説明

物体検出装置、および車車間通信システム

【課題】車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置において、路側物と二輪車等の車両とを精度よく識別できるようにする。
【解決手段】支援制御ECUは、車両検出処理において、複数のサイドカメラによる撮像画像に基づく画像処理と、複数のソナーによる検出タイミングの差分とによって検出した物体の各移動速度を比較することにより、物体が車両であるか否かを判定する。即ち、別々に検出した物体の移動速度を比較することによって、物体の移動速度を高精度に求め、この物体の移動速度に基づいて物体が車両であるか路側物であるかを識別できるようにしている。従って、路側物の形状が車両の形状と似ている場合であっても、この物体が路側物であるか車両であるかを誤判定することなく精度よく識別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置、および物体検出装置を備えた車車間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダおよびカメラを用いて周囲の車両を検出することができる物体検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような物体検出装置においては、通常、検出した物体の大きさや形状(いわゆるパターンマッチング)に基づいて、この物体が車両(乗用車や二輪車)であるか、街路樹や電柱等の路側物であるか等を識別している。
【特許文献1】特開2006−085285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記物体検出装置において二輪車等の車両を検出する際に、単にレーダおよびカメラを用いるだけでは、路側物の形状が車両の形状と似ている場合などに、これらの識別をすることが困難になる虞があった。このため、上記物体検出装置においては、路側物を車両として認識したり、車両を路側物として認識したりするという問題点があった。
【0004】
そこで、車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置において、路側物と二輪車等の車両とを精度よく識別できるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の物体検出装置においては、車両判定手段が、複数の物体速度検出手段がそれぞれ検出した各物体の移動速度を比較することにより、物体が車両であるか否かを判定する。
【0006】
即ち、本発明の物体検出装置においては、別々に検出した物体の移動速度を比較することによって、物体の移動速度を高精度に求め、この物体の移動速度に基づいて物体が車両であるか路側物であるかを識別できるようにしている。
【0007】
従って、このような物体検出装置によれば、路側物の形状が車両の形状と似ている場合であっても、この物体が路側物であるか車両であるかを誤判定することなく精度よく識別することができる。
【0008】
なお、本発明において、車両判定手段は、検出した各移動速度を比較するようにしているので、この比較によって、例えば、各移動速度に、予め設定された所定速度(所定速度比)以上の速度差があるか否かを検出し、この検出結果に応じて車両であるか路側物であるかの識別結果を変更することもできる。
【0009】
ところで、請求項1に記載の物体検出装置において、複数の物体速度検出手段としては、同一の手法を用いて各移動速度を検出してもよいが、各移動速度の検出精度を向上させるためには、異なる複数の手法を用いて各移動速度を検出するようにしてもよい。この場合には、例えば、請求項2における記載のような構成が考えられる。
【0010】
即ち、複数の物体速度検出手段としては、当該車両の周囲を撮像する撮像手段による撮像画像の時間的変化に基づいて物体の移動速度を演算する画像速度演算手段と、当該車両の周囲の複数箇所からそれぞれ音波または電磁波を送信し、その反射波をそれぞれ受信する測距手段による検出結果の時間的変化に基づいて前記物体の移動速度を演算する測距速度演算手段と、を備えていてもよい。
【0011】
このような物体検出装置によれば、複数の異なる手法として、音波または電磁波を用いた手法および画像処理を用いた手法を採用しているので、何れか同一の手法を複数用いる場合と比較して、ノイズや天候等の周囲環境の影響を受け難くすることができる。よって、移動速度の検出精度を向上させることができる。
【0012】
さらに、請求項2に記載の物体検出装置においては、請求項3に記載のように、撮像手段は、当該車両の側方を撮像範囲とするよう配置され、測距手段は、当該車両の前後において当該車両の側方を検出範囲とするよう配置されていてもよい。
