説明

画像ストリーミング・モードの適応選択法

【課題】画像ストリーミング・モードの適応選択法を提供する。
【解決手段】画像保管通信システム(PACS)が医学的画像情報をサーバ(120)からビューイング・ワークステーション(101)へ伝送する。システムが使用する伝送モードは、ネットワーク(110)の性能測定基準に依存する。ネットワーク(110)が高速で安定である場合、DICOM画像ファイル全体が伝送される(段階203)。ネットワーク(110)が高速で安定でない場合、他の幾つかのモードの内の1つを使用して、画像情報を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、医学的画像及びビデオの記憶、保管、ネットワーク接続及び検索に関するものであり、より具体的には、帯域幅が異なるような複数のネットワーク内で動作する画像保管通信システム(PACS)の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PACSは医学的画像の記憶、検索及び表示のためのシステムである。PACSは、典型的には、1つ以上のネットワーク接続されたコンピュータと、例えば、RAID(廉価なハードディスクの冗長なアレイ)、テープ記憶装置、又は光ディスクの形の相当量の半永久的記憶装置とで構成されている。PACSはまた、典型的には、画像の記憶、検索及び表示のためのソフトウエアと、ディジタル媒体(例えば、ロボット式テープ・ローダ)、表示装置及び入力の物理的管理のために必要になることがあるハードウエアとを含んでいる。
【0003】
PACSは、典型的には、CT(コンピュータ断層撮影)スキャナ、MRI(磁気共鳴イメージング)スキャナ、又はディジタル形式で画像を提供することのできるX線装置のようなイメージング装置に接続されていて、しばしばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)フォーマットに準拠した画像を含む。医師又は他の保健医療提供者はイメージング装置を使用して、診断又は治療の目的のために患者のディジタル画像を生成する。画像はネットワークを介してPACSへ送られ、画像はPACSで、特定の患者を識別する情報と共に記憶される。画像はPACS上で直ちに観察されるか、又は後で表示するために検索される。画像はオプションとして記憶保存する前に処理するか、又は生のディジタル・フォーマットで記憶して、後でオプションの処理を受ける。
【0004】
PACS技術の開発以前では、病院は、典型的には、医学的画像をフィルムに記録し、フィルムは人手により目録を作り且つ検索しなければならなかった。初期のコンピュータ化した医用イメージング装置には欠点があった。というのは、それらの装置が、典型的には、保管能力及び独自のファイル・フォーマットが全くないか又は限られていた独立型の装置であったためである。PACSは、標準のDICOM及び他のファイル・フォーマットと共に、医学的画像を保存するための便利な標準化された方法を提供し、高速の電子検索、より便利なバックアップ、及び遠隔の電子配信の潜在的可能性を備えていた。
【0005】
このような伝統的なPACSは、それらの利点にも拘わらず、多数の欠点を持つ。第1は、伝統的なPACSは、各々が異なる帯域幅を持つ様々な異なるネットワークと接続して、又はオーバーヘッド要件により変化する実効帯域幅を持つ単一のネットワークと接続した場合においても、動作することができるが、同じネットワークを使用する他のシステムとデータ通信が競合すること等である。
【0006】
既知のPACSは、多数のデータ転送プロトコルの内のいずれかを使用して画像をストリーミングするように構成されている。或るプロトコルは高帯域幅のネットワークに特によく適合しており、他のプロトコルは典型的にはより低い帯域幅のネットワークで動作するように最適化される。通常、特定のネットワーク帯域幅のためにプロトコルを最適化するには、ある設計上の妥協を必要とする。例えば、高帯域幅チャンネルは殆ど前処理又は後処理を必要とせずに画像データの転送が可能であり、従って、データを記憶し、検索し、パッケージ化し、送信し、受信し、及び復号するために使用される装置に殆どオーバーヘッドを賦課させない。他の通信チャンネル、例えば、無線チャンネルは、非常に広い帯域幅を持つことができるが、例えば、装置の無線通信路が他の設備によって妨害されたとき、或いは装置が通信中のノードの範囲の外に出た場合に、周期的なネットワーク障害を受けることがある。また、電話網、特に旧来のPOTS(アナログ音声通信による旧来の電話サービス)を介しての従来のモデム通信に依存しているネットワークのような更に別のチャンネルは、帯域幅が非常に小さい。このような低帯域幅のネットワークを使用して満足な画像ストリーミングを達成するためには、大幅なデータ圧縮/解凍を使用しなければならず、典型的には、かなりの処理資源を必要とする。
