説明

放射線治療システム

【課題】放射線治療システムにおいて、治療台の干渉を回避して安全性を向上させると共に、治療効率を向上させること。
【解決手段】放射線治療システム10は、治療用放射線を照射する照射ノズル11と、多関節ロボットで構成され且つ患者を乗せて照射ノズル11から照射される治療用放射線の照射位置に患者13の患部を位置決めする治療台12と、照射ノズル11及び治療台12を制御する制御部と、制御部に制御信号を入力する操作装置20と、操作装置20の操作者19の位置を検出する位置検出手段を備える。制御部は、位置検出手段で検出した操作者19の位置を基に当該操作者19との干渉を回避する移動経路を算出する経路算出装置42と、経路算出手段で算出した移動経路を基に治療台12の移動を制御する治療台制御装置42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を用いて治療を行う放射線治療システムに係り、特に移動可能な治療台を備えた放射線治療システムに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、がん等の腫瘍(患部)に治療用放射線を照射して腫瘍を死滅させる治療であり、腫瘍周辺の正常細胞を破壊しないためにも、腫瘍に治療用放射線を高精度に照射することが求められる。そこで、治療用放射線の照射位置と患部位置とが一致するように、多自由度な位置決めが可能な治療台を動かして位置決めを行っている。
【0003】
また、最近では、患部位置を正確に確認したり、治療効率を向上させたりするために、放射線ノズルの近傍にCT(Computerized Tomography)装置を設置して、患部位置の確認から治療までの一連の作業を、患者を治療台に乗せたまま行うことが考えられている。この場合、治療台は広い可動範囲が必要となるため、多関節ロボット(アーム型ロボット)の適用が考えられている。
【0004】
従来、多関節ロボットは溶接作業などに用いられており移動開始位置と目標位置が決まっていることが多いため、オペレータが周辺装置との干渉をチェックしながら多関節ロボットを直接操作して(ティーチング作業)、移動経路データを作成している(従来技術1)。
【0005】
また、目標位置が複数ありティーチング作業が膨大になる場合には、特開平10−83212号公報(特許文献1)に記載されているように、周辺機器との干渉を退避する移動経路を複数用意しておき、状況に応じた退避パターンを選択する方法が知られている(従来技術2)。
【0006】
また、特開2006−21287号公報(特許文献2)に記載されているように、多関節ロボットに力検出器を設けて、周辺機器などとの接触を検知した時に、回避動作を行う方法が知られている(従来技術3)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−83212号公報
【特許文献2】特開2006−21287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術1においては、作業前にあらかじめ移動経路を作成するため、移動経路を作成した後に、干渉の対象物に変化があった場合には、干渉を回避することができない、という課題があった。
【0009】
また、従来技術2(特許文献1)によれば、複数の干渉退避パターンが用意されており、状況に応じて退避パターンを選択して干渉を回避できるものの、多関節ロボットの可動範囲内の干渉対象物の位置などの状況変化が多数ある場合には、全ての状況に応じて干渉退避パターンを作成するには、膨大な作業量となってしまう、という課題があった。
【0010】
また、従来技術3(特許文献2)によれば、人などに接触した場合に接触力を検出して、接触力が低減する方向に回避動作を行うものの、あらかじめ人などの位置を検出して接触を回避する経路を作成することができないので、接触するたびに多関節ロボットが停止してしまって作業効率が低下してしまう、という課題があった。
【0011】
本発明の目的は、治療台の干渉を回避し安全性を向上させると共に、治療効率を向上させることができる放射線治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様は、治療用放射線を照射する照射ノズルと、多関節ロボットで構成され且つ患者を乗せて前記照射ノズルから照射される治療用放射線の照射位置に前記患者の患部を位置決めする治療台と、前記照射ノズル及び前記治療台を制御する制御部と、前記制御部に制御信号を入力する操作装置とを備えた放射線治療システムにおいて、前記操作装置の操作者の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記制御部は、前記位置検出手段で検出した前記操作者の位置を基に当該操作者との干渉を回避する移動経路を算出する経路算出装置と、前記経路算出装置で算出した移動経路を基に前記治療台の移動を制御する治療台制御装置とを備えたことにある。
【0013】
