説明

用紙搬送装置及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、短時間に高い精度で用紙の移動状態を非接触で検出できる移動状態検出手段を用紙搬送路に配設し検出された用紙の移動状態を変更して、用紙の片寄り、用紙の変形による画像不良を未然に防止可能にする用紙搬送装置及び画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、用紙搬送手段と、移動する用紙表面における異なる領域を互いに連続的に撮影して画像を出力する複数の撮像手段ISと、複数の撮像手段ISより出力された画像に基づき複数の領域における用紙の移動速度、用紙の移動量、もしくは用紙の移動方向を検出する移動状態検出手段IPと、移動状態検出手段IPの検出結果に基づき用紙搬送手段を制御する用紙搬送制御手段U100と、を備える用紙搬送装置20を提供して、上記課題の解決を達成可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原稿及び記録媒体としての用紙等を搬送する用紙搬送装置、及びその用紙搬送装置を備える画像形成装置に関する。特に、画像不良に係わる用紙搬送の状態を測定して、画像不良に繋がる用紙搬送に関わる条件を変更する用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送する用紙の状態を検出して画像不良に繋がる画像形成条件を変更する技術について以下の特許文献に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、所定形状の測定用マークを用紙上に移動方向に沿って一定のマーク間隔で予め形成しておき、測定用マークを一定のパルス間隔でイメージセンサにより撮像して、撮影された画像上のマーク間隔と用紙上の実際のマーク間隔との関係から用紙の移動速度を画像処理により演算している。また、画像上のマークの形状から用紙の移動方向を判定している。しかし、用紙上にマークを形成することが必要であり、実際の画像形成時に用紙速度を測定することは困難である。また、測定のために実行中のジョブを中断させる必要があり、トナー及び用紙の消費を伴うといった問題がある。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、移動する用紙端部(先端、側端)を検出して、用紙先端通過タイミングのズレ、及び用紙側端位置のズレに応じて用紙上に画像形成する書込み(主走査/副走査)のタイミングを補正している。しかし、用紙の位置ズレ、あるいは用紙通過のタイミングズレを検知するものであり、用紙搬送(速度、方向等)自体を測定するものでなく、用紙搬送自体に起因する画質不良に対して有効にフィードバックできないという問題がある。
【0005】
特許文献3に記載の技術は、移動する用紙の定着装置に対する上流側に用紙の幅方向における中央部及び側部に用紙速度検出手段を設けて、2つの用紙速度検出手段によって検出された用紙端部と用紙中央部の搬送速度比に応じて加圧ローラの圧接力を調整して定着シワの発生を防止している。なお、用紙速度検出手段は用紙搬送方向に配設され用紙の後端を検出する2つの後端センサを有し、2つの後端センサの用紙後端検出における時間差に基づき用紙搬送速度を検出している。
【0006】
しかし、特許文献3に記載の技術は、用紙搬送速度が検出された時に用紙は既に定着処理が為されており、検出した用紙に検出結果をフィードバックできず、画像不良を十分に防止できないという問題がある。また、不安的な挙動を呈す用紙後端の検知に基づき用紙の搬送速度と判定しており、測定精度が低く、複数回繰り返し測定し、その結果に基づき定着処理条件を変更している。
【0007】
特許文献4に記載の技術は、移動する用紙の表面性状を連続的な画像として撮影する撮影装置を有し、撮影装置で撮影された画像から互いにタイミングの異なる複数の静止画像を抽出して比較することにより用紙の搬送量を算出して、搬送量に基づき搬送手段をフィードバック制御している。しかし、搬送方向に直交する方向への用紙の搬送を検出するものなく、また用紙搬送方向に配設された複数の用紙搬送手段の間を移動する用紙に生じる用紙表面の変形を予測可能にするような用紙移動の状態を、検出するものでもないために、用紙の片寄り、用紙変形による画質不良を未然防止できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−108695号公報
【特許文献2】特開2009−300472号公報
【特許文献3】特開2006−293280号公報
【特許文献4】特開2007−217178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、用紙の移動状態を測定してその状態に関与する条件を変更して画像不良を未然に防止する従来の技術には上記のような問題があり、改善が求められている。
【0010】
本発明の目的は、短時間に高い精度で用紙の移動状態を非接触で検出できる移動状態検出手段を用紙搬送路に配設し検出された用紙の移動状態を変更して、用紙の片寄り、用紙の変形による画像不良を未然に防止可能にする用紙搬送装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
【0012】
1.用紙を搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送手段に対し用紙搬送方向の上流側、あるいは下流側に配設され、移動する用紙における異なる領域を互いに撮影して画像を出力する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段より出力された画像に基づき複数の領域における用紙の移動速度、用紙の移動量、もしくは用紙の移動方向を検出する移動状態検出手段と、
前記移動状態検出手段の検出結果に基づき前記用紙搬送手段を制御する用紙搬送制御手段と、
を有することを特徴とする用紙搬送装置。
【0013】
2.前記複数の撮像手段が用紙搬送方向、又は用紙搬送方向に直交する方向に配設されることを特徴とする前記1に記載の用紙搬送装置。
【0014】
