説明

熱処理装置および熱処理方法

【課題】熱処理プレートに基板を受け渡すときの基板の横滑りによる位置ずれが起きないようにして加熱処理の適正な処理が行われる熱処理装置(方法)を提供すること。
【解決手段】熱処理プレート60の基板載置面と基板の裏面との間に第1の隙間距離をとるための伸縮自在な弾性部材からなる複数の第1の載置支持部材64と、基板載置面と基板の裏面との間に前記第1の隙間距離よりも小さい隙間距離となる第2の隙間距離を設けるための複数の第2の載置支持部材62と、熱処理プレート60の基板載置面に設けられ前記基板の裏面との隙間の空間を吸引するための複数の吸引孔63と、を備えて、前記吸引孔により第1の載置支持部材64上に支持された基板を吸引することで第1の載置支持部材64を収縮させて第2の載置支持部材62に基板を支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造およびFPD(フラットパネルディスプレー)製造装置などの基板にレジスト塗布処理や現像処理などの液処理を行ない、その処理の前後に基板に対して施される熱処理に使用される熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造におけるフォトレジスト処理工程においては、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と称する。)などの基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、次いでこのレジスト膜上に所定のパターンを露光した後、当該基板に現像液を塗布して現像処理することが行われる。このような一連の処理を行うにあたっては、従来からレジスト塗布現像処理装置および露光装置が使用されている。
【0003】
このレジスト塗布現像処理装置は、塗布現像処理に必要な一連の処理を個別に行う処理ユニットを備えている。塗布処理ユニットはレジスト液の塗布を行い、現像処理ユニットは露光後の基板を現像する現像処理を行う。各処理ユニット間のウエハの搬送、並びに各処理ユニットに対するウエハの搬入出には、ウエハを保持した状態で各処理ユニットに対して搬送可能に構成されている基板搬送装置が設けられている。この中には基板に熱処理を行なう熱処理装置(ユニット)である例えば、レジスト液塗布後の基板を加熱してレジスト膜の硬化を行う場合や、別の熱処理ユニットは、露光後の基板を所定の温度で加熱するための現像処理前後の熱処理ユニットを備えている。
【0004】
これら熱処理ユニットには、基板搬送装置から熱処理ユニットに基板を受け渡すときに熱処理ユニット内に設けられる冷却プレートに受け渡した後に、この冷却プレートが熱処理部に基板を保持したまま移動して、熱処理部のプレートに基板を受け渡して熱処理が行われる。すなわち、この冷却プレートは熱処理部との間で進退移動可能に構成されていることが知られている(例えば、特許文献1参照)。またこの様な熱処理プレートに載置される基板を吸着させるための吸引孔を備える熱処理プレートが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また別の特許文献3に示される塗布現像処理装置のタイプによっては、プロセス処理ブロックとキャリアステーションブロックとの間に設けられて基板の受渡しの機能を有すると共に、塗布処理の前や現像処理の前後に所定の温度で基板を熱処理として冷却するために用いられる。これらの冷却プレート内には冷却の効率を上げるために冷却プレート面に基板を吸着させる吸引孔を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−303104号公報(図4、図5、図7)
【特許文献2】特開2008−177303号公報(図5、図6)
【特許文献3】特開2010−118446号公報(図3、図6、図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体製造装置の生産性を向上する改良が行われている中で、リソグラフィー工程における露光装置のスループットも毎時300枚にもなりつつ有り、レジスト塗布現像装置もこのスループットに対応させる要求が出て来ている。その中で、この要求に対してレジスト塗布現像装置では各種処理ユニットのプロセス時間を除く動作時間の短縮を考慮する必要が求められて来ている。
【0008】
熱処理装置もその対象となる一つであり、特許文献1に記載してある冷却プレートから加熱部へ基板の搬入出を行うことのできる加熱処理ユニットの搬入出時間をプロセス性能の犠牲なく短縮することが考えられている。また、特許文献2,3に記載してあるようにプロセス時間を短縮するために基板を吸着して基板を引き付けることで効率的に熱処理を行うことが考えられている。しかしながら、時間短縮のために熱処理プレートへの基板の受渡しを急ぐあまりに基板を速く下降させて受渡しを完了させようとすると、熱処理プレート上面と基板の下降中に空気の圧縮が起こり、基板が熱処理プレートに触れる直前にエアーベアリング現象によって基板が横滑りを起こすことが危惧される。
【0009】
また、特許文献2,3には基板を吸着することの記載があるが、吸着効果の出る位置になる前に横滑りしてしまうことで、適正な基板の位置を吸着できないことも考えられる。またこの様なエアーベアリング現象が起こると、基板のエッジ部分が熱処理プレートに設けられるはみ出し防止ガイドへ乗り上げてしまったり、衝突したりすることも考えられる。また処理後の基板を搬送装置に受け渡しするときに受け取りミスを生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記事情の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、熱処理プレートに基板を受け渡すときにエアーベアリング現象による基板の横滑りによる位置ずれが起きないようにして加熱処理の適正な処理が行われる熱処理装置および熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の第1の熱処理装置は、基板を載置して加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートと、前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に第1の隙間距離を設けるための全体もしくは一部が伸縮自在な弾性部材からなる複数の第1の載置支持部材と、前記基板載置面と前記基板の裏面との間に前記第1の隙間距離よりも小さい隙間距離となる第2の隙間距離を設けるための複数の第2の載置支持部材と、前記熱処理プレートの基板載置面に設けられ前記基板の裏面との隙間の空間を吸引するための複数の吸引孔と、を備え、一つの前記第1の載置支持部材を中心とした近傍には少なくとも一つの前記吸引孔と前記第2の支持部材とを配置し、前記吸引孔により前記第2の載置支持部材上に着座された前記基板を吸引することで、前記第1の載置支持部材を収縮させて前記第2の載置支持部材に前記基板を支持させることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
