説明

現在位置情報通知システム、センタ装置及び誤差補正方法

【課題】通知対象である移動体に対して誤報知することなく現在位置情報を的確に通知する。
【解決手段】携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信により発生する通信遅延時間、センタ装置10と車載装置30との無線通信により発生する通信遅延時間を算出し、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出し、移動ベクトルと、通信遅延時間と、通信周期待ち時間とに基づき、実際の携帯端末装置20の現在位置との誤差を予測し、予測された誤差を用いて、携帯端末装置20との無線通信により取得した現在位置情報を補正することで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の現在位置情報をセンタ装置を介した無線通信により別な移動体へと通知する現在位置情報通知システム、センタ装置及び誤差補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動体の現在位置情報をセンタ装置を介した無線通信により別な移動体へと通知するシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−288785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1で開示されている技術では、特に視覚障害者や高齢者などを対象とした移動体である歩行者に移動体端末(携帯端末装置)を保持させ当該歩行者の現在位置情報と、別の移動体である自動車(車両)の現在位置情報とをセンタ装置にて統括的に管理することにより、各移動体に対して互いの現在位置情報を通知することで、安全性の確保を容易とするように構成されている。
【0004】
しかしながら、このようにセンタ装置を介すように構成されたシステムでは、携帯端末装置からセンタ装置までの無線通信による通信遅延時間、センタ装置から車両までの無線通信による通信遅延時間が発生してしまい、歩行者の位置を車両側に誤報知してしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、移動体が有する携帯端末装置の現在位置情報をセンタ装置を介して通知するシステムにおいて必然的に発生する誤差を的確に補正し、通知対象である移動体に対して誤報知することなく現在位置情報を通知することができる現在位置情報通知システム、センタ装置及び誤差補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の移動体が有する携帯端末装置と、前記第1の移動体とは異なる第2の移動体が有する端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により当該携帯端末装置の現在位置情報を取得し、取得した現在位置情報を前記端末装置との無線通信により通知するセンタ装置とを備える。
【0007】
そして、前記センタ装置は、前記携帯端末装置の移動情報を算出し、前記携帯端末装置と当該センタ装置との無線通信により発生する通信遅延時間、当該センタ装置と前記端末装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出し、前記携帯端末装置から当該センタ装置へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出する。そして、算出された移動情報と、通信遅延時間と、通信周期待ち時間とに基づき、前記携帯端末装置との無線通信により取得した現在位置情報を当該センタ装置から無線通信により前記端末装置に通知した際に発生する、実際の前記携帯端末装置の現在位置との誤差を予測し、予測された誤差を用いて、前記携帯端末装置との無線通信により取得した現在位置情報を補正する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体が有する携帯端末装置の現在位置情報をセンタ装置を介して通知するシステムにおいて必然的に発生する誤差を的確に補正し、通知対象である移動体に対して誤報知することなく現在位置情報を通知することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムについて説明をする。
【0010】
図1に示すように、現在位置情報通知システムは、当該現在位置情報通知システムを統括的に管理するセンタ装置10と、第1の移動体である複数の歩行者がそれぞれ有する携帯端末装置20と、第1の移動体とは異なる第2の移動体である複数の車両にそれぞれ搭載された端末装置である車載装置30とを備えている。現在位置情報通知システムは、主に、携帯端末装置20で取得された現在位置情報を広域通信網を介した無線通信により、センタ装置10を経由して車載装置30へと通知することができる。
【0011】
センタ装置10は、携帯端末装置20、車載装置30とそれぞれ無線通信を行う通信部11と、時刻を計時する時刻特定部12と、情報記憶部13と、処理部14とを備えている。センタ装置10は、現在位置情報通知システムを運営する運営者により管理されている。
