説明

把持装置

【課題】基板上に実装されるワークを把持する把持装置において、接合に熱を必要とする接合部材を用いる場合の、基板とワークとの加熱による接合を可能とする。
【解決手段】ワーク30を把持する把持部材20a、20bに、供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換部25a、25bを設け、把持部材に供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換することで、接合に必要な熱を接合部材43a、43bへ与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上へ実装されるワークを把持する把持部材を有する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の把持装置としては、例えば、図11に示す、特許文献1(特開平2−24085号公報)記載のワーク把持フィンガーが挙げられる。図11は、従来の把持装置としての把持フィンガーの構成を示す斜視図である。図11に示すように、特許文献1記載のワーク把持フィンガー400は、ワークを把持するベース部材402が紫外光に透明な部材で形成されており、このベース部材402の紫外光入射部404以外を金属蒸着膜406で覆い、紫外光入射部404へは紫外光伝送用ファイバケーブル408が接続され、紫外光照射部410より紫外光を出射することでワークと被接着部材とを接合することを目的としている。
【0003】
【特許文献1】特開平2−24085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のワーク把持フィンガー400では、ワークと被接着部材との接合において、紫外光接着固定を目的としているため、接合に熱を必要とする接合部材(例えば、熱硬化型接着剤、半田、など)を用いる場合が考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述の問題点を考慮してなされたものであり、ワークを把持する把持部材に供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換部を設けることにより、把持部材に供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換することで接合に必要な熱を接合部材へ与えることを可能とし、接合に熱を必要とする接合部材を用いる場合の基板とワークとの接合において、加熱による接合を可能とする把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の把持装置は、基板上に実装されるワークを把持する把持装置において、ワークと接触し、供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換部を有する把持部材を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明の把持装置は、光の出射端を有し、その出射端は、把持部材の少なくとも一部と対向していることが好ましい。
【0008】
本発明の把持装置において、光の出射端は、把持部材に設けられた光熱変換部の少なくとも一部と対向していることが好ましい。
【0009】
本発明の把持装置において、把持部材は、出射端から出射された光を光熱変換部へ伝搬させる光供給部材を備えていてもよい。
【0010】
本発明の把持装置において、上記光は、レーザ光であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる把持装置は、ワークを把持する把持部材に供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換部を設け、把持部材に供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換することで接合に必要な熱を接合部材へ与え、基板とワークとの接合において加熱による接合を可能とする把持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる把持装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1から図6を参照しつつ、第1の実施形態に係る把持装置について説明する。図1は把持装置10の概観構成を示す斜視図である。
【0013】
把持装置10はワーク30と接触する把持部材20a、20bと、把持部材を駆動する把持部材駆動部11と、により構成されている。把持部材20a、20bは把持部材駆動部11により開閉が可能な構成となっている。把持部材20a、20bの形状は四角柱状、棒状などであってもよい。また、把持部材20a、20bの材質例としては、リン青銅、タングステン、ステンレス鋼などが挙げられる。さらに、把持部材20a、20bの開閉方式については、例えば、一方の把持部材が固定された開閉方式、把持部材20a、20bが図示しない支点を中心に開閉する開閉方式、把持部材20a、20bが把持装置10の中心軸に対して並行に移動開閉する開閉方式などが挙げられる。
