説明

構造化されたASICデバイスのためのクロック信号ネットワーク

【課題】クロック信号の好適な分配を行うことができる構造化されたASICデバイスを提供する。
【解決手段】構造化されたASIC(10)デバイスのクロック分配回路構成(200)は、決定性(deterministic)の部分および複数の設定可能な部分を含む。その決定性の部分は、コンダクタ(40)セグメントの所定の配置を用い、デバイス上の複数の所定のロケーションへ、クロック信号を分配するために、回路をバッファする。それぞれの所定のロケーションから、クロック分配回路構成の関連される設定可能な部分は、そのクロック信号を、その所定のロケーションから提供された、構造化されたASIC(10)の所定の領域においてそのクロック信号を必要とする任意のクロック利用回路構成に分配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時に、構造化された特定用途向け集積回路(「構造化されたASIC」)として知られているタイプの集積回路デバイスのためのクロック信号分配回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
構造化されたASICは、一部の所定の回路特性を有するデバイスであるが、それはまた、ある程度カスタマイズされている。例えば、構造化されたASICは、比較的多くの小さな論理回路要素(ハイブリッド論理要素、すなわち、HLE)の2次元アレイを含み得る。これらのHLEの基本的な回路構成は常に同一であるか、または実質的に同一であり、その構造化されたASICを作製ために使用されるマスクのサブセットによって提供される。従って、このサブセットのマスクは常に同一か、または実質的に同一であり得る。HLEによって実行される全体の機能は、特定の構造化されたASIC製品を作製するために使用される一つ以上の追加的なマスクをカスタマイズすることによって、ある程度カスタマイズされ得る。同様に、HLEへの接続、HLEからの接続、および/またはHLE間の接続は、その製品を作製するために使用される追加的なマスクをカスタマイズすることによってカスタマイズされ得る。というのは、構造化されるASICは常に同一の基本的回路構成を有するからであり、特定のタスクを実行するためにそれを設計するタスクは、非常に単純化され、スピードアップされ、信頼性が向上され、および、コストが削減されている。全体のASICは、「初めから」設計されている必要がない。その代わり、カスタマイズされたマスクのみが設計されなければならない。
【0003】
構造化されたASIC技術の可能な使用は、プログラムされたフィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」:field−programmable gate array)と等しい機能であるASICを作製することである。論理設計がFPGAにおいて十分に「立証」された後、その設計は構造化されたASICに「移植(migrate)」され得る。2004年7月2日に出願された、Chuaらによる特許文献1、および、2005年4月1日に出願された、Schleicherらによる特許文献2などの文献は、構造化されたASIC技術のこのタイプの使用を示す。
【0004】
上述のChuaら、およびSchleicherらの文献において示されたタイプの構造化されたASICにおいて、構造化されたASIC上の回路機能(例えば論理機能)の配置(ロケーションまたは配置)は、構造化されたASICが機能的に等しいとされるFPGA上のこれらの機能の配置とは全く異なり得る。従って、機能的回路構成へクロック信号をルートまたは分配するための、関連するFPGA上に提供される回路構成の構造を、構造化されたASIC上に単に複製することは可能であり得ない。他方で、構造化されたASICを用いてインプリメントされることが所望され得る、それぞれの論理設計のために完全にカスタマイズされたクロック回路構成を設計することは、多くの理由(設計タスクのコストや複雑性、および、構造化されたASICの最適な実行に対する、上手く設計されたクロックネットワークの重要性など)から、良いアプローチであるとは考えられていない。
【特許文献1】米国特許出願公開第10/884/460号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第11/097/633号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従い、構造化されたASICデバイスのクロック分配回路構成は、決定性(deterministic)の部分および複数の設定可能な部分を含む。その決定性の部分は、コンダクタセグメントの所定の配置を用い、デバイス上の複数の所定のロケーションへ、クロック信号を分配するために、回路をバッファする。クロック分配回路構成の設定可能な部分の個々の一つは、それぞれの所定のロケーションに関連付けられ、その所定のロケーションに隣接する構造化されたASICの領域に配置される、任意のクロック利用(utilization)回路構成として役割をする。特に、所定のロケーションに関連する領域がクロック利用回路構成を含む場合、その所定のロケーションに関連する設定可能な回路構成は、そのクロック利用がその領域内であるならばどこでも、その所定のロケーションにおける決定性の部分から受信されたクロック信号を、クロック利用回路構成へと搬送するように構成(カスタム構成)される。