【0012】
情報記憶部13は、当該センタ装置10で実行される各種アプリケーションソフトウェアや後述する処理部14による各種処理において必要となるデータを記憶する。
【0013】
処理部14は、当該センタ装置10を統括的に制御する制御手段である。処理部14は、一方の移動体である歩行者が有する携帯端末装置20との無線通信により取得した現在位置情報を他方の移動体である車両に搭載された車載装置30に無線通信により通知した際に発生する、実際の携帯端末装置20の現在位置との誤差を予測し、予測した誤差を用いて携帯端末装置20から取得した現在位置情報を補正する。
【0014】
具体的には、処理部14は、携帯端末装置20の移動情報を算出し、さらに、携帯端末装置20との無線通信、車載装置30との無線通信によってそれぞれ発生する通信遅延時間の算出、携帯端末装置20から当該センタ装置10へと現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出して、これらの値に基づいて予測される誤差を算出する。この処理部14による、携帯端末装置20から取得した現在位置情報の誤差を補正する一連の処理については、後で詳細に説明をする。
【0015】
携帯端末装置20は、センタ装置10と無線通信を行う通信部21と、位置特定部22と、時刻を計時する時刻特定部23と、情報記憶部24と、処理部25とを備えている。携帯端末装置20は、例えば、通話機能を備えた携帯電話装置やPDA(Personal Data Assistance)などである。
【0016】
位置特定部22は、いわゆるGPS(Global Positioning System)であり、処理部25の制御に応じて、GPS衛星から送信される信号をGPSアンテナで受信することで、GPS航法による位置計測を行い、当該携帯端末装置20の絶対位置(緯度、経度)情報を歩行者の現在位置情報として取得する。取得された携帯端末装置20の現在位置情報は、処理部25に出力される。
【0017】
情報記憶部24は、当該携帯端末装置20で実行される各種アプリケーションソフトウェア、各種データを記憶している。
【0018】
処理部25は、当該携帯端末装置20を統括的に制御する制御手段である。処理部25は、位置特定部22によって取得された現在位置情報を取得したことに応じて、少なくとも当該携帯端末装置20を一意に特定する識別情報と、現在位置情報と、時刻特定部23で計時されている時刻を参照することで取得した送信時刻とを添付した歩行者位置情報メッセージを生成し、通信部21を制御してセンタ装置10に送信する。
【0019】
車載装置30は、センタ装置10と無線通信を行う通信部31と、位置特定部32と、時刻を計時する時刻特定部33と、情報記憶部34と、処理部35と、情報提供部36とを備えている。車載装置30は、移動体である車両に搭載され、車両の現在位置を検出し、地図データから描画された車両の現在位置に対応する地図を表示しながら、所望の目的までの経路案内をする、例えば、ナビゲーション装置などである。
【0020】
位置特定部32は、いわゆるGPSを有し、処理部35の制御に応じて、GPS衛星から送信される信号をGPSアンテナで受信することで、GPS航法による位置計測を行い、当該車載装置30が搭載された移動体である車両の絶対位置(緯度、経度)情報を求める。また、位置特定部32は、図示しない距離センサから出力された走行距離情報、図示しない方位センサから出力された進行方位情報に基づいて、自律航法による車両の相対位置を求める。
【0021】
さらに、位置特定部32は、上述した絶対位置(緯度、経度)情報と、相対位置情報とから、当該車載装置30が搭載された車両の地図上における位置を算出する。算出された車両の現在位置情報は、処理部35に出力される。
【0022】
情報記憶部34は、ナビゲーション装置で実行される各種アプリケーションソフトウェアと、表示させる地図の地図データや、マップマッチング、ルートガイダンスなどに用いる道路データなど、ナビゲーションに必要となる各種データを記憶している。
【0023】
処理部35は、当該車載装置30を統括的に制御する制御手段である。処理部35は、位置特定部32から出力された現在位置情報に基づいて、対応する地図情報、道路情報など、ナビゲーションに必要となる各種情報を図示しない記憶部から読み出したり、センタ装置10から無線通信により取得するよう制御する。
【0024】
また、処理部35は、ユーザによって入力される目的地と、現在位置情報とを用いて、現在位置から目的地までの最適な走行経路を提示して目的地の近傍領域までの経路案内(ナビゲーション)をするルートガイダンスを行う。このとき、処理部35は、車載装置30に備えられた、図示しない音声出力部を制御して、音声によるナビゲーションを実行することもできる。
【0025】
さらに、処理部35は、情報提供部36に表示させる表示画像を生成する。例えば、処理部35は、表示画像としてナビゲーション用の地図を生成したり、さらに、携帯端末装置20からセンタ装置10を介して無線通信により取得した現在位置情報を付加した表示画像を生成し表示させる。