この様に構成することによって、熱処理プレートに設けられるプロキシミティスペーサである第2の載置支持部材(以下にプロキシミティスペーサという)に載置する前に基板をプロキシミティスペーサよりも一段高い位置で支持できる第1の載置支持部材を設けて、これによりで受け止めるので、基板による空気の圧縮作用で生じる横滑りを無くすことができる。また、これにより基板の裏面と熱処理プレートとの間には略同じ高さの隙間が形成されて隙間は一方に偏ることも無いので、吸引効果がより均等に与えられる。また、第1の載置支持部材は、全体もしくは一部が伸縮自在な弾性部材で構成されることにより、基板が吸引されて熱処理プレートに吸い寄せられることで、第1の載置支持部材が収縮されて実際の熱処理高さとするためのプロキシミティスペーサに基板が押圧されて第2の隙間距離を設けることができる。また、吸引力を使うので第1の載置支持部材にアクチュエータを使った昇降機構を設ける必要がない。また、吸引孔を第1の載置支持部材とプロキシミティスペーサとの近傍に設けることで確実に弾性部材を収縮させることができる。
【0013】
また、本発明の第2の熱処理装置は、基板を載置して加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートと、前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に第1の隙間距離を設けるための全体もしくは一部が伸縮自在な弾性部材を含む複数の第1の載置支持部材と、前記基板載置面と前記基板の裏面との間に前記第1の隙間距離よりも小さい隙間距離となる第2の隙間距離を設けるための複数の第2の載置支持部材と、前記熱処理プレートの基板載置面に設けられ前記基板の裏面との隙間の空間を吸引するための複数の吸引孔と、を備え、前記第1の載置支持部材の弾性部材は、コイルばねで構成され、前記基板の自重に対してコイルばねが反発するばね定数を小さく設定し、基板を前記第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降して前記第2の載置支持部材に着座させ、一つの前記第1の載置支持部材を中心とした近傍には少なくとも一つの前記吸引孔と前記第2の支持部材とを配置し、前記吸引孔により前記第1の載置支持部材上に支持された前記基板を吸引することで、前記第1の載置支持部材を収縮させて前記第2の載置支持部材に前記基板を支持させる、ことを特徴とする(請求項2)。
【0014】
この様に構成することによって、熱処理プレートに設けられるプロキシミティスペーサ(第2の載置支持部材)に載置する前に基板をプロキシミティスペーサよりも一段高い位置で支持できる第1の載置支持部材を設けて、これによりで受け止めるので、基板による空気の圧縮作用で生じる横滑りを無くすことができる。また、第1の載置支持部材の弾性部材は、コイルばねで構成され、基板の自重に対してコイルばねが反発するばね定数を小さく設定し、基板を第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降して第2の載置支持部材に着座させることで、第2の隙間距離を設けることができる。また、第1の載置支持部材の弾性部材を基板の自重に対して反発するばね定数を小さく設定したコイルばねで構成するので第1の載置支持部材にアクチュエータを使った昇降機構を設ける必要がない。
【0015】
また、吸引孔を第1の載置支持部材とプロキシミティスペーサとの近傍に設けることで確実に弾性部材を収縮させることができる。
【0016】
また、本発明の第1の熱処理装置において、前記弾性部材は、ゴム部材またはスポンジ状部材またはばね部材のいずれかで構成されていればよい(請求項5)。
【0017】
この様に構成することによって、吸引力に適した弾性力の材質を選定することが容易にできる。
【0018】
また、本発明において、前記第1の載置支持部材は、前記弾性部材と硬質部材とを組み合わせて構成されていてもよい(請求項6)。
【0019】
この様に構成することによって、例えば基板の裏面との接触面を硬質部材として材質を、例えばフッ素樹脂,ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂またはセラミックスとする様にすると基板接触面が材料による磨耗や削れ(スクラッチ)などを抑制可能なものを選定することができる。また、接触状態を安定させることができる。また、硬質部材を弾性部材の下部に設けて熱処理プレートに螺合固定させることも容易になり、第1の載置支持部材の抜けを防止できる。
【0020】
また、本発明において、前記熱処理プレートは、前記第1の載置支持部材と前記第2の載置支持部材と前記吸引孔を一つの組み合わせとしたときに、前記組み合わせが前記熱処理プレートに載置された基板の周縁に位置するように設けられていてもよい(請求項10)。
【0021】
この様に構成することによって、基板に反りがある状態が凸形であったとしても基板の周縁付近で第1の載置支持部材で先に支持されて受け止められるので、横滑りを起こすことなく基板を吸着することができる。
【0022】
また、本発明において、前記熱処理プレートは、前記第1の載置支持部材と前記第2の載置支持部材と前記吸引孔を一つの組み合わせとしたときに、前記組み合わせが前記熱処理プレートに載置された基板の中央近傍に位置するように設けられていてもよい(請求項11)。
【0023】
この様に構成することによって、基板に反りがある状態が凹形であったとしても、基板の中央付近で第1の載置支持部材で先に支持されて受け止められるので、横滑りを起こすことなく吸着することができる。
【0024】
