説明

液処理装置

【課題】 処理液の液流をコントロールすることにより、洗浄,エッチング処理の均一性の向上を図れるようにし、また、周辺部の洗浄,エッチング量の向上を図れるようにすること。
【解決手段】 半導体ウエハWを起立状態に保持するウエハ保持体30と、ウエハ保持体によって保持されたウエハを収容する処理容器10と、処理容器内に処理液を供給する処理液供給ノズル40とを具備し、処理液供給ノズルを、水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成する。これにより、処理容器内に供給される処理液の液流をコントロールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体ウエハやLCD用ガラス基板等の被処理体に処理液を供給して処理を施す液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造装置の製造工程においては、半導体ウエハやLCD用ガラス基板等の被処理体を薬液やリンス液等の処理液が貯留された処理槽に浸漬すると共に処理液を供給して処理を施す液処理方法が広く採用されている。
【0003】
このような液処理方法を実施する液処理の一例として、複数枚の被処理体を互いに等ピッチで平行かつ垂直な姿勢で支持する支持手段と、この支持手段によって支持された複数の被処理体を収容する処理槽と、この処理槽の下部側の対向する部位に配置された一対の処理液供給部(ノズル)から処理液例えば薬液とリンス液(純水)を順次供給して処理を施す液処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−271188(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2001−271188に記載の技術は、一対の処理液供給ノズルが固定のため、処理液供給ノズルから処理槽内に供給される処理液を被処理体に対して均一な流れを形成することが難しかった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、処理液の液流をコントロールすることにより被処理体と処理液との接触を均一にして、洗浄,エッチング処理の均一性の向上を図れるようにし、また、処理液の液流方向を被処理体の周辺部に多く向けることにより、周辺部の洗浄,エッチング量の向上を図れるようにした液処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明の液処理装置は、被処理体を起立状態に保持する保持手段と、 上記保持手段によって保持された被処理体を収容する処理容器と、 上記処理容器内に処理液を供給する処理液供給手段と、を具備し、 上記処理液供給手段を、水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
この発明において、上記処理液供給手段は、水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成されるものであれば、その形態は任意のものであっても差し支えないが、好ましくは、上記処理液供給手段を、処理容器に対して非接触な状態で回転及び又は揺動可能に形成する方がよい(請求項2)。
【0008】
また、上記処理液供給手段の構造は任意のものであっても差し支えないが、好ましくは、上記処理液供給手段を、中心部に処理液供給路を有する円筒状のノズル本体と、このノズル本体の一側に設けられ、軸方向に沿設される吐出口と、を具備する構造とする方がよい(請求項3)。この場合、吐出口は、スリット状あるいは適宜間隔をおいた複数の孔であってもよい。
【0009】
また、上記保持手段は、被処理体を起立状態に保持するものであれば、その形態は任意でよいが、好ましくは、保持手段は、1又は互いに適宜間隔をおいて配列される複数の被処理体を垂直又は略垂直状態に保持すると共に、被処理体の略中心を軸に回転可能に形成される方がよい(請求項4)。
【0010】
また、上記処理容器を、側方に開口する有底筒状の処理容器本体と、この処理容器本体の開口部を気水密に開閉する蓋体とを具備する密閉容器にて形成する方が好ましい(請求項5)。この場合、上記蓋体に保持手段を設けることができる(請求項6)。
【0011】
また、上記処理液供給手段は、処理容器内に処理液を供給するものであれば、処理容器内に配設されていても差し支えないが、好ましくは、処理液供給手段を、処理容器内に連通する収容部内に収容する方がよい(請求項7)。この場合、収容部に排液口を形成する方が好ましい(請求項8)。
【0012】
また、上記処理液供給手段を、処理容器の側部又は下部側に1又は複数配設し、処理容器における1つの処理液供給手段と対向する部位及び処理容器の下部に排液部を形成する方が好ましい(請求項9)。
