説明

無線通信装置

【課題】受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を十分に除去し得る無線通信装置を提供する。
【解決手段】キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル振幅制御部62と、受信信号入力端64iを選択的に終端させる受信信号終端部50と、信号強度を検出する信号強度検出部78と、その信号強度検出部78により検出される信号強度を記憶する記憶部82と、その記憶部82から読み出される複数種類の信号強度を比較する信号強度比較部80と、その信号強度比較部80による比較結果に基づきキャンセル信号の振幅、位相を制御するキャンセル信号制御部72とを、有することから、キャンセル振幅制御部62によりキャンセル信号を抑制することで受信信号の強度を正確に検出できる一方、受信信号終端部50により受信信号を終端させることでキャンセル信号の強度を正確に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側からの回り込み信号を抑制するためのキャンセル回路を有する無線通信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
送信用アンテナから所定の送信信号を送信する送信部と、その送信信号に応じて返信される返信信号を受信用アンテナにより受信する受信部とを、有する無線通信装置が知られている。例えば、所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムの無線タグ通信装置(質問器)がそれである。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
ところで、通常、上記無線タグ通信装置は、上記無線タグに向けて所定の送信信号(質問波)をアンテナから送信すると共に、その送信信号を受信した無線タグから返信される返信信号(応答波)をアンテナにより受信することでその無線タグとの間で情報の通信を行うが、その受信された返信信号に送信側からの強い回り込み信号(直接波)が混入して全体の受信信号強度が増大する場合がある。これにより、増幅器の許容入力強度を超えてしまうことから、受信信号を十分に増幅することができず、結果として無線タグからの返信信号成分を十分増幅することができないため、信号対雑音比が低下するという不具合があった。そこで、斯かる送信側からの回り込み信号を除去する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたキャリア位相雑音抑圧回路がそれである。この技術によれば、受信信号のキャリア成分と周波数、信号強度が同じで逆位相のキャンセル信号を発生させ、そのキャンセル信号を受信信号に加算して受信回路に入力することで、信号対雑音比の大きな信号が得られ、受信感度を向上させることができるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−62518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したような技術により受信信号に含まれる回り込み信号の除去を十分に行うためには、その受信信号及びキャンセル信号それぞれの信号強度を正確に検出する必要があるが、従来の回路ではそれらを好適に分離するのは困難であり、結果としてそれぞれの信号強度を正確に検出することができず、前記受信信号に含まれる回り込み信号を十分には除去できなかった。すなわち、受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を十分に除去し得る無線通信装置の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を十分に除去し得る無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、送信用アンテナから送信される送信信号の搬送波成分を分配する分配部と、その分配部により分配される搬送波成分の振幅を制御する振幅制御部と、その分配部により分配される搬送波成分の位相を制御する位相制御部と、前記搬送波成分から前記振幅制御部及び位相制御部を介して生成されるキャンセル信号を受信用アンテナにより受信される受信信号に加算するキャンセル信号合成部とを、備えた無線通信装置であって、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部と、前記受信用アンテナから前記キャンセル信号合成部への受信信号入力端を選択的に終端させる受信信号終端部と、前記キャンセル信号、受信信号、又はそれらの合成信号の強度を検出する信号強度検出部と、その信号強度検出部により検出される信号強度を記憶する記憶部と、その記憶部から読み出される複数種類の信号強度を相互に、或いはそれらと前記信号強度検出部により検出される信号強度とを比較する信号強度比較部と、その信号強度比較部による比較結果に基づき前記振幅制御部及び/又は位相制御部を介して前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御するキャンセル信号制御部とを、有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部と、前記受信用アンテナから前記キャンセル信号合成部への受信信号入力端を選択的に終端させる受信信号終端部と、前記キャンセル信号、受信信号、又はそれらの合成信号の強度を検出する信号強度検出部と、その信号強度検出部により検出される信号強度を記憶する記憶部と、その記憶部から読み出される複数種類の信号強度を相互に、或いはそれらと前記信号強度検出部により検出される信号強度とを比較する信号強度比較部と、その信号強度比較部による比較結果に基づき前記振幅制御部及び/又は位相制御部を介して前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御するキャンセル信号制御部とを、有することから、前記キャンセル信号供給抑制部によりキャンセル信号を抑制することで前記受信信号の強度を正確に検出できる一方、前記受信信号終端部により受信信号を終端させることで前記キャンセル信号の強度を正確に検出できる。すなわち、受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を十分に除去し得る無線通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記受信信号終端部は、前記受信用アンテナと受信信号入力端との間の回路を切り替える回路切替部と、その回路切替部に接続された終端抵抗とを、備えたものであり、前記回路切替部は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信信号入力端と終端抵抗とを接続するものである。このようにすれば、受信信号の終端に回路切替部を用いることで、受信時の信号経路と終端時の終端経路とを実用的な態様で切り替えられる。
【0010】
また、好適には、前記受信信号終端部は、前記回路切替部及び終端抵抗より前記受信用アンテナ側に、前記受信用アンテナとその回路切替部との間の回路を切り替える第2の回路切替部と、その第2の回路切替部に接続された第2の終端抵抗とを、備えたものであり、前記第2の回路切替部は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信用アンテナと第2の終端抵抗とを接続するものである。このようにすれば、前記受信用アンテナを終端抵抗に落とすことで、その受信用アンテナの状態を前記キャンセル信号の制御時と受信時とで同じものとすることができ、前記受信用アンテナにより受信される受信信号及びキャンセル信号それぞれの信号強度を更に正確に検出することができる。
【0011】
また、好適には、前記キャンセル信号供給抑制部は、前記受信信号の強度検出に際しては、前記振幅制御部からの出力が可及的に小さくなるように前記搬送波成分の振幅を制御するものである。このようにすれば、特に新しい構成を設けることなく前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を実用的な態様で抑制することができる。
【0012】
また、好適には、前記キャンセル信号供給抑制部は、前記振幅制御部とキャンセル信号入力端との間の回路を切り替える第3の回路切替部と、その第3の回路切替部に接続された第3の終端抵抗とを、備えたものであり、前記受信信号の強度検出に際しては、前記キャンセル信号入力端と第3の終端抵抗とを接続するものである。このようにすれば、前記第3の回路切替部を用いることで前記キャンセル信号入力端へのキャンセル信号の入力を可及的に抑制することができると共に、前記振幅制御部からの出力を可及的に小さくすることでキャンセル回路側への反射を抑えることができる。
【0013】
また、好適には、前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、別体のアンテナとしてそれぞれ個別に備えられたものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の制御に際しての送信側への影響を可及的に小さくできる。
【0014】
また、好適には、前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、送受信共用のアンテナとして一体的に備えられたものである。このようにすれば、装置の構成を可及的に簡単なものとすることができる。
【0015】
また、好適には、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、所定の通信対象との間で通信を行うために前記送信用アンテナから送信される送信信号よりも信号強度の小さな送信信号をその送信用アンテナから送信するものである。このようにすれば、無駄に大きな送信信号を送信するのを防止して省電力化を図れると共に、他局への影響を抑えられる。
【0016】