【0026】
情報提供部36は、処理部35によって生成された表示画像を表示する表示手段である。情報提供部36は、液晶ディスプレイなどであり、ユーザから視認し易い位置、例えば、車両に搭載されている場合は、主に運転者に視認し易い位置に設置される。また、情報提供部36の表示パネルは、タッチパネルになっていてもよい。
【0027】
続いて、本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムにおいて、携帯端末装置20で取得される現在位置情報をセンタ装置10を介して車載装置30に通知する際に発生する実際の携帯端末装置20の現在位置との誤差を補正する処理について説明をする。
【0028】
上述したように、誤差を発生させる要因としては、携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信により発生する通信遅延時間、センタ装置10と車載装置30との無線通信により発生する通信遅延時間、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間の3種類を想定することができる。これらの誤差を発生させる要因は、それぞれ独立に発生しているため、個別に補正処理を実行し、それぞれにおいて効果を奏することができる。また、それぞれの補正処理を組み合わせることで、より正確な補正処理を実現することができる。
【0029】
[携帯端末装置20とセンタ装置10との通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理]
まず、図2、図3に示すフローチャートを用いて、携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信による通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理動作について説明をする。なお、この補正処理は、定期的に実施されるものであり、図2、図3に示すフローチャートを用いて説明する処理ステップは、第n回目に実施された場合を想定しているものとする。
【0030】
最初に、図2に示すフローチャートを用いて、携帯端末装置20からセンタ装置10に対して歩行者位置情報メッセージを送信する処理動作について説明をする。
【0031】
ステップS1において、携帯端末装置20の処理部25は、位置特定部22を制御してGPS衛星との無線通信により緯度、経度情報である、当該携帯端末装置20の現在位置情報を取得して、位置を特定する。
【0032】
ステップS2において、処理部25は、ステップS1において取得した現在位置情報、現在位置情報を取得した時刻、当該携帯端末装置20を一意に特定する識別子などを添付した歩行者位置情報メッセージを生成する。また、処理部25は、歩行者位置情報メッセージを送信する時刻である送信時刻(TimePTn)を時刻特定部23で計時されている時刻を参照して、当該歩行者位置情報メッセージに添付する。
【0033】
ステップS3において、処理部25は、通信部21を制御して、ステップS2で生成した歩行者位置情報メッセージをセンタ装置10に対して送信する。なお、ステップS2とステップS3との処理ステップの間隔は、極めて短時間であるため、ステップS2において歩行者位置情報メッセージに添付した送信時刻(TimePTn)と、当該ステップS3において実際に実行されるセンタ装置10への送信時刻とのタイムラグは無視できるものとする。
【0034】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、センタ装置10による現在位置情報の補正処理動作について説明をする。
【0035】
ステップS11において、センタ装置10の処理部14は、携帯端末装置20から無線通信により送信された歩行者位置情報メッセージを通信部11を介して受信する。処理部14は、歩行者位置情報メッセージに添付されている各種情報、例えば、現在位置情報、送信時刻(TimePTn)など、後段の処理において必要となる情報を全て情報記憶部13に記憶させる。
【0036】
ステップS12において、処理部14は、歩行者位置情報メッセージを受信したこと応じて、時刻特定部12で計時されている時刻を参照して、歩行者位置情報メッセージを受信した時刻を受信時刻(TimePRn)として情報記憶部13に記憶させる。
【0037】
ステップS13において、処理部14は、現在の処理周期である第n回目と、前回の処理周期である第n−1回目で受信した歩行者位置情報メッセージに添付されている現在位置情報と、現在位置情報とを取得した時刻とから歩行者の瞬時移動ベクトルを算出する。
【0038】
上述したように現在位置情報は、緯度と経度とによって規定されているため現在位置情報を(LAn,LOn)=(緯度に関する情報,経度に関する情報)と定義すると、第n回目で受信した現在位置情報は、(LAn,LOn)と表せ、第n−1回目で受信した現在位置情報は、(LAn−1,LOn−1)と表せ、これらを用いて、以下に示す(1)式、(2)式のように瞬時移動ベクトルを算出することができる。
【数1】

