説明

熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉

【課題】アルミ合金のような反射率の高い表面状態を有する金属でも所定の短時間内で材料表面全体にわたり、比較的高温度まで所定の狭い温度差の範囲内で均一に加熱することのできる熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉を提供する。
【解決手段】熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉を、被処理品Wを載せて加熱炉内を通過させるメッシュベルトコンベア2と、加熱炉内に配置されるシーズヒータ5と、加熱炉内に配置したシロッコファン6と、該シロッコファン6を介して前記メッシュベルトコンベア2の上側近傍に多数の熱風吹き出し口を設けた熱風吹き出し部材8と、前記メッシュベルトコンベア2の上側と下側に配置される近赤外線ランプヒータ9、10と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率の高い表面状態を有し、かつ表面積の割合が高い材料、例えばアルミニウム或いはアルミニウム合金等の金属板を所定の短時間でかつ比較的高い温度(例えば500℃以上)まで、材料表面全体にわたり、所定の狭い温度範囲内で均一に加熱することの可能な熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉に関する。
【0002】
通常、配線基板(プリント基板或いは回路基板と同意)に電子部品を電気的に接続する(はんだ付けする)装置として加熱炉が用いられる。その具体例として、熱風による配線基板への伝熱量と赤外線による配線基板への伝熱量とを独立して正確・容易に制御できるようにすることによって、均一加熱であり最適な加熱プロファイルを実現でき、あらゆる配線基板に対して高品質なはんだ付けを可能とする加熱炉が提案されている。この加熱炉は、搬送コンベアで搬送される配線基板を加熱する雰囲気を、遠心送風機で循環させて雰囲気加熱用ヒータで加熱し、循環送風量を調節するとともに雰囲気の温度を雰囲気温度測定用センサで検出して対流伝熱量を制御し、配線基板を加熱する赤外線ヒータの温度を表面温度測定用センサで検出して輻射伝熱量を制御する構成としたことを特徴としている(特許文献1)。
【0003】
また、外気を流入させずに雰囲気ガスを冷却して、回路基板上の電子部品の温度を耐熱温度より低い温度に抑えつつ、回路基板上の半田の温度を溶融温度より高い温度に加熱して、半田付けを可能とするリフロー炉が提案されている。このリフロー炉は、雰囲気ガスが充填されたシール構造のシェル内で、上面に電子部品が搭載された回路基板を加熱するリフロー装置であって、シェル内の回路基板より下側に設置された赤外線ヒータと、シェル内の回路基板より上側に設置され、雰囲気ガスをシェル内で循環させる循環ファンと、循環する雰囲気ガスを回路基板の上面に吹き付けるための吹出ノズルを備えた吹出パネルとを備えた熱風吹付機構と、シェル内に外気を流入させることなく循環する雰囲気ガスを冷却する冷却機構と、を備えたリフロー炉である(特許文献2)。
【0004】
更に、従来の炉本体内の底部に送風機を配置し、炉本体の上部を扉体として開閉する場合の種々の問題点を解決し、また炉本体内の換気を熱風循環系のファンにより行えるリフロー装置として、炉本体の背面側に熱風循環用のシロッコファンを設け、前面側に加熱室を配置し、下部にヒータユニットを配置して、熱風循環系を設け、加熱室を経て基板の搬送コンベヤを設け炉本体の前面側に扉体を開閉自在に設け、前記シロッコファンの回転軸の周囲に吸気孔を設け、該シロッコファンの吐出側に排気孔を設けた構成のものが知られている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平08−195552号
【特許文献2】特開2005−79466
【特許文献3】特開平10−0714564号
【0006】
ところで、アルミ合金等の新たな熱処理プロセスの開発の必要性や高温状態での金属物性を分析・調査するする場合、特に急速に目的温度に昇温させ且つ金属表面を均一に短時間で目的の一定温度とする必要があるとき、いかにしてこれを実現するか問題となる。アルミニウムは純アルミニウムでも融点が660℃と低いのでその合金の融点となるともっと低い温度となる。さらに、570℃程度の温度に短期間で昇温する場合、従来技術では想定されていない温度であり、限界に近い温度である。従って急速加熱で、かつ厳格な均熱性が要求されるのもそのためであるが、かかる急速な均一加熱状態を実現する手法は知られていない。また、アルミ合金の高温熱処理として良く知られているものとして、溶体化処理というものがある。これは500〜540℃で行うのが一般的である。
【0007】
