説明

画像処理装置、道路画像描画方法および道路画像描画プログラム

【課題】 道の一部もしくは全部が建造物によって隠れてしまうことがなく、建造物と道の重なりを認識させることができるとともに、描画処理の負荷を軽減する。
【解決手段】 道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置であって、描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出する手段と、抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置等に適用可能な画像処理装置、道路画像描画方法および道路画像描画プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内において自車の位置や進行方向等をディスプレイ画面の地図上に表示するカーナビゲーション装置が普及してきているが、昨今の描画技術の目覚しい発展により、カーナビゲーション用の地図も3D(3次元:3-Dimension)による立体化を迫られてきている。ここで、カーナビゲーションにおける地図の3D化とは、主役である「道」を表示しつつ、3D化された建造物も同時に描画するものである。
【0003】
ところで、本来カーナビゲーション用の地図では、カーナビゲーションゆえに「道」を表示することが最も重要であり必須の表示物であるが、3D化された地図において主役である「道」を表示しつつ、3D化された建造物も同時に描画するということは、カーナビゲーションとして最もドライバーに情報として伝達しなければならないはずの「道」が見難くなってしまうという基本的な問題を発生させてしまう。これは3D化された建造物によってその裏側にある道が隠されてしまうことによる。
【0004】
このように道と建造物の配置関係をそのまま描画したのでは道の一部もしくは全部が建造物によって隠れてしまい、カーナビゲーション用の地図として機能しなくなってしまうため、従来のカーナビゲーションでは以下のような手法が採用されていた。
(1)手前の建造物を半透明化して建造物の裏側が見えるようにする(その結果、建造物の裏の道が見えるようになる)(例えば、特許文献1を参照。)
(2)道を全て半透明にして建造物に上書き描画する(その結果、半透明化した道と建造物が重なることで道が透過しているような表現になる)(例えば、特許文献2を参照。)
図1は従来における道と建造物の重なりを考慮した描画手法の概要を示す図であり、道Rの一部が建造物Bと重なっているが、建造物Bもしくは道Rを半透明の状態で描画することにより、道Rの一部が建造物Bによって隠れてしまうのを防止している。
【特許文献1】特開平9−318381号公報
【特許文献2】特開2000−293668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来は建造物もしくは道を半透明の状態で描画することで対応していたが、次のような問題点が指摘されていた。
【0006】
すなわち、従来手法(1)にあっては、建造物と道が1対1で単純に重なるだけなら効果があるが、建造物が何重にも重なると半透明の多重化で透明度が落ちて見難くなる上に、その裏の道は結局見えなくなってしまう。
【0007】
また、従来手法(2)にあっては、表現としては建造物と道の重なりを認識させることに成功しているが、道全体を半透明化するため、描画にかかる画像処理が極端に重くなってしまう。
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、道の一部もしくは全部が建造物によって隠れてしまうことがなく、建造物と道の重なりを認識させることができるとともに、描画処理の負荷を軽減することのできる画像処理装置、道路画像描画方法および道路画像描画プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、請求項1に記載されるように、道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置であって、描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出する手段と、抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする手段とを備えるカーナビゲーション装置を要旨としている。
【0010】
また、請求項2に記載されるように、請求項1に記載の画像処理装置において、上記奥行き情報は、描画対象の視点からの距離情報を保持するZバッファから取得するようにすることができる。
【0011】
また、請求項3に記載されるように、請求項1に記載の画像処理装置において、上記建造物の陰になる道の部分をステンシルバッファに書き込み、当該ステンシルバッファに基づいてフレームバッファへの上記色もしくは模様の上書きを行うようにすることができる。
【0012】
また、請求項4に記載されるように、道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置における道路画像描画方法であって、描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出し、抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする道路画像描画方法として構成することができる。