【数2】

【0039】
なお、(1)式、(2)式で表される瞬時移動ベクトルは、向きの基準として真北が0(ゼロ)度となるようにし、時計回りの角度単位系にて表している。したがって、(1)式、(2)式でそれぞれ表される瞬時移動ベクトルの大きさと向きとは、必要に応じて単位の換算を実行するものとする。
【0040】
ステップS14において、処理部14は、第n回目の処理周期で算出した瞬時移動ベクトルと、第n−1回目の処理周期で算出した瞬時移動ベクトルとの差分(ベクトル差)から、以下に示す(3)式、(4)式のようにして、歩行者の移動状態変化量(大きさ、向き)を算出する。この移動状態変化量から、携帯端末装置20を有する歩行者の瞬間的な挙動を把握することができる。
【数3】

【数4】

【0041】
ステップS15において、処理部14は、ステップS14で算出された移動状態変化量に応じて、後段のステップにおいて瞬時移動ベクトルの平均値から移動ベクトルを算出する際に各瞬時移動ベクトルに与える重みを決定する。この瞬時移動ベクトルに与える重みは、歩行者の瞬間的な挙動を示す移動状態変化量に基づきあらかじめ定めることができるため、例えば、センタ装置10の情報記憶部13に図4に示すようにしてパターン化して記憶させておく。
【0042】
図4に示す例では、ステップS14で算出された移動状態変化量から分かる携帯端末装置20を有する歩行者の挙動をパターンA、パターンB、パターンCの3つに分類している。図4において、パターンAとして定義されている条件は、移動状態変化量から歩行者が右左折や急加減速をしたと想定できる場合を示しており、パターンBとして定義されている条件は、移動状態変化量から歩行者がパターンAほどではないが、若干の右左折や加減速をしたと想定できる場合を示しており、パターンCとして定義されている条件は、移動状態変化量から歩行者がほぼ等速直線運動をしていると想定できる場合を示している。
【0043】
このパターンは、図4に示すように必ずしも3つでなくてもよく、歩行者の挙動をもっと少ない、例えば2つに分類するようにしてもよいし、逆にさらにパターンを増やすことで歩行者の挙動を細分化して分類するようにしてもよい。いずれの場合も、このように歩行者の挙動を把握することで、後段の処理ステップにおいて、瞬時移動ベクトルの平均値から移動ベクトルを算出する際に各瞬時移動ベクトルに与える重みが決定されることになる。
【0044】
ステップS16において、処理部14は、第n回目の処理周期、または第n回目とそれに連続する少なくとも1つ以上の過去の処理周期において算出された瞬時移動ベクトルの平均値を算出することで移動ベクトルを求める。このとき、各瞬時移動ベクトルには、上述したように、ステップS15において、移動状態変化量から分かる携帯端末装置20を有する歩行者の挙動を反映したパターンに基づき決定される重みが与えられる。この重みも上述したパターンと同様に、センタ装置10の情報記憶部13に図5に示すようにして、あらかじめ記憶させておく。
【0045】
図5の重み付けパターンを示した図では、図4に示すパターンにそれぞれ対応した過去度合(x)、x=0〜4までの重みが記載されている。過去度合とは、現在から過去までの瞬時移動ベクトルを定義した値であり、x=0の場合を第n回目の処理周期で算出される瞬時移動ベクトルに与える重みとし、x=1から増加するほど過去に遡った瞬時移動ベクトルに与える重みとなっている。
【0046】
図5からも分かるように、例えば、歩行者が右左折や急加減速をしたと想定できるパターンAにおいては、過去度合(x)のx=1〜4までの重みが0(ゼロ)となり、現在の瞬時移動ベクトルに対してのみ重みが与えられている。また、歩行者がほぼ等速直線運動をしていると想定できるパターンCにおいては、過去度合(x)のx=0〜4までの重みが同一値となっている。これにより、現在から過去の複数の瞬時移動ベクトルの平均値を算出して移動ベクトルを求めたとしても、求めた移動ベクトルに歩行者の挙動を正しく反映させることができる。また、このように移動ベクトルを求めることで、マルチパスなどのノイズによる変動を平坦化することもできる。
【0047】
例えば、ステップS15において、移動状態変化量から歩行者の挙動がパターンBに該当するとされた場合、図5に示す重みを与えられた瞬時移動ベクトルの平均値を算出して求められる移動ベクトルは、以下に示す(5)式、(6)式のように表される。
【数5】

