説明

操縦支援装置

【構成】カメラC_1〜C_4の各々は、車両に斜め下向きの姿勢で設けられて、車両の周辺の被写界を捉える。CPU12pは、カメラC_1〜C_4の各々から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換し、変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する。CPU12pはまた、抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出し、検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して警告のような操縦支援処理を実行する。
【効果】操縦支援のための負荷を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操縦支援装置に関し、特に、移動体に斜め下向きの姿勢で設けられて移動体の周辺の被写界を捉えるカメラから出力された被写界像に基づいて操縦者の操作を支援する、操縦支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例が、特許文献1に開示されている。この背景技術によれば、車両の前部に搭載されたカメラから出力された路面画像が、俯瞰変換ユニットによって俯瞰画像に変換される。強度プロファイル作成ユニットは、俯瞰画像に現れる路面の路幅方向における複数の位置で、路幅方向に直交する方向の輝度を積分する。レーンマーカ検出ユニットは、強度プロファイル作成ユニットによって検出された積分輝度の分布に基づいて、路面に設置されたレーンマーカの位置を検出する。これによって、車両がレーンから逸脱したときに速やかに警報を発生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−145852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、背景技術では、路幅方向における複数の位置で路幅方向に直交する方向の輝度を積分する必要があり、過負荷が懸念される。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、操縦支援のための負荷を低減することができる、操縦支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従う操縦支援装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、移動体(100)に斜め下向きの姿勢で設けられて移動体の周辺の被写界を捉える撮像手段(C_1~C_4)から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換する変換手段(S5)、変換手段によって変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する抽出手段(S15)、抽出手段によって抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を抽出手段によって抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出する検出手段(S17~S25)、および検出手段によって検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して操縦支援処理を実行する処理手段(S31, S35, S51, S53)を備える。
【0007】
好ましくは、操縦支援処理は操縦者に向けて警告を発生する警告処理(S35)を含む。
【0008】
好ましくは、操縦支援処理は特定角度情報を有する線を描くエッジを障害物検知のための判別対象から排除する排除処理(S53)を含む。
【0009】
好ましくは、検出手段は角度情報の分布状態を表すヒストグラムを作成する作成手段(S21)を含み、処理手段は作成手段によって作成されたヒストグラムを参照して操縦支援処理を実行する。
【0010】
好ましくは、撮像手段は各々が被写界像を出力する複数のカメラ(C_1~C_4)を含み、抽出手段の抽出処理のために注目するカメラを複数のカメラの間で循環的に更新する更新手段(S13, S39, S41)がさらに備えられる。
【0011】