【0006】
それぞれの設定可能な部分は、設定可能なコンダクタ、および設定可能部分(configurable−portion)のバッファ回路を含み得る。それぞれの設定可能な部分は、その設定可能な部分によって提供される領域の個々のサブエリアの役割をする複数の設定可能なサブ部分(subportion)を含み得る。
【0007】
構成されたASICの論理要素回路構成は、上述のバッファ回路の任意または全てを提供するために使用され得る。その論理要素回路構成は、構造化されたASICの比較的、低い(low)金属層を用い得る。一つ以上のより高い(higher)金属層は、決定性の部分の上述のコンダクタセグメントに使用され得る。
【0008】
実際に必要とされる量のクロック分配回路構成のみが提供され得る。例えば、上述のバッファ回路に必要とされない任意の論理要素回路構成は、他の目的(例えば、構造化されたASICの論理回路構成において)に使用され得る。必要ではない決定性の部分の、上述の任意のコンダクタのセグメントは、他の目的に使用され得る(例えば、追加的な電力分配コンダクタとして)。実際に必要とされる(もしあれば)だけの量の回路構成のみが、設定可能な部分のそれぞれにおいて提供され得る。
【0009】
本発明のさらなる特徴、性質、および様々な利点は、添付された図面および以下に続く詳細な記載から明らかになる。
【0010】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
【0011】
(項目1)
構造化されたASICのクロック分配回路構成であって、
クロック信号を、該構造化されたASIC上において互いに間隔を空けた複数の所定のロケーションのうちの任意に分配するために使用され得る決定性の部分と、
複数の設定可能な部分であって、該複数の設定可能な部分のそれぞれが該所定のロケーションの個々の一つに関連付けられ、該関連付けられた所定のロケーションにおける該決定性の部分から受信されたクロック信号を、該関連付けられた所定のロケーションに隣接した所定の領域内の任意の様々なロケーションにおいて存在し得るクロック利用回路構成に分配する、複数の設定可能な部分と
を備える、構造化されたASICのクロック分配回路構成。
【0012】
(項目2)
上記決定性の部分が、
コンダクタセグメントの所定の配置と、
該コンダクタセグメントの連続的なものの間にある複数のバッファ回路と
を含む、項目1に記載の回路構成。
【0013】
(項目3)
上記構造化されたASICが論理要素の2次元アレイを含み、該論理要素の回路構成が上記バッファ回路を提供するために使用される、項目2に記載の回路構成。
【0014】
(項目4)
上記論理要素が上記構造化されたASICの比較的低い金属層を用い、上記コンダクタセグメントが該比較的低い金属層の上方にある、少なくとも一つの金属層を用いる、項目3に記載の回路構成。
【0015】
(項目5)
上記所定の領域のそれぞれが、複数の所定のサブ領域を含み、該複数の所定のサブ領域のそれぞれが、該サブ領域内の複数のロケーションのうちの任意のロケーションにおいて、クロック利用回路構成を含み得、
クロック利用回路構成を有する少なくとも一つのサブ領域を含む領域に関連付けられた設定可能な部分が、クロック利用回路構成を含む該サブ領域のそれぞれに関連付けられた設定可能なサブ部分を備える、項目1に記載の回路構成。
【0016】
(項目6)
クロック利用回路構成を含むサブ領域に関連付けられた上記設定可能なサブ部分のそれぞれが、
サブ部分バッファ回路と、
該サブ部分バッファ回路から、その設定可能なサブ部分に関連付けられた該サブ領域におけるそれぞれのクロック利用回路構成への、設定可能なサブ部分コンダクタと
を備える、項目5に記載の回路構成。
【0017】
(項目7)
クロック利用回路構成を含む領域に関連付けられたそれぞれの設定可能な部分が、
その設定可能な部分に関連付けられた所定のロケーションから、その設定可能な部分の一部であるそれぞれのサブ部分バッファ回路への、設定可能なコンダクタを
備える、項目6に記載の回路構成。
【0018】
(項目8)
上記構造化されたASICが論理要素の2次元アレイを含み、該論理要素の回路構成が上記バッファ回路を提供するために使用される、項目7に記載の回路構成。
【0019】
(項目9)
上記論理要素が、上記構造化されたASICの比較的低い金属層を用い、上記設定可能なコンダクタおよび上記設定可能なサブ部分コンダクタが、比較的低い金属層の上にある、少なくとも一つの金属層を用いる、項目8に記載の回路構成。
【0020】
(項目10)
上記決定性の部分が、
コンダクタセグメントの所定の配置と、
該コンダクタセグメントの連続的なものの間にある複数のバッファ回路と