上記する比較的高い温度まて材料表面全体にわたり、所定の狭い温度差の範囲内で均一に加熱することは、赤外線加熱のみでいろいろと試行してみたが不可能であった。すなわち、上記した従来の加熱炉(リフロー炉)は、回路基板と電子部品とを接続する加熱炉として用いられ、回路基板の回路上に搭載される半導体デバイスのチップや其の他の電子部品を電気的に接続するためハンダ付けする加熱炉である。これらの加熱炉では予熱後に数秒間約240℃程度の温度に昇温させてハンダを溶融させ、その直後に急冷するすることによりハンダ付けを行うものであり、加熱炉を用いて500℃以上に被処理品を短時間で急速に均一加熱する場合、連続加熱炉を用いてこれを実施したという例がなく、その具体的構成や方法は知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、アルミ合金のような反射率の高い表面状態を有する金属でも所定の短時間内で材料表面全体にわたり、比較的高温度まで所定の狭い温度差の範囲内で均一に加熱することのできる熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉が、被処理品を載せて加熱炉内を通過させるメッシュベルトコンベアと、加熱炉内に配置されるシーズヒータと、加熱炉の上部に配置したシロッコファンと、該シロッコファンより下側に位置させ、該シロッコファンを介して前記メッシュベルトコンベアの上側近傍に多数の熱風吹き出し用開口部を設けた熱風吹き出し部と、前記メッシュベルトコンベアの上側に配置される近赤外線ランプヒータ及びコンベアベルトの下側近傍に配置した近赤外線ランプヒータと、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉が、被処理品を載せて加熱炉内を通過させるメッシュベルトコンベアと、加熱炉内に配置されるシーズヒータと、加熱炉の上部に配置したシロッコファンと、該シロッコファンを介して該シロッコファンより下側に位置させ、前記メッシュベルトコンベアの上側近傍に多数の熱風吹き出し口を設けた熱風吹き出し部と、前記メッシュベルトコンベアの上側に配置される近赤外線ランプヒータ及びメッシュベルトコンベアの下側近傍に配置した近赤外線ランプヒータと、を備え、これらシーズヒータ配置空間とシロッコファン配置空間と熱風吹き出し部と上側の近赤外線ランプヒータ及びコンベアベルトを挟んで下側の近赤外線ランプヒータを経た下側空間から前記シーズヒータ空間へ続く閉鎖加熱空間を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項3の発明は、上記請求項1又は請求項2の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉が、熱風の温度を温度センサで計測して温度調節計でシースヒータの出力をPID制御することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4の発明は、上記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱風循環・近赤外加熱併用式連続炉が、シロッコファンは、インバータによって回転数を制御されるモータ駆動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、従来困難とされた比較的高温状態への急速な加熱と反射率の高い表面状態を有し、かつ表面積の割合が高い材料、例えばアルミニウム或いはアルミニウム合金等の金属板を所定の短時間でかつ比較的高い温度(例えば500℃以上)まで、材料表面全体にわたり、所定の狭い温度範囲内で均一に加熱することの可能な熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉を提供することができる。特に、600℃近い温度への急速加熱と誤差の少ない温度差で均一な加熱状態を維持することができる。そしてシーズヒータの出力を制御することにより炉内温度の安定化を図ることができる。また、シロッコファンのインバータ制御により熱風の風量を可変制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本発明の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉の構成を示す図であり、図2は図1のP矢視図である。
【0015】