この発明に従う操縦支援方法は、操縦支援装置(10)によって実行される操縦支援方法であって、移動体(100)に斜め下向きの姿勢で設けられて移動体の周辺の被写界を捉える撮像手段(C_1~C_4)から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換する変換ステップ(S5)、変換ステップによって変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する抽出ステップ(S15)、抽出ステップによって抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を抽出ステップによって抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出する検出ステップ(S17~S25)、および検出ステップによって検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して操縦支援処理を実行する処理ステップ(S31, S35, S51, S53)を備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、検出手段によって検出される角度情報は、直線を描くエッジ上の複数の位置が指定された場合に、互いに一致する。また、同じ角度情報の検出回数は、エッジによって描かれる直線の長さが増大するほど増大する。したがって、操縦支援処理は、基準に相当する長さを上回る長さを有する直線状の路面ペイントが撮像手段によって捉えられたときに実行される。また、エッジによって描かれる線の角度情報はエッジ上の複数の位置で検出され、操縦支援処理は検出回数が基準を上回る角度情報に対応して実行される。これによって、操縦支援のための負荷を低減することができる。
【0013】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)は車両の正面を眺めた状態を示す図解図であり、(B)は車両の右側面を眺めた状態を示す図解図であり、(C)は車両の背面を眺めた状態を示す図解図であり、(D)は車両の左側面を眺めた状態を示す図解図である。
【図4】車両に取り付けられた複数のカメラによって捉えられる視野の一例を示す図解図である。
【図5】(A)は前カメラの出力に基づく鳥瞰画像の一例を示す図解図であり、(B)は右カメラの出力に基づく鳥瞰画像の一例を示す図解図であり、(C)は左カメラの出力に基づく鳥瞰画像の一例を示す図解図であり、(D)は後カメラの出力に基づく鳥瞰画像の一例を示す図解図である。
【図6】図5(A)〜図5(D)に示す鳥瞰画像に基づく全周鳥瞰画像の一例を示す図解図である。
【図7】表示装置によって表示される操縦支援画像の一例を示す図解図である。
【図8】車両に取り付けられたカメラの角度を示す図解図である。
【図9】カメラ座標系と撮像面の座標系と世界座標系との関係を示す図解図である。
【図10】車両とその近傍の路面ペイントの一例を示す斜視図である。
【図11】全周鳥瞰図画像の他の一例を示す図解図である。
【図12】(A)は再現画像の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す再現画像に対応する差分画像の一部を示す図解図である。
【図13】図12(B)に示す差分画像上に定義された法線ベクトルの一例を示す図解図である。
【図14】角度方向に対する法線ベクトルの分布状態の一例を示すヒストグラムである。
【図15】図2実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図16】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【図17】図2実施例に適用されるCPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
【図18】他の実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図19】車両とその近傍の障害物および路面ペイントの一例を示す斜視図である。
【図20】全周鳥瞰図画像のその他の一例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[基本的構成]
図1を参照して、この発明の操縦支援装置は、基本的に次のように構成される。撮像手段1は、移動体に斜め下向きの姿勢で設けられて、移動体の周辺の被写界を捉える。変換手段2は、撮像手段1から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換する。抽出手段3は、変換手段2によって変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する。検出手段4は、抽出手段3によって抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を、抽出手段3によって抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出する。処理手段5は、検出手段4によって検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して操縦支援処理を実行する。
【0016】