を含む、項目9に記載の回路構成。
【0021】
(項目11)
上記論理要素の回路構成が、上記決定性の部分の上記バッファ回路を提供するために使用される、項目10に記載の回路構成。
【0022】
(項目12)
上記コンダクタセグメントが、上記設定可能なコンダクタおよび上記設定可能なサブ部分コンダクタのために用いられる上記少なくとも一つ以上の金属層の上方にある、少なくとも一つの金属層を用いる、項目11に記載の回路構成。
【0023】
(項目13)
複数の群にグループ化される論理要素のアレイであって、群のそれぞれが、個々のサブ複数の該論理要素を含み、群のそれぞれが、該構造化されたASIC上において、個々の所定のロケーションに隣接している、論理要素のアレイと、
少なくとも一つのクロック信号を該所定のロケーションのそれぞれに、少なくとも潜在的に分配するためのクロック分配回路構成の所定のパターンと、
クロック利用回路構成を含む該群のそれぞれに関連付けられた設定可能な分配回路構成であって、その群に関連付けられた該所定のロケーションにおける該所定のパターンからの少なくとも一つのクロック信号を、その群における該クロック利用回路構成へ分配する、設定可能なクロック分配回路構成と
を備える、構造化されたASIC回路構成。
【0024】
(項目14)
上記所定のパターンが、
コンダクタセグメントと、
該コンダクタセグメントの連続的なものを相互接続するバッファ回路構成と
を含む、項目13に記載の回路構成。
【0025】
(項目15)
上記論理要素の回路構成が上記バッファ回路を提供するために使用される、項目14に記載の回路構成。
【0026】
(項目16)
上記所定のパターンと、クロック利用回路構成を含む群に関連付けられた上記所定のロケーションのそれぞれにおける上記設定可能なクロック分配回路構成とを相互接続するバッファ回路構成をさらに備える、項目13に記載の回路。
【0027】
(項目17)
上記論理要素の回路構成が、上記バッファ回路構成を提供するために使用される、項目16に記載の回路構成。
【0028】
(項目18)
上記群のそれぞれが、上記論理要素の複数のサブグループを備え、上記設定可能なクロック分配回路構成が、
クロック利用回路構成を含む該サブグループのそれぞれに対するバッファ回路と、
クロック利用回路構成を含む該群に関連付けられた上記所定のロケーションから、クロック利用回路構成を含むその群におけるそれぞれのサブグループに対する該バッファ回路への、第1のコンダクタセグメントと、
該バッファ回路のそれぞれから、そのバッファ回路に関連付けられた該サブグループにおけるそれぞれのクロック利用回路構成への、第2のコンダクタセグメントと
を備える、項目13に記載の回路構成。
【0029】
(項目19)
上記論理要素の回路構成が、上記バッファ回路を提供するために使用される、項目18に記載の回路構成。
【0030】
(項目20)
論理要素の2次元アレイであって、該論理要素の群の2次元アレイへとグループ化された、論理要素の2次元アレイと、
少なくとも一つのクロック信号を、該群のそれぞれに、少なくとも潜在的に分配するための、クロック分配回路構成の所定のパターンと、
クロック利用回路構成を含む該群のそれぞれに関連付けられた設定可能なクロック分配回路構成であって、その群に隣接する所定のロケーションにおける該所定のパターンからの少なくとも一つのクロック信号を、その群における該クロック利用回路構成へ分配する、設定可能なクロック分配回路構成と
を備える、構造化されたASIC回路構成。
【0031】
(摘要)
構造化されたASICデバイスのクロック分配回路構成は、決定性(deterministic)の部分および複数の設定可能な部分を含む。その決定性の部分は、コンダクタセグメントの所定の配置を用い、デバイス上の複数の所定のロケーションへ、クロック信号を分配するために、回路をバッファする。それぞれの所定のロケーションから、クロック分配回路構成の関連される設定可能な部分は、そのクロック信号を、その所定のロケーションから提供された、構造化されたASICの所定の領域においてそのクロック信号を必要とする任意のクロック利用回路構成に分配する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明に従う、例示的な構造化されたASICのデバイス10の代表的な四半分を示す。特に、図1は、デバイス10の左上の四半分を示す。他の3つの四半分は一般的に類似している。例えば、右上の四半分は、図1に示されるものの、ほぼ、図1の回路構成の右側の端に隣接する垂直線のまわりに鏡に映し出されたイメージであり得る。左下の四半分は図1の、ほぼ、図1の回路構成の底の端に隣接する水平線のまわりに鏡に映し出されたイメージであり得る。右下の四半分は、ほぼ、図1の回路構成の右下のコーナーを通過する線のまわりに鏡に映し出されたイメージであり得るが、さもなければ、その回路構成の外側、および、水平線または垂直線のいずれかに対して45度であり得る。
【0033】