3.前記移動状態検出手段は、前記複数の撮像手段の各々により所定期間を隔てて撮影された複数の画像に基づき前記用紙の移動速度、前記用紙の移動量、もしくは前記用紙の移動方向を検出することを特徴とする前記1又は2に記載の用紙搬送装置。
【0015】
4.前記用紙搬送手段は、定着ニップで用紙を定着部材に所定の圧接力で圧接させながら用紙を搬送して、用紙上の画像を定着処理する定着部を有し、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき前記定着ニップの圧力を変更させることを特徴とする前記1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0016】
5.前記用紙搬送手段は、用紙の搬送方向を変更可能であり、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき用紙の移動方向を変化させるよう、前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする前記1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0017】
6.前記用紙搬送手段は、第1の用紙搬送手段と、前記第1の用紙搬送手段に対し用紙搬送方向の上流側に配設される第2の用紙搬送手段と、を有し、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に応じて前記第1の用紙搬送手段、又は前記第2の用紙搬送手段による用紙の移動速度を変更させるよう、前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする前記1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0018】
7.前記複数の撮像手段はテレセントリックレンズとイメージセンサとを有することを特徴とする前記1から6までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0019】
8.前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき算出した算出値、もしくは当該検出結果と閾値とを比較し、その比較結果に基づき前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする前記1から7までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0020】
9.前記閾値は、用紙種別に応じて設定されることを特徴とする前記1から8までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【0021】
10.前記1から9までの何れか1項に記載の用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置により搬送される用紙上に画像を形成する画像形成手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、短時間に高い精度で用紙の移動状態を非接触で検出できる移動状態検出手段を用紙搬送路に配設し検出された用紙の移動状態を変更して、用紙の片寄り、用紙の変形による画像不良を未然に防止可能にする用紙搬送装置及び画像形成装置の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る用紙搬送装置20を備えた画像形成装置Aを示す中央断面正面図である。
【図2】本発明に係る用紙表面の凹凸を撮影する撮像手段ISの構成を示す模式図である。
【図3】画像データ上におけて用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態の用紙搬送制御手段U100の関係を示す制御ブロック図である。
【図5】本発明に係る第1の実施形態の用紙搬送制御手段U100によって実行される制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の用紙搬送制御手段U100の関係を示す制御ブロック図である。
【図7】本発明に係る第2の実施形態の用紙搬送制御手段U100が司るループ量更新制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る第2の実施形態において用紙搬送制御手段U100により実行される用紙搬送制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る第3の実施形態の用紙搬送装置20の構成を示す模式図である。
【図10】本発明に係る第3の実施形態の用紙搬送制御手段U100の制御関係を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態の用紙搬送制御手段U100が実行する用紙搬送制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を以下に説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0025】
図1は本発明に係る用紙搬送装置20を備えた電子写真方式の画像形成装置Aを示す中央断面正面図である。
【0026】
画像形成装置Aは装置本体の上部に載置される画像読取装置Bを備えている。
【0027】
画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと、中間転写体6を有する画像形成部100、用紙搬送装置20を有する。
【0028】
画像読取装置Bは自動原稿送り装置DFと原稿画像走査露光装置SCから成る。原稿dは、自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置され、搬送手段により原稿画像走査露光装置SCの光学系により原稿の片面、又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0029】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0030】
