説明

板ガラスの検査

板ガラスの欠陥検査方法を開示する。この方法は、板ガラスを第1波長を有する光で照射して明視野像を作成し、該板ガラスを第2波長を有する光で照射して暗視野像を作成することを備える。明視野像および暗視野像を、単一の画像取得装置を用いて取得する。明視野および暗視野像を共通のレンズによって画像取得装置上に結像する。加えて、影絵像も同時に記録することができる。この検査方法は、自動車用板ガラスのような板ガラス用の優れた欠陥検出システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの検査に関するもので、とくに、歪曲および非歪曲の両欠陥に対する板ガラスの検査に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産中の自動車用板ガラスに用いるガラスは、最終板ガラス製品の光学品質に影響し得る様々な欠陥に関して検査される。例えば、ガラスは、該ガラスを適切な大きさに切るのに用いた切断およびグラインディング処理からの縁欠け、ブリランタチュラおよびシャイナーのような処理を通して得られる欠陥を有する場合がある。或いはまた、ガラスを成形するのに用いた焼成および曲げ処理からの歪曲、厚さ、および曲率の変動により欠陥が生じる場合がある。例えば、成形したガラスを通して物体を見るとき、二次的像を見ることができる。これは、単一プライおよび積層板ガラスの両方の場合である。
【0003】
また、ガラス製造処理におけるガラス本体の内に、または製造中もしくは製造後のいずれかの処理におけるガラス表面上に欠陥が生じる場合がある。例えば、フロート法を用いて製造したガラスは、ガラス本体内に、またはカレット(再利用されたガラス)が適切に溶解されず、溶解領域を形成した範囲内に小さな気泡および硫化ニッケル介在物を有する場合がある。このガラス表面には、スズの小さなしみ、ローラ跡(ガラス焼きなまし炉ローラによる)、磨耗、切りくずおよびチルクラックがある。これら欠陥のいくつかは、フロートラインを去るガラスと、焼成および曲げのようなさらなる処理との間で検出することができるが、磨耗のようないくつかの欠陥は、ガラスの処理中のあらゆる時点で生起し得るので、最終検査まで検出させることができない。これらの欠陥は、板ガラスの最終的な品質、外観および耐久性に関係がある。
【0004】
一般に、ガラスにおける欠陥は、光学的検査法を用いて検出される。これらは、ガラスを透過または反射のいずれかの状態で照射し、欠陥が存在するかどうかを決めるのに用いた透過光の変動である。周知の品質検査方法の一つは影絵である。板ガラスを局部光源(高強度点源)とスクリーンとの間に置き、該板ガラスの影絵像をスクリーン上に投影し、CCD(電荷結合素子)カメラを用いて記録する。板ガラスの影絵は、板ガラスの透過した歪曲に関連し、ガラスの厚さ変動によって生じた照明変動によって特徴付けられる。これら厚さ変動は、光学的歪曲になる光の偏向を引き起こすガラスの浅いV−字形セクションが見える「ウエッジ」として知られる効果をもたらす。ウエッジ角の変動は、光の収束または発散をもたらし、影絵の照明変動を与える。影絵は、平坦または湾曲板ガラスから生じ、ガラス処理ラインにおける最後の検査ステップとして組み込むことができる。
【0005】
他の光学的技術もガラスの検査に用いることができる。ガラス内の欠陥は、明視野および暗視野技術の両方を用いて像化させることができる。明視野技術を用いて、非歪曲欠陥を検出するのに焦点があって、歪曲欠陥を検出するには焦点がずれて小さな欠陥(大きさ0.2mm程度の小さい)を検出することができる。また、暗視野技術を用いて小さな欠陥(大きさ0.2mm程度の小さい)を検出することができる。しかし、全ての欠陥が光を散乱させるので、歪曲欠陥の像を焦点が合って見ることができる。歪曲欠陥もまた、影絵技術を用いて見ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
個々の明視野と暗視野測定が、板ガラスの品質の正確な像を構築するのに必要である。各技術により生じた像を別々の検出器を用いて記録し、処理ステップにおいてまとめることができる。或いはまた、単一像の明視野及び暗視野の両画像要素を単一検出器上で結像することができる。しかし、これを行うと、光を散乱させて暗視野像を生む多くの欠陥が光を明視野像に吸収するので、暗視野信号のピークと明視野信号の谷との結合が低い結合応答をもたらす場合がある。加えて、測定した信号のダイナミックレンジを危うくし、情報は失う。したがって、欠陥が存在するかまたは合格/不合格の基準を満たしているかどうかの画定か複雑で、誤った不合格品が起り得る。それ故、この方法を製造ラインでうまく実施するのは困難である。
【0007】