図1は以下の構成要素、すなわち、マクロ20a、20b、20c、20d、および20e、ハイブリッド論理要素(HLE)30の群、クロック信号分配コンダクタ40、クロック信号バッファ50、および、コンダクタ40からHLE30の群における回路構成への接続60を示す。
【0034】
マクロ回路20は、本発明においては、比較的、重要ではない。マクロ回路20の例は、位相ロックループの回路構成、メモリ回路構成、および、回路機能の特定のタイプを実行する目的のための他の回路である。HLEの数と比較して、これらのマクロ回路は、比較的少ない。それらは、所定のロケーションにある。それらは、クロック分配回路構成への接続を必要とし得るが、これは、それらの比較的少ない数および所定の位置などの要因のために、主たる目標ではない。
【0035】
クロック分配のさらなる難題は、たくさんのHLEからクロック信号を得ることである。これは、本発明の重要な局面である。
【0036】
第1に、以下に注意すべきである。例示的な実施形態において、HLEは金属層1〜4を用いる。コンダクタ40は金属層7および金属層8を用いる(水平のコンダクタ40は金属7にあり、垂直のコンダクタ40は金属8にある)。金属層5および金属層6は、とりわけ、接続60からHLE30の関連付けられた群への、さらなるクロック分配回路構成のために使用される。図1におけるそれぞれのコンダクタ線40は、異なるクロック信号を搬送することができる、いくつかのパラレルなコンダクタを実際に表し得る。例えば、デバイス全体に亘って、コンダクタ40上で利用可能である、いくつかのいわゆるグローバルクロック信号が存在し得る。別の例として、一つの四半分のみに利用可能、または、可能であれば、2つの端を隣接にする四半分に利用可能である、いくつかのいわゆるローカルクロック信号が存在し得る。それぞれの線40がいくつかのパラレルコンダクタを表し得るように、それぞれのバッファ50は、バッファ回路のいくつかの例を表し得、それぞれの例は、バッファロケーションに入る、または去る、個々のコンダクタ40として役立ち得る。
【0037】
図1に示されたコンダクタ40(およびバッファ50)の構成(通常の手順)は、好ましくは、本発明に従った、所定のものである。つまり、検討される例示的な実施形態にために、図1はクロック分配リソース(コンダクタ40およびバッファ50)のレイアウトを示し、接続60に対するそれらのソース全てからHLE群30へのクロック信号を分配するために常に使用される。従って、これは、時に、本発明のクロック分配回路構成の決定性の部分(deterministic portion)と呼ばれ得る。決定性という言葉が使用されるのは、クロック分配回路構成の一部が、図1に示される所定の構成または配置を有するからである。この決定性の回路構成の使用は、現在の状況において多数の重要な利点を有する。例えば、クロック信号を、大量のHLEにおいて実質的にあらゆる場所にあるHLEに搬送する必要があり得るクロック回路構成を設計するタスクを単純化する。クロック分配回路構成(接続60から関連するHLE群30における一つ以上のHLEへ)の、最後の比較的小さく短い部分のみが、より場当たり的(ad hoc)に、および決定性の少ない方法にて設計される必要がある。別の例として、決定性のクロック分配回路構成は、許容可能なクロック信号遅延、許容可能なクロック信号のゆがみ(skew)(クロック分配ネットワークの異なる部分に対する微分的(differential)な遅延)などの問題に関する、様々な目標を常に満たすように前もって設計され得る。クロック分配回路構成(すなわち、接続60から関連するHLE群30における一つ以上のHLEへ)の、最後の、決定性の少ない(または設定可能な)部分は、個々に、比較的小さいままであり(例えば、それぞれの群30のサイズを限定することによって)、その結果、これらの部分は、決定性の回路構成を使用することによって達成可能な結果を著しく変更しない。(前文における「結果」は、許容可能なクロック信号遅延、許容可能なゆがみなどのような前述の動作特性を意味する。)
遅延およびゆがみなどの問題に関して、図1における決定性の回路構成がレイアウトされ、その結果、任意のクロック信号ソースから任意の接続60までの、その回路構成を介した距離がほぼ同じであり、バッファ50とほぼ同じ数を含むことに注意すべきである。
【0038】
図1は、決定性の回路構成の一つの例示的な実施形態を示すのみであり、他の実施形態(構成または配置)もまた可能であることは理解されたい。しかしながら、記載されている例示的な構成に基づく全ての構造化されたASIC製品は、図1に示された一般的な目標または配置を有する決定性の回路構成40/50/60を用いる。
【0039】
