説明

救助要請システム及び方法

【課題】緊急に救助を行う必要のある人間に対して、最短の時間で救助を行うことが可能な救助員を派遣することができる救助要請システム。
【解決手段】GPS機能を保有した携帯電話端末119を救助対象の人間に所持させ、有志等により救助員として登録している人間が所持する位置特定可能な携帯電話端末118の位置情報履歴110を常時サーバ101上に保存しておくことにより、救助対象者からの救助要請が発生した場合に、近傍の救助員をサーバに保存してある位置情報から割り出し、要救助者の位置及び救助員の位置から最短の到着ルートをナビゲーションする。これにより、救助までの時間を短くすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救助要請システム及び救助要請方法に係り、特に、GPS(Global Positioning System)機能付き携帯電話端末等の携帯端末を利用し、緊急に救助を必要としている人物(以下、要救助者という)を迅速に救助するために使用して好適な救助要請システム及び救助要請方法に関する。
【背景技術】
【0002】
徘徊老人、重篤な症状に陥る持病の持ち主、幼児、女性等の外出先で起こる突発的な事件事故(徘徊老人の所在不明、持病の持ち主の突発的な発病、幼児、女性の連れ去り等)に巻き込まれる可能性が高い人物が、実際にそれらの事件事故に巻き込まれた場合、早急に発見救助を行うことは、家族等の近しい人間にとって切なる願いであることは言うまでもない。
【0003】
通常、要救助者が救助を必要としている状況において、重要なことは、迅速な発見と危機からの回避とである。
【0004】
例えば、徘徊老人の保護は、発見する時間が遅くなればなるほど、事故に巻き込まれる危険性が高まる。また、急病人の場合、付近に人がいれば気が付いてもらえるが、周りに人がいないような状況では放置されることになり極めて危険である。さらに、子供の連れまわしや暴行事件等は、命にかかわる状況に発展することがあり、いかに早く保護を行うかは最も重要であると言える。
【0005】
前述のような要救助者に対する救助に対応するため、ブザー等によって要救護者の近傍の人間に異変を知らせ、救助を行ってもらえるよう信号を発信する技術や、GPS端末や携帯電話端末を用いて要救助者の位置を正確に特定して救助要員を派遣するサービスに関する技術が提案されている。
【0006】
要救助者の救助を行うシステムに関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、携帯電話を用いた地域救援対策システムに関するものであり、要救助者が携帯電話に搭載された緊急ボタンを押すことにより、携帯電話に内臓されたスピーカからブザー音を発音し、さらに、携帯電話に登載された小型ライトを点滅させることにより、外部に異変を知らせるというものである。この従来技術は、遠隔地からの依頼によりリモートで要救助者の携帯電話端末をコントロールすることが可能であり、要救助者が意識を無くしている場合等の携帯電話を操作できない重篤な状況にも対応することができ、さらに、異常の場合に学校や警察等に救助の要請を行うことも可能なものである。
【0007】
また、他の従来技術として、例えば、特許文献2等に記載された技術が知られている。この従来技術は、GPS等の位置検出装置を携帯している監視対象者が、予め決められたルートや範囲を離脱した場合に、監視対象者の近傍にあるカメラの映像を収集し、状況の確認を行うというシステムである。そして、この従来技術は、映像により監視対象者の状況を遠隔から確認することができるため、通常の状態なのか、危険な状態なのかの判別を行うことが可能となり、正確に監視対象の近辺の状況を確認することが可能になる。これにより、前述の従来技術は、危険でない場合の誤通報を避けることができ、危険である場合には監視対象者にどのような危険が迫っているのかを、監視者が映像として認識することができるため、どのように対応すべきかの方針が立てられやすい。また、この従来技術は、緊急時に保護者に通報を行い、監視対象者の近傍にいる位置検出装置を保有している人間に、保護を求めるメッセージや音声を送信することが可能なものである。
【特許文献1】特開2002−56482号公報
