説明

有機半導体素子の製造方法および該製造方法によって得られる有機半導体素子

【課題】 本発明の目的は、電気特性の安定性に優れた有機半導体素子の製造方法と、有機半導体素子を提供することである。
【解決手段】上記課題は、ゲート電極形成工程と、ゲート絶縁膜形成工程と、ソース/ドレイン電極形成工程と、有機半導体膜形成工程と、有機半導体膜上に保護膜を形成する工程とを含み、前記有機半導体膜上に保護膜を形成する工程において、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)有機溶剤(a)に可溶な有機化合物とを含有する保護膜形成液を用いて、ウェットプロセスにより前記保護膜を形成することを特徴とする有機半導体素子の製造方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性の安定性に優れる有機半導体素子の製造法および該製造方法によって得られる有機半導体素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、往来のアモルファスシリコンや、単結晶シリコン等の無機材料に代わり、有機半導体を用いた素子の開発が進められている。有機半導体素子は製造工程が複雑な無機半導体素子と比較すると、簡易な工程で大面積の素子作成が可能であり、低コストで製造できる可能性がある。また、有機材料ならではの柔軟性、低温製膜が可能といった特徴からプラスチック等を用いるフレキシブル基板への適用性が高い。
【0003】
一方、有機半導体は空気中で放置した場合、空気中の酸素や、水分などにより酸化や劣化、構造変化等が生じ、素子の電気的特性の劣化が起こることが知られている。
そのため、一般的に有機半導体素子では有機半導体からなるチャネル層を保護するための保護膜が有機半導体膜上に形成されている。
【0004】
このような保護膜として化学的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によってパリレン等の有機膜を製膜する方法が提案されているが、CVDでは高度な真空プロセスを必要とし、製造工程が複雑となる欠点がある(特許文献1)。また塗布や、印刷などのウェットプロセスにより、ポリマーや、硬化性材料を製膜する方法も提案されているが、製膜時に用いる溶剤や、形成した保護膜により有機半導体がダメージを受けるという問題があった(特許文献2)。
【0005】
これに対し水溶性樹脂を保護膜形成材料として用いて塗布する方法が提案されているが、有機半導体膜と水溶性樹脂が反応する恐れがあり、製膜時のダメージも完全には改善されていなかった(特許文献3)。さらにフッ素系溶媒と、フッ素系樹脂を保護膜形成材料として用いて塗布する方法が提案されているが、フッ素樹脂による保護膜が他の層に対する密着性が低いという課題があった(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−128623
【特許文献2】特開2006−344952
【特許文献3】特開2008−306188
【特許文献4】特開2010−34342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情から本発明の目的は、電気特性の安定性に優れた有機半導体素子の製造方法と、有機半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、以下の構成を有する製造方法により得られる半導体素子は上記課題を解決できることを見いだした。すなわち以下の通りである。
【0009】
1). 基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、有機半導体層の基板とは反対側に、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)該有機溶剤に可溶な有機化合物を含有する保護膜形成液を用いてウェットプロセスにより保護膜を形成することを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
【0010】
2). 前記有機化合物(b)がエポキシ系化合物、アクリル系化合物、フェノール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、イミド系化合物、シアネート系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物のいずれか1つである1)に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0011】
3). 前記有機化合物(b)が、下記式(X1)、(X2)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物である1)または2)のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
4). 前記有機化合物(b)が硬化性を有する1)〜3)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0014】
5). 前記有機化合物(b)が光硬化性を有する1)〜4)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0015】
6). 前記有機化合物(b)がアルカリ現像性を有する1)〜5)のいずれか一項に記載野の有機半導体素子の製造方法。
【0016】
7). 前記有機化合物(b)が、カチオン重合、ヒドロシリル化反応のうち少なくとも1種の反応により硬化する化合物である1)〜6)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0017】
8). 前記有機化合物(b)が、エポキシ基を有する化合物である1)〜7)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0018】
9). 前記有機化合物(b)がポリオルガノシロキサン化合物である1)〜8)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0019】
10). 前記有機化合物(b)が、(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物と、(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物と、(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物とのヒドロシリル化反応生成物を使用する、1)〜9)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0020】
11). 10)に記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記一般式(I)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、請求項10に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0023】
12). 10)に記載の化合物(α)が、Si−CH=CH基を有する化合物である請求項10もしくは11のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0024】