また、好適には、前記キャンセル信号制御部は、先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の強度が、前記記憶部に記憶された前記受信信号の強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅を制御し、更に、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除した状態で、前記信号強度検出部により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が可及的に小さくなるように前記キャンセル信号の位相を制御するものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の振幅及び位相を別々に制御することで、そのキャンセル信号の制御を容易に行うことができる。
【0017】
また、好適には、前記キャンセル信号制御部は、先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度が、前記記憶部に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御し、更に、前記キャンセル信号の位相が180°回転させられるように前記キャンセル信号の位相を制御した後、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除するものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の振幅及び位相を同時に制御することで、そのキャンセル信号の制御を比較的短時間で行うことができる。
【0018】
また、好適には、前記キャンセル信号制御部は、先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれが、前記記憶部に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しく且つ正負が反対となるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御した後、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除するものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の振幅及び位相を同時に制御すると共に位相の回転も不要とされることで、そのキャンセル信号の制御を可及的短時間で行うことができる。
【0019】
また、好適には、所定の通信対象への情報送信の実行に先行して前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記通信対象との通信前に受信状態を好適なものとすることができる。
【0020】
また、好適には、所定の通信対象への情報送信の実行中に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記通信対象から返信される返信信号の受信時に受信状態を好適なものとすることができる。
【0021】
また、好適には、前記送信信号の周波数を切り替える毎に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記送信信号の周波数に追従して変化する送信側からの回り込み信号を、その周波数の切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0022】
また、好適には、前記信号強度検出部により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が所定値以上になった場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の制御が必要とされるタイミングを好適に判定することができる。
【0023】
また、好適には、前記送信用アンテナとして、複数の送信用アンテナ素子から成るアレイアンテナと、各送信アンテナ素子へ伝達させる送信信号それぞれの位相を制御することで送信指向性を制御する送信位相制御部を備えたものであり、そのアレイアンテナの位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記アレイアンテナのウェイトに追従して変化する送信側からの回り込み信号を、そのウェイトの切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0024】
また、好適には、前記受信用アンテナとして、複数の受信用アンテナ素子から成るアレイアンテナと、各受信アンテナ素子へ伝達させる受信信号それぞれの位相を制御することで受信指向性を制御する受信位相制御部を備えたものであり、そのアレイアンテナの位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記アレイアンテナのウェイトに追従して変化する送信側からの回り込み信号を、そのウェイトの切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0025】
また、好適には、前記受信信号の復調部としてホモダイン検波回路を備えたものである。このようにすれば、送信側からの回り込み信号による影響が特に大きいホモダイン検波回路に関して、その送信側からの回り込み信号を好適に抑制することができる。
【0026】
また、好適には、前記無線通信装置は、無線タグに向けて所定の送信信号を送信用アンテナにより送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグから返信される返信信号を前記受信用アンテナにより受信することで前記無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置である。このようにすれば、送信側からの回り込み信号による影響が特に大きい無線タグ通信装置に関して、その送信側からの回り込み信号を好適に抑制することができる。
【0027】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明の無線通信装置が好適に用いられる無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の無線通信装置の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波F(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(送信データ)によりその質問波Fが変調され、応答波F(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。
【0029】
図2は、上記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子16の構成を説明する図である。この図2に示すように、斯かる無線タグ回路素子16は、前記無線タグ通信装置12との間で通信を行うためのアンテナ18と、そのアンテナ18に接続されて前記無線タグ通信装置12からの送信信号を処理するためのIC回路部20とを、備えて構成されている。そのIC回路部20は、上記アンテナ18により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fを整流する整流部22と、その整流部22により整流された質問波Fのエネルギを蓄積するための電源部24と、上記アンテナ18により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部32に供給するクロック抽出部26と、所定の情報信号を記憶し得る記憶部として機能するメモリ部28と、上記アンテナ18に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部30と、上記整流部22、クロック抽出部26、及び変復調部30等を介して上記無線タグ回路素子16の作動を制御するための制御部32とを、機能的に含んでいる。この制御部32は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部28に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ18により受信された質問波Fを上記変復調部30において上記メモリ部28に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Fとして上記アンテナ18から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0030】
図3は、前記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図3に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、前記無線タグ14に対する情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、斯かる無線タグ14への質問波Fにおける情報信号を出力させたり、その質問波Fの強度を制御したり、後述するキャンセル信号の位相及び/又は振幅の制御を行うというように前記無線タグ通信装置12の動作を統括的に制御する中央制御部34と、その中央制御部34から供給される制御信号に応じて所定の周波数及び強度を有する搬送波を発生させる搬送波発生部36と、その搬送波発生部36により発生させられた搬送波を第2分配部40と直交復調部54とに分配する第1分配器38と、その第1分配器38から供給された搬送波を送信アンプ42とキャンセル信号発生部46とに分配する第2分配器40と、その第2分配器40から供給された搬送波に上記中央制御部34から供給される情報信号(送信情報)を乗せて送信用アンテナ44から質問波Fとして前記無線タグ14に向け送信する送信アンプ42と、上記第2分配器40から供給される搬送波の位相及び/又は振幅を制御してキャンセル信号として出力させるキャンセル信号制御部46と、前記無線タグ14から返信される返信信号等を受信する受信用アンテナ48と、その受信用アンテナ48からキャンセル信号合成部52への受信信号入力端を選択的に終端させる受信信号終端部50と、上記受信用アンテナ48からその受信信号終端部50を介して供給される受信信号に上記キャンセル信号発生部46から供給されるキャンセル信号を加算するキャンセル信号合成部52と、上記キャンセル信号合成部52においてキャンセル信号が合成された受信信号を上記第1分配器38から供給される搬送波と乗算して同相成分(同相信号、I相成分)と直交成分(直交信号、Q相成分)とに変換して上記中央制御部34へ供給する直交復調部54と、その直交復調部54から出力された同相信号から不要な高調波成分を除去する第1低域通過フィルタ114と、その第1低域通過フィルタ114の出力をデジタル信号に変換する第1A/D変換部116と、上記直交復調部54から出力された直交信号から不要な高調波成分を除去する第2低域通過フィルタ118と、その第2低域通過フィルタ118の出力をデジタル信号に変換する第2A/D変換部120とを、備えて構成されている。