【数6】

【0048】
なお、過去の瞬時移動ベクトルが4つ以上記憶されていない場合(例えば、n<4)、記憶されている瞬時移動ベクトルのみを対象として移動ベクトルを算出する。例えば、n=3の場合には、瞬時移動ベクトルV3、V2、V1のみから移動ベクトルを算出する。
【0049】
ステップS17において、処理部14は、以下に示す(7)式を用いて、情報記憶部13に記憶された受信時刻(TimePRn)と送信時刻(TimePTn)との差分から、携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信により発生する通信遅延時間(TimePCn)を算出する。
【数7】

【0050】
ステップS18において、処理部14は、ステップS16で算出した移動ベクトルと、ステップS17で算出した通信遅延時間(TimePCn)とから、以下に示す(8)式、(9)式を用いて、携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信によって発生する、実際に歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置との誤差である位置誤差ベクトルを算出する。
【数8】

【数9】

【0051】
ステップS19において、処理部14は、ステップS11で受信した歩行者位置情報メッセージに添付され情報記憶部13に記憶されている携帯端末装置20の現在位置情報を、ステップS18で算出された位置誤差ベクトル分だけシフトさせることで補正処理を実行する。なお、以下における説明のため、情報記憶部13に記憶されている現在位置情報を(LAn,LOn)とし、本処理ステップにおいて補正処理された補正後の現在位置情報を(LA’n,LO’n)とする。
【0052】
このようにして、本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムは、携帯端末装置20の移動情報である移動ベクトルと携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信による通信遅延時間(TimePCn)とから、携帯端末装置20とセンタ装置10との無線通信による通信遅延時間に基づく誤差を的確に補正することができる。
【0053】
これにより、通知対象である車両の車載装置30に対して誤報知することなく歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置情報を通知することができる。
【0054】
また、瞬時移動ベクトルの平均値から移動ベクトルを算出する際に、移動状態変化量から求めた重みを各瞬時移動ベクトルに与えることで、携帯端末装置20を有する歩行者の挙動を正しく反映させることができるため、位置誤差ベクトルの精度を向上させることができる。
【0055】
[通信周期待ち時間に基づく誤差を補正する処理]
続いて、図6に示すフローチャートを用いて、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際に発生する通信周期待ち時間に基づく誤差を補正する処理動作について説明をする。
【0056】
一般に、センタ装置10を介して携帯端末装置20から車載装置30へと現在位置情報を通知するシステム構成においては、複数の携帯端末装置20からセンタ装置10へと通信アクセスがなされるため、携帯端末装置20からセンタ装置10へと現在位置情報を送信する周期に待ち時間が生じてしまうことがある。このような通信周期待ち時間が大きいと、センタ装置10に記憶されている現在位置情報の更新が遅れてしまうため、実際に歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置とに誤差が発生してしまうことになる。
【0057】
この、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際に発生する通信周期待ち時間に基づく誤差を補正する処理は、上述した携帯端末装置20とセンタ装置10との通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理、後述するセンタ装置10と車載装置30との通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理よりも短い周期で実施されることになる。図6に示すフローチャートを用いて説明する処理ステップは、第n回目に実施された場合を想定しているものとする。
【0058】
ステップS21において、センタ装置10の処理部14は、以下に示す(10)式を用いて、時刻特定部12で計時されている時刻を参照して取得した現在時刻と、情報記憶部13に記憶されている歩行者位置情報メッセージを受信した受信時刻(TimePRn)との差分から、歩行者位置情報メッセージを受信してからの経過時間(TimeSn)を算出する。
【数10】

【0059】
ステップS22において、処理部14は、ステップS16で算出した移動ベクトルと、ステップS21で算出した歩行者位置情報メッセージを受信してからの経過時間(TimeSn)とから、以下に示す(11)式、(12)式を用いて、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際に発生する通信周期待ち時間によって発生する、実際に歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置との誤差である位置誤差ベクトルを算出する。
【数11】