13). 10)に記載の化合物(β)が、下記一般式(III)
【0025】
【化3】

【0026】
(式中R、Rは炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【0027】
14). 基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、有機半導体層の基板とは反対側に、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)該有機溶剤に可溶な有機化合物を含有する保護膜形成液を用いてウェットプロセスにより保護膜を形成することを特徴とする1)〜13)のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法によって得られる有機半導体素子。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電気特性の安定性に優れた有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子を与えうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法により得られる有機薄膜トランジスタ素子の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明にかかる有機半導体素子の代表例として、図1に有機薄膜トランジスタの構造を示す。これに基づき本発明の有機半導体素子の製造方法の実施形態を説明する。尚、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0031】
最初に図1に示すように、ガラスやフィルム等からなる基板1上にゲート電極2を形成する。
【0032】
次にゲート電極2を覆うように、ゲート絶縁膜3を形成する。
【0033】
次に、ゲート絶縁膜3を介したゲート電極2上に有機半導体膜4を形成する。次に、ゲート絶縁膜3上に、ソース電極5及びドレイン電極6を形成する。有機半導体層4は、ソース電極5及びドレイン電極6が形成されることにより、ゲート絶縁膜3を介したゲート電極2ともに、FETが形成されるように形成されている。尚、ソース電極5及びドレイン電極6は、有機半導体膜4と接触して形成されておりゲート電極2に電界を印加することにより、有機半導体膜4/ゲート絶縁膜3界面にチャネルを形成する。
【0034】
次に、有機半導体膜を覆うように保護膜7を形成する。以上より、本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタを得ることができる。
【0035】
用いることができる基板は特に限定されず、通常使用される石英等のガラス基板のほか、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン等のプラスチックフィルム基板、グリーンシート等のセラミック基板、金属箔フィルム等も用いることができる。
【0036】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料は特に限定されず、通常使用されるAl、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、In、Ir、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Sn、W、Zn等の金属や、ITO等の化合物伝導体のほか、導電性高分子材料で形成することも可能である。導電性高分子材料としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン等が挙げられる。また、これらのポリマーにドーピングを施したものも導電性高分子材料として用いることができる。
【0037】
特に、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の錯体は(PEDOT/PSS)は、電気伝導度、安定性、耐熱性等の面で好ましい。導電性高分子材料は、重合度、構造により電気的特性を調節することが可能であり、更には、焼結工程が不要となるため、低温でゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成することが可能となる。
【0038】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極は、真空蒸着やスパッタリングといったドライプロセス(真空プロセス)により成膜し、フォトレジストを用いてリソグラフィー、エッチング処理を行うことにより形成してもよいが、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の印刷法により形成することも可能である。
【0039】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を印刷法により形成する場合には、金属粒子を分散させた金属インクが用いられる。金属粒子としては、Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、In、Ir、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Sn、W、Zn等が挙げられるが、これらの合金や、二種類以上の材料を併用してもよい。特に、電気抵抗、熱伝導率、腐食の面からAg、Au、Cu、Niがより好ましい。
【0040】
本発明のゲート絶縁膜の材料は特に限定されず、 SiOやSiN、Al等の無機絶縁膜や、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオルガノシロキサン等の有機絶縁膜、さらには無機材料と有機材料の複合材料等を用いることができる。
【0041】
ゲート絶縁膜は、真空蒸着やスパッタリングといったドライプロセス(真空プロセス)により成膜後、フォトレジストを用いてリソグラフィー、エッチング処理を行うことにより形成してもよいが、スピンコート、スリットコート、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の印刷法により形成することも可能である。 またゲート絶縁膜自体がフォトリソグラフィー可能であれば、エッチング処理を行わずに形成可能であり、コストの面で好ましい。
【0042】
本発明の有機半導体は有機化合物で半導体特性を有するものであれば特に限定されないが、具体的に例示すればアントラセン、テトラセン、ペンタセン又はその末端が置換された誘導体等の芳香族化合物、アルファ−セクシチオフェン等のチオフェン環を有する化合物等の低分子材料や、ポリチオフェン類、ポリフルオレン類、ポリピロール類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアズレン類等の高分子材料を用いることができる。
【0043】
また、有機半導体層は、真空蒸着等のドライプロセスでも成膜できるが、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などによる塗布方法や、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の印刷法等、ウェットプロセスを用いて形成することも可能である。
【0044】
