説明

成膜装置

【課題】反応容器内で第1及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する場合において、第1及び第2の原料ガスを、インジェクタの近傍で均一に混合してから基板に到達させることができ、成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板間及び面内で均一に揃えることができる成膜装置を提供する。
【解決手段】反応容器内に第1及び第2の原料ガスを吐出する第1及び第2のインジェクタ11、12を備え、第1及び第2のインジェクタ11、12は、第1及び第2の原料ガスを基板に向けて吐出する複数の第1の吐出口N1、N2が設けられ、第1の吐出口N1から吐出された第1の原料ガスの流路FL1が、対応する第2の吐出口N2から吐出された第2の原料ガスの流路FL2と略同一であり、第1の原料ガスは、第1の吐出口N1から吐出された後、基板に到達する前に、第2の原料ガスと混合されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型熱処理装置の反応容器内で基板表面に薄膜を成膜する成膜処理を行う成膜装置に係り、特に、反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる材料は、近年無機材料から有機材料へと幅を広げつつあり、無機材料にはない有機材料の特質等から半導体デバイスの特性や製造プロセスをより最適なものとすることができる。
【0003】
このような有機材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは密着性が高く、リーク電流も低いことから絶縁膜として用いることができ、半導体デバイスにおける絶縁膜として用いることも可能である。
【0004】
このようなポリイミド膜を成膜する方法としては、原料モノマーとして無水ピロメリット酸(PMDA:Pyromellitic Dianhydride)と4,4'−オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline)を用いた蒸着重合による成膜方法が知られている。
【0005】
このような成膜を行う成膜装置として、基板を酸化処理し、基板表面に酸化膜を形成する縦型熱処理装置の反応容器と同様の縦型の反応容器を用いる場合がある。縦型熱処理装置の反応容器は、所定のピッチで配列された複数枚の被処理体である基板を収容し、真空引き可能になされた縦型の石英製の反応管よりなる。また、縦型熱処理装置は、反応容器中に設けられ、被処理体である基板を収容する収容領域に酸化ガス等を供給するインジェクタを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
縦型熱処理装置と同様の構造を有し、縦型の反応容器を有する成膜装置において、原料としてPMDA及びODAを用いてポリイミドの薄膜を成膜する場合、固体原料であるPMDAを昇華させて得られる第1の原料ガスと、液体原料であるODAを気化して得られる第2の原料ガスを、同時に成膜装置の反応容器中に供給し、反応容器中で第1の原料ガスと第2の原料ガスを反応させ、反応して生成する反応生成物よりなる薄膜を基板表面に成膜する。
【0007】
縦型の反応容器を有する成膜装置に複数の原料ガスを供給する方式としては、インジェクタから反応容器内に第1の原料ガス及び第2の原料ガスが供給された後に混合され、反応するいわゆるポストミックス方式と、インジェクタから反応容器内に原料ガスが供給される際に、既に第1の原料ガス及び第2の原料ガスが混合され、反応した状態で反応ガスとして供給されるいわゆるプレミックス方式がある。このうち、ポストミックス方式を行うために、反応容器中に複数のインジェクタを設ける場合がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−175441号公報
【特許文献2】特開2004−343017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記の成膜装置を用い、反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する場合、次のような問題があった。
【0010】
前述したポストミックス方式の場合、反応容器内に基板が収容されている収容領域の全ての位置で第1の原料ガスの濃度又は第2の原料ガスの濃度を均一にすることが困難な場合がある。従って、反応容器内において基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚が基板間及び基板面内で均一にならないという問題があった。
【0011】
一方、前述したプレミックス方式の場合、反応ガスがインジェクタ内を流れる間に、インジェクタの内壁に成膜し、付着してしまう場合がある。特に、成膜最適温度では成膜速度が速いため、第1の原料ガスと第2の原料ガスのほとんどがインジェクタの内壁に成膜し、インジェクタが詰まって原料ガスを供給できないという問題があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する場合において、第1の原料ガス及び第2の原料ガスを、第1のインジェクタの近傍で均一に混合してから基板に到達させることができ、基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板間及び基板面内で均一に揃えることができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明は、反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する成膜装置であって、前記反応容器内に設けられ、前記反応容器内に第1の原料ガスを吐出する第1のインジェクタと、前記反応容器内に設けられ、前記反応容器内に第2の原料ガスを吐出する第2のインジェクタとを備え、前記第1のインジェクタは、前記第1の原料ガスを前記基板に向けて吐出する複数の第1の吐出口が設けられ、前記第2のインジェクタは、前記第2の原料ガスを前記基板に向けて吐出する複数の第2の吐出口が設けられ、前記第1の吐出口から吐出された前記第1の原料ガスの流路が、対応する前記第2の吐出口から吐出された前記第2の原料ガスの流路と略同一上にあり、前記第1の原料ガスは、前記第1の吐出口から吐出された後、前記基板に到達する前に、前記第2の原料ガスと混合されることを特徴とする。