図1に示された回路構成40/50/60は基本的に決定性であるが、異なるクロック分配ネットワークを達成するためには使用ができないこともまた、理解されたい。例えば、図示された決定性のネットワークの様々な部分における様々なコンダクタ40は、多くの異なる方法において、様々なクロック信号を分配するために、様々な方法において、互いに接続され得る。この例として、図1における最も下にある水平のコンダクタ40によって表されるリード(lead)の一つにおける特定のグローバルクロック信号は、図示された四半分においては必要なくあり得る。従って、そのグローバルクロック信号は、図1に示されるさらなるクロック分配回路構成に接続される必要はない。これらの経路指定(routing)選択は、接続を介して、金属7および金属8における、様々なコンダクタ40間にてなされる方法を選択することによってなされ得る。別の例として、グローバルまたはローカルクロック信号が、決定性のネットワークにおける所定の点を超えて必要とされない場合、その点を超えた信号の分配は、さもなければその点に提供されるバッファ50への信号を搬送するコンダクタ40を接続しないことによって、中断され得る。(ローカルクロック信号は、図1における、比較的長い、右端の垂直線によって表されるリード(lead)に加わり得る。)所望される場合、クロック分配に使用されないコンダクタセグメント40は、その代わり、電力分配などの別の目的のために使用され得る。あるいは、クロック分配に使用されないコンダクタセグメント40および関連されるバッファ50は、高いファンアウト(fanout)のデータ信号分配に使用され得る。さらに別の可能性として、クロック分配に使用されない、および、HLE内にある(以下を参照)バッファ50は、ロジックなどにおけるように、他の目的のために使用され得る。
【0040】
本発明の別の局面に従い、バッファ50の一部または全ては、好ましくは、HLEの回路構成を使用してインプリメントされる。図2は、HLE200の例示的な実施形態を示す。図2はここで、上述のSchleicherらの文献における図2と同一である。また、上述のChuaらの文献における図3に類似している。これらの文献は、完全にこの回路構成を記載しており、ここでその記載は、幾分省略され得る。回路構成200の構成要素は、プルチプレクサ210、NANDゲート220、反転ドライバまたはバッファ230、垂直相互接続コンダクタ240、250、260、および270、水平相互接続コンダクタ310、312、314、316、320、322、330、340、350、360、370、選択可能な内部接続サイト410および430、選択可能な隣接HLE接続サイト430、および選択可能な高レベル接続サイト460を含む。
【0041】
バッファ230は例えば、HLE200の出力信号をバッファするために(とりわけ)使用され得る。あるいは、バッファ230は、図1に示されるバッファリング50の一部または全てを提供するために使用され得る。後者の場合において、例えば、バッファされるクロック信号は、そのHLEにおけるバッファ230から上流の、隣接するHLEにおいて、介在層を介して、コンダクタ40上の金属7または金属8から、ポート460へドロップされ得る。必要である場合、その信号をそのバッファ230に適用するのに必要な任意の接続が、HLE200内にてなされる。そのバッファの出力信号(つまり、バッファされ、それゆえ、そのバッファに適用された信号の強化されたバージョン)は、次いで、関連するコンダクタ40上の金属7または金属8の次なるセグメントに戻り得る。
【0042】
上述のChuaらの文献は、HLE200のバッファリングの強度が選択的に変化され得るいくつかの方法を示す。任意のこれらの技術は、異なる強度のバッファ50を提供するために、現在の状況において用いられ得る。
【0043】
バッファ50を提供するために使用されているHLE200が、バッファリングに含まれない構成要素(例えば、マルチプレクサ210)を有する場合、それらの構成要素は、他の目的(例えば、ロジックを実行するため)に使用され得る。
【0044】
図3は、二つの隣接するHLE(200eおよび200f)が、フリップフロップまたはレジスタとしてアクトするためにともに使用され得ることを示す。ここで図3は、上述のChuaらの文献における図13と同一であり、それゆえ、ここで再びさらなる検討を要求しない。しかしながら、図3は、HLE200eおよび200fの単純化された描写であることに注意されたい。これらのHLE(全てのHLEのように)は、実際に、図2において示される全ての回路構成を含む。しかしながら、描写を単純化するために、図3は、HLE要素、および、フリップフロップまたはレジスタをインプリメントするために実際に使用される、要素の相互接続(太線)のみを示す結果となる。図3において示される回路構成は、フリップフロップまたはレジスタとして動作するために、クロック信号を要求する。この回路構成は、それゆえ、ここでは、クロック利用回路構成として、時に呼ばれるものの一例である。
【0045】
図4は、構造化されたASIC10が多くのHLE200を含むことを強調するために含まれる。(図2は、上述のChuaらの文献における図16と類似する。)さらに、図4は、いくつかの隣接または付近のHLEが、ユーザによって所望される様々な論理機能を実行するためにともに使用され得る方法を(異なるクロスハッチング(cross−hatching)によって)示す。HLEのそのような群またはクラスタは、CHLEと呼ばれる。(これらの図4の「群」は、図1における群30と同一ではない。図4に関連して検討されたタイプの群は、比較的小さい傾向にある(例えば、それぞれ6HLEほどである)が、図1におけるそれぞれの群30は数百のHLEを含み得る。図4の行および列の参照を使用して、以下は、図4において表されたCHLEのそれぞれにおいて用いられたHLE200のリストである。