【特許文献2】特開2005−267594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来技術は、それらの技術を利用することにより、確かに要救助者を早期に発見し、救助の手を差し伸べることが可能となる。しかし、前述した従来技術は、解決することができないいくつかの問題点を有している。すなわち、前述した従来技術は、いずれも、要救助者からの救助依頼の信号を受信し、救助員が駆けつけ要救助者を発見するまでに、それなりの時間を要するという問題点を有している。
【0009】
特許文献1に記載の従来技術は、要救助者からの救助依頼信号を受信してから、最寄の警察や学校等の保護可能機関に救助要請が発信され、救助を行うことになるが、必ずしもそれらの機関が付近に存在しているとは限らず、また、要救助者の携帯する端末からブザーによる発音及びライトの点滅による救難信号が近傍の者に向けて発信されるが、周りに人がいない場合や、単独で屋内にいる場合などは意味をなさないという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献2に記載の従来技術は、映像により要救助者の近辺の状況が確認できたとしても、保護者が近くに存在していない限りはどうすることもできないという問題点を有している。一般に、大抵の場合、要救助者が救助依頼の信号を発信する場合、すでに危険な状況に陥っている場合が多く、救助員が駆けつける迄の1分1秒をも無駄にできないというのが通常である。この結果、特許文献2に記載の従来技術は、派遣する救助員の人数にも限界があり、早期に人海戦術を使った探索を行うのも現実的には不可能であるという問題点を生じてしまう。
【0011】
さらに、特許文献1に記載の従来技術は、ブザー等の発信装置により近傍の人間に異常を知らせることが可能ではあるが、何がどう異常なのかを知らせることが不可能であり、また、誘拐等の場合、逆に音を発することで端末を犯人に捨てられてしまったり、逆に命の危険を早めることになりかねないという問題が生じ、そのような状況では、犯人に気がつかれないように救助員に危機を伝える必要がある。
【0012】
本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、緊急に救助を行う必要のある人間に対して、最短の時間で救助員を派遣し、救助を行うことが可能な救助要請システム及び救助要請方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば前記目的は、要救助者を救助する救助要請システムにおいて、該救助要請システムは、サーバと、要救助者が所持する位置情報取得が可能な要救助者用携帯端末と、複数の救助員のそれぞれが所持する位置情報取得が可能な救助員用携帯端末とを備え、前記サーバと前記要救助者用携帯端末及び救助員用携帯端末とは、ネットワークを介して通信可能に構成され、前記サーバは、要救助者の情報を格納しておく要救助者情報DB、救助員の情報を格納しておく救助員情報DB、各携帯端末の位置履歴を格納しておく位置履歴DB、要救助者の探索時に救助員の携帯端末に送信され、ナビゲーション用の地図として使用するための地図データを格納してある地図情報DBを備えると共に、近傍携帯端末検索手段、救助情報作成提供手段、ナビゲーション情報提供手段を備え、前記要救助者用携帯端末から救助要請が前記サーバに対して行われたとき、前記近傍携帯端末検索手段は、前記救助要請に含まれる要救助者の位置情報と、前記位置履歴DBに保持されている救助員用携帯端末の位置情報とにより、要救助者の近傍にいる救助員用携帯端末を検索し、前記救助情報作成提供手段は、要救助者に関する情報を含む救助要請情報を生成して、前記検索された救助員用携帯端末に救助要請を送信し、前記ナビゲーション情報提供手段は、前記救助要請に対して救助可能の応答を行った救助員の携帯端末に、地図情報DBと、取得した要救助者の位置情報及び救助員の位置情報とから作成した要救助者までの探索ルート画像を含むナビゲーションのための情報を送信することにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、要救助者の近傍にいる救助員に対して迅速に救助の要請を行うことができ、救助までの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による救助要請システム及び救助要請方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態による救助要請システムのネットワーク構成を示すブロック図である。
【0017】