このようなウェットプロセスでは、有機溶媒に可溶な有機半導体材料を用いることにより、有機半導体層を形成することが可能である。有機溶剤に可溶な有機半導体材料としては、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン(TIPSペンタセン)、ポリ3−へキシルチオフェン(P3HT)、ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)誘導体などが好適に使用できる。
【0045】
本発明の保護膜は有機半導体をエッチング、スパッタなどの製造後工程によるダメージから保護するとともに、空気中の酸素や、水による劣化を防ぐために用いられる。このような保護膜として本願発明に係る(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)有機溶剤(a)に可溶な有機化合物とを含有する保護膜形成液を用いて、ウェットプロセスにより前記保護膜を形成することにより、上記特性に加えて耐熱性、耐薬品性などのプロセス耐性のほか、絶縁性、他層との密着性を有し、さらに保護膜形成時に有機半導体にダメージを与えない保護膜と成すことが出来る。
【0046】
本発明の保護膜を用いることにより、有機半導体素子の製造工程が簡単となり、コストの観点から有利となる。種々のウエットプロセス法の中でも塗布法や、印刷法により保護膜を形成することが出来る。
【0047】
塗布方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等をあげることができる。また、印刷法としては、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等をあげることができる。
【0048】
本発明の保護膜は、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)有機溶剤(a)に可溶な有機化合物とを含有する保護膜形成液を用いて、ウェットプロセスにより形成することが特徴であるが、。特にこれらの限定された有機溶剤を用いることにより有機半導体膜へのダメージを最小にし、簡便な工程で保護膜を形成することができる。
【0049】
本発明の有機溶剤(a)は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。保護膜形成液中の有機溶剤(a)の量は、保護膜形成液全体に対して、好ましくは10〜90重量部、より好ましくは30〜80重量部である。有機溶剤(a)が少ないと、保護膜形成液の粘度が高くなり、成膜性が悪化する。また保護膜形成液には、成膜性を調整するため、本発明の効果を損ねない範囲で、上記以外の有機溶剤を添加することができる。
【0050】
溶剤の種類は特に限定されないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0051】
溶剤の添加量は上記3種の有機溶剤に対して20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。添加量が多いと有機半導体へのダメージが増大し、電気特性が低下する。
【0052】
有機化合物(b)は保護膜を形成する成分であり、有機溶剤(a)に可溶で、有機半導体の保護膜として必要な特性を有する保護膜の形成が可能なものであればその組成は特に限定されないが、単一物質でも良いし、複数の物質からなるものであってもよい。
【0053】
このような有機化合物(b)としては、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、フェノール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、イミド系化合物、シアネート系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物等をあげることができる。このなかでも絶縁性、熱、光に対する安定性の観点から特にポリオルガノシロキサン系化合物が好ましい。
【0054】
ポリオルガノシロキサン系化合物とは、シロキサン単位(Si−O−Si)および、構成元素としてC、H、N、O、Sからなる有機基Xとから構成される化合物であれば特に限定はないが、これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる保護膜は硬度が高くより耐熱信頼性に優れ、またM単位(XSiO1/2)、またはD単位(XSiO2/2)の含有率が高いものほど保護膜はより柔軟で低応力なものが得られるので好ましい。
また、ポリオルガノシロキサン系化合物の構造中に式(I)で表される構造を含むことにより、絶縁性、耐熱性に優れる保護膜となりうる観点より好ましい。
【0055】
前記構造の導入法としては、SiH基を有するポリシロキサン化合物と、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどのヒドロシリル化反応性を有する2重結合を構造中に有するイソシアヌル環含有化合物とをヒドロシリル化反応させることによって得ることができる。
【0056】
また、SiH基を有するポリシロキサン化合物としては、(III)で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物が好適に用いることができる。
【0057】
また、本発明の有機化合物(b)は、前記式(X1)、(X2)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「式(X1)、(X2)で表される各構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基」を「酸性基」と称することがある。)を含有することが有機溶剤(a)への溶解性、有機半導体へのダメージ性の観点から好ましい。また得られる保護膜が高温時における着色が少ないと言う観点より、これら有機構造の中において(X1)、(X2)、カルボキシル基から選ばれる構造を有していることが好ましい。
【0058】
本発明の保護膜の形成方法としてはウェットプロセスによることが特徴であるが、その膜厚は10nm以上20μm以下が好ましく、20nm以上10μm以下がより好ましい。
【0059】
本発明の有機化合物(b)としては、熱や、光などの外部エネルギーにより、架橋反応が進行する硬化性組成物を使用しても良い。この場合、高密度な架橋構造に基づく高度な絶縁性、安定性を有する保護膜を得ることができる。
【0060】
架橋反応形式としては特に限定されるものではないが、カチオン重合反応、ラジカル重合反応、ヒドロシリル化反応、重縮合反応などが挙げることができ、小さなエネルギーで効率的に架橋反応が進めることができるという観点より、カチオン重合反応、ヒドロシリル化反応が好ましい。また、これらのうち2つ以上の架橋形式を有するものであってもよい。
【0061】
カチオン重合反応が進行する硬化性組成物としては、分子内に少なくとも1個のカチオン重合性官能基を有する重合性化合物が用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、架橋性シリコン基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等が挙げられる。 なかでも、エポキシ基を有する化合物が好適に用いられる。エポキシ基のなかでも安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基が好ましく、特に重合性に優れる点では、脂環式エポキシ基が好ましい。