イエロー(Y)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段5Yを配置している。マゼンタ(M)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Mは、感光体1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段5Mを配置している。シアン(C)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Cは、感光体1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段5Cを配置している。黒(K)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Kは、感光体1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段5Kを配置している。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0031】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤が収容されている。
【0032】
中間転写体6は複数のローラで巻回され、図示しない駆動手段により回動可能に支持される。
【0033】
画像形成手段10Y、10M、10C、10Kで形成された各色のトナー像は、中間転写体6の内周に配設された一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより中間転写体6上に逐次転写されて、各色トナーで成るトナー像が中間転写体6上に形成される(一次転写)。
【0034】
[用紙搬送装置]
用紙搬送装置20は、用紙を収容する3つの給紙トレイ21、各給紙トレイ21から用紙Pを給紙する3つの給紙ローラ22と、各給紙ローラ22により給紙された用紙Pを二次転写位置Pt等の所定位置に順次案内する複数の用紙搬送路と、複数の用紙搬送路に沿って配設され用紙Pを下流側に搬送する複数の用紙搬送手段と、を有する。
【0035】
他方、本発明に係る用紙搬送装置20によって給紙トレイ21から給紙された用紙Pは、用紙搬送手段としての搬送ローラ23、24、25、26、レジストローラ27等を経て二次転写位置Ptに搬送される。そして、二次転写位置Ptで本発明に係る第2の用紙搬送手段としての二次転写ローラ9によって中間転写体6上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。
【0036】
更に、トナー像が転写された用紙Pは、本発明に係る第1の用紙搬送手段としての定着部30に搬送され、定着部30で加熱、加圧されて、トナー像は用紙P上に定着される。その後、定着処理済みの用紙Pは機外に排紙されて排紙トレイ29上に載置される。
【0037】
定着部30は、加熱された定着部材としての定着ベルト31と、非図示の圧接機構により定着ニップPfの位置で定着ベルト31に圧接される加圧ローラ32と、を有し、定着ニップPfで用紙Pを定着ベルト31に所定の圧接力で圧接させながら用紙Pを搬送して、用紙P上の未定着トナー像を加熱、加圧して用紙Pに定着する。
【0038】
定着ニップPfの圧力及びその圧力分布は非図示の圧接機構によって適宜変更可能になっている。
【0039】
圧接機構33(図4)は、加圧ローラ32を回転可能に支持する1対の支持部材を変位する機構であり、用紙搬送方向に直交する幅方向の手前側、及び後方側に各々配設されており、定着ニップPfの後方側における圧接力を変更する後方圧接機構33r(図4)と定着ニップPfの手前側における圧接力を変更する手前圧接機構33f(図4)とで構成される。後方圧接機構33r及び手前圧接機構33fは独立に作動可能であり、定着ニップPfの圧力及びその圧力分布を変更可能にしている。
【0040】
一方、二次転写位置Ptを通過した中間転写体6はクリーニング手段8に至り、クリーニング手段8により中間転写体6上に残った残余トナーが除去されて、中間転写体6は像形成可能な状態にされる。
【0041】
定着処理済みの用紙Pを反転排紙する場合には、用紙Pは定着部30と排紙ローラ28の中間に配置された分岐板28Aの図示右側の搬送路を通過し、下方の第1搬送路Saに搬送された後、逆転搬送されて分岐板28Bの図示左側の第2搬送路Sbを通過し、排紙ローラ28により装置外に排出される。
【0042】
用紙Pの両面に画像形成する場合には、第1面上の画像を定着処理された用紙Pは、第1搬送路Sa、更に分岐板28Bの下方の第4搬送路Sdに導入された後に逆転搬送されて表裏反転される。表裏反転された用紙Pは分岐板28Bの図示右側の搬送路を通過し、第3搬送路Scに搬送した後に上方に迂回して給紙ローラ26により二次転写位置Ptに搬送する。そして、二次転写位置Ptにおいて中間転写体6上のカラー画像が用紙Pの第2面に転写され、更に定着部30で定着処理され、排紙ローラ28によって装置外に排出される。
【0043】
[撮像手段]
用紙搬送装置20には、定着部30と二次転写ローラ9との間の搬送路Seを移動する用紙Pの表面凹凸を撮影する撮像手段ISが用紙搬送方向に直交する幅方向に渡って3個配設されている。
【0044】
図2は、本発明に係る撮像手段ISの構成を示す模式図である。
【0045】
撮像手段ISは、用紙Pの上面を照射するLED等の光源IS3と、イメージセンサIS1と、用紙Pの上面をイメージセンサIS1上に結像させるテレセントリックレンズIS2と、イメージセンサ処理回路IS4と、調光回路IS5とを有する。
【0046】
イメージセンサIS1は、複数の画素センサが二次元に配列されたエリアイメージセンサ)であり、C−MOSセンサ、あるいは電荷結合素子センサ等を用いている。
【0047】
イメージセンサ処理回路IS4はイメージセンサIS1を駆動する駆動回路と、イメージセンサIS1の出力信号からノイズを除去するノイズ除去処理回路と、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換処理回路と、多値画像信号を二値化する二値化処理回路等で構成される。イメージセンサIS1に撮像された画像をデジタル画像信号として順次出力するものである。