【0015】
第2の発明に係る成膜装置は、第1の発明に係る成膜装置において、前記第1のインジェクタは、前記第2のインジェクタの内部に収容されることを特徴とする。
【0016】
第3の発明に係る成膜装置は、第2の発明に係る成膜装置において、互いに対応する前記第1の吐出口及び前記第2の吐出口は、前記反応容器の長手方向に垂直な同一の面に設けられることを特徴とする。
【0017】
第4の発明に係る成膜装置は、第2又は第3の発明に係る成膜装置において、前記第2のインジェクタの内部に収容されるヒータを備えることを特徴とする。
【0018】
第5の発明に係る成膜装置は、第2又は第3の発明に係る成膜装置において、前記第2のインジェクタの外部に近接して配置されるヒータを備えることを特徴とする。
【0019】
第6の発明に係る成膜装置は、第4又は第5の発明に係る成膜装置において、前記ヒータは、前記第1の原料ガス及び前記第2の原料ガスを前記複数の基板の温度よりも高い温度に加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の原料ガス及び第2の原料ガスを、第1のインジェクタの近傍で均一に混合してから基板に到達させることができ、基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板面内で均一に揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置を説明するための一部横断面を含む図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す一部縦断面を含む斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタから吐出される第1の原料ガス及び第2の原料ガスが混合される過程を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
最初に、本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置について説明する。本実施の形態に係る成膜装置は、反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する成膜装置である。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す一部縦断面を含む図である。図2は、本実施の形態に係る成膜装置を説明するための一部横断面を含む図であり、反応容器並びに反応容器の内部に設けられるインジェクタの横断面をウェハと合わせて示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る成膜装置20は、不図示の真空ポンプ等により排気が可能なチャンバー21内にポリイミド膜が成膜されるウェハWを複数設置することが可能なウェハボート22を有している。また、チャンバー21内には、気化したPMDA及びODAを供給するためのインジェクタ10を有している。このインジェクタ10の側面には開口部が設けられており、気化器により気化したPMDA及びODAが図面において矢印で示すようにウェハWに供給される。供給された気化したPMDA及びODAは、ウェハW上で反応し蒸着重合によりポリイミド膜が成膜される。なお、ポリイミド膜の成膜に寄与しない気化したPMDA及びODA等は、そのまま流れ、排気口25よりチャンバー21の外に排出される。また、ウェハW上に均一にポリイミド膜が成膜されるようにウェハボート22は、回転部26により回転するよう構成されている。更に、チャンバー21の外部には、チャンバー21内のウェハWを一定の温度に加熱するためのヒータ27が設けられている。なお、チャンバー21は、本発明の反応容器に相当する。
【0025】
また、インジェクタ10には、PMDA気化器29及びODA気化器30がバルブ31及び32を介しそれぞれ接続されており、PMDA気化器29及びODA気化器30より気化したPMDA及びODAが供給される。
【0026】
PMDA気化器29には、高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、PMDA気化器29においてPMDAを昇華させることにより気化した状態で供給する。このため、PMDA気化器29は、260℃の温度に保たれている。また、ODA気化器30では、高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、高温に加熱され液体状態となったODAを供給された窒素ガスによりバブリングすることにより、窒素ガスに含まれるODAの蒸気とし、気化した状態で供給する。このため、ODA気化器30は220℃の温度に保たれている。
【0027】
