説明

画像出力装置、携帯用画像表示機器及びプログラム

【課題】必要に応じて消費電力を大きく低減でき、コマ落ちや画像乱れを防止できる、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置を提供すること。
【解決手段】電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合には、制御部108は、スイッチ1043をONとし、スイッチ1048を端子Bに接続し、動画像処理部104の全ての構成要素を動作させる。一方、電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合には、制御部108は、スイッチ1043をOFFとし、スイッチ1048を端子Aに接続し、動画像処理部104の、色差再構成部1044と、色差フィルタ部1046と、色空間変換部1047とを停止させ、他の構成要素を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置に関する。また、本発明は、そのような画像出力装置を有する携帯用画像表示機器に関する。また、本発明は、そのような画像出力装置の動作を制御するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン放送の視聴機能やテレビ電話機能を有する携帯電話に代表される、画像出力が可能な小型の携帯機器が普及してきている。
【0003】
一般的に、画像データの処理プロセスは、テキストデータなどの処理プロセスと比べて複雑であり、消費電力も大きい。そのため、電池によって駆動する機器が画像データの処理を行うと、該機器の駆動時間が短くなるという問題が発生する。
【0004】
この問題に対処するための発明として、特許文献1に記載の通信端末装置が知られている。図5は、特許文献1に記載の、地上波ディジタル放送の視聴が可能な通信端末装置900の概略の構成を示すブロック図である。なお、図5においては、特許文献1に記載の通信端末装置の構成要素のうち、地上波ディジタル放送の動画像データを受信してから動画像を表示するまでの流れに関わる構成要素のみを抽出して示している。
【0005】
通信端末装置900は、アンテナ901と、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調部902と、受信メモリ部903と、動画像処理部904と、表示メモリ部905と、表示制御部906と、表示部907と、画質制御部908と、計測部909と、電池910とを有している。
【0006】
通信端末装置900による、地上波ディジタル放送の動画像データを受信してから動画像を表示するまでの処理の流れは以下の通りである。まず、アンテナ901が地上波ディジタル放送の動画像データを受信し、OFDM復調部902へ伝達する。OFDM復調部902は、アンテナ901から伝達された地上波ディジタル放送の動画像データに対するOFDM復調を施し、得られた動画像データを受信メモリ部903へ伝達する。
【0007】
受信メモリ部903は、OFDM復調部902から伝達された動画像データをメモリに記憶する。動画像処理部904は、受信メモリ部903のメモリに記憶された動画像データを取り込み、該動画像データに対する各種動画像処理を施し、得られた画素情報(R成分、G成分、B成分)を表示メモリ部905へ伝達する。
【0008】
表示メモリ部905は、動画像処理部904から伝達された画素情報をメモリに記憶する。表示制御部906は、表示メモリ部905のメモリに記憶された画素情報を定期的に読み出して、表示部907へ伝達する。表示部907は、表示制御部906から伝達された画素情報を基に、動画像を表示する。
【0009】
ここで、表示制御部906には画質制御部908が、画質制御部908には計測部909が、計測部909には電池910が、各々接続されている。電池910は、通信端末装置900に電源を供給する。計測部909は、電池910の出力電圧値を所定の時間間隔で計測し、これを画質制御部908に伝達する。
【0010】
画質制御部908は、計測部909から伝達された電池910の出力電圧値が所定値以下である場合に、表示部907に表示する動画像の解像度を粗くする、あるいは表示部907に表示する動画像のフレーム数を削減する旨の指令を表示制御部906に伝達する。表示制御部906は、画質制御部908からの指令に応じて、表示部907に表示する動画像の解像度を粗くする、あるいは表示部907に表示する動画像のフレーム数を削減する制御を行う。
【0011】