CHLE 1:A1、A2、B1
CHLE 2:A3、A4
CHLE 3:B2、C1、C2、C3
CHLE 4:B3、B4
CHLE 5:D1、E1、E2、F1
CHLE 6:D2、D3、D4
CHLE 7:F2
図4に示されたCHLEの境界は、多くの可能なCHLE境界配置の一つにすぎない。これは、ユーザが実行を望むいかなるロジックをも実行する、膨大な数の異なる方法において、CHLEにグループ化され得る、本当に大量のHLE200である。さらに、レジスタ(図3に示されるもののように)は、この多くのHLEにおいて、実際にいかなる場所においても生じ得る。図4は、従って、本発明の利点なしで、これらのレジスタに対してクロック信号を得るために、良いクロックネットワークを設計する難しさを指摘する。
【0046】
図5は、接続60のそれぞれを越える回路構成の例示的な実施形態を示す。それぞれのHLE群30におけるHLE200(個々には示されない)は、そのようなHLEの16個のサブグループ100に分割される。群30におけるサブグループ100は、サブグループ(4つのサブグループは、それぞれの行および列において含まれる)の交差する行および列の2次元アレイにおいて配置される。それぞれのサブグループ100は、複数のHLE200(再び、個々には示されない)を含む。それぞれのサブグループ100におけるHLE200は、好ましくは、HLEの交差する行および列の2次元アレイにおいて配置される(例えば、図4におけるように)。サブグループ100におけるHLEの数は、好ましくは、それほど大きくなく、そのようなサブグループにおいて生じ易いレジスタの最大数が、そのサブグループにおいて、最後のドライバ(バッファ)110によって十分にサポートされ得る数を超える。例えば、サブグループ100はサイズを調整され得るので、サブグループ100において生じ易いレジスタの最大数は、ほぼ65である。
【0047】
図5は、図1に示された決定性のクロック分配回路構成の代表的な部分における、最後のコンダクタの脚(leg)40および最後のバッファ50を示す。バッファ50の出力における接続60は、バッファ出力信号を、金属層5および/または金属層6に降ろし、それは、描写されたバッファ50によってクロック信号出力を必要とする少なくとも一つのレジスタ140を含む、それぞれのサブグループ100に、バッファ50の出力信号を分配するために使用される。特に、コンダクタ120は、バッファ50の出力信号を要求するそれぞれのサブグループ100の中の、接続60からバッファ110へ、金属5および/または金属6において、提供される。バッファ50のように、バッファ110は、好ましくは、そのバッファ110を含むサブグループ100内のHLE200の回路構成を使用してインプリメントされる。サブグループ100が描写されたバッファ50の出力信号を必要としない場合、次いで、そのサブグループにおけるバッファHLE200は、他のサービス(例えば、ロジックにおける使用のため)に完全に解放され得る。図5におけるサブグループ100の左側の列における可能なバッファ110は、必要とされていないHLEバッファの例であり、それゆえ、他の目的のために使用され得る。それぞれのバッファ110の出力信号は、そのバッファ110によってクロック信号出力を必要とする、関連するサブグループ100において、それぞれのレジスタ140のクロック入力ターミナルに適用される。コンダクタ130(再び、金属5および/または金属6において)は、バッファ110から関連するレジスタ140へのこれらの接続を提供する。
【0048】
以前に述べたように、図1において示された本発明のクロック分配回路の一部は、ここで、時に、その回路構成の決定性の部分と呼ばれる。図5に示されたような、接続60の右側の回路構成は、時に、本発明のクロック分配回路構成の設定可能な部分と呼ばれる。その回路構成の決定性(図1)の部分が決定性と呼ばれるのは、一般にそれが、例えば、コンダクタセグメント40およびバッファ50のロケーションに関連して、所定のパターンの後に続くからである。これは、いわゆる決定性の部分が一部の点において、設定可能ではないということを意味しない。例えば、一部のコンダクタセグメント40は、この一般の目標に従ってなされた一部の設定可能なASICにおいて省略され得る。同様に、一部のバッファ50は省略され得る。しかしながら、一般に、その回路構成の決定性の部分は、この例示的な一般の目標を有する全ての構造化されたASIC製品に対して、同じパターンであるか、または、図1において示されたパターンのタイプの後に、常に続く。すなわち、コンダクタセグメント40が必要とされ、それゆえ使用される程度において、それは、図1において一般的に示されるように配置されるのである。同様に、バッファ50も、図1において一般的に示されるように配置され、クロック分配のために使用されるいかなるコンダクタセグメント40も、そのようなバッファ50のロケーションにおいて互いに接続される。
