、ガス供給機器群44をこの順に介して、N2ガス供給源43に接続されている。
【0044】
前記空間82に供給された分離ガスは、図9に示すように前記突出部54と回転テーブル2との狭い隙間56を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部54で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。
【0045】
即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なお、ここでいう吐出口は前記突出部54と回転テーブル2との狭い隙間56に相当する。
【0046】
加熱部81c,72c,73cについても加熱部41c,42cと同様にガス供給源43から供給されたN2ガスを加熱する。ガスの加熱温度としては上記のように成膜処理に影響を与えずにN2ガスを有効に膨張させることができる温度に設定され、N2ガスは加熱部81cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱され、加熱部72cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱され、加熱部73cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱される。そして、このように各加熱部にて加熱されることでその体積及び流速が増加したN2ガスが各ガス供給管の下流端及び分離ガスノズルから真空容器1内に供給され、成膜処理時には図9に矢印で示すようなN2ガス流が形成される。加熱部41c,42cは第1の加熱部、加熱部81cは第2の加熱部、加熱部72c,73cは第3の加熱部に相当する。なお、図9では、真空容器1全体のN2ガスの流れを示すために、便宜上分離領域Dと排気口61(62)とを同一平面に示しているが、上記のように分離領域Dに対応した排気領域6は、図8(b)で示すように実際には外方に窪んでおらず、排気口61,62は、分離領域Dとは周方向にずれた位置に形成されている。
【0047】
また、各加熱部にて加熱されて真空容器1内に供給されたN2ガスは、真空容器1内を流通して、例えば真空容器1内でヒータユニット7の熱により加熱されたBTBASガスあるいはO3ガスと共に排気口61,62へ流れ込む。図10(a)(b)は排気口61に接続された排気管63をN2ガスとBTBASガスとの混合ガス85が流通する様子を示しており、混合ガス85は排気管63を拡径部66へ向かう間に自然に冷却され、そして排気管63の拡径部66を通過する間にさらに低い温度例えば100℃〜150℃に冷却されて、その体積が減少し、排気管63を拡径部66の下流側へと排気される。排気口62に接続された排気管63においても、前記混合ガス85と同様にN2ガスとO3ガスとの混合ガスが当該排気管63を流通中に冷却され、拡径部66に設けられた冷却部67によりさらに冷却されて排気される。
【0048】
また、この実施の形態の成膜装置は装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100を備えており、この制御部100のメモリ内には装置を運転するためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0049】
次に上述の成膜装置により成膜を行うプロセスについて説明する。先ず図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに図5に示すように凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から昇降ピン16が昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。
【0050】
続いて真空ポンプ64により真空容器1内を予め設定した圧力に真空引きすると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め所定の温度に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。また、それと同時に各加熱部41c,42c,72c,73c及び81cのヒータを昇温させ、各加熱部においてN2ガスを上述の所定の温度例えば200℃に加熱するための加熱準備を行うと共に排気管63の冷却部67に冷媒を流通させて、ガスを冷却するための冷却準備を行う。
【0051】
前記加熱準備及び冷却準備が終了し、且つウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度例えば350℃になったことを確認した後、ガス供給源43から各ガス供給管にN2ガスが供給され、N2ガスは各ガス供給管の各加熱部41c,42c,72c,73c,81cにて各々加熱されて、その体積及び流速が増加し、各ガス供給管の端部及び分離ガスノズル41、42から真空容器1内に供給される。分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管81からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また、真空容器1の中心部の下方側に開口したパージガス供給管72からのN2ガスの流量は例えば1000sccmであり、ヒータユニット7の下部に開口したパージガス供給管73からのN2ガスの流量は例えば10000sccm、である。また、このように真空容器1内にN2ガスを供給すると共に第1の反応ガスノズル31、第2の反応ガスノズル32から夫々BTBASガスが100sccm、O3ガスが10000sccmで吐出され、真空容器1内のプロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)となる。
【0052】
ウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の反応ガスノズル31が設けられる第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル32が設けられる第2の処理領域P2とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成され、こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0053】
この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切りかかれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面52の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面53の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
【0054】
各ガスを各部位から吐出したときのガスの流れの状態を模式的に図11に示す。第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面(ウエハWの表面及びウエハWの非載置領域の表面の両方)に当たってその表面に沿って回転方向上流側に向かうO3ガスは、その上流側から流れてきたN2ガスに押し戻されながら回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との間の排気領域6に流れ込み、排気口62により排気される。
【0055】
また第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に当たってその表面に沿って回転方向下流側に向かうO3ガスは、中心部領域Cから吐出されるN2ガスの流れと排気口62の吸引作用により当該排気口62に向かおうとするが、一部は下流側に隣接する分離領域Dに向かい、扇型の凸状部5の下方側に流入しようとする。ところがこの凸状部5の天井面52の高さ及び周方向の長さは、各ガスの流量などを含む運転時のプロセスパラメータにおいて当該天井面52の下方側へのガスの侵入を防止できる寸法に設定されているため、図4(b)にも示してあるようにO3ガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル41付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル41から吐出したN2ガスにより回転方向上流側、つまり処理領域P2側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口62に排気される。
【0056】
また第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に沿って回転方向上流側及び下流側に夫々向かうBTBASガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部5の下方側に全く侵入できないかあるいは侵入したとしても第2の処理領域P1側に押し戻され、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口61に排気される。即ち、各分離領域Dにおいては、雰囲気中を流れる反応ガスであるBTBASガスあるいはO3ガスの侵入を阻止するが、ウエハに吸着されているガス分子はそのまま分離領域つまり扇型の凸状部5による低い天井面52の下方を通過し、成膜に寄与することになる。
【0057】
更にまた第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心部領域C内に侵入しようとするが、図11に示すように当該中心部領域Cからは分離ガスが回転テーブル2の周縁に向けて吐出されているので、この分離ガスにより侵入が阻止され、あるいは多少侵入したとしても押し戻され、この中心部領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0058】
