説明

放射線画像撮影装置

【課題】放射線画像撮影装置内の劣化を検知する。
【解決手段】放射線画像撮影装置(20、20A〜20C)は、放射線を可視光に変換するシンチレータ(74)と、可視光を電気信号に変換する光検出基板(72)と、ピーク波長が互いに異なる少なくとも2つの光を光検出基板(72)に選択的に照射可能な光源(78)とを有する。この場合、光源(78)は、少なくとも2つの光のうち、一方の光をリセット光として光検出基板(72)に照射し、他方の光を放射線画像撮影装置(20、20A〜20C)内の劣化を検知するための劣化検知用光として光検出基板(72)に照射することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線源から被写体に放射線を照射し、該被写体を透過した前記放射線を放射線画像撮影装置で検出することにより、前記被写体の放射線画像を取得することが広汎に行われている。この場合、前記放射線画像撮影装置は、例えば、前記被写体を透過した前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、該可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有し、該光検出基板は、前記可視光を検出可能なフォトダイオード等の光検出素子を備えている。
【0003】
ところで、アモルファスシリコン(a−Si)等からなるフォトダイオードを用いて光検出基板を構成した場合、可視光から変換された電荷(電子)の一部がa−Siの不純物準位(欠陥)に一旦捕捉され、その後、動画撮影のような長時間の撮影による前記フォトダイオードの温度上昇等に起因して前記電荷が再放出されると、暗電流等の不要な電流が発生し、放射線画像のノイズの原因となる場合がある。そこで、放射線の非照射時(非撮影時)に前記フォトダイオードにリセット光を照射して、前記不純物準位に電荷を予め埋めておき、その後、放射線の照射時(撮影時)に可視光から変換された電荷が前記不純物準位に捕捉されないようにすることで、前記ノイズの低減を図る光リセット法が特許文献1及び2に提案されている。
【0004】
特許文献1では、複数の細孔が設けられた反射層、シンチレータ及び光検出基板の順に配置され、リセット光は、前記各細孔及び前記シンチレータを介して前記光検出基板の光検出素子に照射される。また、特許文献2では、反射層、リセット光源、シンチレータ及び光検出基板の順に配置され、前記リセット光源から出力されたリセット光は、前記シンチレータを介して前記光検出基板の光検出素子に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−525359号公報
【特許文献2】特開2007−225598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射線画像撮影装置を使用し続けると、該放射線画像撮影装置の内部が劣化する場合がある。
【0007】
例えば、シンチレータと光検出基板とが接着層で接着されているか、あるいは、粘着層で粘着されている場合に、放射線の照射によって前記接着層又は前記粘着層が劣化すれば、劣化した前記接着層又は前記粘着層が前記シンチレータで前記放射線から変換された可視光を吸収して、前記光検出基板に入射する前記可視光の光量を低下させるおそれがある。
【0008】
より詳しく説明すると、前記シンチレータがCsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)から構成され、該シンチレータが前記放射線を青色波長領域の可視光に変換する場合、前記青色波長領域に対して比較的高い透過性を有する前記接着層又は前記粘着層が前記放射線の照射で劣化(酸化)して着色(黄変)すれば、着色した前記接着層又は前記粘着層が前記青色波長領域の可視光を吸収して、前記光検出基板における前記可視光の感度を低下させてしまう。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2には、放射線画像撮影装置内の劣化への対応について、何ら提案されていない。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、放射線画像撮影装置内の劣化を検知することが可能となる放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有する放射線画像撮影装置であって、ピーク波長が互いに異なる少なくとも2つの光を前記光検出基板に選択的に照射可能な光源をさらに有し、前記光源は、前記少なくとも2つの光のうち、一方の光をリセット光として前記光検出基板に照射し、他方の光を前記放射線画像撮影装置内の劣化を検知するための劣化検知用光として前記光検出基板に照射することが可能であることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、前記光源から出力される光を前記光検出基板に対する光リセット以外の用途に利用することで、前記放射線画像撮影装置内部の劣化を検知することが可能になる。すなわち、前記他方の光が前記放射線画像撮影装置内の劣化を検知するための劣化検知用光であれば、該放射線画像撮影装置内の劣化検知を確実に実施することができる。
【0013】
具体的に、前記放射線画像撮影装置では、下記(1)及び/又は(2)により劣化検知を行えばよい。
【0014】
(1)前記放射線画像撮影装置は、前記光検出基板と前記シンチレータとを接着する接着層、又は、前記光検出基板と前記シンチレータとを粘着する粘着層をさらに有し、前記光源は、前記接着層又は前記粘着層を介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光を照射可能であり、前記劣化検知用光は、前記放射線により劣化した前記接着層又は前記粘着層が吸収可能で且つ前記リセット光の波長域とは異なる波長域の光である。
【0015】
前記放射線の照射に起因して前記接着層又は前記粘着層が劣化していれば、劣化した前記接着層又は前記粘着層は、特定のピーク波長を含む波長域の光(例えば、青色波長領域の光)を吸収するため、劣化した前記接着層又は前記粘着層を介して前記光検出基板に前記光を照射すれば、前記接着層又は前記粘着層での前記光の吸収により、前記光検出基板に入射する前記光の光量が減少するはずである。
【0016】
そこで、(1)においては、前記光源から前記接着層又は前記粘着層を介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光(前記特定のピーク波長を含む波長域の光)を選択的に照射する。これにより、前記光検出基板で検出される前記劣化検知用光の信号レベルが、劣化前の信号レベルよりも低下していれば、前記放射線の照射に起因して前記接着層又は前記粘着層が劣化していることを直ちに検知することができる。また、前記光源は、前記リセット光を出力するリセット光源と、前記劣化検知用光を出力する検査用光源との機能を兼ね備えているので、前記リセット光源と前記検査用光源とを個別に用意する必要もなくなる。
【0017】
(2)前記放射線画像撮影装置は、前記シンチレータを封止する防湿保護材をさらに有し、前記光源は、前記防湿保護材及び前記シンチレータを介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光を照射可能であり、前記劣化検知用光は、前記放射線により劣化した前記防湿保護材が吸収可能で且つ前記リセット光の波長域とは異なる波長域の光である。
【0018】
前記放射線の照射に起因して前記防湿保護材が劣化していれば、劣化した前記防湿保護材も特定のピーク波長を含む波長域の光を吸収する可能性があるため、劣化した前記防湿保護材及び前記シンチレータを介して前記光検出基板に前記光を照射すれば、前記防湿保護材での前記光の吸収により、前記光検出基板に入射する前記光の光量が減少するはずである。
【0019】
そこで、(2)においては、前記光源から前記防湿保護材及び前記シンチレータを介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光(前記特定のピーク波長を含む波長域の光)を選択的に照射する。この場合でも、前記光検出基板で検出される前記劣化検知用光の信号レベルが、劣化前の信号レベルよりも低下していれば、前記放射線の照射に起因して前記防湿保護材が劣化していることを直ちに検知することができる。また、(2)においても、前記光源がリセット光源と検査用光源との機能を兼ね備えているので、これらの光源を個別に用意する必要がない。
【0020】
ここで、前記光検出基板は、前記可視光を前記電気信号に変換する少なくとも1つの光検出素子を備え、前記光検出素子は、前記光源が該光検出素子に前記劣化検知用光を照射した場合に、前記劣化検知用光を光検出信号として検出し、前記放射線画像撮影装置は、前記光検出素子が実際に検出した前記光検出信号の信号レベルと、前記放射線画像撮影装置内での劣化が発生していない状態での光検出信号の信号レベルとに基づいて、前記放射線画像撮影装置内での劣化の有無を判定する劣化判定部をさらに有する。
【0021】
これにより、前記放射線画像撮影装置内の劣化(例えば、前記放射線による前記接着層、前記粘着層又は前記防湿保護材の劣化)の有無を確実に且つ効率よく検知することができる。
【0022】
また、前記光検出素子は、前記可視光から変換した前記電気信号を放射線検出信号として前記劣化判定部に出力し、前記劣化判定部は、前記光検出素子が実際に検出した前記放射線検出信号の信号レベル及び前記光検出信号の信号レベルと、前記放射線画像撮影装置内での劣化が発生していない状態での放射線検出信号の信号レベル及び光検出信号の信号レベルとに基づいて、前記放射線画像撮影装置内での劣化の有無の判定を行ってもよい。
【0023】
これにより、前記放射線画像撮影装置の構成要素のうち、前記光検出素子で検出した前記電気信号のレベルの低下の原因となっている構成要素(例えば、前記接着層、前記粘着層、前記防湿保護材又は前記シンチレータ)を確実に特定することができる。
【0024】
また、前記放射線画像撮影装置は、前記劣化判定部の判定結果を外部に報知する報知部をさらに有してもよい。これにより、医師又は放射線技師は、前記放射線画像撮影装置の内部で劣化が発生しているか否か、さらには、劣化が発生している場合には、どの構成要素が劣化しているのかを把握して、適切な処置(例えば、放射線画像撮影装置の修理又は交換の依頼)を速やかに遂行することができる。
【0025】
上述した放射線画像撮影装置では、前記放射線の照射方向に沿って、前記光検出基板と、前記シンチレータと、前記光源とが順に配置されている。
【0026】
この場合、前記光源は、前記シンチレータを介して前記光検出基板と対向するように配置された発光素子のアレイ、バックライト、又は、エレクトロルミネッセンス光源であればよい。
【0027】
ここで、前記発光素子のアレイは、第1のピーク波長を含む波長域の光を出力する第1の発光素子と、該第1のピーク波長とは異なる第2のピーク波長を含む波長域の光を出力する第2の発光素子とから少なくとも構成されていればよい。例えば、前記第1の発光素子を光リセット用の発光素子とし、前記第2の発光素子を劣化検知用の発光素子とすればよい。
【0028】
また、前記バックライトは、前記シンチレータにおける前記光検出基板の反対側に配置された導光板と、該導光板の側部に配置され且つ互いに異なるピーク波長の光を出力可能な少なくとも2つの光源と、前記導光板及び前記少なくとも2つの光源を囲繞するように配置された反射シートと、前記導光板における前記シンチレータ側の表面に配置された拡散シートとから構成され、
前記少なくとも2つの光源は、前記導光板に光を入射し、
前記導光板に入射した前記光は、該導光板内で前記反射シート及び前記拡散シートとの間で表面反射を繰り返した後に、前記拡散シートから前記シンチレータに出射すればよい。
【0029】
このように前記バックライトを構成すれば、前記少なくとも2つの光源を前記放射線の非照射領域に配置することが可能となり、前記放射線による前記少なくとも2つの光源の劣化を回避することができる。なお、前記少なくとも2つの光源は、発光ダイオード又は冷陰極管であればよい。
【0030】
前記エレクトロルミネッセンス光源は、前記放射線の照射方向に沿って積層され、且つ、互いに異なるピーク波長の光を出力可能な少なくとも2つの光源から構成されていればよい。特に、前記エレクトロルミネッセンス光源が有機エレクトロルミネッセンス光源であれば、該エレクトロルミネッセンス光源の薄型化を実現することができる。
【0031】
また、上記の放射線画像撮影装置において、蒸着基板に前記シンチレータを成膜した後に、該シンチレータの先端部分と前記光検出基板とを接着層を介して接着するか、又は、粘着層を介して粘着してもよい。
【0032】
ここで、前記蒸着基板が前記光源からの光に対して非透過である場合、前記蒸着基板に剥離層を介して前記シンチレータを成膜した後に、該シンチレータの先端部分と前記光検出基板とを前記接着層を介して接着するか、あるいは、前記粘着層を介して粘着し、その後、前記シンチレータから前記剥離層及び前記蒸着基板を剥離して、前記シンチレータの剥離面に前記光源を配置してもよい。
【0033】
一方、前記蒸着基板が前記光源からの光を透過可能である場合、該蒸着基板を介して前記光源を配置可能であってもよい。
【0034】