また、前述の目的を達成するための本発明の第2の態様は、治療用放射線を照射する照射ノズルと、多関節ロボットで構成され且つ患者を乗せて前記照射ノズルから照射される治療用放射線の照射位置に前記患者の患部を位置決めする治療台と、前記照射ノズル及び前記治療台を制御する制御部と、前記制御部に制御信号を入力する操作装置とを備えた放射線治療システムにおいて、前記操作装置の位置を検出する位置検出手段を備え、前記制御部は、前記位置検出手段で検出した前記操作装置の位置を基に当該操作装置との干渉を回避する移動経路を算出する経路算出装置と、前記経路算出装置で算出した移動経路を基に前記治療台の移動を制御する治療台制御装置とを備えたことにある。
【0014】
係る本発明の第1または第2の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記位置検出手段は、前記操作者または前記操作装置に装着した送信機と、前記送信機からの電波を受信する複数の受信機と、前記複数の受信機で自身したデータを基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する位置算出装置とからなること。
(2)前記位置検出手段は、前記操作者または前記操作装置を撮影するテレビカメラと、前記テレビカメラで撮影した画像を基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する画像処理装置とからなること。
(3)前記位置検出手段は、電波を発する無線タグと、前記無線タグの電波を受信する受信機とからなる非接触識別装置で構成されていること。
(4)前記位置検出手段は、前記操作者の体重を検出するように床面に設置された複数の力センサと、前記力センサで検出したデータを基に前記操作者の位置を算出する位置算出装置とからなること。
(5)前記位置検出手段は前記操作者が前記操作装置から入力した位置情報を基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する位置算出装置からなること。
(6)経路算出装置は、前記治療台の移動範囲に設定された侵入禁止領域を除いて前記移動経路を算出すること。
(7)前記位置検出手段は前記治療台の移動中も前記操作者または前記操作装置の移動を検出し、前記経路算出装置は前記位置検出手段で検出した前記操作者または前記操作装置の位置を基に前記治療台の移動中に当該操作者または当該操作装置との干渉を回避することが必要な場合に新たな移動経路を算出し、前記治療台制御装置は前記経路算出装置で算出した新たな移動経路を基に前記治療台の移動を制御すること。
(8)前記経路算出装置で算出した前記治療台の移動経路から前記治療台とその周辺機器との干渉をチェックするシミュレータを備えたこと。
(9)前記操作装置または前記治療台の周辺に、前記経路算出装置で算出した前記治療台の移動経路を表示するディスプレイを備えたこと。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放射線治療システムによれば、治療台の干渉を回避して安全性を向上させると共に、治療効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の放射線治療システムの複数の実施形態について、図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は、同一物または相当物を示す。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の陽子線治療システムを図1から図3を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態の陽子線治療システム10の構成を示す平面図、図2は図1の治療台12の斜視図、図3は図1の陽子線治療システム10のブロック図である。
【0017】
本実施形態の陽子線治療システム10は、図1及び図3に示すように、照射ノズル11、治療台12、この治療台12の操作装置20、CT装置21、電波の送信機24、その受信機25、26、治療台制御装置40、位置算出装置41、経路算出装置42、治療計画装置43、周辺機器データベース44、患者データベース45、照射制御装置49、回転ガントリ50などを主要構成要素として備えている。治療台制御装置40、経路算出装置42、治療計画装置43及び照射制御装置49は、陽子線治療システム10の照射ノズル11、治療台12、CT装置21及び回転ガントリ50などを制御する制御部を構成している。制御部は1つのマイコンで構成されている。このマイコンには、位置算出装置41も備えている。
【0018】
また、壁面16で仕切られた治療室28内には、患者13を治療台12に固定するための治具を患者13に装着したり患部の粗位置決めを行ったりするセッティングスペース22と、患者13の患部周辺の3D画像を取得するためのCT装置21とが設置されている。治療室28には、出入口17、18が設けられている。セッティングスペース22内には、セッティング装置や治具23などが配備されている。