【0007】
多くの場合、PACS実施のために見込みのあるネットワーク帯域幅を選び、且つこのような期待されるネットワークで動作するように最適化される通信プロトコルを選択することは、容認できよう。しかしながら、経験により判ったことは、極めて頻繁にこのようなシステムが結局は様々なネットワーク帯域幅の下で動作していることであり、そこで、様々なネットワーク帯域幅に関連して効果的に動作することができるPACSを提供することは有利であると考えられる。
【0008】
この状況をより詳しく考察すると、1つ以上の保健医療機構にわたって共用される医学的画像が通常、生のピクセル・データ、ベースライン可逆(lossless)圧縮(可逆JPEG)、及びJPEG2として知られているプログレッシブ圧縮規格を含む様々なデータ表現を支えるDICOMフォーマットで保存される。保健医療機構ネットワーク基盤はしばしば、ボトルネック、機能不全、不安定性、及びその他の問題で悩まされており、これらの問題は、例えば、ユーザのビューイング・ワークステーションで画像を実時間で表現するほど高速に読み出してレンダリングすることができないので、好ましいフォーマットを使用する画像ストリーミングを不可能にする。
【0009】
ネットワーク帯域幅を増大すると云うような簡単な既知の解決策は、経費から病院内配線方針までにわたる様々な因子により、必ずしも実行可能ではない。
【0010】
別の可能性は、ストリーミングすべき画像データの通常の圧縮である。しかしながら、多くの医学的用途では、ある種の圧縮、特に非可逆(lossy) 圧縮は、好まれないか、又は完全に禁止されている。その関心事は、医学的診断作業があまりにも重要で且つ繊細な仕事であるので、画像をその元の画素数、ビット深さ及び他の特性から意図的にに劣化させることによって生じ得る余分な不確実さに悩まされないようにすることである。可逆圧縮手法は、それらが可能であるときでも、典型的には、画像ファイルの大きさを一桁未満だけ低減するに過ぎず、これは低帯域幅チャンネルを介して実時間ストリーミングを行うには充分ではない。医学的画像は可逆圧縮に特に適していない。というのは、CTや超音波のような多くのイメージング・モダリティが本質的に、既知の可逆方法を使用する有意の圧縮に役立たない相当量の純粋なノイズ成分を持つ画像を生成するからである。
【0011】
圧縮が実行可能である場合でも、対処すべき困難さが残っている。例えば、ウェーブレットに基づくJPEG2画像圧縮規格は、別々の「品質層」で画像の伝送を可能にするプログレッシブ圧縮能力を提供する。最初に伝送された画像は、より多くの画像が到達するにつれて品質が改善される。「可逆」モードでは、JPEG2処理により、受け取った画像が原画像と同じ品質になるまでデータの伝送が可能である。状況次第では、このフォーマットの使用により、様々な帯域幅に対してある態様の固有の適応性が提供され、帯域幅が実時間無損失伝送のために必要とされる大きさよりも低下したとき、幾分かより低い品質で伝送が単純に継続し、これらの画像は原画像の品質に到達する前に廃棄される。
【0012】
JPEG2を使用する別の既知の改善策は、全帯域幅で原画像品質の伝送が可能でないとき、特別な関心領域(ROI)についてのみ高品質画像を伝送することである。
【0013】
これらの解決策が利用可能であるのは、原画像がJPEG2に準拠したDICOMフォーマットで入手可能である場合であり、多くのイメージング・モダリティはこのようなフォーマットで入手可能である画像を作成しない。このような画像が入手可能である場合でも、可逆JPEG2符号化は計算量の要求が厳しく、以前のJPEG規格の下での匹敵する可逆符号化よりも典型的には5〜6倍遅くなる。これに対応して、このようなJPEG2画像の復号及びレンダリングも同様に計算量がより大きく、その結果として通常のビューイング・ワークステーションでは受け入れることのできない動作を生じさせることがある。
【0014】
