説明

画像形成装置

【課題】タンデム型の画像形成装置における混色の問題を軽減しつつ、潜像担持体の短寿命化や、現像剤の早期劣化を抑制することを課題とする。
【解決手段】すべての感光体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の感光体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて画像形成動作を行う画像形成装置において、少なくとも第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用感光体については、いずれの動作モードでも、その感光体表面の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間を非接触状態に維持する空隙形成部22を備え、第2動作モードで画像形成を行う場合には、第2動作モード時不使用感光体の表面移動を停止した状態で画像形成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の潜像担持体を備え、すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて画像形成動作を行う、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、中間転写体あるいは記録材搬送部材の表面移動方向に沿って複数の潜像担持体を有する、いわゆるタンデム型の画像形成装置が知られている。中間転写体を利用するタンデム型の画像形成装置を例に挙げて説明すると、例えば、潜像担持体である感光体表面上の画像領域部分を一様に帯電させ、その帯電領域を露光して静電潜像を形成し、これにそれぞれ対応する色のトナーを付与させてトナー像化したものを、中間転写体上に互いに重なり合うように順次一次転写する。その後、各色のトナー像が重なりあった中間転写体上のトナー画像を記録材に二次転写し、その記録材上に画像を形成する。
【0003】
このようなタンデム型の画像形成装置においては、一般に、逆転写現象による混色の問題が発生する。この問題は、潜像担持体から中間転写体へトナー像を一次転写する際に、中間転写体表面移動方向上流側で転写された他色のトナー像が当該潜像担持体に付着してしまい、当該潜像担持体上のトナーに本来の色とは異なる色のトナーが混じってしまうという問題である。この問題は、画像の色再現性を低下させる要因となる。
特に、資源有効利用の観点から、潜像担持体上の転写残トナーを回収して再び画像形成に再利用するリサイクル構成を備えた画像形成装置においては深刻な問題である。近年では、このようなリサイクル構成として、感光体の帯電電位と現像剤担持体との電位差を利用して、現像剤担持体表面上に又は現像剤担持体上に担持された現像剤中に、感光体上のトナーを回収する、いわゆるクリーナレス構成が知られている(特許文献1)。
【0004】
このような混色の問題を軽減し得る画像形成装置として、各潜像担持体表面上の画像領域部分と中間転写体表面との間を非接触状態に維持しながら各潜像担持体表面上の画像領域部分に形成されたトナー像を中間転写体表面へ転写できる非接触転写方式を採用した画像形成装置が知られている(特許文献2、特許文献3)。これらの特許文献に記載された画像形成装置は、潜像担持体から中間転写体へトナー像を一次転写する際、潜像担持体表面と中間転写体表面とが非接触状態であるため、接触状態である場合よりも、中間転写体上の他色トナーが当該潜像担持体側へ移動しにくい。よって、逆転写するトナーの量を減らすことができ、混色の問題が軽減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、省資源の観点から、フルカラー画像形成装置であっても、フルカラー(4色)モードではなく、単色モード、2色モードあるいは3色モードを用いて画像形成が行われることが多くなってきている。フルカラー(4色)モード以外の動作モードで画像形成を行う場合、その画像形成に利用されない潜像担持体が存在することになる。このとき、画像形成に利用されない潜像担持体を回転駆動させた状態で画像形成を行うと、その潜像担持体の寿命を短くするという不具合を引き起こす。また、画像形成に利用されない潜像担持体に対応する現像装置を駆動させたままの状態で画像形成を行うと、現像装置内の現像剤が無駄に攪拌され、現像剤の劣化が早まり、現像剤担持体に現像剤が供給されないことによる白帯状の異常画像や、転写不足により最終画像がボソボソとして見える異常画像を生じさせるという不具合を引き起こす。
【0006】
なお、上述した説明では、中間転写体を利用する間接転写方式のタンデム型画像形成装置を例に挙げているが、中間転写体を利用せずに潜像担持体上のトナー像を記録材上に直接転写する直接転写方式でも、同様の混色の問題が発生し、上述した不具合を生じ得る。
【0007】