また、本発明の第1の熱処理方法は、基板に加熱処理または冷却処理を施す熱処理装置の熱処理工程において、基板を加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートに載置する工程と、前記熱処理プレートに伸縮自在の第1の載置支持部材を備え、前記載置する工程中に前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に所定の第1の隙間距離を設ける工程と、前記第1の隙間距離を設けられた空間を前記熱処理プレートの基板載置面の設けられた吸引孔により吸引する吸引工程と、前記吸引工程の吸引により引き寄せられる前記基板の押圧で前記第1の載置支持部材を収縮させる工程と、前記加熱処理プレートに設けられる第2の載置支持部材に前記基板を当接させる工程と、を有し、前記基板は、前記第2の載置支持部材に基板を当接した状態で熱処理されることを特徴とする(請求項12)。
【0025】
この様にする工程によって、基板を熱処理プレートに載置する前に一旦第1の隙間距離
の位置に基板を支持させて空気の圧縮時に生じる横滑りを無くした後に吸引を行うことで、第1の載置支持部材を収縮させて基板の位置ずれを起こさない状態で基板を熱処理プレート側に吸着させて熱処理することができる。横滑りによる位置ずれを起こさないので適正な熱処理が可能であり、熱処理後に基板を塗布現像装置内の搬送装置に受け渡す場合に受け取りミスを起こすことがない。
【0026】
また、本発明の第1の熱処理方法において、前記吸引工程は、前記第1の載置支持部材に基板が当接する前から吸引を開始するようにしてもよい(請求項13)。
【0027】
この様にすることによって、基板が熱処理プレートに向かう空気の圧縮作用が生じるよりも先に吸引することで確実に基板の位置ずれを抑制できる。
【0028】
また、本発明の第2の熱処理方法は、基板に加熱処理または冷却処理を施す熱処理装置の熱処理工程において、基板を加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートに載置する工程と、前記熱処理プレートに、コイルばねで構成され、前記基板の自重に対してコイルばねが反発するばね定数を小さく設定した伸縮自在の第1の載置支持部材を備え、前記載置する工程中に前記基板を前記第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降して前記第2の載置支持部材に前記基板を着座させる工程と、前記熱処理プレートの基板載置面と前記第1の載置支持部材に支持された基板の裏面との間に設けられた空間を前記熱処理プレートの基板載置面に設けられた吸引孔により吸引する吸引工程と、を有し、前記基板は、前記第2の載置支持部材に基板を当接した状態で熱処理される、ことを特徴とする(請求項14)。
【0029】
この様にする工程によって、基板を熱処理プレートに載置する前に一旦第1の隙間距離
の位置に基板を支持させて空気の圧縮時に生じる横滑りを無くした後に基板を第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降してプロキシミティスペーサ(第2の載置支持部材)に基板を着座させることで、第1の載置支持部材を収縮させて基板の位置ずれを起こさない状態で基板を熱処理プレート側に載置させて熱処理することができる。横滑りによる位置ずれを起こさないので適正な熱処理が可能であり、熱処理後に基板を塗布現像装置内の搬送装置に受け渡す場合に受け取りミスを起こすことがない。
【0030】
また、熱処理プレートの基板載置面に設けられた吸引孔により吸引することによって確実にコイルばねを収縮させることができる。
【0031】
また、本発明の第2の熱処理方法において、前記吸引工程は、基板が前記第2の載置支持部材に着座する前から吸引を開始するようにしてもよい(請求項15)。
【0032】
この様に構成することにより、基板がプロキシミティスペーサ(第2の載置支持部材)に着座する前に吸引することで確実に基板のずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上に説明したように、本発明の熱処理装置(方法)によれば、上記の様に構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0034】
熱処理プレート上に基板が載置される直前に基板が横滑りして所定位置に基板が載置されない不具合を無くすことができる。また、基板に直径幅の断面で凸形や凹形の反りがあったとしても、基板が第2の載置支持部材(プロキシミティスペーサ)よりも先に一旦先に受け止められて吸引されるので基板の挙動を抑えることができる。よって、所定の位置で所望の熱処理を完了することができる。また、熱処理が終了して吸引が解除された後に搬送装置などへの基板の受け渡し動作において位置ずれによる受け渡し不具合が無くなり装置全体の稼動率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る熱処理装置を適用したレジスト処理装置の平面図である。
【図2】前記レジスト処理装置の斜視図である。
【図3】基板の受け渡し機能を有するキャリアブロック側に設けられる冷却プレート群の構成を示す斜視図である。
【図4】基板の受け渡し機能を有するインターフェイス側に設けられる冷却プレート群の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る熱処理装置の全体を示す断面図である。
【図6】本発明におけるクーリングプレートの全体を示す平面図である。
【図7】本発明における受け渡しアームと搬送アームとの関係を示す平面図である。
【図8】本発明における冷却プレートの全体を示す平面図である。
【図9】本発明における第1の載置支持部材、第2の載置支持部材および吸引孔のウエハを受け取る前、および受け取る状態を示す断面図である。
【図10】本発明における第1の載置支持部材、第2の載置支持部材および吸引孔の動作状態を示す断面図である。
【図10A】本発明における第1の載置支持部材にばね定数を設定したコイルばねを使用した場合の動作状態を示す断面図である。
【図11】本発明における第1の載置支持部材にばねを使用した場合の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明における第1の載置支持部材にゴムを使用した場合の構成図である。
【図13】本発明に関わる第1の載置支持部材にスポンジを使用した場合の変形例を示す断面図である。
【図14】本発明における第1の載置支持部材と基板の凸形および凹形の反りを有する基板に対応させたときの状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に先ずは、本発明に係る熱処理装置が組み込まれる塗布現像装置の形態について説明をする。ここでは、半導体基板であるウエハWの塗布現像装置に適用した場合について図1,図2を参照して説明する。塗布現像装置は、キャリアブロックS1が設けられており、その載置台21上に載置された密閉型のウエハW収納容器であるキャリア20から受け渡しアームCがウエハWを取り出して処理ブロックS2に受け渡し、処理ブロックS2から受け渡しアームCが処理済みのウエハWを受け取ってキャリア20に戻すように構成されている。