【0013】
また、上記処理容器の上部側に空気抜き口を形成する方が好ましい(請求項10)。
【0014】
加えて、上記処理容器に、乾燥用気体の供給源に接続する供給口を形成する方が好ましい(請求項11)。
【発明の効果】
【0015】
この発明の液処理装置は、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、保持手段によって起立状態に保持された被処理体を収容する処理容器内に処理液を供給する処理液供給手段を、水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成することにより、処理容器内の処理液の液流を被処理体の周辺から中心方向まで任意にコントロールし、かつ、回転又は揺動動作のスピードや範囲を制御することができるので、被処理体の全面を均一に処理(洗浄,エッチング)することができる。また、処理液の液流方向を被処理体の周辺部をより多く、処理することにより、周辺部の洗浄,エッチング量の向上を図ることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、処理液供給手段を、処理容器に対して非接触な状態で水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成することにより、処理液供給手段からのパーティクルの発生を抑制することができるので、上記(1)に加えて、更に処理精度の向上を図ることができると共に、装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0018】
(3)請求項3記載の発明によれば、処理液供給手段は、中心部に処理液供給路を有する円筒状のノズル本体と、このノズル本体の一側に設けられ、軸方向に沿設される吐出口と、を具備することにより、処理液供給手段の回転又は揺動と共に吐出口から吐出される処理液の液流によって、処理液供給手段の収容部内の処理液を処理容器内に流すことができるので、処理液の供給を円滑にすることができると共に、処理効率の向上を図ることができる。
【0019】
(4)請求項4記載の発明によれば、保持手段を、1又は互いに適宜間隔をおいて配列される複数の被処理体を垂直又は略垂直状態に保持すると共に、被処理体の略中心を軸に回転可能に形成することにより、被処理体を任意の回転数で処理液中に回転することができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に被処理体の全面を均一に処理することができる。
【0020】
(5)請求項5,6記載の発明によれば、処理容器を密閉容器とすることにより、処理中に外部の雰囲気例えば、気流や温度等による悪影響を受ける虞がないので、上記(1)〜(4)に加えて、更に処理の向上を図ることができる。
【0021】
(6)請求項7記載の発明によれば、処理液供給手段を、処理容器内に連通する収容部内に収容することにより、処理液の供給に支障をきたすことなく、処理容器内の空間を可及的に小さくすることができるので、上記(1)〜(5)に加えて、更に処理効率の向上が図れると共に、装置の小型化を図ることができる。この場合、収容部に排液口を設けることにより、収容部に残留する処理液を排出することができる(請求項8)。
【0022】
(7)請求項9記載の発明によれば、処理液供給手段を、処理容器の側部又は下部側に1又は複数配設し、処理容器における1つの処理液供給手段と対向する部位及び処理容器の下部に排液部を形成することにより、処理に供された処理液を排液部から排出して常時新規な処理液を被処理体に接触させて処理を施すことができるので、上記(1)〜(6)に加えて、更に処理効率の向上を図ることができる。
【0023】
(8)請求項10記載の発明によれば、処理容器の上部側に空気抜き口を形成することにより、処理液供給手段から処理容器内に供給される処理液の液流を円滑にすることができるので、上記(1)〜(7)に加えて、更に処理効率の向上及び処理精度の向上を図ることができる。
【0024】
(9)請求項11記載の発明によれば、処理容器に、乾燥用気体の供給源に接続する供給口を形成することにより、処理液の供給により処理が施された被処理体に乾燥用気体を供給して乾燥処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、この発明に係る液処理装置を具備する処理システムの一例を示す概略平面図、図2は、上記処理システムの要部の概略縦断面図、図3は、この発明における処理容器を構成する処理容器本体と蓋体を示す斜視図、図4は、この発明に係る液処理装置の配管状態を示す概略構成図、図5は、上記液処理装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