従って、明視野および暗視野像化技術を光学的検査方法への使用に効果的に結合する方法を見つけることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来方法の問題点を板ガラスの欠陥の検査方法によって対処することにあり、該方法が板ガラスを第1波長を有する光で照射して明視野像を作成し、該板ガラスを第2波長を有する光で照射して暗視野像を作成し、前記板ガラスを第1波長を有する光で照射して影絵像を作成し、単一の画像取得装置を用いて前記明視野像、暗視野像および影絵像を取得することを備える。
【0009】
別々の波長を明視野及び暗視野像を発生させると同時に影絵像を発生させることにより、単一の画像取得装置を用いてこれら像を記録することができる。単一の画像取得装置を用いることによって、各像を同じ方法で該装置に結像して、例えば加法または減法によって結合し得る同一ジオメトリーを有する像にする。これは、歪曲および非歪曲欠陥の両方の優れた検出をもたらす。
【0010】
明視野像、暗視野像および影絵像を、共通のレンズを用いて画像取得装置に結像するのが好ましい。
【0011】
明視野像および影絵像を同一光源からの光で形成するのが好ましい。影絵像を共通のレンズによって画像取得装置に結像するのが好ましい。
【0012】
好ましくは、画像取得装置はCCD(電荷結合素子)カメラである。
【0013】
第1波長を有する光を点光源によって産出するのが好ましい。点光源はLED(発光ダイオード)とすることができる。第2波長を有する光を線光源によって産出するのが好ましい。線光源はLEDの線形配列とすることができる。好ましくは、検査すべき板ガラスは自動車用板ガラスである。
【0014】
本発明はまた、前記方法を実施するための装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、添付の図面につき、実施例を用いて説明する。
【0016】
本発明において、2個の異なる波長源からの光を用いて板ガラスにおける欠陥の明視野および暗視野像を作成し、単一の画像取得装置を用いて検出し得ることは明らかである。明視野および暗視野技術をうまく組み合わせることによって、明視野像に対するものと同じ光源を用いて板ガラスの影絵像を作成することもできる。
【0017】
図1は、明視野像化用に組立てた光学検査装置の概略図である。光学検査装置10を、透過状態で検査すべき所定位置の板ガラス11(図示せぬスタンド上に支持する)と共に示す。該装置10はLED(発光ダイオード)点光源12を備え、これは大きなミラー13によって反射されて板ガラス11に入射する光を放出する。LED点光源12からの光を小さなミラー14によって前記大きなミラーへ導く。ストリップ球面ミラー15を板ガラス11の真後ろに設置し、光を反射させて前記板ガラスを介して大きなミラー13へ戻す。次いで、この光を前記大きなミラー13によって小さなミラー14の端を越えて画像取得装置16まで反射させる。該画像取得装置16は、非歪曲欠陥の焦点の合った画像と、歪曲欠陥の焦点のずれた画像とを記録する。また、画像取得装置16は板ガラス内のあらゆるウェッジ効果によって生じた照明変動を検出して、影絵像を同時に記録することができる。影絵像は、板ガラスに存在するあらゆる歪曲欠陥の焦点のずれた画像である。光が板ガラス11からストリップ球面ミラー13へ再び戻るように移動し、欠陥がミラーの後ろに現れ、したがって焦点から外れるようにする。或いはまた、ビームスプリッターを小さいミラー14の代わりに用いることができ、この場合大きいミラー13によって画像取得装置16へ反射した光もビームスプリッターを通過するように装置を組立てる。
【0018】
図1において、小さいミラー14から大きなミラー13まで移動する光と、大きなミラー13から画像取得装置16まで戻る光との間の角度を明確にするため誇張して示す。実際には、この角度を最小限にして球面ミラー14へ移動しそこから反射する光が同じ光路を通るのを確実にするので、各欠陥の一つの像だけを検出する。所要に応じて、大きなミラー13を取り除き、光源12および画像取得装置16を板ガラス11に直接向くようにすることができる。この状況では、ストリップ球面ミラー15を全球面ミラーに置き換える。
【0019】
図2は、暗視野像化用に組立てた光学検査装置の概略図である。光学検査装置20を、透過状態で検査すべき所定位置の板ガラス11(図示せぬスタンド上に支持する)と共に示す。該装置20は、板ガラス11の後ろに垂直に配置したLED(発光ダイオード)線光源21を備え、これはLEDの線形配列からなり、長さ約1mである。線光源21は、板ガラスを直接透過した光が大きいミラー13の側面を通過し、板ガラス内の欠陥によって散乱した光のみが大きなミラー13によって画像取得装置16へ反射されるように配設される。画像取得装置16は、歪曲欠陥を含む全ての欠陥が光を散乱させるので、焦点の合った全ての欠陥を記録する。
【0020】