【0031】
上記キャンセル信号制御部46は、上記中央制御部34から供給されるキャンセル位相制御信号をアナログ変換するキャンセル位相制御信号D/A変換部56と、その中央制御部34から供給されるキャンセル振幅制御信号をアナログ変換するキャンセル振幅制御信号D/A変換部58と、上記キャンセル位相制御信号D/A変換部56を介して供給されるキャンセル位相制御信号に応じて上記第2分配器40により分配された搬送波(搬送波成分)の位相を制御する可変移相器であるキャンセル位相制御部60と、上記キャンセル振幅制御信号D/A変換部58を介して供給されるキャンセル振幅制御信号に応じて上記キャンセル位相制御部60から出力される位相制御された搬送波の振幅を制御する可変アッテネータであるキャンセル振幅制御部62とを、備えている。このように、前記無線タグ通信装置12では、上記第2分配器40が上記送信用アンテナ44から送信される送信信号の搬送波成分を分配する分配部として機能し、その第2分配器40により分配された搬送波の位相及び振幅が上記キャンセル位相制御部60及びキャンセル振幅制御部62により制御されてキャンセル信号として出力され、上記キャンセル信号合成部52において受信信号に加算される。
【0032】
前記受信信号終端部50は、前記受信用アンテナ48と受信信号入力端64iとの間の回路を切り替える回路切替部64と、その回路切替部64に接続された例えば50Ω程度の終端抵抗66とを、備えたものである。前記受信用アンテナ48及び終端抵抗66は、上記回路切替部64に並列的に接続されており、その回路切替部64の切り替えによりそれら受信用アンテナ48及び終端抵抗66が択一的に上記受信信号入力端64iに接続されるように構成されている。また、上記終端抵抗66における回路切替部64とは逆側の端部は接地されている。
【0033】
前記中央制御部34は、CPU、ROM、及びRAM等から成り、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータシステムであり、送信制御部68、キャンセル信号制御部72、信号強度検出部78、及び信号強度比較部80等の制御機能を備えている。また、RAMやハードディスク等の記憶部82を備えている。
【0034】
上記送信制御部68は、前記無線タグ14へ向けての質問波F(送信信号)の送信制御を行う。このために、その無線タグ14へ送信するための送信情報(情報信号)を出力する送信情報出力部70を含んでいる。前記無線タグ14との間の情報通信において、上記送信制御部68は、上記送信情報出力部70により所定の情報信号を出力させて前記送信アンプ42へ供給すると共に、前記搬送波発生部36から出力される搬送波の周波数及び強度等を制御する。また、上記送信情報出力部70から情報信号を出力させずに前記搬送波発生部36から搬送波のみを発生させることで、情報信号を含まない搬送波を前記送信用アンテナ44から出力させることもできる。
【0035】
前記キャンセル信号制御部72は、前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号を制御する。具体的には、前記キャンセル位相制御信号D/A変換部56を介して前記キャンセル位相制御部60に所定のキャンセル位相制御信号を供給することでキャンセル信号の位相を制御すると共に、前記キャンセル振幅制御信号D/A変換部58を介して前記キャンセル振幅制御部62に所定のキャンセル振幅制御信号を供給することでキャンセル信号の位相を制御する。また、このキャンセル信号の制御を好適に行うために、キャンセル信号供給抑制部として機能する前記キャンセル振幅制御部62を介してキャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制制御部74と、前記受信信号終端部50を介して前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを選択的に終端させる受信信号終端制御部76とを、含んでいる。
【0036】
上記キャンセル信号供給抑制制御部74は、具体的には、可変アッテネータである前記キャンセル振幅制御部62を介してキャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制する。すなわち、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるように前記キャンセル振幅制御信号を変化させることで前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制する一方、前記キャンセル振幅制御部62からの出力を必要十分な大きさとすることで前記キャンセル信号合成部52へキャンセル信号を供給する。すなわち、本実施例においては、前記キャンセル振幅制御部62が前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部として機能する。また、上記受信信号終端制御部76は、具体的には、前記回路切替部64により前記受信信号入力端64iと終端抵抗66とを接続することで前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを終端させる一方、前記回路切替部64により前記受信信号入力端64iと受信用アンテナ48とを接続することでその受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52へ受信信号が入力されるようにする。
【0037】
前記信号強度検出部78は、前記中央制御部34に入力される信号強度を検出する。具体的には、前記キャンセル信号発生部46により発生させられたキャンセル信号、前記受信用アンテナ48により受信された受信信号、又は前記キャンセル信号合成部52において合成されたそれらキャンセル信号及び受信信号の合成信号の強度を検出する。なお、本実施例の無線タグ通信装置12において、前記中央制御部34に入力される信号は何れも前記直交復調部54により同相信号及び直交信号に変換されたものになるので、前記信号強度検出部78は、その直交復調部54により同相信号及び直交信号に変換された信号乃至は復調結果の強度を検出する。この検出の態様としては、同相信号及び直交信号それぞれの強度を検出するものであってもよいし、信号そのものの強度として同相信号及び直交信号それぞれの二乗の和を検出するものであってもよい。また、前記記憶部82には、前記信号強度検出部78により検出される複数種類の信号強度が記憶されるようになっており、前記信号強度比較部80は、その記憶部82から読み出される複数種類の信号強度を比較してその比較の結果を前記キャンセル信号制御部72へ供給する。
【0038】
また、前記キャンセル信号供給抑制制御部74は、好適には、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の強度検出に際して前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑圧する。すなわち、前記信号強度検出部78により前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の信号強度が検出される場合には、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるように前記キャンセル信号の振幅を制御する。このようにすることで、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができる。
【0039】
また、前記受信信号終端制御部76は、好適には、前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号の強度検出に際して前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを終端させる。すなわち、前記信号強度検出部78により前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号の信号強度が検出される場合には、前記受信信号入力端64iと終端抵抗66とを接続するように前記回路切替部64を制御する。このようにすることで、前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号の強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができる。
【0040】
また、前記送信制御部68は、好適には、前記キャンセル信号の制御における受信信号及びキャンセル信号の強度検出に際しては、前記無線タグ14との間で通信を行うために前記送信用アンテナ44から送信される送信信号よりも信号強度の小さな送信信号をその送信用アンテナ44から送信する。前記キャンセル信号の制御では、前記受信用アンテナ44により受信される受信信号すなわち送信側からの回り込み信号とキャンセル信号とをそれぞれ検出して比較できればよいので、前記無線タグ14に応答波Frを返信させるのに足るような比較的大きな送信信号を出力させる必要はなく、その無線タグ14との間で通信を行うために用いられるものより小さな搬送波で足りるのである。
【0041】
また、前記キャンセル信号制御部72は、前記信号強度比較部80による比較結果に基づいて前記キャンセル信号の位相及び/又は振幅を制御する。すなわち、前記記憶部82に記憶された複数種類の信号強度を相互に、乃至はそれらと前記信号強度検出部78により検出された信号強度とを比較することで前記キャンセル位相制御部60へ供給するキャンセル位相制御信号及び/又は前記キャンセル振幅制御部62へ供給するキャンセル振幅制御信号を変化させる。以下、前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御について3つの態様をそれぞれ説明する。