【0062】
ヒドロシリル化反応が進行する硬化性組成物としては、炭素―炭素二重結合を有する化合物と、SiH基を有する化合物の組み合わせが用いられる。炭素−炭素二重結合を有する化合物は一分子中に少なくとも炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有するものであれば特に限定されるものではなく、ポリシロキサン化合物、有機化合物にかかわらず特に限定なく使用することができる。具体的にはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが好適に使用できる。
【0063】
本発明の有機化合物(b)として、上記硬化性組成物を用いる場合、保護膜形成液には、硬化性組成物の架橋形式に応じた重合開始剤もしくは、触媒を用いることができる。
カチオン重合させる場合の重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、又は熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。特に好ましい活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩並びにII族、V族およびVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。
【0064】
これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社製)、UVR−6990およびUVR−6974(ユニオン・カーバイド社製)、UVE−1014およびUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−152およびSP−172(旭電化社製)並びにサンエイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(三新化学工業社製)、WPI113およびWPI116(和光純薬工業社製)、RHODORSIL PI2074(ローディア社製)、BBI−103(みどり化学社製)として商品として入手できる。
【0065】
ラジカル重合させる場合の重合開始剤としては、活性エネルギー線によりラジカル種を発生する、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0066】
ヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。
【0067】
更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0068】
特に硬化性組成物の中で、光により架橋反応が進行する光硬化性組成物は、硬化反応が短時間で行えることから有用である。このような光硬化組成物の架橋形式は特に限定されず、上記硬化性組成物と同様なものが使用可能であり、上記重合開始剤、触媒のうち光により活性化し、ラジカル、またはカチオン種を発生する光重合開始剤と組み合わせることにより光硬化性を付与することができる。
【0069】
また、本発明の有機化合物(b)として光硬化性組成物を用い、前記式(X1)、(X2)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種を前記重合性官能基と同一分子内に有することによりアルカリ水溶液への溶解が可能となり、リソグラフィー性を付与することができる。本発明の保護膜に下部電極へのコンタクトホールを形成する際に、別途レジスト材料を塗布する工程や、エッチング処理工程等が不要になり、コストの観点から好ましい。
【0070】
本発明の有機化合物(b)として、光硬化性を有する変性ポリオルガノシロキサン化合物を用いる場合、好適なものとして、次の態様が挙げられる。
下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物:
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物。
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物。
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
【0071】
以下、上記変性ポリオルガノシロキサン化合物の好ましい態様につき、説明する。
(化合物(α))
化合物(α)について説明する。
化合物(α)は、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物であれば限定されるものではない。
その中でも、特に得られる保護物の絶縁性に優れるという観点より、(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0072】
特に、これら化合物の中で特に有機溶剤(a)への溶解性、半導体へのダメージ性に優れる観点より、イソシアヌル酸構造を有するものが好ましく、入手性の観点より、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸などが具体的に挙げられる。
【0073】
また得られる保護物が透明性に優れる観点より、アルケニル基を有するポリシロキサン化合物との併用が好ましく、特に入手性の観点より、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の環状シロキサン化合物が好ましい。
【0074】
(化合物(β))
化合物(β)について説明する。
化合物(β)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0075】
これらのうち、入手性および化合物(α)、(γ)との反応性が良いという観点からは、さらに、(III)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0076】
一般式(III)で表される化合物中の置換基R、Rは、C、H、Oからなる群から選択して構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0077】
一般式(III)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
上記した各種化合物(β)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0078】
(化合物(γ))
化合物(γ)について説明する。
化合物(γ)は、1分子中に光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物であれば特に限定されない。
特に反応性・化合物の安定性の観点より、光重合性官能基の少なくとも1個は、エポキシ基が好ましい。
【0079】
光重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(γ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、光重合反応性に優れている観点より、脂環式エポキシ基を有する化合物であるビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