【0027】
上記処理システムは、図1及び図2に示すように、複数枚例えば25枚の被処理体である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を所定の間隔例えば10mmピッチをおいて水平状態に保持するキャリアCの搬入・搬出部1と、複数枚例えば25枚のウエハWを所定の間隔例えば3mmピッチで保持する2台のピッチ変換機能を有するウエハホルダ2a,2bを配設するピッチ変換・搬送部3と、キャリア搬入・搬出部1とピッチ変換・搬送部3との間に位置して、搬入・搬出部1のキャリアCとピッチ変換・搬送部3のウエハホルダ2a,2bに対してそれぞれウエハWを受け渡しする水平のX,Y方向と回転(θ)及び垂直のZ方向に移動自在なウエハ搬送アーム4を配設するウエハ搬送部5と、ピッチ変換・搬送部3に配設される蓋体11と共働して密閉の処理容器10を構成する処理容器本体12とを具備する処理部すなわちこの発明に係る液処理装置6とで主に構成されている。
【0028】
上記ピッチ変換・搬送部3に配設される蓋体11は、Y方向に対峙して配設された2台のウエハホルダ2a,2bの中間部に位置しており、姿勢変換及び移動機構60によって複数枚例えば25枚のウエハWを等間隔例えば3mmピッチの垂直状態にした状態で処理容器本体12の開口部13に密接されるように構成されている(図3参照)。
【0029】
上記液処理装置6は、上記蓋体11と処理容器本体12とで構成される密閉式の処理容器10と、蓋体11を気水密に貫通して、後述するウエハ回転モータ20によって垂直方向に回転される保持手段であるウエハ保持体30と、処理容器10内の下部側に連通する断面略円形状の収容部14と、この収容部14内に隙間15をおいて回転自在に配設(収容)される処理液供給手段である処理液供給ノズル40と、この処理液供給ノズル40を正逆回転する後述するノズル回転モータ50とを具備している。
【0030】
上記処理容器本体12は、側方に開口部13を有する有底筒状に形成されており、側壁における下部側の一部に連通口16を介して収容部14が連通し、この収容部14と対向する部位に排液口17が設けられている。また、側壁における下端側には、急速排液口17Aが設けられ、上端側には、空気抜き口18と乾燥用気体供給口19が設けられている(図5参照)。
【0031】
上記蓋体11は、処理容器本体12の開口部13を閉塞すべく円板状に形成されており、開口部13に対向する面にOリング11aが装着されている。このように構成される蓋体11は、上記姿勢変換及び移動機構60によって処理容器本体12の開口部13を気水密に閉塞及び開放することができるようになっている(図8参照)。
【0032】
上記ウエハ保持体30は、図8及び図9に示すように、蓋体11を貫通する回転軸21に直交状に連結される略長方形状の回転基体31と、該回転基体31の両端部に可撓性を有する伸縮部材例えば蛇腹部材34を介して半径方向に伸縮移動可能な可動部材35と、各可動部材35の先端部から回転軸21と平行方向に起立する互いに対峙する一対の保持棒32を具備しており、各保持棒32の対向する内周側面に刻設された複数の保持溝33にウエハWの外周縁部を保持し得るように構成されている。なお、回転基体31側には、可動部材35及び保持棒32を半径方向に伸縮移動する伸縮機構(図示せず)が設けられている。
【0033】
このように構成されるウエハ保持体30によれば、図示しない伸縮機構によって保持棒32を外方に移動した状態で、ウエハWを保持したウエハホルダ2を保持棒32の内方側に向かい入れ、その後、伸縮機構によって保持棒32を内方側に移動してウエハWを受け取ることができる。そして、姿勢変換及び移動機構60によってウエハWを起立状態すなわち垂直又は略垂直状態の垂直姿勢に変換した後、処理容器本体12内に収容することができる。また、処理が施されたウエハWを保持した状態で処理容器本体12から離反され、水平状態に姿勢変換された状態で、保持棒32の内方側にウエハホルダ2が挿入されると、伸縮機構によって保持棒32が外方側に移動してウエハWをウエハホルダ2に受け渡すことができる。
【0034】
上記ウエハ回転モータ20は、図8に示すように、ウエハ保持体30の回転軸21との間に隙間をおいて回転軸21を包囲する有底筒状のモータ本体23を具備しており、モータ本体23には浮上用電磁コイル24が埋設され、回転軸21には磁性部材25が埋設されている。このように構成されるウエハ回転モータ20は、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて回転方向や所定の回転数例えば1〜60rpmが制御されるようになっている。なお、モータ本体23と回転軸21は、共に耐薬品性,耐食性に富む材質例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂にて形成されている。
