説明

灰溶融炉のレベル測定方法及びレベル測定装置

【課題】 イニシャルコストやランニングコストを削減できると共に、現場での作業を減らす。
【解決手段】 炉本体3の天井壁に昇降自在に設けた主電極4先端から炉本体3内に不活性ガスGを供給しつつ、炉本体3内の被溶融物を溶融して炉本体3内に溶融メタル層M及び溶融スラグ層Sを形成する灰溶融炉2に於いて、主電極4を降下させながら炉本体3内に供給している不活性ガスGの背圧を測定し、背圧の増加率の変化から主電極4の先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極4の位置を検出すると共に、溶融スラグ面及び溶融メタル面の検出時に於ける主電極4の位置から溶融スラグ層Sの厚みL1を算出し、又、炉本体3に設けた非接触式の距離計14により当該距離計14から溶融スラグ面までの距離L3を測定し、前記溶融スラグ層Sの厚みL1と測定距離L3とから溶融メタル層Mの厚みL2つまり溶融メタルレベルMLを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にごみ焼却炉から排出された焼却残渣や飛灰、下水汚泥等の被溶融物を溶融処理するプラズマ式電気溶融炉等の灰溶融炉に用いられるものであり、主電極から炉内ヘ供給される不活性ガスの背圧及び非接触式の距離計を利用して溶融スラグレベル、溶融メタルレベルを測定するようにした灰溶融炉のレベル測定方法及びレベル測定装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、灰溶融炉に於ける溶融スラグレベルや溶融メタルレベルを測定する方法としては、例えば特開2003−42428号公報(特許文献1)、特開2001−50528号公報(特許文献2)、特開平10−332268号公報(特許文献3)、特開平10−9555号公報(特許文献4)、特開平8−320111号公報(特許文献5)、特開平8−271319号公報(特許文献6)及び特開平10−122544号公報(特許文献7)に開示された技術が知られている。
又、灰溶融炉に用いられるものではないが、ガス管から供給されるガスの背圧の変化を検出して溶湯レベルを測定する方法としては、特開平9−126858号公報(特許文献8)、特開昭63−196820号公報(特許文献9)、特開平6−588号公報(特許文献10)及び特開平6−589号公報(特許文献11)に開示された技術が知られている。
【0003】
即ち、特開2003−42428号公報に開示された技術は、溶融炉本体の重量を重量検出器によって連続的に検出し、その重量検出信号に基づいて溶融スラグ層レベルや溶融メタル層レベルを演算し、これに基づいて灰溶融炉を制御するようにしたものである。又、特開2003−42428号公報には、溶融炉本体内へメタルレベル測定用プローブを挿着し、このメタルレベル測定用プローブを溶融スラグ層へ挿入してその先端を溶融メタル層へ接触させ、これをメタルレベル測定装置により検出することによって、溶融メタル層の厚さを演算・表示するようにした技術が開示されている。
【0004】
特開平2001−50528号公報に開示された技術は、溶湯内に挿入したレベル検出センサー(メタルレベル検出器)又は溶融炉本体の側壁外方に設けたメタルレベル検出器(磁気方式又は超音波方式)により溶融メタルレベルを検出するようにしたものである。
【0005】
特開平10−332268号公報に開示された技術は、加熱源供給電極を炉底に当接させてこのときの加熱源供給電極の高さを検出し、加熱源供給電極とベースメタルとの間の抵抗値又は電位差を検出しつつ加熱源供給電極を上昇させ、前記抵抗値又は電位差の変化と加熱源供給電極の上昇距離からベースメタルレベルを検出するようにしたものである。
【0006】
特開平10−9555号公報に開示された技術は、レベル検出用電極を灰溶融炉に挿入し、レベル検出用電極を昇降させてその過程で電圧の電流に対する比が不連続に変化するレベル検出用電極の位置を検出することによって、溶融スラグ及び溶融メタルのレベルを検出するようにしたものである。