【0049】
図5において示されるような回路構成は、設定可能であると呼ばれる。というのは、バッファ110、ならびにコンダクタ120および130は、特定の構造化されたASIC製品において実際に必要とされる場合、場所、および数においてのみ提供される。例えば、コンダクタ120の経路指定(routing)は、製品によって変化し得る。(図5において単一の直線として示されるが、それぞれのコンダクタ120は、実際には、互いに90度の角度において、二つ以上のセグメントからなり得る。)同様なことが、コンダクタ130にも当てはまる。幾分決定性である図5に示された回路構成の重要でない局面が存在し得る。例えば、群30に関連する接続60のロケーションは所定のものであり得、および/または、サブグループ100におけるバッファ110のロケーションは所定のものであり得る。しかしながら、一般に、図5の回路構成は、大部分は、設定可能であり(つまり、所定のものではない)、それゆえ、たとえ、それらの製品の全てが、それらの決定性の点において、同一の一般的なプランの後に続くとしても、一つの構造化されたASIC製品から次へ、少なくとも潜在的に全く異なる。
【0050】
前述は、本発明の原理を例示的に示したに過ぎず、様々な修正が、本発明の範囲および趣旨から逸れることなく、当業者によってなされ得ることは理解されたい。例えば、図1において示されたクロック分配回路構成の一般的なプランは、例示に過ぎず、他の一般的なプランは、その代わり、所望される場合に使用され得る。別の例として、群30におけるサブグループ100の数は、図5において示された数とは異なり得る。HLEの異なる数は、異なる一般的なプランを有する構造化されたASICにおけるそれぞれのサブグループ100に含まれ得る。それぞれのHLE200の回路構成は、図2において示された例示的な実施形態とは異なり得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に従う、例示的な構造化されたASIC回路構成の代表的な部分の単純化された略ブロック図である。
【図2】図1に示された回路構成の所定の局面の代表的な部分の例示的な実施形態の単純化された略ブロック図である。
【図3】図1に示された回路構成の所定の局面の別の代表的な部分の例示的な実施形態の単純化された略ブロック図である。
【図4】図1の回路構成の所定の局面の代表的な部分の例示的な実施形態の単純化されたブロック図である。
【図5】図1の回路構成の他の局面の代表的な部分の例示的な実施形態の単純化された略ブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10 構造化されたASIC
30 HLE
40、240、250、260、270、310、312、314、320、322、330、340、350、360、370 コンダクタ
50、110、230 バッファ
200 回路構成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化されたASICのクロック分配回路構成であって、
クロック信号を、該構造化されたASIC上において互いに間隔を空けた複数の所定のロケーションのうちの任意に分配するために使用され得る決定性の部分と、
複数の設定可能な部分であって、該複数の設定可能な部分のそれぞれが該所定のロケーションの個々の一つに関連付けられ、該関連付けられた所定のロケーションにおける該決定性の部分から受信されたクロック信号を、該関連付けられた所定のロケーションに隣接した所定の領域内の任意の様々なロケーションにおいて存在し得るクロック利用回路構成に分配する、複数の設定可能な部分と
を備える、構造化されたASICのクロック分配回路構成。
【請求項2】
前記決定性の部分が、
コンダクタセグメントの所定の配置と、
該コンダクタセグメントの連続的なものの間にある複数のバッファ回路と
を含む、請求項1に記載の回路構成。
【請求項3】
前記構造化されたASICが論理要素の2次元アレイを含み、該論理要素の回路構成が前記バッファ回路を提供するために使用される、請求項2に記載の回路構成。
【請求項4】
前記論理要素が前記構造化されたASICの比較的低い金属層を用い、前記コンダクタセグメントが該比較的低い金属層の上方にある、少なくとも一つの金属層を用いる、請求項3に記載の回路構成。
【請求項5】
前記所定の領域のそれぞれが、複数の所定のサブ領域を含み、該複数の所定のサブ領域のそれぞれが、該サブ領域内の複数のロケーションのうちの任意のロケーションにおいて、クロック利用回路構成を含み得、
クロック利用回路構成を有する少なくとも一つのサブ領域を含む領域に関連付けられた設定可能な部分が、クロック利用回路構成を含む該サブ領域のそれぞれに関連付けられた設定可能なサブ部分を備える、請求項1に記載の回路構成。
【請求項6】
クロック利用回路構成を含むサブ領域に関連付けられた前記設定可能なサブ部分のそれぞれが、
サブ部分バッファ回路と、