【0080】
またヒドロシリル化反応の際、光重合性官能基の種類を問わず、2種以上の化合物(γ)を併用することもできる。
【0081】
このような光重合性官能基は変性ポリオルガノシロキサン中に、0.1〜50mmol/g含有することが好ましく、0.3〜30mmol/g含有することがより好ましい。含有量が少ないと、硬化が不十分となり、含有量が多すぎると保護膜形成液の安定性が悪化する。
【0082】
(ヒドロシリル化触媒)
これら化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を用いて、ヒドロシリル化反応により変性ポリオルガノシロキサン化合物を合成する際の触媒には、前記保護膜形成液に添加するヒドロシリル化触媒と同様のものが使用できる。
【0083】
(化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応)
本発明の光硬化性組成物に使用できる変性ポリオルガノシロキサン化合物としては、上述したとおり、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応をヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0084】
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましく、低分子量体を含有しにくいと言う観点から、過剰の化合物(α)と化合物(β)とを、もしくは、過剰の化合物(β)と化合物(α)とをヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の化合物(α)もしくは化合物(β)を除き、得られた反応物と化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる方法がより好ましい。
【0085】
また特に化合物(α)を2種類併用する場合、過剰の化合物(α1)と化合物(β)とを、もしくは、過剰の化合物(β)と化合物(α1)とをヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の化合物(α1)もしくは化合物(β)を除き、得られた反応物と化合物(α2)および化合物(γ)と反応させる方法が好ましい。
【0086】
各化合物の変性させる割合は特に限定されないが、化合物(α)および(γ)の総アルケニル基量をA、化合物(β)の総SiH基量をBとした場合、1≦B/A≦30であることが好ましく、更に1≦B/A≦10であることが好ましい。1>B/Aの場合は、組成物中に未反応アルケニル基が残るため着色の原因となり、また30<B/Aの場合には、大量の(β)成分を使用するため、製造コストが高くなる観点より好ましくない。
【0087】
また、化合物(α)および化合物(γ)の変性割合については、化合物(α)のアルケニル基をA1、化合物(γ)のアルケニル基をA2とした場合、A1+A2=1として、0.01≦A1≦0.99、0.01≦A2<0.99の範囲で適宜選択して変性させることができる。
【0088】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0089】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
ヒドロシリル化反応の際に酸素を使用できる。反応容器の気相部に酸素を添加することで、ヒドロシリル化反応を促進できる。酸素の添加量を爆発限界下限以下とする点から、気相部の酸素体積濃度は3%以下に管理する必要がある。酸素添加によるヒドロシリル化反応の促進効果が見られるという点からは、気相部の酸素体積濃度は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。
【0090】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0091】
化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させた後に、溶媒及び/又は未反応の化合物を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる反応物が揮発分を有さないため、該反応物を用いて硬化物を作成する場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは80℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0092】
本発明のカチオン重合性化合物としての変性オルガノポリシロキサン化合物の上記製造方法では、目的によって種々の添加剤を使用できる。
【0093】
本発明の保護膜形成液の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を成膜直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
本発明の保護膜形成液は、基材の状態に合わせ適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整を行っても良い。
【0094】
また本発明の有機化合物(b)を、光照射により架橋反応を進行させて硬化物させる場合、光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。
【0095】
露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1〜1000mJ/cm、より好ましくは1〜500mJ/cmであり、さらに好ましくは1〜300mJ/cmである。露光量が少ないと表面荒れや、膜厚の減少、パターンエッジ部の欠けが生じる。露光量が多いと急硬化のために変色することがある。
【0096】
成膜後、溶媒の蒸発、硬化反応の促進等の点から加熱することが好ましい。その加熱温度は特に限定されるものではないが、周辺の耐熱性の低い部材への影響が小さいという観点より、200℃以下であることが好ましく、特に樹脂基板などを用いる場合には、寸法安定性等を考慮すると180℃以下であることが好ましい。
【0097】
また本発明の有機化合物(b)について、アルカリ現像により微細パターニングすることも可能である。そのパターニング形成について特に限定される方法はなく、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法により未露光部を溶解・除去し所望のパターン形成させることができる。
【0098】
またの現像液については、一般に使用するものであれば特に限定なく使用することができ、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの等を挙げることができる。
【0099】
また現像液の水溶液濃度に関しては、露光部と未露光部のコントラストがつきやすいという観点より、25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下であることが好ましい。
【0100】
(添加剤について)
本発明の保護膜形成液には、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。
【0101】
(増感剤)