【0014】
また、把持部材20a、20bには光熱変換部25a、25bが設けられている。この光熱変換部25a、25bには、把持部材20a、20bとは別個に設けられた、レーザ光供給部材としてのレーザ光源50a、50bの出射端から出射されるレーザ光52a、52bが照射される。すなわち、レーザ光52a、52bの出射端が、少なくとも、把持部材20a、20bのうちの光熱変換部25a、25bに対向している。
【0015】
図2は把持部材20aの構成を示す斜視図、図3は把持部材20aの構成を示す側面図である。図4は、黒体処理した光熱変換部26aを備えた把持部材20aの構成を示す斜視図、図5は、黒体処理した光熱変換部26aを備えた把持部材20aの構成を示す側面図である。
【0016】
光熱変換部25a、25bは、レーザ光52a、52bの光波長に対して高い光吸収率を有しており、光熱変換部25a、25bにレーザ光52a、52bが照射されると光熱変換部25a、25bの光吸収が行われるとともに、吸収した光エネルギーにより光熱変換部25a、25b周辺の原子運動が活発になることで、光エネルギーが熱エネルギーに変換され、把持部材20a、20bの温度が上昇する。
【0017】
光熱変換部25a、25bは、例えば、黒体処理を施した光熱変換部とすると、光吸収率をさらに向上させることができる。黒体処理は耐熱性を有する黒色の塗料を塗布するなどにより形成される。光熱変換部25aに黒体処理を施した光熱変換部26a(図4、図5)では、供給した光エネルギーをより効率的に熱エネルギーに変換することができる。光熱変換部25aは、把持部材20aの少なくとも一部に形成されているが、把持部材20a全体が光熱変換機能を有しても構わない。なお、把持部材20bにおける光熱変換部25bも、光熱変換部26aと同様に、黒体処理した光熱変換部とすることができる。
【0018】
図6は把持装置を用いたワーク実装の様子を示した斜視図である。基板40上には電極42a、42bが設けられ、さらに、電極42a、42b上には、ワーク30と電極42a、42bとを接合する接合部材43a、43bが設けられている。
【0019】
基板40としては、例えば、ガラスエポキシ基板をはじめとする樹脂基板、セラミック基板、Si基板、ガラス基板などが挙げられる。電極42a、42bとしては、例えば、アルミ、銅、金などの材質が用いられる。また、接合部材43a、43bとしては例えば熱硬化型接着剤や半田などが挙げられる。
【0020】
ワーク30は、把持部材駆動部11により駆動された把持部材20a、20bの開閉動作により把持され、接合部材43a、43b上に搭載される。その後、光熱変換部25a、25bにレーザ光52a、52bが照射されるとレーザ光の光エネルギーが熱エネルギーに変換され、把持部材20a、20bの温度が上昇する。この温度上昇に伴い、把持部材20a、20bからワーク30を介して熱が接合部材43a、43bへ伝わり、接合部材43a、43bが溶融、あるいは、硬化することによりワーク30が基板40に接合される。
【0021】
第1の実施形態に係る把持装置10によれば、接合に、熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板40とワーク30との加熱接合が可能となる。さらに、把持部材20a、20bが照射するレーザ光52a、52bに対する光吸収率を有しているため、レーザ光52a、52bの光エネルギーを効率よく熱エネルギーに変換することが可能となる。したがって、基板上に実装されるワークを把持する把持装置において、把持装置にはワークと接触する把持部材が設けられ、把持部材は光熱変換機能を備えた光熱変換部を有することから、把持部材のうち、光熱変換部に照射されたレーザ光の光エネルギーが熱エネルギーに変換されることにより把持部材の温度を上昇させることが可能となる。これにより、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板とワークとの加熱接合が可能となる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、図7、図8を参照しつつ、第2の実施形態に係る把持装置110について説明する。図7は、第2の実施形態に係る把持装置110の把持部材120aの構成を示す斜視図である。図8は、把持装置110の把持部材120aの構成を示す側面図である。
【0023】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態のレーザ光源50a、50bに代えて、光ファイバを備えた点が異なる。なお、第1の実施形態に係る把持装置10と同様に、第2の実施形態に係る把持装置110も一対の把持部材を備える。また、第1の実施形態に係る把持部材20a、20bのように、把持装置110の把持部材においても一対の把持部材は互いに略対称な構成となっている。また、110では、第1実施形態のレーザ光源50a、50bと同様に、一対の把持部材のそれぞれに対応するように、光ファイバが設けられている。このため、以下の説明では一方の把持部材120a及び光ファイバ150aについて説明し、他方の把持部材及び光ファイバについての説明は省略する。