本発明の実施形態による救助要請システムは、救助を行うために必要となるデータの管理、それらデータを使用し実際に救助を行う場合の各種の手続き行う処理手段を備えたシステムの核となるサーバ101と、このサーバ101から救助要請及びナビゲーション情報を受信するための複数の救助員のそれぞれが所持する携帯電話端末118a、118b、・・・(任意の1台を表す場合、単に、118と表記する)と、要救助者自身が救助信号を発信することが可能な要救助者が所持する携帯電話端末119と、要救助者の現在位置を調べることができる保護者用の携帯電話端末120と、各携帯電話端末がその位置を取得するために必要なGPS衛星121と、要救助者の安否確認を必要としている人物(親族等)からの連絡を受けるためのコールセンター115と、それらの構成要素を結びつけるためのネットワークである公衆回線網116、携帯電話基地局117a、117b、117c、・・・(任意の1台を指す場合、単に、117と表記する)による無線回線網と、サービス提供者の社内網114とを含んで構成されている。それぞれの構成要素は、公衆回線網116及び携帯電話基地局117からの携帯電話網を利用することにより相互に接続可能である。
【0018】
図1に示す救助要請システムは、サーバ101を1台だけ備えて構成されるものとして示しているが、複数台のサーバ101が設けられてよく、その際、複数台のサーバを機能別に設けて構成してもよい。携帯電話端末118a、118b、・・・及び保護者用携帯電話端末120は、世間一般に普及しているGPS機能付き携帯電話であってよい。また、GPS衛星121、公衆回線網116、社内網114、携帯電話基地局117a、117b、117c、・・・は、一般に施設されているインフラを利用することが可能である。
【0019】
前述において、サーバ101は、図1には示していないが、CPU、メモリ、HDD等による大容量の記憶装置、管理者等が使用するディスプレイ、キーボード等の入出力装置を備えた情報処理装置である。サーバ101内には、後述する本発明の実施形態で必要とする各種の機能が構築されるが、これらの機能は、記憶装置に格納されるプログラムをメモリにロードし、CPUがそのプログラムを実行することにより構築されて、後述する本発明の実施形態での各種の処理を行う。
【0020】
サーバ101には、サービス利用者の情報を格納しておくサービス契約者情報DB111、要救助者の情報を格納しておく要救助者情報DB112、救助員の情報を格納しておく救助員情報DB113、各携帯電話端末の位置履歴を格納しておく位置履歴DB110、要救助者の探索時に救助員の携帯電話端末に送信され、ナビゲーション用の地図として使用するための地図データを格納してある地図情報DB109の各データベースが備えられている。また、サーバ101には、本発明の実施形態で必要な機能を実行するための機能部として、契約者情報登録部102、救助員情報登録部103、位置履歴作成部104、要救助者位置確認部105、近傍携帯端末検索部106、救助情報作成提供部107、ナビゲーション情報提供部108が備えられる。
【0021】
契約者情報登録部102は、サービスの契約者情報を登録するため、サービスを契約している要救助者の保護者が、自宅住所や電話番号等の基礎的な情報を登録・更新するための処理を行う機能部である。本発明の実施形態では、コールセンター115が設けられているので、口頭で登録内容を登録してもらうことも可能であるが、近年一般的に普及しているインターネット及びブラウザを用いたWEBベースによる登録を可能にすればさらに利便性の向上を図ることができる。
【0022】
救助員情報登録部103は、救助員の情報を登録するため、救助に向かえる救助員の情報を登録・更新するための処理を行う機能部である。ここで言う救助員は、救助専門の機関や企業に所属する人間であることは当然であるが、その他世間一般の人間も含まれる。本発明の実施形態によるシステムは、多くの救助員となり得る人間の情報がなくては利便性が向上しないため、WEBベースでの登録が可能なものとし、インターネットに接続できる環境があれば、いつでも誰でもが救助員としての情報を登録・更新できるようにしたほうがよい。
【0023】
位置履歴作成部104は、位置情報取得が可能な救助員用の携帯電話端末118a、118b、・・・及び要救助者用の携帯電話端末119の時間毎の位置情報をデータベースに履歴として位置履歴DB110に保存するための処理を行う機能部である。この機能部での処理によって、記録された位置情報は、要救助者から救助要請が発信された場合、近傍の救助要員を探索する場合と、要救助者の保護者が要救助者の位置を確認する場合とに使用される。