そして分離領域Dにおいては、扇型の凸状部5の周縁部が下方に屈曲され、屈曲部55と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっていてガスの通過を実質阻止しているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、回転テーブル2の外側を介して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。従って2つの分離領域Dによって第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離される。また、図9に示すように回転テーブルの下方側にはガス供給管72、73からN2ガスが供給されているので、BTBASガス及びO3ガスは回転テーブル2の下方に回り込むことも抑えられる。従って、BTBASガスはN2ガスと共に排気口61に、O3ガスはN2ガスと共に排気口62に夫々流入し、排気口61及び排気口62を介して排気管63に流入した各ガスは、冷却部67にて冷却され、その体積が小さくなった状態で排気管63を下流へと流れて排気される。
【0059】
ウエハが処理領域P1、P2の各々を多数回、例えば600回通過し、所定の膜厚を有する膜が成膜されて成膜処理が終了すると、各ウエハは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により搬出される。この通過回数は目標膜厚に応じて設定される。
【0060】
この実施形態の成膜装置によれば、BTBASガス、O3が夫々供給される処理領域P1、P2の間に位置する分離領域Dにおいて、ウエハWが載置される回転テーブル2と対向する天井面52と、前記回転テーブル2と前記天井面52との間にN2ガスを供給して、BTBASガス及びO3ガスの混合を阻止するための分離空間Dを形成する分離ガスノズル41,42と、が設けられ、これら分離ガスノズル41,42にN2ガスを供給するためのガス供給管41b,42bにおけるN2ガスが、これらガス供給管41b、42bに介設された加熱部41c,42cにより加熱される。加熱部41c,42cにより加熱されることによりN2ガスは、膨張し、その流速が増した状態で分離ガスノズル41,42から分離領域Dに供給されるので、N2ガスの使用量を抑えることができる一方で、分離領域DにてBTBASガスとO3ガスとの混合を抑えて、正常な成膜処理を行うことができなくなることを抑えることができる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0061】
また、この成膜装置は分離領域Dにおいて反応ガスの混合を抑えるために、真空容器1の天板11とコア部21との間の空間82に分離ガスであるN2ガスを供給し、回転テーブル2の中心部側から周縁部側へとN2ガスを供給するが、このN2ガスも加熱部81cにより加熱されて膨張し、その流速が高まった状態で空間82に供給されるので、この空間82に供給するN2ガスの使用量も抑えることができる。
【0062】
また、回転テーブル2の下面側に供給するN2ガスも加熱部72c、73cにより、加熱された状態で供給されるので、ガス供給管72,73から供給するN2ガスの使用量も抑えることができる。
【0063】
また、排気管63に設けられた冷却部67により、各加熱部にて加熱されたN2ガスは冷却され、その体積が減少した状態で排気されるので、真空排気手段64による排気量を抑えることができ、その負荷を低減させ、真空排気手段64を駆動するための消費電力を抑えることができる。この冷却部67は、排気管63において、ガスのコンダクタンスを低下させるように設けられているので、この冷却部67でガスの流れが遅くなり、冷却効率が高まる結果として、より確実にN2ガスの体積を減少させることができる。
【0064】
なお、真空容器1内にN2ガスを供給する各配管に加熱部を設ける代わりに、例えば図12に示すようにN2ガス供給源43から供給されたN2ガスを一旦貯留すると共に所定の温度に加熱する加熱貯留部49を設け、この加熱貯留部49から各ガス供給管41b,42b,72,73及び81を介して真空容器1の各部にN2ガスを供給する構成としてもよい。
【0065】
また前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
【0066】
そして前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面52は、図13(a)、(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。凸状部5の両側から当該凸状部5の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面52と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。
【0067】
更に第1の天井面52と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面52と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面52との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。
【0068】
更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部5の上流側から当該凸状部5の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。
【0069】
また、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0070】
ここで処理領域P1、P2及び分離領域Dの各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。図14は第2の反応ガスノズル32を搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側に位置させた例であり、このようなレイアウトであっても同様の効果が得られる。また分離領域Dは、扇型の凸状部5を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよく、図15は、このような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部5と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部5の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
【0071】
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面53)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面52と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。図16はこのような構成の一例を示すものであり、第2の処理領域(この例ではO3ガスの吸着領域)P2において扇形の凸状部30の下方側に第2の反応ガスノズル32を配置している。なお第2の処理領域P2は、分離ガスノズル41(42)の代わりに第2の反応ガスノズル32を設けた以外は、分離領域Dと全く同様である。
【0072】
また、図17に示すように反応ガスノズル31(32)の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部5を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面52が反応ガスノズル31(32)にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31(32)の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部5の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは分離ガスノズル31(32)と反応ガスノズル42(41)との間に位置する排気口61(62)から排気されることになる。
【0073】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図18に示すように構成してもよい。図18の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間90を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部90aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間90の底部と真空容器1の前記凹部90aの上面との間に支柱91を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0074】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱91を囲むように回転スリーブ92を設けてこの回転スリーブ92に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間90にモータ93により駆動される駆動ギヤ部94を設け、この駆動ギヤ部94により、回転スリーブ92の下部の外周に形成されたギヤ部95を介して当該回転スリーブ92を回転させるようにしている。96、97及び98は軸受け部である。また前記収容空間90の底部にパージガス供給管73を接続すると共に、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管91を真空容器1の上部に接続している。図18では、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ92の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0075】
図18の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ92及び支柱91により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0076】
以上述べた成膜装置を用いた基板処理装置について図19に示しておく。図19中、101は例えば25枚のウエハを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハが取り出される。次いでロードロック室104(105)内に搬入され当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0077】
上記の成膜装置で適用される処理ガスとしては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