【0048】
テレセントリックレンズIS2は、被写体深度が深く、その範囲で倍率が一定で、視界による画像の歪みがなく、図2で示すようにレンズとの距離Lが変動する被写体(用紙P)の形状(寸法等)を常に精密に撮影可能である。
【0049】
光源IS3は用紙Pの表面に対し図示の角度θに適宜設定され、θは用紙Pの表面凹凸による影(陰影形状)が効果的に現れるような角度である。また、イメージセンサIS1は用紙Pで正反射する反射光がイメージセンサIS1に至らないように、用紙Pの表面に対し適宜設定される。図2ではイメージセンサIS1の撮像面は用紙Pの表面に対し平行である。
【0050】
調光回路IS5は、光源IS3の強さを調整する、又は光源IS3の点灯を駆動している。
【0051】
図2において、矢印Xは用紙搬送方向を示し、矢印Yは用紙搬送方向に直交する幅方向における画像形成装置Aの後方を示す。Agは、イメージセンサIS1に結像される用紙Pの上面における領域を示している。
【0052】
図2では省略しているが、用紙搬送装置20ではY方向に3つの撮像手段ISが配設されており、移動する用紙Pの上面における中央の領域Agc(非図示)、後方側の領域Agr(非図示)、手前側の領域Agf(非図示)を同時に撮影している。
【0053】
破線で示す移動状態検出手段IPは、3つの撮像手段ISの各々より出力されたデジタル画像信号(画像データ)に基づき3つの領域Agc,Agr,Agfにおける用紙Pの移動速度、用紙Pの移動量、もしくは用紙Pの移動方向を検出している。
【0054】
[移動状態検出手段]
移動状態検出手段IPは、3つの撮像手段ISの各々が第1タイミングT1に撮影した各画像データDc1、Dr1、Df1を自身内のメモリMの第1エリアにビットマップデータとして記憶する。そして、第1タイミングT1より所定期間Ta後の第2タイミングT2に3つの撮像手段ISの各々が撮影した各画像データDc2、Dr2、Df2を内部のメモリM1(図2)の第2エリアに記憶する。画像データDc1,Dc2は、中央の撮像手段ISに対応し、画像データDr1,Dr2は後方側の撮像手段ISに対応し、画像データDf1,Df2は、手前側の撮像手段ISに対応する。
【0055】
次に、移動状態検出手段IPは、画像データDc1及び画像データDc2をパターンマッチングさせて、画像データDc2が画像データDc1に対してシフトした画素数Nc(シフト画素数と称す)を演算する。なお、シフト画素数NはX方向のシフト画素数NcxとY方向のシフト画素数Ncyで成る。パターンマッチによりシフト画素数Nを得る方法は種々考えられるが、ここでは、画像データDc1を画像データDc2に対しシフトした時に画像データDc1と画像データDc2とが一致する画素の数が最大になるようなシフト量(シフト画素数Nc)を求める方法を用いている。
【0056】
図3は、画像データ上において用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【0057】
図3(a)は、画像データDc1をビットマップ状に展開した状態を表現している。図示のCgは用紙Pの表面凹凸による影の輪郭を示している。実際には輪郭Cgの内側は、影であり、2値データの”1”であり、その外側は2値データの”0”である。
【0058】
図3(b)は、画像データDc2をビットマップ状に展開した状態を表現していて、図示のCgは影の輪郭であり、図示のCvは実際に存在しない画像データDc1における影の輪郭の位置を示している。
【0059】
図3(c)は、図3(b)の部分領域Apを拡大したものであり、実際に存在しない影の輪郭の位置CvをX方向にシフト画素数Ncxだけシフトし、Y方向にシフト画素数Ncyだけシフトすると、CvとCgが一致する、つまり、画像データDc1と画像データDc2がパターンマッチングされること示している。通常、用紙PはX方向に搬送されており、Ncxは正数であるが、Ncyは負数、零、あるいは正数である。
【0060】
以上のように、移動状態検出手段IPは、画像データDr1及び画像データDr2についてもパターンマッチングしてシフト画素数Nr(Nrx,Nry)を取得している。また、画像データDf1及び画像データDf2についてもパターンマッチングしてシフト画素数Nf(Nfx、Nfy)を取得している。
【0061】
次に、移動状態検出手段IPは、以下の(1)、(2)式を用いて、シフト画素数Nc(Ncx、Ncy)に基づき、用紙Pが中央の領域Agcにおいて所定期間Taに移動した距離、つまり移動量Lc(Lcx,Lcy)を演算(検出)する。
【0062】
Lcx=Φ×Lg×Ncx・・・(1)
Lcy=Φ×Lg×Ncy・・・(2)
ΦはテレセントリックレンズIS2を有する撮像手段ISの光学系の倍率である。LgはイメージセンサIS1の各画素間の距離であり、ここではX方向、Y方向ともに同一である。
【0063】
同様に、シフト画素数Nr(Nrx、Nry)に基づき領域Agrにおける用紙Pの移動量Lr(Lrx,Lry)を検出し、シフト画素数Nf(Nfx、Nfy)に基づきAgfにおける用紙Pの移動量Lf(Lfx,Lfy)を検出する。
【0064】
更に、移動状態検出手段IPは、以下の(3)、(4)式を用いて、シフト画素数Nc(Ncx、Ncy)に基づき、領域Agcにおける用紙Pの移動速度Vc(Vcx、Vcy)を検出する。
【0065】
Vcx=Lcx/Tp=Φ×(Lg/Tp)×Ncx・・・(3)
Vcy=Lcy/Tp=Φ×(Lg/Tp)×Ncy・・・(4)
同様に、(3)、(4)式に準ずる関係式を用いて、シフト画素数Nr(Nrx、Nry)に基づき領域Agrにおける用紙Pの移動速度Vr(Vrx、Vry)を検出し、(4)式に準ずる関係式を用いて、シフト画素数Nf(Nfx、Nfy)に基づきAgfにおける用紙Pの移動速度Vf(Vfx、Vfy)を検出する。用紙搬送制御手段U100は、所定期間Tp毎にループ量Lpの変化量Laを演算し、用紙Pのループ量Lpを更新している。Tp≧Taの関係にあり、Tpを適宜設定して演算の負荷を軽減している。
【0066】
更に、移動状態検出手段IPは、以下の(5)式を用いてシフト画素数Nc(Ncx、Ncy)に基づき、領域Agcにおける用紙Pの移動方向Θc、Θr、Θfを検出する。
【0067】