また、前記光検出基板と前記シンチレータとの間に、前記放射線の照射方向に対して斜め方向に進行する前記可視光又は前記光源からの光をカットする斜入光カット層を介挿してもよい。これにより、前記可視光に対する前記光検出基板の感度の向上と、前記放射線画像の画像ボケの抑制とを共に実現することができる。
【0035】
さらに、前記シンチレータと前記光源との間にハーフミラーを介挿してもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光源から出力される光を光検出基板に対する光リセット以外の用途に利用することで、放射線画像撮影装置内部の劣化を検知することが可能になる。すなわち、光リセット以外の用途の光が前記放射線画像撮影装置内の劣化を検知するための劣化検知用光であれば、該放射線画像撮影装置内の劣化検知を確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る電子カセッテ(放射線画像撮影装置)を用いた放射線画像撮影システムの構成図である。
【図2】図1に示す電子カセッテの斜視図である。
【図3】図2の電子カセッテのIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4A〜図4Cは、図3の電子カセッテ(第1〜第3実施例に係る電子カセッテ)における放射線検出器近傍の要部断面図である。
【図5】図5Aは、放射線検出器近傍の要部断面図であり、図5Bは、光検出基板近傍の要部断面図である。
【図6】図6A及び図6Bは、光検出基板近傍の要部断面図である。
【図7】光検出基板近傍の要部断面図である。
【図8】図8A及び図8Bは、シンチレータ及びリセット光源近傍の要部断面図である。
【図9】図9A及び図9Bは、シンチレータ及びリセット光源近傍の要部断面図である。
【図10】放射線の照射に起因した接着層又は粘着層の劣化によるフォトダイオードの検出量の低下を示すグラフである。
【図11】図11Aは、シンチレータ及びリセット光源近傍の要部断面図であり、図11Bは、リセット光源の要部平面図である。
【図12】図12A及び図12Bは、シンチレータ及びリセット光源近傍の要部断面図である。
【図13】図13Aは、蒸着基板へのシンチレータの成膜を示す断面図であり、図13Bは、防湿保護材の形成を示す断面図であり、図13Cは、光検出基板へのシンチレータの接着又は粘着を示す断面図である。
【図14】シンチレータから蒸着基板及び剥離層を剥離させた状態を示す断面図である。
【図15】図1の電子カセッテの電気的な概略構成図である。
【図16】図1の放射線撮影システムの基本的な動作を示すフローチャートである。
【図17】図1の放射線撮影システムの基本的な動作を示すフローチャートである。
【図18】接着層又は粘着層の劣化検知とシンチレータの劣化検知とを示すフローチャートである。
【図19】接着層又は粘着層の劣化検知とシンチレータの劣化検知とを示すフローチャートである。
【図20】シンチレータとリセット光源との間にハーフミラーを介挿させた状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る放射線画像撮影装置の好適な実施形態について、図1〜図20を参照しながら、詳細に説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係る電子カセッテ20(放射線画像撮影装置)を有する放射線画像撮影システム10の構成図である。
【0040】
放射線画像撮影システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した患者等の被写体14に対して放射線16を照射する放射線出力装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ20と、放射線画像撮影システム10全体を制御すると共に、医師又は放射線技師(以下、医師ともいう。)の入力操作を受け付けるコンソール22と、撮影した放射線画像等を表示する表示装置24とを備える。
【0041】
放射線出力装置18、電子カセッテ20、コンソール22及び表示装置24間では、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/b/g/n等の無線LAN、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよいことは勿論である。
【0042】
コンソール22には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)26が接続され、RIS26には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)28が接続されている。
【0043】
放射線出力装置18は、放射線16を照射する放射線源30と、放射線源30を制御する放射線制御装置32と、放射線スイッチ34とを備える。放射線源30は、電子カセッテ20に対して放射線16を照射する。放射線源30が照射する放射線16は、X線、α線、β線、γ線、電子線等であってもよい。放射線スイッチ34は、2段階のストロークを持つように構成され、放射線制御装置32は、放射線スイッチ34が医師によって半押されると放射線16の照射準備を行い、全押されると放射線源30から放射線16を照射させる。
【0044】
なお、前述のように、放射線出力装置18、電子カセッテ20、コンソール22及び表示装置24間では、信号の送受信が可能であるため、放射線出力装置18は、放射線スイッチ34が半押状態となったときに照射準備を示す信号をコンソール22等に送信し、その後、放射線スイッチ34が全押状態となったときに放射線16の照射開始を示す信号をコンソール22等に送信してもよい。
【0045】
図2は、図1に示す電子カセッテ20の斜視図であり、図3は、図2に示す電子カセッテ20のIII−III線に沿った断面図である。
【0046】
電子カセッテ20は、パネル部40と、該パネル部40上に配置された制御部42とを備える。なお、パネル部40の厚みは、制御部42の厚みよりも薄く設定されている。
【0047】
パネル部40は、放射線16(図1参照)に対して透過可能な材料からなる略矩形状の筐体44を有し、パネル部40の表面(上面)である照射面46に放射線16が照射される。照射面46の略中央部には、被写体14の撮影領域及び撮影位置を示すガイド線48が形成されている。ガイド線48の外枠が、放射線16の照射野を示す撮影可能領域50になる。また、ガイド線48の中心位置(ガイド線48が十字状に交差する交点)は、撮影可能領域50の中心位置である。
【0048】
筐体44の制御部42側の側面には、医師が把持可能な取手52が配設されている。医師は、取手52を把持することにより電子カセッテ20を所望の場所(例えば、撮影台12)に搬送することが可能となる。従って、電子カセッテ20は、可搬型の放射線画像撮影装置である。
【0049】
制御部42は、放射線16に対して非透過性の材料からなる略矩形状の筐体54を有する。該筐体54は、照射面46の一端に沿って延在しており、照射面46における撮影可能領域50の外に制御部42が配設される。この場合、筐体54の上面には、撮影された放射線画像等を表示可能である一方で、医師が種々の情報を入力可能なタッチパネル方式の表示操作部(報知部)56と、医師に対する各種の通知を音として出力するスピーカ(報知部)58とが配設されている。また、筐体54の側面には、外部から充電を行うためのACアダプタの入力端子60と、外部機器(例えば、コンソール22等)との間で情報を送受信可能なインターフェース手段としてのUSB端子62とが設けられている。
【0050】
そして、図3に示すように、筐体44の内部には、放射線16を放射線画像に変換する放射線検出器70が収容されている。
【0051】
放射線検出器70は、被写体14を透過した放射線16を可視光領域に含まれる蛍光(図8Bに示す可視光130)に変換するシンチレータ74と、該可視光130を電気信号に変換する光検出基板72と、該光検出基板72にリセット光132(図8A及び図9B参照)を照射することにより光検出基板72を構成する光検出素子94(図5A〜図7参照)に対する光リセットを行うリセット光源78とを有する。従って、放射線検出器70は、間接変換型の放射線検出器である。
【0052】
また、放射線検出器70は、放射線16の照射方向に沿って、光検出基板72、シンチレータ74及びリセット光源78が順に配置された、表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の放射線検出器である。従って、本実施形態に係る電子カセッテ20は、ISS方式の放射線検出器70を備えた間接変換型の放射線画像撮影装置である。
【0053】
さらに、放射線検出器70では、図4A〜図4Cに示すように、シンチレータ74と光検出基板72とを、可視光130及びリセット光132を透過可能な接着層88a又は粘着層88bを介して密着させている。
【0054】
ここで、本実施形態に係る電子カセッテ20は、シンチレータ74の構成によって、下記の3つの実施例(第1〜第3実施例に係る電子カセッテ20A〜20C)に分類することができる。
【0055】
図4Aに示す第1実施例に係る電子カセッテ20Aにおいて、シンチレータ74は、リセット光132に対して非透過な蒸着基板240(図13A参照)に剥離層242を介して、例えば、CsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を真空蒸着法により短冊状の柱状結晶構造84として形成したものであり、蒸着基板240及び剥離層242を剥離した後に、該シンチレータ74の基端部分である非柱状結晶部分82をリセット光源78側に配置し、一方で、柱状結晶構造84の先端部分を接着層88a又は粘着層88bを介して光検出基板72に密着することにより放射線検出器70に組み込まれる。
【0056】
この場合、柱状結晶構造84を構成する各柱は、光検出基板72と略直交する方向(図4Aの上下方向であって放射線16の照射方向)に沿ってそれぞれ形成され、隣接する各柱の間には、ある程度の隙間が確保されている。また、CsI(CsI:Tl)のシンチレータ74は、柱状結晶構造84が湿度に弱く、非柱状結晶部分82が湿度に特に弱いという特性を有するので、ポリパラキシリレン樹脂(パリレン(登録商標))からなる光透過性の防湿保護材86で封止されている。なお、図4A以降の各図面では、説明の容易化のために、柱状結晶構造84における各柱間の隙間を誇張して図示する。
【0057】
また、シンチレータ74が発する可視光130(図8B及び図9A参照)の波長域は、波長360nm〜830nmの可視光領域であることが好ましく、放射線検出器70によるモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。特に、CsI:Tlでは、放射線16の照射時における発光スペクトルが420nm〜600nmであると共に、可視光領域における発光ピーク波長が565nmである。
【0058】
また、図4Bに示す第2実施例に係る電子カセッテ20Bは、シンチレータ74の基端部分である非柱状結晶部分82側が除去された状態で、該シンチレータ74がリセット光源78と接着層88a又は粘着層88bとの間に配置されている点で、第1実施例に係る電子カセッテ20A(図4A参照)とは異なる。
【0059】
この場合、例えば、後述する蒸着基板240(図13A参照)にシンチレータ74を蒸着形成した後に該シンチレータ74を防湿保護材86で封止し、次に、該蒸着基板240からシンチレータ74を分離し、柱状結晶構造84の先端部分側と光検出基板72とを接着層88a又は粘着層88bを介して密着させた後に、非柱状結晶部分82側を除去することで、図4Bのシンチレータ74を構成すればよい。なお、シンチレータ74を形成する際には、非柱状結晶部分82が形成されないような蒸着条件を決定した後に、該蒸着条件に従って蒸着基板240にシンチレータ74を蒸着形成してもよい。
【0060】
このように、第2実施例では、非柱状結晶部分82が存在しないシンチレータ74を形成することで、該非柱状結晶部分82での光散乱の発生を回避するようにしている。
【0061】
さらに、図4Cに示す第3実施例に係る電子カセッテ20Cは、リセット光132に対して透過性を有する蒸着基板108にシンチレータ74が形成され、蒸着基板108をリセット光源78側に配置し、且つ、防湿保護材86で封止されたシンチレータ74における柱状結晶構造84の先端部分を接着層88a又は粘着層88bを介して光検出基板72に密着させた点で、第1及び第2実施例に係る電子カセッテ20A、20B(図4A及び図4B参照)とは異なる。また、第3実施例では、蒸着基板108とシンチレータ74との密着性を向上させるために、非柱状結晶部分82を積極的に形成している。
【0062】
なお、第1〜第3実施例に係る電子カセッテ20A〜20Cの具体的な製造方法については、後述する。
【0063】
ここで、柱状結晶構造84の先端部分側と光検出基板72との密着性を高めて、電子カセッテ20A〜20Cの使用中でのシンチレータ74と光検出基板72との離間を回避したい場合には、接着層88aを用いて柱状結晶構造84の先端部分側と光検出基板72とを強固に接着すればよい。また、シンチレータ74又は光検出基板72の故障による少なくともいずれか一方の交換を考慮する場合には、接着層88a程度の接着性を必要としない粘着層88bを用いて柱状結晶構造84の先端部分側と光検出基板72とを粘着すればよい。