また、分離ガス及びパージガスとしては、N2ガスに限られずArガスなどの不活性ガスを用いることができるが、不活性ガスに限らず水素ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図6】反応ガスノズルを示す縦断面図である。
【図7】加熱部によりガスが膨張する様子を示した説明図である。
【図8】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図10】排気管にてガスの体積が減少する様子を示した説明図である。
【図11】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図13】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図14】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図15】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図16】本発明の更にまた他の実施の形態に係る成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図18】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図19】本発明の成膜装置を用いた基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0079】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
21 コア部
24 凹部(基板載置領域)
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心部領域
41、42 分離ガスノズル
5 凸状部
61、62 排気口
63 排気管
65 冷却部
7 ヒータユニット
72、73 パージガス供給管
81 分離ガス供給管
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として、例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
【0004】
このような成膜方法を実施する装置としては、真空容器の上部中央にガスシャワーヘッドを備えた枚葉の成膜装置を用いて、基板の中央部上方側から反応ガスを供給し、未反応の反応ガス及び反応副生成物を処理容器の底部から排気する方法が検討されている。ところで上記の成膜方法は、パージガスによるガス置換に長い時間がかかり、またサイクル数も例えば数百回にもなることから、処理時間が長いという問題があり、高スループットで処理できる装置、手法が要望されている。
【0005】
上述の背景から、複数枚の基板を真空容器内の回転テーブルに回転方向に配置して成膜処理を行う装置を用いてALDまたはMLDを行うことが検討されている。より具体的に、このような成膜装置では、例えば前記真空容器内の回転テーブルの回転方向に互いに離れた位置に夫々異なる反応ガスが供給されて成膜処理が行われる処理領域が複数形成され、また、前記回転方向において処理領域と処理領域との間の領域は、これら処理領域の雰囲気を分離するための分離ガスが供給される分離ガス供給手段を備えた分離領域として構成される。
【0006】
成膜処理時には、前記分離ガス供給手段から分離ガスが供給され、その分離ガスが回転テーブル上を回転方向両側に広がり、分離領域にて各反応ガス同士の混合を阻止するための分離空間が形成される。そして、処理領域に供給された反応ガスは例えばその回転方向両側に広がった分離ガスと共に真空容器内に設けられた排気口から排気される。このように処理領域にて処理ガスを、分離領域にて分離ガスを夫々供給する一方で、前記回転テーブルを回転させてそのテーブルに載置されたウエハを一の処理領域から他の処理領域へ、他の処理領域から一の処理領域へと交互に繰り返し移動させ、ALDまたはMLD処理を行う。このような成膜装置では、上記のような処理雰囲気におけるガス置換が不要になり、また複数枚の基板に同時に成膜することができるので、高いスループットが得られることが見込まれる。
【0007】
ところで、その成膜装置では上記のように分離領域に各反応ガスが流入して、それら反応ガスが混合されると、ウエハに薄膜が形成されなくなったり、膜厚がばらついて、正常な成膜処理が行えなくなってしまうので、分離領域では各反応ガス同士の混合を確実に抑えるために、分離ガスが高い流速で供給される必要がある。そのためには、分離ガスの流量を大きくすることが考えられるが、そのように分離ガスの流量が大きくなった場合、処理領域にこの分離ガスが流入し、反応ガスが希釈され、成膜効率が低下してしまうおそれがある。それを防ぐためには、前記排気口からのガスの排気量を大きくすることが考えられるが、そうすると、当該排気口に接続された排気ポンプなどの真空排気手段の負荷が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
特許文献1には、扁平な円筒状の真空容器を左右に分離し、左側半円の輪郭と右側半円の輪郭の間、つまり真空容器の直径領域には分離ガスの吐出口が形成された成膜装置について記載されている。また、特許文献2には、ウエハ支持部材(回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等距離に配置する一方、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガス吐出ノズル及び第2の反応ガス吐出ノズルを回転方向に沿って等距離に配置しかつこれらノズルの間に分離ガスノズルを配置し、ウエハ支持部材を水平回転させて成膜処理を行う装置の構成が記載されている。しかしこれらの特許文献の成膜装置において、分離ガスの供給量を減少するような構成については示されておらず、上記の問題を解決できるものではない。
【0009】
更にまた特許文献3(特許文献4、5)には、ターゲット(ウエハに相当する)に複数のガスを交互に吸着させる原子層CVD方法を実施するにあたり、ウエハを載置するサセプタを回転させ、サセプタの上方からソースガスとパージガスとを供給する装置が記載されている。段落0023から0025には、チャンバの中心から放射状に隔壁が延びており、隔壁の下に反応ガスまたはパージガスをサセプタに供給するガス流出孔が設けられていること、隔壁からのガス流出孔から不活性ガスを流出させることでガスカーテンを形成することが記載されている。しかしこの例においてもパージガスの流量を少なくする手法については示されていない。
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図6(a)、(b)
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献4】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献5】米国特許公開公報2007−218702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、真空容器内にて基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、基板が載置される回転テーブルの周方向に沿って設けられる第1の反応ガスが供給される第1の処理領域の雰囲気と、第2の反応ガスが供給される第2の処理領域の雰囲気とを分離するための分離領域に供給される分離ガスの使用量を抑えることができることができる成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するために設けられた基板載置領域を備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記周方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガスを供給する分離ガス供給手段と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する第1の加熱部と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気するための排気口と、
基板に薄膜を積層するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記成膜装置には、例えば前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出口が形成された中心部領域を備え、前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記排気口から排気される。前記中心部領域は、例えば回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域である。前記第1の加熱部が設けられることに代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する第2の加熱部が設けられる。
【0013】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えていてもよい。また、前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段と、前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する第3の加熱部と、を備えていてもよい。さらに、前記排気口と当該排気口に接続された真空排気手段との間に設けられる排気路を流通するガスを冷却するための冷却部が設けられていてもよく、その場合前記冷却部は、前記排気路におけるガスの流れを規制してそのコンダクタンスを低下させると共に当該排気路におけるガスを冷却するための冷媒の流路を備えていてもよい。
【0014】
本発明の成膜方法は、真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置する工程と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記周方向において前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するためにこれら処理領域の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程と、