【0042】
第1の制御態様では、先ず、前記キャンセル信号供給抑制制御部74により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で前記送信制御部68により前記送信用アンテナ44から送信信号を出力させ、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の強度(同相成分及び直交成分それぞれの二乗の和)を前記信号強度検出部78により検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させる。このようにすることで、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができる。この受信信号の強度は、送信側からの回り込み信号の強度に略等しいものである。次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し(すなわち必要十分な大きさに戻し)且つ前記受信信号終端制御部76により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で前記送信制御部68により前記搬送波発生部36から搬送波を発生させ、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の強度(同相成分及び直交成分それぞれの二乗の和)が、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅を制御する。このようにすることで、前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号の強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができ、そのキャンセル信号の強度が前記記憶部82に記憶された前記受信信号の強度すなわち送信側からの回り込み信号の強度と略等しくなるようにそのキャンセル信号の振幅を制御できる。そして、前記受信信号終端制御部76による前記受信信号入力端64iの終端を解除した状態で前記送信制御部68により前記送信用アンテナ44から送信信号を出力させ、前記信号強度検出部78により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が可及的に小さくなるように前記キャンセル信号の位相を制御する。このようにすることで、前記送信側からの回り込み信号を最大限抑圧するように前記キャンセル信号の位相が制御される。
【0043】
第2の制御態様では、先ず、前記キャンセル信号供給抑制制御部74により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で前記送信制御部68により前記送信用アンテナ44から送信信号を出力させ、前記直交復調部54から出力される受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を前記信号強度検出部78により検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させる。このようにすることで、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができる。次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端制御部76により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で前記送信制御部68により前記搬送波発生部36から搬送波を発生させ、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度が、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しくなるように前記キャンセル位相制御部60及びキャンセル振幅制御部62を介してキャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御する。このようにすることで、前記キャンセル信号発生部46により発生させられるキャンセル信号の強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができ、そのキャンセル信号が前記記憶部82に記憶された前記受信信号すなわち送信側からの回り込み信号と略等しくなるようにそのキャンセル信号の位相及び/又は振幅を制御できる。そして、前記キャンセル信号の位相が180°回転させられるように前記キャンセル位相制御部60を介して前記キャンセル信号の位相を制御した後、前記受信信号終端制御部76による前記受信信号入力端64iの終端を解除する。このようにすることで、前記送信側からの回り込み信号を最大限抑圧するように前記キャンセル信号を制御できる。
【0044】
第3の制御態様では、先ず、前記キャンセル信号供給抑制制御部74により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で前記送信制御部68により前記送信用アンテナ44から送信信号を出力させ、前記直交復調部54から出力される受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を前記信号強度検出部78により検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させる。このようにすることで、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を前記信号強度検出部78により正確に検出することができる。次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端制御部76により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で前記送信制御部68により前記搬送波発生部36から搬送波を発生させ、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれが、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しく且つ正負が反対となるように前記キャンセル位相制御部60及び/又はキャンセル振幅制御部62を介してキャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御した後、前記受信信号終端制御部部76による前記受信信号入力端64iの終端を解除する。このようにすることで、前記送信側からの回り込み信号を最大限抑圧するように前記キャンセル信号を制御できる。
【0045】
以上、前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号制御(キャンセル回路制御)について説明したが、この制御タイミングとしては、(a)通信対象である前記無線タグ14への情報送信の実行に先行して好適にはその直前に行う、(b)通信対象である前記無線タグ14への情報送信の実行中に行う、(c)前記送信制御部68により送信信号(搬送波)の周波数を切り替える毎に行う、(d)前記信号強度検出部78により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が所定値以上になった場合に行う等、種々の態様が考えられる。(a)の態様では、前記無線タグ14への情報送信の実行に先行してキャンセル信号の制御を行うことで、その無線タグ14との通信前に受信状態を好適なものとすることができる。また、(b)の態様では、前記無線タグ14への情報送信の実行中にキャンセル信号の制御を行うことで、その無線タグ14から返信される返信信号の受信時に受信状態を好適なものとすることができる。また、(c)の態様では、前記送信信号の周波数を切り替える毎にキャンセル信号の制御を行うことで、その送信信号の周波数に追従して変化する送信側からの回り込み信号を、その周波数の切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。また、(d)の態様では、前記信号強度検出部78により検出される合成信号の強度が所定値以上になった場合にキャンセル信号の制御を行うことで、そのキャンセル信号が送信側からの回り込み信号を十分に抑圧できなくなったことが判定された場合にその制御を行うことができる。
【0046】
このように、本実施例によれば、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部として機能するキャンセル振幅制御部62と、前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを選択的に終端させる受信信号終端部50と、前記キャンセル信号、受信信号、又はそれらの合成信号の強度を検出する信号強度検出部78と、その信号強度検出部78により検出される信号強度を記憶する記憶部82と、その記憶部82から読み出される複数種類の信号強度を相互に、或いはそれらと前記信号強度検出部78により検出された信号強度とを比較する信号強度比較部80と、その信号強度比較部80による比較結果に基づき前記キャンセル振幅制御部62及び/又はキャンセル位相制御部60を介して前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御するキャンセル信号制御部72とを、有することから、前記キャンセル信号供給抑制部によりキャンセル信号を抑制することで前記受信信号の強度を正確に検出できる一方、前記受信信号終端部50により受信信号を終端させることで前記キャンセル信号の強度を正確に検出できる。すなわち、受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を十分に除去し得る無線通信装置を提供することができる
【0047】