上記構成の通信端末装置900によると、表示制御部906は、電池910の出力電圧値が所定値以下である場合に、表示部907に表示する動画像の解像度を粗くする、あるいは表示部907に表示する動画像のフレーム数を削減する制御を行うので、表示部907の消費電力を低減させることができる。電池910の出力電圧値が所定値を下回っている場合には、電池910の残量が十分でないので、表示部907の消費電力を低減させることによって、電話やメールの送受信ができなくなる事態を未然に防止することができる。また、ユーザは、動画像視聴中に、電池910の残量が少なくなったことを視認できることとなるので、電池910の電池切れによって電話やメールの送受信ができなくなることを防止するために、地上波ディジタル放送の視聴を停止するなどの対策をとることができる。
【特許文献1】特開2005−109616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、現在、テレビ電話などにおける動画像圧縮に利用されている動画像圧縮方式として、ISO(International Organization for Standardization)よって策定されたMPEG(Motion Picture Experts Group)4方式が知られている。また、携帯機器向け地上波ディジタル放送などにおける動画像圧縮に利用されている動画像圧縮方式として、ITU−T(International Telecommunications Union-Telecommunications Standardization Sector)によって策定されたH.264方式が知られている。
【0013】
ここで、通信端末装置900のように、MPEG4方式やH.264方式などの動画像圧縮方式で圧縮された動画像データを復号して出力する場合には、動画像処理部904の処理プロセスが非常に複雑であり、消費電力が大きい。しかしながら、特許文献1に記載の通信端末装置900においては、電池910の残量が少なくなった場合に、表示部907の消費電力を低減しているのみであり、動画像処理部904の消費電力の低減については考慮されておらず、消費電力の低減効果は限定的である。
【0014】
また、通信端末装置900のように、電池910で駆動し、動画像出力を行う携帯機器においては、駆動時間を延ばすために、動画像処理部904の能力を低めに設定することがある。例えば、動画像処理部904の動作クロックを低く設定すると、消費電力が抑えられるので、駆動時間を延ばすことができる。
【0015】
しかしながら、動画像処理部904の能力を低めに設定した場合、一時的に多量の動画像データを処理する必要があるときに、動画像処理部904による動画像データの処理が追いつかず、コマ落ちや画像乱れが発生するという問題がある。特に、動画像の中でシーンが変わるような場面では、一つのフレームに多量のデータ量が割り当てられることがあり、コマ落ちや画像乱れが発生しやすくなる。
【0016】
上記の問題点を鑑みて、本発明においては、必要に応じて消費電力を大きく低減でき、コマ落ちや画像乱れを防止できる、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、そのような画像出力装置を有する携帯用画像表示機器を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような画像出力装置の動作を制御するプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明においては、画像出力装置は、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置であって、複数の前記成分各々に対して特定される前記復号プロセスによって復号処理を行う複数の独立復号処理部と、前記画像出力装置の状態を確認し、前記画像出力装置の状態によって定められる前記独立復号処理部各々の停止条件が満たされるときに、該停止条件が満たされる前記独立復号処理部を停止させる制御部とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明においては、上記構成の画像出力装置において、電池によって電源が供給され、前記電池の残量を計測する計測部を有し、前記独立復号処理部各々の前記停止条件は、前記電池の残量によって定められることが望ましい。
【0019】
本発明においては、上記構成の画像出力装置において、前記画像データの復号遅延時間を計算する計算部を有し、前記独立復号処理部各々の前記停止条件は、前記画像データの復号遅延時間によって定められることが望ましい。
【0020】