【0019】
照射ノズル11は、陽子線を患者13の患部に照射するためのものであり、回転ガントリ50に設置され、照射ノズルの回転方向15に示すように、患者の周りを回転できるよう配置されている。回転ガントリ50を回転することによって、照射ノズル11の陽子線を患者13の全周囲から照射できる。
【0020】
治療台12は、図2に示すように、6つの関節30〜35を有する多関節ロボットであり、天板14に患者13を乗せて照射ノズル11から照射される陽子線の照射位置に患者13の患部を位置決めできるように構成されている。治療台12は、治療室28内の中央部に固定されたベース12Aを中心にして、天板14を、平面的に360度回転させたり、上下に移動させたり、ベース12Aから離したり近づけたりさせることが可能である。また、治療台12の可動範囲27は図1の点線で示す範囲内に設定されている。従って、天板14はセッティングスペース22、CT装置21、照射ノズル11の各治療位置の間を移動できる。
【0021】
治療台12の操作装置20は、操作者19の入力操作46により制御部に制御信号を入力し、治療台12を任意の位置に移動させるためのものである。この制御信号は、経路算出信号42に入力される。
【0022】
電波の送信機24は治療台12を操作する操作者19に装着されている。複数の受信機25、26は、治療室壁16の壁面の異なった位置に設置され、送信機24から発信された電波や超音波47、48を受信する。
【0023】
位置算出装置41は、複数の受信機25、26から受け取ったデータを基に、送信機24(換言すれば、操作者19)の位置を算出する。例えば、受信機25、26で受信した電波強度を距離に変換して、三角測量の原理で送信機24の位置を算出する。位置算出装置41、複数の受信機25、26、送信機24は、位置検出手段を構成している。
【0024】
経路算出装置42は、周辺機器データベース44のデータ、位置算出装置41で算出した送信機24の位置データ、及びその他の各種データを基に、干渉チェックを行うとともに、治療台12の移動経路を算出して治療台制御装置40に送る。
【0025】
治療計画装置43は、治療前に取得した患者13の透視画像や診断結果などのデータを格納した患者データベース45から必要なデータを取出し、陽子線の照射回数や方向などを治療前にあらかじめ計画し、シミュレーションする装置である。照射ノズル11の陽子線の照射はこの結果を基に行われる。
【0026】
以下に、陽子線治療システム10の動作および機能を説明する。
【0027】
まず、治療台12の天板14はセッティングスペース22内に移動され、患者13はセッティングスペース22にて天板14の上に載置され、レーザポインタ(図示せず)で患者13の体表に照射したレーザと予め患者13の体表に付けた目印とを参照しながら天板14の上に患者13を粗位置決めした状態で固定する。
【0028】
粗位置決めを完了した後、操作者19が操作装置20を用いて治療台12をCT装置21へ移動する。このときの治療台12の移動経路は経路算出装置42によって算出され、この算出された移動経路を基に治療台12が移動するように治療台制御装置40が制御する。
【0029】
即ち、経路算出装置42は、治療台制御装置40から治療台12の現在位置(セッティング位置)を、治療計画装置43から目標位置(CT撮影位置)を、周辺機器データ44から周辺機器の配置や形状を、位置算出装置41から送信機24の位置を、照射制御装置49から照射ノズル11の位置を、それぞれ取得し、これらのデータを基に周辺機器や操作者19との干渉を回避する経路を算出して治療台制御装置40に送る。治療台制御装置40は、この回避経路を基に治療台12を移動する。これによって、治療台12は周辺機器や操作者19などとの接触を回避して安全にセッティングスペース22からCT装置21へ移動できる。なお、経路算出装置42は、位置算出装置41で算出した送信機24の位置から操作者19の居る領域を推定し、治療台12の通過領域が重複しないように移動経路を算出する。
【0030】
次いで、CT装置21で患者13の患部周辺の画像を取得して、治療前の画像と比較などしながら患部の位置を確認する。CT装置21で取得された患者13の患部周辺の画像は患者データベース45に取り込まれる。
【0031】
そして、CT装置21による画像撮影を完了した後、操作者19は操作装置20を操作して治療台12を照射ノズル11の治療位置へ移動する。このときの治療台12の移動経路は、前述のセッティングスペース22からCT装置21へ移動と同様に、経路算出装置42によって算出される。即ち、経路算出装置42による移動経路は、周辺機器や操作者19、照射ノズル11との干渉を回避する経路が用いられる。この移動経路を基に治療台制御装置40により治療台12が移動される。
【0032】
次いで、操作者19が操作装置20より操作信号を入力することにより、CT装置21で撮影された患部周辺の透視画像や治療計画装置43で作成された治療計画などを基に、治療台12を移動して照射ノズル11の陽子線の照射位置に患部を高精度位置決めし、照射ノズル11から患部に陽子線を照射する。