【0013】
また、請求項5に記載されるように、道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置における道路画像描画プログラムであって、描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出する手段と、抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする手段として、コンピュータを機能させる道路画像描画プログラムとして構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像処理装置、道路画像描画方法および道路画像描画プログラムにあっては、道の一部もしくは全部が建造物によって隠れてしまうことがなく、建造物と道の重なりを認識させることができるとともに、描画処理の負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態につき図面を参照して説明する。なお、本発明をカーナビゲーション装置に適用した場合について説明する。
【0016】
図2は本発明の一実施形態にかかるカーナビゲーション装置の構成例を示す図である。図2において、カーナビゲーション装置100は、3D地図情報(アイコン等の表示物の情報を含む)を格納するハードディスク装置101と、ハードディスク装置101から地図情報を読み出すディスク読取装置102と、読み出した地図情報をバッファリングするデータバッファ103と、ディスク読取装置102における地図情報の読み出しを制御する地図読出制御部104とを備えている。なお、ハードディスク装置101とともに、あるいはハードディスク装置101に代え、DVD(Digital Versatile Disk)装置、CD(Compact Disk)装置等を用いることができる。また、カーナビゲーション装置100は、当該装置の搭載される車輌の位置情報を取得するGPS受信機105と、車輌の進行方向、加速度、速度、走行距離等を検出する自律航法センサ106と、これらから車輌位置を算出する車輌位置計算部107とを備え、算出された車輌位置の情報は地図読出制御部104に与えられ、地図読出制御部104は車輌位置の属する範囲の地図情報を読み出すようディスク読取装置102を制御する。
【0017】
一方、カーナビゲーション装置100は、データバッファ103から取得した地図情報および車輌位置計算部107から取得した車輌位置情報に基づいて遠景をVRAM(Video Random Access Memory)115内のフレームバッファFBに描画する遠景描画部108と、データバッファ103から取得した地図情報に基づいて道および立体的な建造物をVRAM115内のフレームバッファFBに描画する地図描画部109と、データバッファ103から取得した地図情報に基づいてアイコン等の表示物をVRAM115内のフレームバッファFBに描画するマーク画像描画部111と、データバッファ103から取得した地図情報に基づいて操作画面をVRAM115内のフレームバッファFBに描画する操作画面描画部112と、データバッファ103から取得した地図情報および車輌位置計算部107から取得した車輌位置情報に基づいて、別途ユーザから指定された目的地までの最適な経路を検索する経路検索処理部113と、経路の検索結果に基づいて誘導経路をVRAM115内のフレームバッファFBに描画する誘導経路描画部114とを備えている。また、VRAM115内のフレームバッファFBに描画された遠景画像、地図画像、表示物画像、操作画面画像、誘導経路画像を出力する画像出力部116と、画像合成された画像をユーザに向けて表示するディスプレイ装置117とを備えている。なお、VRAM115内にはフレームバッファFBのほかに、後述するZバッファZB、ステンシルバッファSBが設けられている。ZバッファZB、ステンシルバッファSB、フレームバッファFBはVRAM115内にそれぞれの領域を論理的に設定するのが好適であるが、物理的に別個のメモリを用意しても構わない。
【0018】
図3は道路画像描画の処理例を示すフローチャートであり、図2における地図描画部109においてソフトウェア(コンピュータプログラム)により実現される処理を示している。図3において、先ず地図データの読み出しを行い(ステップS1)、地面系データの生成(ステップS2)、建物系データの生成(ステップS3)、道路系データの生成(ステップS4)を並行して行う。続いて、生成された建物系データと道路系データとから重なり判定を行う(ステップS5)。そして、重なり部分があるか否か判断し(ステップS6)、重なり部分がある場合には重なり部分の形状を生成する(ステップS7)。重なり部分がない場合には特に処理を行わない。
【0019】
次いで、地面系データ、建物系データ、道路系データ、重なり部分のデータとを合成し(ステップS8)、地面系データの描画(ステップS9)、建物系データの描画(ステップS10)、道路系データの描画(ステップS11)、重なり部分の描画(ステップS12)を行い、地図データの読み出し(ステップS1)に戻る。
【0020】