米国特許第6314452号には、ウェーブレット・ストリーミングを使用してJPEG2を用いる際の問題に対する1つの部分的な解決策が開示されている。しかしながら、この及び他の公知の手法は、例えば、広いネットワーク帯域幅が利用可能であり且つ画像転送がこの付加的な処理無しに行うことが可能なとき、依然として画像を符号化/復号することによって、依然として不必要なオーバーヘッドを賦課する。
【0015】
また或るオンデマンド・ビデオ用途では、拡縮可能なビデオ・ストリーミング及びサービスの質により同様な問題を扱っている。MPEGビデオ圧縮規格の高度な能力を使用することにより、1つの装置(すなわち、ビューイング装置)毎にレート(rate)/歪みトレードオフを制御することができる。従って、ビューイング・ノードの間でビットストリームを動的に割り当て、またより高い分解能のビデオをより高い分解能のビューイング装置へ且つより高い表示品質をある特定のユーザへ流れさせることができる。しかしながら、これらの解決策は、典型的には、ビデオが、複数の分解能及び品質層で構成された単一の前処理されたMPEGファイルからストリーミングされると仮定しており、ある仮定はしばしば多くの医学的用途には当てはまらない。
【0016】
医用遠隔放射線学用途では、伝統的な解決策は、オフピーク時間中に前もって多量の可逆DICOM画像を転送する予定を立てて、放射線学医師又は他の提供者が画像を受け取り、保存し、また後で再観察することができるようにすることであった。オフピーク時間帯が利用可能である時を予測し、それを、伝送すべき画像に関連した保健医療の要求と整合させようとする様々な手法が使用されている。
【0017】
米国特許第6848004号には、ウェブ・ページにおけるリッチ・メディア・コンテンツの適応配信のためのシステムが開示されている。この特許明細書には、クライアントが帯域幅を計算し且つサーバーがウェブ・コンテンツを適応伝送し、より高い帯域幅が利用可能であるときより豊富なコンテンツが伝送されるようにしたクライアント/サーバー・システムが開示されている。この手法は、全ての状況に利用可能であるとは限らないJAVAアプレット(「JAVA」は商標)のような動的ロード・アプレット技術の利用可能性に依存している。
【0018】
同様に、米国特許第6243761号には、実効帯域幅及び/又は待ち時間特性に従ってサーバーによってウェブ・ページのマルチメディア・コンテンツを動的に調節するための方法が開示されている。この場合では、クライアント・コンピュータへ送られるコンテンツが、グラフィック画像の大きさ、分解能又は画像数を低減すること等によって調節される。このようなコンテンツの修正は多くのウェブ・ブラウザ用途において許容可能であるかもしれないが、多くの医学的用途では適切でないことがある。
【0019】
別の方策が、チャンドラ,エス(Chandra, S.)等による論文「Application-level differentiated multimedia Web services using quality aware transcoding, 18 IEEE Journal on Communications 12, Dec. 2, pp. 2544-2565, ISSN 0733-8716」(以下、チャンドラ論文と呼ぶ)に開示されている。チャンドラ論文は、資源を管理するためにウェブ・サービスの特定用途向け特性の使用法を開示している。再び、典型的なPACSの環境は、このようなサービスを利用可能にしないことがある。これらのの問題を対象とする他の文献を挙げると、ガダー(Gaddah)等による論文「Image transcoding proxy for mobile Internet access, Proceedings of the Vehicular Technology Conference 2002, September 2002, pp. 807-811, ISSN 1090-3038」、リー(Lee)等による論文「SIQuA: server-aware image quality adaptation for optimizing server latency and capacity in wireless image data services mobile radio, Vehicular Technology Conference, 2, 4 VTC2-Fall(IEEE), pp. 26112615, ISSN: 