基板に前記薄膜を形成するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる工程と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気口を介して排気する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
例えば、前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置する中心部領域に設けられた吐出口から前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する工程を含み、
前記排気工程は、前記反応ガス、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスを共に前記排気口から排気する。
【0016】
また、前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程に代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する工程を備えていてもよく、前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段にパージガスを供給する工程と、前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する工程と、を備えていてもよい。前記排気口と真空排気手段とを接続する排気路におけるガスを冷却する工程を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の記憶媒体は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、上述の成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分離領域に設けられた分離ガス供給手段に供給される分離ガスが加熱部により加熱される。加熱された分離ガスは膨張し、その流速が増した状態で分離ガス供給手段から真空容器内の回転テーブルに供給されるので、分離ガスの使用量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態である成膜装置を図1に示す。この図1は、後述する分離ガスノズル41,42の伸長方向に沿って装置を縦断した断面図であり、図3のI−I’線に沿った断面図である。この図に示すように成膜装置は平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により封止部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0020】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0021】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハを載置するための基板載置領域である円形状の凹部24が設けられており、この凹部24はその直径がウエハの直径よりも僅かに大きく形成され、ウエハを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにする役割を有する。なお、図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。
【0022】
ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図である。図4(a)に示すようにウエハを凹部24に落とし込むと、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(ウエハが載置されない領域)とが略ゼロになるように凹部24が形成されており、ウエハの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差によって生じる圧力変動を抑え、膜厚の面内均一性を揃えることができるようになっている。
【0023】
また、真空容器1の側壁には図2、図3及び図5に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間でウエハの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0024】
図2及び図3に示すように真空容器1には、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置に第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41,42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて中心部から放射状に伸びている。これら反応ガスノズル31,32及び分離ガスノズル41,42は、例えば真空容器1の側周壁に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a,32a,41a,42aは当該側壁を貫通している。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計方向に配列されている。ところで、ガスノズル31、32、41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31、(32、41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0025】
反応ガスノズル31,32は、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されている。反応ガスノズル31,32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔がノズルの長さ方向に間隔をおいて配列されている。反応ガスノズル31,32は夫々第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段に相当し、その下方領域は夫々BTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0026】
分離ガス供給手段である分離ガスノズル41,42は、反応ガスノズル31,32と同様に構成されており、図1及び図6に示すように、分離ガスノズル41,42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば吐出孔40がノズルの長さ方向に間隔をおいて配列されている。また、分離ガスノズル41,42のガス供給ポート41a,42aの上流側は、夫々ガス供給管41b,42bを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源43に接続されている。ガス供給管41b,42bには加熱部41c,42cが夫々介設されており、また、これら加熱部41c及び42cとガス供給源43との間にはバルブやマスフローコントローラなどにより構成されたガス供給機器群44が介設されている。ガス供給機器群44は、制御部100からの制御信号に基づいて、ガス供給管41b、42b及び後述する真空容器1内へN2ガスを供給する各管におけるN2ガスの給断を制御する。
【0027】
加熱部41c及び42cはガス通流路にヒータを設けて構成されており、後述の制御部100によりそのヒータへ供給される電力が制御され、ガス供給管43,44を下流側へと流通するN2ガスの温度が制御される。加熱部41c,42cはこのガス供給源43から供給されたN2ガスを成膜処理に影響を与えずにその体積を十分に増加させることができる温度、例えば200℃〜300℃に加熱する。ここでは、ガス供給源43に貯留されているN2ガスの温度は例えば20℃であり、加熱部41c,42cはこのN2ガスを200℃に加熱するものとする。気体の体積は圧力が同じ場合に絶対温度に比例するので、図7(a)(b)に示すように、加熱されたN2ガス45は加熱される前に比べて、その体積が、273+200(K)/273+20(K)=約1.61倍に膨張して、その流量が増加する。そして、流量の増加に応じてその流速も増加し、このN2ガス45は分離ガスノズル41,42から真空容器1内に供給される。
【0028】
分離ガスノズル41,42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部5が設けられている。
【0029】
分離ガスノズル41,42は、この凸状部5における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部51内に収められている。即ち分離ガスノズル41,42の中心軸から凸状部5である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。なお、溝部51は、本実施形態では凸状部5を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部51から見て凸状部5における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部51を形成してもよい。
【0030】
従って分離ガスノズル41,42における前記周方向両側には、前記凸状部5の下面である例えば平坦な低い天井面52(第1の天井面)が存在し、この天井面52の前記周方向両側には、当該天井面52よりも高い天井面53(第2の天井面)が存在することになる。
【0031】