【0064】
なお、第1〜第3実施例に係る電子カセッテ20A〜20Cにおいて、筐体44内部での光検出基板72及びリセット光源78の固定方法は、接着剤による接着、粘着剤による粘着、あるいは、固定手段による固定等、公知の固定方法により筐体44内に固定可能であることは勿論である。また、図4A〜図4Cでは、CsI:Tlからなるシンチレータ74を図示しているが、GOS(ガドリニウムオキサイドサルファ)からなるシンチレータ74であってもよい。この場合、例えば、光検出基板72又はリセット光源78にGOSを塗布することでシンチレータ74を形成すればよい。さらに付言すれば、電子カセッテ20A〜20Cに用いられるシンチレータ74としては、放射線16の照射に起因して接着層88a又は粘着層88bの着色(例えば、黄変)が発生する場合に、着色した接着層88a又は粘着層88bに吸収されて、光検出素子94から出力される電気信号の信号レベルが低下するような可視光130を発光するシンチレータ74であればよい。
【0065】
次に、光検出基板72の具体的な構成について、図5A〜図7を参照しながら説明する。なお、図5A〜図7では、代表的に、第1実施例に係る電子カセッテ20Aにおける光検出基板72の具体的な構成について説明するが、第2及び第3実施例に係る電子カセッテ20B、20Cについても、図5A〜図7の構成を適宜変更して適用可能であることは勿論である。また、図5A〜図7では、説明の容易化のために、一部の構成要素を模式化して図示し、あるいは、誇張して図示する。
【0066】
図5Aにおいて、光検出基板72は、基材90における底板80側の表面にスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)92のアレイを形成し、該TFT92のアレイ上にa−Si等からなるフォトダイオードを用いた複数の光検出素子94を配置した構造を有する。光検出素子94がa−Siを含めば、幅広い吸収スペクトルを持つことになり、シンチレータ74からの可視光130を効率よく吸収することができる。
【0067】
この場合、光検出基板72の底板80側は、TFT92のアレイ上に複数の光検出素子94が配置されて凹凸状となるので、例えば、四フッ化エチレン樹脂膜による平坦化処理により平坦化膜96を形成しておくことが望ましい。従って、CsI:Tlのシンチレータ74は、防湿保護材86が施された後に、接着層88a又は粘着層88bを介して平坦化膜96に密着する。このように、図5Aの構成では、放射線16の照射方向(図5Aの上方から下方に向かう方向)に沿って、基材90、TFT92、光検出素子94、平坦化膜96、接着層88a又は粘着層88b、及び、シンチレータ74が順に積層される。
【0068】
基材90は、シンチレータ74を蒸着形成する際の熱に耐えられる程度の耐熱性を有する薄肉の基板であればよい。この場合、基材90として、通常は、ガラス基板を採用すればよいが、他の材料を用いてもよい。
【0069】
すなわち、有機光電変換材料又はアモルファス酸化物半導体(例えば、a−Si)から光検出素子94を構成すると共に、有機半導体材料(例えば、フタロシアニン化合物、ペンタセン又はバナジルフタロシアニン)、アモルファス酸化物半導体(例えば、a−IGZO(InGaZnO))、又は、カーボンナノチューブからTFT92を構成する場合には、TFT92及び光検出素子94を低温成膜により形成することが可能であるため、ポリイミドフイルム、ポリアリレートフイルム、二軸延伸ポリスチレンフイルム、アラミドフイルム又はバイオナノファイバのような可撓性を有するプラスチックフイルムを、基材90として採用することができる。
【0070】
ここで、基材90として採用され得るプラスチックフイルムについてさらに具体的に説明すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を基材90として採用することが好ましい。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることができ、例えば、電子カセッテ20(20A)の持ち運び等に有利となる。
【0071】
なお、基材90には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0072】
また、アラミドフイルムを用いて基材90を構成する場合、アラミドは、200℃以上の高温プロセスが適用可能であるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化することができ、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応することができる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。さらに、アラミドは、ガラス基板等と比べて基材90を薄く形成することができる。なお、超薄型のガラス基板とアラミドとを積層して基材90を形成してもよい。
【0073】
一方、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。この場合、セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光130の波長に対して1/10のサイズであり、且つ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることにより、繊維を60%〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。また、バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3ppm−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、且つ、フレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて基材90を薄く形成することができる。
【0074】
一方、光検出素子94については、有機光電変換材料を含むことにより、可視光130の領域にシャープな吸収スペクトルを持つことになり、可視光130以外の電磁波が光検出素子94に吸収されることがほとんどなく、放射線16が光検出素子94に吸収されることで発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0075】
また、有機光電変換材料は、可視光130を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ74の発光ピーク波長に近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と可視光130の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ、可視光130を十分に吸収することが可能である。具体的に、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、可視光130との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0076】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えば、キナクリドンの可視光領域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ74の材料としてCsI:Tlを用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光検出素子94で発生する電荷量を略最大にすることができる。
【0077】
また、TFT92を有機半導体材料、アモルファス酸化物半導体又はカーボンナノチューブから構成すれば、放射線16を吸収せず、あるいは、吸収しても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。特に、TFT92をカーボンナノチューブで構成すれば、TFT92のスイッチング速度を高速化することができると共に、可視光130及びリセット光132に対する吸収度合の低いTFT92を形成することができる。なお、カーボンナノチューブでTFT92を構成する場合、極微量の金属性不純物を混入するだけで、TFT92の性能が著しく低下するため、遠心分離等により極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0078】
そして、図5Aの構成において、被写体14を透過した放射線16が筐体44の照射面46(天板)と、接着層88a又は粘着層88bと、光検出基板72とを透過してシンチレータ74に至ると、該シンチレータ74の柱状結晶構造84では、放射線16を可視光領域の蛍光(可視光130)に変換し、変換された可視光130は、柱状結晶構造84の柱状部分を進行し、接着層88a又は粘着層88b、及び、平坦化膜96を介して各光検出素子94に至る(図8B参照)。従って、各光検出素子94は、可視光130を電気信号(アナログ信号)に変換し、電荷としてそれぞれ蓄積する。TFT92は、各光検出素子94に蓄積された電荷を画像信号として読み出す。
【0079】
図5Bの構成は、基材90にTFT92と光検出素子94とが交互に形成されている点で図5Aの構成とは異なる。この場合、隣接する1つのTFT92と1つの光検出素子94とによって1画素分の領域が構成される。図5Bの構成でも、光検出基板72のTFT92及び光検出素子94側は、凹凸状である可能性もあるので、接着層88a又は粘着層88bを介したシンチレータ74と光検出基板72との密着性を高めるために、平坦化膜96を形成することが好ましい。
【0080】
図6Aの構成は、基材90にa−SiからなるTFT92のアレイと、アルミニウム等からなる金属の反射層98と、複数の光検出素子94とを順に積層し、光検出基板72の光検出素子94側に平坦化膜96を形成する点で、図5A及び図5Bの構成とは異なる。この場合、各光検出素子94は、可視光130を電気信号に変換するフォトダイオードの光検出部94aを2つの電極94b、94cで上下方向にそれぞれ挟み込んだ構造とされている。
【0081】
そして、図6Aの構成では、TFT92のアレイに反射層98を設けることにより、シンチレータ74からの可視光130又はリセット光源78からのリセット光132が光検出基板72に入射した場合には、これらの光は、反射層98で光検出素子94側に全て反射されるので、可視光130又はリセット光132の入射に起因したTFT92でのスイッチングノイズの発生を回避することができる。また、反射層98が可視光130又はリセット光132を反射することにより、これらの反射光が光検出素子94の光検出部94aに入射されるので、光検出部94aに入射される可視光130又はリセット光132の光量が増加する。この結果、可視光130に対する光検出部94aの感度が向上すると共に、リセット光132による光検出素子94の光リセットを効率よく行うことができる。
【0082】
なお、図6Aでは、TFT92のアレイに反射層98を積層した場合を図示しているが、この構成に代替して、各光検出素子94と重なるように、該各光検出素子94とTFT92のアレイとの間に反射層98を形成してもよい。この場合、1つの光検出素子94を1画素とする画素単位で、該光検出素子94と略同じ面積の反射層98を形成することになるので、該反射層98での可視光130又はリセット光132の反射に起因した各画素間でのクロストークの発生を回避することができる。
【0083】
図6Bの構成は、基材90にa−SiからなるTFT92とa−Siからなるフォトダイオードを用いた光検出素子94とが交互に形成されると共に、各TFT92の底板80側に遮光層100が形成され、さらに、光検出基板72の遮光層100及び光検出素子94側に平坦化膜96が形成される点で、図5A〜図6Aの構成とは異なる。
【0084】
この場合、TFT92に遮光層100を形成することにより、シンチレータ74からの可視光130やリセット光源78からのリセット光132が光検出基板72に入射しても、光検出素子94に向かって進行する光は、該光検出素子94に入射される一方で、TFT92に向かって進行する光は、遮光層100で全て吸収される。従って、図6Bの構成では、可視光130又はリセット光132を効率よく光検出素子94に入射させると共に、可視光130又はリセット光132の入射によるTFT92でのスイッチングノイズの発生を確実に回避することができる。
【0085】
図7の構成は、接着層88a又は粘着層88bと平坦化膜96との間に、放射線16の照射方向に対して斜め方向に進行する可視光130やリセット光132をカットする斜入光カット層102が介挿されている点で、図5A〜図6Bの構成とは異なる。斜入光カット層102は、可視光130又はリセット光132を透過する物質(例えば、シリコン樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂)からなる光透過部104と、可視光130又はリセット光132に対する吸収率の高い物質(例えば、暗色の金属酸化物、顔料又は染料)からなる遮光部106とを、平坦化膜96の表面(水平方向)に沿って交互に配列することにより構成される。