1090-3038」、キム(Kim)等による論文「A new resource allocation scheme based on a PSNR criterion for wireless video transmission to stationary receivers over Gaussian channels, IEEE Transactions on Wireless Communications 1:3, July 2002, pp. 393-401, ISSN: 1536-1276」、ラマン(Raman) 等による論文「ITP: an image transport protocol for the Internet, IEEE/ACM Transactions on networking 10:3, June 2002, pp. 297-307, ISSN 1063-6692」 、米国特許第5931904号、及び米国特許第5276898号である。
【特許文献1】米国特許第6314452号
【特許文献2】米国特許第6243761号
【特許文献3】米国特許第5931904号
【特許文献4】米国特許第5276898号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のことから一般化すると、利用可能な帯域幅が低いときに許容可能な品質で医学的画像データをストリーミングするために高度の処理を使用すると共に、必要とされないとき、例えば、利用可能な帯域幅が高いとき、このような処理を行うことを防止するようにするシステムが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
伝統的な画像保管通信システムに伴う上記の諸問題に対処するため、本発明によれば、ユーザが要求するとき、ビューア・サブシステムが先ず利用可能な帯域幅を決定し、或いは、或る実施形態では、画像のストリーミングのために、画像の前処理/後処理のための計算資源、データの種類及び大きさのような他の関連したパラメータを決定する。画像データの大きさに対して高帯域幅が検出された場合、画像をその生来の(例えば、DICOM)形態で使用するストリーミング・モードが選択される。より小さい帯域幅が利用可能である場合、幾つかのモードの内の1つが伝送のために選択される。各モードはより小さい帯域幅を必要とするが、より多くの処理オーバーヘッドを賦課する。
【0022】
一実施形態では、一連のより低い帯域幅のモードは、可逆圧縮、画素データのROIストリーミング、ROI画素データの可逆圧縮、ベースライン・ウェーブレット可逆圧縮、及びプログレッシブ・ウェーブレット可逆圧縮を含む。
【0023】
明細書に記載した特徴及び利点は必ずしも全てではなく、特に、それらに加えて他の多数の特徴及び利点が図面、明細書及び特許請求の範囲の記載から当業者には明らかであろう。更に、明細書で用いる用語は、原則として読み易さ及び教示の目的で選択していて、発明の内容を線引き又は制限するために選択したものではないことに注意されたい。
【0024】
本発明の様々な他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の特定の実施形態についての以下の詳しい説明及び特許請求の範囲を読むことによって明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面及び以下の詳しい説明は、例示の目的でのみ示した本発明の特定の実施形態に関するものである。以下の説明から、開示した構造及び方法の代替実施形態が、本発明の原理から逸脱することなく用いることのできる実行可能な代案として容易に認められることに留意されたい。
【0026】
本発明は、PACSにおける医学的画像を転送するためのシステム及び方法を含む。本書で詳しく説明する実施形態では、所与のネットワークの帯域幅及び安定度に適応するようにストリーミング・モードが選択される。帯域幅が高く且つ安定である場合には、原画像ファイルの簡単なファイル転送が使用される。帯域幅が低いか又はネットワークが不安定である場合は、より低速で且つより寛容な転送モードが用いられる。
【0027】