【0013】
このような物体検出装置によれば、撮像手段および測距手段が当該車両の側方を検出範囲としているので、当該車両の側方をすり抜ける車両(特に二輪車)を良好に検出することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の物体検出装置においては、請求項4に記載のように、撮像手段は、当該車両の側方において各測距手段の間に配置されており、画像速度演算手段は、一方の測距手段により物体が検出されると、撮像手段による撮像画像に基づく物体の移動速度演算を開始するようにしてもよい。
【0015】
このような物体検出装置によれば、撮像手段により物体が検出される検出タイミングを事前に予想することができるので、この検出タイミングにおける物体を検出し易くすることができる。よって、当該車両の側方をすり抜ける車両(特に二輪車)をより良好に検出することができる。
【0016】
さらに、請求項4に記載の物体検出装置において、画像速度演算手段は、請求項5に記載のように、他方の測距手段により物体が検出されると、移動速度演算を終了するようにしてもよい。
【0017】
このような物体検出装置によれば、移動速度演算を終了する時期を設定することができるので、画像速度演算手段が物体を検出できない時期に無駄な処理を実施することを防止することができる。
【0018】
また、上記目的を達成するためには、請求項6に記載の車車間通信システムとして構成してもよい。即ち、このシステムを構成する車車間通信装置は、それぞれ、当該車車間通信装置が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を検出する自車両情報検出手段と、当該車車間通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する周辺車両の位置情報を含む周辺車両の情報を検出する周辺車両情報検出手段と、他の車車間通信装置と通信するための通信手段とを備え、周辺車両情報検出手段が請求項1〜請求項5の何れかに記載の物体検出装置として構成されている。
【0019】
従って、このような車車間通信システムによれば、請求項1〜請求項5の何れかに記載の物体検出装置の構成を備えているので、請求項1と同様に、検出した物体が路側物であるか車両であるかを誤判定することなく精度よく識別することができる。
【0020】
また、検出した車両の情報を他車両(他の車車間通信装置)に対して送信することができるので、車両の情報を受けた他車両は、車両の存在を容易に把握することができる。よって、車両の見落とし等による事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
まず、本実施形態の概要について図1を用いて説明する。図1は二輪車等の車両の検出方法を示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、渋滞等により停止または低速走行している対向車両は、この対向車両の脇をすり抜ける二輪車等の車両を、電柱や街路樹等の路側物とは識別して検出し、この車両の情報を、交差点を右折しようとする右折車両に送信する。そして、右折車両では、この車両の情報の情報に基づいて警告等の運転動作の支援を行う。
【0023】
つまり、本実施形態の車車間通信システムでは、このような処理を実施することにより、対向車両の脇をすり抜ける車両と、右折車両との衝突を回避しようとするものである。
より詳細な実施形態について、図2以下を用いて説明する。図2は、本発明が適用された車車間通信システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
車車間通信システム1は、複数の車両に夫々搭載され、互いに無線通信可能にされた車車間通信装置10(物体検出装置)により構成されている。
車車間通信装置10は、図2に示すように、支援制御ECU2(ECUは電子制御装置)と、ブレーキECU3と、ナビゲーションECU4と、エンジンECU6と、物体検出ECU7と、ライトECU8と、を備えている。
【0025】
各ECU2〜8は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されており、通信線を介してCAN等の所定の通信プロトコルで他のECU2〜8と通信可能に構成されている。
【0026】
支援制御ECU2は、後述する車両検出処理や運転支援処理等を実行し、これらの処理の実行結果に応じて、他の車車間通信装置10に対して無線機20(通信手段)を介して通信を実施するとともに、表示装置21やスピーカ22を介して車両の運転者に二輪車等の車両の存在を報知する。
【0027】