本発明は、以上の不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、非接触転写方式を採用してタンデム型の画像形成装置における混色の問題を軽減しつつ、潜像担持体の短寿命化や、現像剤の早期劣化を抑制し得る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する複数の潜像担持体と、該複数の潜像担持体の表面上の画像領域部分に潜像を形成する潜像形成手段と、該複数の潜像担持体の表面に形成された潜像を、表面移動する現像剤担持体の表面に担持された現像剤によってそれぞれ現像してトナー像化する複数の現像手段と、該複数の潜像担持体の表面上のトナー像を、表面移動する中間転写体の表面上に中間転写した後に記録材上に転写するか、又は、表面移動する記録材搬送部材の表面上に担持された記録材上に転写する転写手段と、すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて、画像形成動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、少なくとも上記第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用潜像担持体については、上記第1動作モード及び上記第2動作モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分と上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材に担持される記録材の表面との間を非接触状態に維持する非接触状態維持手段を有し、上記転写手段は、少なくとも上記第2動作モード時不使用潜像担持体については、非接触状態であっても該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分に形成されたトナー像を該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持される記録材の表面に転写可能な構成であり、上記制御手段は、上記第2動作モードで画像形成を行う場合、上記第2動作モード時不使用潜像担持体の表面移動を停止した状態で画像形成を行うように、画像形成動作を制御することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記非接触状態維持手段は、上記中間転写体又は上記記録材搬送部材の表面に対向する潜像担持体表面上の画像領域部分と当該潜像担持体の回転軸との距離よりも大きい径を有し、当該潜像担持体の画像領域部分よりも軸方向両側外方の回転軸部分に、該回転軸とは独立した状態で該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面移動方向と連れ回る方向へ回転可能に設けられた回転体の周面を、該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面に当接させることで、上記非接触状態を維持するものであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記非接触状態維持手段は、潜像担持体表面上の画像領域部分と上記中間転写体又は上記記録材搬送部材の表面との間の各離間距離が、それぞれの潜像担持体表面上の画像領域部分と対向する各転写領域に搬送されてくる該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持された記録材の表面に形成されたトナー像の厚さよりも大きくなるように、上記非接触状態を維持することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記非接触状態維持手段は、上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材の表面移動方向下流側に位置する潜像担持体ほど、その表面上の画像領域部分と該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面との間の離間距離が大きくなるように、上記非接触状態を維持することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、表面移動する複数の潜像担持体と、該複数の潜像担持体の表面上の画像領域部分に潜像を形成する潜像形成手段と、現像剤攪拌手段により攪拌された現像剤を、表面移動する現像剤担持体の表面に担持させ、該複数の潜像担持体の表面に形成された潜像を、該現像剤担持体上の現像剤によってそれぞれ現像してトナー像化する複数の現像手段と、該複数の潜像担持体の表面上のトナー像を、表面移動する中間転写体の表面上に中間転写した後に記録材上に転写するか、又は、表面移動する記録材搬送部材の表面上に担持された記録材上に転写する転写手段と、すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて、画像形成動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、少なくとも上記第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用潜像担持体については、上記第1動作モード及び上記第2動作モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分と上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材に担持される記録材の表面との間を非接触状態に維持する非接触状態維持手段を有し、上記転写手段は、少なくとも上記第2動作モード時不使用潜像担持体については、非接触状態であっても該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分に形成されたトナー像を該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持される記録材の表面に転写可能な構成であり、上記制御手段は、上記第2動作モードで画像形成