説明

欠陥検査装置及び欠陥検査方法

【課題】検出画像を取得した被検査領域毎に閾値を最適化する手法はあるが、1枚の検出画像については1つ閾値だけを適用する。このため、1つの画像内に有意でない欠陥が含まれる場合でも、有意の欠陥と同じ感度レベルで検出される。
【解決手段】1つの検査領域内に複数の感度領域を設定して、1つの検査領域のうちDOI(Defect of interesting)が存在する領域の欠陥だけを他と区別して検出できる仕組みを提案する。具体的には、検査領域内の画像の特徴に基づいて、検査領域内に複数の感度領域を設定し、検出画像、差画像又は欠陥判定部の判定用閾値に、各感度領域の設定感度を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査領域内の欠陥を検出する装置及び方法に関する。例えば電子線、ランプ光、レーザ光等を用いて検査領域から取得された画像(撮像画像)に基づいて、検査領域内の微細なパターン欠陥や異物欠陥等を検出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線式検査装置は、例えばウェハの欠陥検査に使用される。この種の電子線式検査装置は、おおよそ以下の手順によりウェハの欠陥を検査する。まず、ステージの移動に同期して電子線をスキャンし、ウェハ上に形成された回路パターンの二次電子画像(以下、「検出画像」という。)を取得する。次に、検出画像と参照画像とを比較し、差が大きい場所を欠陥と判定する。検出された欠陥が、統計的に意味のある手法で得られた欠陥情報である場合には、これら欠陥の分布又は欠陥の詳細情報の解析によりウェハ製造時の問題点を分析する。
【0003】
ところで、従来の欠陥検査では、検出画像と参照画像から得られる差画像に対してある閾値を適用することにより欠陥を判定している。すなわち、差画像として抽出された画像間の輝度差が閾値以上より大きい部分を欠陥として判定する。
【0004】
しかし、被検査物の全ての領域に同じ閾値を適用すると、パターンの密度や寸法の影響により誤検出(虚報)が大量に発生するという問題がある。そこで、被検査物の検査部位に存在するパターンの密度や寸法に応じて使用する閾値の大きさを最適化する手法が提案されている(特許文献1参照)。また、設計データを用いて被検査物を複数の領域に分割し、各領域に対応する検出画像の階調変換処理と閾値に調整パラメータを適用する手法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−126242号公報
【特許文献2】特開平11−135583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、これらの手法を用いれば、検査領域(検出画像)間における閾値の違いを最適化することはできる。しかし、1つの検査領域(検査画像)内では依然として1種類の閾値だけを適用する。このため、1つの検査領域(検査画像)にある欠陥であれば、有意な欠陥だけでなく、有意でない欠陥についても設定された閾値の影響が同じように及ぶことになる。結果的に、有意な欠陥と有意でない欠陥を分別することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、1つの検査領域内に複数の感度領域を設定して、1つの検査領域のうちDOI(Defect of interesting)が存在する領域の欠陥だけを他と区別して検出できる仕組みを提案する。具体的には、検査領域内の画像の特徴に基づいて、検査領域内に複数の感度領域を設定し、検出画像、差画像又は欠陥判定部の判定用閾値に、各感度領域の設定感度を適用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの検査領域内にある欠陥のうち、オペレータが特定した部分領域にある有意な欠陥だけを選択的に抽出することができる。これにより、欠陥検査に要する時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】形態例1に係る半導体ウェハ検査装置の全体構造例を説明する図である。
【図2】形態例1において検査対象として使用するウェハのレイアウト構造を説明する図である。
【図3】形態例1に係るレシピの作成手順と検査手順を説明する図である。
【図4】形態例1に係る試し検査用のGUI画面例を示す図である。
【図5】形態例1に係る感度設定用のGUI画面例を示す図である。
【図6】検査対象としての配線パターン例を示す図である。
【図7】形態例1に係る検査処理の概要を説明する図である。
【図8】形態例1に係る感度テーブルの生成動作例を説明する図である。
【図9】形態例1に係る感度テーブルの適用動作例を説明する図である。
【図10】形態例7に係る半導体ウェハ検査装置の全体構造例を説明する図である。
【図11】背景特徴テーブルの生成手順を説明する図である。
【図12】形態例8に係る半導体ウェハ検査装置の全体構造例を説明する図である。
【図13】形態例9に係る感度設定用のGUI画面例を示す図である。
【図14】形態例10に係る感度調整方法を説明する図である。
【図15】形態例11に係る感度調整方法を説明する図である。
【図16】形態例12に係る特徴情報の検出処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明に係る欠陥検査装置及び方法の形態例を順番に説明する。なお、形態例の説明において使用する図面は、形態例を説明する観点から描かれたものである。従って、発明は、後述する図面に限定されるものではない。また、後述する形態例を適宜組み合わせることも可能である。
【0011】
(1)形態例1
(1−1)装置構成
図1に、形態例1に係る回路パターン検査装置の概略構成を示す。なお、図1には、回路パターン検査装置の縦断面構造と信号処理系とを示している。この回路パターン検査装置は、走査型電子顕微鏡を応用したものであり、ウェハ等の半導体基板に電子ビームを照射する。このため、その主要部は真空容器内に収納されている。
【0012】
回路パターン検査装置は、電子源101で発生した電子ビーム102を試料台109に載せられたウェハ106に照射し、発生する二次電子又は反射電子等の二次信号110を検出器113で検出して画像化する。この画像が、検出画像である。なお、検出画像は参照画像と比較され、判定閾値以上の輝度差が認められる画素領域が欠陥候補として抽出される。
【0013】
電子ビーム102の照射経路上には、ウェハ106上に電子ビーム102のエネルギーを収束させるため対物レンズ104が配置される。この対物レンズ104によりビーム径は細く絞られる。従って、ウェハ106上における電子ビーム102の直径は非常に小さくなる。
【0014】
ある一定範囲(検査領域)の検出画像を取得する場合、偏向器103によって電子ビーム102を偏向し、ウェハ106上を走査させる。この際、走査による電子ビーム102のウェハ106上での移動位置と、検出器113による二次信号110のサンプリングのタイミングとが同期制御される。これにより、検査領域に対応する二次元画像(すなわち、検出画像)が取得又は撮像される。
【0015】
ウェハ106の表面には様々な回路パターンが形成されている。これらの回路パターンは、様々な材料で構成される。このため、電子ビーム102による回路パターンの照射により電荷の蓄積現象(帯電現象)が生じることがある。帯電現象は、画像の明るさを変える原因となったり、入射する電子ビーム102の軌道を曲げる原因になったりする。従って、ウェハ106の手前位置に帯電制御電極105を配置して電界強度を制御している。