【0024】
把持部材120aには凹形状が2段となっている凹部126aが形成されている。この凹部126aは、把持部材120aの表面から凹設されている第1凹部127aと、第1凹部127aからさらに凹設されている第2凹部128aと、により構成されている。
【0025】
第2凹部128aの底面には、光熱変換部125aが設けられている。凹部126aは、レーザ光供給部材としての光ファイバ150aのレーザ光出射端151aが接続可能な構成となっており、光ファイバ150aは第1凹部127aにより位置決めされるとともに、光ファイバ150aが第1凹部127a底面に突き当たる構成となっている。すなわち、光ファイバ150aのレーザ光出射端151aが、少なくとも、把持部材120aのうちの光熱変換部125aに対向している。
【0026】
また、光ファイバ150aの開口数(NA値)から、光ファイバ150aのレーザ光出射端151aと光熱変換部125aとの距離を設定することにより、光ファイバ150aから出射されるレーザ光152aにおいて、第2凹部128aの底面の光熱変換部125aへ到達したときのレーザ光152aの断面積が光熱変換部125aの面積よりも小さい構成としている。
【0027】
第2の実施形態に係る把持装置110によれば、光ファイバ150aから出射されるレーザ光152aにおいて、第2凹部128aの底面へ到達したときのレーザ光152aの断面積が光熱変換部125aの面積よりも小さい構成となっているため、光ファイバ150aのレーザ光出射端151aから出射されたレーザ光152aの全てが光熱変換部125aに照射される。
【0028】
したがって、第2の実施形態に係る把持装置110によれば、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板40とワーク30との加熱接合が可能となる。さらに、第2凹部128aの底面へ到達したときのレーザ光152aの断面積を光熱変換部125aの面積よりも小さい構成としている。これにより、光ファイバ150aのレーザ光出射端151aから出射されたレーザ光152aの全てが光熱変換部125aに照射されるため、レーザ光152aの光エネルギーを効率よく熱に変換することが可能となる。したがって、本実施形態に係る把持装置は、レーザ光の出射端を有し、この出射端は、光熱変換機能を有する把持部材の少なくとも一部と対向しているため、レーザ光出射端から出射されたレーザ光が光熱変換部を有する把持部材に照射することが可能となる。これにより、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板とワークとの加熱接合が可能となるとともに、レーザ光を効率よく熱に変換することが可能となる。
【0029】
(第3の実施形態)
つづいて、図9、図10を参照しつつ、第3の実施形態に係る把持装置210について説明する。図9は、第3の実施形態に係る把持装置210の把持部材220aの構成を示す斜視図である。図10は、把持装置210の把持部材220aの構成を示す側面図である。
【0030】
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態のレーザ光源50a又は第2の実施形態の光ファイバ150aに代えて、レーザダイオード250aが設けられている点が異なる。なお、第1の実施形態に係る把持装置10と同様に、第3の実施形態に係る把持装置210も一対の把持部材を備える。また、第1の実施形態に係る把持部材20a、20bのように、把持装置210の把持部材においても一対の把持部材は互いに略対称な構成となっている。また、第1実施形態のレーザ光源50a、50bと同様に、一対の把持部材のそれぞれに対応するように、レーザダイオードが設けられている。このため、以下の説明では一方の把持部材220a及びレーザダイオード250aについて説明し、他方の把持部材及びレーザダイオードについての説明は省略する。
【0031】
把持部材220aには、第2の実施形態に係る把持部材120aと同様に、凹形状が2段となっている凹部226aが形成されている。この凹部226aは、把持部材220aの表面から凹設されている第1凹部227aと、第1凹部227aからさらに凹設されている第2凹部228aと、により構成されている。
【0032】
第2凹部228aの底面には、光熱変換部225aが設けられている。凹部226aの第1凹部227a内には、第2凹部228a側にレーザ光出射端としての下面が向くように、レーザダイオード250aが配置されている。この構成により、レーザダイオード250aから出射されるレーザ光252aが光熱変換部225aへ照射される。すなわち、把持部材220aは、レーザ光供給部材としてレーザダイオード250aを備えており、レーザダイオード250aのレーザ光出射端が、少なくとも、把持部材220aのうちの光熱変換部225aに対向している。
【0033】
また、レーザダイオード250aから出射されるレーザ光252aは、第2凹部228aの底面へ到達したときの断面積が光熱変換部225aの断面積よりも小さい構成となっており、レーザ光252aの全てが光熱変換部225aに照射される。