この凸状部5の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面52と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面52に隣接する第2の天井面53の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部5の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部5内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部5の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面52の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部5の面積などにより異なるといえる。またウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0032】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部54が設けられている。この突出部54は凸状部5における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部5の下面(天井面52)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面53よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部54と凸状部5とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0033】
この例では分離ガスノズル41、42及び反応ガスノズル31、32において、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。また、この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合凸状部5は、回転中心から140mm離れた突出部54との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部5の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
【0034】
また、図4(b)に示すように凸状部5の下面即ち天井面52における回転テーブル2の表面からの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部5の大きさや凸状部5の下面(第1の天井面52)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。
【0035】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面52とこの天井面52よりも高い第2の天井面53とが周方向に存在するが、図8(a)では、高い天井面53が設けられている領域についての縦断面を示しており、図8(b)では、低い天井面52が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部5の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図8(b)に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部55を形成している。この屈曲部55も凸状部5と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられている。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面52の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0036】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図6及び図8(b)に示すように前記屈曲部55の外周面と接近して垂直に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図8(a)に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。
【0037】
この窪んだ部分を排気領域6と呼ぶことにすると、この排気領域6の底部においては2つの排気口61,62が設けられている。図3に示すように、排気口61はBTBASガス及びN2ガスを排気するために第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられ、排気口62はO3ガス及びN2ガスを排気するために第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。
【0038】
これら排気口61,62は、図2及び図8(a)に示すように各々排気管63を介して例えば真空ポンプなどによって構成された共通の真空排気手段64に接続されている。図中65は排気管63に介設された圧力調整手段である。圧力調整手段65の上流側にて、排気管63にはその管路の一部が拡径された、拡径部66が形成されている。その拡径部66においては管路の一部を遮るように板状の冷却部67が設けられており、拡径部66におけるガスのコンダクタンスは、排気管63においてその拡径部66よりも上流側におけるコンダクタンスに比べて低くなっている。冷却部67の内部には不図示の冷媒の流路が形成されており、その冷媒が流通することにより拡径部66に流入したガスを冷却することができる。
【0039】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図2及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハをプロセスレシピで決められた温度例えば350℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から分離領域Dに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むように、カバー部材71が設けられている。
【0040】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間74になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間74は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間74内に供給してパージするためのパージガス供給管72の一端が接続されている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間75をパージするためのパージガス供給管73が接続されている。
【0041】
パージガス供給管72,73には加熱部41c及び42cと同様に構成された加熱部72c,73cが夫々介設されており、加熱部72c,73cの上流側にはガス供給機器群44が介設されている。そして、パージガス供給管72,73の上流端は、N2ガス供給源43に接続されている。
【0042】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより、図9にN2ガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域6を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0043】
真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管81の下流端が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間82に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。分離ガス供給管81の上流端は、ガスの上流側へ向かって、加熱部41cと同様に構成された加熱部81c、ガス供給機器群44をこの順に介して、N2ガス供給源43に接続されている。
【0044】
前記空間82に供給された分離ガスは、図9に示すように前記突出部54と回転テーブル2との狭い隙間56を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部54で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。
【0045】
即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なお、ここでいう吐出口は前記突出部54と回転テーブル2との狭い隙間56に相当する。
【0046】
加熱部81c,72c,73cについても加熱部41c,42cと同様にガス供給源43から供給されたN2ガスを加熱する。ガスの加熱温度としては上記のように成膜処理に影響を与えずにN2ガスを有効に膨張させることができる温度に設定され、N2ガスは加熱部81cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱され、加熱部72cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱され、加熱部73cにおいて例えば200℃〜300℃に加熱される。そして、このように各加熱部にて加熱されることでその体積及び流速が増加したN2ガスが各ガス供給管の下流端及び分離ガスノズルから真空容器1内に供給され、成膜処理時には図9に矢印で示すようなN2ガス流が形成される。加熱部41c,42cは第1の加熱部、加熱部81cは第2の加熱部、加熱部72c,73cは第3の加熱部に相当する。なお、図9では、真空容器1全体のN2ガスの流れを示すために、便宜上分離領域Dと排気口61(62)とを同一平面に示しているが、上記のように分離領域Dに対応した排気領域6は、図8(b)で示すように実際には外方に窪んでおらず、排気口61,62は、分離領域Dとは周方向にずれた位置に形成されている。
【0047】
また、各加熱部にて加熱されて真空容器1内に供給されたN2ガスは、真空容器1内を流通して、例えば真空容器1内でヒータユニット7の熱により加熱されたBTBASガスあるいはO3ガスと共に排気口61,62へ流れ込む。図10(a)(b)は排気口61に接続された排気管63をN2ガスとBTBASガスとの混合ガス85が流通する様子を示しており、混合ガス85は排気管63を拡径部66へ向かう間に自然に冷却され、そして排気管63の拡径部66を通過する間にさらに低い温度例えば100℃〜150℃に冷却されて、その体積が減少し、排気管63を拡径部66の下流側へと排気される。排気口62に接続された排気管63においても、前記混合ガス85と同様にN2ガスとO3ガスとの混合ガスが当該排気管63を流通中に冷却され、拡径部66に設けられた冷却部67によりさらに冷却されて排気される。
【0048】
また、この実施の形態の成膜装置は装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100を備えており、この制御部100のメモリ内には装置を運転するためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0049】