【0037】
前記処理ブロックS2は、図2に示すように、この例では現像処理を行うため現像処理装置の第1のブロック(DEV層)B1,B2、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うため下層反射防止膜塗布装置が設けられる第2のブロック(BCT層)B3、レジスト膜の塗布を行うためレジスト塗布処理装置が設けられる第3のブロック(COT層)B4、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成を行うため上層反射防止膜塗布装置の第4のブロック(TCT層)B5を、下から順に積層して構成されている。
【0038】
レジスト塗布現像装置は、第1のブロック(DEV層)B1,B2、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2のブロック(BCT層)B3、レジスト膜の塗布を行うための第3のブロック(COT層)B4、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成を行うための第4のブロック(TCT層)B5、薬液を塗布する液処理装置と、この液処理装置にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための本発明に係る加熱及び冷却系の処理ユニットである熱処理装置と、前記液処理装置と処理ユニット群との間に設けられ、例えば、COT層B4ではこれらの間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA4を備え、これと同様に図示しないA1(DEV層)、A3(BCT層)、A5(TCT層)と、を有して構成されている。
【0039】
例えば、第4のブロック(COT層)B4を例にとると、各層については、図1に示すように、COTユニット31内にレジストを塗布処理するカップが例えば3個設けられている。そして、搬送アームA4の直線搬送を挟む形で加熱及び冷却系の処理ユニット群U1,U2,U3,U4がそれぞれ前記直線搬送路に面して並べられている。この処理ユニット群U1,U2,U3,U4はそれぞれ2段に構成されており、図1の図面では合計8個の処理ユニットが存在することになる。
【0040】
更に処理ブロックS2には、図1及び図3に示すように棚ユニットU5が設けられ、キャリアブロックS1からのウエハWは、受け渡しアームCによって棚ユニットU5の受け渡しユニットとなる3本のピンが立設してなるTRS1、TRS2(トラジションステージ)に受け渡されて、第2のブロック(BCT層)B2の対応する冷却処理ユニットCPL2a,CPL2b(クーリングプレート)に、棚ユニットU5の横近傍に設けられた昇降自在な受け渡しアームDによって順次搬送される。また、同様な構成の図4には反対側のインターフェイスブロックに隣接する棚ユニットU6を示す図面であり図3と同様の構成であり、受け渡しアームEでウエハWを各層に昇降可能に構成されている。
【0041】
この第2のブロック(BCT層)B2内の搬送アーム(図示せず)は、この冷却処理ユニットCPL2a,CPL2bからウエハWを受け取って、各ユニット(反射防止膜ユニット及び加熱・冷却系の処理ユニット群)に搬送し、これらユニットにてウエハWには反射防止膜が形成される同様にして、BCT層で処理の完了したウエハWは棚ユニットU6の冷却処理ユニットCPL6a,CPL6bに搬送されて受け渡しアームEによりCOT層に対応する冷却処理ユニットCPL7a,CPL7bに搬送されてCOT層の搬送アームA4によって各処理ユニットに運ばれてレジスト塗布処理が行われる。
【0042】
この後は冷却処理ユニットCPL3a、3bに運ばれ前述と同様に受け渡しアームDが受け取り、冷却処理ユニットCPL4a,CPL4bに受け渡されてTCT層の搬送アーム(図示せず)によって目的の反射防止膜処理がなされる。この後に棚ユニットU6の冷却ユニットCPL8a,CPL8bに受け渡されて受け渡しアームEによりTRS3,TRS4にウエハWが受け渡される。このウエハWをインターフェイスブロックS3にある受け渡しアームFにより露光機S4に受け渡しをすることになる。露光機S4から搬出されたウエハWは受け渡しアームFが受け取りウエハWを支持するための3ピン53が出没可能に構成されてなるCPL5a,CPL5bに受け渡され、その後、現像処理がDEV層A1,A2にて行われて冷却ユニとCPL1a,CPL1bに受け渡され、キャリアブロックS1の受け渡しアームCが受け取りしてキャリア20に収納される。
【0043】
次に本発明が適応された熱処理装置について説明を図1、図5乃至図9を用いて説明する。例えば、図1に記載の棚ユニットU5,U6に設けられるクーリングプレート60を備えた冷却処理ユニットCPL2a,CPL2b乃至CPL4a,CPL4b及びCPL6a,CPL6b乃至CPL8a,CPL8bについて適用された例について説明をする。また、図9に本発明の構成する主要構造を図示するクーリングプレート60の断面図を示す。図6は冷却処理ユニットのCPL2aの平面図である。この冷却処理ユニットは厚みが例えば20mm程度の円盤状の板であり、この板を冷却させるための図示しない温調水の流路が内部に設けられてウエハWを冷却可能な構成となっている。この図9に図示するプレート内部には温調水の流路とは別に吸引路69が設けられている。
【0044】
次に図6に戻り、平面視でクーリングプレート60上に配置されている構成物の説明を行う。棚ユニットU5,U6に設置されるCPL2aのクーリングプレート60は、例えば受渡しアームDと搬送アームA4との両方からウエハWを載置もしくは受け取れる様に双方のアームDa,A4aに設けられるウエハW支持部(例えば、図5の場合A4a)がクーリングプレート60に干渉せずに受渡しができる様に周縁の例えば5箇所のいずれかの切欠き部61を例えばウエハWを保持したままで搬送アームA4を通過させることで、クーリングプレート60との間でウエハWの受渡しが可能になっている。その関係図を図7に示す。受渡しアームDの基板保持部Daが3箇所、例えばCOT層の搬送アームA4であれば基板保持部A4aの4箇所に対してクーリングプレート60の切欠き部61が対応するものである。