本発明の保護膜形成液には、有機化合物(b)を光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上のおよびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。
添加する化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
【0102】
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0103】
また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0104】
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0105】
またこれらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。増感剤の添加量は、硬化時間、保護膜中の増感剤残存の点、着色性等の点から有機化合物(b)100重量部に対して、概ね0.1〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0106】
(反応性希釈剤)
本発明の保護膜形成液には、作業性、反応性、接着性、硬化物強度の調整のために適宜、反応性希釈剤を添加する事ができる。添加する化合物には、硬化反応形式によって選択して特に限定無く使用することが可能であり、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アルコキシシラン化合物、(メタ)アクリレート化合物など重合基を有する化合物を使用する。
【0107】
反応性希釈剤の添加量としては種々設定できるが、有機化合物(b)に対して、好ましい添加量は1〜30重量部、より好ましくは3〜15重量部である。添加量が少ないと添加効果が表れず、添加量が多いと保護膜の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0108】
(接着性改良剤)
本発明の保護膜形成液には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0109】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0110】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0111】
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、有機化合物(b)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと保護膜の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0112】
(リン化合物)
本発明の有機化合物(b)を光又は熱により硬化させ、特に保護膜が透明性を要求される用途で使用する場合は、光又は熱による硬化後の色相を改善するために、保護膜形成液にリン化合物を添加するのが好ましい。リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類から選ばれる酸化防止剤、又は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類から選ばれる着色防止剤が好ましく使用される。
【0113】
リン化合物の使用量は、有機化合物(b)100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。リン化合物の使用量が0.01重量部より少ないと、色相の改善効果が少なくなる。使用量が10重量部より多くなると、保護膜の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0114】
(充填材)
本発明の保護膜形成液には必要に応じて充填材を添加してもよい。
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用或いは/及び提案されている充填材等を挙げることができる。
【0115】
(老化防止剤)
本発明の保護膜形成液には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0116】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0117】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0118】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0119】
(ラジカル禁止剤)
本発明の保護膜形成液にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0120】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0121】
(紫外線吸収剤)
本発明の保護膜形成液には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0122】
(その他添加剤)
本発明の保護膜形成液には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0123】
本発明の製造法によって製造される有機薄膜トランジスタは、アクティブマトリクス型のフラットパネルディスプレイにおける画素トランジスタとして用いることができる。この際、ディスプレイを安定的に駆動させるためトランジスタの特性として、閾値電圧、ON/OFF比が重要特性として挙げられる。
【0124】
ここで言う閾値電圧とは、トランジスタがON状態となり半導体層に電流が流れ始める電圧値を示し、トランジスタの電流伝達特性においてソース/ドレイン間に流れる電流Id、ゲート印加電圧Vgとした際の(Id)1/2 とVg 間のグラフにおいて線形部分の延長線とVg 軸との交点より算出される。トランジスタの駆動にかかる消費電力が小さくなるという観点より、−14〜14Vであることが好ましく、さらに−12〜12Vであることが好ましい。
【0125】
ON/OFF電流比とは、トランジスタの電流伝達特性におけるソース/ドレイン間に流れる電流Idの最大電流値と最小電流値の比(Ion/Ioff)で表され、大きければ大きいほどスイッチとしての機能に優れることを示し、駆動に大電流を要する方式の駆動も可能となることより1.0×10以上であることが好ましく、5.0×10以上であることがさらに好ましい。
【0126】
(用途)
本発明の有機半導体素子の製造法によって製造される有機半導体素子は、種々の用途に用いることができる。従来の無機半導体が使用される各種用途に応用することが可能である。
【0127】
本発明の有機半導体素子は、ダイオード、トランジスタ、薄膜トランジスタ、メモリ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタ、センサ等に利用することができる。特に本発明の有機半導体素子の保護膜の上層に、所望の表示部を設けることによって、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、LCD(液晶ディスプレイ)、高分子分散液晶、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)等の表示素子に利用することができる。また、アクティブマトリクス表示装置に利用することにより、高画質化、低消費電力化および省スペース化を図りつつ、フレキシブル化ならびに軽量化を実現することができる。