次に上述の成膜装置により成膜を行うプロセスについて説明する。先ず図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに図5に示すように凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から昇降ピン16が昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。
【0050】
続いて真空ポンプ64により真空容器1内を予め設定した圧力に真空引きすると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め所定の温度に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。また、それと同時に各加熱部41c,42c,72c,73c及び81cのヒータを昇温させ、各加熱部においてN2ガスを上述の所定の温度例えば200℃に加熱するための加熱準備を行うと共に排気管63の冷却部67に冷媒を流通させて、ガスを冷却するための冷却準備を行う。
【0051】
前記加熱準備及び冷却準備が終了し、且つウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度例えば350℃になったことを確認した後、ガス供給源43から各ガス供給管にN2ガスが供給され、N2ガスは各ガス供給管の各加熱部41c,42c,72c,73c,81cにて各々加熱されて、その体積及び流速が増加し、各ガス供給管の端部及び分離ガスノズル41、42から真空容器1内に供給される。分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管81からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また、真空容器1の中心部の下方側に開口したパージガス供給管72からのN2ガスの流量は例えば1000sccmであり、ヒータユニット7の下部に開口したパージガス供給管73からのN2ガスの流量は例えば10000sccm、である。また、このように真空容器1内にN2ガスを供給すると共に第1の反応ガスノズル31、第2の反応ガスノズル32から夫々BTBASガスが100sccm、O3ガスが10000sccmで吐出され、真空容器1内のプロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)となる。
【0052】
ウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の反応ガスノズル31が設けられる第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル32が設けられる第2の処理領域P2とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成され、こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0053】
この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切りかかれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面52の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面53の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
【0054】
各ガスを各部位から吐出したときのガスの流れの状態を模式的に図11に示す。第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面(ウエハWの表面及びウエハWの非載置領域の表面の両方)に当たってその表面に沿って回転方向上流側に向かうO3ガスは、その上流側から流れてきたN2ガスに押し戻されながら回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との間の排気領域6に流れ込み、排気口62により排気される。
【0055】
また第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に当たってその表面に沿って回転方向下流側に向かうO3ガスは、中心部領域Cから吐出されるN2ガスの流れと排気口62の吸引作用により当該排気口62に向かおうとするが、一部は下流側に隣接する分離領域Dに向かい、扇型の凸状部5の下方側に流入しようとする。ところがこの凸状部5の天井面52の高さ及び周方向の長さは、各ガスの流量などを含む運転時のプロセスパラメータにおいて当該天井面52の下方側へのガスの侵入を防止できる寸法に設定されているため、図4(b)にも示してあるようにO3ガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル41付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル41から吐出したN2ガスにより回転方向上流側、つまり処理領域P2側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口62に排気される。
【0056】
また第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に沿って回転方向上流側及び下流側に夫々向かうBTBASガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部5の下方側に全く侵入できないかあるいは侵入したとしても第2の処理領域P1側に押し戻され、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口61に排気される。即ち、各分離領域Dにおいては、雰囲気中を流れる反応ガスであるBTBASガスあるいはO3ガスの侵入を阻止するが、ウエハに吸着されているガス分子はそのまま分離領域つまり扇型の凸状部5による低い天井面52の下方を通過し、成膜に寄与することになる。
【0057】
更にまた第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心部領域C内に侵入しようとするが、図11に示すように当該中心部領域Cからは分離ガスが回転テーブル2の周縁に向けて吐出されているので、この分離ガスにより侵入が阻止され、あるいは多少侵入したとしても押し戻され、この中心部領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0058】
そして分離領域Dにおいては、扇型の凸状部5の周縁部が下方に屈曲され、屈曲部55と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっていてガスの通過を実質阻止しているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、回転テーブル2の外側を介して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。従って2つの分離領域Dによって第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離される。また、図9に示すように回転テーブルの下方側にはガス供給管72、73からN2ガスが供給されているので、BTBASガス及びO3ガスは回転テーブル2の下方に回り込むことも抑えられる。従って、BTBASガスはN2ガスと共に排気口61に、O3ガスはN2ガスと共に排気口62に夫々流入し、排気口61及び排気口62を介して排気管63に流入した各ガスは、冷却部67にて冷却され、その体積が小さくなった状態で排気管63を下流へと流れて排気される。
【0059】
ウエハが処理領域P1、P2の各々を多数回、例えば600回通過し、所定の膜厚を有する膜が成膜されて成膜処理が終了すると、各ウエハは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により搬出される。この通過回数は目標膜厚に応じて設定される。
【0060】
この実施形態の成膜装置によれば、BTBASガス、O3が夫々供給される処理領域P1、P2の間に位置する分離領域Dにおいて、ウエハWが載置される回転テーブル2と対向する天井面52と、前記回転テーブル2と前記天井面52との間にN2ガスを供給して、BTBASガス及びO3ガスの混合を阻止するための分離空間Dを形成する分離ガスノズル41,42と、が設けられ、これら分離ガスノズル41,42にN2ガスを供給するためのガス供給管41b,42bにおけるN2ガスが、これらガス供給管41b、42bに介設された加熱部41c,42cにより加熱される。加熱部41c,42cにより加熱されることによりN2ガスは、膨張し、その流速が増した状態で分離ガスノズル41,42から分離領域Dに供給されるので、N2ガスの使用量を抑えることができる一方で、分離領域DにてBTBASガスとO3ガスとの混合を抑えて、正常な成膜処理を行うことができなくなることを抑えることができる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0061】
また、この成膜装置は分離領域Dにおいて反応ガスの混合を抑えるために、真空容器1の天板11とコア部21との間の空間82に分離ガスであるN2ガスを供給し、回転テーブル2の中心部側から周縁部側へとN2ガスを供給するが、このN2ガスも加熱部81cにより加熱されて膨張し、その流速が高まった状態で空間82に供給されるので、この空間82に供給するN2ガスの使用量も抑えることができる。
【0062】
また、回転テーブル2の下面側に供給するN2ガスも加熱部72c、73cにより、加熱された状態で供給されるので、ガス供給管72,73から供給するN2ガスの使用量も抑えることができる。
【0063】
また、排気管63に設けられた冷却部67により、各加熱部にて加熱されたN2ガスは冷却され、その体積が減少した状態で排気されるので、真空排気手段64による排気量を抑えることができ、その負荷を低減させ、真空排気手段64を駆動するための消費電力を抑えることができる。この冷却部67は、排気管63において、ガスのコンダクタンスを低下させるように設けられているので、この冷却部67でガスの流れが遅くなり、冷却効率が高まる結果として、より確実にN2ガスの体積を減少させることができる。