【0016】
因みに、前述した検査の実行前には、標準試料片121に電子ビーム102を照射して画像化することにより、座標の校正と焦点の校正が行われる。ところで、電子ビーム102の直径は非常に小さい。このため、偏向器103による走査幅もウェハ106の大きさと比べて非常に小さくなる。すなわち、電子ビーム102により取得される画像(検出画像)も非常に小さくなる。そこで、検査の実行前には、まず、ウェハ106をXYステージ107に載置し、ウェハ106上に形成された座標校正用のアライメントマークを、光学顕微鏡120によって検出する。この検出は、比較的低い拡大倍率によって行われる。次に、XYステージ107を移動させ、アライメントマークを電子ビーム102が照射するように位置決めすることにより座標を校正する。
【0017】
また、焦点の校正は、ウェハ106の高さを計測するZセンサ108により標準試料片121の高さを計測し、次に、ウェハ106に設けられたアライメントマークの高さを計測し、この計測値を用いて対物レンズ104で絞られた電子ビーム102の焦点範囲がアライメントマークを含むように対物レンズ104の励磁強度を調整することにより行われる。
【0018】
この他、回路パターン検出装置には、ウェハ106で発生した二次信号110をできるだけ多く検出する目的で偏向器112が配置されている。この偏向器112は、二次信号110の多くが反射板111に当るように偏向する目的で使用される。結果的に、反射板111で反射された多くの二次電子が検出器113で検出される。
【0019】
全体制御部118は、偏向器103に対して制御信号aを送信し、対物レンズ104に対して強度の制御信号bを送信し、Zセンサ108からウェハ106の高さ方向の計測値cを受信し、XYステージ107に対して制御信号dを送信する。
【0020】
検出器113で検出された検出信号は、デジタル画像生成部114で検出画像hに変換される。検出画像hは、画像保存用メモリ115に保存される。この形態例の場合、検出画像hは、メモリ領域115bに格納される。なお、メモリ領域115aには参照画像が格納される。参照画像には、例えば正常と判定されている他の検出画像、複数の検出画像を合成して生成した合成画像、設計データから生成した画像等を使用する。
【0021】
特徴検出部122は、メモリ領域115bに格納された検出画像から画像の特徴情報kを検出する。感度調整部123は、特徴検出部122で検出された特徴情報kと、コンソール119から全体制御部118を経由して与えられる感度調整用パラメータ(感度係数)gを用いて感度調整用テーブルlを作成する。この感度調整用テーブルlには、検査領域内で定義された複数の領域別に異なる感度値が登録されている。感度値の設定例については後述する。作成された感度調整用テーブルlは、感度補正部125に与えられる。
【0022】
メモリ領域115bに格納されている検出画像hとメモリ領域115aに格納されている参照画像は、差画像生成部124に与えられる。差画像生成部124は、一方から他方を減算して検出画像hと参照画像との差画像iを生成する。感度補正部125は、差画像iに対して感度調整用テーブルlを適用し、差画像iの一部分については感度を上げ、一部分については感度を下げるように画像を補正する。この補正後の差画像(すなわち、調整後差画像j)は、差画像保存用メモリ116に格納される。
【0023】
欠陥判定部117は、調整後差画像jのうち輝度値がゼロより大きい画素を欠陥候補として抽出し、その画像信号と対応するウェハ106上の座標を欠陥情報信号eとして全体制御部118に送信する。全体制御部118とコンソール119は双方向に通信が行われるように接続されている。例えば欠陥情報信号eに基づく欠陥の画像信号は、全体制御部118からコンソール119に送信される。これにより、コンソール119のスクリーン上には、欠陥の画像が表示されることになる。反対に、コンソール119から全体制御部118には、オペレータが入力した検査条件fが送信される。全体制御部118は、検査条件fに基づいて偏向器103に対する制御信号a、対物レンズ104に対する制御信号b、XYステージ107に対する制御信号dを演算する。
【0024】
(1−2)被検査対象物の一例
図2に、被検査対象物の一例であるウェハ106のパターン構造例を示す。ウェハ106は、例えば直径が200〜300mm、厚さが1mm程度の円盤形状である。ウェハ106の表面には、数百〜数千個の製品に対応する回路パターンが形成されている。回路パターンは、ダイ201と呼ばれる長方形状の回路パターンで構成される。ダイ201は、1個の製品に相当する。例えば一般的なメモリデバイスの場合、ダイ201のパターンレイアウトは、4個のメモリマット群202で構成される。更に、メモリマット群202は、例えば100×100個程度のメモリマット203で構成され、メモリマット203は二次元に繰り返し性を持った数100万個のメモリセル204で構成される。
【0025】
(1−3)検査レシピの作成手順及び検査手順
図3を用いて、検査レシピの作成手順と検査手順を説明する。図3(a)が検査レシピの作成手順であり、図3(b)が検査手順である。検査レシピの作成は、検査の実行前に行われる。
【0026】
(a)検査レシピの作成手順
図3(A)に基づいて、検査レシピの作成手順を説明する。まず、オペレータは、コンソール119から全体制御部118に対し、標準レシピの読込みと試料台109に対するウェハ106の搭載を指示する(ステップ301)。この際、ウェハ106は、不図示のローダにより、不図示のカセットから試料台109にロードされる。
【0027】
次に、コンソール119を通じ、オペレータが一般検査条件を全体制御部118に設定する(ステップ302)。例えば電子源101、偏向器103、対物レンズ104、帯電制御電極105、反射板111、偏向器112、検出器113、デジタル画像生成部114等に対する各種の条件が設定される。この際、標準試料片121の画像が検出され、検出結果に応じて各部の設定値が適正値に補正される。また、ウェハ106のパターンレイアウトが設定される。この際、オペレータは、メモリセル204の繰り返しがある領域としてメモリマット203のレイアウトを長方形で指定し、メモリマット203の長方形の繰り返しとしてメモリマット群202を設定する。また、アライメント用のパターンとその座標の登録によりアライメント条件が設定される。また、検査対象とする検査領域の情報が登録される。例えば画素寸法、画像処理で使用する加算回数等が設定される。また、ウェハ単位で検出光量がばらつく場合でも一定の条件で検査できるようにキャリブレーション条件が設定される。例えば光量のキャリブレーションに適した画像を取得するための座標点と初期ゲインが設定される。
【0028】
これら一般検査条件の設定が完了すると、全体制御部118によって仮検査が実行され、検出された画像が画像保存用メモリ115内に格納される(ステップ303)。この際、画像保存用メモリ115から2枚の検出画像が読み出され、その差画像iが生成される。この仮検査の段階では、1つの感度値だけが登録された感度調整用テーブルlが使用される。従って、差画像iが差画像保存用メモリ116に格納される。
【0029】
この後、特徴検出部122により、画像保存用メモリ115に格納された検出画像から特徴情報kが検出される(ステップ304)。