【0035】
このように構成されるウエハ回転モータ20によれば、浮上用電磁コイル24を通電して励磁することにより、回転軸21がモータ本体23との間に隙間をおいた非接触の状態で回転することができる。したがって、ウエハ回転モータ20の駆動によるパーティクルの発生を抑制することができる。なお、モータ本体23の中間部には位置決め用電磁コイル26が埋設されており、この位置決め用電磁コイル26の励磁によって回転軸21の軸方向に位置が規制されるようになっている。また、モータ本体23の左右両端部の上下位置には、グリップ・シリンダ27が配設されており、ウエハ回転モータ20の通電が停止された際、あるいは、例えば停電等の予期しない通電の遮断時にグリップ・シリンダ27が作動すなわちピストンロッド27aを伸長して回転軸21の下方への移動を防止し得るように構成されている。また、モータ本体23の先端側には供給口28が設けられており、この供給口28に例えば薬液,リンス液(純水)あるいは乾燥用ガス例えば窒素(N2)ガス等の供給管(図示せず)が接続されるようになっている。
【0036】
一方、処理液供給ノズル40(以下に単にノズル40という)は、図5ないし図7に示すように、中心部に処理液供給路41を有する略円筒状のノズル本体42と、このノズル本体42の一側に設けられ、軸方向に沿設される例えばスリット状あるいは軸方向に適宜間隔をおいて沿設される複数の孔からなる吐出口43とを具備している。このように形成されるノズル40は、収容部14内に隙間15をおいて配設(収容)され、ノズル40の一側面の中心部に突設されたノズル回転軸53が収容部14を構成するケース44に一体に設けられた案内筒45内に隙間をおいて挿入されており、ノズル回転モータ50の駆動によってノズル40が処理容器本体12{具体的には、収容部14を構成するケース44}に対して非接触に回転及び又は揺動可能に形成されている。なお、図5に二点鎖線で示すように、ノズル本体42における吐出口43の背部側の1又は複数箇所(図面では3箇所の場合を示す)に液溜り防止用孔46を設けるようにしてもよい。このように液溜り防止用孔46を設けることにより、液溜り防止用孔46から処理液を隙間15内に流すことができるので、隙間15内に処理液が淀むのを防止することができる。
【0037】
この場合、ノズル回転モータ50は、案内筒45の外周面に嵌装される有底筒状のノズルモータ本体50aを具備しており、このノズルモータ本体50aの先端側と基端側の2箇所には浮上用電磁コイル51が埋設され、両浮上用電磁コイル51間の中間部には位置決め用電磁コイル52が埋設されている。また、ノズル回転軸53には磁性部材54が埋設されている。このように構成されるノズル回転モータ50によれば、浮上用電磁コイル51と位置決め用電磁コイル52を通電して励磁することにより、ノズル回転軸53がモータ本体50aとの間に隙間をおいて非接触の状態で回転することができる。したがって、ノズル回転モータ50の駆動によるパーティクルの発生を抑制することができる。なお、ノズルモータ本体50aとノズル回転軸53は、共に耐薬品性,耐食性に富む材質例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂にて形成されている。上記のように構成されるノズル回転モータ50は、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて正逆回転又は揺動動作が制御されるようになっている。
【0038】
上記のように構成されるノズル40の処理液供給路41には、第1の開閉バルブV1を介して主供給管路70の一端が接続されている。この場合、第1の開閉バルブV1と後述する切換供給バルブVa,Vb,Vc,Vd等を収容したバルブケース55が、ガスケット56を介してケース44に連結されている(図6参照)。
【0039】
上記主供給管路70の他端には純水供給源71が接続されている。この場合、主供給管路70の純水供給源側には分岐管路72が並列に接続されており、並列部において主供給管路70には純水供給源側から順に、第2の開閉バルブV2,フィルタF1,流量計FM1及び処理液を処理温度に調整する加熱機構Hが介設され、分岐管路72には純水供給源側から順に、第3の開閉バルブV3,フィルタF2,流量計FM2が介設されている。
【0040】