【0024】
要救助者位置確認部105は、要救助者の現在の位置を保護者が携帯電話端末から確認するために利用される機能部である。例えば、徘徊老人等の自分で危機を自覚していない要救助者は、自ら救助要請を行うことが難しく、外部の人間が気づいて通報しなければならないし、また、幼児の連れまわし等も同様である。そのような場合、保護者は、要救助者の位置を自分の携帯電話端末119で確認し、異常が発生していると思われる場合、コールセンター115に連絡して救助を行うように指示を行うことが可能となる。
【0025】
近傍携帯端末検索部106は、救助要請が行われた場合、要救助者の近傍にいる救助員の携帯電話端末118を自動的に検索し、対象の救助員をリストアップする処理を行う機能部である。この近傍携帯端末検索部106は、単に要救助者の周りにいる救助員をリストアップするだけでなく、救助員情報DB113に記録されている職業、資格、特技、体格等のデータ項目から救助員の選別を行う機能を有している。これにより、例えば、要救助者が子供の場合、非番の警察官や防犯関係の職業についている人間等が近傍にいた場合に、そのような人間を優先的に救助に向かわせることができる。また、要救助者が老人である場合、身体的な危険である場合が高いため、近傍の医療関係者や介護の実績がある人間を優先的にピックアップすることが可能となる。また、これらの人員を複合的にピックアップすることにより、多くの状況に対応できる救助チームを編成することができる。
【0026】
救助情報作成提供部107は、ピックアップされた救助員に提供する救助要請の情報を作成する処理を行う機能部である。この救助情報作成提供部107は、要救助者情報DB112に登録されている要救助者の年齢や身体的特徴等の情報と、現在の要救助者の位置情報、さらに、対象者が徘徊者や持病持ちの場合、それらの症状と対処法とを記載した情報をメール等により、ピックアップされた近傍の救助員用の携帯電話端末118に通知する。これにより、救助員は、要救助者の特徴をつかむことができ、要救助者の発見を迅速に行うことができ、要救助者がどのような状態にあるのかを予測することが容易となるため、発見後に行う行動もある程度予測することができる。救助員は、これらの情報及び自分の現在置かれている状況(救助に向かえる状況か否か)等を考慮し、メールに記載されているハイパーリンクを選択することにより、救助可否の情報をサーバに返信することが可能となる。
【0027】
ナビゲーション情報提供部108は、救助員としてピックアップされた人間が、救助可能だった場合に、その救助員の携帯電話端末118に表示する要救助者までの探索ルート画像やナビゲーションのための情報を、地図情報DB108と、取得した要救助者の位置情報及び救助員の位置情報とから作成する処理を行う機能部である。救助員の携帯電話端末118は、携帯電話端末の表示ディスプレイに受信した情報を随時表示し探索を行う。 図2はサービス契約者情報DB111の構成を示す図である。サービス契約者情報DB111は、契約者ID201、契約者名202、契約者住所203、連絡先204、保護対象者ID205等を1つのレコードとして、契約者毎のレコードを複数格納して構成される。契約者ID201は、データベース中のレコードを一意に特定するためのキーである。このようなレコードに含まれる各データは、救助要請が発信された場合に、その保護者に連絡を取るために使用される。
【0028】
図3は要救助者情報DB112の構成を示す図である。要救助者情報DB112は、保護対象者ID301、保護対象者名302、保護対象者住所303、保護対象者端末番号304、性別305、身長306、体重307、髪型308、その他身体的特徴309等を1つのレコードとして、保護対象者毎のレコードを複数格納して構成される。保護対象者ID301は、データベース中のレコードを一意に特定するために用いられるキーである。保護対象者名302、保護対象者住所303、保護対象者端末番号304、性別305、身長306、体重307、髪型308、その他身体的特徴309は、救助情報作成提供部107が、救助者の特徴を記した救助員に対する救助依頼メールを作成する際に使用される。このようなデータを含むメールを受け取った救助員は、要救助者の身体的な特徴が判るため、要救助者の発見をより迅速に行うことができる。
【0029】