【0030】
次に、オペレータが、コンソール119を通じ、各特徴量に対する感度係数gを設定する(ステップ305)。この感度係数gは、全体制御部118を通じて感度調整部123に与えられる。感度調整部123は、オペレータによって設定された感度係数gを用い、感度調整用テーブルlを作成する。感度調整用テーブルlは、検査領域内で検出された各特徴量に対する感度値と、その他の領域に対する感度値とで構成される。この感度調整用テーブルlは、感度補正部125によって差画像iに適用される。この処理によって生成される調整後差画像jは、差画像保存用メモリ116に保存される。
【0031】
この後、例えば図4に示すGUI(graphical user interface)画面を使用して、試し検査(ステップ306)、欠陥確認(ステップ307)、検査条件確認(ステップ308)、レシピ作成の終了判定(ステップ309)が実行される。なお、検査条件が確定しない間は、前述した一連のステップ302〜309が繰り返し実行される。
【0032】
ここでは、図4を例に、GUI画面の画面構成を簡単に説明する。図4に示すGUI画面は、試し検査(ステップ306)の実行時に使用されるGUI画面である。このGUI画面は、記憶画像をマップ形式で表示する領域(マップ表示部)401、マップ表示部401上でクリックされた検出画像や欠陥407の対応画像を表示する領域(画像表示部)402、画像表示部402に表示された欠陥407の欠陥情報を表示する領域(欠陥情報表示部)403、感度設定ボタン404、比較開始ボタン405、欠陥表示閾値調整ツールバー406で構成される。
【0033】
図4の場合、画像表示部402の左上段に位置する表示領域408は検出画像の表示用であり、右上段に位置する表示領域409は再取得画像、参照画像、合成モデル画像等の表示用であり、左下段に位置する表示領域410は欠陥確認画像の表示用である。
【0034】
ステップ306の試し検査は次のように行われる。まず、オペレータが欠陥表示閾値調整ツールバー406を操作して適切な閾値を設定した後、比較開始ボタン405をクリックする。これにより、予め記憶した画像に基づいた実パターン同士の比較が実行される。試し検査が実行されて閾値以上の差分を持った欠陥407が発見された場合には、この欠陥407がマップ表示部401に表示される。オペレータが欠陥407をクリックした場合、欠陥画像が画像表示部402(410)に表示され、欠陥情報が欠陥情報表示部403に表示される。
【0035】
なお、オペレータが感度調整ボタン404をクリックすると、図5に示すGUI画面が表示される。このGUI画面による感度の調整は、感度調整テーブルの作成処理(ステップ305)に対応する。図5に示す感度調整用表示部501は、予め記録した画像と各形状に対する感度を表示する画像表示部502、画像表示部502に表示された画像から検出された形状情報を表示すると共に感度係数gの入力に用いられる感度調整部503、画像表示部502に表示された画像から特徴情報を検出する処理の実行を指示するための形状検出ボタン504、試し検査又は実際の検査に感度調整部503で設定された数値を適用するための適用ボタン505、感度調整部503で設定された数値を取り消すための取消ボタン506、感度設定部503で設定された数値を画像で確認するためのレビューボタン507で構成される。
【0036】
なお、感度の設定(感度調整用テーブルlの生成)は次のように行われる。まず、オペレータが、予め保存しておいた一枚の画像を画像表示部502に表示する。次に、オペレータは、形状検出ボタン504をクリックすると、画像表示部502に表示された検出画像から矩形、円形、エッジ等を検出し、各種形状を感度設定部503に表示する。オペレータは、この表示に基づき、各形状の領域内と領域外に対して感度係数gを入力する。すなわち、1枚の検出画像内に複数の感度係数gを設定する。
【0037】
例えば、半導体製造工程の場合であれば、図6(A)〜(D)に示すように様々なパターンが検査対象となり得るが、この形態例の場合には、各パターンに最適な複数の感度を1枚の検出画像内に設定することができる。因みに、図6(A)〜(C)は、穴工程で作成された穴パターン601、602、603の例を示している。例えば穴パターン601は同一の直径を有する円611で形成されるパターンである。例えば穴パターン602は異なる直径を有する円612と円613で構成されるパターンである。穴パターン603は同一の直径を有する円614と同一のライン幅を有する2本の配線パターン615で構成されるパターンである。図6(D)は、配線パターン604の例を示している。配線パターン604は、あるライン幅を有する3本の配線616で構成されるパターンである。
【0038】
一般に、オペレータは、ウェハに生成されたパターンのうちある特定のパターン部分に関する欠陥の検出に関心がある。従って、この感度の設定によって、オペレータの関心部分の感度を周辺部分に対して高くすることができる。なお、図5は、感度係数gが「高」、「中」、「低」のいずれかから選択される場合を表している。もっとも、感度係数gを数値で入力することもできる。また、図5の場合、拡張幅の「あり」と「なし」を設定することができる。拡張幅は、検出した線に対する感度係数gの設定範囲を線幅に対して拡張するか否かを与えるのに使用する。例えば線分上にある欠陥に対する感度を上げるのに使用する。図5の場合には、線幅を拡張するか否かの選択だけであるが、多段階に選択できる構成を採用することもできる。また、感度設定部503では、画像表示部502内における検出形状の表示を選択することができる。これは、形状検出ボタン504のクリック操作によって検出された形状の確認を容易にし、意図せぬ感度設定が行われないようにするための機能である。
【0039】
次に、オペレータがレビューボタン507をクリックすると、画像表示部502に、感度設定部503で設定された形状とその感度が表示される。最後に、オペレータが適用ボタン505をクリックすると、感度設定部503で設定された感度係数に基づいて感度調整部123に特徴テーブルが生成される。これにより、感度設定画面501による感度の設定が完了し、感度設定部503で設定された個々の感度係数gを検査に適用できる状態になる。なお、オペレータは、取消ボタン506をクリックすることにより、感度設定部503で設定された数値を無効化することができる。また、感度設定画面501を強制的に終了させたい場合には取消ボタン506をクリックすれば良い。
【0040】
この感度の設定(感度調整用テーブルlの生成)後に、前述した図4に示すGUI画面が表示され、試し検査が実行される。前述したように、試し検査は、比較開始ボタン405のクリック操作によって開始される。このクリック操作によって、感度設定画面501で設定された感度係数gが感度調整用テーブルlから読み出され、予め記憶されていた実パターン同士の比較が実行される。この後、オペレータは、画像表示部402を用いて検出された欠陥を確認し(ステップ307)、問題がなければ(ステップ309で肯定結果)でレシピの作成を終了する。レシピの作成終了後は、ウェハがアンロードされ、感度調整部123に設定された形状の特徴と感度係数g等がレシピに保存される(ステップ310)。なお、検出された欠陥に問題があれば(ステップ309で否定結果)、一般検査条件設定に戻って、前述した一連の処理手順を実行する。
【0041】
(b)検査手順