【0033】
治療を完了した後、操作者19は、操作装置20を操作することにより治療台12をセッティングスペース22に移動させ、患者13から治具の取り外しなどを行う。このときの治療台12の移動は、前述のように、経路算出装置42によって算出された移動経路を用いるため、これまでと同様に、周辺機器や操作者19などとの接触を回避して移動できる。
【0034】
このように、治療台12の移動経路は経路算出装置42によって自動的に算出され、これを基に治療台制御装置40により治療台12の移動が自動的に制御されるので、操作者19が干渉をチェックしながら治療台12を動かす場合に比べて、短時間で効率良く患者13の移動作業を行うことができる。
【0035】
操作者19の位置の確認は、治療台12の経路を算出するときのみに限定するものではなく、常に送信機24の位置を監視しておき、例えば、治療台12の移動中に操作者19が移動して、治療台12と接触の恐れがある場合に、治療台12に回避動作をさせたり、停止させたりするようにしてもよい。即ち、位置検出手段は治療台12の移動中も操作者19の移動を検出し、経路算出装置42は位置検出手段で検出した操作者19の位置を基に治療台12の移動中に当該操作者19との干渉を回避することが必要な場合に新たな移動経路を算出し、治療台制御装置40は経路算出装置42で算出した新たな移動経路を基に治療台12の移動を制御するようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、操作者19の位置を検出するために、電波の送信機24と受信機25、26を用いているが、超音波の送信機と受信機としてもよい。この場合は、送信機と受信機の距離を計測して、三角測量にて位置を算出すればよい。
(第2〜第6実施形態)
次に、本発明の第2〜第6実施形態について図4〜図8を用いて説明する。この第2〜第6実施形態は、以下に述べる点で第1実施形態と相違し、その他の点については第1実施形態と基本的には同一である。
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態の陽子線治療システム10の構成を示す平面図である。この第2実施形態では、複数のテレビカメラ60、61と画像処理装置(図示せず)とを用いて位置検出手段としたものである。
【0037】
治療室壁16の壁面の異なる位置にテレビカメラ60、61を2台設置して治療台12を撮影し、画像処理装置でテレビカメラ60、61の画像から操作者19の画像パターンを抽出してその位置を算出する。
【0038】
なお、治療室28全体が撮影可能なように天井にテレビカメラを1台設置して、操作者19の位置を算出するようにしてもよい。
【0039】
上述したようにテレビカメラを用いた場合は、第1実施形態における送信機24が不要となるので、操作者19自身に送信機24を装着する手間が省けると共に、送信機24の装着を忘れるなどのミスを防げる。
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態の陽子線治療システム10の構成を示す平面図である。この第3実施形態では、無線タグ71と受信機70とからなる非接触識別装置を用いて位置検出手段としたものである。
【0040】
無線タグ71を治療室28の床面全体に所定間隔で貼付け(図5では無線タグを一部のみ図示)、受信機70を操作者19が携帯する。無線タグ71の間隔を無線タグ71の受信可能範囲程度にしておくと、受信機70で受信できる無線タグ71は受信機70近傍の数個程度となるので、受信した無線タグ71の識別番号から操作者19の位置を検出できる。
【0041】
なお、図5の無線タグ71及び受信機70の代わりに、治療室28の床面全体に複数の力センサを所定間隔で設置しておき、力センサで検出した操作者19による負荷力から操作者19の位置を検出するようにしてもよい。この場合には、受信機70が不要となるので、操作者19自身に受信機70を装着する手間が省けると共に、受信機70の装着を忘れるなどのミスを防げる。また、無線タグ71を操作者19に装着し、その受信機70を治療室壁16の壁面などに設置するようにしてもよい。その場合には、無線タグ71が1つでよく、その構成が簡単となる。
(第4実施形態)
図6は本発明の第4実施形態の陽子線治療システム10の構成を示す平面図である。この第4実施形態では、操作者19が操作装置20を操作入力することにより操作者19の位置を検出するものである。
【0042】
治療台12の可動範囲27を図6に示すように複数の扇形区画(例えば4区画A、B、C、D)に分けておき、操作者19が操作装置20を操作するとき、あるいは、治療台12が移動している最中に自分の居る位置を操作装置20から入力する。すると、経路算出装置42は入力された区画を避けて治療台12の移動経路を算出するので、操作者19と治療台12の接触を回避することができる。さらには、可動範囲27の複数の区画を操作者19との干渉を回避することのみに利用するのではなく、治療台12の進入禁止領域として入力するようにしてもよい。