また、前記受信信号終端部50は、前記受信用アンテナ48と受信信号入力端64iとの間の回路を切り替える回路切替部64と、その回路切替部64に接続された終端抵抗66とを、備えたものであり、前記回路切替部64は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信信号入力端64iと終端抵抗66とを接続するものであるため、受信信号の終端に回路切替部64を用いることで、受信時の信号経路と終端時の終端経路とを実用的な態様で切り替えられる。
【0048】
また、前記キャンセル信号供給抑制制御部76は、前記受信信号の強度検出に際しては、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるように前記搬送波成分の振幅を制御するものであるため、特に新しい構成を設けることなく前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を実用的な態様で抑制することができる。
【0049】
また、前記送信用アンテナ44と受信用アンテナ48とは、別体のアンテナとしてそれぞれ個別に備えられたものであるため、前記キャンセル信号の制御に際しての送信側への影響を可及的に小さくできる。
【0050】
また、前記送信制御部68は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、通信対象である前記無線タグ14との間で通信を行うために前記送信用アンテナ44から送信される送信信号よりも信号強度の小さな送信信号をその送信用アンテナ44から送信するものであるため、無駄に大きな送信信号を送信するのを防止して省電力化を図れると共に、他局への影響を抑えられる。
【0051】
また、前記キャンセル信号制御部72は、先ず、前記キャンセル振幅制御部62により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部78により前記受信信号の強度を検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部50により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の強度が、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅を制御し、更に、前記受信信号終端部50による前記受信信号入力端64iの終端を解除した状態で、前記信号強度検出部78により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が可及的に小さくなるように前記キャンセル信号の位相を制御するものであるため、前記キャンセル信号の振幅及び位相を別々に制御することで、そのキャンセル信号の制御を容易に行うことができる。
【0052】
また、前記キャンセル信号制御部72は、先ず、前記キャンセル振幅制御部62により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部78により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部50により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度が、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御し、更に、前記キャンセル信号の位相が180°回転させられるように前記キャンセル信号の位相を制御した後、前記受信信号終端部50による前記受信信号入力端64iの終端を解除するものであるため、前記キャンセル信号の振幅及び位相を同時に制御することで、そのキャンセル信号の制御を比較的短時間で行うことができる。
【0053】
また、前記キャンセル信号制御部72は、先ず、前記キャンセル振幅制御部62により前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部78により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部82に記憶させ、次に、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部50により前記受信信号入力端64iを終端させた状態で、前記信号強度検出部78により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれが、前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しく且つ正負が反対となるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御した後、前記受信信号終端部50による前記受信信号入力端64iの終端を解除するものであるため、前記キャンセル信号の振幅及び位相を同時に制御すると共に位相の回転も不要とされることで、そのキャンセル信号の制御を可及的短時間で行うことができる。
【0054】
また、通信対象である前記無線タグ14への情報送信の実行に先行して前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものであるため、その無線タグ14との通信前に受信状態を好適なものとすることができる。
【0055】
また、通信対象である前記無線タグ14への情報送信の実行中に前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものであるため、その無線タグ14から返信される返信信号の受信時に受信状態を好適なものとすることができる。
【0056】
また、前記送信信号の周波数を切り替える毎に前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものであるため、前記送信信号の周波数に追従して変化する送信側からの回り込み信号を、その周波数の切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0057】
また、前記信号強度検出部78により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が所定値以上になった場合に前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものである。このようにすれば、前記キャンセル信号の制御が必要とされるタイミングを好適に判定することができる。
【0058】
また、前記受信信号の復調部として直交復調部54を含むホモダイン検波回路を備えたものであるため、送信側からの回り込み信号による影響が特に大きいホモダイン検波回路に関して、その送信側からの回り込み信号を好適に抑制することができる。
【0059】
また、好適には、前記無線通信装置は、無線タグ14に向けて所定の送信信号を送信用アンテナ44により送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグ14から返信される返信信号を前記受信用アンテナ48により受信することで前記無線タグ14との間で情報の通信を行う無線タグ通信装置12であるため、送信側からの回り込み信号による影響が特に大きい無線タグ通信装置12に関して、その送信側からの回り込み信号を好適に抑制することができる。
【0060】
続いて、本発明の無線通信装置の他の好適な態様を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図4は、本発明の無線通信装置の他の実施例である無線タグ通信装置84の構成を説明する図である。この図4に示すように、本実施例の無線タグ通信装置84は、前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを選択的に終端させる受信信号終端部86を備えている。この受信信号終端部86は、前述した受信信号終端部50に備えられていた回路切替部64及び終端抵抗66に加え、その回路切替部64及び終端抵抗66より前記受信用アンテナ48側に、その受信用アンテナ48とその回路切替部64との間の回路を切り替える第2の回路切替部88と、その第2の回路切替部88に接続された例えば50Ω程度の第2の終端抵抗90とを、備えたものである。前記回路切替部64及び第2の終端抵抗90は、上記第2の回路切替部88に並列的に接続されており、その第2の回路切替部88の切り替えによりそれら回路切替部64及び第2の終端抵抗90が択一的に前記受信アンテナ48(直接接続されなくともよい)に接続されるように構成されている。また、上記第2の終端抵抗90における第2の回路切替部88とは逆側の端部は接地されている。また、前記中央制御部34に備えられた受信信号終端制御部76は、前記回路切替部64により前記受信信号入力端64iと終端抵抗66とを接続すると共に上記第2の回路切替部88により前記受信アンテナ48と第2の終端抵抗90とを接続することでその受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを終端させる一方、前記回路切替部64により前記受信信号入力端64iと受信用アンテナ48とを接続すると共に前記第2の回路切替部64により前記受信用アンテナ48と回路切替部64とを接続することでその受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52へ受信信号が入力されるようにする。前記受信信号終端部86により回路を終端させるタイミングは前述した実施例と同様であり、前記キャンセル信号の強度検出等に際して前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを終端させる。
【0062】
このように、本実施例によれば、前記受信信号終端部86は、前記回路切替部64及び終端抵抗66より前記受信用アンテナ48側に、その受信用アンテナ48とその回路切替部64との間の回路を切り替える第2の回路切替部88と、その第2の回路切替部88に接続された第2の終端抵抗90とを、備えたものであり、前記第2の回路切替部88は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信用アンテナ48と第2の終端抵抗90とを接続するものであるため、その受信用アンテナ48を第2の終端抵抗90に落とすことで、その受信用アンテナ48の状態を前記キャンセル信号の制御時と受信時とで同じものとすることができ、前記受信用アンテナ48により受信される受信信号及びキャンセル信号それぞれの信号強度を更に正確に検出することができる。