本発明においては、上記構成の画像出力装置において、複数の前記成分は、画素の輝度成分と画素の色差成分とであり、前記制御部は、前記画像出力装置の状態に応じて、前記画素の輝度成分の前記独立復号処理部と、前記画素の色差成分の前記独立復号部処理部とが共に動作する状態と、前記画素の輝度成分の前記独立復号処理部が動作し、前記画素の色差成分の前記独立復号部処理部が停止する状態との2状態を切り換えることとしてもよい。
【0021】
本発明においては、携帯用画像表示機器は、上記構成の画像出力装置を有することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、プログラムは、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置の動作を制御するプログラムであって、前記画像出力装置の状態を確認する第1ステップと、前記画像出力装置の状態によって定められる、複数の前記成分各々に対して特定される前記復号プロセスのスキップ条件が満たされるか否かを判定する第2ステップと、前記スキップ条件が満たされる前記成分に対して特定される前記復号プロセスをスキップさせる第3ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の画像出力装置は、画像出力装置の状態によって定められる独立復号処理部各々の停止条件が満たされるときに、該停止条件が満たされる独立復号処理部を停止させる制御部を有するので、必要に応じて消費電力を大きく低減できることとなる。
【0024】
例えば、独立復号処理部各々の停止条件を電池の残量によって定めると、電池の残量が十分ある場合には全ての独立復号処理部を動作させ、電池の残量が十分でない場合には幾つかの独立復号処理部を停止させる制御ができることとなる。そのため、電池の残量が十分ある場合には質の高い画像の出力ができ、電池の残量が十分でない場合には消費電力の低減ができ、駆動時間の延長ができる。
【0025】
また、独立復号処理部各々の停止条件を画像データの復号遅延時間によって定めると、十分な処理能力がある場合(復号遅延時間が絶対値の十分大きい負の値である場合)には全ての独立復号処理部を動作させ、十分な処理能力がない場合(復号遅延時間が絶対値の十分大きい負の値でない場合)には幾つかの独立復号処理部を停止させる制御ができることとなる。そのため、十分な処理能力がある場合には質の高い画像の出力ができ、十分な処理能力がない場合には処理量の低減ができ、コマ落ちや画像乱れを防止できる。そして、画像出力装置の処理能力不足に起因するコマ落ちや画像乱れを防止できることから、画像出力装置の画像処理能力を低く設定することができ、画像出力装置の消費電力の低減ができ、駆動時間の延長ができる。
【0026】
また、本発明によると、上記の効果を奏する画像出力装置を有する携帯用画像表示機器が提供される。また、本発明によると、上記の効果を奏する画像出力装置の動作を制御するプログラムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明すれば以下の通りである。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像出力装置100の概略の構成を示すブロック図である。画像出力装置100は、メモリカード101に記録された、輝度成分(Y成分)と色差成分(Cb成分、Cr成分)とによって構成される、MPEG4方式又はH.264方式で圧縮された動画像データを復号して表示するものとする。
【0029】
画像出力装置100は、読み出し部102と、読み出しメモリ部103と、動画像処理部104と、表示メモリ部105と、表示制御部106と、表示部107と、制御部108と、計測部109と、電池110とを有している。
【0030】
画像出力装置100による、メモリカード101に記録された動画像データを読み出してから動画像を表示するまでの処理の流れは以下の通りである。まず、読み出し部102がメモリカード101に記録された動画像データを読み出し、読み出しメモリ部103へ伝達する。
【0031】
読み出しメモリ部103は、読み出し部102から伝達された動画像データをメモリに記憶する。動画像処理部104は、読み出しメモリ部103のメモリに記憶された動画像データを取り込み、該動画像データに対する各種動画像処理を施し、得られた画素情報を表示メモリ部105へ伝達する。
【0032】
表示メモリ部105は、動画像処理部104から伝達された画素情報をメモリに記憶する。表示制御部106は、表示メモリ部105のメモリに記憶された画素情報を定期的に読み出して、表示部107へ伝達する。表示部107は、表示制御部106から伝達された画素情報を基に、動画像を表示する。