【0045】
このクーリングプレート60上には、本発明の構成である第1の載置支持部材64と、第2の載置支持部材であるプロキシミティスペーサ62とウエハWを載置させるときにクーリングプレート60に密着させるために吸引を行う吸引孔63とが複数設けられている。この第1の載置支持部材64は、プロキシミティスペーサ62と吸引孔63とを一つの組み合わせとして夫々が近傍に配置され、例えばウエハWの中心に対して120度の角度に割った線上にこの組み合わせて配置させる。図6には、一例として2つの組み合わせを示す。2つのうちの一方は、クーリングプレート60に載置されたウエハWの周縁に位置する領域において、クーリングプレート60の中心側にプロキシミティスペーサ62を配置し、周縁側に第1の載置支持部材64を配置し、この間に吸引孔63を配置して並べる。他方は、クーリングプレート60に載置されたウエハWの中央部近傍に位置する領域において、これら3つすなわち第1の載置支持部材64,吸引孔63およびプロキシミティスペーサ62を繋いだ線が三角形になる様な配置位置の組み合わせをしている。プロキシミティスペーサ62は、樹脂やセラミックスで作られている。
【0046】
これら3つの組み合わせは自在であるが相互の近傍配置とすることが求められる。これら夫々に配置される距離は20mm以内であれば良い。図9には第1の載置支持部材64と吸引孔63、プロキシミティスペーサ62とを並べた状態の断面図を示す。第1の載置支持部材64は、クーリングプレート60の表面からL1の隙間高さ(請求の範囲に記載の第1の隙間距離)が例えば1.0mmでありプロキシミティスペーサ62は隙間高さ(請求の範囲に記載の第2の隙間距離)L2が例えば0.1mmに設定される。この隙間高さL1、L2は処理基板の種類や状態によって設定されるが、L1が1.0mmより高すぎると、吸引力を増すためにエネルギーが多く必要となり、ウエハWが吸引されるまでに時間がかかる。また、L1とL2の差を小さくすると、吸引力が低下し、エアーベアリング現象が生じる虞がある。なお、第1の載置支持部材64とプロキシミティスペーサ62との間に設けられる吸引孔63は、吸引路69を通して図示しない吸引手段に接続される。
【0047】
次に第1の載置支持部材64について、図9乃至図14を用いてより詳細に説明する。先ず、図9(a)に図示する第1の載置支持部材64は、コイルばねやスポンジ、ゴムのような弾性部材で全部または、一部が弾性部材64で構成されていれば良く、また一部が硬質部材である樹脂やセラミックスであっても良く、更には第1の載置支持部材64は、これらの弾性支持部材64と硬質部材との組合せや、弾性部材同士の組み合わせで構成されていても良い。この第1の載置支持部材64の構成についての例を図11,図12,図13にて示し後述する。第1の載置支持部材64は、クーリングプレート60に設けられた支持部材挿入孔66に設置される。この際、第1の載置支持部材64が支持部材挿入孔66から飛び出したり抜けたりしないように、第1の載置支持部材64の下部側に設けた鍔部64aを、例えばリング状の抜け防止部材65に係合して移動が制限されている。
【0048】
次に図9,図10は、この第1の載置支持部材の動きを説明する図である。図9(a)に図示する第1の載置支持部材64は、硬質部材68と弾性部材であるコイルばね67とを組み合わせて構成されている。硬質部材68は、例えば円柱状でウエハWの載置側端部にウエハWと点接触する曲面68bを有し、他方の下部側にばね受け部を形成する鍔部64aを設けたセラミックス製部材にて形成されている。この2つの組み合わせにより第1の載置支持部材64は上下方向の移動が可能となりクーリングプレート60に対して出没自在に構成されている。この図9(a)はウエハWを受け取り載置する前の状態を示している。この場合、硬質部材68の材質としては、例えばフッ素樹脂,ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂やセラミックスが好ましい。
【0049】
次に図9(b)はウエハWが第1の載置支持部材64へ当接した状態を示す。この場合、ウエハWが当接するまでの下降中にクーリングプレート60とウエハW裏面との間で空気の圧縮が起こりウエハWと近づくに連れて顕在化するが、ウエハWが横滑りしない高さ例えば0.4mmで一旦ウエハWを支持して下降を止めることで空気の圧縮が解消されて横滑りが防止できる。このウエハWを第1の載置支持部64に当接する前もしくは後に吸引孔63より吸引を開始する。ウエハWを第1の載置支持部64に当接する前に吸引することによって、ウエハWがクーリングプレート60に向かう空気の圧縮作用が生じるよりも先に吸引することで確実にウエハWの位置ずれを抑制できる。
【0050】
次に図10(a)は吸引動作によりウエハWが吸い寄せられて第1の載置支持部材64を押圧することでコイルばね67が収縮されてウエハWがプロキシミティスペーサ62に突き当たるまで支持部材挿入孔66に没する方向に下降する。プロキシミティスペーサ62上にウエハWの受渡し位置から横滑りを生じることなく当接させた適正な位置で熱処理が施される。熱処理が完了すると吸引動作が解除されて、第1の載置支持部材64のコイルばね67が反発復帰して伸長しウエハWをプロキシミティスペーサ62から離間させる。次いで、例えば受渡しアームDがウエハWをクーリングプレート60の下方からアクセスして掬い上げる様にしてウエハWを受け取る。
【0051】
なお、前述の図9,図10の説明で、ウエハWを第1の載置支持部材64をウエハWが横滑りしない高さ例えば0.4mmで一旦ウエハWを支持して下降を止める構成としたが、図10Aに示すように、0.4mmで一旦ウエハWを支持して下降を止めずに、コイルばね67の反発するばね定数をウエハWの自重が複数の第1の載置支持部材64に加わったとしても反発力が小さい値として、ウエハWの自重によって沈降するときにウエハWの横滑りが起きない速度で反発作用を含みながらゆっくりと第1の載置支持部材64を沈降させてプロキシミティスペーサ62にウエハWを着座させるようにしても良い(図10A(a)参照)。この場合、ウエハWの横滑りが発生しやすい領域が0.3mm以下であるので、L1の隙間高さ(第1の隙間距離)を0.3mm以上、例えば0.6mm程度としておくと良い。ウエハWをプロキシミティスペーサ62に着座させる前もしくは後に、吸引孔63より吸引を開始する(図10A(b)参照)。ウエハWをプロキシミティスペーサ62に着座させる前に吸引することによって、確実にウエハWの位置ずれを抑制することができる。
【0052】