したがって、検出手段4によって検出される角度情報は、直線を描くエッジ上の複数の位置が指定された場合に、互いに一致する。また、同じ角度情報の検出回数は、エッジによって描かれる直線の長さが増大するほど増大する。したがって、操縦支援処理は、基準に相当する長さを上回る長さを有する直線状の路面ペイントが撮像手段1によって捉えられたときに実行される。
【0017】
また、エッジによって描かれる線の角度情報はエッジ上の複数の位置で検出され、操縦支援処理は検出回数が基準を上回る角度情報に対応して実行される。これによって、操縦支援のための負荷を低減することができる。
[実施例]
【0018】
図2に示すこの実施例の操縦支援装置10は、4個のカメラC_1〜C_4を含む。カメラC_1〜C_4はそれぞれ、共通の垂直同期信号Vsyncに応答して、被写界像P_1〜P_4を1/30秒毎に出力する。出力された被写界像P_1〜P_4は、画像処理回路12によって取り込まれる。取り込まれた被写界像P_1〜P_4はそれぞれ、SDRAM12mのワークエリアF1〜F4に書き込まれる。
【0019】
図3(A)〜図3(D)を参照して、操縦支援装置10は、地面を走行する車両100に搭載される。具体的には、カメラC_1は、車両100の前方斜め下を向く姿勢で、車両100の前部のほぼ中央に設置される。カメラC_2は、車両100の右斜め下を向く姿勢で、車両100の右側の幅方向ほぼ中央でかつ高さ方向上側に設置される。
【0020】
カメラC_3は、車両100の後方斜め下を向く姿勢で、車両100の後部の幅方向ほぼ中央でかつ高さ方向上側に設置される。カメラC_4は、車両100の左斜め下を向く姿勢で、車両100の左側の幅方向ほぼ中央でかつ高さ方向上側に設置される。
【0021】
車両100とその周辺の地面とを鳥瞰した状態を図4に示す。図4によれば、カメラC_1は車両100の前方を捉える視野VW_1を有し、カメラC_2は車両100の右方向を捉える視野VW_2を有し、カメラC_3は車両100の後方を捉える視野VW_3を有し、そしてカメラC_4は車両100の左方向を捉える視野VW_4を有する。また、視野VW_1およびVW_2は共通視野VW_12を有し、視野VW_2およびVW_3は共通視野VW_23を有し、視野VW_3およびVW_4は共通視野VW_34を有し、そして視野VW_4およびVW_1は共通視野VW_41を有する。
【0022】
図2に戻って、画像処理回路12に設けられたCPU12pは、ワークエリアF1に格納された被写界像P_1に基づいて図5(A)に示す鳥瞰画像BEV_1を生成し、ワークエリアF2に格納された被写界像P_2に基づいて図5(B)に示す鳥瞰画像BEV_2を生成する。CPU12pはまた、ワークエリアF3に格納された被写界像P_3に基づいて図5(C)に示す鳥瞰画像BEV_3を生成し、ワークエリアF4に格納された被写界像P_4に基づいて図5(D)に示す鳥瞰画像BEV_4を生成する。鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4もまた、ワークエリアF1〜F4に格納される。
【0023】
鳥瞰画像BEV_1は視野VW_1を鉛直方向に見下ろす仮想カメラによって捉えられた画像に相当し、鳥瞰画像BEV_2は視野VW_2を鉛直方向に見下ろす仮想カメラによって捉えられた画像に相当する。また、鳥瞰画像BEV_3は視野VW_3を鉛直方向に見下ろす仮想カメラによって捉えられた画像に相当し、鳥瞰画像BEV_4は視野VW_4を鉛直方向に見下ろす仮想カメラによって捉えられた画像に相当する。
【0024】
図5(A)〜図5(D)によれば、鳥瞰画像BEV_1は鳥瞰座標系X1・Y1を有し、鳥瞰画像BEV_2は鳥瞰座標系X2・Y2を有し、鳥瞰画像BEV_3は鳥瞰座標系X3・Y3を有し、そして鳥瞰画像BEV_4は鳥瞰座標系X4・Y4を有する。
【0025】
CPU12pは続いて、鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4を互いに結合するべく、鳥瞰画像BEV_2〜BEV_4を鳥瞰画像BEV_1を基準として回転および/または移動させる。鳥瞰画像BEV_2〜BEV_4の座標は、図6に示す全周鳥瞰画像を描くように、ワークエリアF2〜F4上で変換される。
【0026】
図6において、重複エリアOL_12は共通視野VW_12を再現するエリアに相当し、重複エリアOL_23は共通視野VW_23を再現するエリアに相当する。また、重複エリアOL_34は共通視野VW_34を再現するエリアに相当し、そして重複エリアOL_41は共通視野VW_41を再現するエリアに相当する。
【0027】
さらに、固有エリアOR_1は視野VW1のうち共通視野VW_41およびVW_12を除く一部の視野を再現するエリアに相当し、固有エリアOR_2は視野VW2のうち共通視野VW_12およびVW_23を除く一部の視野を再現するエリアに相当する。また、固有エリアOR_3は視野VW3のうち共通視野VW_23およびVW_34を除く一部の視野を再現するエリアに相当し、固有エリアOR_4は視野VW4のうち共通視野VW_34およびVW_41を除く一部の視野を再現するエリアに相当する。