Θc=arctan(Ncy/Ncx)・・・(5)
同様に、(5)式に準ずる関係式を用いて、シフト画素数Nr(Nrx、Nry)に基づき領域Agrにおける用紙Pの移動方向Θrを検出し、シフト画素数Nf(Nfx、Nfy)に基づきAgfにおける用紙Pの移動方向Θfを検出する。
【0068】
[用紙搬送制御手段]
次に、移動状態検出手段IPの検出結果に応じて用紙搬送手段を制御する用紙搬送制御手段U100の実施形態について以下に説明する。
【0069】
図4は、本発明に係る第1の実施形態の用紙搬送制御手段U100の関係を示す制御ブロック図である。
【0070】
移動状態検出手段IPは所定間隔毎に用紙Pの移動速度Vc,Vr,Vfを出力している。用紙搬送制御手段U100は用紙PのX成分の移動速度Vc(Vcx、Vcy)、Vr(Vrx、Vry)、Vf(Vfx、Vfy)に基づき、用紙搬送手段としての定着部30の手前圧接機構33f及び後方圧接機構33rを作動して定着ニップPfの圧接力を変更している。
【0071】
図5は、本発明に係る第1の実施形態の用紙搬送制御手段U100によって実行される制御の一例を示すフローチャートである。
【0072】
S101は、用紙Pが定着部30の定着ニップPfを通過しているか否かを判定する工程ある。“Yes”と判定されると、S102工程に移行する。
【0073】
S102は移動状態検出手段IPで検出され、出力された新たな用紙Pの移動速度Vc、Vr,Vfを入力し取得する工程である。
【0074】
S103は、領域Agrにおける用紙Pの用紙搬送方向の移動速度Vrxから領域Agfにおける用紙Pの用紙搬送方向の移動速度Vfxを減算して得られた差分値が第1の閾値Ma以下であるか、否かを判定する工程であり、第1の閾値Maを超えている場合(“No”の場合)にはS105工程に移り、第1の閾値Ma以下である場合(“Yes”の場合)にはS104工程に移行する。
【0075】
S105は、定着ニップPfの手前側を強める方向に手前圧接機構33fを作動する工程である。これを作動させると、定着ニップPfの手前側が強まりVrx及びVfxのアンバランスが改善される。つぎにS106工程に移行する。
【0076】
S104は、移動速度Vfxから移動速度Vrxを減算して得られた差分値が第1の閾値Ma以下であるか、否かを判定する工程であり、第1の閾値Maを超えている場合(“No”の場合)にはS107工程に移り、第1の閾値Ma以下である場合(“Yes”の場合)にはS106工程に移行する。
【0077】
S107工程は、定着ニップPfの後方側を強める方向に後方圧接機構33rを作動する工程であり、定着ニップPfの左右の圧力差を解消する。つぎにS106工程に移行する。
【0078】
S106工程はVrxおよびVfxの平均値Vmを演算する工程である。つぎのS108工程に移行する。
【0079】
S108工程は、領域Agcにおける用紙Pの用紙搬送方向の移動速度VcxからS106で演算された平均値Vmを減算して得られた差分値が第2の閾値Mb以下であるか、否かを判定する工程である。差分値が第2の閾値Mbを超えている場合(“No”の場合)にはS110工程に移り、差分値が第2の閾値Mb以下である場合(“Yes”の場合)にはS109工程に移行する。
【0080】
S110工程は、定着ニップPfの手前側及び後方側を強める方向に手前圧接機構33f及び後方圧接機構33rの両方を作動する工程である。これが作動されると、定着ニップPfの両側が強まり、中央が両側に対し強い定着ニップPfの圧力差が軽減され、Vcx、Vrx及びVfxのアンバランスが改善される。つぎにS113工程に移行する。
【0081】
S109工程は、S106で演算された平均値Vmから領域Agcにおける用紙Pの用紙搬送方向の移動速度Vcxを減算して得られた差分値が第2の閾値Mb以下であるか、否かを判定する工程である。差分値が第2の閾値Mbを超えている場合(“No”の場合)にはS112工程に移り、差分値が第2の閾値Mb以下である場合(“Yes”の場合)にはS111工程に移行する。
【0082】
S112工程は、定着ニップPfの手前側及び後方側を弱める方向に手前圧接機構33f及び後方圧接機構33rの両方を作動する工程である。これが作動されると、定着ニップPfの両側が弱まり、両側が中央に対し強い定着ニップPfの圧力差が軽減され、Vcx、Vrx及びVfxのアンバランスが改善される。この結果、用紙のシワ、用紙の折れ等の画像不良が未然に防止される。
【0083】
S111は、領域Agrにおける用紙PのY方向の移動速度Vryが第3の閾値Mc以下であり、且つ領域Agfにおける用紙PのY方向の移動速度Vfyのマイナスが第3の閾値Mc以下であるか、否かを判定する工程である。つまり、後方側の領域Agrにおいて用紙Pが閾値c以下の速度でY方向に移動し、且つ手前側の領域Agfにおいて用紙Pが閾値c以下の速度でマイナスY方向に移動しているか、否かを判定する工程である。
【0084】
S111工程の判定において、”No”の場合にはS113工程に移行し、”Yes”の場合にはS112工程に移行する。
【0085】
S112工程は、後方圧接機構33rと手前圧接機構33fの両方を定着ニップPfの圧接力が弱められる方向に作動させるものである。この作動により、定着ニップPfにより用紙Pの領域Agfの移動速度Vfyをマイナスに強めている状態が改善される。同様に、用紙Pの領域Agrにおける移動速度Vryをプラスに強めている状態が改善される。この結果、用紙Pの過度の張りが改善され、用紙の波打ち、用紙の折れ等の画像不良が未然に防止される。つぎのS113工程に移行する。
【0086】
以上のように、用紙搬送制御手段U100は、移動状態検出手段IPで検出された用紙Pの異なる領域Agc,Agr,Agfにおける移動速度Vc,Vr,Vfに基づき、S102工程からS112工程までの一連の処理を行い、定着部30に搬入される直前の用紙Pにおける移動状態を許容範囲内に収まるように制御している。
【0087】
S113工程では、通紙が終了したか、否かを判定している。そして、”No”の場合にはS102工程に戻り、通紙が終了するまで上記の一連処理を繰り返す。そして通紙が終了すると(”Yes”の場合には)、本制御を終了する。
【0088】