ここで図1について説明すると、本発明によるシステム100の基本的構成要素を示している。すなわち、システム100は、ビューイング・ワークステーション101と、ネットワーク110と、サーバー120とを含む。システム100は、図示のように、ビューイング・ワークステーション101のユーザがサーバー120から医学的画像を要求し、該画像がネットワーク110を介して伝送されるように構成されている。典型的な一実施形態では、ビューイング・ワークステーション101は、適切な表示装置及びネットワーク接続部を備えた通常のパーソナル・コンピュータを本書で説明されるように構成することによって、具現化される。同様に、サーバー120は、典型的には、医学的画像の供給源を構成するように1つ以上のイメージング・モダリティ又は画像記憶保存システムと通信関係にある、ウィンドウズ(「ウィンドウズ」は商標)・オペレーティング・システムのパーソナル・コンピュータに基づくサーバーのような通常のサーバー・コンピュータによって具現化される。
【0028】
或る実施形態では、サーバー120は、画像の内の選ばれたものを記憶するキャッシュ・メモリ121を含む。一実施形態では、キャッシュ・メモリ121は、未だ読み出されていないが、要求が来ると予想される画像を記憶する。別の実施形態では、キャッシュ・メモリ121は、システム100が動作している環境内で様々な他の処理によって生成されるような圧縮された画像を記憶する。ネットワーク110は、一実施形態では、通常のデータ・ネットワーク、例えば、既存のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)又はワイド・エリア・ネットワーク(WAN)である。実際の設備では、典型的には、保健医療機構が種々のネットワーク110によって相互接続された多数のビューイング・ワークステーション101及び多数のサーバー102を持つ。例えば、放射線診療所はビューイング・ワークステーション・スピード・ローカル・エリア・ネットワークを持つことがあり、他方、専門放射線科医師は、時々、何らかの遠隔の施設から比較的低速で脆弱なインターネット接続を介してのみアクセス可能である画像を再観察するように要求されることがある。
【0029】
更に、単一の既存のネットワーク110でさえも、時間につれて変化する特性を持つことがある。使用量が少ない期間中、ネットワーク110がビューイング・ワークステーション101のユーザに提供する利用可能な帯域幅は非常に大きくなることがあり、他方、多くのユーザがネットワーク110を共用するピーク時間においては、利用可能な帯域幅はかなり低下する。帯域幅の他に、或る実施形態では、画像転送に関係した他のパラメータが帯域幅に加えて又は帯域幅の代わりに評価される。或る施設では、複数の異なる種類の画像を記憶することができ、それらの各々は転送のための異なる好ましい機構を持つ。非可逆圧縮されたシネループ画像がサーバー120に記憶されたものである場合は、画像が高分解能の未圧縮のDICOM画像である場合よりも、転送のための異なる機構が模索されることがある。同様に、JPEGフォーマットで記憶されている画像について以下に述べるようにウェーブレットに基づく処理を使用することが適切でないことがある。例示の目的で、本書では、関心のあるパラメータとして帯域幅に焦点を当てて説明する。
【0030】
一実施形態では、ビューイング・ワークステーション101は画像ビューア・サブシステムを含み、画像ビューア・サブシステムは、ネットワーク110から受け取った画像データを処理して、画像データを、医学的診断のため又は任意のその他の希望された使用法のためにビューイング・ワークステーション101上で表示することのできる形式に変換する。ビューイング・ワークステーション101は更に、ワークステーション101への画像転送のための予想される利用可能な帯域幅を決定する帯域幅測定サブシステム102を含む。
【0031】
帯域幅測定サブシステム102は、固定サイズの小さいデータ・ストリームをサーバーから要求することによって、サーバー102からの転送を開始する。データ・ストリームを伝送するのに掛かる時間を測定することによって、帯域幅測定サブシステム102は、画像転送のために利用可能である見込みのある帯域幅を推定する。測定のために使用されるデータ・ストリームが確実にサーバーから取り出され、且つ中間プロキシ・サーバーのキャッシュ・メモリから取り出されないようにするため、一実施形態では、サブシステム102は、帯域幅について試験する度毎に、僅かに異なり且つ容易に予測可能でないURL(ウェブ・アドレス)を要求する。これは、サーバー120とビューイング・ワークステーション101との間のネットワーク110上のどこかに存在することのあるような中間キャッシュ・メモリよりはむしろ、情報が実際にサーバー120から検索される可能性を最小にすることである。