図3(B)に基づいて、実際の検査手順を説明する。オペレータは、検査対象のウェハとレシピを指定して検査動作を開始する(ステップ311)。この後、指定されたウェハがロードされ(ステップ312)、電子光学系等の各部に対する光学条件が設定される(ステップ313)。引き続き、アライメント(ステップ314)、キャリブレーション(ステップ315)が実行される。以上で、検査のための準備作業が完了する。
【0042】
この後、画像検出と欠陥判定とが実行される(ステップ316)。まず、設定されている領域から画像(検出画像)が取得される。検出画像は、図7に示すように、画像保存用メモリ115に格納される。特徴検出部122は、メモリ領域115bから検出画像を読み出し、検出画像から特徴情報k(形状特徴)を抽出する。抽出された特徴情報kは、感度調整部123に与えられる。
【0043】
次に、感度調整部123がレシピの特徴テーブルと特徴情報kを照合する。この際、感度調整部123は、一致する領域に対してレシピの感度係数を適用するように、検出画像に固有の感度調整用テーブルlを作成する。ただし、検出した特徴情報kがレシピに存在しない場合、感度調整部123は、オペレータによって個別に設定された感度係数を感度調整用テーブルlに書き込む。
【0044】
この後、差画像生成部124が、検出画像(115b)と参照画像(115a)の差画像iを作成する。作成された差画像iは、感度補正部125に与えられる。感度補正部125は、差画像iに対して感度調整用テーブルlを適用し、検出画像内の特徴部分に設定された感度を適用した調整後差画像jを出力する。この調整後差画像jは、差画像保存用メモリ116に格納される。
【0045】
この調整後画像jは、欠陥判定部117によって読み出される。欠陥判定部117は、閾値設定機能部701と欠陥判定機能部702で構成される。閾値設定機能部701は、オペレータが閾値情報を設定するのに使用される。設定された閾値は、閾値テーブル703として使用される。欠陥判定機能部702は、差画像保存用メモリ116から読み出した調整後差画像jに対して閾値テーブル703を適用する。すなわち、欠陥判定機能部702は、調整後差画像jの輝度と閾値テーブル703の閾値とを比較し、閾値より大きい輝度の領域を欠陥情報信号eとして出力する。
【0046】
このように欠陥が判定されると、オペレータによる欠陥のレビューが実行される(ステップ317)。オペレータは、画像表示部402に表示される検査時に取得した検出画像、欠陥座標にステージを移動させて再取得した再取得画像、合成モデル画像、欠陥確認画像等に基づいて欠陥種別を確認する。
【0047】
欠陥レビューが完了すると、欠陥種別毎の欠陥分布に基づいたウェハの品質判定や追加的な解析の必要性が判断される。これらの結果が全体制御部118に格納されると(ステップ318)、ウェハがアンロードされて検査が終了する(ステップ319)。
【0048】
(1−4)特徴検出と感度調整の詳細動作
続いて、前述した特徴検出部122と感度調整部123の動作の詳細を説明する。まず、図8(A)を使用し、試し検査時の処理動作の流れを説明する。なお、検出画像408に円形のパターン808が形成されているものとする。試し検査時には、特徴検出部122が画像408に対するノイズの除去処理とエッジの検出処理を実行する。この結果、エッジ画像803が生成される。エッジ検出により、パターン808のエッジ部分809が抽出される。この後、特徴検出部122は、エッジ画像803に対して直線ハフ変換と円形ハフ変換を適用し、エッジ画像803から円形、直線等の特徴情報を検出する。
【0049】
感度調整部123は、検出された特徴情報を特徴テーブル804に登録する。その後、オペレータが特徴テーブル804に登録された特徴を画面上で確認し、DOI欠陥としてオペレータが認識する特徴情報の部分に高い感度係数gを設定し、その他の部分に低い感度係数gを設定する。すなわち、 (i) 特徴情報、(ii)特徴情報が対応する領域、(iii) 特徴情報に対応する感度係数gを一組の情報とする特徴テーブル804がレシピに追記される。
【0050】
次に、図8(B)を使用し、実際の検査時の処理動作の流れを説明する。実際の検査時においても、特徴検出部122は、検出画像805に対してノイズの除去処理とエッジの検出処理を実行する。これにより、エッジ画像806を得る。その後、エッジ画像806に対して直線ハフ変換と円形ハフ変換を適用し、エッジ画像806中に含まれる円形のパターン領域と直線のパターン領域を検出する。ここまでの処理は、試し検査時の動作と同じである。
【0051】
感度調整部123では、検出された特徴情報と特徴テーブル804にある特徴情報との照合処理を実行する。特徴情報が一致した場合、感度調整部123は、特徴テーブル804に設定された感度係数gを、感度調整用テーブル807の調整領域810に書き込む。一致した特徴情報がない場合、感度調整部123は、オペレータが設定したデフォルトの感度係数gを感度調整用テーブル807の調整領域810に書き込む。
【0052】
(1−5)部分領域に対する感度調整の効果
図9を使用して、この形態例における1枚の検出画面内に複数の感度を設定できることにより効果を説明する。なお、図9(A)は、検出画像と参照画像から作成される差画像901である。また、図9(B)は、差画像901の一部分を拡大した拡大画像902である。また、図9(C)は、検出された特徴情報と特徴テーブルの特徴情報との照合により生成される感度調整用テーブル807である。また、図9(D)は、差画像901に感度調整用テーブル907を適用した後の調整後差画像jの拡大画像903である。
【0053】
実際の検査では、前述したように、検査画像と参照画像から作成された差画像901に対して感度調整用テーブル807が適用される。図9(B)に拡大して示すように、差画像901には、円形領域906内に輝度の異なる欠陥905aと905bが存在し、円形領域906の外部には、輝度の異なる欠陥904が複数存在している。
【0054】
従来手法の場合には、これら全ての欠陥を区別することなく、1つの検出画像の全体に一つの感度を設定し、単一の閾値と比較することにより欠陥を判定した。
【0055】
しかし、この形態例の場合には、図9(C)に示すように、感度調整用テーブル807によって、円形領域906に高感度値の領域907が書き込まれ、その外側領域に低感度値の領域908が書き込まれている。従って、感度調整用テーブル807を差画像901に適用すると、その拡大図である図9(D)に示すように、円形領域906内の欠陥905a及び905bだけを含む調整後差画像903を得ることができる。すなわち、低感度値908を設定した領域に存在する欠陥906は、調整後差画像903から除去される。
【0056】
このように、形態例に係る技術の適用により、DOI形状領域に存在する欠陥905a及び905bだけをオペレータに対して示すことができる。すなわち、同一感度によって検査領域から検出された欠陥に含まれる有意な欠陥とそれ以外の欠陥とを、オペレータ自身が分別する作業を省くことができる。結果的に、オペレータは、欠陥レビュー時に、DOI領域にある欠陥だけを画面上でレビューすることができる。従って、オペレータによるレビュー効率を高めることができる。また、この形態例の場合には、特徴情報を用いて領域を指定することができる。このため、オペレータはDOI領域の位置を正確に計算する必要がなく、調整したい領域を簡単に指定することができる。その結果、ウェハ全体又はダイ全体で欠陥捕捉率を低下させることなく、虚報の発生を抑制することができる。また、特定の領域についての感度のみを向上させることができるので、実質的に高感度検査が可能となる。