【0033】
ここで、動画像処理部104には制御部108が、制御部108には計測部109が、計測部109には電池110が、各々接続されている。電池110は、画像出力装置100に電源を供給する。計測部109は、所定の時間間隔で電池110の出力電圧値を計測し、これを制御部108に伝達する。制御部108は、電池110の出力電圧値が所定値を上回っているか否かに応じて、動画像処理部104に対する各種の制御を行う。
【0034】
また、動画像処理部104は、その構成要素として、可変長符号復号部1041と、輝度再構成部1042と、スイッチ1043と、色差再構成部1044と、輝度フィルタ部1045と、色差フィルタ部1046と、色空間変換部1047と、スイッチ1048とを有している。
【0035】
次に、電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合の、動画像処理部104による動画像処理の詳細について説明する。ここで、電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合、制御部108は、スイッチ1043をONとし、スイッチ1048を端子Bに接続し、動画像処理部104の全ての構成要素を動作させる。
【0036】
MPEG4方式やH.264方式によって圧縮された動画像データは、画素の各成分(Y成分、Cb成分、Cr成分)の、圧縮対象情報と予測対象情報との差分情報のDCT(Discrete Cosine Transform)変換及び量子化によって得られた係数情報や、動きベクトルなどの予測情報などが多重化され、可変長符号化されたものである。したがって、MPEG4方式やH.264方式で圧縮された動画像データを復号する際には、まず、可変長符号の復号を行う必要がある。
【0037】
そのため、動画像処理部104は、読み出しメモリ部103のメモリに記憶された動画像データを取り込むと、可変長符号復号部1041によって、可変長符号の復号処理を行う。ここで、可変長符号としては、ハフマン符号、ハフマンテーブルを用いた符号、算術符号、ZL(Ziv-Lempel)符号、AIC(Akaike Information Criterion)原理に基づく符号、MDL(Minimum Description Length)原理に基づく符号、ベイズ符号などが知られている。
【0038】
MPEG4方式やH.264方式で圧縮された動画像データに対して、可変長符号復号部1041によって可変長符号の復号処理を行うと、各成分(Y成分、Cb成分、Cr成分)の係数情報や予測情報などが得られる。そして、可変長符号復号部1041は、Y成分の係数情報や予測情報などを輝度再構成部1042へ伝達し、Cb成分、Cr成分の係数情報や予測情報などを色差再構成部1044へ伝達する。
【0039】
輝度再構成部1042は、Y成分の係数情報に対して逆量子化及び逆DCT変換を施すことによって、画素のY成分の差分情報を得る。そして、画素のY成分の差分情報及び予測情報から、画素のY成分情報を得て、これを輝度フィルタ部1045へ伝達する。色差再構成部1044は、Cb成分、Cr成分の係数情報に対して逆量子化及び逆DCT変換を施すことによって、画素のCb成分の差分情報、Cr成分の差分情報を得る。そして、画素のCb成分の差分情報、Cr成分の差分情報及び予測情報から、画素のCb成分情報、Cr成分情報を得て、これを色差フィルタ部1046へ伝達する。
【0040】
輝度フィルタ部1045は、輝度再構成部1042から伝達された画素のY成分情報に対して、縦横2方向のフィルタ処理を行うことで、量子化に起因する圧縮ノイズの低減処理を行い、得られた画素のY成分情報を色空間変換部1047へ伝達する。色差フィルタ部1046は、色差再構成部1044から伝達された画素のCb成分情報、Cr成分情報に対して、縦横2方向のフィルタ処理を行うことで、量子化に起因する圧縮ノイズの低減処理を行い、得られた画素のCb成分情報、Cr成分情報を色空間変換部1047へ伝達する。
【0041】
色空間変換部1047は、輝度フィルタ部1045から伝達された画素のY成分情報、及び、色差フィルタ部1046から伝達された画素のCb成分情報、Cr成分情報から、画素のR成分情報、G成分情報、B成分情報を得て、これを表示メモリ部105へ伝達する。
【0042】
次に、電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合の、動画像処理部104による動画像処理の詳細について説明する。電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合、制御部108は、スイッチ1043をOFFとし、スイッチ1048を端子Aに接続し、動画像処理部104の構成要素のうち、色差再構成部1044と、色差フィルタ部1046と、色空間変換部1047との動作を停止させ、他の構成要素を動作させる。