また、支援制御ECU2は、物体検出ECU7より受信した各種情報(画像処理による物体の形状・位置の情報や、ソナー72による検出結果の情報(詳細は後述))を、一定時間(例えば2秒間)だけ支援制御ECU2の内部メモリ(図示省略)に蓄積する。
【0028】
表示装置21は、例えば地図画像等を表示するLCD(液晶カラーディスプレイ)や、フロントガラスに画像を重ねて表示させるHUD(ヘッドアップディスプレイ)として構成されており、支援制御ECU2による処理の実行結果や、ナビゲーションECU4により生成された地図情報等を表示する。
【0029】
なお、表示装置21およびスピーカ22は、ナビゲーションECU4に接続されていてもよい。
ブレーキECU3は、操舵角を検出するステアリングセンサ31や角速度を検出するヨーレートセンサ32による検出結果に応じて、制動用ブレーキ(図示省略)を制御する。また、ブレーキECU3は、パーキングブレーキ33の作動状態を検出する。
【0030】
ナビゲーションECU4は、GPSアンテナ41による検出結果に基づいて、自車両の現在地を検出し、この現在地に応じて、HDD(ハードディスクドライブ)42に格納された地図情報を読み出し、地図情報に自車両の現在地を重ねた地図画像を生成する。そして、ナビゲーションECU4は、地図情報および生成した地図画像を支援制御ECU2に送信することにより、支援制御ECU2を介して表示装置21に地図画像を表示させる。
【0031】
エンジンECU6は、自車両の車速を検出する車速センサ61による検出結果に応じてエンジン(図示しない噴射制御装置等)を制御するとともに、車速センサ61による検出結果(車速情報)を支援制御ECU2やナビゲーションECU4に送信する。
【0032】
物体検出ECU7は、予め設定された時間間隔(例えば100ms)毎に、サイドカメラ71(撮像手段)、ソナー72(測距手段)を用いてサイドカメラ71による撮像範囲内、およびソナー72による検出可能領域内の物体を検出する処理を実施し、物体の位置、形状等のデータを一定時間(例えば2秒間)分、内部メモリに記録する。なお、物体検出ECU7がサイドカメラ71を用いて物体を検出する際には、サイドカメラ71による撮像画像中から物体の形状・位置の情報を画像処理によって検出する。ただし、物体の形状から物体の種別(車両であるか路側物であるか)を特定する処理については、支援制御ECU2が実施する。
【0033】
ここで、車車間通信装置10は、ソナー72として、前方左側ソナー73(図1参照)、前方右側ソナー(図示省略)、後方左側ソナー74(図1参照)、後方右側ソナー(図示省略)を備えており、各ソナーは車両における4箇所の角部に車両の外側に向けて配置されている。そして、各ソナー(ソナー72)は、間欠的に超音波を送信し、車両の周囲に存在する物体にて反射された超音波の反射波を検出する。
【0034】
この構成により、物体検出ECU7は、ソナー72を用いて、反射波が検出されるまでの時間を測定することにより、車両の周囲に存在する車両や路側物等の物体の有無や、物体までの距離を検出することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、ソナー72を用いて自車両の脇をすり抜ける二輪車を検出することを想定しているので、ソナー72は、例えば、検知距離:3m、検知エリア幅:1m、超音波の送信間隔時間:75msに設定されている。
【0036】
また、本実施形態において、このようなソナー72を用いて二輪車を検出する際には、車両の左側に配置されたソナー(前方左側ソナー73および後方左側ソナー74)を用いて二輪車を検出する。即ち、ソナーECU5は、ソナー72による検出結果が、「未検出」、「検出」、「未検出」の順で変化すると、何らかの物体を検出したものと判定し、この検出結果を支援制御ECU2に送信する。
【0037】
また、サイドカメラ71は、図1に示すように、前方左側ソナー73および後方左側ソナー74の間の位置にある車両のサイドミラーに搭載されており、その撮像範囲は車両の側方全体をカバーするように設定されている。なお、このサイドカメラ71は、車両の左前輪近傍を撮像するカメラと兼用されている。
【0038】
ここで、このように構成された車車間通信装置10においては、車車間通信装置10を搭載した車両の周囲の物体が車両であるか否かを判定し、この物体が車両である場合に、この車両情報を他の車車間通信装置10に送信する処理や、他の車車間通信装置10から受信した車両情報に基づいて警告を実施する処理を実施する。
【0039】
まず、周囲の物体が車両であるか否かを判定し、この物体が車両である場合に、この車両情報を他の車車間通信装置10に送信する処理について図3を用いて説明する。図3は支援制御ECU2が実施する車両検出処理(車両判定手段、周辺車両情報検出手段)を示すフローチャートである。
【0040】