【0007】
特開平8−320111号公報に開示された技術は、検出部材(検出電極)又はプラズマ発生電極を下降させて溶融スラグの表面へ接触させ、検出部材(検出電極)又はプラズマ発生電極とベースメタルとの電位差を検出して溶融スラグ層の厚さを検知し、これによりベースメタルレベルを検出したり、或いはメタルの排出湯面レベルの近傍にベースメタルと接触可能な導電性部材を設け、この導電性部材とベースメタルとの電位差を検出してベースメタルレベルの位置を検知するようにしたものである。
【0008】
特開平8−271319号公報に開示された技術は、溶融メタルと溶融スラグの中間の密度を有するセラミック製のメタルレベル検出用検知体を溶融炉内に挿入し、メタルレベル検出用検知体が溶融メタルから受ける浮力をロードセルによりロードセル荷重として検出し、そのロードセル荷重から溶融炉内のメタルレベルをオンラインで検出するようにしたものである。
【0009】
特開平10−122544号公報に開示された技術は、スラグ湯面検出電極及び金属湯面検出電極を備えたレベルプローブを溶融炉内に挿入し、レベルプローブを昇降させて抵抗式又は磁気式で溶融金属レベルを測定するようにしたものである。
【0010】
特開平9−126858号公報に開示された技術は、連続鋳造設備のモールド内の溶湯内にパージ管を立設し、パージ管にパージガスを供給してその背圧を背圧検出器で検出することによって、溶湯レベルを測定するようにしたものである。
【0011】
特開昭63−196820号公報に開示された技術は、下端開口から不活性ガスが流出されている送ガス管を溶湯内に挿入し、送ガス管の背圧の変化を背圧検知器により検知することによって、溶湯レベルを測定するようにしたものである。
【0012】
特開平6−588号公報及び特開平6−589号公報に開示された技術は、鋳型内に注入された溶融金属内にバブラー管を挿入し、このバブラー管を発泡させてバブラー管のその位置に於ける背圧等を測定し、この測定した背圧等の値を基として溶融金属の境界層レベルを測定するようにしたものである。
【0013】
然し乍ら、上述した従来技術は、何れも専用のレベル測定装置を用いるものであり、又、メタルレベル測定用のプローブを用いたものは、プローブを測定毎に取り替える必要があり、専用の測定装置のイニシャルコストや消耗品のランニングコストが大幅に高騰すると云う問題があった。
更に、メタルレベル測定用のプローブを交換する際に、プローブの取り付け確認等、現場での作業を必要とする問題があった。
【0014】
【特許文献1】特開2003−42428号公報
【特許文献2】特開2001−50528号公報
【特許文献3】特開平10−332268号公報
【特許文献4】特開平10−9555号公報
【特許文献5】特開平8−320111号公報
【特許文献6】特開平8−271319号公報
【特許文献7】特開平10−122544号公報
【特許文献8】特開平9−126858号公報
【特許文献9】特開昭63−196820号公報
【特許文献10】特開平6−588号公報
【特許文献11】特開平6−589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、イニシャルコストやランニングコストを削減できると共に、現場での作業を減らせるようにした灰溶融炉のレベル測定方法及びレベル測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、炉本体の天井壁に昇降自在に設けた主電極の先端から炉本体内に不活性ガスを供給しつつ、炉本体内に投入した被溶融物を電気エネルギーにより溶融して炉内に溶融メタル層及び溶融スラグ層を形成する灰溶融炉に於いて、前記主電極を降下させながら炉本体内に供給している不活性ガスの背圧を測定し、背圧の増加率の変化から主電極先