本実施形態において、コイルばね67のばね定数を設定するには、1個のコイルばね67に加わる荷重、例えばウエハWの質量(107g)と硬質部材68の自重(約0.05g)、第1の載置支持部材64の個数{コイルばね67の個数}(9個)、第1の隙間距離L1=0.6mm、第2の隙間距離L2=0.1mmを考慮して設定する。
【0053】
ここで、ばね定数をk(mN/mm),荷重をP(mN),変位をδ(mm)とすると、
k=P/δ…(1)で表される。
【0054】
また、P=107/9+0.05=11.94(g)…(2)
δ=L1−L2=0.6−0.1=0.5(mm)…(3)であるので、
(1),(2),(3)式より、ばね定数(k)は、
k=11.94/0.5=23.88(gf/mm)
=23.88×9.8=234.02(mN/mm)となる。
【0055】
前記のようにして設定されるばね定数をウエハWの自重が複数の第1の載置支持部材64に加わったとしても反発力が小さい値とすることにより、ウエハWの自重によって沈降するときにウエハWの横滑りが起きない速度で反発作用を含みながらゆっくりと第1の載置支持部材64を沈降させてプロキシミティスペーサ62にウエハWを着座させることができる。
【0056】
この様に、ウエハWを熱処理プレート51に載置する前に一旦第1の隙間距離L1の位置にウエハWを支持させて空気の圧縮時に生じる横滑りを無くした後にウエハWを第1の載置支持部材64に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降してプロキシミティスペーサ62にウエハWを着座させることで、第1の載置支持部材64を収縮させてウエハWの位置ずれを起こさない状態でウエハWを熱処理プレート側に載置させて熱処理することができる。横滑りによる位置ずれを起こさないので適正な熱処理が可能であり、熱処理後にウエハWを塗布現像装置内の搬送装置に受け渡す場合に受け取りミスを起こすことがない。また、熱処理プレート51の基板載置面とプロキシミティスペーサ62に当接されたウエハWの裏面との間に設けられた空間を熱処理プレート51の基板載置面に設けられた吸引孔63により吸引することによって確実にコイルばね67を収縮させることができる。
【0057】
また、前記の様に構成することにより、吸引孔63による吸引力(吸着力)を低減することができるので、用力の削減が図れると共に、ウエハW裏面の傷の影響を低減することができる。また、吸引時間(吸着時間)が減るので、早期に冷却を開始することができる。更には、吸引停止状態においてもプロキシミティスペーサ62にウエハWを着座させることができるので、冷却が可能となる。
【0058】
次に第1の載置支持部材64の別の構成についての例を図11,図12,図13を示して説明する。図11(a)は弾性部材にコイルばね67を使用した例を示すものであって、第1の載置支持部材64の全体がコイルばね67で構成される。図11(b)は前述に記載された図9(a)の構成と同じでありウエハWと当接する側に硬質部材68とコイルばね67とを組み合わせたものである。図11(c)は図11(b)の構成に更にクーリングプレート60に螺合係止可能な螺合係止部70を接続して組み合わせて設ける。この場合、螺合係止部70は、コイルばね67の下端部を係止する円板状基部70aと、円板状基部70aの下面中央に突設されるねじ部70bとで構成されている。このように螺合係止することで抜け防止部材65を設けなくても第1の載置支持部材64が抜けることを防止できる。図11(a)の様にウエハWと直接に接触するばねには合成樹脂製が良く、プレート内に隠れる部分のばねには合成樹脂および金属で良い。また、弾性定数(ばね定数)の設定は使用される温度に適したクーリングプレート60の種類で設定される。なお、前記実施形態では弾性部材がコイルばね67である場合について説明したが、弾性部材をコイルばね67以外のばね部材にて形成してもよい。
【0059】
図12(a)は弾性部材にゴムを使用した例を示すものであって、第1の載置支持部材64の全体がゴム部材67Aで構成される。この場合、第1の載置支持部材64の全体を構成するゴム部材67Aは、例えば円柱状でウエハWの載置側端部にウエハWと点接触する曲面67bを有し、他方の下部側に、抜け防止部材65と係合可能な鍔部67aが設けられている。
【0060】
図12(b)はウエハWと当接する側に硬質部材68と弾性部材とを組み合わせたものであるが、弾性部材にゴム部材67Bを使用している。この場合、ゴム部材67Bは、硬質部材68の下端面に接着される円柱状基部67cの下部に鍔部67dを一体に形成してなる。
【0061】
図12(c)はウエハWに当接して伸縮する部分にゴム部材67Cを用いて、更にその下部にクーリングプレート60に螺合係止可能な螺合係止部70を接着して組み合わせたものである。この場合、ゴム部材67Cは、例えば円柱状でウエハWの載置側端部にウエハWと点接触する曲面67bを有している。この様に螺合係止することで抜け防止部材65を設けなくても第1の載置支持部材64が抜けることを防止できる。
【0062】
なお、ゴム部材67A,67B,67Cの材質の選択は弾性定数の他に耐薬品性および耐熱性、耐摩耗性を考慮して決定される。例えば、ゴム部材67A,67B,67Cの材質としては、例えばシリコンゴム等の合成ゴムが好ましい。なお、図示はしないが図12(b)の構成の弾性部材の下部に螺合係止部70を組み合わせても良い。
【0063】
図13(a)は弾性部材に67にスポンジを使用した例を示すものであって第1の載置支持部材64の全体がスポンジ状部材67Dで構成される。この場合、第1の載置支持部材4の全体を構成するスポンジ状部材67Dは、例えば円柱状でウエハWの載置側端部にウエハWと点接触する曲面67eを有し、他方の下部側に、抜け防止部材65と係合可能な鍔部67fが設けられている。
【0064】
図13(b)はウエハWと当接する側に硬質部材68と弾性部材とを組み合わせたものであるが、弾性部材にスポンジ状部材67Eを使用している。この場合、スポンジ状部材67Eは、硬質部材68の下端面に接着される円柱状基部67gの下部に鍔部67hを一体に形成してなる。
【0065】
図13(c)はウエハWに当接して伸縮する部分にスポンジ状部材67Fを用いて、更にその下部にクーリングプレート60に螺合係止可能な螺合係止部70を接着して組み合わせたものである。この場合、スポンジ状部材67Fは、例えば円柱状でウエハWの載置側端部にウエハWと点接触する曲面67eを有しており、その下端面に螺合係止部70が接着されている。この様に螺合係止することで抜け防止部材65を設けなくても第1の載置支持部材64が抜けることを防止できる。