【数12】

【0060】
ステップS23において、処理部14は、現在、情報記憶部13に記憶されている携帯端末装置20の現在位置情報を、ステップS22で算出された位置誤差ベクトル分だけシフトさせることで補正処理を実行する。なお、以下における説明のため、情報記憶部13に記憶されている現在位置情報を、上述した携帯端末装置20とセンタ装置10との通信遅延時間に基づく誤差を補正した結果である(LA’n,LO’n)とし、本処理ステップにおいて補正処理された補正後の現在位置情報を(LA’’n,LO’’n)とする。
【0061】
このようにして、本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムは、携帯端末装置20の移動情報である移動ベクトルと歩行者位置情報メッセージを受信してからの経過時間(TimeSn)とから、携帯端末装置20からセンタ装置10へ現在位置情報を送信する際に発生する通信周期待ち時間に基づく誤差を的確に補正することができる。
【0062】
これにより、通知対象である車両の車載装置30に対して誤報知することなく歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置情報を通知することができる。
【0063】
また、瞬時移動ベクトルの平均値から移動ベクトルを算出する際に、移動状態変化量から求めた重みを各瞬時移動ベクトルに与えることで、携帯端末装置20を有する歩行者の挙動を正しく反映させることができるため、位置誤差ベクトルの精度を向上させることができる。
【0064】
[センタ装置10と車載装置30との通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理]
続いて、図7乃至図9に示すフローチャートを用いて、センタ装置10と車載装置30との無線通信による通信遅延時間に基づく誤差を補正する処理動作について説明をする。なお、この補正処理は、定期的に実施されるものであり、図7乃至図9に示すフローチャートを用いて説明する処理ステップは、第n回目に実施された場合を想定しているものとする。
【0065】
まず、図7に示すフローチャートを用いて、車載装置30からセンタ装置10に対して歩行者情報送信要求メッセージを送信する処理動作について説明をする。
【0066】
ステップS31において、車載装置30の処理部35は、センタ装置10において、センタ装置10と車載装置30との無線通信による通信遅延時間を算出するために必要となる2つの情報を送信する。
【0067】
この情報は、第n−1回目以前の処理周期に、センタ装置10から送信された現在位置情報を受信した時刻である受信時刻(TimeMRn-x)と、n−1回目以前の処理周期に、センタ装置10が車載装置30に現在位置情報を送信した時刻である送信時刻(TimeMTn-x)との2つの情報である。なお、受信時刻(TimeMRn-x)と送信時刻(TimeMTn-x)のxには、n−1以下の値が入る。
【0068】
この受信時刻(TimeMRn-x)と送信時刻(TimeMTn-x)とは、処理部35によって生成される、少なくとも当該車載装置30を一意に特定する識別子が添付された、現在位置情報の送信をセンタ装置10に要求するためのメッセージである歩行者情報送信要求メッセージに添付されてセンタ装置10に送信される。
【0069】
この2つの情報は、第n−1回目以下の処理周期において、車載装置30の情報記憶部34に記憶された情報である。また、処理部35は、情報記憶部34に、この受信時刻(TimeMRn-x)と送信時刻(TimeMTn-x)とが記憶されていない場合(例えば、n=0の場合)、車載装置30に2つの情報が記憶されていない旨をセンタ装置10で認識できる情報を歩行者情報送信要求メッセージに添付する。
【0070】
ステップS32において、処理部35は、通信部31を制御して、ステップS31で生成した歩行者情報送信要求メッセージをセンタ装置10に対して送信する。
【0071】
次に、図8に示すフローチャートを用いて、センタ装置10による現在位置情報の補正処理動作について説明をする。
【0072】
ステップS41において、センタ装置10の処理部14は、車載装置30から無線通信により送信された歩行者情報送信要求メッセージを通信部11を介して受信する。処理部14は、歩行者情報送信要求メッセージに添付されている各種情報、例えば、受信時刻(TimeMRn-x)、送信時刻(TimeMTn-x)など、後段の処理において必要となる情報を全て情報記憶部13に記憶させる。
【0073】
ステップS42において、処理部14は、以下に示す(13)式を用いて、情報記憶部13に記憶させた受信時刻(TimeMRn-x)と送信時刻(TimeMTn-x)との差分から、車載装置30とセンタ装置10との無線通信により発生する通信遅延時間(TimeMCn)を算出する。
【数13】

【0074】
ただし、処理部14は、ステップS41で受信した歩行者情報送信要求メッセージに、受信時刻(TimeMRn-x)と送信時刻(TimeMTn-x)とが車載装置30に記憶されていない旨を知らせる情報が添付されていた場合、あらかじめ入力されている通信遅延時間の目安となる値を通信遅延時間(TimeMCn)として用いる。
【0075】
ステップS43において、処理部14は、上述した図3のフローチャートのステップS16で算出した移動ベクトルと、ステップS42で算出した通信遅延時間(TimeMCn)とから、以下に示す(14)式、(15)式を用いて、センタ装置10と車載装置30との無線通信によって発生する、実際に歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置との誤差である位置誤差ベクトルを算出する。
【数14】