【0086】
この場合、放射線16の照射方向に対して所定角度以内で進行してきた可視光130又はリセット光132は、光透過部104を透過して光検出基板72に入射する。一方、前記所定角度を越えて斜め方向に傾いて進行してきた可視光130又はリセット光132は、遮光部106で全て吸収され、光検出基板72への入射が阻止される。この結果、可視光130に対する光検出素子94の感度が向上すると共に、リセット光132による光検出素子94の光リセットを確実に且つ効率よく行うことができ、さらには、斜め方向に入射した光に起因した放射線画像の画像ボケの発生を抑制することができる。
【0087】
なお、図5A〜図7の構成は、一例であり、これらの構成を適宜組み合わせて光検出基板72等を構成してもよい。例えば、図5B〜図6Bの各構成において、平坦化膜96の表面と接着層88a又は粘着層88bとの間に斜入光カット層102を介挿してもよい。
【0088】
次に、リセット光源78の具体的な構成と、該リセット光源78を使用した本実施形態に係る電子カセッテ20(第1〜第3実施例に係る電子カセッテ20A〜20C)の特徴的な機能とについて、図8A〜図12Bとを参照しながら説明する。なお、図8A〜図12Bでは、代表的に、第1実施例に係る電子カセッテ20Aにおける図5Aの構成を採用した場合について説明するが、該電子カセッテ20Aの他の構成(図5B〜図7の構成)であっても、あるいは、第2及び第3実施例に係る電子カセッテ20B、20Cであっても、図示された構成を適宜変更して適用可能であることは勿論である。また、図8A〜図12Bにおいても、説明の容易化のために、一部の構成要素を模式化して図示し、あるいは、誇張して図示する。
【0089】
被写体14に対する放射線16の非照射時(非撮影時)に、リセット光源78がシンチレータ74に向けてリセット光132を出力すると、該リセット光132は、シンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bと、平坦化膜96とを介して光検出素子94に入射する。このように、a−Si等からなるフォトダイオードを用いた光検出素子94にリセット光132が照射されることにより、該フォトダイオードの不純物準位に電荷を予め埋めておいて、放射線16の照射時(撮影時)に光検出素子94で可視光130から変換される電荷が前記不純物準位に捕捉されないようにする光リセットを行うことができる。
【0090】
なお、本実施形態のようなISS方式の電子カセッテ20(20A〜20C)の場合、筐体44内部では、放射線16の照射方向に沿って、光検出基板72と、接着層88a又は粘着層88bと、シンチレータ74と、リセット光源78との順に配置されているため、ほとんどの放射線16は、シンチレータ74において可視光130に変換され、該シンチレータ74を透過してリセット光源78に到達する放射線16は極めて少ないものと考えられる。従って、ISS方式の場合には、撮影時に、リセット光源78への放射線16の照射に起因してリセット光132が発生するという問題は発生しないか、あるいは、そのような問題が発生しても、光検出素子94に入射するリセット光132の光量が低いために、該リセット光132の照射に起因して発生するノイズは、医師による放射線画像の読影診断に影響を及ぼさない低レベルのノイズになるものと予想される。
【0091】
次に、リセット光源78を使用した本実施形態に係る電子カセッテ20(20A)の特徴的な機能について、図8A〜図10を参照しながら説明する。
【0092】
前述したように、シンチレータ74と光検出基板72とは、可視光130及びリセット光132に対して透過性を有する接着層88a又は粘着層88bを介して密着されている(図4A〜図7参照)。この場合、電子カセッテ20(20A)を使用し続けると、放射線16の照射に起因して接着層88a又は粘着層88bが劣化し、劣化した接着層88a又は粘着層88bが可視光130を吸収して、光検出素子94に入射する可視光130の光量を低下させてしまう。
【0093】
例えば、CsI:Tlのシンチレータ74が放射線16を青色波長領域の可視光130に変換する場合、該青色波長領域に対して比較的高い透過性を有する接着層88a又は粘着層88bが放射線16の照射により劣化して着色すれば、より具体的には、無色透明な接着層88a又は粘着層88bが放射線16の照射により酸化して黄変すれば、着色した接着層88a又は粘着層88bが青色波長領域の可視光130を吸収し、この結果、可視光130が光検出素子94に到達しないか、あるいは、光検出素子94に到達する可視光130の光量が減少する。なお、図9A及び図9Bでは、接着層88a又は粘着層88bでの黄変の発生を網掛けのハッチングで図示している。
【0094】
そして、同一線量の放射線16を照射する毎に、光検出素子94が可視光130を検出して、該可視光130の光量に応じた信号レベル(検出量)の電気信号を出力する場合に、接着層88a又は粘着層88bの劣化前(例えば、電子カセッテ20の使用開始時)と、劣化後とで、光検出素子94から出力される電気信号の信号レベル(検出量)を比較すれば、図10に示すように、劣化前の検出量A0に対して、劣化後の検出量は、着色後の接着層88a又は粘着層88bでの可視光130の吸収に起因して、A1にまで低下する。従って、放射線16の照射に起因した接着層88a又は粘着層88bの劣化は、可視光130に対する光検出素子94の感度も低下させてしまう。
【0095】
なお、CsI:Tlの場合、可視光130のピーク波長は、緑色光の波長であるが、該緑色光の波長も含む青色波長領域の光は、放射線画像の画像ボケにつながりにくい。そのため、上述のように、接着層88a又は粘着層88bにおける青色波長領域の光の吸収によって、光検出素子94に入射される前記青色波長領域の光量が低下すると、放射線画像の画質が相対的に低下して画像ボケが発生しやすくなる。
【0096】
このように、接着層88a又は粘着層88bが着色(黄変)しているのに、電子カセッテ20を使用し続けると、医師の読影診断に適した高画質且つ高感度の放射線画像を取得することが困難になる。従って、放射線16の照射による接着層88a又は粘着層88bの劣化を確実に検知し、その検知結果を医師等に報知して、劣化した接着層88a又は粘着層88bを有する電子カセッテ20を速やかに修理又は交換(新しい接着層88a又は粘着層88bによる密着等)できることが望ましい。
【0097】
特に、ISS方式の電子カセッテ20では、放射線16の照射方向に沿って、光検出基板72と、接着層88a又は粘着層88bと、シンチレータ74と、リセット光源78との順に配置され、該放射線16は、シンチレータ74に到達する前に、接着層88a又は粘着層88bを必ず透過する。従って、被写体14に対する放射線撮影に当該電子カセッテ20を使用し続けると、撮影毎に、接着層88a又は粘着層88bに放射線16が照射されるので、放射線16の照射による接着層88a又は粘着層88bの劣化(酸化による黄変)が促進されやすく、接着層88a又は粘着層88bの劣化に起因した光検出素子94における可視光130の感度の低下が顕著である。
【0098】
そこで、本実施形態に係る電子カセッテ20(20A)では、リセット光源78が、接着層88a又は粘着層88bを介して光検出素子94にリセット光132を照射する光リセット用の光源としての機能と、接着層88a又は粘着層88bの劣化検知用光を接着層88a又は粘着層88bに照射する検査用光源との機能とを兼ね備えている。
【0099】
具体的に、リセット光源78は、筐体44の底板80に配置された基板140上に、接着層88a又は粘着層88b及び光検出素子94と対向するように、発光ダイオード(LED)等の3種類の発光素子142a〜142cを交互に配置することにより構成される。
【0100】
発光素子142aは、接着層88a又は粘着層88bに向けて赤色光132aを発光する赤色光源であり、発光素子142bは、接着層88a又は粘着層88bに向けて緑色光132bを発光する緑色光源であり、発光素子142cは、接着層88a又は粘着層88bに向けて青色光132cを発光する青色光源である。
【0101】
そして、リセット光源78は、光検出素子94に対する光リセットを行う場合には、3種類の発光素子142a〜142cを一斉に駆動させて、3色の光(赤色光132a、緑色光132b及び青色光132c)を同時に発光させることにより、これらの3色の光を合成したリセット光132(光リセット用の白色光(一方の光)、第1の波長の光)として出力する(図8A参照)。従って、赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cを合成して得られる白色光がリセット光132としてシンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bと、平坦化膜96とを介して光検出素子94に入射することにより、該光検出素子94に対する光リセットが行われる。
【0102】
一方、リセット光源78が接着層88a又は粘着層88bの劣化(黄変)を検知するための検知用光源として機能する場合、該リセット光源78は、少なくとも発光素子142cを駆動させて青色光132c(光リセット以外の用途に利用される他方の光、第2の波長の光)を発光させることにより、該青色光132cを劣化検知用光としてシンチレータ74を介し接着層88a又は粘着層88bに照射させる。この場合、接着層88a又は粘着層88bが劣化して黄変が発生していれば(図9A及び図9B参照)、青色光132cは、黄変した接着層88a又は粘着層88bに吸収されて、光検出素子94に到達しないか、あるいは、光量が減少した状態で光検出素子94に入射する。
【0103】
光検出素子94は、接着層88a又は粘着層88bを通過した青色光132cを検出し、該青色光132cの光量に応じた電気信号(光検出信号)を出力する。従って、接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生していないときの光検出信号のレベル(電子カセッテ20Aの使用開始時の光検出信号のレベルであって光検出量A0)と、接着層88a又は粘着層88bに実際に青色光132cを照射させたときの光検出信号のレベル(例えば、現時点での光検出信号のレベルとしての光検出量A1)とを比較することで、接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生しているか否かを把握(検知)することが可能となる。
【0104】
このような劣化検知動作は、例えば、電子カセッテ20の定期的なメンテナンス、又は、毎日の撮影前における電子カセッテ20のキャリブレーションに追加する形で行われることが望ましい。
【0105】
なお、上記の説明では、青色光132cのみを劣化検知用光として接着層88a又は粘着層88bに照射することにより、接着層88a又は粘着層88bに対する劣化検知を実施する場合について説明した。
【0106】
本実施形態に係る電子カセッテ20では、劣化検知動作に用いられる劣化検知用光は、光リセット時にリセット光源78から出力されるリセット光132のピーク波長(白色光の波長)とは異なるピーク波長を含む波長域の光であって、接着層88a又は粘着層88bが吸収可能なピーク波長を含む波長域の光であればよい。
【0107】
従って、劣化検知動作では、上述した動作を含め、例えば、下記(1)〜(4)のいずれかの動作を採用することによって、接着層88a又は粘着層88bの劣化検知を実施することが可能である。
【0108】
(1)青色光132cを劣化検知用光として接着層88a又は粘着層88bに照射する場合。
【0109】
(2)緑色光132bを劣化検知用光として接着層88a又は粘着層88bに照射する場合。
【0110】
(3)緑色光132bと青色光132cとを劣化検知用光として一斉に接着層88a又は粘着層88bに照射する場合。
【0111】
(4)赤色光132aと緑色光132bと青色光132cとを時間をずらして順次照射する場合。
【0112】
なお、赤色光132aと緑色光132bと青色光132cとを時間をずらして順次照射する場合、接着層88a又は粘着層88bが劣化(黄変)していれば、例えば、赤色光132aは、接着層88a又は粘着層88bに吸収されず、そのまま光検出素子94に入射され、緑色光132bは、接着層88a又は粘着層88bに光量の一部が吸収されて光検出素子94に入射され、青色光132cは、接着層88a又は粘着層88bに吸収されて光検出素子94に到達しないことになる(図9B参照)。
【0113】
この結果、(4)において、光検出素子94では、赤色光132aについては、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無に関わらず光検出信号の検出量が変化せず(検出量A0を維持し)、緑色光132bについては、接着層88a又は粘着層88bの劣化によって光検出信号の検出量が減少し(検出量がA0からA1に変化し)、青色光132cについては、接着層88a又は粘着層88bの劣化によって光検出信号の検出量が略ゼロレベルになる。従って、(4)の場合には、異なる時点での各検出量を比較することで、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無を判定することが可能となる。
【0114】
また、リセット光源78は、図8A〜図9Bの発光素子142a〜142cのアレイに代えて、図11A〜図12Bの構成としてもよい。