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極の位置を検出すると共に、溶融スラグ面及び溶融メタル面の検出時に於ける主電極の位置から溶融スラグ層の厚みを算出し、又、炉本体に設けた非接触式の距離計により当該距離計から溶融スラグ面までの距離を測定し、前記溶融スラグ層の厚みと距離計による溶融スラグ面までの測定距離とから溶融メタル層の厚みを算出するようにしたことに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項2の発明は、マイクロ波距離計、レーザー距離計又は超音波距離計により距離計から溶融スラグ面までの距離を測定するようにしたことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項3の発明は、炉本体の天井壁に昇降自在に設けられ、先端から不活性ガスを噴出する中空孔を備えた主電極と、主電極を支持して昇降させると共に、主電極を支持する位置を検出する位置検出手段を備えた昇降装置と、主電極の中空孔を介して炉本体内に不活性ガスを供給するガス供給装置と、不活性ガスの背圧を検出する背圧検出器と、炉本体の天井壁に設けられ、溶融スラグ面までの距離を測定する非接触式の距離計と、背圧検出器による背圧の増加率の変化及び昇降装置の位置検出手段により検出した主電極の位置並びに距離計により測定した溶融スラグ面までの測定距離から溶融スラグ層の厚み及び溶融メタル層の厚み、溶融スラグレベル、溶融メタルレベルを夫々演算する演算装置とから構成したことに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項4の発明は、非接触式の距離計をマイクロ波距離計、レーザー距離計又は超音波距離計としたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の灰溶融炉のレベル測定方法は、主電極の先端から炉内に不活性ガスを供給しつつ、主電極を降下させながら炉内に供給している不活性ガスの背圧を測定し、背圧の増加率の変化から主電極の先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極の位置を検出すると共に、溶融スラグ面及び溶融メタル面の検出時に於ける主電極の位置から溶融スラグ層の厚みを算出し、又、炉本体に設けた非接触式の距離計により当該距離計から溶融スラグ面までの距離を測定し、前記溶融スラグ層の厚みと距離計による溶融スラグ面までの測定距離とから溶融メタル層の厚みを算出するようにしているため、専用のレベル測定装置を不要とし、イニシャルコストやランニングコストの大幅な削減を図れるうえ、メタルレベル測定用のプローブ等の取り替え作業や取り付け確認等の作業が不要となり、現場作業等の省力化を図れる。
又、本発明の灰溶融炉のレベル測定方法は、溶融スラグ面までの距離を測定するのにマイクロ波距離計、レーザー距離計又は超音波距離計を使用し、特に、マイクロ波距離計を使用して溶融スラグ面までの距離を測定した場合には、炉内が高ダスト雰囲気であっても溶融スラグ面までの距離を正確に測定することができ、溶融スラグレベルを正確に測定することができる。
【0021】
本発明の灰溶融炉のレベル測定装置は、先端から不活性ガスを噴出する中空孔を備えた主電極と、主電極を支持して昇降させると共に、主電極を支持する位置を検出する位置検出手段を備えた昇降装置と、主電極の中空孔を介して炉本体内に不活性ガスを供給するガス供給装置と、不活性ガスの背圧を検出する背圧検出器と、溶融スラグ面までの距離を測定する非接触式の距離計と、背圧検出器による背圧の増加率の変化及び昇降装置の位置検出手段により検出した主電極の位置並びに距離計により測定した溶融スラグ面までの測定距離から溶融スラグ層の厚み及び溶融メタル層の厚み、溶融スラグレベル、溶融メタルレベルを夫々演算する演算装置とから構成しているため、上記方法を好適に実施することができる。その結果、本発明のレベル測定装置を用いれば、イニシャルコストやランニングコストの大幅な削減を図れると共に、現場作業等の省力化を図れる。