なお、第1の閾値Ma、第2の閾値Mb、第3の閾値Mcは用紙搬送装置20(特に定着部30)の具体的な構成によって定まり、予め設定される定数であるが、用紙Pの種別(厚み、表面性等)によって異なる定数を選択可能にすることによって、より緻密な、優れた処理を実現できる。
【0089】
本発明に係る第1の実施形態の用紙搬送制御手段U100は、通紙中の用紙Pにおける複数の領域で用紙の移動状態を常に検出しており、そして、その検出結果に基づき用紙の移動状態が適正な範囲に収まるよう、用紙搬送手段としての定着部を常に制御しており、用紙のシワ、用紙の波打ち、用紙の折れ等の画像不良を未然に防止することを可能にしている。
【0090】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態の用紙搬送装置20について以下説明する。用紙搬送装置20では、2つの撮像手段ISが定着部30と二次転写ローラ9との間に配設され、互いに用紙Pの用紙搬送方向における異なる領域Agd,Age(非図示)を撮影している。下流側の撮像手段ISは定着部30に近い領域Agdの凹凸を撮影し、上流側の撮像手段ISは領域Agdより二次転写ローラ9側に位置する領域Ageの凹凸を撮影している。
【0091】
領域Agdにおける用紙Pは主に定着部30の条件によって定まる速度で移動し、一方、領域Ageにおける用紙Pは主に二次転写ローラ9によって定まる速度で移動し、定着部30と二次転写ローラ9との間を移動する用紙Pには適量のループが形成されるよう、用紙搬送制御手段U100によって制御されている。
【0092】
移動状態検出手段IPは、2つの撮像手段ISの各々が第1タイミングT1に撮影した各画像データDd1、De1(非図示)を自身内のメモリMの第1領域にビットマップデータとして記憶する。そして、第1タイミングT1より所定期間Ta後の第2タイミングT2に2つの撮像手段ISが撮影した各画像データDd2、De2をメモリM1(図2)の第2領域に記憶する。画像データDd1,Dd2は、下流側の撮像手段ISに対応し、画像データDe1,De2は、上流側の撮像手段ISに対応する。
【0093】
次に、移動状態検出手段IPは、画像データDd1及び画像データDd2をパターンマッチングさせて、画像データDd2が画像データDd1に対してシフトしたシフト画素数Nd(X方向のシフト画素数NdxとY方向のシフト画素数Ndyで成る)を取得する。また、画像データDe1及び画像データDe2をパターンマッチングさせて画像データDe2が画像データDe1に対してシフトしたシフト画素数Ne(Nex、Ney)を取得する。
【0094】
次に、移動状態検出手段IPは、下記の(6)式を用いて、シフト画素数Ndxに基づきX方向における用紙Pの移動速度を検出する。また、下記の(7)式を用いて、シフト画素数Nexに基づきX方向における用紙Pの移動速度を検出する。
【0095】
Vdx=Φ×(Lg/Tp)×Ndx・・・(6)
Vex=Φ×(Lg/Tp)×Nex・・・(7)
そして、所定期間Ta毎に検出された移動速度Vdx及び移動速度Vexを用紙搬送制御手段U100に順次出力する。
【0096】
図6は、本発明に係る第2の実施形態の用紙搬送制御手段U100の関係を示す制御ブロック図である。
【0097】
用紙搬送制御手段U100は、移動状態検出手段IPから所定期間Ta毎に順次出力されたVdx、Vexに基づき、定着ベルト31の回動を駆動する定着モータM2の回転、あるいは二次転写ローラ9の回転を駆動する二次転写モータM3の回転を制御して、定着部30と二次転写ローラ9との間を移動する用紙Pに適正な範囲のループを形成する。
【0098】
用紙搬送制御手段U100は、所定期間Tp毎にループ量Lpの変化量Laを演算し、用紙Pのループ量Lpを更新している。Tp≧Taのような関係にあり、Tpを適宜設定して演算の負荷を軽減している。
【0099】
図7は、本発明に係る第2の実施形態の用紙搬送制御手段U100が司るループ量更新制御の一例を示すフローチャートである。
【0100】
S301はタイマをリセット(T=0)する工程であり、S302はタイマを作動させる工程である。S303はタイマが所定期間Tpを計時したか、否かを判定する工程である。タイマが所定期間Tpに到達すると、S304工程に移行する。
【0101】
S304は移動状態検出手段IPから最新のVdx、Vexを取得する工程であり、S305工程に移行する。
【0102】
S305は、(8)式を用いて、所定期間Tpの間に用紙Pに生じたループ量Lpの変化量LaをVdx,Vexに基づき演算している。次のS306工程に移行する。
【0103】
La=Tp×(Vex−Vdx)・・・(8)
S306工程は、Lp=Lp+Laなる演算を行ってループ量Lpを更新している。
【0104】
以上のように、用紙搬送制御手段U100はループ量Lpの更新を所定期間Tp毎に実行している。
【0105】
図8は、本発明に係る第2の実施形態において用紙搬送制御手段U100により実行される用紙搬送制御の一例を示すフローチャートである。
【0106】
S201は、通紙が開始したか否か、つまり、用紙Pの先端が定着ニップPfに通紙されたか、否かを判定する工程である。
【0107】
S202は、ループ量Lpを初期化する、つまりリセットする工程であり、次にS203工程に移行する。
【0108】
S203工程は定着モータM2の駆動を、定着ベルト31を通常速度より低い速度で回動させる低速モードに切り替える工程である。通常速度は、二次転写ローラ9によって搬送される用紙Pの搬送速度に等しく、定着部30と二次転写ローラ9との間の用紙Pにループが形成されないような速度である。低速モード時の速度は、定着部30と二次転写ローラ9との間の用紙Pにループ量Lpが形成されるような速度であり、ループ量Lpが徐々に増加するように予め設定されている。
【0109】
S204工程は、図7で説明済みのループ量更新制御であり、所定期間Tp毎に演算したループ量Lpを更新している。
【0110】
S205工程は、更新されたループ量Lpが目標値Loに達したか、否かを判定する工程である。目標値Loは、定着部30と二次転写ローラ9との間の用紙Pに形成されるループ量Lpを適正にするものであり、実際の装置に合わせて適宜設定される。用紙種別により異なる値を設定することが可能になっている。
【0111】