【0028】
車両100の運転席に設置された表示装置14は、重複エリアOL_12〜OL_41が四隅に位置する区画BK1を定義し、定義された区画BLK1に属する一部の鳥瞰画像をワークエリアF1〜F4の各々から読み出す。表示装置14はさらに、読み出された鳥瞰画像を互いに結合し、これによって得られた全周鳥瞰画像の中央に車両100の上部を模したグラフィック画像G1を貼り付ける。この結果、図7に示す操縦支援画像がモニタ画面に表示される。
【0029】
次に、鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4の作成要領について説明する。ただし、鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4はいずれも同じ要領で作成されるため、鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4を代表して鳥瞰画像BEV3の作成要領を説明する。
【0030】
図8を参照して、カメラC_3は車両100の後部に後方斜め下向きに配置される。カメラC_3の俯角を“θd”とすると、図8に示す角度θは“180°−θd”に相当する。また、角度θは、90°<θ<180°の範囲で定義される。
【0031】
図9は、カメラ座標系X・Y・Zと、カメラC_3の撮像面Sの座標系Xp・Ypと、世界座標系Xw・Yw・Zwとの関係を示す。カメラ座標系X・Y・Zは、X軸,Y軸およびZ軸を座標軸とする三次元の座標系である。座標系Xp・Ypは、Xp軸およびYp軸を座標軸とする二次元の座標系である。世界座標系Xw・Yw・Zwは、Xw軸,Yw軸およびZw軸を座標軸とする三次元の座標系である。
【0032】
カメラ座標系X・Y・Zでは、カメラC3の光学的中心を原点Oとして、光軸方向にZ軸が定義され、Z軸に直交しかつ地面に平行な方向にX軸が定義され、そしてZ軸およびX軸に直交する方向にY軸が定義される。撮像面Sの座標系Xp・Ypでは、撮像面Sの中心を原点として、撮像面Sの横方向にXp軸が定義され、撮像面Sの縦方向にYp軸が定義される。
【0033】
世界座標系Xw・Yw・Zwでは、カメラ座標系XYZの原点Oを通る鉛直線と地面との交点を原点Owとして、地面と垂直な方向にYw軸が定義され、カメラ座標系X・Y・ZのX軸と平行な方向にXw軸が定義され、そしてXw軸およびYw軸に直交する方向にZw軸が定義される。また、Xw軸からX軸までの距離は“h”であり、Zw軸およびZ軸によって形成される鈍角が上述の角度θに相当する。
【0034】
カメラ座標系X・Y・Zにおける座標を(x,y,z)と表記した場合、“x”,“y”および“z”はそれぞれ、カメラ座標系X・Y・ZにおけるX軸成分,Y軸成分およびZ軸成分を示す。撮像面Sの座標系Xp・Ypにおける座標を(xp,yp)と表記した場合、“xp”および“yp”はそれぞれ、撮像面Sの座標系Xp・YpにおけるXp軸成分およびYp軸成分を示す。世界座標系Xw・Yw・Zwにおける座標を(xw,yw,zw)と表記した場合、“xw”,“yw”および“zw”はそれぞれ、世界座標系Xw・Yw・ZwにおけるXw軸成分,Yw軸成分およびZw軸成分を示す。
【0035】
カメラ座標系X・Y・Zの座標(x,y,z)と世界座標系Xw・Yw・Zwの座標(xw,yw,zw)との間の変換式は、数1で表される。
【数1】

【0036】
ここで、カメラC_3の焦点距離を“f”とすると、撮像面Sの座標系Xp・Ypの座標(xp,yp)とカメラ座標系X・Y・Zの座標(x,y,z)との間の変換式は、数2で表される。
【数2】

【0037】
また、数1および数2に基づいて数3が得られる。数3は、撮像面Sの座標系Xp・Ypの座標(xp,yp)と二次元地面座標系Xw・Zwの座標(xw,zw)との間の変換式を示す。
【数3】

【0038】
また、図5(C)に示す鳥瞰画像BEV_3の座標系である鳥瞰座標系X3・Y3が定義される。鳥瞰座標系X3・Y3は、X3軸及びY3軸を座標軸とする二次元の座標系である。鳥瞰座標系X3・Y3における座標を(x3,y3)と表記した場合、鳥瞰画像BEV_3を形成する各画素の位置は座標(x3,y3)によって表される。“x3”および“y3”はそれぞれ、鳥瞰座標系X3・Y3におけるX3軸成分およびY3軸成分を示す。
【0039】
地面を表す二次元座標系Xw・Zwから鳥瞰座標系X3・Y3への投影は、いわゆる平行投影に相当する。仮想カメラつまり仮想視点の高さを“H”とすると、二次元座標系Xw・Zwの座標(xw,zw)と鳥瞰座標系X3・Y3の座標(x3,y3)との間の変換式は、数4で表される。仮想カメラの高さHは予め決められている。