また、主供給管路70の途中には、それぞれ切換供給バルブVa,Vb,Vc,Vdを介設した薬液供給管路73a,73b,73c,73dを介して薬液タンク74a,74b,74c,74dが接続されている。なお、薬液タンク74a,74b,74c,74d内には、種類の異なる薬液、例えばアンモニア(NH4OH),塩酸(HCl),フッ酸(HF)等が貯留されており、処理の目的に応じて切換供給バルブVa,Vb,Vc,Vdのいずれかを開放して主供給管路70内を流れる純水と混合してノズル40から処理容器10内に供給されるようになっている。
【0041】
また、収容部14を構成するケース44には、排液口76が設けられており、開閉バルブV4を介設した排出管路75が接続されている。この排出管路75は、排液管路78Aに接続されている。
【0042】
上記排液口17には、開閉バルブV5を介設した排液管路78が接続されている。この排液管路78の下流側には、純水用の1つのドレーンバルブDV1と3つの薬液用ドレーンバルブDV2,DV3,DV4をそれぞれ介設したドレーン管路79が並列に接続されている。
【0043】
上記空気抜き口18には、開土調整可能な開閉バルブV6を介設した排気管路80が接続されており、開閉バルブV6の開放によって処理容器10内の泡が溜まるのを防止している。なお、排気管路80は、上記排液管路78に接続されている。
【0044】
上記乾燥用気体供給口19には、開閉バルブV7を介して乾燥用気体(媒体)の供給管路、例えばクールN2ガス供給管路81,ホットN2ガス供給管路82及びイソプロピルアルコール(IPA)供給管路83が接続されており、必要に応じて図示しないN2ガス供給源やIPA供給源からクール又はホットのN2ガスやIPA蒸気が処理容器10内に供給されるように構成されている。
【0045】
また、急速排液口17Aには、開閉バルブV8を介設した大口径の排液管路78Aが接続されており、処理容器10内でのウエハWの処理が終了した後に、開閉バルブV8を開放することによって処理容器10内の処理に供された処理液(薬液,純水)を短時間内に排液管路78Aを介して外部に排出できるようになっている。
【0046】
なお、排液管路78Aとは別系統に排液管路78Bが配設されている。この排液管路78Bには、上記主供給管路70に切換バルブVAを介設した戻り管路84が接続されている。
【0047】
なお、上記処理容器10の処理空間の上部側の左右2箇所には、特に急速排液口17Aからの液排出時にウエハホルダ2によって保持された複数枚のウエハWの隣接同士が接触するのを防止する倒れ防止機構90が設けられている。この倒れ防止機構90は、隣接するウエハWの隙間内に挿入可能な複数の支持片91を列設した櫛歯状の倒れ防止部材92を、図示しない回転手段によって支持片91がウエハWに係合する位置と非係合位置に切り換え可能に形成されている(図5参照)。
【0048】
なお、図5に示すように、上記処理容器10の上部外周の一側面に、超音波発振器100を装着することも可能である。このように構成することにより、超音波発振器100の作動により、処理容器10内の処理液に超音波振動を付与して処理を行うことができる。
【0049】
次に、この発明に係る液処理装置の動作態様について説明する。まず、搬入・搬出部1にセットされたキャリアC内のウエハWをウエハ搬送アーム4によって取り出して、一方のウエハホルダ2aに受け渡す。この動作を繰り返して、キャリアC内の複数枚のウエハWを順にウエハホルダ2aに受け渡してウエハW間のピッチを例えば3mmに変換する。次に、ウエハホルダ2aを作動してウエハホルダ2aによって保持された複数枚のウエハWを蓋体11に装着されたウエハ保持体30の保持棒32に受け渡す。ウエハWがウエハ保持体30に受け渡された後、ウエハホルダ2aはウエハ保持体30から退避する一方、姿勢変換及び移動機構60が作動して、蓋体11と共にウエハ保持体30を水平姿勢から垂直姿勢に姿勢変換すると共に処理容器本体12側に移動し、ウエハWを処理容器本体12内に搬入すると共に、蓋体11を処理容器本体12の開口部13に密閉する。
【0050】
上記のようにして、処理容器10内にウエハWを垂直状態で収容した状態で、開閉バルブV2を開放して純水供給源71から主供給管路70に処理温度に温調された純水を流すと共に、切換開閉バルブVa,Vb,Vc,Vdのうちの選択された1つを開放して薬液を純水に混合して、混合薬液をノズル40側に供給する。混合薬液の供給時には、ノズル40は吐出口43を処理容器内の下部側に位置しており、ノズル回転モータ50が駆動してノズル40は下方側から上方に向かって回転して、混合薬液のしぶきがウエハWに飛散するのを防止しながら、処理容器10内に混合薬液を供給する。また、薬液の供給と同時に、ウエハ回転モータ20が駆動して、ウエハ保持体30と共にウエハWが略中心を軸にしてゆっくりと回転する。なお、ノズル40からの薬液供給時には、空気抜き口18に接続する排気管路80に介設された開閉バルブV6が開放されているので、処理容器10内に供給される薬液の液流は円滑になる。