1は加熱炉である。2はメッシュベルトコンベアであり、多数の小孔が設けてあり風通しが良くしてあるものを用いるのが良い。5はシーズヒータであり、空気を加熱して,次のシロッコファン6方向へ加熱空気を流通させる。該シロッコファン6は、加熱炉1の上部空間に配置され、モータ7によって駆動される。8は、熱風吹き出し部材であって、メッシュベルトコンベア2の上部近傍にその吹き出し口8a,8a,・・(吹き出し用開口部8a,8a,・・とする)が設けてある。前記メッシュベルトコンベア2の上側近傍、すなわち前記吹き出し用開口部8a,8a,・・とほぼ同じ高さ位置であって、熱風吹き出し開口部8aではない位置には近赤外線ランプヒータ9が水平に配置されると共に,該メッシュベルトコンベア2の下側近傍にも近赤外線ランプヒータ10が水平に配置されている。本発明の実施例では図に示すように、近赤外線ランプヒータ9、10は1ゾーン当たり5本をメッシュベルトコンベア2の上下に計10本設置し、被処理品Wを加熱するようにしてある。
【0016】
図3(A)は前記熱風吹き出し部材8の平面図であり、図3(B)はその正面図である。前記熱風吹き出し部材8は、前記上側近傍の近赤外線ランプヒータ9の周囲に配置されている。該熱風吹き出し部材8には多数の熱風吹き出し口用の開口部8a,8a,・・が設けられ、前記加熱炉1内の上部空間の熱風がこれら熱風吹き出し口用の開口部8a,8a,・・から処理品Wに吹き付けるように構成してある。
【0017】
以上のような構成から判るように、シーズヒータ5の配置された空間20とシロッコファン6の配置された空間21、熱風吹き出し部材8の上側の空間22と熱風吹き出し部材8を通過した近赤外線ランプヒータ9、10の配置された空間23とこれらの近赤外線ランプヒータ9、10を通過して元のシーズヒータ5へ通じる空間24は閉鎖加熱空間を形成する。そして、前記加熱炉1の内部は、仕切板11,12,13によって風の通路20、21、22が形成され、前記シロッコファン5によって発生した熱風の流れは矢印のように循環・流通する。
【0018】
以上の構成から成るこの熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉では、図4に示すように、シロッコファン(循環ファン)6を駆動すると、被処理品Wは、前記熱風吹き出し部材8に形成された熱風吹き出し口用の開口部8a,8a,・・から通過する熱風と同時にメッシュベルトコンベア2の上下に設置された近赤外線ランプヒータ9,9,・・、10,10,・・による輻射熱によって加熱されることになる。すなわち、被処理品Wは、熱風と輻射熱との二重の加熱手段により加熱されることとなる。以上のような構成により、被処理品Wは、シーズヒータ5とシロッコファン6からの熱風が吹き付けられ、その熱風がメッシュベルトコンベア2を通過して、再びシーズヒータ5の設置された空間を通過し、シロッコファン6の設置された通路空間20へ流通し、この流れが繰り返される一方、メッシュベルトコンベア2の上部と下部に設置された近赤外線ランプヒータ9,9,・・10,10,・・の輻射熱によって更に加熱される。
【0019】
図4において、15は制御用熱電対であってシーズヒータ5を制御するためのものであり、この熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉では、加熱炉1内の温度の制御方式は、近赤外線ランプヒータ9,10を常時一定出力とし、熱風の加熱源であるシーズヒータの出力を制御する方式として、炉内温度の安定化を図っている。

【実施例】
【0020】
実施例は以下のような方法により行った(図5参照)。
メッシュベルトコンベア2上に載せた被処理品Wは、コンベア駆動モータ4を駆動して加熱炉1に導入される。16と17は外気を遮断しまた熱気の流出を防止するカーテンである。加熱炉1内では第1ゾーンから第2ゾーン、そして第3ゾーンへと搬送され、その間にシーズヒータ5からの熱風をシロッコファン6で流通させ、前記熱風吹き出し部材8に形成された熱風吹き出し口用の開口部8a,8a,・・から風(熱風)が通過し、被処理品Wに吹き付けられる。近赤外線ランプヒータ9,10はメッシュベルトコンベア2の上下に配置される。すなわち、被処理品Wは、シーズヒータ5の熱をシロッコファン6を介して熱風により加熱すると共に、近赤外線ランプヒータ9、10の輻射熱により同時加熱されることとなる。加熱部は560mmの長さで1ブロックとなっており、560mmのブロックが3ブロックで構成されており、入口と出口側には炉口断熱材が設置されている。なお、該シロッコファン6はインバータによって回転数を制御されたモータ7によって運転され、インバータの周波数によって熱風の風量を可変することができる。熱風は被処理品Wの上方から下向きに噴射し、熱風を当てることにより被処理品Wを加熱する。熱風吹き出し口部材8の開口部(吹き出し口8a,8a,・・)は、1ゾーン当たり幅方向12列×長さ方向6列の計72箇所の角孔とすることにより噴き出す熱風を整流して風速の均一化を図っている。
【0021】