を行う場合、上記第2動作モード時不使用潜像担持体に対応する現像手段における現像剤攪拌手段の攪拌動作を停止した状態で画像形成を行うように、画像形成動作を制御することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記潜像担持体の表面上に付着しているトナーを、該潜像担持体表面に対応する現像手段の現像剤担持体表面上に又は該現像剤担持体に担持された現像剤中に回収するトナー回収手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記潜像担持体の表面上に付着しているトナーを該潜像担持体表面から除去して保持し、保持したトナーを所定の非画像形成タイミングで該潜像担持体表面に戻す一時保持手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記現像手段は、上記潜像担持体表面に形成されるトナー像の厚さが少なくともトナーの体積平均粒子径の2倍以上となるように現像処理を行うことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記トナーとして、ワーデル実用球形度が0.95以上のトナーを用いることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、少なくとも第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用潜像担持体については、すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、当該潜像担持体の表面上の画像領域部分と中間転写体又は記録材搬送部材の表面との間が非接触状態に維持される。よって、これらの間が接触状態である場合よりも、中間転写体上のトナー又は記録材搬送部材に担持搬送される記録材上のトナーが当該第2動作モード時不使用潜像担持体側へ逆転写しにくい。よって、当該第2動作モード時不使用潜像担持体についての混色の問題が軽減される。もちろん、第2動作モード時不使用潜像担持体ではない潜像担持体(いずれの動作モードで画像形成を行う場合でもトナー像が形成される潜像担持体)についても、第2動作モード時不使用潜像担持体と同様に非接触状態が維持されるようにすれば、その潜像担持体についての混色問題も軽減できる。
【0010】
また、本発明においては、第2動作モードで画像形成を行う場合、第2動作モード時不使用潜像担持体の表面移動を停止した状態で画像形成を行う。よって、第2動作モード時不使用潜像担持体の無駄な表面移動を少なくでき、その潜像担持体の寿命を延ばすことができる。
ここで、本発明のようなタンデム型の画像形成装置では、いずれの動作モードで画像形成を行う場合も、中間転写体や記録材搬送部材を表面移動させる必要がある。そのため、潜像担持体表面上の画像領域部と中間転写体や記録材搬送部材の表面とを接触させた状態で画像形成を行う従来の一般的な画像形成装置では、第2動作モードで画像形成を行う際に第2動作モード時不使用潜像担持体の表面移動を停止した状態にすると、その第2動作モード時不使用潜像担持体表面上の画像領域部分が中間転写体や記録材搬送部材により摺擦されてしまう。そのため、第2動作モード時不使用潜像担持体表面の画像領域部が傷つき、この第2動作モード時不使用潜像担持体を画像形成に使用したときに異常画像を発生させることになる。従来の画像形成装置の中には、第2動作モード時不使用潜像担持体表面と中間転写体や記録材搬送部材の表面とを接離させる接離機構を備えたものも知られているが(特許文献4)、このような接離機構を設けることは、コストの増大を招くとともに、装置内の省スペース化の妨げとなって画像形成装置の小型化を困難にするという問題を引き起こす。これに対し、本発明においては、第2動作モード時不使用潜像担持体の表面上の画像領域部分と中間転写体又は記録材搬送部材の表面との間がもともと非接触状態であるため、これらの間を接離させる機構が無くても、第2動作モード時不使用潜像担持体の表面移動が停止した状態で中間転写体又は記録材搬送部材が表面移動したときに、その第2動作モード時不使用潜像担持体表面上の画像領域部分が中間転写体や記録材搬送部材により摺擦されることはない。
【0011】
他方、本発明においては、第2動作モードで画像形成を行う場合、第2動作モード時不使用潜像担持体に対応する現像手段における現像剤攪拌手段の攪拌動作を停止した状態で画像形成を行う。よって、現像剤の無駄な攪拌を低減でき、現像剤の短寿命化を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、タンデム型の画像形成装置における混色の問題を軽減しつつ、潜像担持体の短寿命化や現像剤の早期劣化を抑制することが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の主要部の概略構成を示す説明図である。
【図2】同画像形成装置の画像形成ステーションで用いられる感光体を、感光体回転軸方向に直交する方向であって中間転写ベルトのベルト面に平行な方向から見たときの説明図である。
【図3】変形例に係る画像形成装置の主要部の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る画像形成装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、各潜像担持体上のトナー像を中間転写体へ転写してから最終的に記録材上へ転写する中間転写方式のタンデム型画像形成装置を例に挙げて説明するが、各潜像担持体上のトナー像を記録材搬送部材上の記録材に直接転写する直接転写方式のタンデム型画像形成装置であっても同様に本発明を適用できる。