【数15】

【0076】
ステップS44において、処理部14は、現在、情報記憶部13に記憶されている携帯端末装置20の現在位置情報を、ステップS43で算出された位置誤差ベクトル分だけシフトさせることで補正処理を実行する。なお、以下における説明のため、情報記憶部13に記憶されている現在位置情報を、上述した携帯端末装置20とセンタ装置10との通信遅延時間に基づく誤差を補正した結果に、さらに、通信周期待ち時間に基づく誤差を補正した結果である(LA’’n,LO’’n)とし、本処理ステップにおいて補正処理された補正後の現在位置情報を(LA’’’n,LO’’’n)とする。
【0077】
ステップS45において、処理部14は、ステップS41で受信した歩行者情報送信要求メッセージに応答し、情報記憶部13に記憶されている補正後の携帯端末装置20の現在位置情報、当該現在位置情報を車載装置30に送信する時刻である送信時刻(TimeMTn)を添付した歩行者情報メッセージを生成する。
【0078】
ステップS46において、処理部14は、通信部11を制御して、ステップS45で生成した歩行者情報メッセージを車載装置30に対して送信する。
【0079】
最後に、図9に示すフローチャートを用いて、歩行者情報メッセージを受信した車載装置30の処理動作について説明をする。
【0080】
ステップS51において、車載装置30の処理部35は、センタ装置10から無線通信により送信された歩行者情報メッセージを通信部31を介して受信する。
【0081】
ステップS52において、処理部35は、歩行者情報メッセージを受信したこと応じて、時刻特定部33で計時されている時刻を参照して、歩行者情報メッセージを受信した受信時刻(TimeMRn)として情報記憶部34に記憶させる。
【0082】
ステップS53において、処理部35は、歩行者情報メッセージに添付されている送信時刻(TimeMTn)など、後段の処理において必要となる情報を全て情報記憶部34に記憶させる。
【0083】
このようにして、本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムは、携帯端末装置20の移動情報である移動ベクトルとセンタ装置10と車載装置30との無線通信による通信遅延時間(TimeMCn)とから、センタ装置10と車載装置30との無線通信による通信遅延時間に基づく誤差を的確に補正することができる。
【0084】
これにより、通知対象である車両の車載装置30に対して誤報知することなく歩行者が有する携帯端末装置20の現在位置情報を通知することができる。
【0085】
また、瞬時移動ベクトルの平均値から移動ベクトルを算出する際に、移動状態変化量から求めた重みを各瞬時移動ベクトルに与えることで、携帯端末装置20を有する歩行者の挙動を正しく反映させることができるため、位置誤差ベクトルの精度を向上させることができる。
【0086】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態として示す現在位置情報通知システムの構成について説明するための図である。
【図2】携帯端末装置からセンタ装置に歩行者位置情報メッセージを送信する際の処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図3】センタ装置による現在位置情報の補正処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図4】歩行者の挙動をパターン化するための条件を示した図である。
【図5】瞬時移動ベクトルに与える重みの一例をパターン毎に示した図である。
【図6】通信周期待ち時間に基づく誤差を補正する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図7】車載装置からセンタ装置に歩行者情報送信要求メッセージを送信する際の処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図8】センタ装置による現在位置情報の補正処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図9】センタ装置から送信された歩行者情報メッセージを受信した車載装置の処理動作について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
10 センタ装置
11 通信部
12 時刻特定部
13 情報記憶部
14 処理部
20 携帯端末装置
21 通信部
22 位置特定部
23 時刻特定部
24 情報記憶部
25 処理部
30 車載装置
31 通信部
33 時刻特定部
34 情報記憶部
35 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動体が有する携帯端末装置と、前記第1の移動体とは異なる第2の移動体が有する端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により当該携帯端末装置の現在位置情報を取得し、取得した現在位置情報を前記端末装置との無線通信により通知するセンタ装置とを備える現在位置情報通知システムにおいて、
前記センタ装置は、前記携帯端末装置の移動情報を算出する移動情報算出手段と、