S205工程で更新されたループ量Lpが目標値Loに達すると、つまり”Yes”に判定されると、次のS206工程に移行する。一方、ループ量Lpが目標値Loに未達である場合に、つまり”No”と判定されると、S204に移行して、ループ量更新制御を継続する。
【0112】
S206工程は、定着モータM2の駆動を、定着ベルト31を通常速度で回動される通常モードに切り替える工程である。そして、S207工程に移行する。S206工程以降では、定着ベルト31は定着部30と二次転写ローラ9との間の用紙Pに形成されるループ量Lpが一定に維持されるような通常速度で駆動される。
【0113】
S207からS210までの工程では、定着ベルト31を通常速度で回動した状態の下で、定着部30と二次転写ローラ9との間の用紙Pに形成されるループ量Lpが適正範囲に維持されるよう、二次転写ローラ9の回転速度を可変制御しており、以下説明する。
【0114】
S207工程は、移動状態検出手段IPで検出される最新のVdx,Vexを取得する工程である。
【0115】
次のS208工程はS207工程で取得されたVdxからVexを減算して差分値Vdeを演算する工程である。
【0116】
S209工程は、S208工程で演算された差分値Vdeに基づき、二次転写ローラ9の駆動を増速、あるいは減速制御する工程である。
【0117】
S210工程は、用紙Pの通紙が終了するか、否かを判定する工程であり、”No”の場合はS207工程に戻り、”Yes”の場合に一連の制御を終了する。つまり、用紙Pの通紙が終了するまで、S207からS209まで二次転写ローラ9の駆動制御を行う。
【0118】
以上のように第2の実施形態の用紙搬送装置は、複数の撮像手段によって移動する用紙Pの搬送方向における異なる領域Agd、Ageを同時に撮影して、用紙Pの上流側と下流側における移動速度Vd、Veを検出して、その検出結果に基づき異なる領域Agd、Ageの間で生じる用紙Pのループ量Lpを予測し、ループ量Lpが適正範囲内に維持されるよう、第1の用紙搬送手段としての定着部30の駆動、又は第2の用紙搬送手段として二次転写ローラ9の駆動を制御して、定着部30と二次転写ローラ9との間を移動する用紙Pのループ量を適正な範囲に常時維持可能にする。その結果、定着、二次転写、又はそれら周辺に起因する画像不良の発生を未然に防止するものである。
【0119】
なお、第2実施形態では、下流側の撮像手段ISが定着ニップPfの直前に配設されているが、これに限定されるものでなく、定着ニップPfの下流側に配設させることも可能である。
【0120】
[第3実施形態]
本発明に係る用紙搬送装置の第3の実施形態について説明する。
【0121】
図9は本発明に係る第3の実施形態の用紙搬送装置20の構成を示す模式図である。
【0122】
二次転写ローラ9は二次転写位置Ptで用紙Pを挟みながら中間転写体6に対し圧接している。撮像手段IS(非図示)は二次転写位置Ptの上流側に3つ配設され、二次転写位置Ptに搬入される用紙Pの異なる領域Agc,Agr、Agfを撮影している。領域Agc,Agr、Agfは図示のように幅方向に配列され、領域Agcが幅方向の中央に、領域Agfが幅方向の手前側に、領域Agrが幅方向の後方側に位置する。
【0123】
ローラ圧接機構90は用紙搬送装置20の手前に配設され、二次転写ローラ9の軸91を回転可能に支持し矢印zの方向にスライド可能に配設された支持部材92と、支持部材92の下部に当接し上方に押し上げるカム93と、カム93を支持するカム軸94と、カム軸94に直結してカム軸94を回転するカムモータ95と、を有する。カムモータ95はステッピングモータである。
【0124】
非図示の用紙搬送制御手段U100は、正方向に励磁パルス信号をカムモータ95に印加して二次転写ローラ9を矢印zで示す上方に変位させ、逆方向に励磁パルス信号をカムモータ95に印加して二次転写ローラ9を矢印zの下方に変化させて、二次転写ローラ9を所望の高さに設定している。つまり、二次転写ローラ9の手前側を変位させて二次転写位置Ptの幅方向における圧接バランスを適正にしている。
【0125】
図10は、本発明に係る第3の実施形態の用紙搬送制御手段U100の制御関係を示すブロック図である。
【0126】
移動状態検出手段IPは、3つの撮像手段ISの各々で撮影された各画像データに基づき、用紙Pの3つの領域Agc、Agr,Agfにおける移動速度Vc(Vcx、Vcy)、Vr(Vrx、Vry)、Vf(Vfx,Vfy)を連続的に検出している。
【0127】
図示のように、本発明に係る第3実施形態の用紙搬送制御手段U100は、移動状態検出手段IPで検出された移動速度Vc、Vr、Vfを所定期間Tp毎に取得して、取得されたVc、Vr、Vfに基づきローラ圧接機構90のカムモータ95を制御して、二次転写ローラ9が搬入される用紙Pに及ぼす幅方向の作用力を抑制して、転写ムラ等の画像不良を未然に防止する、又は用紙Pの斜行を低減するものである。
【0128】
図11は、本発明に係る第3実施形態の用紙搬送制御手段U100が実行する用紙搬送制御の一例を示すフローチャートである。
【0129】
S401は、通紙が開始したか、否かを判定する工程である。”Yes”の場合にS402工程に移行する。
【0130】
S402は所定期間Tp毎に移動状態検出手段IPから最新のVc,Vr、Vfを取得する工程である。
【0131】
つぎのS403は、領域Agc,Agr,AgfにおけるY方向の移動速度Vcy,Vry,Vfyの加算値Vgを演算する工程である。
【0132】
次のS404は加算値Vgが第4の閾値Md以上であるか、否かを判定する工程であり、”Yes”の場合にはS405工程に移行し、”No”の場合にはS406工程に移行する。
【0133】
S406工程はVmに応じてローラ圧接機構90(カムモータ95)を作動させて二次転写ローラ9を上方に変位させる工程である。つまり、中間転写体6と二次転写ローラ9との圧接により用紙Pが全体的に後方側に移動させられている状態を転写ローラ9の上方変位によって修正する。ここでは、用紙Pの移動方向ΘがΘ>0の状態からΘ≒0の状態になるように用紙Pの移動方向Θを変化させている。そして、S408工程に移行する。
【0134】