加熱炉1内の温度は温度制御することができる。すなわち、熱電対15で熱風の温度を測定し、温度調節計でシーズヒータ5の出力をPID制御する。温度設定は、3つあるゾーン毎に行うことができる。最高設定温度は700℃とした。近赤外線ランプヒータ9、10は出力を手動設定することにより、常時一定出力で使用する。設定値は出力設定器(温度調節計)にて行う。出力設定は各ゾーン毎に行うことができる。
【0022】
図5(A)は、実際に本発明の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉で被処理物Wを加熱した場合の試験結果を示すグラフであり、図5(B)は加熱炉1の内部の第1ゾーン〜第3ゾーンまでのメッシュベルトコンベア2の移動状況を示す図である。すなわち、被処理品Wの加熱状況は、図5(B)に示すメッシュベルトコンベア2の進行状況により図5(A)に示すような温度状況となる。本試験では、ピーク温度は570℃とし、温度精度を±5℃、被処理物の在炉時間を90秒以内、被処理物Wを2×400×400(mm)のアルミ板とした。ほぼ満足のいく結果が得られた。以上説明したように、熱風と輻射熱との組み合わせで実施することにより上記課題を達成することが出来ることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉の構成を示す図である。
【図2】図1のP矢視図である。
【図3】図3(A)は前記熱風吹き出し部材7の平面図であり、図3(B)はその正面図である。
【図4】本発明の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉における被処理品の加熱時の熱風の流れを示す図である。
【図5】図5(A)は、実際に本発明の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉で被処理品を加熱した場合の試験結果を示すグラフであり、図5(B)は加熱炉の内部の第1ゾーン〜第3ゾーンまでのメッシュベルトコンベアの移動状況を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 加熱炉
2 メッシュベルトコンベア
3 ベルト駆動ローラ
4 モータ
5 シーズヒータ
6 シロッコファン
7 モータ
8 熱風吹き出し部材
8a 吹き出し口
9、10 近赤外線ランプヒータ
15 熱電対(温度センサ)
11,12,13 仕切板
20、21、22 風の通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理品を載せて加熱炉内を通過させるメッシュベルトコンベアと、加熱炉内に配置されるシーズヒータと、加熱炉の上部に配置したシロッコファンと、該シロッコファンより下側に位置させ、該シロッコファンを介して前記メッシュベルトコンベアの上側近傍に多数の熱風吹き出し用開口部を設けた熱風吹き出し部と、前記メッシュベルトコンベアの上側に配置される近赤外線ランプヒータ及びコンベアベルトの下側近傍に配置した近赤外線ランプヒータと、を備えて成ることを特徴とする熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉
【請求項2】
被処理品を載せて加熱炉内を通過させるメッシュベルトコンベアと、加熱炉内に配置されるシーズヒータと、加熱炉の上部に配置したシロッコファンと、該シロッコファンを介して該シロッコファンより下側に位置させ、前記メッシュベルトコンベアの上側近傍に多数の熱風吹き出し口を設けた熱風吹き出し部と、前記メッシュベルトコンベアの上側に配置される近赤外線ランプヒータ及びメッシュベルトコンベアの下側近傍に配置した近赤外線ランプヒータと、を備え、これらシーズヒータ配置空間とシロッコファン配置空間と熱風吹き出し部と上側の近赤外線ランプヒータ及びコンベアベルトを挟んで下側の近赤外線ランプヒータを経た下側空間から前記シーズヒータ空間へ続く閉鎖加熱空間を形成したことを特徴とする熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉。
【請求項3】
熱風の温度を温度センサで計測して温度調節計でシースヒータの出力をPID制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉。
【請求項4】
シロッコファンは、インバータによって回転数を制御されるモータ駆動することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱風循環・近赤外線加熱併用式連続炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−249246(P2008−249246A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91226(P2007−91226)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】