【0015】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の主要部の概略構成を示す説明図である。
本実施形態の画像形成装置は、中間転写体としての中間転写ベルト1のベルト平坦部に沿うように、イエロー、シアン、マゼンタ、黒(ブラック)にそれぞれ対応する4つの画像形成ステーションS1〜S4が並設されて、中間転写ベルト1の表面に各画像形成ステーションS1〜S4で形成される各色トナー像が互いに重なり合うように順次転写されてフルカラートナー像を形成可能に構成されている。
【0016】
図1中符号Ca1〜Ca4は、それぞれ、各画像形成ステーションS1〜S4の潜像担持体である感光体2における表面(外周面)上の画像領域部と、中間転写ベルト1の表面との間に形成された空隙を示している。なお、図1は、説明のために、実際の装置構成とは異なる部分が存在し、特に空隙Ca1〜Ca4の大きさは実際よりも大きく表現している。本実施形態において、中間転写ベルト1の表面移動方向最上流側に位置する画像形成ステーションS1の感光体2は、その一次転写の際に中間転写ベルト1の表面には他色のトナーが付着していることがないので、逆転写が起きない。よって、本実施形態では、画像形成ステーションS1の感光体2の画像領域部と中間転写ベルト1の表面との間には空隙を形成せず、接触状態にしてもよい。しかし、本実施形態では、画像形成ステーションS1の感光体2にトナー像を形成しないで画像形成を行う動作モードを設けているので、逆転写による混色の問題がない画像形成ステーションS1の感光体2も中間転写ベルト1の表面と非接触状態にしている。
【0017】
なお、画像形成ステーションS1の感光体2にトナー像を形成しないで画像形成を行う動作モードを設けないのであれば、すなわち、すべての動作モードで画像形成ステーションS1の感光体2にトナー像を形成するのであれば、逆転写による混色の問題がない画像形成ステーションS1の感光体2は中間転写ベルト1の表面と接触状態としてもよい。
また、画像形成ステーションS1の感光体2にトナー像を形成しないで画像形成を行う動作モードを設ける場合であっても、画像形成ステーションS1の感光体2については、他の画像形成ステーションS2〜S4に比べて短寿命化の問題が深刻でない場合や、短寿命化を許容するような場合にも、当該画像形成ステーションS1の感光体2は中間転写ベルト1の表面と接触状態としてもよい。
【0018】
中間転写ベルト1は、カーボン分散ポリイミドベルトを無端状に形成されてなるもので、所要の距離をおいて水平方向に対向配置された回転可能な2つの支持ローラ4と、所要位置に配設された二次転写ローラ5とに、略逆三角形状となるように掛架されている。この中間転写ベルト1は、いずれか又は両方の支持ローラ4からの駆動力によって図中時計回り方向へ回転駆動するようになっている。
また、二次転写ローラ5によって下方に付勢された中間転写ベルト1の表面部分には、二次転写ベルト6が当接している。この二次転写ベルト6も、無端状に形成されたカーボン分散ポリイミドベルトから形成されている。
【0019】
図2は、画像形成ステーションS1〜S4で用いられる感光体2を、感光体回転軸方向に直交する方向であって中間転写ベルト1のベルト面に平行な方向から見たときの説明図である。
画像形成ステーションS1〜S4で用いられる感光体2は、アルミニウムのドラム基体上に有機感光層が積層された負帯電性有機感光体からなる画像領域部を外周面に有している本体部21と、その本体部21の両端に本体部21の径より大きい径で形成された回転体としての空隙形成部22とから構成されている。本体部21と一体的に回転する感光体2の回転軸は、図示しない駆動制御部からの駆動力によって図1中反時計回り方向へ回転駆動するようになっている。空隙形成部22は、感光体2の回転軸とは独立して回転する構成となっている。具体的には、空隙形成部22の回転中心部分には、感光体2の回転軸が挿通される挿通孔が形成されており、この挿通孔はベアリングを介して感光体2の回転軸に取り付けられている。本実施形態では、空隙形成部22を感光体2の回転軸とは独立して回転する構成として、ベアリング構成を採用しているが、空隙形成部22が感光体2の回転軸とは独立して回転する構成であれば、これに限るものではない。
【0020】
空隙形成部22の外周面は中間転写ベルト1の表面(外周面)に当接した状態となっており、これにより本体部21の外周面である画像領域部と中間転写ベルト1の表面との最近接部に空隙Ca1〜Ca4が形成される。これらの空隙Ca1〜Ca4のうち、画像形成ステーションS2〜S4の空隙Ca2〜Ca4については、中間転写ベルト表面移動方向上流側から搬送されてきたトナー像の厚さよりも大きくなるように(Ca2<Ca3<Ca4)、各空隙形成部22を順次大きい径に形成している。具体的には、画像形成ステーションS2の空隙Ca2は50[μm]、画像形成ステーションS3の空隙Ca3は100[μm]、画像形成ステーションS4の空隙Ca4は150[μm]としている。本実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト1上に形成されるトナー像の一色当たりの平均層厚は8〜40[μm]である。よって、本実施形態によれば、画像形成ステーションS2〜S4の空隙Ca2〜Ca4は、画像形成ステーションS2〜S4の一次転写部をそれぞれ通過前のトナー像の層厚よりも大きく設定されている。なお、トナー像の一色当たりの平均層厚は、体積平均粒子径が概ね8[μm]である一般的な球形トナーを用い、トナー付着量を概ね0.3〜1.5[mg/cm2](用紙上で所定の画像濃度を得るための必要な量)とした場合のものである。したがって、トナーの種類、所望するトナー付着量によっては、上記のトナー像の平均層厚から外れる場合があることから、本発明は上記した数値に限定されるものではない。