【0063】
図5は、本発明の無線通信装置の更に別の実施例である無線タグ通信装置92の構成を説明する図である。この図5に示すように、本実施例の無線タグ通信装置92は、前記キャンセル振幅制御部62とキャンセル信号入力端94iとの間の回路を切り替える第3の回路切替部94と、その第3の回路切替部94に接続された例えば50Ω程度の第3の終端抵抗96とを、備えている。前記キャンセル振幅制御部62及び第3の終端抵抗96は、上記第3の回路切替部94に並列的に接続されており、その第3の回路切替部94の切り替えによりそれらキャンセル振幅制御部62及び第3の終端抵抗96が択一的に上記キャンセル信号入力端94iに接続されるように構成されている。また、上記第3の終端抵抗96における第3の回路切替部94とは逆側の端部は接地されている。この第3の回路切替部94及び第3の終端抵抗96は、前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部の一部として機能するものであり、その第3の回路切替部94は前記キャンセル信号供給抑制制御部74からの制御信号に応じて切り替えられる。すなわち、前記中央制御部34に備えられたキャンセル信号供給抑制制御部74は、前記第3の回路切替部94により前記キャンセル信号入力端94iと第3の終端抵抗96とを接続することで前記キャンセル信号発生部46から前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号入力端94iを終端させてそのキャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制する一方、前記第3の回路切替部94により前記キャンセル振幅制御部62とキャンセル信号入力端94iとを接続することで前記キャンセル信号発生部46から前記キャンセル信号合成部52へキャンセル信号が入力されるようにする。前記キャンセル信号合成部52へのキャンセル信号の供給を抑制するタイミングは前述した実施例と同様であり、前記受信用アンテナ48により受信された受信信号の強度検出等に際して前記キャンセル信号発生部48により発生させられるキャンセル信号の前記キャンセル信号合成部52への供給を抑制するように前記第3の回路切替部94を切り替える。また、このキャンセル信号の抑制に際して、好適には、前述の実施例と同様に、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるようにそのキャンセル振幅制御部62へ供給されるキャンセル振幅制御信号を制御する。
【0064】
このように、本実施例によれば、前記キャンセル信号供給抑制部は、前記キャンセル振幅制御部62とキャンセル信号入力端94iとの間の回路を切り替える第3の回路切替部94と、その第3の回路切替部94に接続された第3の終端抵抗96とを、備えたものであり、前記受信信号の強度検出に際しては、前記キャンセル信号入力端94iと第3の終端抵抗96とを接続するものであるため、前記第3の回路切替部94を用いることで前記キャンセル信号入力端94iへのキャンセル信号の入力を可及的に抑制することができると共に、前記キャンセル振幅制御部62からの出力を可及的に小さくすることでキャンセル回路側への反射を抑えることができる。
【0065】
図6は、本発明の無線通信装置の更に別の実施例である無線タグ通信装置98の構成を説明する図である。この図6に示すように、本実施例の無線タグ通信装置98は、複数(図6では2つ)のアンテナ素子102a、102bから成る送受信共用のアレイアンテナ100と、前記送信アンプ42から出力される送信信号を上記アンテナ素子102a、102bへそれぞれ供給すると共にそれらアンテナ素子102a、102bにより受信された受信信号を受信信号合成部106へそれぞれ供給する複数(図6では2つ)の送受信分離部104a、104bと、それら送受信分離部104a、104bを介して供給される上記アンテナ素子102a、102bにそれぞれ対応する受信信号を合成して前記受信信号終端部86へ入力する受信信号合成部106とを、備えて構成されている。また、前記中央制御部34から供給される位相制御信号に応じて各アンテナ素子102a、102bに対応する送信信号及び/又は受信信号の位相をそれぞれ制御する送受信共用の位相制御部108a、108bが設けられており、前記中央制御部34には、それら位相制御部108a、108bへ位相制御信号を供給することにより上記アレイアンテナ100の送信指向性及び/又は受信指向性を制御する指向性制御部110が機能的に備えられている。また、その指向性制御部110から出力される位相制御信号をアナログ変換して上記位相制御部108a、108bへ供給する複数(図6では2つ)の位相制御信号D/A変換部112a、112bが備えられている。本実施例の無線タグ通信装置98において、前記キャンセル信号制御部72は、上記指向性制御部110により上記アレイアンテナ100の位相を変更した場合に前述したキャンセル信号の制御を行うものである。送信側からの回り込み信号は、上記アレイアンテナ100の位相に追従して変化するため、このようにすることで、必要に応じて前記キャンセル信号を好適化することができる。
【0066】
このように、本実施例によれば、送信用アンテナとして、複数のアンテナ素子102a、102bから成るアレイアンテナ100と、各アンテナ素子102a、102bへ伝達させる送信信号それぞれの位相を制御することで送信指向性を制御する位相制御部108a、108bを備えたものであり、そのアレイアンテナ100の位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものであるため、上記アレイアンテナ100のウェイトに追従して変化する送信側からの回り込み信号を、そのウェイトの切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0067】
また、受信用アンテナとして、複数のアンテナ素子102a、102bから成るアレイアンテナ100と、各アンテナ素子102a、102bへ伝達させる受信信号それぞれの位相を制御することで受信指向性を制御する位相制御部108a、108bを備えたものであり、そのアレイアンテナ100の位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部72によるキャンセル信号の制御を行うものであるため、前記アレイアンテナ100のウェイトに追従して変化する送信側からの回り込み信号を、そのウェイトの切替毎に設定されるキャンセル信号により好適に抑制することができる。
【0068】
また、前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、送受信共用のアレイアンテナ100として一体的に備えられたものであるため、装置の構成を可及的に簡単なものとすることができる。
【0069】
続いて、前述した無線タグ通信装置12、84、92、98の中央制御部34によるキャンセル回路制御を、図7乃至図10のフローチャートを用いて説明する。なお、以下に詳述する図7乃至図10のフローチャートにより示されるキャンセル回路制御(キャンセル信号制御)は、前述した無線タグ通信装置12、84、92、98の何れにも適用することができる。なお、図7乃至図8の制御が前記無線タグ通信装置12の説明において例示した第1の制御態様に、図9の制御が第2の制御態様に、図10の制御が第3の制御態様にそれぞれ相当する。
【0070】
図7乃至図8は、前記中央制御部34によるキャンセル回路制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御では、先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記送信制御部68により送信信号(搬送波)の周波数が切り替えられたり、前記信号強度検出部78により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が所定値以上になる等して、キャンセル回路制御の開始条件が成立したか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるように前記キャンセル振幅制御信号を制御する等してキャンセル信号カット手段がオンとされる。次に、S3において、前記受信用アンテナ48又はアレイアンテナ100により受信された受信信号の信号強度が検出される。次に、S4において、S3にて検出された受信信号の信号強度が前記記憶部82に記憶される。次に、S5において、前記キャンセル振幅制御部62からの出力が必要十分な大きさとなるように前記キャンセル振幅制御信号を制御する等してキャンセル信号カット手段がオフとされる。次に、S6において、前記受信信号終端部50又は86において前記受信用アンテナ48又はアレイアンテナ100から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iが終端される等して受信信号終端手段がオンとされる。次に、S7において、前記キャンセル信号発生部46により発生させられたキャンセル信号の信号強度が検出される。次に、S8において、S7にて検出されたキャンセル信号の信号強度とS4にて前記記憶部82に記憶された受信信号の信号強度とが比較される。次に、S9において、S8の比較においてS7にて検出されたキャンセル信号の信号強度の方が大きかったか否かが判断される。このS8の判断が肯定される場合には、S10において、前記キャンセル振幅制御部62から出力されるキャンセル信号の振幅をその時点における振幅より小さくするように前記キャンセル振幅制御信号が制御された後、S7以下の処理が再び実行されるが、S9の判断が否定される場合には、S11において、S8の比較においてS7にて検出されたキャンセル信号の信号強度の方が小さかったか否かが判断される。このS11の判断が肯定される場合には、S12において、前記キャンセル振幅制御部62から出力されるキャンセル信号の振幅をその時点における振幅より大きくするように前記キャンセル振幅制御信号が制御された後、S7以下の処理が再び実行されるが、S11の判断が否定される場合には、図8に示すS13以下の処理が実行される。