この後、バルブ31及び32を介し、気化したPMDA及びODAが、後述するように、インジェクタ10内の第1のインジェクタ11、第2のインジェクタ12のそれぞれに供給される。なお、PMDA気化器29からバルブ31を介して接続されるインジェクタ10は、260℃に保たれている。これは、260℃であれば、気化したPMDAと気化したODAとをミックスした状態であっても反応することなく、ポリイミド膜が形成されないからである。言い換えれば、インジェクタ10内において、ポリイミド膜が成膜されることを防ぐためである。
【0028】
また、ウェハWは、チャンバー21に設けられた外部ヒータ27により、200℃に加熱されている。ウェハWの温度を200℃とすることにより、気化したPMDAと気化したODAとが反応しウェハW上にポリイミド膜が形成される。
【0029】
次に、図1乃至図4を参照し、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構造について説明する。図3は、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。また、図4は、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す一部縦断面を含む斜視図である。
【0030】
本実施の形態では、図1及び図2に示すように、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12は、インジェクタ10として一体に設けられる。チャンバー21内のウェハWが上下に配列されて収容される空間を収容領域Sとすると、インジェクタ10は、チャンバー21の長手方向に沿って延在し、収容領域Sの全領域をカバーできるようになっている。また、インジェクタ10は、収容領域Sに第1の原料ガス及び第2の原料ガスを吐出し、後述する第2の吐出口N2に相当する吐出口Nを有する。吐出口Nは、長手方向に沿って略所定のピッチで複数形成されており、収容領域Sの全領域に対して水平方向で、かつ、基板が収容されているチャンバー21の中心に向けて第1の原料ガス及び第2の原料ガスを吐出して供給できるようになっている。
【0031】
なお、本実施の形態においては、後述するように、第1のインジェクタ11が、第2のインジェクタ12の内部に収容されるため、インジェクタ10の吐出口Nは、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2に相当する。
【0032】
また、収容領域Sは、ウェハボート22の長さよりも僅かに上下方向に広く設定されている。第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12からチャンバー21内へ導入されたガスは、排気口25から排出される。
【0033】
図3及び図4に示すように、インジェクタ10は、第1のインジェクタ11、第2のインジェクタ12、ガス加熱ヒータ13、温度センサ14を有する。
【0034】
なお、ガス加熱ヒータ13は、本発明におけるヒータに相当する。
【0035】
第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12は、ともに円形の断面形状を有する石英製の管である。第1のインジェクタ11の径は、第2のインジェクタ12の径よりも小さく、第1のインジェクタ11は、第2のインジェクタ12の内部に収容される。すなわち、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12は、第1のインジェクタ11を内管とし、第2のインジェクタ12を外管とする二重管構造を有する。
【0036】
第1のインジェクタ11には、第1の原料ガスを吐出する第1の吐出口N1が第1のインジェクタ11の長手方向に沿って複数設けられている。図3に示す断面は、複数のうち1つの第1の吐出口N1が設けられている位置における第1のインジェクタ11の長手方向に垂直な断面である。また、同様に、第2のインジェクタ12にも、第2の原料ガスを吐出する第2の吐出口N2が、第2のインジェクタ12の長手方向に沿って複数設けられている。また、図3に示す断面は、複数のうち1つの第2の吐出口N2が設けられている位置における第2のインジェクタ12の長手方向に垂直な断面である。すなわち、本実施の形態では、各第1の吐出口N1と各第2の吐出口N2とは、1対1で対応しており、1つの第1の吐出口N1と、その1つの第1の吐出口N1に対応する第2の吐出口N2とは、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12の長手方向、すなわちチャンバー21の長手方向に沿って、同一の位置に設けられている。換言すれば、互いに対応する第1の吐出口N1及び第2の吐出口N2は、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12の長手方向に垂直な同一の面に設けられる。また、本実施の形態では、チャンバーを縦型に設置した縦型熱処理装置と同様の配置の成膜装置であるため、1つの第1の吐出口N1と、その1つの第1の吐出口N1に対応する第2の吐出口N2とは、同一の高さに設けられている。
【0037】