車両検出処理は、例えば、車両のパーキングブレーキ33が解除されると開始される処理であって、図3に示すように、まず、物体検出ECU7を介して後方左側ソナー74により物体が検出されたか否かを判定する(S110)。後方左側ソナー74により物体が検出されていなければ(S110:NO)、S110の処理を繰り返す。
【0041】
また、後方左側ソナー74により物体が検出されていれば(S110:YES)、物体検出ECU7により検出された物体の形状の情報から物体の種別(車両(四輪車または二輪車)であるか否か)を解析する(S120)。
【0042】
具体的には、支援制御ECU2は、物体検出ECU7から得られた物体の形状と、予め支援制御ECU2のROM等のメモリに記録された形状パターンデータとを照合し、その一致率によって、物体の種別が何れの種別(四輪車、二輪車、電柱、街路樹等)である可能性が高いかを算出する。
【0043】
なお、物体の種別毎に、物体の移動時に、撮像画像中の形状がどのように変化するかを表す形状データをメモリに格納しておき、物体検出ECU7から得られた物体の形状の変化が、形状データと一致する度合によって、物体の種別を判別するようにしてもよい。
【0044】
続いて、物体が車両(四輪車または二輪車)であるか否かを判定する(S130)。この処理においては、例えば、S120の処理にて検出した物体を車両(四輪車または二輪車)であるとする確率が、予め設定された閾値(例えば50%程度)よりも高いか否かを判定し、物体を車両であるとする確率がこの閾値よりも高ければ、車両であると判断するようにすればよい。
【0045】
物体が車両でなければ(S130:NO)、S110の処理から予め設定された規定時間(例えば1秒程度)が経過したか否かを判定する(S140)。規定時間が経過していなければ(S140:NO)、S120の処理に戻る。また、規定時間が経過していれば(S140:YES)、路側物を検出したものとしてS110の処理に戻る。
【0046】
一方、S130の処理において、物体が車両であれば(S130:YES)、内部メモリに蓄積された所定時間前(例えば200ms前)における物体(車両)の位置情報と、現在における物体の位置情報とに基づいて、物体の移動量を検出することによって、車両の移動速度を算出する(S150:物体速度検出手段、画像速度演算手段)。
【0047】
ここで、この処理(後述するS180の処理においても同様)においては、エンジンECU6を介して車速センサ61による検出結果を取得し、画像処理により得られた物体の速度(自車両との相対速度)から自車両の車速を加減算することにより、物体の絶対速度(対地速度)を算出する。なお、この処理において、自車両の車速が停止しているとみなすことができる速度(例えば、各移動速度が5km/h未満)である場合には、画像処理により得られた物体の速度をそのまま物体の絶対速度とみなしてもよい。
【0048】
続いて、物体検出ECU7を介して前方左側ソナー73により物体が検出されたか否かを判定する(S160)。前方左側ソナー73により物体が検出されていなければ(S160:NO)、S150の処理から予め設定された規定時間(例えば1秒程度)が経過したか否かを判定する(S170)。規定時間が経過していなければ(S170:NO)、S160の処理に戻る。また、規定時間が経過していれば(S170:YES)、路側物を検出したものとしてS110の処理に戻る。
【0049】
また、前方左側ソナー73により物体が検出されていれば(S160:YES)、後方左側ソナー74および前方左側ソナー73による検出タイミングの差、およびこれらの取付位置の距離とに基づいて、物体の移動速度を算出する(S180:物体速度検出手段、測距速度演算手段)。そして、画像処理により検出した移動速度とソナー73,74により検出した移動速度とを比較し、各移動速度が概ね等しいか否か(例えば、各移動速度の速度差が±5km/h以内であるか否か)を判定する(S190)。
【0050】
各移動速度が概ね等しいとはいえない場合には(S190:NO)、路側物を検出したものとしてS110の処理に戻る。また、各移動速度が概ね等しい場合には(S190:YES)、物体が車両であることを特定し、この車両の位置や移動速度の情報を車両情報として内部メモリに記録する(S200)。
【0051】
なお、この処理においては、S120における画像処理結果や、各ソナー73,74による物体の検出時間の長さ(各ソナー73,74は、検出物体の大きさによって物体を検出している時間が長くなること)を利用して、車両が四輪車または二輪車であることを特定し、車両情報として記録する。また、自車両の位置情報(ナビゲーションECU4よる検出結果)や、自車両の速度の情報(車速センサ61による検出結果)も、各々取得し、内部メモリに記録する(自車両情報検出手段)。