【0057】
また、この形態例の場合には、画像中に含まれる特徴量の指定を通じて感度を設定する手法を採用するので、検出画像が存在しない設計データの段階でも感度の調整領域を設定することができる。その結果、感度の調整領域を設定するために検出画像を取得する時間も省くことができる。この点でも、形態例に係る技術は、生産効率の向上に有効である。
【0058】
また、この形態例の場合には、1枚の検出画像の領域内に複数の感度を設定することができる。従って、検出された欠陥に対する感度を別々適用することができる。その結果、虚報の比率を十分小さくすることができ、検査工程における作業効率を向上させることができる。
【0059】
(2)形態例2
続いて、形態例2に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例2に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0060】
前述した形態例1の場合には、特徴検出部122における特徴情報の検出処理時に、ハフ変換を適用した。しかし、特徴情報はその他の手法によっても検出することができる。例えばテンプレートマッチングを適用することもできる。
【0061】
この形態例の場合、特徴検出部122は、検出画像805に対してノイズ除去を実行し、ノイズ除去後の画像に対して予め用意したテンプレート画像とのマッチング処理を実行する。このような処理方法によっても、検出画像805の中から必要な特徴情報を検出することができる。なお、テンプレートマッチングは公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。また、使用するテンプレートは、複数のテンプレートの中からオペレータが事前に選択する方法を適用することができる。
【0062】
この形態例2の場合には、形態例1の効果に追加して以下の効果を期待することができる。すなわち、オペレータは、テンプレートの選択操作を通じ、自身が興味を有する領域を動的に指定することができる。このため、形態例1の場合以上にレビュー効率を高めることができる。また、オペレータによるテンプレートの選択は直感的に実行することができる。結果的に、オペレータに対するストレスも軽減することができる。
【0063】
(3)形態例3
続いて、形態例3に係る回路パターン検査装置について説明する。この形態例3の場合も、回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0064】
前述した形態例1の場合には、特徴検出部122が検出画像内の特徴情報として、円形、矩形、直線を有する場合について説明した。しかし、検出画像408に含まれる特徴情報は、勿論、これらに限らない。例えば特徴情報は多辺形の場合も考えられる。多辺形には、円形、矩形、直線の全部又は幾つかを組み合わせたものも含まれる。また、多辺形には、同種の複数個の形状を組み合わせたものも含まれる。
【0065】
この形態例の特徴検出部122は、形態例1の特徴検出部122に多辺形の検出又は判定機能を追加することにより実現することができる。
【0066】
この形態例3を用いれば、形態例1に比して、特徴情報として検出できる図形の範囲を拡張することができる。
【0067】
(4)形態例4
続いて、形態例4に係る回路パターン検査装置について説明する。この形態例4の場合も、回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0068】
前述した形態例1の場合には、感度調整部123が特徴テーブルに登録する形状が円形、直線、矩形である場合について説明した。しかし、特徴テーブルに登録する形状は、勿論、これらに限らない。例えば特徴テーブルに多辺形を登録しても良い。この形態例における多辺形にも、円形、矩形、直線の全部又は幾つかを組み合わせたものが含まれる。また、多辺形には、同種の複数個の形状を組み合わせたものが含まれる。
【0069】
この形態例における感度調整部123は、形態例1の感度調整部123に対して多変形の検出機能又は多辺形の判定機能を追加することにより実現することができる。
【0070】
この形態例4を用いれば、形態例1に比して、感度を調整できる範囲を拡張することができる。
【0071】
(5)形態例5
続いて、形態例5に係る回路パターン検査装置について説明する。この形態例5の場合も、回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0072】
前述した形態例1の場合には、特徴検出部122が検出画像408から特徴情報を検出する場合について説明した。しかし、特徴情報は、検出画像408以外から検出することもできる。例えば欠陥判定に使用する参照画像、複数の画像から作られた合成画像、設計データから生成された画像を特徴情報の検出に使用することができる。
【0073】
(6)形態例6
続いて、形態例6に係る回路パターン検査装置について説明する。この形態例7の場合も、回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0074】
前述した形態例1の場合には、感度調整部123が、検出画像から検出された形状に対して感度を設定する場合について説明した。しかし、感度の設定はこの手順に限らない。例えば予め用意しておいた特徴情報のデータベースを使用することにより、検出画像を取得する前に又は検出画像から特徴情報を取得する前に、特徴情報に対する感度を設定しても良い。
【0075】
(7)形態例7
(7−1)装置構成
続いて、形態例7に係る回路パターン検査装置について説明する。この形態例6の場合も、回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0076】
図10に、この形態例に係る回路パターン検査装置の概略構成を示す。なお、図10には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この形態例7の場合、形態例1の装置構成に対して、背景特徴解析部1001と背景特徴付加部1002が追加される点で異なっている。
【0077】
背景特徴解析部1001は、画像保存用メモリ115に格納された検出画像と参照画像(複数の検出画像を合成した合成画像、設計データから生成した画像等)とを比較して白背景を有する領域と黒背景を有する領域を解析し、解析結果を背景特徴テーブルmに記録する処理を実行する。
【0078】
この明細書においては、白背景と黒背景を以下の意味において使用する。ここでは、画像1と画像2が存在するものとする。また、画像1を検出画像とし、画像2を参照画像とする。また、検出画像の輝度値から参照画像の輝度値を減算したものを差画像(=画像1−画像2)というものとする。この明細書では、差画像において、0(ゼロ)より大きな輝度値が存在する領域を黒背景と呼び、0(ゼロ)また0(ゼロ)より小さい輝度値が存在する領域を白背景と呼ぶ。
【0079】
この形態例における背景特徴解析部1001は、白背景として検出された領域を白背景用感度調整テーブルmaに登録し、黒背景として検出された領域を黒背景用感度調整テーブルmbに登録する。なお、背景特徴テーブルmは、感度調整部123で作成された感度調整用テーブルlの一部領域に追加的に形成する。もっとも、背景特徴テーブルmは、感度調整用テーブルlとは独立したテーブルとして作成しても良い。