図2乃至図4に示すように、第1のインジェクタ11は、第1の吐出口N1が、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2に近接するように、第2のインジェクタ12の内部に収容される。また、第1のインジェクタ11は、第1の吐出口N1から吐出される第1の原料ガスの吐出方向が、基板が設けられているチャンバー21の中心の方向を向くように設けられる。また、第2のインジェクタ12も、第2の吐出口N2から吐出される第2の原料ガスの吐出方向が、基板が設けられているチャンバー21の中心の方向を向くように設けられる。一例として、図3に示すように、第1のインジェクタの中心C1、第2のインジェクタの中心C2、第1のインジェクタ11の第1の吐出口N1、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2が、一直線上に配置され、かつ、第2のインジェクタの中心C2、第1のインジェクタの中心C1、第1のインジェクタ11の第1の吐出口N1、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2の順に配置される。このように配置されることにより、本実施の形態に係る成膜装置では、1つの第1の吐出口N1から吐出された第1の原料ガスの流路FL1は、対応する1つの第2の吐出口N2から吐出された第2の原料ガスの流路FL2と略同一上にある。
【0038】
ガス加熱ヒータ13、温度センサ14は、図3及び図4に示すように、第1のインジェクタ11を内部に収容する第2のインジェクタ12の内部であって、第1のインジェクタ11の外部の空間に収容される。ガス加熱ヒータ13は、第2のインジェクタ12の内部の空間を第2のインジェクタ12の長手方向に沿って、第2のインジェクタ12の下端(一端)から上端(他端)まで延び、第2のインジェクタ12の上端(他端)で折り返され、折り返された先端部は、第2のインジェクタ12の下端(一端)まで延びている。すなわち、ガス加熱ヒータ13は、第2のインジェクタ12の長手方向に沿ってU字状に形成されている。温度センサ14は、第2のインジェクタ12の内部の空間を第2のインジェクタ12の長手方向に沿って、第2のインジェクタ12の下端(一端)から上端(他端)方向に向かう途中の位置まで延びている。温度センサ14として、例えば熱電対、抵抗温度計等を用いることができる。
【0039】
また、図1に示すように、ガス加熱ヒータ13のヒータ用給電線13aは、温度制御部である温度コントローラ15により供給電力が制御される電力供給部16に接続されている。温度センサ14は、温度コントローラ15に接続されて第2のインジェクタ12の内部の温度の温度検出値をフィードバックしている。また、ガス加熱ヒータ13は、温度センサ14の温度検出値と設定温度値とに基づいて温度コントローラ15により発熱量のコントロールが行われる。従って、第1のインジェクタ11を内部に収容する第2のインジェクタ12の内部であって、第1のインジェクタ11の外部の空間に収容されるガス加熱ヒータ13は、チャンバー21内の処理雰囲気を加熱するヒータ27とは独立して、温度コントローラ15により温度制御され、例えば200℃から1000℃の範囲で第1のインジェクタ11内の第1の原料ガス及び第2のインジェクタ12内の第2の原料ガスを加熱することができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係る成膜装置において、本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタから吐出される第1の原料ガス及び第2の原料ガスが、第1のインジェクタの近傍で均一に混合されてから基板に到達する作用効果について説明する。図5は、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタから吐出される第1の原料ガス及び第2の原料ガスが混合される過程を説明するための図である。また、図5は、図3の小円Iで囲まれた部分を拡大して示す図である。
【0041】
第1の原料ガスは、図5の紙面に垂直な方向に沿って第1のインジェクタ11内を流れ、第1の吐出口N1から第2のインジェクタ12内に吐出される。また、第1の吐出口N1から第2のインジェクタ12内に吐出された第1の原料ガスは、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2から、基板が収容されているチャンバー21の中心に向けて吐出される。一方、第2の原料ガスは、図5の紙面に垂直な方向に沿って第2のインジェクタ12内を流れ、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2から、基板が収容されているチャンバー21の中心に向けて吐出される。
【0042】
ここで、前述したように、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12は、第1のインジェクタ11の中心C1、第2のインジェクタ12の中心C2、第1のインジェクタ11の第1の吐出口N1、第2のインジェクタ12の第2の吐出口N2が、同一直線上に配置されており、かつ、第1の吐出口N1が第2の吐出口N2に近接するように、設けられている。従って、第1の原料ガスは、図5の小円IIで囲まれた領域において、第1の吐出口N1及び第2の吐出口N2を通って直進するような第1の原料ガスの流路FL1に沿って流れる。また、第2の原料ガスは、第1の原料ガスの流路FL1の左右又は上下両側から第1の原料ガスの流路FL1に向けて集まるように流れ、図5の小円IIで囲まれた領域において、第2の吐出口N2に向けて屈曲するような第2の原料ガスの流路FL2に沿って流れる。
【0043】
すなわち、図5の小円IIで囲まれた領域においては、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、ともに第2の吐出口N2に向けて集まるように流れる。従って、第1の原料ガスの流路FL1及び屈曲した後の第2の原料ガスの流路FL2は、略同一となる。また、第1の原料ガスの流路FL1及び屈曲した後の第2の原料ガスの流路FL2が略同一となることにより、図5の小円IIで囲まれる領域、特に第2の吐出口N2の付近の狭い領域において、第1の原料ガスと第2の原料ガスとは混合する。従って、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、インジェクタからチャンバー内に供給される際に均一に混合されながら吐出される。