【数4】

【0040】
さらに、数4に基づいて数5が得られ、数5および数3に基づいて数6が得られ、そして数6に基づいて数7が得られる。数7は、撮像面Sの座標系Xp・Ypの座標(xp,yp)を鳥瞰座標系X3・Y3の座標(x3,y3)に変換するための変換式に相当する。
【数5】

【数6】

【数7】

【0041】
撮像面Sの座標系Xp・Ypの座標(xp,yp)は、カメラC_3によって捉えられた被写界像P_3の座標を表す。したがって、カメラC3からの被写界像P_3は、数7を用いることによって鳥瞰画像BEV_3に変換される。実際には、被写界像P_3はまずレンズ歪み補正などの画像処理を施され、その後に数7によって鳥瞰画像BEV_3に変換される。
【0042】
横断歩道のような路面ペイント200が図10に示す要領で車両100の周辺の地面に描かれている場合には、図11に示す全周鳥瞰画像が上述の区画BK1に対応して作成される。
【0043】
以下の説明では、図11に示す全周鳥瞰画像のうち、図6に示す固有エリアOR_1に対応して再現される一部の画像を“再現画像REP_1”と定義し、図6に示す固有エリアOR_2に対応して再現される一部の画像を“再現画像REP_2”と定義する。同様に、図11に示す鳥瞰画像のうち、図6に示す固有エリアOR_3に対応して再現される一部の画像を“再現画像REP_3”と定義し、図6に示す固有エリアOR_4に対応して再現される一部の画像を“再現画像REP_4”と定義する。
【0044】
画像処理回路12では、垂直同期信号Vsyncに応答して変数Mが“1”〜“4”の各々に設定され、各々の数値に対応して以下の処理が実行される。
【0045】
まず、再現画像REP_Mのフレーム間差分を表す差分画像DEF_Mが、差分算出処理によって作成される。この結果、図12(A)に示す再現画像REP_2については、図12(B)に示す差分画像DEF_2が作成される。
【0046】
車両100が動いているときは、前フレームの差分画像REP_Lと現フレームの差分画像REP_Lとの間で車両100の動きを考慮した位置合わせを行う位置合わせ処理が、差分算出処理に先立って実行される。したがって、路面ペイント200のような平面的な模様を表す鳥瞰画像は、原理的には、位置合わせ処理によってフレーム間で互いに一致する。しかし、実際には、鳥瞰画像への変換処理の誤差やフレーム間の位置合わせの誤差が生じるため、路面ペイント200のエッジ(輪郭)に相当する高輝度成分が差分画像DEF_2に現れる。
【0047】
続いて、差分画像DEF_Mに現れたエッジ上のある座標が指定され、指定座標に法線ベクトルが割り当てられる。法線ベクトルは、指定座標においてエッジを描く線と直交するベクトルであり、エッジを描く線の指定座標における角度情報に相当する。座標指定および法線ベクトルの割り当ては、エッジ上の複数の座標に注目して実行される。したがって、図12(B)に示す差分画像DEF_2については、図13に示す要領で複数の法線ベクトルが割り当てられる。
【0048】
こうして割り当てられた法線ベクトルの角度方向における分布状態は、ヒストグラムによって表現される。図13に示すように法線ベクトルが割り当てられた場合、ヒストグラムは図14に示す特性を示す。図14によれば、法線ベクトルの割り当て回数は、路面ペイントのエッジを描く2つの直線にそれぞれ対応する2つの角度で急激に増大する。
【0049】
ヒストグラムが完成すると、角度θ_N(N:1,2,…Nmax)に対応する法線ベクトルの割り当て回数が“T_N”として検出される。検出された割り当て回数T_Nは基準値REFと比較され、T_N>REFとなる角度θ_Nが検出されると、操縦支援処理のために警告がスピーカ16から発生される。なお、角度θ_Nおよびθ_N−1の差分はたとえば1°に相当する。
【0050】
CPU12pは、具体的には図15に示す画像作成タスクおよび図16〜図17に示す路面ペイント検知タスクを含む複数のタスクを並列的に実行する。なお、これらのタスクに対応する制御プログラムは、フラッシュメモリ18(図2参照)に記憶される。
【0051】
図15を参照して、垂直同期信号Vsyncが発生するとステップS1からステップS3に進み、カメラC_1〜C_4から被写界像P_1〜P_4をそれぞれ取り込む。取り込まれた被写界像P_1〜P_4はそれぞれ、ワークエリアF1〜F4に格納される。ステップS5では、取り込まれた被写界像P_1〜P_4に基づいて鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4を作成する。ステップS7では、鳥瞰画像BEV_2〜BEV_4に座標変換を施し、鳥瞰画像BEV_1〜BEV_4を互いに結合する。表示装置16のモニタ画面には、座標変換によって結合された全周鳥瞰画像の一部とこれに多重されたグラフィック画像G1が、操縦支援画像として表示される。ステップS7の処理が完了すると、ステップS1に戻る。