図4は位置履歴DB110の構成を示す図である。位置履歴DB110は、端末ID401、時間402、緯度403、経度404等を1つのレコードとして、携帯電話端末毎のレコードを複数格納して構成される。端末ID401は、レコードを一意に特定するキーとなる項目であり、時間402は、このデータが取得された時間である。緯度403、経度404は、取得された位置情報を表すもので、これらの2項目のデータにより地球上の1点を表すことが可能である。救助要請があった場合、近傍携帯端末検索部106は、要救助者の位置情報をキーに、この位置履歴DB110に登録されている緯度403、経度404を検索し、近傍の救助員用の携帯電話端末118のピックアップを行う。また、この位置履歴DB110が持つデータは、要救助者の保護者が要救助者の位置を確認する場合にも用いられる。
【0030】
図5は地図情報DB109の構成を示す図である。地図情報DB109は、地区ID501、地区名502、始点緯度503、始点経度504、終点緯度505、終点経度506、地図画像507を1つのレコードとして、地図画像毎のレコードを複数格納して構成される。地区ID501は、レコードを一意に決定する通番である。地区名502は、後述する地図画像507のおおよその地域名であり、要救助者探索時及び要救助者の保護者が用救助者の位置確認を行う場合に、近傍携帯電話端末118及び保護者携帯電話端末120の画面上に表示される。始点緯度503、始点経度504、終点緯度505、終点経度506は、地図画像507の左上地点と、右下地点との実際の位置情報を示すものである。この位置情報を元に、使用する地図画像507が特定されることになる。
【0031】
地図画像507は、地図そのものを示す画像データであり、要救助者を発見する場合のナビゲーション時には、救助員用の携帯電話端末118に要救助者と救助員の探索ルートとを示した画像として送信され、救助員用の携帯電話端末118の表示ディスプレイに表示される。また、地図画像507は、要救助者の保護者が用救助者の位置確認を行う場合に、保護者携帯電話端末120の画面上に要救助者の位置情報と共に表示される。
【0032】
図6は救助員情報DB113の構成を示す図である。救助員情報DB113は、救助員ID601、名前602、性別603、年齢604、職業605、資格606等を1つのレコードとして、救助員毎のレコードを複数格納して構成される。救助員ID601は、レコードを一意に決定するキーである。その他の項目である名前602、性別603、年齢604、職業605、資格606等の情報は、近傍携帯端末検索部106により使用され、ピックアップされた救助員が持つ近傍携帯電話端末118から救助に向かうのに適した救助員を選別するために使用される。これにより、職業605や資格606により、近傍にいる適切な処置ができる可能性の高い救助員を救助に向かわせることができる。
【0033】
図7は要救助者が所持する携帯電話端末119の構成を示す図である。要救助者が所持する携帯電話端末119には、救助要請を行うための押しボタンである救助要請用ボタン701、表示ディスプレイ702が設けられており、その内部には、位置情報取得送信部703、救助要請発信部704が備えられている。
【0034】
要救助者は、救助が必要になったときに前述の救助要請用ボタン701を押すことにより、救助要請発信部704が、サーバ101に対して救助要請を発信する。位置情報取得送信部703は、救助要請が行われると同時にGPS衛星121から随時取得している自端末の位置情報から現在の位置情報を危機が去るまでサーバ101に送信し続ける機能を有する。これにより、サーバ101は、要救助者が現在どこにいるのかが判り、救助員のナビゲーションに利用することが可能となる。なお、本発明の実施形態では、要救助者が所持する携帯端末として、携帯電話端末を想定しているが、本発明は、特に携帯電話端末にこだわる必要はない。最近では、携帯電話に位置情報を特定する機能が付いていることが一般的によく知られているので、犯人に携帯電話を破壊されたり、捨てられたりする事例が発生している。そのため、一見それとは判らない携帯端末を作成し、要救助者に保持させるのも一例である。要は、救助要請を瞬時に行うための物理的な機構と、GPS衛星121からの位置情報の取得と、サーバ101へのデータ送信機能が備わっていればよい。
【0035】
また、要救助者が救助要請を行うケースは、何者かに誘拐された場合以外に、単に1人で道に迷っただけの場合もあるので、救助要請用ボタン701を複数設ける等、両者を区別できるような2種類の方法で救助要請の発信を行えるようにしておいてもよい。これによって、救助員はそれぞれの場合に応じた、より適切な対応を取ることができる。