【0052】
そして、この車両情報を他の車車間通信装置10に対して送信する(S210)。最後に、運転支援を終了するか否かを判定する(S220)。この処理においては、車両のパーキングブレーキ33がかけられたことを検出した場合や、運転支援を終了する旨の指令が図示しない操作部を介して入力された場合等に、運転支援を終了すると判定する。
【0053】
運転支援を終了する場合には(S220:YES)、車両検出処理を終了する。一方、運転支援を終了しない場合には(S220:NO)、車両検出処理を始めから繰り返す。
なお、車両検出処理のS190の処理において、各移動速度が停止しているとみなすことができる速度(例えば、各移動速度が5km/h未満)である場合には、停止車両を検出したものとして(つまり、この物体は右折車両には危険を及ぼす虞がないものとして)、車両情報を送信する処理(S200,S210)を実施することなく、S110の処理に戻るようにしてもよい。即ち、この場合には、S190の処理にて肯定判定されたものとして処理すればよい。
【0054】
次に、各車車間通信装置10が他の車車間通信装置10から受信した障害物情報に基づいて警告を実施する処理について、図4を用いて説明する。図4は、支援制御ECU2が実施する運転支援処理を示すフローチャートである。
【0055】
この運転支援処理は、前述の車両検出処理と同様に、例えば、車両のパーキングブレーキ33が解除されると開始される処理であって、前述の車両検出処理とは並行して実施される。
【0056】
この運転支援処理では、S310〜S350(S330を除く)の処理にて、自車両が運転処理を実施すべき状況下におかれているか否かを判定する。具体的には、まず、自車両が支援交差点に接近しているか否か(S310)、他の車車間通信装置10から障害物情報を受信したか否か(S320)、右ウインカが作動しているか(S340)、および操舵角が一定角度以上であるか否か(S350)を判定する。
【0057】
ここで、S310における支援交差点に接近しているか否かを判定する処理については、ナビゲーションECU4に対してGPSアンテナ41を介して受信した信号に基づく車両の位置情報および地図情報を要求し、自車両の現在地が運転支援を実施する対象となる支援交差点から予め設定された所定距離(例えば、100m程度や特定小電力無線通信で通信可能な距離等)以内であるか否かを判定する。
【0058】
また、S340における右ウインカが作動しているか否かを判定する処理については、ライトECU8を介してウインカ81(右ウインカ)の作動状態を取得することにより実施する。
【0059】
さらに、S350における操舵角が一定角度以上であるか否かを判定する処理については、ブレーキECU3を介してステアリングセンサ31による操舵角の検出結果を取得し、この取得結果が予め設定された操舵角の操舵閾値以上であるか否かを判定することにより実施する。
【0060】
S310,S340,S350の何れかの処理にて、否定判定されれば(S310,S340,S350の何れかでNO)、運転支援を実施することなく後述するS370に移行する。また、S320の処理にて否定判定されれば(S320:NO)、障害物情報が未検出である旨を自車両の運転者に報知し(S330)、後述するS370に移行する。
【0061】
なお、S330の処理にて障害物情報が未検出である旨を運転者に報知する方法としては、例えば、表示装置21に「情報なし」等のメッセージを表示させるか、或いはスピーカから「障害物情報を受信できません」等のメッセージを音声で通知するなどすればよい。
【0062】
ここで、S330による報知を実施せずに単にS370に移行すると、運転者は、障害物情報が未検出であるために報知がされないのか、障害物情報は検出されているが障害物について報知する必要がないために報知がされないのか、を判断することができない。よって、S330の処理を実施することによって、運転者が、障害物情報が未検出である旨を明確に認識できるようにしている。
【0063】
また、S310〜S350(S330を除く)の全ての処理にて、肯定判定されれば(S310〜S350(S330を除く)の全てでYES)、S360の処理にて運転者に対する警告を実施する。
【0064】
この警告としては、例えば、表示装置21に、特定された車両を表すマーク(四輪車マーク、二輪車マーク等)を含む画像を表示させることにより、運転者の視覚に訴える報知を実施するようにすればよい。この場合の具体例としては、支援制御ECU2は、図1に示すように、四輪車の位置および二輪車の位置を地図データに基づく略図とともに表示装置21に表示させるようにすればよい。
【0065】
また、この警告としては、視覚以外の五感に訴える報知(例えば、スピーカを用いた音声による報知、シートやハンドルを振動させる報知、シートベルトを巻き上げる報知等)を実施するようにしてもよい。