又、本発明の灰溶融炉のレベル測定装置は、灰溶融炉の主電極と昇降装置とガス供給装置を利用しているため、灰溶融炉の構造が複雑化したり、設置スペースが余分に必要になったりすると云うことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るレベル測定装置1を用いた灰溶融炉2を示し、当該灰溶融炉2は、都市ごみや産業廃棄物等を焼却処理するごみ焼却炉から排出された焼却残渣や飛灰、下水汚泥等の被溶融物を溶融処理するものであり、プラズマ式電気溶融炉の構造を呈している。
【0023】
即ち、前記灰溶融炉2は、図1に示す如く、耐火物等により形成された天井壁、周壁及び底壁(炉底)から成る炉本体3と、天井壁に貫通状に配設され、直流電源装置(図示省略)の陰極に接続された昇降自在な主電極4と、天井壁に貫通状に配設され、直流電源装置の一方の陽極に接続された昇降自在なスタート電極5と、底壁全域に配設され、直流電源装置の他方の陽極に集電板を介して接続された導電性耐火物製の炉底電極6と、主電極4を昇降自在に支持する昇降装置7と、スタート電極5を昇降自在に支持するスタート電極用昇降装置(図示省略)と、主電極4に形成した中空孔4aを通して炉本体3内に窒素ガス等の不活性ガスGを供給するガス供給装置8と、炉本体3の周壁に設けられ、炉本体3内に焼却残渣等の被溶融物を供給する被溶融物供給装置9(スクリューフィーダー)と、溶融スラグレベルSL及び溶融メタルレベルMLを測定するレベル測定装置1等から構成されている。
【0024】
尚、図1に於いて、10は炉本体3の周壁に形成され、溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓口、11は溶融スラグを流下させるスラグ出湯樋、12は炉本体3内の排ガスを排出する排ガス排出口である。
【0025】
以上のように構成された灰溶融炉2に於いて、焼却残渣や飛灰等の被溶融物の溶融処理を開始するに当たっては、先ず、主電極4とスタート位置に下降させたスタート電極5とに通電させて両電極間4,5に電流を発生させ、これにより炉本体3内の被溶融物を溶融する。これは、主電極4と炉底電極6の間に非導電性の被溶融物が介在するため、運転開始時に於いては、主電極4と炉底電極6との間にプラズマアークを発生させ得ないからである。
【0026】
炉内の被溶融物が溶融して導電性が上昇すると、スタート電極5を待機位置に上昇させたうえ、主電極4と炉底電極6との間に直流電源装置により所定の電圧を印加して両電極4,6間にプラズマアークを発生させ、当該プラズマアークの発生熱により被溶融物供給装置9から炉本体3内へ投入された被溶融物を溶融する。
尚、炉本体3内は、溶融スラグへの重金属類の混入を低減したり、主電極4やスタート電極5の酸化等を防止するために還元性雰囲気に保持されている。そのため、ガス供給装置8から窒素ガス等の不活性ガスGが主電極4に形成した中空孔4a等を通して炉本体3内ヘ連続的に供給されている。
【0027】
主電極4と炉底電極6との間に発生するプラズマアークにより炉本体3内の被溶融物が順次溶融されて行くと、炉本体3内に溶湯が形成される。この溶湯は、焼却残渣等の被溶融物中にシリカを始めとするスラグ成分や鉄を始めとする金属類が多く含まれているため、比重差によって上方に位置する溶融スラグ層Sと溶融スラグ層Sの下方に位置する溶融メタル層Mとに分離される。
【0028】
前記溶融スラグは、溶融スラグ出滓口10から順次オーバーフローし、スラグ出湯樋11を流下して冷却水を貯留した水冷槽(図示省略)内へ落下排出され、ここで水冷されて水砕スラグにされる。
又、炉本体3内で発生した排ガスは、誘引通風機(図示省略)の誘引作用により天井壁に形成した排ガス排出口12を通って燃焼室(図示省略)内へ導入され、ここで燃焼された後、排ガス処理装置(図示省略)等を経て浄化されてから大気中へ放出されている。