【0128】
さらに、本発明の有機半導体素子は低コストで作ることも可能であるため、セキュリティカードなどのタグ用トランジスタにも使うこともできる。
【実施例】
【0129】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0130】
(実施例1〜3、比較例1)
本発明の手法を用いて下記実施例および比較例で作成した薄膜トランジスタについて、半導体パラメーターアナライザー(Agilent4156)を用い電流伝達特性を評価した。ソース/ドレイン間に−40Vの電圧を印加した状態で、ゲート電極に20〜−40Vで印加した際のソース/ドレイン間電流量(Id)をプロットし伝達特性とした。得られた電流伝達特性の曲線からTFT特性を下記の方法によって算出した結果を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
この結果から、本発明の製造法により、電流特性に優れる有機薄膜トランジスタが得られることがわかる。
【0133】
(閾値電圧)
電流伝達特性の曲線においてソース/ドレイン間に流れる電流Id、ゲート印加電圧Vgとした際の(Id)1/2 とVg 間の曲線より線形領域の延長線とVg 軸との交点より算出した。
【0134】
(ON/OFF電流比)
オン時の電流Ionは、電流伝達特性の曲線において飽和領域での最大電流値とし、オフ時の電流Ioffは、オフ状態の最小電流から求めた。ON/OFF電流比Ion/Ioffは、オン状態の最大電流値とオフ状態の最小電流値との比から算出した。
【0135】
(製造例1)
500mL四つ口フラスコにトルエン80g、1,4−ジオキサン20g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン50gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。モノアリルイソシアヌレート14.1g、1,4−ジオキサン70.0g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,4−ジオキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物B1」を得た。
【0136】
100mL四つ口フラスコにトルエン20g、1,4−ジオキサン5g、「反応物B1」10gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシド3.0gおよびトルエン3.0gの混合液を加え、添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物1」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を6.1mmol/g、エポキシ基2.5mmol/gおよび、(X2)で表される構造を有するポリオルガノシロキサン化合物であることを確認した。
【0137】
(製造例2)
500mL四つ口フラスコにトルエン80g、1,4−ジオキサン20g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン50gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。モノアリルイソシアヌレート16.1g、1,4−ジオキサン70.0g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,4−ジオキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物B2」を得た。
【0138】
100mL四つ口フラスコにトルエン20g、1,4−ジオキサン10g、「反応物B2」10gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここに、ジアリルイソシアヌレート14.9g、トルエン14.9g添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した後、さらにビニルシクロヘキセンオキシド3.8gおよびトルエン3.0gの混合液を加え、添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物2」を得た。1H−NMRの測定により標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を3.0mmol/g、エポキシ基1.5mmol/gおよび、(X1)(X2)で表される構造を有するポリオルガノシロキサン化合物であることを確認した。
【0139】
(製造例3)
500mL四つ口フラスコにトルエン80g、1,4−ジオキサン20g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン50gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。モノアリルイソシアヌレート16.1g、ジアリルイソシアヌレート14.9g、1,4−ジオキサン70.0g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,4−ジオキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物B3」を得た。
【0140】
100mL四つ口フラスコにトルエン20g、1,4−ジオキサン10g、「反応物B3」10gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここに、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン2g、トルエン4.0g添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した後、さらにビニルシクロヘキセンオキシド1.8gおよびトルエン2.0gの混合液を加え、添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物3」を得た。H−NMRの測定により標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を3.5mmol/g、エポキシ基1.8mmol/gおよび、(X1)(X2)で表される構造を有するポリオルガノシロキサン化合物であることを確認した。
【0141】
(製造例4)
500mL四つ口フラスコにトルエン80g、1,4−ジオキサン20g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン50gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート3.8g、ジアリルイソシアヌレート5.0g、1,4−ジオキサン70.0g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物B4」を得た。
【0142】