【0080】
図11を用い、背景特徴解析部1001により作成される背景特徴テーブルmの詳細を説明する。図11(A)は、画像保存用メモリ115に格納される検出画像408である。図11(B)は、比較用の参照画像1101である。図11(C)は、背景特徴テーブル1102である。図11(A)の場合、検出画像408には参照画像1101に比して輝度が高い領域1103が黒背景であり、参照画像1101に比して輝度が低い領域1104が白背景である。従って、図11(C)に示すように、白背景用感度調整テーブルmaには領域1106が登録され、黒背景用感度調整テーブルmbには領域1105が登録される。
【0081】
背景特徴付加部1002は、感度補正部125から出力される調整後差画像jに背景特徴テーブルmを適用し、検出された欠陥画像が白背景に属するか黒背景に属するかに応じて感度を調整する。すなわち、この形態例の場合、背景情報は調整後差分画像jの感度の再調整に使用される。なお、白背景に適用する感度と黒背景に適用する感度は、例えば感度調整部123において設定する。再調整後の調整後差分画像jは、差画像保存用メモリ116に格納される。
【0082】
(7−2)処理動作の特徴
続いて、この形態例に特有の処理動作部分を説明する。従って、背景特徴解析部1001と背景特徴付加部1002の動作を中心に説明する。勿論、その他の回路部分では、形態例1と同様の処理が実行されている。
【0083】
背景特徴解析部1001は、画像保存用メモリ115から検出画像408と参照画像1101を呼び出し、画素毎に輝度差を取得する。ここで、検出画像408のある画素の輝度をA(x,y)とし、参照画像1101のある画素の輝度をB(x,y)とする。このとき、検出画像408と参照画像1101のある画素における輝度差(A−B)がゼロであるか、ゼロより大きい値である場合は、この画素が黒背景を有するものと判定する。一方、輝度差(A−B)がゼロより小さい値である場合、この画素が白背景を有するものと判定する。背景特徴解析部1001は、全ての画素に対して輝度差を計算し、背景特徴テーブル1102を作成する。図11(C)の場合、円形パターンの外部に黒背景を有する領域1105と白背景を有する領域1106が存在する。
【0084】
この背景特徴テーブルmの情報は、背景特徴付加部1002において、調整後差分画像jに対して適用される。なお、この形態例7の場合には、形態例1の場合とは反対に、円形パターンの外部の感度を高く設定しているものとする。すなわち、感度補正部125から出力される調整後差分画像jでは、領域1103と領域1104の感度がいずれも高く設定されているものとする。
【0085】
従って、背景特徴付加部1002は、領域1103と領域1104が、白背景であるか又は黒背景であるかに応じて感度を補正する。例えば白背景と黒背景の感度を同じように上げ下げするだけでなく、いずれか一方の感度を上げ、他方の感度を下げるように動作する。
【0086】
結果的に、オペレータは、背景の種類に応じて設定された感度に応じ、領域1103と領域1104の両方又はいずれか一方だけをDOI欠陥として検出画像内に見つけることができる。すなわち、オペレータは、欠陥レビューを容易に行えるだけでなく、DOI領域についての欠陥解析と分類も同時に実行することができる。
【0087】
なお、前述の説明とは異なり、背景特徴付加部1002は、調整後差分画像jに対して背景情報を付加情報として付与する機能部として使用することもできる。この場合には、背景情報を欠陥判定部117の判定処理の段階で使用することもできる。例えば判定閾値の調整等に使用することもできる。また、欠陥判定部117の処理には背景情報を用いずに、そのまま付加情報として全体制御部118に出力する手法を採用することもできる。この場合には、全体制御部118で実行される各種の事後処理に用いることができる。
【0088】
(8)形態例8
続いて、形態例8に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例8に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例7(又は形態例1)と類似する。すなわち、この形態例8は、形態例7の変形例に対応する。
【0089】
前述の形態例7の場合には、背景情報を調整後差分画像jに対して適用する場合について説明した。一方、この形態例の場合には、背景情報を、欠陥判定部117から出力される欠陥情報信号eに対して適用する。
【0090】
図12に、形態例8に係る回路パターン検査装置の概略構成を示す。なお、図12には図10との対応部分に同一符号を付して示す。この形態例8の場合、形態例7における背景特徴付加部1002に代えて背景特徴付加部1201を使用する。背景特徴付加部1201は、欠陥判定部117と全体制御部118の間に配置する。従って、この形態例8における欠陥判定部117までの処理動作は形態例1と同じになる。
【0091】
この形態例の場合、背景特徴付加部1201は、欠陥判定部117から出力される欠陥情報信号eに対して、例えば背景情報を付加情報として付与する機能部として機能させることもできる。この場合、事後的に白背景と黒背景の割合や欠陥の種類別の傾向を、全体制御部118において判定することができる。
【0092】
また、この形態例の場合、背景特徴付加部1201は、欠陥判定部117から出力される欠陥情報信号eに含まれる各欠陥の感度を補正する機能部として機能させることができる。この場合、オペレータの注目するDOI欠陥だけを全体制御部118に格納させることができる。
【0093】
(9)形態例9
続いて、形態例9に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例9に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0094】
前述した形態例1の場合には、特徴検出部122が検出画像408に含まれる形状に着目して特徴情報を検出する場合について説明した。しかし、特徴情報は、輝度や色を用いて検出することもできる。
【0095】
図13に、形態例9に係る感度設定画面501の表示例を示す。なお、図13には、図5との対応部分に同一符号を付して示すものとする。図13に示す感度調整用表示部501は、予め記録した画像と各形状に対する感度を表示する画像表示部502、画像表示部502に表示された画像の輝度分布を統計的に計算する処理の実行を指示するための統計計算ボタン1301、画像表示部502に表示された画像から計算された統計的な輝度分布を表示する統計量表示部1302、統計量の範囲とその範囲に適用する感度を設定するための感度設定部1303、試し検査又は実際の検査に感度調整部1303で設定された数値を適用するための適用ボタン505、感度調整部1303で設定された数値を取り消すための取消ボタン506、感度設定部1303で設定された数値を画像で確認するためのレビューボタン507で構成される。
【0096】
以下では、この形態例に特有の処理動作を説明する。図13に示す感度調整用表示部501は、図3(A)の試し検査において、感度設定ボタン404がクリックされることで表示される。次に、オペレータは、画像表示部502を使用して、予め保存されていた検出画像を確認する。その後、統計値を求めるために、オペレータが統計計算ボタン1301をクリック操作する。全体制御部118は、このクリック操作を検出して統計値を計算する。計算された統計量は、統計量表示部1302に、グラフ、文字列、又は立体形式その他の形式で表示される。図13では、輝度分布が曲線を用いて表示されている。