【0029】
一方、溶融スラグの下方に位置する溶融メタルは、灰溶融炉2の運転時間の経過と共に順次底壁(炉底)に残留・蓄積し、溶融メタル層Mのレベルを上昇させて溶融メタル層Mの厚さを増加させる。これに伴って、上方の溶融スラグ層Sの厚さは、炉本体3の溶湯容積が一定であることとも相俟って、順次薄くなって行く。
【0030】
ところで、溶融メタル層Mのレベルが上昇すると、溶融スラグ層Sの厚さが薄くなってアーク電圧やアーク電流の変動値が大きくなり、安定な運転が困難になるうえ、溶融スラグに溶融メタルが混合して排出され、スラグの品質が低下したりする等の問題が発生するため、レベル測定装置1により溶融スラグレベルSL及び溶融メタルレベルMLを測定し、その測定結果に基づいて周壁下部に設けたタップホール(図示省略)を間欠的に開孔し、ここから溶融メタルを抜き出して溶融メタル層Mの厚さが所定の厚さを超えないようにしている。
【0031】
前記レベル測定装置1は、炉本体3の天井壁に昇降自在に設けられ、先端から不活性ガスGを噴出する中空孔4aを備えた主電極4と、主電極4を支持して昇降させると共に、主電極4を支持する位置を検出する位置検出手段7aを備えた昇降装置7と、主電極4の中空孔4aを介して炉本体3内に不活性ガスGを供給するガス供給装置8と、不活性ガスGの背圧を検出する背圧検出器13と、炉本体3の天井壁に設けられ、溶融スラグ面までの距離L3を測定する非接触式の距離計14と、背圧検出器13による背圧の増加率の変化及び昇降装置7の位置検出手段7aにより検出した主電極4の位置並びに距離計14により測定した溶融スラグ面までの測定距離L3から溶融スラグ層Sの厚みL1及び溶融メタル層Mの厚みL2、溶融スラグレベルSL、溶融メタルレベルMLを夫々演算する演算装置15とから構成されており、主電極4の中空孔4aを通して炉本体3内に供給している不活性ガスGの背圧の変化率から主電極4の先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極4の位置を検出し、又、溶融スラグ面及び溶融メタル面の検出時に於ける主電極4の位置と前記背圧の相関から溶融スラグ層Sの厚みL1を算出し、更に、距離計14により測定した溶融スラグレベルSLと前記溶融スラグの厚みL1から溶融メタル層Mの厚みL2を算出するようにしたものである。
【0032】
主電極4は、人造黒鉛により円柱状に形成されており、その中心部には、炉本体3内へ窒素ガス等の不活性ガスGを供給する中空孔4aを備えている。この主電極4は、灰溶融炉2の運転中に漸次消耗して短くなって行くため、新しい電極を継ぎ足せる構造となっている。
【0033】
昇降装置7は、炉本体3上又はその近傍に立設したマスト7bと、マスト7bに昇降自在に片持ち支持された支持アーム7cと、支持アーム7cの先端部に設けた電極把持装置7dと、支持アーム7cを昇降動させる流体圧シリンダ又はウインチ等から成る駆動装置(図示省略)と、主電極4を支持する支持アーム7cの位置を検出するポテンションメータ等から成る位置検出手段7aとから構成されている。
【0034】
ガス供給装置8は、PSA窒素ガス製造装置等の不活性ガス発生装置8a、不活性ガス供給管8b、減圧弁(図示省略)及び定流量弁(図示省略)等から成り、窒素ガス等の不活性ガスGを主電極4の中空孔4aへ供給し、主電極4先端から炉本体3内へ不活性ガスGを供給できるようにしたものである。
【0035】
背圧検出器13は、主電極4へ不活性ガスGを供給する不活性ガス供給管8bの下流側に接続されており、主電極4の中空孔4aを通して炉本体3内へ供給されている不活性ガスGの背圧を検出するものである。
【0036】
非接触式の距離計14は、炉本体3の天井壁に設けられており、距離計14から溶融スラグ面までの距離L3を測定するものである。この非接触式の距離計14には、マイクロ波を発信及び受信するアンテナ、マイクロ波を発信してから受信するまでの時間を距離に換算するコントローラ等を備えたマイクロ波距離計が使用されている。