【0043】
この場合、動画像処理部104は、読み出しメモリ部103のメモリに記憶された動画像データを取り込むと、可変長符号復号部1041によって、可変長符号の復号処理を行う。そして、可変長符号復号部1041は、Y成分の係数情報や予測情報などを輝度再構成部1042へ伝達する一方、スイッチ1043がOFFされていることから、Cb成分、Cr成分の係数情報や予測情報などの色差再構成部1044への伝達は行わない。
【0044】
輝度再構成部1042は、Y成分の係数情報に対して逆量子化及び逆DCT変換を施すことによって、画素のY成分の差分情報を得る。そして、画素のY成分の差分情報及び予測情報から、画素のY成分情報を得て、これを輝度フィルタ部1045へ伝達する。輝度フィルタ部1045は、輝度再構成部1042から伝達された画素のY成分情報に対して、縦横2方向のフィルタ処理を行うことで、量子化に起因する圧縮ノイズの低減処理を行い、得られた画素のY成分情報を表示メモリ部105へ伝達する。
【0045】
以上の制御部108による動画像処理部104に対する制御手順について、以下で説明する。図2は、制御部108による動画像処理部104に対する制御手順を示すフローチャートである。制御部108は、動画像処理中には(S101)、計測部109から伝達される電池110の出力電圧値を監視する(S102)。
【0046】
電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合には、制御部108は、スイッチ1043をONとし、スイッチ1048を端子Bに接続し、動画像処理部104の全ての構成要素を動作させ、リターンする(S103、S104)。
【0047】
一方、S102において、電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合には、制御部108は、スイッチ1043をOFFとし、スイッチ1048を端子Aに接続し、動画像処理部104の構成要素のうち、色差再構成部1044と、色差フィルタ部1046と、色空間変換部1047との動作を停止させ、他の構成要素を動作させ、リターンする(S105、S104)。
【0048】
以上より、電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合には、動画像処理部104の全ての構成要素を動作させることとなり、消費電力は大きいが、表示部107にカラー動画像を表示させることができる。電池110の出力電圧値が所定値を上回っている場合には、電池110の残量は十分なので、カラー動画像を楽しむメリットが消費電力の低減によるメリットを上回ることから、このような制御が有効である。
【0049】
また、電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合には、動画像処理部104の構成要素のうち、色差再構成部1044と、色差フィルタ部1046と、色空間変換部1047との動作を停止させることとなり、表示部107には白黒動画像が表示されることとなるが、画像出力装置100の消費電力を低減させることができる。電池110の出力電圧値が所定値を下回っている場合には、電池110の残量が十分でないので、画像出力装置100の消費電力を低減させることによるメリットが大きい。
【0050】
具体的には、例えば、画像出力装置100が通信端末装置に備えられており、電池110が通信端末装置全体に電源を供給している場合には、画像出力装置100の消費電力を低減させることで、電話やメールの送受信ができなくなる事態を未然に防止することができる。また、表示部107に白黒動画像が表示されることで、ユーザは電池110の残量が少なくなったことを視認でき、充電などの迅速な対応をとることができる。
【0051】
なお、電池110の出力電圧値の所定値は、ユーザによって設定できるものとしてもよい。この場合には、画像出力装置100は、電池110の出力電圧値の所定値を入力する入力部を有するものとすればよい。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係る画像出力装置200の概略の構成を示すブロック図である。画像出力装置200は、輝度成分(Y成分)と色差成分(Cb成分、Cr成分)とによって構成される、H.264方式で圧縮されたワンセグ放送の動画像データを受信し、復号して表示するものとする。ここで、ワンセグ放送とは、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses)によって策定された、携帯機器向けテレビ放送のことである。