【0064】
なお、真空容器1内にN2ガスを供給する各配管に加熱部を設ける代わりに、例えば図12に示すようにN2ガス供給源43から供給されたN2ガスを一旦貯留すると共に所定の温度に加熱する加熱貯留部49を設け、この加熱貯留部49から各ガス供給管41b,42b,72,73及び81を介して真空容器1の各部にN2ガスを供給する構成としてもよい。
【0065】
また前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
【0066】
そして前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面52は、図13(a)、(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。凸状部5の両側から当該凸状部5の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面52と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。
【0067】
更に第1の天井面52と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面52と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面52との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。
【0068】
更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部5の上流側から当該凸状部5の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。
【0069】
また、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0070】
ここで処理領域P1、P2及び分離領域Dの各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。図14は第2の反応ガスノズル32を搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側に位置させた例であり、このようなレイアウトであっても同様の効果が得られる。また分離領域Dは、扇型の凸状部5を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよく、図15は、このような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部5と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部5の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
【0071】
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面53)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面52と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。図16はこのような構成の一例を示すものであり、第2の処理領域(この例ではO3ガスの吸着領域)P2において扇形の凸状部30の下方側に第2の反応ガスノズル32を配置している。なお第2の処理領域P2は、分離ガスノズル41(42)の代わりに第2の反応ガスノズル32を設けた以外は、分離領域Dと全く同様である。
【0072】
また、図17に示すように反応ガスノズル31(32)の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部5を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面52が反応ガスノズル31(32)にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31(32)の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部5の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは分離ガスノズル31(32)と反応ガスノズル42(41)との間に位置する排気口61(62)から排気されることになる。
【0073】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図18に示すように構成してもよい。図18の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間90を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部90aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間90の底部と真空容器1の前記凹部90aの上面との間に支柱91を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0074】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱91を囲むように回転スリーブ92を設けてこの回転スリーブ92に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間90にモータ93により駆動される駆動ギヤ部94を設け、この駆動ギヤ部94により、回転スリーブ92の下部の外周に形成されたギヤ部95を介して当該回転スリーブ92を回転させるようにしている。96、97及び98は軸受け部である。また前記収容空間90の底部にパージガス供給管73を接続すると共に、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管91を真空容器1の上部に接続している。図18では、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ92の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0075】
図18の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部90aの側面と回転スリーブ92の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ92及び支柱91により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0076】
以上述べた成膜装置を用いた基板処理装置について図19に示しておく。図19中、101は例えば25枚のウエハを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハが取り出される。次いでロードロック室104(105)内に搬入され当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0077】
上記の成膜装置で適用される処理ガスとしては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
また、分離ガス及びパージガスとしては、N2ガスに限られずArガスなどの不活性ガスを用いることができるが、不活性ガスに限らず水素ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図6】反応ガスノズルを示す縦断面図である。
【図7】加熱部によりガスが膨張する様子を示した説明図である。
【図8】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図10】排気管にてガスの体積が減少する様子を示した説明図である。
【図11】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図13】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図14】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図15】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図16】本発明の更にまた他の実施の形態に係る成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図18】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図19】本発明の成膜装置を用いた基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0079】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
21 コア部
24 凹部(基板載置領域)
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心部領域
41、42 分離ガスノズル
5 凸状部
61、62 排気口
63 排気管
65 冷却部
7 ヒータユニット
72、73 パージガス供給管
81 分離ガス供給管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するために設けられた基板載置領域を備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記周方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガスを供給する分離ガス供給手段と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する第1の加熱部と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気するための排気口と、