【0044】
ここで、第2のインジェクタ12の内部が、チャンバー内の中心に収容されている基板と同じ温度に制御される場合、基板温度を基板表面に薄膜を成膜するために最適な温度(成膜温度)に制御すると、第2のインジェクタ12内部も成膜温度に等しくなるため、図5の小円IIで囲まれた領域において第1の原料ガス及び第2の原料ガスが反応し、第2の吐出口N2の近傍における第2のインジェクタ12の内壁及び外壁、第1のインジェクタ11の外壁に成膜し、付着してしまう。
【0045】
しかしながら、本実施の形態では、ガス加熱ヒータ13により、第2のインジェクタ12及び第1のインジェクタ11の内部を基板の温度である成膜温度よりも高い温度に保持することができる。第1の原料ガスと第2の原料ガスを反応させる場合、成膜に最適な成膜温度よりも高い温度領域では、成膜速度が遅くなる温度領域がある。ガス加熱ヒータ13により、第2のインジェクタ12の内部及び第1のインジェクタ11の内部をこのような成膜温度よりも高い温度に保持することにより、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、インジェクタからチャンバー内に供給される際に均一に混合されるものの、インジェクタ及びインジェクタの近傍でほとんど成膜することがない。その結果、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、インジェクタの近傍で均一に混合された状態を保ちながら、インジェクタの近傍にほとんど消費されることなく基板に到達することができる。その結果、基板表面に成膜する速度を落とすことなく、薄膜の膜質、膜厚を、基板間及び基板面内で均一に揃えることができる。
【0046】
次に、第1の原料ガスとしてPMDAを用い、第2の原料ガスとしてODAを用い、第1及び第2の原料ガスから、ポリイミド薄膜が成膜される蒸着重合について説明する。
【0047】
図1のPMDA気化器29に含まれ図示しない原料タンク内に、固体原料としてPMDAを充填した。一方、図1のODA気化器30に含まれ図示しない原料タンク内に、液体原料としてODAを充填した。チャンバー21内をヒータ27で200℃に加熱し、第1のインジェクタ11、第2のインジェクタ12を、ガス加熱ヒータ13によりそれぞれ260℃に加熱した。
【0048】
次いで、PMDA気化器29に充填されているPMDAを、PMDA気化器29に含まれ図示しない加熱機構で260℃に加熱し、またODA気化器30に充填されているODAを、ODA気化器30に含まれ図示しない加熱機構で190℃に加熱した。その後、第1の原料ガスをバルブ31を介して第1のインジェクタ11に導入した。また、第2の原料ガスをバルブ32を介して第2のインジェクタ12に導入した。第1の原料ガスを第1のインジェクタ11から第1の吐出口N1を介して第2のインジェクタ12に導入し、第2のインジェクタ12の内部で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを混合し、混合した第1の原料ガス及び第2の原料ガスを第2のインジェクタ12から第2の吐出口N2を介してチャンバー21内に導入した。このときのチャンバー21内の真空度は約0.5Torrであった。
【0049】
上記の条件で、PMDA気化器29内の原料タンク内のPMDAを一定温度(260℃)に維持したまま蒸着重合を行った。このときの蒸着重合は、PMDAとODAとの流量比が、供給されるPMDAとODAとの化学量論比が1:1になる状態で行った。このとき、PMDAとODAとの重合反応は、次の式(1)に示す反応式に従って行われた。
【0050】
【化1】

以上、本実施の形態に係る成膜装置によれば、第1の原料ガスを吐出する第1の吐出口が複数形成された第1のインジェクタを、第2の原料ガスを吐出する第2の吐出口が複数形成された第2のインジェクタの内部に収容する。第1のインジェクタを第2のインジェクタの内部に収容する際に、第1の原料ガスの流路が第2の原料ガスの流路と略同一上になるように、すなわち各第1の吐出口が対応する各第2の吐出口の近傍になるように、配置する。これにより、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、第1のインジェクタの近傍で均一に混合されてから基板に到達するため、基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板間及び基板面内で均一に揃えることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、互いに対応する第1の吐出口及び第2の吐出口は、第1のインジェクタ及び第2のインジェクタの長手方向に垂直な同一の面に設けられるが、互いに近接して設けられればよく、第1のインジェクタ及び第2のインジェクタの長手方向に垂直な同一の面に設けられなくてもよい。すなわち、縦型熱処理装置と同様な構成を有し、長手方向が水平面に対して垂直である場合には、第1の吐出口及び第2の吐出口は同一の水平面に設けられず、互いに多少の高低差があってもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、第1の吐出口及び第2の吐出口は、それぞれ複数設けられているが、複数でなくてもよく、1つずつ設けられてもよい。