【0052】
図16を参照して、ステップS11では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別する。判別結果がNOからYESに更新されると、ステップS13で変数Mを“1”に設定する。ステップS15では、前フレームの再現画像REP_Mと現フレームの差分画像REP_Mとの差分を表す差分画像DEF_Mを作成するべく、差分算出処理を実行する。差分画像DEF_Mには、カメラC_Mで捉えられた物体のエッジ(輪郭成分)に相当する高輝度成分が現れる。
【0053】
ステップS17では差分画像DEF_Mに現れたエッジ上のある座標を指定し、ステップS19では指定座標に法線ベクトルを割り当てる。ステップS21では、ステップS19で割り当てられた法線ベクトルの角度を参照してヒストグラムを作成ないし更新する。作成ないし更新されたヒストグラムは、角度方向における法線ベクトルの割り当て回数の分布状態を示す。
【0054】
ステップS23では、エッジ上での座標指定が完了したか否かを判別する。判別結果がNOであれば、ステップS25でエッジ上の他の座標を指定し、その後にステップS19に戻る。判別結果がYESであれば、ステップS27に進む。したがって、ステップS19〜S21の処理はエッジ上の複数の座標に注目して実行される。
【0055】
ステップS27では、変数Nを“1”に設定する。ステップS29では、ヒストグラムを参照して、角度θ_Nに対応する法線ベクトルの割り当て回数を“T_N”として検出する。ステップS31では検出された割り当て回数T_Nが基準値REFを上回るか否かを判別し、ステップS33では変数Nが最大値Nmaxに達したか否かを判別する。
【0056】
ステップS31でYESであればステップS35に進み、操縦支援処理のために警告をスピーカ16から発生する。ステップS35の処理が完了すると、ステップS39に進む。ステップS31でNOでかつステップS33でYESであれば、そのままステップS39に進む。ステップS31およびS33のいずれもNOであれば、ステップS37で変数Nをインクリメントし、その後にステップS29に戻る。なお、変数Nのインクリメントによって、角度θ_Nはたとえば1°増大する。
【0057】
ステップS39では変数Mが“4”に達したか否かを判別し、YESであればそのままステップS11に戻る一方、NOであればステップS41で変数MをインクリメントしてからステップS15に戻る。
【0058】
以上の説明から分かるように、カメラC_1〜C_4の各々は、車両100に斜め下向きの姿勢で設けられて、車両100の周辺の被写界を捉える。CPU12pは、カメラC_1〜C_4の各々から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換し(S5)、変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する(S15)。CPU12pはまた、抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出し(S17~S25)、検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して警告のような操縦支援処理を実行する(S31, S35)。
【0059】
したがって、検出される角度情報は、直線を描くエッジ上の複数の位置が指定された場合に、互いに一致する。また、同じ角度情報の検出回数は、エッジによって描かれる直線の長さが増大するほど増大する。したがって、操縦支援処理は、基準に相当する長さを上回る長さを有する直線状の路面ペイントがカメラC_1〜C_4のいずれかによって捉えられたときに実行される。
【0060】
また、エッジによって描かれる線の角度情報はエッジ上の複数の位置で検出され、操縦支援処理は検出回数が基準を上回る角度情報に対応して実行される。これによって、操縦支援処理にかかる負荷を低減することができる。
【0061】
なお、この実施例では、直線で描かれた路面ペイントとして横断歩道を想定しているが、路面ペイントとしては、高速道路のレーンマーカや駐車場の駐車スペースマーカなども想定できる。
【0062】
また、この実施例では、スピーカを利用して可聴的に警告を発生するようにしているが、モニタ画面を利用して可視的に警告を発生するようにしてもよい。
【0063】
さらに、この実施例では、操縦を支援するために警告の発生するようにしているが、立体的な障害物の検知精度を確保するために、直線状の路面ペイントを表す画像のエッジを障害物の検知のための判別対象から排除する処理を操縦支援処理として実行するようにしてもよい。この場合、好ましくは、図17に示す処理に代えて図18に示す処理が実行される。
【0064】