100mL四つ口フラスコにトルエン30g、「反応物B4」10gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシド3.0gおよびトルエン3.0gの混合液を加え、添加3時間後にH−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物4」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を3.5mmol/g、エポキシ基2.0mmol/gおよび、(X1)で表される構造を有するポリオルガノシロキサン化合物であることを確認した。
【0143】
(実施例1)
有機化合物(b)としての「反応物1」5g、炭酸プロピレン10g、BBI−103(ミドリ化学製、カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g添加し、保護膜形成液1を調整した。
【0144】
ガラス基板1にアルミ(Al)を用いて厚さ500Åのゲート電極2を形成し、その上にポリイミド樹脂をスピンコートにより塗布し、厚さ1μmのゲート絶縁膜3を形成した。さらに蒸着により500Åの厚さにペンタセンの有機半導体層4を形成させ、その上にチャネル長さ100μm、チャネル幅5mmのマスクを用いて蒸着によって厚さ300Åのソース/ ドレインAu電極5,6を形成した。
【0145】
さらにその上から保護膜形成液1を2000rpm、20secの条件でスピンコートにより塗布し、65℃に加熱したホットプレート上で5分加熱し、露光装置(高圧水銀ランプ、マスクアライメント装置 MA−10 ミカサ社製)を用い、50μm角のパターンマスクを通して、200mJ/cm2で露光し(プロキシミティ露光、ギャップ12μm)、65℃に加熱したホットプレート上で2分加熱し、アルカリ性現像液(TMAH2.38%水溶液)に60秒浸漬後、60秒水洗して、50μm角コンタクトホールを形成した。さらに150℃でポストベイクして厚さ2.0μmの保護膜7を形成し、薄膜トランジスタを製作した。
【0146】
(実施例2〜3、比較例1)
有機溶剤(a)と、有機化合物(b)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に保護膜形成液を調整し、薄膜トランジスタを作成した。
なお、PGMEAはプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートの、DMSOはジメチルスルホキシドのそれぞれの略である。
【符号の説明】
【0147】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 有機半導体膜
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、有機半導体層の基板とは反対側に、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)該有機溶剤に可溶な有機化合物を含有する保護膜形成液を用いてウェットプロセスにより保護膜を形成することを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記有機化合物(b)がエポキシ系化合物、アクリル系化合物、フェノール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、イミド系化合物、シアネート系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物のいずれか1つである請求項1に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記有機化合物(b)が、下記式(X1)、(X2)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物である請求項1または2のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【化1】

【請求項4】
前記有機化合物(b)が硬化性を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記有機化合物(b)が光硬化性を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記有機化合物(b)がアルカリ現像性を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載野の有機半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物(b)が、カチオン重合、ヒドロシリル化反応のうち少なくとも1種の反応により硬化する化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記有機化合物(b)が、エポキシ基を有する化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機化合物(b)がポリオルガノシロキサン化合物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記有機化合物(b)が、(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物と、(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物と、(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物とのヒドロシリル化反応生成物を使用する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記一般式(I)
【化2】

(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、請求項10に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の化合物(α)が、Si−CH=CH基を有する化合物である請求項10もしくは11のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の化合物(β)が、下記一般式(III)
【化3】

(式中R、Rは炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項14】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、有機半導体層の基板とは反対側に、(a)炭酸プロピレン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤と、(b)該有機溶剤に可溶な有機化合物を含有する保護膜形成液を用いてウェットプロセスにより保護膜を形成することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の有機半導体素子の製造方法によって得られる有機半導体素子。


【図1】
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【公開番号】特開2012−74616(P2012−74616A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219685(P2010−219685)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】