図3は、本発明の方法を実施するために組立てた光学検査システムの平面図である。図1に示した明視野画像装置と、図2に示した暗視野画像装置とを単一の光学検査システムに組合わせる。かかるシステム30は、板ガラス11を透過状態で検査し、明視野および暗視野像を単一の画像取得装置上に記録することができる。LED点光源12によって発生した影絵像も記録することができる。歪曲欠陥は、明るい領域または「ハロー」によって影絵像において浮き彫りになる。
【0021】
明視野および暗視野像を結像するため、2個の光源を異なる波長で操作する。好ましくは、明視野像化に用いるLED点光源12は緑色光を放射し、暗視野像化に用いるLED線光源21は赤色光を放射するのが好ましい。しかし、レーザのような代替光源を、点光源および線光源の両方に用いることができる。図1における装置と同様に、小さいミラー14をビームスプリッターと置き換え、画像取得装置に向けて反射した光がビームスプリッターを通過するように装置を組立てることができる(明視野像を形成するLED点光源からの光を図3では実線として示す)。
【0022】
LED線光源21は、LED線光源12が板ガラスに焦点を合わせて照射する点に最も近づけて板ガラスを照射するように設置する(暗視野像を形成するLED線光源からの光を、図3では明確のため明視野像を示す線から僅かに偏倚した点線として示す)。板ガラス中の欠陥により直接反射又は透過されたLED点光源12からの光は、大きいミラー13から画像取得装置16に反射されて明視野像を形成する。LED点光源12からカメラへ戻って反射する光の照射変動を用いて影絵像を形成する。LED線光源21からの光を板ガラス中の欠陥によって散乱し、次いで大きいミラー13によって画像取得装置16へ反射して暗視野像を形成する。板ガラス11中を直接透過した線光源21からの光は、大きいミラー12を外れ、取得した画像の一部も形成しない。明視野像および暗視野像の両方を、画像取得装置16上に両像化技術に共通な単一レンズ31により結像する。従って、明視野像および暗視野像を例えば加法または減法によって画像取得装置16上で結像する。影絵像が発生すると、これもレンズ31を用いてカメラ上に結像し、そのため明視野および暗視野像と結合する。
【0023】
図3では、図1と同様に、小さいミラー14から大きなミラー13まで移動する光と、大きなミラー13から画像取得装置16まで戻る光との間の角度は、明確にするため誇張して示し、実際には最小限にする。図1における明視野装置と同様に、所要に応じて、大きなミラー13を取り除き、光源12および画像取得装置16を板ガラス11に直接向くようにすることができる。この状況では、ストリップ球面ミラー15を全球面ミラーに置き換える。
【0024】
用いる画像取得装置16は、ドイツ国のBalser AGから入手可能なL304Kcシリーズラインスキャン3線形カラーCCDカメラであるのが好ましい。このカメラは、4080感光素子の3本の線を有し、それぞれ赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタで覆ってスペクトル分離を与えるようにした3線形センサを用いる。かかるカメラは、フリーランモードで起動することができ、露光時間制御用の外部トリガーを有する。図3に示したレンズ31のような追加レンズを用いて、カメラ上に発生した像を結像することができる。エリアスキャンカメラを代替画像取得装置として用いることができ、この場合ストリップ球面ミラー15を全球面ミラーに置き換える。
【0025】
感光素子の各ラインを距離90μmで離隔する。この離隔を用いて、2個の光源による照射を板ガラスで分離するのに役立たせることができる。30倍の倍率レンズを用いて板ガラスの像をカメラ上に結像する。これは、板ガラスに約2.7mmの画像分離をもたらす。画像を分離することによって、LED線光源21が板ガラスに対して位置する角度を小さくして検査する板ガラスの高度範囲を増大させ、これによりLED線光源21を再設置することなく用いることができる。青色LEDをLED点光源12に用いる場合、青色および赤色の感光素子間の分離は180μmであるので、板ガラスでの画像分離を約5.4mmまで増やす。
【0026】
明視野像を発生するのに用いる波長(λ)および暗視野像を発生するのに用いる波長(λ)の両方は、用いる画像取得装置のスペクトル範囲内とすべきである。LED点光源は、米国のLumileds Lightingから入手可能なLED光源であるのが好ましい。LED線光源は、アイルランドのStocker Yale(IRL), Ltdから入手可能なCOBRATMラインスキャン光源であるのが好ましい。上述した例において、線光源(赤色光)に対して用いた波長は630nmであり、点光源(緑色光)に対して用いた波長は540nmである。これらの波長では、L304kcカメラの未使用カラーフィルタからの画像は通常抑制される。しかし、異なる波長の光源および/または異なるスペクトル範囲を有する画像取得装置を用いて、明視野および暗視野像を発生させることができる。例えば、適切なフィルタを備えたレーザまたは白色光源を用いることができる。