前記携帯端末装置と当該センタ装置との無線通信により発生する通信遅延時間、当該センタ装置と前記端末装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出する通信遅延時間算出手段と、
前記携帯端末装置から当該センタ装置へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出する通信周期待ち時間算出手段と、
前記移動情報算出手段によって算出された移動情報と、前記通信遅延時間算出手段によって算出された通信遅延時間と、前記通信周期待ち時間算出手段によって算出された通信周期待ち時間とに基づき、実際の前記携帯端末装置の現在位置との誤差を予測する誤差予測手段と、
前記誤差予測手段によって予測された誤差を用いて、前記携帯端末装置との無線通信により取得した現在位置情報を補正する補正手段とを有すること
を特徴とする現在位置情報通知システム。
【請求項2】
前記センタ装置の移動情報算出手段は、前記携帯端末装置が存在した少なくとも2点間の位置から求めた瞬時移動ベクトルを算出し、過去から現在における複数の瞬時移動ベクトルの平均値を算出して求めた移動ベクトルを前記移動情報とすること
を特徴とする請求項1記載の現在位置情報通知システム。
【請求項3】
前記センタ装置の移動情報算出手段は、瞬時移動ベクトルの変化量に応じて前記携帯端末装置の移動状態の変化を特定し、
前記特定された移動状態の変化に応じて決まる重みを過去から現在における前記複数の瞬時移動ベクトルそれぞれに与えてから平均値を算出して移動ベクトルを求めること
を特徴とする請求項2記載の現在位置情報通知システム。
【請求項4】
前記センタ装置の通信遅延時間算出手段は、
前記携帯端末装置から送信される現在位置情報の送信時刻と、前記現在位置情報を受信した時刻との差分より、前記携帯端末装置と当該センタ装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出し、
前記端末装置に送信される現在位置情報の送信時刻と、前記端末装置で現在位置情報を受信した時刻との差分より、当該センタ装置と前記端末装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の現在位置情報通知システム。
【請求項5】
前記センタ装置の通信周期待ち時間算出手段は、
現在時刻と、前記携帯端末装置から送信される現在位置情報を受信した時刻との差分より前記通信周期待ち時間を算出すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の現在位置情報通知システム。
【請求項6】
第1の移動体が有する携帯端末装置と、前記第1の移動体とは異なる第2の移動体が有する端末装置との無線通信により、前記携帯端末装置の現在位置情報を取得して前記端末装置に通知する現在位置情報通知システムのセンタ装置において、
前記携帯端末装置の移動情報を算出する移動情報算出手段と、
前記携帯端末装置と当該センタ装置との無線通信により発生する通信遅延時間、当該センタ装置と前記端末装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出する通信遅延時間算出手段と、
前記携帯端末装置から当該センタ装置へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出する通信周期待ち時間算出手段と、
前記移動情報算出手段によって算出された移動情報と、前記通信遅延時間算出手段によって算出された通信遅延時間と、前記通信周期待ち時間算出手段によって算出された通信周期待ち時間とに基づき、実際の前記携帯端末装置の現在位置との誤差を予測する誤差予測手段と、
前記誤差予測手段によって予測された誤差を用いて、前記携帯端末装置との無線通信により取得した現在位置情報を補正する補正手段とを備えること
を特徴とするセンタ装置。
【請求項7】
第1の移動体が有する携帯端末装置と、前記第1の移動体とは異なる第2の移動体が有する端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により当該携帯端末装置の現在位置情報を取得し、取得した現在位置情報を前記端末装置との無線通信により通知するセンタ装置とを備える現在位置情報通知システムの誤差補正方法において、
前記センタ装置は、前記携帯端末装置の移動情報を算出し、
前記携帯端末装置と当該センタ装置との無線通信により発生する通信遅延時間、当該センタ装置と前記端末装置との無線通信により発生する通信遅延時間を算出し、
前記携帯端末装置から当該センタ装置へ現在位置情報を送信する際の通信周期待ち時間を算出し、
前記算出された移動情報と、前記算出された通信遅延時間と、前記算出された通信周期待ち時間とに基づき、実際の前記携帯端末装置の現在位置との誤差を予測し、
予測された誤差を用いて、前記携帯端末装置との無線通信により取得した現在位置情報を補正すること
を特徴とする誤差補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−85761(P2009−85761A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255592(P2007−255592)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】