【0115】
図11A及び図11Bのリセット光源78は、シンチレータ74と接着層88a又は粘着層88bとを介して光検出基板72と対向するように配置されたエッジライト式のバックライトである。
【0116】
この場合、バックライトのリセット光源78では、筐体44の底板80とシンチレータ74との間に導光板150が配置されると共に、該導光板150の側部には、3種類の発光素子162a〜162cが一列に(アレイ状に)配列された基板160が配置されている。この場合、発光素子162a〜162c及び基板160の配置箇所は、放射線16の非照射領域とされている。また、導光板150とシンチレータ74との間には拡散シート154が介挿されると共に、導光板150、3種類の発光素子162a〜162c及び基板160を囲繞するように反射シート156が配置されている。
【0117】
ここで、3種類の発光素子162a〜162cから導光板150に赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cがそれぞれ入射すると、導光板150に入射した赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cは、該導光板150内で反射シート156及び拡散シート154との間で表面反射を繰り返して導光板150全体に広がった後に、拡散シート154からシンチレータ74に面発光のリセット光132(白色光)として出射される。これにより、リセット光源78は、シンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bと、平坦化膜96とを介して各光検出素子94に均一にリセット光132を照射して光リセットを行うことができる。なお、図11Aでは、1本のリセット光132のみ図示している。
【0118】
一方、バックライトのリセット光源78を劣化検知用光源として機能させる場合には、上述した(1)〜(4)のいずれかの方法により、発光素子162a〜162cを発光させれば、導光板150から拡散シート154を介してシンチレータ74に面発光の劣化検知用光(前記白色光のピーク波長とは異なるピーク波長を含む波長域の光)を出力することができる。
【0119】
図12Aのリセット光源78もエッジライト式のバックライトであるが、発光素子162a〜162c及び基板160に代替して、3種類の冷陰極管152a〜152cを配置している点で、図11Bの構成とは異なる。従って、この場合でも、各冷陰極管152a〜152cの配置箇所は、放射線16の非照射領域である。
【0120】
この場合も、3種類の冷陰極管152a〜152cから導光板150に赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cがそれぞれ入射すると、導光板150に入射した赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cは、該導光板150内で反射シート156及び拡散シート154との間で表面反射を繰り返して導光板150全体に広がった後に、拡散シート154からシンチレータ74に面発光のリセット光132(白色光)として出射される。また、該リセット光源78を劣化検知用光源として機能させる場合には、上述した(1)〜(4)のいずれかの方法に基づいて、冷陰極管152a〜152cを駆動させることにより、導光板150から拡散シート154を介してシンチレータ74に面発光の劣化検知用光(前記白色光のピーク波長とは異なるピーク波長を含む波長域の光)を出力することができる。なお、図11Bでは、1本の緑色光132bのみ図示している。
【0121】
図12Bのリセット光源78は、3つのエレクトロルミネッセンス光源78a〜78cを放射線16の照射方向に積層して構成したものである。この場合、各エレクトロルミネッセンス光源78a〜78cは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)光源又は無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)光源である。
【0122】
すなわち、リセット光源78では、赤色光132aを発光する最下層のエレクトロルミネッセンス光源78aに電気絶縁層166を介して緑色光132bを発光する中間層のエレクトロルミネッセンス光源78bが積層され、該エレクトロルミネッセンス光源78bに電気絶縁層168を介して青色光132cを発光する最上層のエレクトロルミネッセンス光源78cが積層されている。
【0123】
この場合、エレクトロルミネッセンス光源78aは、有機EL材料又は無機EL材料からなる発光層170aを、リセット光132を透過可能なITOからなる透明電極172aと、該リセット光132に対して非透過な金属電極174aとで狭持した構造を有する。また、エレクトロルミネッセンス光源78bは、有機EL材料又は無機EL材料からなる発光層170bを、リセット光132を透過可能なITOからなる2つの透明電極172b、174bで狭持した構造を有する。さらに、エレクトロルミネッセンス光源78cは、有機EL材料又は無機EL材料からなる発光層170cを、リセット光132を透過可能なITOからなる2つの透明電極172c、174cで狭持した構造を有する。
【0124】
そして、図示しない電源から透明電極172aと金属電極174aとの間に電圧(例えば、透明電極172aが正極性になると共に金属電極174aが負極性になる電圧)を印加すれば、発光層170aから透明電極172aを介して面発光の赤色光132aを出力することができる。また、前記電源から2つの透明電極172b、174b間に電圧(例えば、透明電極172bが正極性になると共に透明電極174bが負極性になる電圧)を印加すれば、発光層170bから透明電極172bを介して面発光の緑色光132bを出力することができる。さらに、前記電源から2つの透明電極172c、174c間に電圧(例えば、透明電極172cが正極性になると共に透明電極174cが負極性になる電圧)を印加すれば、発光層170cから透明電極172cを介して面発光の青色光132cを出力することができる。
【0125】
このように、3種類のエレクトロルミネッセンス光源78a〜78cを積層して構成されたリセット光源78においても、シンチレータ74と接着層88a又は粘着層88bと平坦化膜96とを介して各光検出素子94に均一にリセット光132を照射して光リセットを行い、あるいは、上記(1)〜(4)のいずれかの方法に従って、劣化検知用光をシンチレータ74を介して接着層88a又は粘着層88bに均一に照射することができる。
【0126】
図13A〜図14は、第1実施例に係る電子カセッテ20Aの製造工程を図示したものである。
【0127】
先ず、図13Aに示すように、蒸着基板240に剥離層242を介してシンチレータ74を成膜する。次に、図13Bに示すように、CVD法(化学気相成長法)によって、柱状結晶構造84における各柱をポリパラキシリレン樹脂で被覆するように、シンチレータ74を防湿保護材86で封止する。次に、図13Cに示すように、光検出基板72を転写体として、シンチレータ74の先端部分と光検出基板72とを接着層88aにより接着させるか、あるいは、粘着層88bにより粘着させる。なお、転写体としての光検出基板72に対するシンチレータ74等の接着又は粘着(転写)は、公知の転写技術を利用して行えばよい。
【0128】
次に、剥離層242に図示しないレーザ光を照射することにより、図14に示すように、シンチレータ74に対して蒸着基板240及び剥離層242を剥離させる。その後、図4Aに示す順に、筐体44内部に光検出基板72、シンチレータ74及びリセット光源78を組み込むことにより、筐体44内に放射線検出器70が収容される。
【0129】
なお、第2実施例に係る電子カセッテ20Bを製造する場合には、図14の工程の後、シンチレータ74の非柱状結晶部分82側を除去し、最後に、図4Bに示す順に、筐体44内部に光検出基板72、シンチレータ74及びリセット光源78を組み込めばよい。また、第2実施例の場合、非柱状結晶部分82が形成されないような蒸着条件を決定した後に、該蒸着条件に従って蒸着基板240にシンチレータ74を蒸着形成してもよい。このようにすれば、該非柱状結晶部分82での光散乱の発生を回避することができる。
【0130】
また、第3実施例に係る電子カセッテ20Cを製造する場合には、リセット光132に対して透過性を有する蒸着基板108にシンチレータ74を直接成膜し、その後、図4Cに示す順に、筐体44内部に光検出基板72、シンチレータ74及びリセット光源78を組み込めばよい。なお、リセット光132に対して透過性を有する蒸着基板108としては、ガラス基板の他にも、光透過性を有するポリイミドフイルム、ポリアリレートフイルム、二軸延伸ポリスチレンフイルム、アラミドフイルム又はバイオナノファイバのような可撓性を有するプラスチックフイルムであればよい。
【0131】
図15は、図1に示す電子カセッテ20(20A〜20C)の電気的な概略構成図である。
【0132】
電子カセッテ20(20A〜20C)の光検出基板72は、基材90(図5A〜図7参照)にアレイ状(行列状)に光検出素子94及びTFT92を配置した構造を有する。なお、以下の説明では、光検出素子94を画素190ともいう。
【0133】
行列状に配置された各画素190は、駆動回路部180のバイアス電源192からバイアス電圧が供給されることにより駆動し、シンチレータ74において放射線16から変換された可視光130を光電変換することで発生した電荷を蓄積する。各画素190に蓄積された電荷は、各列毎にTFT92を順次オンすることにより、各信号線196を介してアナログ信号の画素値(電荷信号、電気信号)として読み出すことができる。なお、図15では便宜上、画素190及びTFT92を、縦4個×横4個の配列としているが、所望の個数の配列としてもよいことは勿論である。
【0134】
各画素190に接続されるTFT92には、行方向に延びるゲート線194と、列方向に延びる信号線196とが接続されている。各ゲート線194は、駆動回路部180を構成するゲート駆動部198に接続され、各信号線196は、チャージアンプ200を介して、駆動回路部180を構成するマルチプレクサ部202に接続される。マルチプレクサ部202には、アナログ信号の電気信号をデジタル信号の電気信号に変換するAD変換部204が接続されている。AD変換部204は、デジタル信号に変換した電気信号(デジタル信号の画素値、以下、デジタル値という場合もある)をカセッテ制御部182に出力する。なお、駆動回路部180は、パネル部40又は制御部42(図2参照)に配置されている。また、カセッテ制御部182は、制御部42に配置されている。
【0135】
カセッテ制御部182は、電子カセッテ20(20A〜20C)全体の制御を行う。この場合、コンピュータ等の情報処理装置に所定のプログラムを読み込ませることによって、コンピュータをカセッテ制御部182として機能させることができる。
【0136】
カセッテ制御部182には、メモリ184及び通信部(報知部)186が接続されている。メモリ184は、デジタル信号の画素値を記憶し、通信部186は、コンソール22との間で信号の送受信を行う。この場合、通信部186は、複数の画素値が行列状に配置されて構成される1枚の画像(1フレームの画像)をコンソール22にパケット送信する。電源部188は、カセッテ制御部182、メモリ184及び通信部186等に電力を供給すると共に、バイアス電源192にも供給する。なお、メモリ184、通信部186及び電源部188も制御部42に収容されている。
【0137】
カセッテ制御部182は、撮影オーダ判定部210、光リセット動作判定部214、光源制御部218、着色検知動作判定部220及び劣化判定部222を有する。
【0138】
撮影オーダ判定部210は、被写体14に対する放射線16の照射(放射線画像の撮影)に関わるオーダ情報(撮影オーダ)をコンソール22から受信した際に、撮影オーダに含まれる撮影方法を特定(判定)する。なお、オーダ情報(撮影オーダ)とは、RIS26又はHIS28において、医師により作成されるものであり、被写体14の氏名、年齢、性別等、被写体14を特定するための被写体情報に加えて、撮影に使用する放射線出力装置18及び電子カセッテ20の情報や、被写体14の撮影部位や撮影での手技、撮影方法(静止画撮影、動画撮影)等が含まれる。
【0139】
光リセット動作判定部214は、撮影オーダ判定部210において特定された撮影方法に基づいて、各光検出素子94に対して光リセットを行うべきか否かを判定する。光源制御部218は、光リセット動作におけるリセット光源78からのリセット光132の出力を制御し、あるいは、劣化検知動作時におけるリセット光源78からの赤色光132a、緑色光132b及び/又は青色光132cの出力を制御する。
【0140】
着色検知動作判定部220は、定期的なメンテナンス時、又は、毎日の撮影開始前に、光源制御部218に対して、リセット光源78からの劣化検知用光の出力を指示する。
【0141】
また、着色検知動作判定部220からの指示に従って、光源制御部218がリセット光源78を制御し、該リセット光源78からシンチレータ74を介して接着層88a又は粘着層88bに劣化検知用光(例えば、青色光132c)が照射された場合、光検出素子94は、接着層88a又は粘着層88bを介して入射された前記劣化検知用光に応じた電気信号(光検出信号)を検出し、電荷として蓄積する。