【0071】
上述したS11の処理に続くS13において、前記受信信号終端部50又は86において前記受信用アンテナ48又はアレイアンテナ100から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iがそれら受信用アンテナ48又はアレイアンテナ100に接続される等して受信信号終端手段がオフとされる。次に、S14において、Pフラグ(P_Flag)が零とされる。次に、S15において、前記キャンセル信号合成部52において合成された受信信号とキャンセル信号との合成信号の信号強度が検出される。次に、S16において、S15にて検出された合成信号の信号強度が前記記憶部82に記憶される。次に、S22において、前記キャンセル位相制御部60においてキャンセル信号の位相を所定値だけ進めるように前記キャンセル位相制御信号が制御される。次に、S17において、前記キャンセル信号合成部52において合成された受信信号とキャンセル信号との合成信号の信号強度が検出される。次に、S18において、S17にて検出された合成信号の信号強度とS16にて前記記憶部82に記憶された合成信号の信号強度とが比較される。次に、S19において、S18の比較においてS17にて検出された合成信号の信号強度の方が小さかったか否かが判断される。このS19の判断が否定される場合には、S23以下の処理が実行されるが、S19の判断が肯定される場合には、S20において、S17にて検出された合成信号の信号強度が前記記憶部82に記憶される。次に、S21において、Pフラグ(P_Flag)が1とされた後、S22以下の処理が実行される。S23の処理では、S18の比較においてS17にて検出された合成信号の信号強度の方が大きかったか否かが判断される。このS23の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S23の判断が肯定される場合には、S24において、S17にて検出された合成信号の信号強度が前記記憶部82に記憶される。次に、S25において、Pフラグ(P_Flag)が零とされた後、S22以下の処理が実行される。以上の制御において、S1乃至S25が前記キャンセル信号制御部72の動作に、S2及びS5が前記キャンセル信号供給抑制制御部74の動作に、S6及びS13が前記受信信号終端制御部76の動作に、S3、S7、S15、及びS17が前記信号強度検出部78の動作に、S8及びS18が前記信号強度比較部80の動作にそれぞれ対応する。
【0072】
図9は、前記中央制御部34によるキャンセル回路制御の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図9に示す制御において、前述した図7乃至図8に示す制御と共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この図9に示す制御では、前述したS2の処理に続くS27において、前記受信用アンテナ48から前記直交復調部54を介して供給される受信信号の同相成分(I相成分)及び直交成分(Q相成分)それぞれの信号強度が検出される。次に、S28において、S27にて検出された受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度が前記記憶部82に記憶される。次に、前述したS5乃至S6の処理が実行された後、S29において、前記キャンセル信号発生部48から前記直交復調部54を介して供給されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度が検出される。次に、前記信号強度比較部80の動作に対応するS30において、S29にて検出されたキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度とS28にて前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度と比較される。次に、S31において、S30の比較の結果、S29にて検出されたキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度とS28にて前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度とが等しいか否かが判断される。このS31の判断が否定される場合には、S32において、前記キャンセル位相制御信号、キャンセル振幅制御信号が制御されることで前記キャンセル位相制御部60、キャンセル振幅制御部62を介して前記キャンセル信号の位相、振幅が変更された後、S29以下の処理が再び実行されるが、S31の判断が肯定される場合には、前述したS13の処理が実行された後、S33において、前記キャンセル位相制御部60における位相が180°回された(進められた)後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1、S2、S5、S6、S13、S27乃至S33が前記キャンセル信号制御部72の動作に、S27及びS29が前記信号強度検出部78の動作にそれぞれ対応する。
【0073】
図10は、前記中央制御部34によるキャンセル回路制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図10に示す制御において、前述した図7乃至図9に示す制御と共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この図10に示す制御では、前述したS27の処理に続くS34において、S27にて検出された受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度の正負の符号を逆にした値が前記記憶部82に記憶される。次に、前述したS5、S6、S29の処理が実行された後、前記信号強度比較部80の動作に対応するS35において、S29にて検出されたキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度とS28にて前記記憶部82に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの信号強度(正負の符号を逆にした値)と比較される。そして、前述したS31以下の処理が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0075】
例えば、前述の実施例において、前記キャンセル信号制御部72、信号強度検出部78、信号強度比較部80、及び記憶部82等は、前記中央制御部34の制御機能として備えられたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらと同等の機能を有する制御装置が前記中央制御部34とは別体として設けられてもよい。また、前記キャンセル信号発生部46、キャンセル信号合成部52、及び直交復調部54等は前記中央制御部34とは別体の制御装置として設けられていたが、それらと同等の機能が前記中央制御部34の制御機能として備えられたものであっても構わない。また、それらの制御機能による処理は、デジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
【0076】
また、前述の実施例では、前記キャンセル振幅制御部62をキャンセル信号供給抑制部として、キャンセル信号の供給抑制に際してはそのキャンセル振幅制御部62からの出力が可及的に小さくなるように前記搬送波成分の振幅を制御するものであったが、キャンセル信号供給抑制部としては他にも種々の態様が考えられ、例えば前述した図5に示す第3の回路切替部94のようにスイッチの切替をもってキャンセル信号の供給を抑制するものであってもよい。また、前述の実施例では、前記回路切替部64等のスイッチの切替をもって前記受信用アンテナ48から前記キャンセル信号合成部52への受信信号入力端64iを選択的に終端させる例を説明したが、受信信号終端部の構成としても同様に種々の態様が考えられる。
【0077】
また、前述の実施例の無線タグ通信装置12等では、前記送信用アンテナ44と受信用アンテナ48とが別体のアンテナとしてそれぞれ個別に備えられたものであったが、送受信共用のアンテナを一体的に備えたものであってもよい。このようにすれば、装置の構成を可及的に簡単なものとすることができるという利点がある。また、前記無線タグ通信装置98に送信用アレイアンテナ及び受信用アレイアンテナがそれぞれ個別に設けられた態様も考えられる。
【0078】
また、図3に示す無線タグ通信装置12に図5に示す第3の回路切替部94及び第3の終端抵抗96を適用する構成や、図3に示す無線タグ通信装置12又は図4に示す無線タグ通信装置84に図6に示すアレイアンテナ100及び指向性制御部110等を適用する構成等、前述した実施例の構成は共通の装置に対して必要に応じて同時に適用され得るものである。
【0079】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の無線通信装置が好適に用いられる無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本発明の無線通信装置の通信対象である無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図3】本発明の無線通信装置の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図4】本発明の無線通信装置の他の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図5】本発明の無線通信装置の更に別の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図6】本発明の無線通信装置の更に別の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図7】図3乃至図6の何れかの無線タグ通信装置の中央制御部によるキャンセル回路制御の要部を説明するフローチャートの一部である。
【図8】図3乃至図6の何れかの無線タグ通信装置の中央制御部によるキャンセル回路制御の要部を説明するフローチャートの一部である。