基板に薄膜を積層するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出口が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記排気口から排気されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域であることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の加熱部が設けられることに代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する第2の加熱部が設けられることを特徴とする請求項2または3記載の成膜装置。
【請求項5】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段と、
前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する第3の加熱部と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記排気口と当該排気口に接続された真空排気手段との間に設けられる排気路を流通するガスを冷却するための冷却部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記冷却部は、前記排気路におけるガスの流れを規制してそのコンダクタンスを低下させると共に当該排気路におけるガスを冷却するための冷媒の流路を備えたことを特徴とする請求項7記載の成膜装置。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置する工程と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記周方向において前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するためにこれら処理領域の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程と、
基板に前記薄膜を形成するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる工程と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気口を介して排気する工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置する中心部領域に設けられた吐出口から前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する工程を含み、
前記排気工程は、前記反応ガス、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスを共に前記排気口から排気することを特徴とする請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域であることを特徴とする請求項10記載の成膜方法。
【請求項12】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えたことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項13】
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程に代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する工程を備えたことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項14】
前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段にパージガスを供給する工程と、
前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する工程と、
を含むことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項15】
前記排気口と真空排気手段とを接続する排気路におけるガスを冷却する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一に記載の成膜方法。
【請求項16】
互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、
前記プログラムは、請求項9ないし15のいずれか一つの成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するために設けられた基板載置領域を備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記周方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガスを供給する分離ガス供給手段と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する第1の加熱部と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気するための排気口と、
基板に薄膜を積層するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出口が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記排気口から排気されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域であることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の加熱部が設けられることに代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する第2の加熱部が設けられることを特徴とする請求項2または3記載の成膜装置。
【請求項5】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段と、
前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する第3の加熱部と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記排気口と当該排気口に接続された真空排気手段との間に設けられる排気路を流通するガスを冷却するための冷却部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記冷却部は、前記排気路におけるガスの流れを規制してそのコンダクタンスを低下させると共に当該排気路におけるガスを冷却するための冷媒の流路を備えたことを特徴とする請求項7記載の成膜装置。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置する工程と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離れて設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記周方向において前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するためにこれら処理領域の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程と、
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程と、
基板に前記薄膜を形成するために第1の反応ガス、第2の反応ガス及び分離ガスが前記回転テーブルに供給されているときに、当該回転テーブルを各処理領域及び分離領域に対して相対的に前記周方向に回転させる工程と、
前記回転テーブルに供給された各反応ガス及び分離ガスを排気口を介して排気する工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置する中心部領域に設けられた吐出口から前記回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する工程を含み、
前記排気工程は、前記反応ガス、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスを共に前記排気口から排気することを特徴とする請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域であることを特徴とする請求項10記載の成膜方法。
【請求項12】
前記分離領域は、分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面を備えたことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項13】
前記分離ガス供給手段に供給される分離ガスを加熱する工程に代えて、前記吐出口に供給される分離ガスを加熱する工程を備えたことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項14】
前記回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを供給するパージガス供給手段にパージガスを供給する工程と、
前記パージガス供給手段に供給されるパージガスを加熱する工程と、
を含むことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項15】
前記排気口と真空排気手段とを接続する排気路におけるガスを冷却する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一に記載の成膜方法。
【請求項16】
互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、
前記プログラムは、請求項9ないし15のいずれか一つの成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−56471(P2010−56471A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222733(P2008−222733)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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