【0036】
図8は救助員が所持する携帯電話端末118の構成を示す図である。救助員が所持する携帯電話端末118には、表示ディスプレイ801が設けられており、その内部には、位置情報取得送信部(定期)802、位置情報取得送信部(随時)803、探索ルート表示部804が備えられている。
【0037】
表示ディスプレイ801は、携帯電話端末の表示部分であり、この画面上に地図や要救助者までのルートが表示され、所持者が要救助者の探索を行うために利用される。位置情報取得送信部(定期)802は、GPS衛星121から受信した位置情報を定期的にサーバ101に送信する処理を行う機能部である。これにより、救護員の直近での位置情報がサーバ101に保持されることになり、救助要請が発信された場合、サーバ101の機能である近傍携帯端末検索部106が、要救助者の近傍の救助員が所持する端末を割り出すことが可能になる。位置情報取得送信部(定期)802からの位置情報の送信は、なるべく正確な位置を割り出すために、位置情報データの送信時間間隔をできるだけ短くした方よいが、サーバの処理能力や携帯電話のバッテリーの制約からその時間間隔を最適な値に決定しておけばよい。位置情報取得送信部(随時)803は、救助員が要救助者の救助に向かっている場合に、位置情報取得送信部(定期)802での処理では位置情報の取得時間間隔が長いため位置情報のズレが発生してしまうため、随時位置情報を取得してサーバ101に送信する処理を行う。探索ルート表示部804は、サーバ101から提供される要救助者までの探索ルートを示した画像やナビゲーション情報を表示制御するための処理を行う。救助員は、携帯電話端末118の表示ディスプレイ801を見ることにより、救助員自身と要救助者との位置関係を把握しながら、要救助者の探索を行うことができるようになる。
【0038】
図9は要救助者が所持している携帯電話端末119からの救助要請の発信から救助に至るまでの動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0039】
(1)要救助者は、緊急の事態に陥った場合、手持ちの携帯電話端末119の緊急通報用の押しボタン701を押す。これにより、保護対象者である要救助者の携帯電話端末119は、位置情報取得送信部703によりGPS衛星121から自端末の位置情報が取得可能か否かをチェックすると共に、携帯電話基地局117から電波が受信可能か否かのチェックを行う(ステップ901〜903)。
【0040】
(2)ステップ902、903のチェックで、もし、GPS衛星121からの位置情報の取得と携帯電話基地局117からの電波の受信とのどちらかが不可能な場合、それらが可能となるまで何度も取得を試みる(ステップ910)。
【0041】
(3)ステップ902、903のチェックで、位置情報の取得と電波の受信とが可能であった場合、位置情報取得送信部703は、位置情報を取得する。そして、救助要請発信部704は、サーバ101に対して救助要請を発信し、位置情報取得送信部703は、取得した現在の位置情報をサーバ101に送信する(ステップ904、905)。
【0042】
(4)救助要請と位置情報とを受信したサーバ101は、近傍端末検索部106による処理を実行し、救助員情報DB113及び位置履歴DB110を参照して、要救助者の近傍に居る救助員のピックアップを行い、ピックアップされた近傍の救助員の携帯電話端末119a、109bに、救助情報作成提供部107によって作成した救助依頼メールを送信する(ステップ906、907)。
【0043】
(5)サーバ101からメールを受信した近傍の救助員は、自分が救助に向かうことが可能か否かを判断して、携帯電話端末119a、109bのメールに記載されているハイパーリンクから、救助可否の応答をサーバ101に返信する(ステップ908)。
【0044】
(6)サーバ101は、救助員から救助不可の返信を受信した場合、別の救助員のピックアップを再度実施し、ピックアップされた近傍の救助員の携帯電話端末119a、109bに、救助情報作成提供部107によって作成した救助依頼メールを送信する(ステップ911、907)。
【0045】
(7)ステップ908での判断で、自分が救助に向かうことが可能と判断した救助員は、救助可能の返信をサーバに対して送信する。これにより、サーバ101が、要救助者と救助員との位置情報及び地図情報DB109を元にナビゲーション情報提供部108で作成したナビゲーション情報を救助員の携帯電話端末118に送信してくるので、救助員は、サーバから送信されてきたナビゲーション情報を参照して要救助者の探索の実行を開始する(ステップ909)。