第1の吐出口及び第2の吐出口がそれぞれ1つずつ設けられる場合でも、図3に示すような断面構造を有するように設けられていれば、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、第1のインジェクタの近傍で均一に混合されてからチャンバー内に供給されるため、基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板間及び基板面内で均一に揃えることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、第1のインジェクタは、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられるが、処理領域Sにおいて基板に均一に第1の原料ガスを供給することができるのであれば、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられなくてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、第2のインジェクタも、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられるが、処理領域Sにおいて基板に均一に第2の原料ガスを供給することができるのであれば、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられなくてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、第1のインジェクタは、第1の原料ガスを反応容器であるチャンバーの長手方向に垂直に基板に向けて吐出する複数の第1の吐出口が反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられるが、処理領域Sにおいて基板に均一に第1の原料ガスを供給することができるのであれば、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられなくてもよく、また、第1の原料ガスを長手方向に垂直に基板に向けて吐出しなくてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、第2のインジェクタも、第2の原料ガスを反応容器であるチャンバーの長手方向に垂直に基板に向けて吐出する複数の第2の吐出口が反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられるが、処理領域Sにおいて基板に均一に第2の原料ガスを供給することができるのであれば、反応容器であるチャンバーの長手方向に沿って設けられなくてもよく、また、第2の原料ガスを長手方向に垂直に基板に向けて吐出しなくてもよい。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図6を参照し、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例について説明する。図6は、本変形例に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の変形例及び実施の形態についても同様)。
【0057】
本変形例に係る成膜装置のインジェクタは、ヒータをインジェクタ内部に収容しない点で、第1の実施の形態と相違する。
【0058】
図6を参照するに、第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタ10において、ガス加熱ヒータ13が第1のインジェクタ11を収容する第2のインジェクタ12の内部であって、第1のインジェクタ11の外部に収容されているのと相違し、本変形例に係る成膜装置のインジェクタ10aでは、ガス加熱ヒータ13が第1のインジェクタ11を収容する第2のインジェクタ12の外部に設けられている。
【0059】
また、図6に示す例では、ガス加熱ヒータ13とともに、例えば熱電対である温度センサ14も、第2のインジェクタ12の外部に設けられている。
【0060】
ガス加熱ヒータ13及び温度センサ14は、第1のインジェクタ11を流れる第1の原料ガス、第2のインジェクタ12を流れる第2の原料ガスを、基板温度よりも高い温度に保持するためのものであるため、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12の近傍にあることが望ましい。しかしながら、第1の原料ガスの温度及び第2の原料ガスの温度を制御することができるのであれば、第1の実施の形態のように、第1のインジェクタ11を収容する第2のインジェクタ12の内部であって、第1のインジェクタ11の外部に設けられていなくてもよく、図6に示すように、第1のインジェクタ11を収容する第2のインジェクタ12の外部に設けられていてもよい。
【0061】
ガス加熱ヒータ13及び温度センサ14が第1のインジェクタ11を収容する第2のインジェクタ12の外部に設けられることにより、第2のインジェクタ12を流れる第2の原料ガスがガス加熱ヒータ13又は温度センサ14の外壁に付着するおそれが減少する。また、第2のインジェクタ12の管の径を所定の値にする場合、第2のインジェクタ12の内部であって第1のインジェクタ11の外部であり、第2の原料ガスが流れる領域の断面積が増大するため、例えば第2のインジェクタ12の径を増大させることなく第1のインジェクタ11の径を増大させることができる。このように、インジェクタの配置及び構造の設計の自由度が増大する。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図7を参照し、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例について説明する。図7は、本変形例に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【0062】