一実施形態では、この結果を達成するためにURLの最低レベルに若干の擬似ランダム性が含まれる。更に、一実施形態では、URLは、そのURLの内容がサーバー120からネットワーク110へ伝送されるとき有意な自動圧縮に影響される可能性を最小にするように選択される。システム100が使用されるネットワークにはこのような自動圧縮を含むものがあり、これは、実際のデータで達成できない帯域幅を誤って指示することがある。一実施形態では、帯域幅測定は、クライアントがその時に接続される各サーバーについて、固定した時間間隔で行われる。別の実施形態では、帯域幅測定サブシステムは、期待される帯域幅を決定するために幾つかの可能なネットワーク経路の各々を介しての転送についての履歴データを使用する。更に別の実施形態では、画像転送が高い安定な帯域幅を仮定して開始され、実際の帯域幅は、期待されたレートに合致していない画像ストリーミングに基づいて決定される。更に別の実施形態では、帯域幅測定はストリーミング中に時々チェックされて、ストリーミング・モードが使用可能なネットワーク帯域幅の変更に応じて動的に変わるようにする。
【0032】
図1に例示されているように、帯域幅測定サブシステム102はビューイング・ワークステーション101上で具現化される。別の実施形態では、帯域幅測定サブシステム102は、ビューイング・ワークステーション101よりもむしろサーバー120上で具現化される。更に別の実施形態では、帯域幅測定サブシステムは、ビューイング・ワークステーション101及びサーバー120の両方から別個に具現化される。
【0033】
画像ビューア103は、以下に更に説明するように、幾つかのモード/フォーマットで画像装置を処理するように構成される。利用可能なモード及びフォーマットに影響を与える因子は、期待された範囲のネットワーク帯域幅及び信頼度、ビューイング・ワークステーション101及びサーバー120の両方における期待された処理能力、並びにワークステーション101で観察すべき画像についての医学的実施要件を含む。例えば、用途によっては、ストリーミング・データは「オン・ザ・フライ(on the fly)」で演算され、そのような場合には、サーバー120の処理限界が特定のストリーミング・モードの選択の際の要因になる。
【0034】
ここで図2について説明すると、一実施形態に従った処理の流れ図を示している。最初に、段階201で、前に述べたように、帯域幅測定サブシステム102が画像転送のための利用可能な帯域幅を決定する。次いで段階202で、帯域幅が特定の閾値(図2では便宜のために「5」として表す)よりも高い場合、ビューイング・ワークステーション101がサーバー120に、生来のフォーマットの画像情報(この例では、画像に対応する元のDICOMファイル)を伝送するように要求し、その結果、段階203で、そのファイルを伝送する。この状況では、ワークステーション101のユーザが画像内に特別な関心領域(ROI)を持っているかどうかに拘わらず、全画像ファイルが伝送される。
【0035】
段階204で、帯域幅が「5」の閾値以下であり且つ別の閾値(図2では「4」として表されている)より高いと決定された場合、ワークステーション101は、段階205で、サーバー120に可逆圧縮モードで全画像ファイルを伝送するように要求する。或る特定の実施形態では、可逆JPEG、ZIPなどを含む通常の効率のよい、計算量の多くない方法による圧縮が、この伝送モードには適切である。
【0036】
段階206で、帯域幅が「4」の閾値以下であり且つ「3」の閾値より高いと決定された場合、ワークステーション101は、段階207で、サーバー120に画像のROIのために必要である画素のみを伝送するように要求する。この場合、サーバーによる何らかの付加的な処理、例えば、ROIの選択を可能とする低分解能の画像を提供するように画像データを低域通過フィルタリングすることが必要とされる。一実施形態では、ROIは、該ROI内の画素について何ら更なる処理を行うことなく伝送され、また、別の実施形態では、高速の圧縮方式がROI画素に適用される。
【0037】