【0053】
画像出力装置200は、アンテナ201と、OFDM復調部202と、受信メモリ部203と、動画像処理部204と、表示メモリ部205と、表示制御部206と、表示部207と、制御部208(計算部)と、STC(System Time Clock)209とを有している。
【0054】
画像出力装置200による、ワンセグ放送の動画像データを受信してから動画像を表示するまでの処理の流れは以下の通りである。まず、アンテナ201がワンセグ放送の動画像データを受信し、OFDM復調部202へ伝達する。OFDM復調部202は、アンテナ201から伝達されたワンセグ放送の動画像データに対するOFDM復調を施し、得られた動画像データを受信メモリ部203へ伝達する。
【0055】
受信メモリ部203は、OFDM復調部202から伝達された動画像データをメモリに記憶する。動画像処理部204は、受信メモリ部203のメモリに記憶された動画像データを取り込み、該動画像データに対する各種動画像処理を施し、得られた画素情報を表示メモリ部205へ伝達する。
【0056】
表示メモリ部205は、動画像処理部204から伝達された画素情報をメモリに記憶する。表示制御部206は、表示メモリ部205のメモリに記憶された画素情報を定期的に読み出して、表示部207へ伝達する。表示部207は、表示制御部206から伝達された画素情報を基に、動画像を表示する。
【0057】
ここで、動画像処理部204には制御部208が、制御部208にはSTC209が、各々接続されている。STC209は時刻を刻むカウンタである。制御部208は、STC209からの時刻情報を定期的に読み出し、また、動画像処理部204に対する各種の制御を行う。
【0058】
また、動画像処理部204は、その構成要素として、可変長符号復号部2041と、輝度再構成部2042と、スイッチ2043と、色差再構成部2044と、輝度フィルタ部2045と、色差フィルタ部2046と、色空間変換部2047と、スイッチ2048とを有している。なお、この動画像処理部204の各構成要素は、第1の実施形態に係る動画像処理部104の各構成要素と同一のものである。
【0059】
次に、制御部208による動画像処理部204に対する各種の制御の詳細について説明する。ワンセグ放送の動画像データにおいては、1フレームごとに、該フレームが表示されるべき時刻を示すPTS(Presentation Time Stamp)と呼ばれる情報が付加されている。制御部208は、各フレームのPTSとSTC209からの時刻情報とを比較することにより、画素情報を表示メモリ部205に伝達する時刻を調整する。これによって、ワンセグ放送の動画像が表示部207に適切に表示されることとなる。
【0060】
また、制御部208は、動画像データの復号遅延時間の計算及びそれに伴う動画像処理部204に対する制御を行う。以下にこの詳細を説明する。
【0061】
図4は、制御部208による動画像処理部204に対する制御手順を示すフローチャートである。制御部208は、動画像処理中には(S201)、動画像処理部204に、受信メモリ部203のメモリに記憶された動画像データを取り込ませる(S202)。1フレーム分のデータが取り込まれるまでは、制御部208は、動画像処理部204に、動画像データの取り込みを続けさせる(S203)。
【0062】
1フレーム分のデータが取り込まれると、制御部208は、可変長符号復号部2041に可変長符号の復号処理を行わせ、得られたY成分の係数情報や予測情報などを輝度再構成部2042へ伝達させる(S204)。
【0063】
次に、制御部208は、輝度再構成部2042に、可変長符号復号部2041から伝達されたY成分の係数情報や予測情報などから、画素のY成分情報を計算させ、これを輝度フィルタ部2045へ伝達させる(S205)。次に、制御部208は、輝度フィルタ部2045に、輝度再構成部2042から伝達された画素のY成分情報に対する圧縮ノイズの低減処理を行わせる(S206)。
【0064】
次に、制御部208は、STC209からの時刻情報を読み出し、処理中のフレームのPTSと比較することによって、復号遅延が生じているかどうかを検出する(S207)。具体的には、この時点で、処理中のフレームが表示されるべき時刻を過ぎている場合に、復号遅延が生じていると判定する。あるいは、色差再構成部2044と、色差フィルタ部2046と、色空間変換部2047と、表示メモリ部205と、表示制御部206と、表示部207とにおける処理にかかる時間を推定することによって処理中のフレームの推定表示可能時刻を算出し、該推定表示可能時刻が、処理中のフレームが表示されるべき時刻を過ぎている場合に、復号遅延が生じていると判定してもよい。