図4は道と建造物の重なりの判定および重なり部分の描画の概要を示す図であり、道路系データである道Rおよび建物系データである建造物Bのそれぞれにつき、描画対象の各画素部分の視点(カメラ位置)からの距離情報を保持するZバッファZBから奥行き情報を取得し、その大小を判断することで道Rと建造物Bの重なりを判定する。すなわち、同じ描画位置に道路系データと建物系データが存在する場合、道路系データの奥行き情報の値が建物系データの奥行き情報の値よりも大きい場合は道Rと建造物Bが重なっていると判断する。そして、重なり部分Oにつき、ステンシルバッファSBに重なりを示す情報(例えば、ビット「1」)を書き込み、道Rと建造物Bを描画した後に、重なり部分Oに道Rおよび建造物Bと区別可能な色もしくは模様で上書きすることで、道Rと建造物Bの重なりを認識させる表示とすることができる。ただし、道路系データの奥行き情報の値が所定値以上の場合、すなわち視点から所定距離以上離れている場合は、ステンシルバッファSBへの重なりを示す情報(例えば、ビット「1」)の書き込みを行わないようにしてもよい。こうすることにより、遠方の細微な道が描画されることにより建造物が視認しにくくなることを回避することができる。更に、重要な道、例えば経路案内中のルート表示を伴う道については、通常の道の建造物との重なり部分とは異なる色もしくは模様とすることができる。
【0021】
このような手法により、建造物Bの裏に隠れる道Rの部分Oの存在をシルエットのように感じさせることが可能である。また、道全体を半透明化する処理に比べると負荷が軽くて済む。また、道Rに含まれる歩道や中央分離帯は特に判別せずに一体化したシルエットのように生成されるが、全て透過されてしまう従来手法(2)に比べ、より見やすい表示となる。
【0022】
このように、カーナビゲーションの3D地図において、本来最も重要な表示物とされる「道」と「立体化された建造物」とを同時に描画しつつ、建造物によって隠されてしまうはずの道の存在がわかるため、ドライバーにとって重要な「道」を認識させつつその周辺の建造物の存在を同時に分からせることが可能となる。すなわち、カーナビゲーションとしての機能を満たしながら、周辺建造物の印象が現実の背景に近い地図描画を実現することができる。
【0023】
なお、上記の実施形態では本発明をカーナビゲーション装置に適用した場合について説明したが、車輌以外の手持ちのナビゲーション装置のほか、シミュレータ、ゲーム等にも本発明を適用することが可能である。
【0024】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来における道と建造物の重なりを考慮した描画手法の概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるカーナビゲーション装置の構成例を示す図である。
【図3】道路画像描画の処理例を示すフローチャートである。
【図4】道と建造物の重なりの判定および重なり部分の描画の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
100 カーナビゲーション装置
101 ハードディスク装置
102 ディスク読取装置
103 データバッファ
104 地図読出制御部
105 GPS受信機
106 自律航法センサ
107 車輌位置計算部
108 遠景描画部
109 地図描画部
111 マーク画像描画部
112 操作画面描画部
113 経路検索処理部
114 誘導経路描画部
115 VRAM
116 画像出力部
117 ディスプレイ装置
ZB Zバッファ
SB ステンシルバッファ
FB フレームバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置であって、
描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出する手段と、
抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
上記奥行き情報は、描画対象の視点からの距離情報を保持するZバッファから取得することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
上記建造物の陰になる道の部分をステンシルバッファに書き込み、当該ステンシルバッファに基づいてフレームバッファへの上記色もしくは模様の上書きを行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置における道路画像描画方法であって、
描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出し、
抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きすることを特徴とする道路画像描画方法。
【請求項5】
道および立体的な建造物の表示を含む3次元地図を表示手段に表示する画像処理装置における道路画像描画プログラムであって、
描画対象の道と建造物との奥行き情報に基づいて建造物の陰になる道の部分を抽出する手段と、
抽出された道の部分を通常の道および建造物と区別可能な色もしくは模様で上書きする手段として、コンピュータを機能させることを特徴とする道路画像描画プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−26201(P2007−26201A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208757(P2005−208757)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】