【0142】
そこで、劣化判定部222は、TFT92を順次オンすることにより、各信号線196を介して読み出された光検出信号の信号レベル(出力レベル)等に基づいて、接着層88a又は粘着層88bが放射線16の照射により劣化しているか否かを判定する。
【0143】
なお、撮影オーダ判定部210での撮影方法の特定結果(判定結果)、光リセット動作判定部214での判定結果、光源制御部218によるリセット光源78の制御の状況、着色検知動作判定部220から光源制御部218への指示の状況、及び、劣化判定部222による接着層88a又は粘着層88bの劣化の判定結果は、表示操作部56で画面表示され、スピーカ58を介して音として出力され、さらには、通信部186から無線通信によりコンソール22に送信(通知)される。
【0144】
本実施形態に係る電子カセッテ20(20A〜20C)を有する放射線画像撮影システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について、図16〜図19を参照しながら説明する。
【0145】
図16〜図19の説明では、第1実施例に係る電子カセッテ20Aを使用した場合の放射線画像撮影システム10の動作について説明するが、第2及び第3実施例に係る電子カセッテ20B、20Cを使用した場合でも、同様に適用可能であることは勿論である。
【0146】
ここでは、最初に、放射線画像撮影システム10の基本動作としての被写体14に対する放射線撮影について、図16及び図17を参照しながら説明し、次に、定期的なメンテナンス時又は毎日の撮影前に行われる接着層88a又は粘着層88bの劣化検知動作について、図18及び図19を参照しながら説明する。
【0147】
先ず、図16のステップS1において、コンソール22(図1参照)は、医師がRIS26又はHIS28において作成したオーダ情報(撮影オーダ)を取得する。ステップS2において、医師は、コンソール22が取得したオーダ情報に基づき、被写体14の撮影条件を設定する。なお、撮影条件とは、例えば、放射線源30の管電圧や管電流、放射線16の曝射時間等、被写体14の撮影部位に対して放射線16を照射させるために必要な各種の条件である。
【0148】
ステップS3において、医師は、所定の保管場所に保管されている電子カセッテ20(20A)の取手52(図2及び図3参照)を把持して該電子カセッテ20Aを搬送し、撮影台12上に設置する。次のステップS4において、医師は、被写体14の撮影部位が撮影可能領域50に納まるように該被写体14を撮影台12及び電子カセッテ20A上に横臥させて、撮影可能領域50に対する前記撮影部位のポジショニングを行う。
【0149】
この場合、電源部188(図15参照)は、カセッテ制御部182、通信部186及び表示操作部56に対しては、電力を常時供給している。そして、被写体14のポジショニングが完了した後に、医師が表示操作部56を操作して、電子カセッテ20Aの起動を指示すると、カセッテ制御部182は、電源部188から駆動回路部180及びスピーカ58への電力供給を開始させる。これにより、バイアス電源192は、各画素190(光検出素子94)に対するバイアス電圧の供給を開始するので、該各画素190は、電荷蓄積が可能な状態となる。また、スピーカ58は、カセッテ制御部182からの信号を音として外部に出力することが可能な状態に至る。この結果、電子カセッテ20Aは、スリープ状態から起動状態に切り替わる。
【0150】
そして、カセッテ制御部182は、通信部186を介して無線によりコンソール22に撮影オーダや撮影条件の送信を要求する送信要求信号を送信する。コンソール22は、前記送信要求信号を受信すると、電子カセッテ20Aに対して前記撮影オーダ及び前記撮影条件を無線により送信すると共に、放射線出力装置18に対して前記撮影条件を無線により送信する。これにより、放射線出力装置18では、受信された前記撮影条件が放射線制御装置32に登録される。また、電子カセッテ20Aでは、受信された前記撮影オーダ及び前記撮影条件がカセッテ制御部182に登録される。なお、カセッテ制御部182は、前記オーダ情報及び前記撮影条件を受信すると、これらの情報を表示操作部56に表示させてもよい。
【0151】
ステップS5において、カセッテ制御部182の撮影オーダ判定部210は、撮影オーダに含まれる撮影方法(少なくとも1枚の静止画撮影、動画撮影)を判定し、その判定結果を光リセット動作判定部214に通知すると共に、表示操作部56にも表示させる。
【0152】
光リセット動作判定部214は、撮影オーダ判定部210から通知された判定結果に基づいて、各画素190(各光検出素子94)に対する光リセットを行うべきか否かを判定する。例えば、静止画撮影や、比較的低いフレームレートでの動画撮影を示す判定結果の場合、光リセット動作判定部214は、各画素190に対する光リセット動作は不要と判定し(ステップS6:NO)、光リセット動作不要の判定結果を、光源制御部218に通知すると共に、表示操作部56にも表示させる。さらには、スピーカ58から前記判定結果を示す音を出力してもよい。一方、比較的高いフレームレートでの動画撮影を示す判定結果の場合、光リセット動作判定部214は、各画素190に対する光リセット動作が必要と判定し(ステップS6:YES)、光リセット動作の実行を指示する旨の判定結果を、光源制御部218に通知すると共に、表示操作部56にも表示させ、さらには、スピーカ58から前記判定結果を示す音として出力させる。
【0153】
ステップS6で肯定的な判定結果であった場合に、光源制御部218は、ステップS7において、前記判定結果に基づいて、リセット光源78(図3、図4A、図5A、図8A〜図9B及び図11A〜図12B参照)を駆動してリセット光132の出力を開始させる。この場合、リセット光源78は、赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cを一斉に発光させて、これらの光を合成した白色光をリセット光132として出力する。これにより、リセット光132は、シンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bとを介して光検出基板72に入射する。この結果、各画素190(各光検出素子94)に対する光リセットが行われる。その後、光源制御部218は、リセット光源78からのリセット光132の出力を停止させることにより、光リセット動作を終了させる。
【0154】
なお、ステップS5、S6の各判定結果が表示操作部56に表示されるので、医師は、該表示操作部56の表示内容を視認することにより、撮影方法や、各画素190に対する光リセット動作の実行の有無を把握することができる。また、ステップS5、S6の各判定結果を示す音をスピーカ58から出力すれば、医師は、前記音を聞くことにより、撮影方法や、各画素190に対する光リセット動作の有無を理解することができる。さらに、前記各判定結果を通信部186から無線通信によりコンソール22に送信してもよい。この場合、コンソール22は、受信した前記各判定結果を無線通信により表示装置24に転送して、該表示装置24に表示させることができるので、医師は、撮影方法や、各画素190に対する光リセット動作の有無を確実に把握することができる。
【0155】
このようにして、ステップS7の光リセット動作が終了した後、あるいは、ステップS6における光リセット不要の判定処理の後、図17のステップS8において、医師が放射線スイッチ34を半押すると、放射線制御装置32は、放射線16の照射準備を行うと共に、照射準備を通知する通知信号をコンソール22に無線により送信する。コンソール22は、放射線源30からの放射線16の照射と同期させるための同期制御信号を無線により電子カセッテ20Aに送信する。電子カセッテ20Aのカセッテ制御部182は、前記同期制御信号を受信すると、照射準備に入ったことを示す情報を表示操作部56に表示させると共に、スピーカ58を介して外部に音として通知してもよい。
【0156】
その後、医師が放射線スイッチ34を全押すると、放射線制御装置32は、放射線源30から放射線16を前記撮影条件で設定された所定時間だけ被写体14の撮影部位に照射する(ステップS9)。この場合、放射線制御装置32は、放射線16の照射開始と同時に、照射開始を通知する通知信号を無線によりコンソール22に送信してもよい。コンソール22は、受信した前記通知信号を電子カセッテ20Aに転送し、該電子カセッテ20Aのカセッテ制御部182は、前記通知信号を受信すると、照射中であることを情報を表示操作部56に表示させると共に、スピーカ58を介して外部に音として通知してもよい。
【0157】
そして、放射線16が被写体14の撮影部位を透過して電子カセッテ20Aの放射線検出器70に至ったステップS10において、該放射線検出器70は、図3及び図4Aに示すISS方式の放射線検出器であるため、放射線16は、光検出基板72と接着層88a又は粘着層88bとを介してシンチレータ74の柱状結晶構造84に至る。
【0158】
柱状結晶構造84は、放射線16の強度に応じた強度の可視光130(図8B参照)を発光し、可視光130は、柱状結晶構造84の柱状部分から接着層88a又は粘着層88bを介して光検出基板72に入射する。各画素190は、平坦化膜96を介して入射された可視光130を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。次いで、各画素190に保持された被写体14の撮影部位の放射線画像である電荷情報は、カセッテ制御部182からゲート駆動部198に供給される駆動信号に従って読み出される。
【0159】
すなわち、ゲート駆動部198は、ゲート線194を0行目から順次選択し、選択したゲート線194にゲート信号を供給して、該ゲート信号が供給されたTFT92をオンにすることで、各画素190に蓄積された電荷を0行目から行単位で順次読み出す。各画素190から行単位で順次読み出された電荷は、各信号線196を介して各列のチャージアンプ200に入力され、その後、マルチプレクサ部202及びAD変換部204を介して、デジタル信号の電気信号としてメモリ184に記憶される(ステップS11)。つまり、メモリ184には、行単位で得られた1行分の画像データが順次記憶される。
【0160】
メモリ184に記憶された放射線画像は、電子カセッテ20Aを識別するためのカセッテID情報と共に、通信部186を介して無線によりコンソール22に送信される。コンソール22は、受信された放射線画像及びカセッテID情報を表示装置24に表示させる(ステップS12)。また、カセッテ制御部182は、放射線画像及びカセッテID情報を共に表示操作部56に表示させてもよい。
【0161】
医師は、表示装置24又は表示操作部56の表示内容を視認して放射線画像が得られたことを確認した後に、撮影オーダに登録された全ての撮影が完了したのであれば(ステップS13:YES)、被写体14をポジショニング状態から解放する(ステップS14)。
【0162】
次に、医師は、表示操作部56を操作して、電子カセッテ20Aの停止を指示すると、カセッテ制御部182は、電源部188から駆動回路部180及びスピーカ58への電力供給を停止させる。これにより、バイアス電源192から各画素190へのバイアス電圧の供給も停止する。この結果、電子カセッテ20Aは、起動状態からスリープ状態に移行する。
【0163】
ステップS15において、医師は、表示操作部56の表示が消えて電子カセッテ20Aがスリープ状態に移行したことを確認した後に、該電子カセッテ20Aの取手52を把持して、電子カセッテ20Aを所定の保管場所にまで搬送する。
【0164】
なお、ステップS13において、全ての撮影が完了していない場合には(ステップS13:NO)、次の撮影に先立って、ステップS6の判定処理が再度行われる。この場合、次の撮影が静止画撮影であれば、ステップS6(及びステップS7)の処理後、ステップS8の処理が再度行われる。また、次の撮影が動画撮影における次のフレームでの撮影であれば、ステップS6(及びステップS7)の処理後、ステップS8の処理が省略され、ステップS9の処理が行われる。
【0165】
放射線画像撮影システム10の基本動作(被写体14に対する放射線撮影)は、以上の通りである。
【0166】
次に、定期的なメンテナンス時又は毎日の撮影前に行われる接着層88a又は粘着層88b(図4A、図5A〜図9B、図11A、図12A及び図12B参照)の劣化検知動作について、図18及び図19を参照しながら説明する。
【0167】
先ず、定期的なメンテナンス時又は毎日の撮影前に、医師は、所定の保管場所に保管されている電子カセッテ20(20A)の取手52(図2及び図3参照)を把持して該電子カセッテ20Aを搬送し、撮影台12(図1参照)上に設置する。次に、医師は、表示操作部56(図2及び図5参照)を操作して、電子カセッテ20Aを起動させる。これにより、カセッテ制御部182は、電源部188から駆動回路部180及びスピーカ58への電力供給を開始させ、バイアス電源192は、各画素190に対するバイアス電圧の供給を開始して、該各画素190を電荷蓄積が可能な状態とさせる。
【0168】
また、医師は、例えば、表示操作部56を操作して、電子カセッテ20Aのメンテナンスや撮影前のキャリブレーションの実行を指示する。これにより、着色検知動作判定部220及び劣化判定部222は、電子カセッテ20Aのメンテナンス又はキャリブレーションが実行されることを把握することができる。