【0065】
ここで、復号遅延が生じている場合には、制御部208は、スイッチ2043をOFFとし、スイッチ2048を端子Aに接続し、動画像処理部204の構成要素のうち、色差再構成部2044と、色差フィルタ部2046と、色空間変換部2047との動作を停止させ、他の構成要素を動作させる(S208)。そして、輝度フィルタ部2045で得られた画素のY成分情報を表示メモリ部205へ伝達させ、リターンする(S209、S210)。
【0066】
一方、S207において復号遅延が生じていない場合には、制御部208は、スイッチ2043をONとし、スイッチ2048を端子Bに接続し、動画像処理部204の全ての構成要素を動作させる(S211)。そして、制御部208は、S204における、可変長符号復号部2041による可変長符号の復号処理によって得られている、Cb成分、Cr成分の係数情報や予測情報などを色差再構成部2044へ伝達させ、色差再構成部2044に、可変長符号復号部2041から伝達されたCb成分、Cr成分の係数情報や予測情報などから、画素のCb成分情報、Cr成分情報を計算させ、これを色差フィルタ部2046へ伝達させる(S212)。
【0067】
次に、制御部208は、色差フィルタ部2046に、色差再構成部2044から伝達された画素のCb成分情報、Cr成分情報に対する圧縮ノイズの低減処理を行わせ、得られた画素のCb成分情報、Cr成分情報を色空間得変換部2047へ伝達させる(S213)。そして、制御部208は、S206における、輝度フィルタ部2045による、輝度再構成部2042から伝達された画素のY成分情報に対する圧縮ノイズの低減処理によって得られている、画素のY成分情報を色空間変換部2047へ伝達させ、色空間変換部2047に、輝度フィルタ部2045から伝達された画素のY成分情報及び色差フィルタ部2046から伝達された画素のCb成分情報、Cr成分情報から、画素のR成分情報、G成分情報、B成分情報を計算させる(S214)。
【0068】
そして、色空間変換部2047で得られた画素のR成分情報、G成分情報、B成分情報を表示メモリ部205へ伝達させ、リターンする(S209、S210)。
【0069】
以上より、復号遅延が生じていない場合には、動画像処理部204の全ての構成要素を動作させることとなり、復号に必要な処理量は大きいが、表示部207にカラー動画像を表示させることができる。復号遅延が生じていない場合には、動画像処理部204の処理能力が十分なので、カラー動画像を楽しむメリットが処理量の低減によるメリットを上回ることから、このような制御が有効である。
【0070】
また、復号遅延が生じている場合には、動画像処理部204の、色差再構成部2044と、色差フィルタ部2046と、色空間変換部2047とを停止させることとなり、表示部207には白黒動画像が表示されることとなるが、処理量を低減させることができる。復号遅延が生じている場合には、動画像処理部204の処理能力が十分でないので、処理量を低減させることで、コマ落ちや画像乱れを防止でき、また、表示部207に白黒動画像が表示されることで、ユーザは復号遅延が生じていることを視認でき、迅速な対応をとることができる。そして、動画像処理部204の処理能力不足に起因するコマ落ちや画像乱れを防止できることから、動画像処理部204の動作クロックを低く設定するなどして動画像処理部204の処理能力を低く設定することができ、動画像処理部204の消費電力の低減ができ、駆動時間の延長ができる。
【0071】
なお、上記の実施形態においては、動画像処理部204は、画素の輝度成分に関する処理と、画素の色差成分に関する処理とを直列に行う構成としたが、並列に行う構成とすることもできる。この場合、制御部208は、動画像処理部204に、輝度フィルタ部2045あるいは色空間変換部2047で得られた画素情報を表示メモリ部205へ伝達させる直前あるいは伝達させた直後に、復号遅延が生じているか否かを判定することとすればよい。この場合には、復号遅延の有無に応じた制御の影響は、次のフレームを処理する際に現れることとなる。
【0072】
また、上記の実施形態においては、復号遅延の有無に応じて制御部208の制御手順を変えることとしたが、復号遅延時間(負の値も取り得ることとする)がある所定値を超えた場合に制御部208の制御手順を変えることとしてもよい。また、その場合には、復号遅延時間の所定値は、ユーザによって設定できるものとしてもよい。この場合には、画像出力装置200は、復号遅延時間の所定値を入力する入力部を有するものとすればよい。