【0066】
続いて、直ちに運転支援を終了するか否かを判定する(S370)。ここで、S370の処理においては、S220の処理と同様に、車両のパーキングブレーキ33がかけられたことを検出した場合や、運転支援を終了する旨の指令が図示しない操作部を介して入力された場合等に、運転支援を終了すると判定する。
【0067】
運転支援を終了する場合には(S370:YES)、運転支援処理を終了する。一方、運転支援を終了しない場合には(S370:NO)、運転支援処理を始めから繰り返す。
以上のように詳述した車車間通信システム1を構成する車車間通信装置10は、ナビゲーションECU4が自車両の位置情報を含む自車両の情報を検出し、支援制御ECU2が、物体検出ECU7、サイドカメラ71、ソナー72等を用いて自車両の周囲に存在する周辺車両の位置情報を含む周辺車両の情報を検出する。
【0068】
特に、支援制御ECU2は、車両検出処理において、サイドカメラ71による画像処理、および複数のソナー72による検出タイミングの差分を用いてそれぞれ検出した物体の各移動速度を比較することにより、物体が車両であるか否かを判定する。
【0069】
即ち、車車間通信装置10においては、別々に検出した物体の移動速度を比較することによって、物体の移動速度を高精度に求め、この物体の移動速度に基づいて物体が車両であるか路側物であるかを識別できるようにしている。
【0070】
従って、このような車車間通信装置10によれば、路側物の形状が車両の形状と似ている場合であっても、この物体が路側物であるか車両であるかを誤判定することなく精度よく識別することができる。
【0071】
また、車車間通信装置10においては、検出した車両情報を他車両(他の車車間通信装置)に対して無線機20を介して無線送信することができるので、車両の情報を受けた他車両は、車両の存在を容易に把握することができる。よって、車両の見落とし等による事故を防止することができる。
【0072】
さらに、支援制御ECU2は、検出した各移動速度を比較するようにしているので、この比較によって、例えば、各移動速度に、予め設定された所定速度(所定速度比)以上の速度差があるか否かを検出し、この検出結果に応じて車両であるか路側物であるかの識別結果を変更することもできる。特に本実施形態においては、速度差が所定速度以上である場合には、検出した物体は路側物であるものと判定している。従って、この構成によれば、車両の検出精度を向上させることができる。
【0073】
さらに、車車間通信装置10において、支援制御ECU2は、車両の周囲を撮像するサイドカメラ71による撮像画像の時間的変化に基づいて物体の移動速度を演算する手法と、車両の周囲の複数箇所からそれぞれ音波または電磁波を送信し、その反射波をそれぞれ受信するソナー72による検出結果の時間的変化に基づいて物体の移動速度を演算する手法とを用いている。
【0074】
従って、このような車車間通信装置10によれば、複数の異なる手法として、音波または電磁波を用いた手法および画像処理を用いた手法を採用しているので、何れか同一の手法を複数用いる場合と比較して、ノイズや天候等の周囲環境の影響を受け難くすることができる。よって、移動速度の検出精度を向上させることができる。
【0075】
また、車車間通信装置10において、サイドカメラ71は、車両の側方を撮像範囲とするよう配置され、ソナー72は、車両の前後において車両の側方を検出範囲とするよう配置されている。
【0076】
従って、このような車車間通信装置10によれば、サイドカメラ71およびソナー72が車両の側方を検出範囲としているので、車両の側方をすり抜ける車両(特に二輪車)を良好に検出することができる。
【0077】
さらに、車車間通信装置10においては、サイドカメラ71が車両の側方において各ソナー72(後方左側ソナー74および前方左側ソナー73)の間に配置されており、支援制御ECU2は、一方のソナー72(後方左側ソナー74)により物体が検出されると、サイドカメラ71による撮像画像に基づく物体の移動速度演算を開始する。
【0078】
従って、このような車車間通信装置10によれば、サイドカメラ71により物体が検出される検出タイミングを事前に予想することができるので、この検出タイミングにおける物体を検出し易くすることができる。よって、車両の側方をすり抜ける車両(特に二輪車)をより良好に検出することができる。
【0079】
さらに、車車間通信装置10において、支援制御ECU2は、他方のソナー72(前方左側ソナー73)により物体が検出されると、移動速度演算を終了するようにしてもよい。
【0080】
従って、このような車車間通信装置10によれば、移動速度演算を終了する時期を設定することができるので、支援制御ECU2が物体を検出できない時期に無駄な処理を実施することを防止することができる。