本変形例に係る成膜装置のインジェクタは、第1のインジェクタ及び第2のインジェクタが、ともに矩形の断面形状を有する点で、第1の実施の形態と相違する。
【0063】
図7を参照するに、第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタ10において、第1のインジェクタ11及び第2のインジェクタ12が、ともに円形の断面形状を有するのと相違し、本変形例に係る成膜装置のインジェクタ10bでは、第1のインジェクタ11a及び第2のインジェクタ12aが、ともに矩形の断面形状を有する。
【0064】
インジェクタ10bを構成する第1のインジェクタ11a及び第2のインジェクタ12aは、ともに矩形の断面形状を有するメタル製(例えばSUS製、アルミニウム製)の管である。第1のインジェクタ11aの断面寸法は、第2のインジェクタ12aの断面寸法よりも小さく、第1のインジェクタ11aは、第2のインジェクタ12aの内部に収容される。従って、第1の実施の形態と同様に、第1のインジェクタ11a及び第2のインジェクタ12aも、第1のインジェクタ11aを内管とし、第2のインジェクタ12aを外管とする二重管構造を有する。
【0065】
また、第1の実施の形態と同様に、第1のインジェクタ11aには、第1の原料ガスを吐出する第1の吐出口N1が第1のインジェクタ11aの長手方向に沿って複数設けられている。同様に、第2のインジェクタ12aにも、第2の原料ガスを吐出する第2の吐出口N2が、第2のインジェクタ12aの長手方向に沿って複数設けられている。また、各第1の吐出口N1と各第2の吐出口N2とは、1対1で対応しており、1つの第1の吐出口N1、及びその1つの第1の吐出口N1に対応する第2の吐出口N2は、第1のインジェクタ11a及び第2のインジェクタ12aの長手方向、すなわちチャンバー21の長手方向に沿った同一の位置に設けられている。
【0066】
また、図7に示すように、第1のインジェクタ11aの第1の吐出口N1、第2のインジェクタ12aの第2の吐出口N2が、近接して配置され、1つの第1の吐出口N1から吐出された第1の原料ガスの流路FL1は、対応する1つの第2の吐出口N2から吐出された第2の原料ガスの流路FL2と略同一になる。
【0067】
本変形例に係る成膜装置では、ガス加熱ヒータ13b、及び図示しない温度センサを、第1のインジェクタ11aを内部に収容する第2のインジェクタ12aの外部であって、第2のインジェクタ12aの近傍に設けることができる。ガス加熱ヒータ13b、及び図示しない温度センサを第2のインジェクタ12aの近傍に設けることにより、例えば200℃から1000℃の範囲で第1のインジェクタ11a内の第1の原料ガス及び第2のインジェクタ12a内の第2の原料ガスを加熱することができる。また、図7に示すように、第1のインジェクタ11a、第2のインジェクタ12a、ガス加熱ヒータ13bは、チャンバー21の下端においてL字状に横に曲げられた部分11b、12b、13cを有する。
【0068】
本変形例に係る成膜装置では、矩形断面を有する例えばメタル製(例えばSUS製、アルミニウム製)の管を用いてインジェクタを構成することができるため、製造コストを低減することができるとともに、インジェクタの配置及び構造の設計の自由度が増大する。
(第2の実施の形態)
次に、図8を参照し、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタの構成を模式的に示す横断面図である。
【0069】
本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタは、第1のインジェクタが第2のインジェクタの内部に収容されていない点で、第1の実施の形態と相違する。
【0070】
図8を参照するに、第1の実施の形態に係る成膜装置のインジェクタ10において、第1のインジェクタ11が第2のインジェクタ12の内部に収容されているのと相違し、本実施の形態に係る成膜装置のインジェクタ10cは、隣接する第1のインジェクタ11c及び第2のインジェクタ12cに仕切られている。
【0071】
インジェクタ10cの第1のインジェクタ11c及び第2のインジェクタ12cは、ともに矩形の断面形状を有する。第1のインジェクタ11c及び第2のインジェクタ12cは、図8に示すように、吐出口Nを基板側の側面に有し、矩形の断面形状を有するインジェクタ10cが、吐出口Nの近傍で連通する2部屋に仕切られてなる。第1の実施の形態と同様に、インジェクタ10cは、チャンバー21の長手方向に延在し、収容領域Sの全領域をカバーできるようになっている。
【0072】
インジェクタ10cには、長手方向に沿って略所定のピッチで複数の吐出口Nが形成されており、収容領域Sの全領域に対して水平方向で、かつ、基板が収容されているチャンバー21の中心に向けて第1の原料ガス及び第2の原料ガスを吐出して供給できるようになっている。図8に示す断面は、複数のうち1つの吐出口Nが設けられている位置におけるインジェクタ10cの長手方向に垂直な断面である。また、インジェクタ10cが仕切られてなる2つの部屋である第1のインジェクタ11c及び第2のインジェクタ12cのそれぞれには、各吐出口Nと対応する位置で、第1の吐出口N1、第2の吐出口N2が形成されている。すなわち、第1のインジェクタ11c及び第2のインジェクタ12cとは、第1の吐出口N1、第2の吐出口N2が形成されている位置で互いに連通している。