【0073】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、上記第1の実施形態の計測部109と、電池110と、上記第2の実施形態のSTC209と、制御部とを有し、制御部が、電池残量及び復号遅延を各々判定し、いずれかの停止条件が満たされるときに、色差再構成部と、色差フィルタ部と、色空間変換部とを停止させる画像出力装置を構成することもできる。
【0074】
また、画像出力装置は、動画像データを復号して出力するものでなくともよく、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される静止画像データを復号して出力する画像出力装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置として有効である。また、本発明は、そのような画像出力装置を有する携帯用画像表示機器として有効である。また、本発明は、そのような画像出力装置の動作を制御するプログラムとして有効である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像出力装置100の概略の構成を示すブロック図。
【図2】制御部108による動画像処理部104に対する制御手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る画像出力装置200の概略の構成を示すブロック図。
【図4】制御部208による動画像処理部204に対する制御手順を示すフローチャート。
【図5】特許文献1に記載の、地上波ディジタル放送の視聴が可能な通信端末装置900の概略の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0077】
100 画像出力装置
108 制御部
109 計測部
110 電池
200 画像出力装置
208 制御部(計算部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置であって、
複数の前記成分各々に対して特定される前記復号プロセスによって復号処理を行う複数の独立復号処理部と、
前記画像出力装置の状態を確認し、前記画像出力装置の状態によって定められる前記独立復号処理部各々の停止条件が満たされるときに、該停止条件が満たされる前記独立復号処理部を停止させる制御部とを有することを特徴とする画像出力装置。
【請求項2】
電池によって電源が供給され、
前記電池の残量を計測する計測部を有し、
前記独立復号処理部各々の前記停止条件は、前記電池の残量によって定められることを特徴とする請求項1に記載の画像出力装置。
【請求項3】
前記画像データの復号遅延時間を計算する計算部を有し、
前記独立復号処理部各々の前記停止条件は、前記画像データの復号遅延時間によって定められることを特徴とする請求項1に記載の画像出力装置。
【請求項4】
複数の前記成分は、画素の輝度成分と画素の色差成分とであり、
前記制御部は、前記画像出力装置の状態に応じて、
前記画素の輝度成分の前記独立復号処理部と、前記画素の色差成分の前記独立復号部処理部とが共に動作する状態と、
前記画素の輝度成分の前記独立復号処理部が動作し、前記画素の色差成分の前記独立復号部処理部が停止する状態との2状態を切り換えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像出力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の画像出力装置を有することを特徴とする携帯用画像表示機器。
【請求項6】
他の成分と独立した復号プロセスで復号される複数の成分によって構成される画像データを復号して出力する画像出力装置の動作を制御するプログラムであって、
前記画像出力装置の状態を確認する第1ステップと、
前記画像出力装置の状態によって定められる、複数の前記成分各々に対して特定される前記復号プロセスのスキップ条件が満たされるか否かを判定する第2ステップと、
前記スキップ条件が満たされる前記成分に対して特定される前記復号プロセスをスキップさせる第3ステップとを有することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−92353(P2008−92353A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271985(P2006−271985)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】