【0027】
画像を一度取得すると、これらをスクリーンを介してオペレータに表示するか、又はメモリ記憶素子に蓄積した後直後もしくはしばらく後で画像処理ソフトによってさらに処理することができる。欠陥を、明視野像における暗い範囲または暗視野像における明るい範囲として示す。歪曲を生ずる欠陥に関して、影絵像も作成、取得する場合、該欠陥が通常明視野像において明るい領域またはハローによって囲まれて見ることができる。装置は、100μm程の小さい欠陥を検出することができる。
【0028】
ラインスキャンカメラを用いて明視野像、暗視野像および影絵像を取得する場合、板ガラス全体をスキャンするように該板ガラスをカメラおよび光源の焦点に進める。これは一般にベルトコンベアシステムを用いて行う。或いはまた、エリアスキャンカメラを用いて明視野像、暗視野像および影絵像を取得する場合、画像を取得する間板ガラスは静止している。かかるカメラは、オフライン画像取得用に有効である。
【0029】
適切な自動化に伴い、画像を処理または製造ライン上を移動する板ガラスから取得することができる。本発明の方法を用いてそれぞれ平坦または湾曲し得る単一プライまたは積層板ガラスを検査することができる。検出する板ガラスは、例えば横窓、バックライト、フロントガラス等の自動車用板ガラスであるのが好ましい。或いはまた、検出する板ガラスは建築用とすることができる。本発明の方法は、ガラス処理ライン上の最終検査として用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】明視野像化用に組立てた光学検査装置の概略図である。
【図2】暗視野像化用に組立てた光学検査装置の概略図である。
【図3】本発明の方法を実施するための光学検査システムの概略図である。
【符号の説明】
【0031】
10: 光学検査装置
11: 板ガラス
12: LED(発光ダイオード)点光源
13: 大きなミラー
14: 小さなミラー
15: ストリップ球面ミラー
16: 画像取得装置
20: 光学検査装置
21: LED(発光ダイオード)点光源
30: 光学検査システム
31: 単一レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスの欠陥を検査するに当たり、
板ガラスを第1波長を有する光で照射して明視野像を作成し、
該板ガラスを第2波長を有する光で照射して暗視野像を作成し、
前記板ガラスを第1波長を有する光で照射して影絵像を作成し、
前記明視野像、暗視野像および影絵像を単一の画像取得装置を用いて取得する
ことを備える板ガラスの欠陥検査方法。
【請求項2】
前記明視野像、暗視野像および影絵像を共通のレンズを用いて画像取得装置へ結像する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記明視野像および影絵像を同一光源からの光で形成する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像取得装置が、CCD(電荷結合素子)カメラである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1波長を有する光を点光源によって産出する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記点光源がLED(発光ダイオード)である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2波長を有する光を線光源によって産出する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記線光源がLED(発光ダイオード)の線形配列からなる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記板ガラスが自動車用板ガラスである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を実施する装置。
【請求項11】
本明細書に開示し、添付図面した板ガラスの欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−531701(P2009−531701A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502227(P2009−502227)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050165
【国際公開番号】WO2007/110672
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】