該サブ部分バッファ回路から、その設定可能なサブ部分に関連付けられた該サブ領域におけるそれぞれのクロック利用回路構成への、設定可能なサブ部分コンダクタと
を備える、請求項5に記載の回路構成。
【請求項7】
クロック利用回路構成を含む領域に関連付けられたそれぞれの設定可能な部分が、
その設定可能な部分に関連付けられた所定のロケーションから、その設定可能な部分の一部であるそれぞれのサブ部分バッファ回路への、設定可能なコンダクタを
備える、請求項6に記載の回路構成。
【請求項8】
前記構造化されたASICが論理要素の2次元アレイを含み、該論理要素の回路構成が前記バッファ回路を提供するために使用される、請求項7に記載の回路構成。
【請求項9】
前記論理要素が、前記構造化されたASICの比較的低い金属層を用い、前記設定可能なコンダクタおよび前記設定可能なサブ部分コンダクタが、比較的低い金属層の上にある、少なくとも一つの金属層を用いる、請求項8に記載の回路構成。
【請求項10】
前記決定性の部分が、
コンダクタセグメントの所定の配置と、
該コンダクタセグメントの連続的なものの間にある複数のバッファ回路と
を含む、請求項9に記載の回路構成。
【請求項11】
前記論理要素の回路構成が、前記決定性の部分の前記バッファ回路を提供するために使用される、請求項10に記載の回路構成。
【請求項12】
前記コンダクタセグメントが、前記設定可能なコンダクタおよび前記設定可能なサブ部分コンダクタのために用いられる前記少なくとも一つ以上の金属層の上方にある、少なくとも一つの金属層を用いる、請求項11に記載の回路構成。
【請求項13】
複数の群にグループ化される論理要素のアレイであって、群のそれぞれが、個々のサブ複数の該論理要素を含み、群のそれぞれが、該構造化されたASIC上において、個々の所定のロケーションに隣接している、論理要素のアレイと、
少なくとも一つのクロック信号を該所定のロケーションのそれぞれに、少なくとも潜在的に分配するためのクロック分配回路構成の所定のパターンと、
クロック利用回路構成を含む該群のそれぞれに関連付けられた設定可能な分配回路構成であって、その群に関連付けられた該所定のロケーションにおける該所定のパターンからの少なくとも一つのクロック信号を、その群における該クロック利用回路構成へ分配する、設定可能なクロック分配回路構成と
を備える、構造化されたASIC回路構成。
【請求項14】
前記所定のパターンが、
コンダクタセグメントと、
該コンダクタセグメントの連続的なものを相互接続するバッファ回路構成と
を含む、請求項13に記載の回路構成。
【請求項15】
前記論理要素の回路構成が前記バッファ回路を提供するために使用される、請求項14に記載の回路構成。
【請求項16】
前記所定のパターンと、クロック利用回路構成を含む群に関連付けられた前記所定のロケーションのそれぞれにおける前記設定可能なクロック分配回路構成とを相互接続するバッファ回路構成をさらに備える、請求項13に記載の回路。
【請求項17】
前記論理要素の回路構成が、前記バッファ回路構成を提供するために使用される、請求項16に記載の回路構成。
【請求項18】
前記群のそれぞれが、前記論理要素の複数のサブグループを備え、前記設定可能なクロック分配回路構成が、
クロック利用回路構成を含む該サブグループのそれぞれに対するバッファ回路と、
クロック利用回路構成を含む該群に関連付けられた前記所定のロケーションから、クロック利用回路構成を含むその群におけるそれぞれのサブグループに対する該バッファ回路への、第1のコンダクタセグメントと、
該バッファ回路のそれぞれから、そのバッファ回路に関連付けられた該サブグループにおけるそれぞれのクロック利用回路構成への、第2のコンダクタセグメントと
を備える、請求項13に記載の回路構成。
【請求項19】
前記論理要素の回路構成が、前記バッファ回路を提供するために使用される、請求項18に記載の回路構成。
【請求項20】
論理要素の2次元アレイであって、該論理要素の群の2次元アレイへとグループ化された、論理要素の2次元アレイと、
少なくとも一つのクロック信号を、該群のそれぞれに、少なくとも潜在的に分配するための、クロック分配回路構成の所定のパターンと、
クロック利用回路構成を含む該群のそれぞれに関連付けられた設定可能なクロック分配回路構成であって、その群に隣接する所定のロケーションにおける該所定のパターンからの少なくとも一つのクロック信号を、その群における該クロック利用回路構成へ分配する、設定可能なクロック分配回路構成と
を備える、構造化されたASIC回路構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−339636(P2006−339636A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140677(P2006−140677)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(597154922)アルテラ コーポレイション (163)
【氏名又は名称原語表記】Altera Corporation
【Fターム(参考)】