【0169】
そして、図18のステップS21〜S23において、被写体14がいない状態で図17のステップS8〜S10と同様の放射線撮影を行う。これにより、各画素190は、可視光130を電気信号に変換し、電荷(放射線検出量)として蓄積する。従って、各画素190に蓄積された電荷は、被写体14がいない状態で撮影された放射線画像に応じた電荷情報となる。
【0170】
そして、各画素190に保持された、被写体14がいない状態での電荷情報は、前述したステップS10の処理と同様に、カセッテ制御部182からゲート駆動部198に供給される駆動信号に従って読み出され、デジタル信号の電気信号としてメモリ184に記憶される(ステップS24)。この場合、メモリ184には、各画素190の信号レベル(出力レベル)としての前記電荷情報に応じたデジタル信号の画素値(放射線検出量)A2が記憶される。
【0171】
その後、電子カセッテ20Aでは、必要に応じて、ステップS7と同様の光リセット動作を行ってもよい(ステップS25)。
【0172】
次のステップS26において、着色検知動作判定部220は、メモリ184に各画素190毎の画素値A2が記憶され、必要に応じて光リセット動作が行われたことを確認した後に、光源制御部218に対してリセット光源78からの劣化検知用光の出力を指示する。光源制御部218は、着色検知動作判定部220からの指示に従って、リセット光源78からシンチレータ74を介して接着層88a又は粘着層88bに劣化検知用光(例えば、青色光132c)を照射する。
【0173】
接着層88a又は粘着層88bを通過した前記劣化検知用光は、光検出素子94に入射し、光検出素子94は、入射した前記劣化検知用光を電気信号(光検出信号)に変換し、電荷(光検出量)として蓄積する(ステップS27)。
【0174】
次のステップS28において、ゲート駆動部198は、ステップS10、S23と同様に、カセッテ制御部182から供給される駆動信号に従って、各画素190に保持された、前記劣化検知用光に応じた前記電荷情報を読み出し、デジタル信号の電気信号としてメモリ184に記憶させる。この場合、メモリ184には、各画素190の信号レベル(出力レベル)としての前記電荷情報に応じたデジタル信号の画素値(光検出量)A3が記憶される。
【0175】
この結果、メモリ184には、メンテナンス時又はキャリブレーション時に、被写体14がいない状態での放射線撮影と劣化検知動作とが行われることにより、前記メンテナンス時又は前記キャリブレーション時における放射線検出量としての画素値A2と、光検出量としての画素値A3とが各画素190(光検出素子94)毎に記憶される。なお、メモリ184には、電子カセッテ20Aの使用開始時における各画素190毎の放射線検出量の画素値(初期値)A20及び光検出量の画素値(初期値)A30も記憶されている。
【0176】
そこで、劣化判定部222は、次のステップS29において、メモリ184から各画素190毎の画素値A2と初期値A20とを全て読み出し、画素値A2と初期値A20との比R(R=A2/A20)を各光検出素子94毎に算出する。
【0177】
ここで、比Rは、使用開始時(初期状態)の電子カセッテ20Aでの放射線検出量の初期値A20に対する、現時点での放射線検出量の画素値A2の低下の割合、すなわち、各画素190における放射線16から変換された可視光130の検出能力の低下率を示している。例えば、初期値A20に対して、現時点での画素値A2が0.9×A20であれば、R=A2/A20=0.9(90%)であり、前記検出能力が10%低下していることを示している。
【0178】
そして、次のステップS30において、劣化判定部222は、上記のようにして求めた比Rが所定の閾値Rthよりも低下しているか否かを各画素190毎に判定する。
【0179】
R<Rthとなった画素190の総数が所定数を超えた場合(ステップS30:YES)、劣化判定部222は、電子カセッテ20A内部に何らかの故障が発生しているものと判断し、次に、メモリ184から各画素190の画素値A3と初期値A30とを全て読み出す。そして、劣化判定部222は、各画素190毎に、初期値A30に比Rを乗じて、現時点での各画素190で検出され得る光検出量に応じた画素値の閾値A3th(A3th=R×A30)を算出する(ステップS31)。
【0180】
この閾値A3thは、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無を判定するための閾値であり、劣化検知動作によって実際に得られた画素値A3が閾値A3thよりも低レベルであれば、接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生しているものと判定される。なお、上述のように、各画素190における前記検出能力が低下していれば、各画素190毎の画素値A3も該検出能力の低下の影響を受けているものと想定される。従って、本実施形態では、電子カセッテ20Aの使用開始時の初期値A30ではなく、前記検出能力の低下率を示す比Rを考慮した閾値A3thを用いて、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無を判定する。
【0181】
すなわち、ステップS32において、劣化判定部222は、各光検出素子94毎に、画素値A3と閾値A3thと比較し、A3<<A3th(又は、A3<A3th)であるか否かを判定する。
【0182】
そして、A3<<A3th(又は、A3<A3th)となった画素190の総数が所定数を超えた場合(ステップS32:YES)、劣化判定部222は、接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生したと判定し(ステップS33)、その判定結果を表示操作部56で画面表示し、スピーカ58を介して音として出力する(ステップS34)。また、劣化判定部222は、通信部186から無線通信によりコンソール22に送信(通知)し、コンソール22は、受信した前記判定結果を無線通信により表示装置24に転送して、該表示装置24に表示させる(ステップS34)。
【0183】
これにより、医師は、表示操作部56又は表示装置24の表示内容を視認することにより、あるいは、スピーカ58からの音を聞くことにより、接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生したことを把握し、電子カセッテ20Aの修理又は交換の依頼等、必要な対策を取ることができる。また、電子カセッテ20Aからコンソール22に前記判定結果が送信され、あるいは、コンソール22からRIS26やHIS28にも前記判定結果が転送されれば、電子カセッテ20Aの製造業者に対して、具体的な故障内容(接着層88a又は粘着層88bの劣化)を含めた該電子カセッテ20Aの修理又は交換の依頼も速やかに行うことができる。
【0184】
一方、ステップS32が肯定的な判定結果ではない場合、すなわち、多数の画素190(光検出素子94)においてA3≧A3thの結果である場合には、劣化判定部222は、接着層88a又は粘着層88bが劣化しているのではなく、シンチレータ74の劣化が発生しているものと判定し(ステップS35)、その判定結果を表示操作部56で画面表示し、スピーカ58を介して音として出力し、さらには、通信部186から無線通信によりコンソール22に送信(通知)する(ステップS34)。また、この場合でも、劣化判定部222は、通信部186から無線通信によりコンソール22に送信(通知)し、コンソール22は、受信した前記判定結果を無線通信により表示装置24に転送して、該表示装置24に表示させる(ステップS34)。
【0185】
これにより、医師は、表示操作部56又は表示装置24の表示内容を視認することにより、あるいは、スピーカ58からの音を聞くことにより、シンチレータ74の劣化が発生したことを把握し、電子カセッテ20Aの修理又は交換の依頼等、必要な対策を取ることができる。また、電子カセッテ20Aからコンソール22に前記判定結果が送信され、あるいは、コンソール22からRIS26やHIS28にも前記判定結果が転送されれば、電子カセッテ20Aの製造業者に対して、具体的な故障内容(シンチレータ74の劣化)を含めた該電子カセッテ20Aの修理又は交換の依頼も速やかに行うことができる。
【0186】
さらに、ステップS30が肯定的な判定結果ではない場合、すなわち、多数の画素190(光検出素子94)においてR≧Rthの結果である場合には、劣化判定部222は、電子カセッテ20Aが正常に機能しているものと判定し(ステップS36)、その判定結果を表示操作部56で画面表示し、スピーカ58を介して音として出力し、さらには、通信部186から無線通信によりコンソール22に送信(通知)する(ステップS34)。コンソール22は、受信した前記判定結果を無線通信により表示装置24に転送して、該表示装置24に表示させる(ステップS34)。
【0187】
この場合、医師は、表示操作部56又はコンソール22の表示内容を視認することにより、あるいは、スピーカ58からの音を聞くことにより、電子カセッテ20Aが正常に機能することを把握し、当該電子カセッテ20Aを被写体14に対する放射線撮影に使用することが可能となる。また、電子カセッテ20Aからコンソール22に前記判定結果が送信され、あるいは、コンソール22からRIS26やHIS28にも前記判定結果が転送されれば、当該医師のみならず、病院内の他の医師や放射線技師に対しても、当該電子カセッテ20Aが使用可能な電子カセッテであることを通知することができる。
【0188】
本実施形態に係る電子カセッテ20を有する放射線画像撮影システム10の動作は、以上説明した通りである。
【0189】
次に、電子カセッテ20の変形例について、図20を参照しながら説明する。
【0190】
図20は、シンチレータ74とリセット光源78との間にハーフミラー250を介挿させたものである。
【0191】
すなわち、ハーフミラー250は、リセット光源78からの光(リセット光132、あるいは、劣化検知用光としての赤色光132a、緑色光132b及び/又は青色光132c)をシンチレータ74の方向に透過させ、一方で、シンチレータ74で放射線16から変換され且つリセット光源78の方向に進行する可視光130を光検出基板72の方向に反射させる。このように、リセット光源78とシンチレータ74との間にハーフミラー250を介挿させて、光に対する部分反射及び部分透過の機能を発揮させることにより、リセット光源78への可視光130の入射を確実に阻止させて、光検出素子94に入射する可視光130の光量を増加させることができる。一方、リセット光源78からの光をシンチレータ74の方向に確実に透過させることにより、光検出素子94に対する光リセット動作や劣化検知動作を効率よく行うことができる。
【0192】
以上説明したように、本実施形態に係る電子カセッテ20(20A〜20C)によれば、リセット光源78から出力される光を光検出基板72に対する光リセット以外の用途に利用することで、電子カセッテ20内部の劣化を検知することが可能となる。すなわち、ピーク波長が互いに異なる少なくとも2つの光のうち、一方の光(例えば、赤色光132a、緑色光132b及び青色光132cを合成した白色光)をリセット光として光検出基板72に照射し、他方の光(例えば、青色光132c)を電子カセッテ20内部の劣化を検出するための劣化検知用光として光検出基板72に照射すれば、電子カセッテ20内部の劣化(故障)を確実に実施することができる。
【0193】
具体的に、放射線16の照射に起因して接着層88a又は粘着層88bが劣化していれば、劣化した接着層88a又は粘着層88bは、特定のピーク波長を含む波長域の光(例えば、青色波長領域の光)を吸収するため、劣化した接着層88a又は粘着層88bを介して光検出基板72に前記光を照射すれば、接着層88a又は粘着層88bでの前記光の吸収により、光検出基板72に入射する前記光の光量が減少するはずである。
【0194】
そこで、本実施形態では、リセット光源78から接着層88a又は粘着層88bを介して光検出基板72にリセット光(白色光)又は劣化検知用光(青色光132c)を選択的に照射する。これにより、光検出基板72で検出される劣化検知用光の信号レベルが、劣化前の信号レベルよりも低下していれば、放射線16の照射に起因して接着層88a又は粘着層88bが劣化していることを直ちに検知することができる。また、リセット光源78は、リセット光132を出力する機能と、劣化検知用光(赤色光132a、緑色光132b及び/又は青色光132c)を出力する検査用光源としての機能とを兼ね備えているので、リセット光源78と検査用光源とを個別に用意する必要もなくなる。
【0195】
また、リセット光源78が接着層88a又は粘着層88bを介して光検出素子94に劣化検知用光を照射した場合に、劣化検知用光を光検出信号として検出し、その後、劣化判定部222は、光検出素子94が実際に検出した光検出信号の信号レベル(画素値A3)と、放射線16による接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生していない状態での光検出信号の信号レベル(初期値A30)とに基づいて、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無を判定するので、接着層88a又は粘着層88bの劣化の有無を確実に且つ効率よく検知することができる。