【0097】
オペレータは統計量の値を確認し、感度設定部1303に、境界として使用する輝度と感度をそれぞれ設定する。図13の場合、オペレータは、高輝度(輝度g−輝度hの範囲)の感度を高く設定し、低輝度(輝度n−輝度mの範囲)の感度を低く設定している。
【0098】
この後、オペレータは、レビューボタン507をクリックし、画像表示部502に表示された感度補正後の検出画像を確認する。オペレータが感度補正後の検出画像に満足した場合、適用ボタン505をクリックする。一方、再調整が必要であるとオペレータが判断した場合、オペレータは感度設定部1303の値を再設定してレビューボタン507をクリックすることにより感度画像を確認する。なお、感度の調整を中止したい場合には、取消ボタン506をクリックする。
【0099】
前述したように、適用ボタン505をクリックすると、その設定情報が検査条件に反映される。この後、オペレータは、再設定された感度条件に応じて実行された試し検査の結果を確認し、問題がなければレシピの作成を終了する。レシピの作成が終了すると、ウェハがアンロードされる。また、レシピには、感度調整部123に設定された輝度と感度係数の情報が保存される。
【0100】
次に、実際の検査では、検査対象のウェハとレシピ情報とを指定して検査動作が開始される。図3(B)に示したように、検査の開始後は、指定されたウェハがロードされ、電子光学系等の各部に対する光学条件が設定される。続いて、アライメント、キャリブレーションが実行される。これらの準備作業が完了すると、設定されている領域の画像を取得し、検出画像から輝度分布を統計的に計算する。
【0101】
その後、感度調整部123が、検出画像の輝度値とレシピに設定された輝度値の領域とを照合し、輝度値の範囲が一致した領域について対応する感度係数gを登録する。すなわち、感度調整用テーブルlを生成する。この間、画像保存用メモリ115に格納された検出画像と参照画像とから差画像iが作成される。感度補正部125は、差画像iに対して感度調整用テーブルlを適用し、調整後差画像jとして差画像保存用メモリ116に格納する。その後、欠陥判定部117が、差画像保存用メモリ116に格納されている調整後差画像jに対して欠陥判定を実行する。
【0102】
この欠陥判定後、欠陥レビューが実行される。欠陥レビューでは、検査時に取得した検出画像408、欠陥座標にステージを移動させて再取得した再取得画像、複数の検出画像を合成して生成した合成画像、欠陥確認画像等に対して欠陥種別の確認がオペレータにより実行される。欠陥レビューが完了すると、欠陥種別毎の欠陥分布に基づいたウェハの品質判定や追加的な解析の必要性が判断される。これらの結果が全体制御部118に格納されると、ウェハがアンロードされて検査が終了する。
【0103】
この形態例のように、輝度分布を用いれば、必ずしも形状に関する情報が存在しない場合でも、例えば任意の形状に対しても特徴情報の検出と検査感度の設定とを実現することができる。また、この形態例の場合には、専ら輝度分布を用いる場合について説明したが、色(色位相)や彩度(飽和度)の分布を使用して特徴情報の検出と検査感度の設定を行うこともできる。色を用いる手法は、半導体製造装置以外の汎用的な製品検査等に適用して効果的である。
【0104】
(10)形態例10
続いて、形態例10に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例10に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。この形態例10と形態例1の違いは、検出画像から調整後差画像を生成するまでの処理内容である。
【0105】
図14に、形態例10で採用する処理手順を示す。なお、図14には図7との対応部分に同一符号を付して示す。
【0106】
この形態例の場合も、特徴検出部122は検出画像(115b)から特徴情報を検出し、感度調整部123は検出された特徴情報に基づいて領域別の感度係数gを設定する。ただし、この形態例の場合には、感度調整部123で生成された感度調整用テーブルlを検出画像(115b)に適用する。すなわち、この形態例の場合には、差画像iを算出する前に、感度補正部1401において検出画像(115b)の感度を調整する。これにより、検出画像(115b)からDOI欠陥だけを抽出しておく。
【0107】
この後、この感度調整した検出画像(115b)を差画像生成部1402に与え、参照画像(115a)との差分を算出する。このような処理手順によっても、DOI欠陥だけを含む差画像を求めることができる。この形態例の場合、差画像生成部1402の出力は、差画像保存用メモリ116に格納される。欠陥判定部117以降の処理動作は、形態例1と同じであるため説明を省略する。
【0108】
(11)形態例11
続いて、形態例11に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例11に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。この形態例11と形態例1の違いは、感度調整用テーブルlの適用先である。形態例1の場合には、感度調整用テーブルlを感度補正部125に与える場合について説明した。また、前述した形態例10の場合には、感度調整用テーブルlを感度補正部1401に与える場合について説明した。しかし、この形態例11の場合には、感度調整用テーブルlを欠陥判定部117の閾値の補正に使用する。
【0109】
図15に、形態例11で採用する処理手順を示す。なお、図15には図7との対応部分に同一符号を付して示す。この形態例の場合も、特徴検出部122は検出画像(115b)から特徴情報を検出し、感度調整部123は検出された特徴情報に基づいて領域別の感度係数gを設定する。また、この形態例の場合も、差画像生成部124により画像保存用メモリ115に格納されている検出画像(115b)と参照画像(115a)との差画像を生成する。
【0110】
ただし、形態例の場合には、差画像生成部124において生成された差画像を差画像保存用メモリ116に格納し、感度調整部123で生成された感度調整用テーブルlを欠陥判定部117の閾値補正部1501に与える。閾値補正部1501では、閾値設定機能部701から与えられる閾値テーブル703に感度調整用テーブルlを適用し、1枚の検出画像の領域内に複数の閾値を設定する。例えばDOI欠陥に対応する領域の閾値は低く、その他の領域の閾値を高く設定する。ここで、欠陥判定機能部702は、閾値より大きい輝度の部分を欠陥と判定し、反対に閾値より小さい輝度を有する部分を欠陥でないと判定する。従って、この欠陥判定機能部702の出力は、形態例1における欠陥判定部702の出力と同じものになる。
【0111】
(12)形態例12
続いて、形態例12に係る回路パターン検査装置について説明する。なお、形態例12に係る回路パターン検査装置の基本的な装置構成と基本的な処理手順は形態例1と同じである。以下では、形態例1との相違点についてのみ説明する。
【0112】
前述した形態例1の場合には、特徴検出部122における特徴情報の検出処理時に、ハフ変換を適用した。