【0034】
なお、レーザダイオード250aはベアチップを用いてもよいし、パッケージ等に封止された状態のものを用いてもよい。また、レーザダイオード250aは、ガラスエポキシ基板などに一度実装した状態で配置してもよい。
【0035】
第3の実施形態の把持装置210によれば、レーザダイオード250aから出射されるレーザ光252aの全てが光熱変換部225aに照射される構成となっているため、光ファイバなどの光伝播部材を用いることなくレーザ光252aを光熱変換部225aへ照射することが可能となる。したがって、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板40とワーク30との加熱接合が可能となるとともに、光ファイバなどの光伝播部材を用いる必要がないので把持装置210を安価に作製することが可能となる。したがって、本実施形態の把持装置において、把持部材は光供給部材を有することにより、光ファイバなどの光伝播部材を用いることなくレーザ光を光熱変換部へ照射することが可能となる。これにより、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板とワークとの加熱接合が可能となるとともに、把持装置を安価に作製することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる把持装置は、基板上に微小なワークを接合する際に有用であり、接合に熱を必要とする接合部材として熱硬化型接着剤や半田などを用いた、基板とワークとの加熱接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態に係る把持装置の概観構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る把持部材の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る把持部材の構成を示す側面図である。
【図4】黒体処理した光熱変換部を備えた把持部材の構成を示す斜視図である。
【図5】黒体処理した光熱変換部を備えた把持部材の構成を示す側面図である。
【図6】第1の実施形態に係る把持装置を用いたワーク実装の様子を示した斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係る把持装置の把持部材の構成を示す斜視図である。
【図8】第2の実施形態に係る把持装置の把持部材の構成を示す側面図である。
【図9】第3の実施形態に係る把持装置の把持部材の構成を示す斜視図である。
【図10】第3の実施形態に係る把持装置の把持部材の構成を示す側面図である。
【図11】従来の把持装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 把持装置
11 把持部材駆動部
20a 把持部材
20b 把持部材
25a 光熱変換部
25b 光熱変換部
30 ワーク
40 基板
42a 電極
42b 電極
43a 接合部材
43b 接合部材
50a レーザ光源(光供給部材)
50b レーザ光源(光供給部材)
52a レーザ光
52b レーザ光
110 把持装置
120a 把持部材
125a 光熱変換部
126a 凹部
127a 第1凹部
128a 第2凹部
150a 光ファイバ(光供給部材)
151a レーザ光出射端(光供給部材)
210 把持装置
220a 把持部材
225a 光熱変換部
226a 凹部
227a 第1凹部
228a 第2凹部
250a レーザダイオード(光供給部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装されるワークを把持する把持装置において、
前記ワークと接触し、供給された光のエネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換部を有する把持部材を備えたことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記光の出射端を有し、前記出射端は、前記把持部材の少なくとも一部と対向していることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記出射端は、前記把持部材に設けられた前記光熱変換部の少なくとも一部と対向していることを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記把持部材は、前記出射端から出射された光を前記光熱変換部へ伝搬させる光供給部材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記光はレーザ光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−87415(P2010−87415A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257406(P2008−257406)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】