【0046】
図10は保護者側から救助要請が行われた場合の要救助者の救助までの動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。ここで説明する動作は、徘徊老人等の保護を求める場合等に有効である。
【0047】
(1)要救助者の保護者が自分が所持している携帯電話端末120を用い、サーバ101に対して要救助者の位置確認依頼を行うと、サーバ101は、要救助者位置確認部105での処理により、位置履歴DB110と地図情報DB109とから要救助者の直近の位置を示した地図データを保護者携帯電話端末120に送信する(ステップ1001)。
【0048】
(2)保護者は、その情報を見て異常事態を察したら、あるいは、要救助者が所持する携帯電話端末119の通信可能エリアから外れた場所等に移動していて、要救助者との連絡が不可能かどうかを判定し、可能である場合、要救助者の居場所を確認することができるので、ここでの処理を終了する(ステップ1002、1010)。
【0049】
(3)ステップ1002の判定で、要救助者との連絡が不可能であった場合、保護者は、サービス提供者のコールセンター115に救助要請の連絡を行う。救助要請を受けたコールセンター115のオペレーターは、サーバ101にアクセスし、保護対象者である要救助者に関する情報を送信すると共に、要救助者を救助するための処理を要求する(ステップ1003)。
【0050】
(4)オペレータからの要求を受けたサーバ101は、位置履歴DB110を参照して、保護対象者である要救助者が持つ携帯電話端末119の直近の現在位置情報を取得し、近傍端末検索部106による処理を実行し、救助員情報DB113及び位置履歴DB110を参照して、要救助者の近傍に居る複数の救助員のピックアップを行う(ステップ1005、1006)。
【0051】
(4)その後、図9に示すフローのステップ907以降の処理と同様に、ピックアップした近傍の救助員の携帯電話端末119a、109bに保護要請を行い、保護活動を行わせる(ステップ1007〜1010)。
【0052】
前述した本発明の実施形態におけるサーバでの各処理は、プログラムにより構成し、サーバが備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【0053】
前述した本発明の実施形態によれば、要救助者の近傍にいる救助員に対して迅速に救助の要請を行うことができ、救助までの時間を短縮することができる。また、本発明の実施形態によれば、保護者からの依頼により、要救助者の位置を割り出すことができるため、当人が危機を発信できない状況でも、救助を行うことができる。
【0054】
さらに、本発明の実施形態によれば、救助員に送付する情報として、救助対象者の年齢、性別等の細かい身体的特徴が与えられるため、探索活動をスムーズに行わせることができる。また、救助員の携帯電話端末に表示させるナビゲーション機能を用いて、探索時間を短縮することができる。また、登録している救助員の情報から、救助に最適な救助員を選別して救助に向かわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態による救助要請システムのネットワーク構成を示すブロック図である。
【図2】サービス契約者情報DBの構成を示す図である。
【図3】要救助者情報DBの構成を示す図である。
【図4】位置履歴DBの構成を示す図である。
【図5】地図情報DBの構成を示す図である。
【図6】救助員情報DBの構成を示す図である。
【図7】要救助者が所持する携帯電話端末の構成を示す図である。
【図8】救助員が所持する携帯電話端末の構成を示す図である。
【図9】要救助者が所持している携帯電話端末からの救助要請の発信から救助に至るまでの動作を説明するフローチャートである。
【図10】保護者側から救助要請が行われた場合の要救助者の救助までの動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
101 サーバ
102 契約者情報登録部
103 救助員情報登録部
104 位置履歴作成部
105 要救助者位置確認部
106 近傍携帯端末検索部
107 救助情報作成提供部
108 ナビゲーション情報提供部
109 地図情報DB
110 位置履歴DB