【0043】
例えば、周辺機器データ44に登録されていない検査装置などを、治療台12の可動範囲27に臨時的に置いておく場合などにこの第4実施形態は有効である。なお、この第4実施形態では治療台12の可動範囲を扇形に4区画A、B、C、Dで分割したが、必ずしもそうする必要はなく、周辺機器との関係や作業手順などに合わせて適正に分割すればよい。
【0044】
また、分割した区画は床面に表示しておくと、誤認識などのミスを防ぐことができ、より安全に治療台の操作、移動ができる。
(第5実施形態)
図7は本発明の第5実施形態の陽子線治療システム10のブロック図である。この第5実施形態では、シミュレータ80及びディスプレイ81を備えたものである。
【0045】
シミュレータ80は、経路算出装置42で算出したデータ基に、治療台12の姿勢変化や移動経路を3次元のアニメーションで作成する。そして、ディスプレイ81は、そのアニメーションを表示画面に表示する。これによって、操作者19は治療台12を移動する前に、治療台12の姿勢変化や移動経路を確認できるので、より安全性を向上させることができる。なお、ディスプレイ81は、操作者19が目視で確認できるように、操作装置20や治療室壁16の壁面に設置することが望ましい。
(第6実施形態)
図8は本発明の第6実施形態の陽子線治療システム10の構成を示す平面図である。この第6実施形態では、治療台12の操作装置20に送信機24を取り付けたものである。これによって、操作装置20の位置を検出することができる。この送信機24は常に操作装置20に取り付けておけばよいので、操作者19自身に送信機24を装着する手間が省けると共に、送信機24の装着を忘れるなどのミスを防げる。
【0046】
操作装置20の位置の確認は、治療台12の経路を算出するときのみに限定するものではなく、常に送信機24の位置を監視しておき、例えば、治療台12の移動中に操作装置20を移動して治療台12と接触の恐れがある場合に、治療台12に回避動作をさせたり、停止させたりするようにしてもよい。即ち、位置検出手段は治療台12の移動中も操作装置20の移動を検出し、経路算出装置42は位置検出手段で検出した操作装置20の位置を基に治療台12の移動中に操作装置20との干渉を回避することが必要な場合に新たな移動経路を算出し、治療台制御装置40は経路算出装置42で算出した新たな移動経路を基に治療台12の移動を制御するようにしてもよい。
(その他の実施形態)
前述した第1〜第6実施形態において、電波や超音波の送信機、無線タグの受信機を複数設けたり、テレビカメラや力センサで複数の対象を検出できるようにしたりすることにより、治療室内に複数の人が居る場合でも干渉を回避できるようになる。
【0047】
また、これまでの実施形態では、電波や超音波の受信機が2個の例を説明したが、より確実な受信を行うためや、高精度な位置の算出のために、さらに多くの受信機を設けてもよい。
【0048】
また、操作装置20に非常停止ボタンを付けたり、治療台12に接触を検知するセンサを設けると、さらに安全性の向上を図ることができる。
【0049】
なお、本発明は陽子線治療システムに限らず、X線や電子線などの他、炭素線などの粒子線を治療に用いた放射線治療システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態の陽子線治療システムの構成を示す図。
【図2】図1の陽子線治療システムの治療台の斜視図。
【図3】図1の陽子線治療システムのブロック図。
【図4】本発明の第2実施形態の陽子線治療システムの構成を示す図。
【図5】本発明の第3実施形態の陽子線治療システムの構成を示す図。
【図6】本発明の第4実施形態の陽子線治療システムの構成を示す図。
【図7】本発明の第5実施形態の陽子線治療システムのブロック図。
【図8】本発明の第6実施形態の陽子線治療システムの構成を示す図。
【符号の説明】
【0051】
10…陽子線治療システム(放射線治療システム)、11…照射ノズル、12…治療台、13…患者、14…天板、15…照射ノズルの回転方向、16…治療室壁、17,18…出入口、19…操作者、20…操作装置、21…CT装置、22…セッティングスペース、23…セッティング装置や治具など、24…送信機、25,26…受信機、27…治療台の可動範囲、30…第1関節、31…第2関節、32…第3関節、33…第4関節、34…第5関節、35…第6関節、40…治療台制御装置、41…位置算出装置、42…経路算出装置、43…治療計画装置、44…周辺機器データ、45…患者データ、46…操作者の入力、47,48…電波や超音波、49…照射制御装置、50…回転ガントリ、60,61…テレビカメラ、70…無線タグの受信機、71…無線タグ、80…シミュレータ、81…ディスプレイ、A,B,C,D…区画。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用放射線を照射する照射ノズルと、