したがって、略中心を軸に回転するウエハWに対して処理容器10の下部側に配設されたノズル40を回転又は揺動、あるいは、揺動を数回行なった後、回転を行いながら薬液を供給することにより、薬液の液流がウエハWの周辺から中心方向に流れ、ウエハWの全面に均一に薬液が接触してエッチング処理が施される。また、ノズル回転モータ50を制御してノズル40から供給される薬液の液流方向をウエハWの周辺部に多く向けることにより、周辺部をより多くエッチング処理することもできる。なお、処理容器10内に供給され、処理に供された薬液は、排液口17から排液管路78を介して排液される。また、収容部14内のノズル40との隙間に薬液が溜まる虞があるが、ノズル40が360°回転可能であるため、回転した際にノズル40の回転により吐出口43から吐出される新規の薬液によって排出されるので、処理容器10内には薬液の淀みがなく、常時新規の薬液が供給される。
【0051】
上記のようにして、薬液処理を所定時間行った後、切換供給バルブを閉じて薬液の供給を停止し、回転するノズル40から純水のみを処理容器10内に供給してリンス処理を行う。この際、開閉バルブV2を閉じると共に、開閉バルブV3を開放して温調されていない純水を供給する。このリンス処理時においてもウエハ回転モータ20の駆動によってウエハWは回転しているので、回転するノズル40から供給される純水はウエハWの周辺から中心方向に流れ、ウエハWの全面に均一に純水が接触してリンス処理が施される。この際にも、収容部14の隙間15にノズル40の回転により、純水が供給可能であるため、収容部14内に薬液が残ることがない。
【0052】
上記のようにして、リンス処理を所定時間行った後、開閉バルブV3を閉じると共に、ノズル回転モータ50の駆動を停止して純水の供給を停止する。その後、開閉バルブV8及びV4を開放して、処理容器10内の純水を急速排液口17Aから排液管路78Aを介して外部に排出する。この純水の排液と同時に、乾燥用気体供給口19から乾燥用気体例えばN2ガス又はN2ガスとIPAの混合気体を処理容器10内に供給してウエハWに付着した液滴を除去して、ウエハWを乾燥する。
【0053】
上記のようにして、所定の時間乾燥用気体を処理容器10内に供給して乾燥処理を行った後、乾燥用気体の供給を停止して、液処理が終了する。
【0054】
次に、姿勢変換及び移動機構60を駆動して、蓋体11を処理容器本体12の開口部13から引き離すと共に、ウエハ保持体30によって保持されたウエハWを処理容器本体12内から取り出し、垂直姿勢から水平姿勢に変換する。姿勢変換及び移動機構60によって水平姿勢に変換されたウエハWは、搬入時と違うウエハホルダ2bに受け取られた後、ウエハ搬送アーム4によって空のキャリアC内に収容されて、次の処理部に搬送される。
【0055】
なお、上記実施形態では、ノズル40が処理容器10の下部側の一側部に1個設けられる場合について説明したが、ノズル40は必ずしも処理容器10の下部側の一側部に設け場合に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、処理容器10の下部側の対向する2箇所に設けられた収容部14内にそれぞれノズル40を回転及び又は揺動可能に配設してもよい。なお、この場合、排液口17は、一方のノズル40と対向する位置に設けられている。このように、処理容器10の下部側の対向する2箇所にノズル40を設けることにより、処理時には、回転するウエハWに対して両ノズル40を回転及び又は揺動させながら処理液(薬液,純水)を供給することができるので、処理時間の短縮を図ることができる。
【0056】
また、図11に示すように、処理容器10の垂直方向における中心部の一側部に収容部14を連通し、この収容部14内にノズル40を回転及び又は揺動可能に配設し、ノズル40と対向する部位に排液口17を設けるようにしてもよい。
【0057】
なお、上記図10及び図11において、その他の部分は上記第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0058】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、複数枚のウエハWを処理する場合について説明したが、1枚のウエハWを処理する液処理装置についても適用できることは勿論である。
【0059】
また、上記実施形態では、被処理体がウエハである場合について説明したが、ウエハ以外の例えばLCD用ガラス基板の液処理についても同様に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明に係る液処理装置を具備する処理システムの一例を示す概略平面図である。
【図2】上記処理システムの要部の概略縦断面図である。