111 サービス契約者情報DB
112 要救助者情報DB
113 救助員情報DB
114 社内網
115 救助依頼受付コールセンター
116 公衆回線網
117a、117b、117c 携帯電話基地局
118a、118b 救助員用携帯電話端末
119 要救助者用携帯電話端末
120 保護者用携帯端末
121 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要救助者を救助する救助要請システムにおいて、
該救助要請システムは、サーバと、要救助者が所持する位置情報取得が可能な要救助者用携帯端末と、複数の救助員のそれぞれが所持する位置情報取得が可能な救助員用携帯端末とを備え、前記サーバと前記要救助者用携帯端末及び救助員用携帯端末とは、ネットワークを介して通信可能に構成され、
前記サーバは、要救助者の情報を格納しておく要救助者情報DB、救助員の情報を格納しておく救助員情報DB、各携帯端末の位置履歴を格納しておく位置履歴DB、要救助者の探索時に救助員の携帯端末に送信され、ナビゲーション用の地図として使用するための地図データを格納してある地図情報DBを備えると共に、近傍携帯端末検索手段、救助情報作成提供手段、ナビゲーション情報提供手段を備え、
前記要救助者用携帯端末から救助要請が前記サーバに対して行われたとき、前記近傍携帯端末検索手段は、前記救助要請に含まれる要救助者の位置情報と、前記位置履歴DBに保持されている救助員用携帯端末の位置情報とにより、要救助者の近傍にいる救助員用携帯端末を検索し、前記救助情報作成提供手段は、要救助者に関する情報を含む救助要請情報を生成して、前記検索された救助員用携帯端末に救助要請を送信し、前記ナビゲーション情報提供手段は、前記救助要請に対して救助可能の応答を行った救助員の携帯端末に、地図情報DBと、取得した要救助者の位置情報及び救助員の位置情報とから作成した要救助者までの探索ルート画像を含むナビゲーションのための情報を送信することを特徴とする救助要請システム。
【請求項2】
救助要請システムは、前記サーバと通信可能な前記要救助者の保護者が所持する保護者用携帯端末をさらに備え、
前記サーバは、要救助者位置確認手段をさらに備え、
前記保護者用携帯端末から要救助者の保護依頼が前記サーバに対して行われたとき、前記、要救助者位置確認手段は、前記位置履歴DBに保持されている要救助者用携帯端末の位置情報を取得し、前記サーバは、この位置情報を要救助者の位置情報として、前記救助要請の処理を行うことを特徴とする請求項1記載の救助要請システム。
【請求項3】
要救助者を救助する救助要請方法において、
サーバと、要救助者が所持する位置情報取得が可能な要救助者用携帯端末と、複数の救助員のそれぞれが所持する位置情報取得が可能な救助員用携帯端末とを備え、前記サーバと前記要救助者用携帯端末及び救助員用携帯端末とは、ネットワークを介して通信可能であり、
前記サーバは、要救助者の情報を格納しておく要救助者情報DB、救助員の情報を格納しておく救助員情報DB、各携帯端末の位置履歴を格納しておく位置履歴DB、要救助者の探索時に救助員の携帯端末に送信され、ナビゲーション用の地図として使用するための地図データを格納してある地図情報DBを備えると共に、近傍携帯端末検索手段、救助情報作成提供手段、ナビゲーション情報提供手段を備え、
前記要救助者用携帯端末から救助要請が前記サーバに対して行われたとき、前記近傍携帯端末検索手段は、前記救助要請に含まれる要救助者の位置情報と、前記位置履歴DBに保持されている救助員用携帯端末の位置情報とにより、要救助者の近傍にいる救助員用携帯端末を検索し、前記救助情報作成提供手段は、要救助者に関する情報を含む救助要請情報を生成して、前記検索された救助員用携帯端末に救助要請を送信し、前記ナビゲーション情報提供手段は、前記救助要請に対して救助可能の応答を行った救助員の携帯端末に、地図情報DBと、取得した要救助者の位置情報及び救助員の位置情報とから作成した要救助者までの探索ルート画像を含むナビゲーションのための情報を送信することを特徴とする救助要請方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−157485(P2009−157485A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332649(P2007−332649)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】