多関節ロボットで構成され且つ患者を乗せて前記照射ノズルから照射される治療用放射線の照射位置に前記患者の患部を位置決めする治療台と、
前記照射ノズル及び前記治療台を制御する制御部と、
前記制御部に制御信号を入力する操作装置とを備えた放射線治療システムにおいて、
前記操作装置の操作者の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記制御部は、前記位置検出手段で検出した前記操作者の位置を基に当該操作者との干渉を回避する移動経路を算出する経路算出装置と、前記経路算出装置で算出した移動経路を基に前記治療台の移動を制御する治療台制御装置とを備えた
ことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
治療用放射線を照射する照射ノズルと、
多関節ロボットで構成され且つ患者を乗せて前記照射ノズルから照射される治療用放射線の照射位置に前記患者の患部を位置決めする治療台と、
前記照射ノズル及び前記治療台を制御する制御部と、
前記制御部に制御信号を入力する操作装置とを備えた放射線治療システムにおいて、
前記操作装置の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記制御部は、前記位置検出手段で検出した前記操作装置の位置を基に当該操作装置との干渉を回避する移動経路を算出する経路算出装置と、前記経路算出装置で算出した移動経路を基に前記治療台の移動を制御する治療台制御装置とを備えた
ことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記位置検出手段は、前記操作者または前記操作装置に装着した送信機と、前記送信機からの電波を受信する複数の受信機と、前記複数の受信機で自身したデータを基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する位置算出装置とからなることを特徴とする放射線治療システム。
【請求項4】
請求項1または2において、前記位置検出手段は、前記操作者または前記操作装置を撮影するテレビカメラと、前記テレビカメラで撮影した画像を基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する画像処理装置とからなることを特徴とする放射線治療システム。
【請求項5】
請求項1または2において、前記位置検出手段は、電波を発する無線タグと、前記無線タグの電波を受信する受信機とからなる非接触識別装置で構成されていることを特徴とする放射線治療システム。
【請求項6】
請求項1において、前記位置検出手段は、前記操作者の体重を検出するように床面に設置された複数の力センサと、前記力センサで検出したデータを基に前記操作者の位置を算出する位置算出装置とからなることを特徴とする放射線治療システム。
【請求項7】
請求項1または2において、前記位置検出手段は前記操作者が前記操作装置から入力した位置情報を基に前記操作者または前記操作装置の位置を算出する位置算出装置からなることを特徴とする放射線治療システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れかにおいて、経路算出装置は、前記治療台の移動範囲に設定された侵入禁止領域を除いて前記移動経路を算出することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかにおいて、前記位置検出手段は前記治療台の移動中も前記操作者または前記操作装置の移動を検出し、前記経路算出装置は前記位置検出手段で検出した前記操作者または前記操作装置の位置を基に前記治療台の移動中に当該操作者または当該操作装置との干渉を回避することが必要な場合に新たな移動経路を算出し、前記治療台制御装置は前記経路算出装置で算出した新たな移動経路を基に前記治療台の移動を制御することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項10】
請求項1から9の何れかにおいて、前記経路算出装置で算出した前記治療台の移動経路から前記治療台とその周辺機器との干渉をチェックするシミュレータを備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項11】
請求項1から10の何れかにおいて、前記操作装置または前記治療台の周辺に、前記経路算出装置で算出した前記治療台の移動経路を表示するディスプレイを備えたことを特徴とする放射線治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−220553(P2008−220553A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61529(P2007−61529)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】