段階208で、帯域幅がレベル「3」以下であり且つレベル「2」より高いと決定された場合、ワークステーション101は、段階209で、サーバー120にベースライン・ウェーブレット可逆圧縮を使用して画像ファイルを伝送するように要求する。この伝送モードでは、サーバーは中位の計算量を必要とするウェーブレットに基づくアルゴリズムを使用して画像を符号化しストリーミングして、可視データを依然として複数層の品質又は分解能でストリーミングすることができるようにする。このような伝送の例が米国特許第6314452号に記載されている。このモードでは、ストリーミングされたデータの高速の復号及びレンダリングを行う画像ビューア・サブシステム103の能力が重要視される。一実施形態では、このレベルで、ROIのウェーブレット表現が簡単な可変長符号化を使用して符号化されて、分解能ごとに伝送され、またこの伝送によって賦課される全体の処理オーバーヘッドを低減するために、算術符号化のような計算量の多い符号化部分は使用されない。前に述べたように、このようなオーバーヘッドの管理は、サーバー120が有意な処理限界を持っている場合に必要とされる。
【0038】
段階208で、帯域幅がレベル「2」以下であると決定された場合、画像データを処理する必要性が増大し、そこでより多くの処理オーバーヘッドが許容される。この場合、ワークステーション101は、段階210で、サーバー120にプログレッシブ・ウェーブレット可逆圧縮を使用して画像情報を伝送するように要求する。このモードでは、サーバーは計算量の多い方法を使用して、細かい複数層の可視品質でROIを符号化しストリーミングする。これは可能な最良のレート−歪み性能を保証する。すなわち、クライアントにおいてレンダリングされる画像の品質が、相互作用中の各時点において、伝送される所与量のデータについて可能な最良のものであることを保証する。
【0039】
一実施形態では、レベル「5」はほぼ100MB/sの帯域幅であり、レベル「4」はほぼ50MB/sの帯域幅であり、レベル「3」はほぼ20MB/sの帯域幅であり、レベル「2」はほぼ5MB/sの帯域幅である。別の実施形態では、異なるレベル数及び異なる閾値が使用される。例えば、レベル「1」として表されるより低い帯域幅を使用することができ、その場合、非可逆圧縮が可能であり、ユーザはストリーミングされる画像が損失の多いことを注意される。若干の医学的用途では、このような非可逆圧縮を使用することが許容されるが、多くの用途では許容されない。
【0040】
別の実施形態では、サーバー120に記憶されている幾分かの画像情報は既に非可逆形態で、また可逆形態であることがあり、その場合、別のモード(例えば、完全非可逆形態の直接伝送)が使用のために利用可能であることがある。用途によっては、他の処理システムが既に異なる種類の画像ファイル、例えば、他の目的のために非可逆圧縮ファイルを生成しており、それらは必要とされたときに直ぐアクセスすることができるようにキャッシュ・メモリ121に記憶することができる。サーバー側での処理オーバーヘッドが関心事である場合、このようなキャッシュ・メモリ121の使用により、サーバー120によって圧縮処理を繰り返す必要性が低減される。
【0041】
帯域幅閾値及び伝送モードの選択は上述の例に制限されない。例えば、ワークステーション101の処理能力が大きくない場合、ワークステーション101による有意な復号を必要とする伝送モードは、ワークステーション101がロバストな処理能力を持つ場合よりも好まれないと思われる。
【0042】
同様に、ネットワーク110の特性及び画像自体の特性は、伝送モード及び閾値の特定の選択を必要とする。画像がネットワーク帯域幅と比較して非常に大きい場合、ROIに基づくモードへの切換えを、それ以外の場合よりも素早く行うことは有益であろう。
【0043】
モードの選択は先験的な選択に制限されない。一実施形態では、利用可能なモードの間で希望通りに適応的に切り換えることができる。別の実施形態では、モード切換えは、ネットワークの性能の変化が検出されたとき及び実際の性能が最初に期待されていたものから異なったときに自動的に行われる。
【0044】
上述の実施形態は、クライアント側で(すなわち、ビューイング・ワークステーション101で)具現化される制御装置を持つ。別の実施形態では、サーバー120が、又は外部装置(図示せず)でさえも、帯域幅決定及びモード選択を行うことができる。
【0045】
本書で述べる実施形態では、サーバー120が画像の原形態(例えば、DICOM)を記憶することのみ必要とし、データの前処理又は複製を必要としない。他方、画像のこのような追加の種類が他の処理の結果としてサーバー上に既にある場合、それらの種類の画像は使用するために利用可能であり、またキャッシュ・メモリ121に記憶することができる。