【0066】
なお、スポンジ状部材67D,67E,67Fの材質の選択は弾性定数の他に耐薬品性および耐熱性、耐摩耗性を考慮して決定される。例えば、シリコン系材質のスポンジは好ましい。なお、図示はしないが図13(b)の構成の弾性部材の下部に螺合係止部70を組み合わせても良い。
【0067】
次に別の実施例として本発明が適用された図8の構成の冷却プレート80について説明する。図8は図3に示す棚ユニットU5、図4に示す棚ユニットU6にそれぞれ設けられるCPL1a,CPL1b、CPL5a,CPL5bの平面図であり、昇降自在で出没可能な3本の基板支持ピン81(以下に3ピン81という)を有している。この冷却プレート80は3ピン81を介して冷却処理の際のウエハWの受渡しを受渡しアームD及び搬送アームA1の間で行う点で前述のクーリングプレート60とは異なる。この場合においても3ピン81の下降速度を速くすると、ウエハWの圧縮作用によりエアーベアリング現象が発生してウエハWが横滑りしてしまい適正な位置に載置されない場合がある。冷却プレート80のウエハW載置面には、図6で説明したプロキシミティスペーサ62,第1の載置支持部材64および吸引孔63が同様に構成されるものであり、同じ効果が期待できる。
【0068】
次に更に別の実施例として本発明が適用された熱処理装置50について説明する。図1に記載の加熱及び冷却の処理ユニット群U1,U2,U3,U4には、それぞれ図5に図示される熱処理装置50が収納設置されている。この熱処理装置50にはウエハWを載置して冷却するための移動冷却プレート51とウエハWを載置して熱処理を施すための熱処理プレート52と、熱処理プレート52表面に出没可能に構成されてウエハWを支持して保持する3本のピン53(以下に3ピン53という)により移動プレート51と熱処理プレート52との間でウエハWを受け渡しすることができる。移動冷却プレート51には熱処理プレート52に進入したときに3ピン53を避ける位置に対応して一端が開口している2本のスリット51bが設けられている。熱処理プレート52と移動冷却プレート51とは、ウエハW載置面にはウエハWの裏面と間に例えば100μmの隙間を設けるためのウエハW支持部材であるプロキシミティスペーサ54を有している。
【0069】
次に、例えばCOT層の搬送アームA4と移動冷却プレート51との間でのウエハWの受け渡し動作について説明する。先ず、図5に示される様に移動プレート51の移動端部(ホームポジション)に位置しているときに搬送アームA4によりウエハWを受け取る。この際に搬送アームA4に設けられる4箇所のウエハW支持A4aが移動プレート51の4箇所の側面凹部51aと対応して上下に通過可能になっている。受け渡し時にはウエハWを載置した搬送アームA4が移動冷却プレート51に向かい上方より下方に昇降移動スルーさせることでウエハWを載置できる。なお、受け取り時はこの逆手順となる。
【0070】
移動冷却プレート51は、図示しない直動ガイドを含む移動機構によって熱処理プレート52側までの距離を進退自在に移動することができる。受渡しはウエハWが載置された移動プレート51を3ピン53が没した状態で熱処理プレート52上に進入させた後に、3ピン53を熱処理プレート52表面に突出させて、移動冷却プレート51上のウエハWを離間させることで、ウエハWを3ピン53上に支持させる。この状態で移動プレート51を後退させる。移動プレート51の後退の後に3ピン53を没した状態にすることで、熱処理プレート52にウエハWが載置される。ウエハWが載置されると図示しない蓋体が下降して熱処理プロセスが開始される。所定時間が経過の後にウエハWの搬出には逆の手順で動作されるものである。
【0071】
この搬送アームA4からウエハWを直接的に受渡しされる移動冷却プレート51と3ピン53を介してウエハWの受渡しがされる熱処理プレート52とに対して、本発明は、図6および図8の説明と同様に説明したプロキシミティスペーサ62、第1の載置支持部材64および吸引孔63が同様に構成されることにより、前述と同じ効果が期待できる。
【0072】
このことより、熱処理プレート52に受け渡す前にウエハWの載置位置が移動冷却プレート51上で横滑りすることが無く、移動に際してもウエハWが吸引されているので横滑りすることが無い。ついては、熱処理プレート52に3ピン53を介して受け渡す位置も適正な位置となるのでウエハWに適正な熱処理を行うことができる。また、3ピン53の下降速度をウエハWに影響を及ぼさない程度に速い速度に設定することにより、生産性を落とすことがない。
【0073】
次にウエハWに反りを生じているものに対しての本発明の実施による状態を図14に示す。ウエハWの反りは処理面に対する平面で周縁が中心付近より高い凸形(皿を裏返しにした形状)とその逆の凹形(皿型)の反り形状が考慮される。図14は理解し易くするために極端に図解している。これに対して図14(a)は凸形反り基板であっても第1の載置支持部材64がウエハWの周縁部を先に支持するので中央部の第1の載置支持部材64が接触出来ない場合であっても問題なく、一旦支持した後に吸引が可能である。また、図14(b)には凹形の反りを有するウエハWへ対応させたときに状態を示す図であるが、中央部の第1の載置支持部材64を先に支持できるので、この場合であっても機能するものである。
【0074】
また、前記実施形態では、本発明に係わる熱処理装置を半導体のレジスト塗布現像装置システムに適用した場合について説明をしたが、本発明に係わる熱処理装置は、FPDウエハWの処理システムや洗浄装置の他に平板状のウエハWを均一に熱処理するための装置であればいずれにおいても適用できることは勿論のことである。
【符号の説明】
【0075】
U1,U2,U3,U4 加熱及び冷却の処理ユニット群
U5,U6 棚ユニット
50 熱処理装置
51 移動プレート(熱処理プレート)
52 熱処理プレート
53 3ピン
A4 搬送アーム
60 クーリングプレート(熱処理プレート)
61 切欠き部
62 第2の載置支持部材(プロキシミティスペーサ)
63 吸引孔
64 第1の載置支持部材
65 抜け防止部材
66 支持部挿入孔
67 コイルばね(弾性部材)
67A,67B,67C ゴム部材(弾性部材)
67D,67E,67F スポンジ状部材(弾性部材)
68 硬質部材
69 吸引路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置して加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートと、