【図9】図3乃至図6の何れかの無線タグ通信装置の中央制御部によるキャンセル回路制御の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図10】図3乃至図6の何れかの無線タグ通信装置の中央制御部によるキャンセル回路制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
12、84、92、98:無線タグ通信装置(無線通信装置)
14:無線タグ(通信対象)
40:第2分配器(分配部)
44:送信用アンテナ
48:受信用アンテナ
50、86:受信信号終端部
52:キャンセル信号合成部
60:キャンセル位相制御部
62:キャンセル振幅制御部(キャンセル信号供給抑制部)
64:回路切替部
64i:受信信号入力端
66:終端抵抗
72:キャンセル信号制御部
78:信号強度検出部
80:信号強度比較部
82:記憶部
88:第2の回路切替部
90:第2の終端抵抗
94:第3の回路切替部
94i:キャンセル信号入力端
96:第3の終端抵抗
100:アレイアンテナ
102:アンテナ素子
108:位相制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信用アンテナから送信される送信信号の搬送波成分を分配する分配部と、
該分配部により分配される搬送波成分の振幅を制御する振幅制御部と、
該分配部により分配される搬送波成分の位相を制御する位相制御部と、
前記搬送波成分から前記振幅制御部及び位相制御部を介して生成されるキャンセル信号を受信用アンテナにより受信される受信信号に加算するキャンセル信号合成部と
を、備えた無線通信装置であって、
前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を選択的に抑制するキャンセル信号供給抑制部と、
前記受信用アンテナから前記キャンセル信号合成部への受信信号入力端を選択的に終端させる受信信号終端部と、
前記キャンセル信号、受信信号、又はそれらの合成信号の強度を検出する信号強度検出部と、
該信号強度検出部により検出される信号強度を記憶する記憶部と、
該記憶部から読み出される複数種類の信号強度を相互に、或いはそれらと前記信号強度検出部により検出される信号強度とを比較する信号強度比較部と、
該信号強度比較部による比較結果に基づき前記振幅制御部及び/又は位相制御部を介して前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御するキャンセル信号制御部と
を、有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信信号終端部は、前記受信用アンテナと受信信号入力端との間の回路を切り替える回路切替部と、該回路切替部に接続された終端抵抗とを、備えたものであり、前記回路切替部は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信信号入力端と終端抵抗とを接続するものである請求項1の無線通信装置。
【請求項3】
前記受信信号終端部は、前記回路切替部及び終端抵抗より前記受信用アンテナ側に、前記受信用アンテナと該回路切替部との間の回路を切り替える第2の回路切替部と、該第2の回路切替部に接続された第2の終端抵抗とを、備えたものであり、前記第2の回路切替部は、前記キャンセル信号の強度検出に際しては、前記受信用アンテナと第2の終端抵抗とを接続するものである請求項2の無線通信装置。
【請求項4】
前記キャンセル信号供給抑制部は、前記受信信号の強度検出に際しては、前記振幅制御部からの出力が可及的に小さくなるように前記搬送波成分の振幅を制御するものである請求項1から3の何れかの無線通信装置。
【請求項5】
前記キャンセル信号供給抑制部は、前記振幅制御部とキャンセル信号入力端との間の回路を切り替える第3の回路切替部と、該第3の回路切替部に接続された第3の終端抵抗とを、備えたものであり、前記受信信号の強度検出に際しては、前記キャンセル信号入力端と第3の終端抵抗とを接続するものである請求項1から4の何れかの無線通信装置。
【請求項6】
前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、別体のアンテナとしてそれぞれ個別に備えられたものである請求項1から5の何れかの無線通信装置。
【請求項7】
前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、送受信共用のアンテナとして一体的に備えられたものである請求項1から5の何れかの無線通信装置。
【請求項8】
前記キャンセル信号の強度検出に際しては、所定の通信対象との間で通信を行うために前記送信用アンテナから送信される送信信号よりも信号強度の小さな送信信号を該送信用アンテナから送信するものである請求項1から7の何れかの無線通信装置。
【請求項9】
前記キャンセル信号制御部は、
先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、
次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の強度が、前記記憶部に記憶された前記受信信号の強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅を制御し、
更に、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除した状態で、前記信号強度検出部により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が可及的に小さくなるように前記キャンセル信号の位相を制御するものである請求項1から8の何れかの無線通信装置。
【請求項10】
前記キャンセル信号制御部は、
先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、
次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度が、前記記憶部に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しくなるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御し、
更に、前記キャンセル信号の位相が180°回転させられるように前記キャンセル信号の位相を制御した後、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除するものである請求項1から8の何れかの無線通信装置。
【請求項11】
前記キャンセル信号制御部は、
先ず、前記キャンセル信号供給抑制部により前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給を抑制させた状態で、前記信号強度検出部により前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度を検出させてその検出結果を前記記憶部に記憶させ、
次に、前記キャンセル信号合成部へのキャンセル信号の供給の抑制を解除し且つ前記受信信号終端部により前記受信信号入力端を終端させた状態で、前記信号強度検出部により検出されるキャンセル信号の同相成分及び直交成分それぞれが、前記記憶部に記憶された前記受信信号の同相成分及び直交成分それぞれの強度と等しく且つ正負が反対となるように前記キャンセル信号の振幅及び/又は位相を制御した後、前記受信信号終端部による前記受信信号入力端の終端を解除するものである請求項1から8の何れかの無線通信装置。
【請求項12】
所定の通信対象への情報送信の実行に先行して前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から11の何れかの無線通信装置。
【請求項13】
所定の通信対象への情報送信の実行中に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から11の何れかの無線通信装置。
【請求項14】
前記送信信号の周波数を切り替える毎に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から13の何れかの無線通信装置。
【請求項15】
前記信号強度検出部により検出される受信信号とキャンセル信号との合成信号の強度が所定値以上になった場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から14の何れかの無線通信装置。
【請求項16】
前記送信用アンテナとして複数の送信用アンテナ素子から成るアレイアンテナと、各送信アンテナ素子へ伝達させる送信信号それぞれの位相を制御することで送信指向性を制御する送信位相制御部を備えたものであり、該送信位相制御部の位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から15の何れかの無線通信装置。
【請求項17】
前記受信用アンテナとして複数の受信用アンテナ素子から成るアレイアンテナと、各受信アンテナ素子から伝達させる受信信号それぞれの位相を制御することで受信指向性を制御する受信位相制御部を備えたものであり、該受信位相制御部の位相を変更した場合に前記キャンセル信号制御部によるキャンセル信号の制御を行うものである請求項1から16の何れかの無線通信装置。
【請求項18】
前記受信信号の復調部としてホモダイン検波回路を備えたものである請求項1から17の何れかの無線通信装置。
【請求項19】
前記無線通信装置は、無線タグに向けて所定の送信信号を送信用アンテナにより送信すると共に、該送信信号に応答して前記無線タグから返信される返信信号を前記受信用アンテナにより受信することで前記無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置である請求項1から18の何れかの無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−281592(P2007−281592A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102031(P2006−102031)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】