【0081】
なお、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
例えば、上記実施形態において、物体を検出する検出領域を車両(対向車両)の左側に設定し、左側ソナーを使用して物体を検出するようにしたが、検出領域を車両の右側に設定し、右側ソナーを使用して物体を検出するようにしてもよい。また、検出領域を車両の両側に設定し、両側のソナーを用いて物体を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】二輪車等の車両の検出方法を示す説明図である。
【図2】車車間通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】車両検出処理を示すフローチャートである。
【図4】運転支援処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1…車車間通信システム、2…支援制御ECU、3…ブレーキECU、4…ナビゲーションECU、6…エンジンECU、7…物体検出ECU、8…ライトECU、10…車車間通信装置、21…表示装置、22…スピーカ、31…ステアリングセンサ、32…ヨーレートセンサ、33…パーキングブレーキ、41…GPSアンテナ、61…車速センサ、71…サイドカメラ、72…ソナー、73…前方左側ソナー、74…後方左側ソナー、81…ウインカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置であって、
当該車両の周囲に存在する物体の移動速度を検出する複数の物体速度検出手段と、
前記各物体速度検出手段により検出された各移動速度を比較することにより、前記物体が車両であるか否かを判定する車両判定手段と、
を備えたことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記複数の物体速度検出手段としては、
当該車両の周囲を撮像する撮像手段による撮像画像の時間的変化に基づいて前記物体の移動速度を演算する画像速度演算手段と、
当該車両の周囲の複数箇所からそれぞれ音波または電磁波を送信し、その反射波をそれぞれ受信する測距手段による検出結果の時間的変化に基づいて前記物体の移動速度を演算する測距速度演算手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、当該車両の側方を撮像範囲とするよう配置され、
前記測距手段は、当該車両の前後において当該車両の側方を検出範囲とするよう配置されたこと
を特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、当該車両の側方において前記各測距手段の間に配置されており、
前記画像速度演算手段は、一方の測距手段により物体が検出されると、前記撮像手段による撮像画像に基づく物体の移動速度演算を開始すること
を特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記画像速度演算手段は、他方の測距手段により物体が検出されると、前記移動速度演算を終了すること
を特徴とする請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
車両に搭載され、互いに通信を行う複数の車車間通信装置によって構成された車車間通信システムであって、
前記各車車間通信装置は、それぞれ、
当該車車間通信装置が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を検出する自自車両情報検出手段と、
当該車車間通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する周辺車両の位置情報を含む周辺車両の情報を検出する周辺車両情報検出手段と、
前記周辺車両情報検出手段が検出した周辺車両の情報を他車両に搭載された車車間通信装置に送信するとともに、前記他車両に搭載された車車間通信装置から送信されてくる同種の情報を受信する通信手段と、
を備え、
前記周辺車両情報検出手段として、請求項1〜請求項5の何れかに記載の物体検出装置を備えたこと
を特徴とする車車間通信システム。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−204281(P2008−204281A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41129(P2007−41129)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】