【0073】
本実施の形態では、第1のインジェクタ11cの第1の吐出口N1から吐出された第1の原料ガスは、図8の小円IIIで囲まれた領域を通り、吐出口Nを通ってインジェクタ10cから吐出される。また、第2のインジェクタ12cの第2の吐出口N2から吐出された第2の原料ガスも、図8の小円IIIで囲まれた領域を通り、吐出口Nを通ってインジェクタ10cから吐出される。また、第1の吐出口N1及び第2の吐出口N2は互いに近接している。従って、本実施の形態でも、1つの第1の吐出口N1から吐出された第1の原料ガスの流路FL1は、対応する1つの第2の吐出口N2から吐出された第2の原料ガスの流路FL2と略同一になる。また、第1の原料ガスの流路FL1及び第2の原料ガスの流路FL2が略同一となることにより、図8の小円IIIで囲まれた領域、特に吐出口Nの付近の狭い領域において、第1の原料ガスと第2の原料ガスとは混合する。従って、第1の原料ガス及び第2の原料ガスは、インジェクタからチャンバー内に供給される際に均一に混合されながら吐出される。
【0074】
本実施の形態では、インジェクタ10cがメタル製(例えばSUS製、アルミニウム製)の矩形の断面形状を有する管よりなるため、第1のインジェクタ11c、第2のインジェクタ12c、ガス加熱ヒータ13bは、チャンバー21の下端においてL字状に横に曲げられた部分11d、12d、13cを有する。
【0075】
本実施の形態では、第1のインジェクタを第2のインジェクタの内部に収容する構造を有していない。しかしながら、第1のインジェクタを第2のインジェクタと隣接させ、かつ、1つの第1の吐出口と、その1つの第1の吐出口に対応する1つの第2の吐出口とが近接するように設けることにより、第1の原料ガスの流路が第2の原料ガスの流路と略同一になる。その結果、第1の吐出口から吐出された第1の原料ガスを、インジェクタの近傍で第2の原料ガスと均一に混合してから基板に到達させることができ、基板表面に成膜する薄膜の膜質、膜厚を基板間及び基板面内で均一に揃えることができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、インジェクタが仕切られて第1のインジェクタ及び第2のインジェクタが設けられているため、第1のインジェクタ及び第2のインジェクタは一体に設けられているが、第1の吐出口と第2の吐出口が近接すればよく、第1のインジェクタ及び第2のインジェクタは別体で設けられてもよい。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、10a、10b、10c インジェクタ
11、11a、11c 第1のインジェクタ
11b、11d、12b、12d、13c 部分
12、12a、12c 第2のインジェクタ
13、13b ガス加熱ヒータ
14 温度センサ
15 温度コントローラ
16 電力供給部
20 成膜装置
21 チャンバー(反応容器)
22 ウェハボート
25 排気口
27 ヒータ
29 PMDA気化器
30 ODA気化器
31、32 バルブ
FL1 第1の原料ガスの流路
FL2 第2の原料ガスの流路
N 吐出口
N1 第1の吐出口
N2 第2の吐出口
S 収容領域
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内で第1の原料ガス及び第2の原料ガスを反応させ、基板表面に薄膜を成膜する成膜装置であって、
前記反応容器内に設けられ、前記反応容器内に第1の原料ガスを吐出する第1のインジェクタと、
前記反応容器内に設けられ、前記反応容器内に第2の原料ガスを吐出する第2のインジェクタと
を備え、
前記第1のインジェクタは、前記第1の原料ガスを前記基板に向けて吐出する複数の第1の吐出口が設けられ、
前記第2のインジェクタは、前記第2の原料ガスを前記基板に向けて吐出する複数の第2の吐出口が設けられ、
前記第1の吐出口から吐出された前記第1の原料ガスの流路が、対応する前記第2の吐出口から吐出された前記第2の原料ガスの流路と略同一であり、
前記第1の原料ガスは、前記第1の吐出口から吐出された後、前記基板に到達する前に、前記第2の原料ガスと混合されることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1のインジェクタは、前記第2のインジェクタの内部に収容されることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
互いに対応する前記第1の吐出口及び前記第2の吐出口は、前記反応容器の長手方向に垂直な同一の面に設けられることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第2のインジェクタの内部に収容されるヒータを備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2のインジェクタの外部に近接して配置されるヒータを備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ヒータは、前記第1の原料ガス及び前記第2の原料ガスを前記複数の基板の温度よりも高い温度に加熱することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219145(P2010−219145A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61586(P2009−61586)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】