S405工程は加算値Vgのマイナスが第4の閾値Md以上であるか、否かを判定する工程であり、”Yes”の場合にはS408工程に移行し、”No”の場合にはS407工程に移行する。
【0135】
S407工程はVmに応じてローラ圧接機構90(カムモータ95)を作動させて二次転写ローラ9を下方に変位させる工程である。つまり、中間転写体6と二次転写ローラ9との圧接により用紙Pが全体的に手前側に移動させられている状態を転写ローラ9の下方変位によって修正する。ここでは、用紙Pの移動方向ΘがΘ<0の状態からΘ≒0の状態になるように用紙Pの移動方向Θを変化させている。そして、S408工程に移行する。
【0136】
以上のように、用紙搬送制御手段U100は、移動状態検出手段IPで検出された用紙Pの異なる領域Agc,Agr,Agfにおける移動速度Vc,Vr,Vfに基づき、S402工程からS407工程までの一連の処理を行い、二次転写位置Ptに搬入される直前の用紙Pにおける移動状態を許容範囲内に収まるように制御している。
【0137】
S408工程では、通紙が終了したか、否かを判定している。そして、”No”の場合にはS402工程に戻り、通紙が終了するまで上記の一連処理を繰り返す。そして通紙が終了すると(”Yes”の場合には)、本制御を終了する。
【0138】
なお、第4の閾値Mdは用紙搬送装置20(特に二次転写ローラ9の周辺)の具体的な構成によって定まり、予め設定される定数であるが、用紙Pの種別(厚み、表面性等)によって異なる定数を選択可能にすることによって、より緻密な、優れた処理を実現できる。
【0139】
上記の第1から第3の実施形態の用紙搬送制御手段U100は、用紙Pの移動速度Vc、Vr、Vf、Vd、Veに基づき用紙搬送手段を制御しているが、移動状態検出手段IPで検出された用紙Pの移動量Lc、Lr、Lf、Ld、Leに基づき用紙搬送手段を制御しても同様の効果を得られる。これらも本発明の対象範囲である。
【符号の説明】
【0140】
A 画像形成装置
9 二次転写ローラ(第2の用紙搬送手段)
IS 撮像手段
IS1 イメージセンサ
IS2 テレセントリックレンズ
IP 移動状態検出手段
Lc,Lr、Lf 移動量
Ma、Mb、Mc、Md 閾値
Nf 定着ニップ
Ta 所定期間
Vc,Vr、Vf 移動速度
Θc、Θr、Θf 移動方向
20 用紙搬送装置
30 定着部(第1の用紙搬送手段)
31 定着ベルト(定着部材)
U100 用紙搬送制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送手段に対し用紙搬送方向の上流側、あるいは下流側に配設され、移動する用紙における異なる領域を互いに撮影して画像を出力する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段より出力された画像に基づき複数の領域における用紙の移動速度、用紙の移動量、もしくは用紙の移動方向を検出する移動状態検出手段と、
前記移動状態検出手段の検出結果に基づき前記用紙搬送手段を制御する用紙搬送制御手段と、
を有することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記複数の撮像手段が用紙搬送方向、又は用紙搬送方向に直交する方向に配設されることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記移動状態検出手段は、前記複数の撮像手段の各々により所定期間を隔てて撮影された複数の画像に基づき前記用紙の移動速度、前記用紙の移動量、もしくは前記用紙の移動方向を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記用紙搬送手段は、定着ニップで用紙を定着部材に所定の圧接力で圧接させながら用紙を搬送して、用紙上の画像を定着処理する定着部を有し、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき前記定着ニップの圧力を変更させることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記用紙搬送手段は、用紙の搬送方向を変更可能であり、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき用紙の移動方向を変化させるよう、前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記用紙搬送手段は、第1の用紙搬送手段と、前記第1の用紙搬送手段に対し用紙搬送方向の上流側に配設される第2の用紙搬送手段と、を有し、
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に応じて前記第1の用紙搬送手段、又は前記第2の用紙搬送手段による用紙の移動速度を変更させるよう、前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記複数の撮像手段はテレセントリックレンズとイメージセンサとを有することを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記用紙搬送制御手段は、前記移動状態検出手段の検出結果に基づき算出した算出値、もしくは当該検出結果と閾値とを比較し、その比較結果に基づき前記用紙搬送手段を制御することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
前記閾値は、用紙種別に応じて設定されることを特徴とする請求項1から8までの何れか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか1項に記載の用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置により搬送される用紙上に画像を形成する画像形成手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−96852(P2012−96852A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243225(P2010−243225)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】