【0196】
より具体的に説明すれば、劣化判定部222は、光検出素子94が実際に検出した放射線検出信号の信号レベル(画素値A2)及び光検出信号の信号レベル(画素値A3)と、放射線16による接着層88a又は粘着層88bの劣化が発生していない状態での放射線検出信号の信号レベル(初期値A20)及び光検出信号の信号レベル(初期値A30)とに基づいて、接着層88a又は粘着層88bとシンチレータ74との劣化の有無を判定することにより、光検出素子94で検出した電気信号のレベルの低下が接着層88a又は粘着層88bの劣化に起因するものか、あるいは、シンチレータ74の劣化によるものかを、確実に特定することができる。
【0197】
なお、上記の説明では、接着層88a又は粘着層88bの劣化を検知する場合について説明したが、本実施形態では、シンチレータ74を封止する防湿保護材86の劣化を検知することも可能である。この場合、リセット光源78から防湿保護材86及びシンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bとを介して光検出基板72に照射される劣化検知用光は、放射線16により劣化した防湿保護材86が吸収可能で且つリセット光(白色光)とは異なるピーク波長を含む波長域の光であればよい。
【0198】
放射線16の照射に起因して防湿保護材86が劣化していれば、劣化した防湿保護材86も劣化検知用光を吸収する可能性があるため、劣化した防湿保護材86及びシンチレータ74を介して光検出基板72に劣化検知用光を照射すれば、該防湿保護材86での劣化検知用光の吸収により、光検出基板72に入射する劣化検知用光の光量が減少するはずである。
【0199】
従って、この場合でも、リセット光源78から防湿保護材86及びシンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bとを介して光検出基板72にリセット光又は劣化検知用光を選択的に照射し、光検出基板72の光検出素子94で検出される劣化検知用光の信号レベルが、劣化前の信号レベルよりも低下していれば、放射線16の照射に起因して防湿保護材86が劣化していることを直ちに検知することができる。また、この場合でも、リセット光源78が検査用光源の機能を兼ね備えているので、検査用光源を個別に用意する必要がない。
【0200】
このように、リセット光源78から防湿保護材86及びシンチレータ74と、接着層88a又は粘着層88bとを介して光検出基板72にリセット光又は劣化検知用光を選択的に照射可能とすることで、放射線16による電子カセッテ20内部の劣化(接着層88a、粘着層88b又は防湿保護材86の劣化)の有無を確実に且つ効率よく検知すると共に、光検出素子94で検出した電気信号のレベルの低下の原因となっている構成要素(接着層88a、粘着層88b、防湿保護材86又はシンチレータ74)を確実に特定することができる。
【0201】
劣化判定部222での判定結果は、表示操作部56に表示され、スピーカ58から音として出力され、さらには、通信部186からコンソール22を介して無線により送信されることで、表示装置24にも表示されるので、医師は、接着層88a、粘着層88b又は防湿保護材86が劣化しているか否か、あるいは、シンチレータ74が劣化しているか否かを的確に把握して、適切な処置(例えば、電子カセッテ20の修理又は交換の依頼)を速やかに遂行することができる。
【0202】
また、リセット光源78は、シンチレータ74を介して光検出基板72と対向するように配置された発光素子142a〜142cのアレイ、バックライト、又は、エレクトロルミネッセンス光源78a〜78cである。
【0203】
この場合、バックライト式のリセット光源78では、冷陰極管152や発光素子162a〜162cを放射線16の非照射領域に配置することが可能であるため、放射線16による冷陰極管152や発光素子162a〜162cの劣化を回避することができる。また、リセット光源78が有機エレクトロルミネッセンス光源であれば、リセット光源78の薄型化を実現することができる。
【0204】
また、光検出基板72を構成する光検出素子94を有機光電変換材料又はアモルファス酸化物半導体から構成し、一方で、TFT92を有機半導体材料、アモルファス酸化物半導体又はカーボンナノチューブから構成すれば、光検出素子94及びTFT92を低温成膜により形成することが可能となる。
【0205】
さらに、光検出基板72とシンチレータ74との間に斜入光カット層102を介挿することにより、可視光130に対する光検出基板72の感度の向上と、放射線画像の画像ボケの抑制とを共に実現することができる。
【0206】
また、上記の説明では、一例として、リセット光が白色光のリセット光であると共に、劣化検知用光が青色光132c等である場合について説明したが、本実施形態では、赤外光、より好ましくは、950nm付近のピーク波長を含む波長域の赤外光をリセット光に用いてもよい。これにより、短波長の光と比較して、光リセットに起因したa−Siの光劣化を回避することができる。
【0207】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0208】
10…放射線画像撮影システム
14…被写体
16…放射線
20、20A〜20C…電子カセッテ
70…放射線検出器
72…光検出基板
74…シンチレータ
78…リセット光源
88a…接着層
88b…粘着層
92…TFT
94…光検出素子
102…斜入光カット層
108、240…蒸着基板
130…可視光
132…リセット光
132a…赤色光
132b…緑色光
132c…青色光
142a〜142c、162a〜162c…発光素子
150…導光板
152、152a〜152c…冷陰極管
154…拡散シート
156…反射シート
180…駆動回路部
182…カセッテ制御部
190…画素
210…撮影オーダ判定部
214…光リセット動作判定部
218…光源制御部
220…着色検知動作判定部
222…劣化判定部
242…剥離層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有する放射線画像撮影装置であって、
ピーク波長が互いに異なる少なくとも2つの光を前記光検出基板に選択的に照射可能な光源をさらに有し、
前記光源は、前記少なくとも2つの光のうち、一方の光をリセット光として前記光検出基板に照射し、他方の光を前記放射線画像撮影装置内の劣化を検知するための劣化検知用光として前記光検出基板に照射することが可能であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記光検出基板と前記シンチレータとを接着する接着層、又は、前記光検出基板と前記シンチレータとを粘着する粘着層をさらに有し、
前記光源は、前記接着層又は前記粘着層を介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光を照射可能であり、
前記劣化検知用光は、前記放射線により劣化した前記接着層又は前記粘着層が吸収可能で且つ前記リセット光の波長域とは異なる波長域の光であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記シンチレータを封止する防湿保護材をさらに有し、
前記光源は、前記防湿保護材及び前記シンチレータを介して前記光検出基板に前記リセット光又は前記劣化検知用光を照射可能であり、
前記劣化検知用光は、前記放射線により劣化した前記防湿保護材が吸収可能で且つ前記リセット光の波長域とは異なる波長域の光であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、
前記光検出基板は、前記可視光を前記電気信号に変換する少なくとも1つの光検出素子を備え、
前記光検出素子は、前記光源が該光検出素子に前記劣化検知用光を照射した場合に、前記劣化検知用光を光検出信号として検出し、
前記放射線画像撮影装置は、前記光検出素子が実際に検出した前記光検出信号の信号レベルと、前記放射線画像撮影装置内での劣化が発生していない状態での光検出信号の信号レベルとに基づいて、前記放射線画像撮影装置内での劣化の有無を判定する劣化判定部をさらに有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記光検出素子は、前記可視光から変換した前記電気信号を放射線検出信号として前記劣化判定部に出力し、
前記劣化判定部は、前記光検出素子が実際に検出した前記放射線検出信号の信号レベル及び前記光検出信号の信号レベルと、前記放射線画像撮影装置内での劣化が発生していない状態での放射線検出信号の信号レベル及び光検出信号の信号レベルとに基づいて、前記放射線画像撮影装置内での劣化の有無の判定を行うことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の装置において、
前記劣化判定部の判定結果を外部に報知する報知部をさらに有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線の照射方向に沿って、前記光検出基板と、前記シンチレータと、前記光源とが順に配置されることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記光源は、前記シンチレータを介して前記光検出基板と対向するように配置された発光素子のアレイ、バックライト、又は、エレクトロルミネッセンス光源であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記発光素子のアレイは、第1のピーク波長を含む波長域の光を出力する第1の発光素子と、該第1のピーク波長とは異なる第2のピーク波長を含む波長域の光を出力する第2の発光素子とから少なくとも構成されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、
前記バックライトは、前記シンチレータにおける前記光検出基板の反対側に配置された導光板と、該導光板の側部に配置され且つ互いに異なるピーク波長の光を出力可能な少なくとも2つの光源と、前記導光板及び前記少なくとも2つの光源を囲繞するように配置された反射シートと、前記導光板における前記シンチレータ側の表面に配置された拡散シートとから構成され、
前記少なくとも2つの光源は、前記導光板に光を入射し、
前記導光板に入射した前記光は、該導光板内で前記反射シート及び前記拡散シートとの間で表面反射を繰り返した後に、前記拡散シートから前記シンチレータに出射することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記少なくとも2つの光源は、発光ダイオード又は冷陰極管であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項12】
請求項8記載の装置において、
前記エレクトロルミネッセンス光源は、前記放射線の照射方向に沿って積層され、且つ、互いに異なるピーク波長の光を出力可能な少なくとも2つの光源から構成されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記エレクトロルミネッセンス光源は、有機エレクトロルミネッセンス光源であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれか1項に記載の装置において、
蒸着基板に前記シンチレータを成膜した後に、該シンチレータの先端部分と前記光検出基板とを接着層を介して接着するか、又は、粘着層を介して粘着することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記蒸着基板が前記光源からの光に対して非透過である場合、前記蒸着基板に剥離層を介して前記シンチレータを成膜した後に、該シンチレータの先端部分と前記光検出基板とを前記接着層を介して接着するか、あるいは、前記粘着層を介して粘着し、その後、前記シンチレータから前記剥離層及び前記蒸着基板を剥離して、前記シンチレータの剥離面に前記光源を配置することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項16】
請求項14記載の装置において、
前記蒸着基板が前記光源からの光を透過可能である場合、該蒸着基板を介して前記光源を配置可能であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項17】
請求項7〜16のいずれか1項に記載の装置において、
前記光検出基板と前記シンチレータとの間には、前記放射線の照射方向に対して斜め方向に進行する前記可視光又は前記光源からの光をカットする斜入光カット層が介挿されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項18】
請求項7〜17のいずれか1項に記載の装置において、
前記シンチレータと前記光源との間にハーフミラーが介挿されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−108052(P2012−108052A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258179(P2010−258179)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】