【0113】
しかし、図16に示すような手法によっても、特徴情報を検出することができる。図16は、被検査画像1601、第1の累計輝度グラフ1604、第2の累計輝度グラフ1605で構成される。なお、被検査画像1601には明るい領域1602と暗い領域1603があるものとする。
【0114】
この場合、特徴検出部122は、同じX座標を有する画素の輝度値をY座標方向に加算した第1の累計輝度グラフ1604を生成する。次に、同じY座標を有する画素の輝度値をX座標方向に加算して第2の累計輝度グラフ1605を生成する。
【0115】
被検査画像1601には、明るい領域1602と暗い領域1603が存在するため、第1の累計輝度グラフ1604について累計輝度値の低い領域XAからXBを見つけることができる。同様に、第2の累計輝度グラフ1605について累計輝度値の低い領域YAからYBを見つけることができる。この結果を利用することにより、特徴検出部122は、暗い領域1603の位置範囲を、4点(XA,YA)、(XB,YA)、(XB、YB)、(XA、YB)で囲まれた領域として検出することができる。勿論、明るい領域1602は、その外側の領域として検出することができる。
【0116】
特徴領域の形状が比較的シンプルな場合には、このような手法の適用により比較的少ない計算量で特徴領域を検出することができる。
【0117】
(13)他の形態例
前述した形態例の場合には、専ら、検査対象をウェハ、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、フォトマスク等の薄膜デバイスを対象とする場合について説明した。しかし、発明に係る技術は必ずしも電子線式の検査装置に限定されるものではなく、ランプ光又はレーザ光等を用いた外観検査装置にも適用できる。また、発明は、本来同一であるべきパターン同士を比較して欠陥を検査する装置であれば、被検査対象を限定することなく適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
102…電子ビーム、105…帯電制御電極、106…ウェハ、110・・・二次信号、113…検出器、114…デジタル画像生成部、115…画像保存用メモリ、116…差画像保存用メモリ、117…欠陥判定部、118…全体制御部、119…コンソール、120…光学顕微鏡、121…標準試料片、122…特徴検出部、123…感度調整部、124…差画像生成部、125…感度補正部、201…ダイ、202…メモリマット群、203…メモリマット、204…メモリセル、401…マップ表示部、402…画像表示部、403…欠陥情報表示部、404…感度設定ボタン、405…比較開始ボタン、406…欠陥表示閾値調整ツールバー、407…欠陥、408、409、410…表示領域、501…感度調整用表示部、502…画像表示部、503…感度調整部、504…形状検出ボタン、505…適用ボタン、506…取消ボタン、507…レビューボタン、601、602、603…穴パターン、604…配線パターン、803…エッジ画像、804…特徴テーブル、805…検出画像、806…エッジ画像、807…感度調整用テーブル、901…差画像、902、903…拡大画像、904、905a、905b…欠陥、906…円形領域、907…高感度値の領域、908…低感度値の領域、1001…背景特徴解析部、1102…背景特徴付加部、1201…背景特徴付加部、1301…統計計算ボタン、1302…統計量表示部、1303…感度設定部、1401…感度補正部、1402…差画像生成部、1501…閾値補正部、e…欠陥情報信号、g…感度係数、h…検出画像、i…差画像、j…調整後差画像、k…特徴情報、l…感度調整用テーブル、m…背景特徴テーブル、ma…白背景用感度調整テーブル、mb…黒背景用感度調整テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査領域から検出画像を取得する画像取得部と、
前記検出画像と参照画像との差画像を生成する差画像生成部と、
前記差画像に基づいて欠陥を判定する欠陥判定部と、
検査領域内の画像の特徴に基づいて、前記検査領域内に複数の感度領域を設定する感度調整部と、
前記検出画像、前記差画像又は前記欠陥判定部の判定用閾値に、各感度領域の設定感度を適用する感度補正部と
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記差画像を構成するパターンを輝度レベルに応じて分別し、輝度レベル別の分別情報を生成する背景特徴解析部を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記複数の感度領域は、オペレータによる画面上での操作入力を通じて設定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記画像の特徴は、オペレータによる画面上での操作入力を通じて設定される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記画像の特徴は、各検査領域に対応する画像を画像処理することによって検出される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記画像の特徴は、各検査領域内における輝度又は色の違いを通じて検出される
ことを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
画像取得部を通じ、検査領域から検出画像を取得する処理と、
記憶領域から前記検出画像と参照画像を読み出し、前記検出画像と前記参照画像の差画像を生成する処理と、
前記差画像に対して判定用閾値を適用し、欠陥を判定する処理と、
検査領域内の画像の特徴に基づいて、前記検査領域内に複数の感度領域を設定する処理と、
前記検出画像、前記差画像又は前記判定用閾値に、各感度領域の設定感度を適用する処理と
を有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
前記差画像を構成するパターンを輝度レベルに応じて分別し、輝度レベル別の分別情報を生成する処理を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記複数の感度領域は、オペレータによる画面上での操作入力を通じて設定される
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記画像の特徴は、オペレータによる画面上での操作入力を通じて設定される
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
前記画像の特徴は、各検査領域に対応する画像を画像処理することにより検出される
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
【請求項12】
前記画像の特徴は、各検査領域内における輝度又は色の違いを通じて検出される
ことを特徴とする請求項11に記載の欠陥検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−256242(P2010−256242A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108153(P2009−108153)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】