なお、図18に示す処理のうち図17に示す処理と同じ処理には同じステップ番号を割り当て、重複した説明は極力省略する。また、鳥瞰画像に基づいて障害物を検知する処理には公知技術を採用することとし、障害物検知処理に関する詳細な説明は省略する。
【0065】
図18を参照して、ステップS31でYESであれば、角度θ_Nをレジスタ(図示せず)に設定する。ステップS33でYESと判別されるとステップS53に進み、レジスタに設定された角度に対応するエッジ成分を障害物検知のための判別対象から排除する。このような処理が、操縦支援処理に相当する。操縦支援処理が完了すると、ステップS39に進む。
【0066】
この結果、図19に示すように障害物300が車両100の周辺に存在する場合に、障害物300を表す画像を図20に示す鳥瞰画像から高精度で検知することができる。
【0067】
上述の実施例に関する注釈事項を以下に示す。この注釈事項は、矛盾がない限り、上述の実施例に任意に組み合わせることが可能である。
【0068】
実施例で述べたような撮影画像から鳥瞰画像を生成する座標変換は、一般に透視投影変換と呼ばれる。この透視投影変換を用いるのではなく、公知の平面射影変換によって撮影画像から鳥瞰画像を生成するようにしてもよい。平面射影変換を用いる場合、撮影画像上の各画素の座標値を鳥瞰画像上の各画素の座標値に変換するためのホモグラフィ行列(座標変換行列)をカメラ校正処理の段階で予め求めておく。ホモグラフィ行列の求め方は公知である。そして、画像変換を行う際に、ホモグラフィ行列に基づいて撮影画像を鳥瞰画像に変換すればよい。いずれにせよ、撮影画像を鳥瞰画像上に投影することによって撮影画像が鳥瞰画像に変換される。
【符号の説明】
【0069】
10 …操縦支援装置
C_1〜C_4 …カメラ
12 …画像処理回路
12p …CPU
12m …SDRAM
14 …表示装置
16 …スピーカ
16 …フラッシュメモリ
100 …車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に斜め下向きの姿勢で設けられて前記移動体の周辺の被写界を捉える撮像手段から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換する変換手段、
前記変換手段によって変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する抽出手段、
前記抽出手段によって抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を前記抽出手段によって抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出する検出手段、および
前記検出手段によって検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して操縦支援処理を実行する処理手段を備える、操縦支援装置。
【請求項2】
前記操縦支援処理は操縦者に向けて警告を発生する警告処理を含む、請求項1記載の操縦支援装置。
【請求項3】
前記操縦支援処理は前記特定角度情報を有する線を描くエッジを障害物検知のための判別対象から排除する排除処理を含む、請求項1または2記載の操縦支援装置。
【請求項4】
前記検出手段は前記角度情報の分布状態を表すヒストグラムを作成する作成手段を含み、
前記処理手段は前記作成手段によって作成されたヒストグラムを参照して前記操縦支援処理を実行する、請求項1ないし3のいずれかに記載の操縦支援装置。
【請求項5】
前記撮像手段は各々が前記被写界像を出力する複数のカメラを含み、
前記抽出手段の抽出処理のために注目するカメラを前記複数のカメラの間で循環的に更新する更新手段をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の操縦支援装置。
【請求項6】
操縦支援装置によって実行される操縦支援方法であって、
移動体に斜め下向きの姿勢で設けられて前記移動体の周辺の被写界を捉える撮像手段から出力された被写界像を鳥瞰画像に変換する変換ステップ、
前記変換ステップによって変換された鳥瞰画像からエッジを抽出する抽出ステップ、
前記抽出ステップによって抽出されたエッジによって描かれる線の角度情報を前記抽出ステップによって抽出されたエッジ上の複数の位置に対応して検出する検出ステップ、および
前記検出ステップによって検出された角度情報のうち検出回数が基準を上回る特定角度情報に対応して操縦支援処理を実行する処理ステップを備える、操縦支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−245802(P2010−245802A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91778(P2009−91778)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】