尚、非接触式の距離計14として、マイクロ波距離計に替えてレーザー距離計又は超音波距離計を使用するようにしても良い。
【0037】
演算装置15は、昇降装置7の位置検出手段7aからの検出信号、背圧検出器13からの検出信号及び非接触式の距離計14からの検出信号に基づいて溶融スラグ層Sの厚みL1及び溶融メタル層Mの厚みL2、溶融スラグレベルSL、溶融メタルレベルMLを夫々演算するものである。
【0038】
次に、上述したレベル測定装置1を用いて溶融スラグレベルSL及び溶融メタルレベルMLを測定する場合について説明する。
【0039】
図2に示す如く、液体(溶融スラグ及び溶融メタル)に気体(窒素ガス)を吹き込むと、液体の比重差と浸漬深さに応じて背圧が変化することが知られている。
従って、主電極4先端から不活性ガスG(窒素ガス)を噴出させながら、主電極4を昇降装置7により降下させると、炉内ガスと溶融スラグと溶融メタルの比重の差でガス層(炉本体3内の溶融スラグ層Sの上方空間)と溶融スラグ層Sと溶融メタル層Mでの不活性ガスGの背圧の増加率が変化する。この背圧の増加率が変化したときの主電極4先端の位置が境界面(ガス層と溶融スラグ層Sの境界面、溶融スラグ層Sと溶融メタル層Mの境界面)であり、境界面の炉本体3の炉底からの距離を溶融スラグレベルSL(溶融スラグ層Sの厚みL1と溶融メタル層Mの厚みL2の和に相当)及び溶融メタルレベルML(溶融メタル層Mの厚みL2に相当)とする。
【0040】
測定手順は、先ず、不活性ガスGを主電極4の中空孔4aを通してその先端から噴出させながら、主電極4先端が溶融スラグ層Sより上になるまで主電極4を昇降装置7により上昇させる。これは、ガス層(炉本体3内の溶融スラグ層Sの上方空間)では液層(溶融スラグ層S及び溶融メタル層M)より背圧の変化が小さいので、主電極4を一定距離だけ上昇させたときの背圧の変化が設定値より小さいことで確認する。
【0041】
次に、主電極4先端から不活性ガスGを噴出させながら、主電極4を昇降装置7により一定速度で降下させると共に、不活性ガスGの背圧を背圧検出器13により測定し、背圧の増加率の変化から主電極4先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極4の位置を昇降装置7の位置検出手段7aにより検出する。
【0042】
従って、溶融スラグ層Sの厚みL1は、溶融スラグ面から溶融メタル面までの主電極4の移動距離から算出することができる。このときの主電極4の移動距離は、背圧検出器13からの検出信号及び位置検出手段7aからの検出信号を演算装置15で演算処理することにより求められる。
【0043】
尚、背圧の増加率の変化点の判定は、図3に示す如く、背圧の変化率(mmAq/sec)が設定値を超えた点とする。又、背圧の生値ではバラツキが大きい場合、移動平均値の変化率で判定する。移動平均のサンプル数と主電極4の移動速度は、灰溶融炉2の試運転時に予め決定しておく。
【0044】
ところで、主電極4の下降時にレベル測定装置1により溶融スラグ面を判定した直後に背圧が安定しない時期があり、その時期に次の境界面である溶融メタル面を誤って判定することがある。その場合、主電極4が下降して溶融スラグ面を判定した後に、次の境界面である溶融メタル面を検出する際に待ち時間を設ける。即ち、レベル測定装置1に検出待ちタイマー(図示省略)を設け、背圧が安定してから測定するようにする。待ち時間は、灰溶融炉2の試運転時に予め決定しておく。
【0045】
そして、溶融メタル層Mの厚みL2は、非接触式の距離計14により当該距離計14から溶融スラグ面までの距離L3を測定し、この検出信号を演算装置15に入力してここで先に求められたデータを用いて演算処理することにより算出される。即ち、溶融メタル層Mの厚みL2は、距離計14から炉本体3の炉底までの距離L(この距離Lは一定であり、予め測定されている)から距離計14により測定した溶融スラグ面までの測定距離L3及び溶融スラグ層Sの厚みL1を引くことにより求められる。