【図3】この発明における処理容器を構成する処理容器本体と蓋体を示す斜視図である。
【図4】この発明に係る液処理装置の配管状態を示す概略構成図である。
【図5】上記液処理装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
【図6】この発明における処理液供給ノズルの一例を示す分解斜視図である。
【図7】上記処理液供給ノズルの断面図である。
【図8】この発明における処理容器と保持手段を示す縦断面図である。
【図9】この発明における保持手段を示す概略断面図である。
【図10】この発明に係る液処理装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図11】この発明に係る液処理装置の第3実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 処理容器
11 蓋体
11a Oリング
12 処理容器本体
13 開口部
14 液溜り室
15 隙間
17,17A 排液口
18 空気抜き口
19 乾燥用気体供給口
20 ウエハ回転モータ
21 回転軸
30 ウエハ保持体(保持手段)
40 処理液供給バルブ(処理液供給手段)
41 処理液供給路
42 ノズル本体
43 吐出口
50 ノズル回転モータ
53 ノズル回転軸
70 主供給管路
71 純水供給源
73a〜73d 薬液供給管路
74a〜74d 薬液タンク
76 排液口
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を起立状態に保持する保持手段と、
上記保持手段によって保持された被処理体を収容する処理容器と、
上記処理容器内に処理液を供給する処理液供給手段と、を具備し、
上記処理液供給手段を、水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の液処理装置において、
上記処理液供給手段を、処理容器に対して非接触な状態で水平方向を軸に回転及び又は揺動可能に形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液処理装置において、
上記処理液供給手段は、中心部に処理液供給路を有する円筒状のノズル本体と、このノズル本体の一側に設けられ、軸方向に沿設される吐出口と、を具備することを特徴とする液処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液処理装置において、
上記保持手段は、1又は互いに適宜間隔をおいて配列される複数の被処理体を垂直又は略垂直状態に保持すると共に、被処理体の略中心を軸に回転可能に形成されることを特徴とする液処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液処理装置において、
上記処理容器は、側方に開口する有底筒状の処理容器本体と、この処理容器本体の開口部を気水密に開閉する蓋体と、を具備する密閉容器にて形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の液処理装置において、
上記蓋体に、保持手段が設けられていることを特徴とする液処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液処理装置において、
上記処理液供給手段を、処理容器内に連通する収容部内に収容してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の液処理装置において、
上記収容部に排液口を設けたことを特徴とする液処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の液処理装置において、
上記処理液供給手段を、処理容器の側部又は下部側に1又は複数配設し、処理容器における1つの処理液供給手段と対向する部位及び処理容器の下部に排液部を形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液処理装置において、
上記処理容器の上部側に空気抜き口を形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の液処理装置において、
上記処理容器に、乾燥用気体の供給源に接続する供給口を形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−120795(P2006−120795A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305965(P2004−305965)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】