前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に第1の隙間距離を設けるための全体もしくは一部が伸縮自在な弾性部材を含む複数の第1の載置支持部材と、
前記基板載置面と前記基板の裏面との間に前記第1の隙間距離よりも小さい隙間距離となる第2の隙間距離を設けるための複数の第2の載置支持部材と、
前記熱処理プレートの基板載置面に設けられ前記基板の裏面との隙間の空間を吸引するための複数の吸引孔と、を備え、
一つの前記第1の載置支持部材を中心とした近傍には少なくとも一つの前記吸引孔と前記第2の支持部材とを配置し、前記吸引孔により前記第1の載置支持部材上に支持された前記基板を吸引することで、前記第1の載置支持部材を収縮させて前記第2の載置支持部材に前記基板を支持させる、ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
基板を載置して加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートと、
前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に第1の隙間距離を設けるための全体もしくは一部が伸縮自在な弾性部材を含む複数の第1の載置支持部材と、
前記基板載置面と前記基板の裏面との間に前記第1の隙間距離よりも小さい隙間距離となる第2の隙間距離を設けるための複数の第2の載置支持部材と、
前記熱処理プレートの基板載置面に設けられ前記基板の裏面との隙間の空間を吸引するための複数の吸引孔と、を備え、
前記第1の載置支持部材の弾性部材は、コイルばねで構成され、前記基板の自重に対してコイルばねが反発するばね定数を小さく設定し、基板を前記第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降して前記第2の載置支持部材に着座させ、
一つの前記第1の載置支持部材を中心とした近傍には少なくとも一つの前記吸引孔と前記第2の支持部材とを配置し、前記吸引孔により前記第1の載置支持部材上に支持された前記基板を吸引することで、前記第1の載置支持部材を収縮させて前記第2の載置支持部材に前記基板を支持させる、ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
前記第1の載置支持部材と前記第2の載置支持部材との間には、前記吸引孔が設けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記第2の載置支持部材と前記吸引孔との間には、前記第1の載置支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、ゴム部材またはスポンジ状部材またはばね部材のいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記第1の載置支持部材は、前記弾性部材と硬質部材とを組み合わせて構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記硬質部材は、合成樹脂またはセラミックスである、ことを特徴とする請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記第1の載置支持部材は、底部に螺合係止部を組み合わせて前記熱処理プレートに対して螺合係止される、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記熱処理プレートは、前記第1の載置支持部材と前記第2の載置支持部材と前記吸引孔を一つの組み合わせとしたときに、前記組み合わせが前記熱処理プレートに載置された基板の周縁に位置するように設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記熱処理プレートは、前記第1の載置支持部材と前記第2の載置支持部材と前記吸引孔を一つの組み合わせとしたときに、前記組み合わせが前記熱処理プレートに載置された基板の中央近傍に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項11】
基板に加熱処理または冷却処理を施す熱処理装置の熱処理工程において、
基板を加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートに載置する工程と、
前記熱処理プレートに伸縮自在の第1の載置支持部材を備え、前記載置する工程中に前記熱処理プレートの基板載置面と前記基板の裏面との間に所定の第1の隙間距離を設ける工程と、
前記第1の隙間距離を設けられた空間を前記熱処理プレートの基板載置面の設けられた吸引孔により吸引する吸引工程と、
前記吸引工程の吸引により引き寄せられる前記基板の押圧で前記第1の載置支持部材を収縮させる工程と、
前記加熱処理プレートに設けられる第2の載置支持部材に前記基板を当接させる工程と、を有し、
前記基板は、前記第2の載置支持部材に基板を当接した状態で熱処理されることを特徴とする熱処理方法。
【請求項12】
前記吸引工程は、前記第1の載置支持部材に基板が当接する前から吸引を開始することを特徴とする請求項11に記載の熱処理方法。
【請求項13】
基板に加熱処理または冷却処理を施す熱処理装置の熱処理工程において、
基板を加熱処理または冷却処理するための熱処理プレートに載置する工程と、
前記熱処理プレートに、コイルばねで構成され、前記基板の自重に対してコイルばねが反発するばね定数を小さく設定した伸縮自在の第1の載置支持部材を備え、前記載置する工程中に前記基板を前記第1の載置支持部材に支持させることで反発作用を含みながらゆっくりと沈降して前記第2の載置支持部材に前記基板を着座させる工程と、
前記熱処理プレートの基板載置面と前記第1の載置支持部材に支持された基板の裏面との間に設けられた空間を前記熱処理プレートの基板載置面に設けられた吸引孔により吸引する吸引工程と、を有し、
前記基板は、前記第2の載置支持部材に基板を当接した状態で熱処理される、ことを特徴とする熱処理方法。
【請求項14】
前記吸引工程は、基板が前記第2の載置支持部材に着座する前から吸引を開始することを特徴とする請求項13に記載の熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−99787(P2012−99787A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123952(P2011−123952)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】