【0046】
溶融スラグレベルSL及び溶融メタルレベルMLは、演算装置15で演算処理することにより求められる。即ち、溶融スラグレベルSLは、溶融スラグ層Sの厚みL1に溶融メタル層Mの厚みL2を足すことにより求められ、又、溶融メタルレベルMLは、溶融メタル層Mの厚みL2から求められる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るレベル測定装置を用いた灰溶融炉の概略縦断面図である。
【図2】主電極の位置(高さ)と背圧の関係を示す説明図である。
【図3】主電極位置、窒素背圧及び窒素背圧変化率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1はレベル測定装置、2は灰溶融炉、3は炉本体、4は主電極、4aは主電極の中空孔、7は主電極の昇降装置、8はガス供給装置、13は背圧検出器、14は非接触式の距離計、15は演算装置、Gは不活性ガス、Lは距離計から炉底までの距離、L1は溶融スラグ層の厚み、L2は溶融メタル層の厚み、L3は距離計から溶融スラグ面までの距離、SLは溶融スラグレベル、MLは溶融メタルレベル、Sは溶融スラグ層、Mは溶融メタル層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体の天井壁に昇降自在に設けた主電極の先端から炉本体内に不活性ガスを供給しつつ、炉内に投入した被溶融物を電気エネルギーにより溶融して炉本体内に溶融メタル層及び溶融スラグ層を形成する灰溶融炉に於いて、前記主電極を降下させながら炉本体内に供給している不活性ガスの背圧を測定し、背圧の増加率の変化から主電極先端が溶融スラグ面及び溶融メタル面にあるときの主電極の位置を検出すると共に、溶融スラグ面及び溶融メタル面の検出時に於ける主電極の位置から溶融スラグ層の厚みを算出し、又、炉本体に設けた非接触式の距離計により当該距離計から溶融スラグ面までの距離を測定し、前記溶融スラグ層の厚みと距離計による溶融スラグ面までの測定距離とから溶融メタル層の厚みを算出するようにしたことを特徴とする灰溶融炉のレベル測定方法。
【請求項2】
マイクロ波距離計、レーザー距離計又は超音波距離計により距離計から溶融スラグ面までの距離を測定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の灰溶融炉のレベル測定方法。
【請求項3】
炉本体の天井壁に昇降自在に設けられ、先端から不活性ガスを噴出する中空孔を備えた主電極と、主電極を支持して昇降させると共に、主電極を支持する位置を検出する位置検出手段を備えた昇降装置と、主電極の中空孔を介して炉本体内に不活性ガスを供給するガス供給装置と、不活性ガスの背圧を検出する背圧検出器と、炉本体の天井壁に設けられ、溶融スラグ面までの距離を測定する非接触式の距離計と、背圧検出器による背圧の増加率の変化及び昇降装置の位置検出手段により検出した主電極の位置並びに距離計により測定した溶融スラグ面までの測定距離から溶融スラグ層の厚み及び溶融メタル層の厚み、溶融スラグレベル、溶融メタルレベルを夫々演算する演算装置とから構成したことを特徴とする灰溶融炉のレベル測定装置。
【請求項4】
非接触式の距離計をマイクロ波距離計、レーザー距離計又は超音波距離計としたことを特徴とする請求項3に記載の灰溶融炉のレベル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−300010(P2009−300010A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155827(P2008−155827)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】