【0046】
本開示を読んで、当業者は、医学的画像オブジェクトについてのトランザクション記憶及びワークフロー・ルーチンのためのシステム及びプロセスの追加の代替の構造的及び機能的設計を評価されよう。従って、本発明の特定の実施形態及び用途を例示し説明したが、本発明が本書に開示した正確な構成及び構成要素に制限されないこと、並びに当業者にとって明らかな様々な修正、変更及び変形が、特許請求の範囲に記載した発明の精神及び範囲から逸脱せずに、開示した本発明の方法及び装置の配置構成、動作及び細部について為し得ること、を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるシステムの基本的な構成要素の間の相互作用を示す概略図である。
【図2】本発明による画像ストリーミング処理のための流れ図である。
【符号の説明】
【0048】
100 本発明によるシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的画像情報を供給するサーバ(120)と、
前記サーバ(120)から医学的画像情報を伝送するのに適したネットワーク(110)と、
前記ネットワーク(110)に動作上結合されたビューイング・ワークステーション(101)であって、前記ネットワークの伝送特性に応じた複数のモードの内の1つで前記サーバ(120)から画像情報を伝送することを要求するのに適したビューイング・ワークステーション(101)と、
を有するイメージング・システム(100)。
【請求項2】
前記ビューイング・ワークステーション(101)は、前記ネットワークの帯域幅を決定するための帯域幅測定サブシステム(102)を含んでいる、請求項1記載のイメージング・システム。
【請求項3】
前記サーバ(120)は、前記ネットワークの帯域幅を決定するための帯域幅測定サブシステム(102)を含んでいる、請求項1記載のイメージング・システム。
【請求項4】
前記複数のモードは、原画像ファイルの伝送(203)、可逆圧縮された画像ファイル・データの伝送(205)、関心領域画素データの伝送(207)、ウェーブレット可逆圧縮画像ファイル・データの伝送(209)、及び関心領域ウェーブレット可逆圧縮データの伝送(210)を含んでいる、請求項1記載のイメージング・システム。
【請求項5】
前記医学的画像情報の特性に対する前記ビューイング・ワークステーション(101)の性能特性に応じて前記複数のモードの内の前記1つでの伝送を要求するように構成されている、請求項1記載のイメージング・システム。
【請求項6】
ネットワーク(110)を介してサーバ(120)からビューイング・ワークステーション(101)へ医学的画像情報を伝送する方法であって、
性能測定基準を決定する段階(201)と、
前記決定する段階の結果に応じて伝送モードを選択する段階と、
前記選択された伝送モードで前記画像情報を伝送する段階と、
を有する方法。
【請求項7】
前記性能測定基準が前記ネットワークの帯域幅である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記選択する段階が前記性能測定基準を複数の閾値と比較する段階を含んでいる、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記選択する段階が前記ビューイング・ワークステーション(101)の性能特性に応じて為される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記選択された伝送モードが、原画像ファイルの伝送(203)、可逆圧縮された画像ファイル・データの伝送(205)、関心領域画素データの伝送(207)、ウェーブレット可逆圧縮画像ファイル・データの伝送(209)、及び関心領域ウェーブレット可逆圧縮データの伝送(210)を含んでいる複数のモードの内の1つである、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−312365(P2007−312365A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−99053(P2007−99053)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】