【0021】
一方、画像形成ステーションS1については、逆転写が発生しないので、その空隙Ca1は0より大きければよく、本実施形態では、この空隙Ca1を他の画像形成ステーションのうちの1つ(画像形成ステーションS2)の空隙Ca2と同じく、50[μm]としている。これは、他の画像形成ステーションと共通の構成とすることで、コストダウンを図るためである。
【0022】
本実施形態において、空隙形成部22は中間転写ベルト1の表面移動から駆動力を受けて連れ回り回転する。このように空隙形成部22が感光体回転軸とは独立して中間転写ベルト1の表面に対して連れ回り回転する構成であるため、後述するように当該感光体2の回転駆動を停止させても、その空隙形成部22は作像時に常時駆動する中間転写ベルト1の表面に連れ回って回転することができる。これにより、空隙形成部22が感光体2の回転軸と一体で回転する構成である場合と比べて、中間転写ベルト1の表面と空隙形成部22の外周面との摩耗が少なくなる。その結果、空隙形成部22の外周面の摩耗によって空隙が経時的に狭くなるという事態を軽減でき、長期的に安定して空隙を維持できる。また、空隙形成部22の外周面と中間転写ベルト1の表面との間で摺擦が起きると、その摺擦によって中間転写ベルト1が振動して画像形成に悪影響が出るが、本実施形態によればこのような振動も軽減される。
【0023】
各画像形成ステーションS1〜S4において、感光体2の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ31と、露光手段としての露光装置32と、現像手段としての現像装置33と、転写手段としての転写ユニットとが配置されている。
帯電ローラ31は、図2に示すように、その軸方向長さが感光体本体21の画像領域部と同じ長さで形成された帯電部311と、その帯電部311の両端に帯電部311より縮径され空隙形成部22に当接される被当接部312とで構成されている。帯電ローラ31の被当接部312と感光体2の空隙形成部22とが当接した状態で配置されることで、帯電部311と感光体本体21の画像領域部との間に所定の空隙Cb1〜Cb4が形成される。この空隙Cb1〜Cb4は、本実施形態では、すべて同じ50[μm]に設定している。本実施形態では、上述したように画像形成ステーションS2〜S4における感光体2の空隙形成部22は順次大きく形成されている。よって、帯電ローラ31の被当接部312の径は、順次小さくなるように形成されており、これによりすべての画像形成ステーションS1〜S4において空隙Cb1〜Cb4が同じ大きさに設定されている。
【0024】
なお、本実施形態では、空隙Cb1〜Cb4をすべて同じ大きさである50[μm]に設定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。しかしながら、空隙Cb1〜Cb4を40[μm]未満とした場合、帯電部311の表面に転写残トナーが付着するおそれがあることから、空隙Cb1〜Cb4の下限を40[μm]とするのが望ましい。また、空隙Cb1〜Cb4が100[μm]を超える場合、現像に必要な感光体帯電電位を得るために、帯電ローラ31に1000[V]以上の高い帯電バイアスを印加することが必要となり、感光体2と帯電ローラ31との間に異常放電(白ポチ、黒ポチといった画質劣化につながる)が発生しやすくなる。よって、空隙Cb1〜Cb4の上限は100[μm]とすることが望ましい。
【0025】
露光装置32は、帯電ローラ31で一様に帯電された感光体2の表面に、画像情報に基づいた光照射を行って静電潜像を形成させるレーザーユニットからなる。なお、このレーザーユニットに換えてLEDヘッドを用いてもよく、光照射によって潜像を形成させるものであれば 特に限定されない。
【0026】
現像装置33は、固定されたマグネットローラを被装するように設けられ、図1中時計回り方向へ回転可能に構成された現像剤担持体としての現像スリーブ331と、トナーとキャリアとを混合してなる二成分現像剤が貯留され、現像スリーブ331等の各構成部を支持させるケース332とを備え、感光体2と現像スリーブ331との間に所要の空隙が形成されるように配置されている。現像スリーブ331には、図示しない電源から現像バイアスが印加されている。現像装置33は、現像スリーブ331の表面に担持される現像剤中のトナーを、感光体2の表面上の画像領域部に形成された静電潜像に付着させることで、トナー像を形成する。本実施形態の現像装置33は、さらに、感光体2の帯電電位と現像スリーブ331との間に電位差を形成して、一次転写後に感光体2上に残留する転写残トナーを、この電位差によって、現像スリーブ331上の現像剤あるいは現像スリーブ331の表面に付着させ、ケース332内に回収させる機能を有する。
【0027】
転写ユニットは、各画像形成ステーションS1〜S4の感光体2と対向する中間転写ベルト1の内周面に接触するように配置された一次転写ローラ34を有している。この一次転写ローラ34は、芯金の周囲に導電性の発泡ポリウレタンが形成されたものである。また、中間転写ベルト1と二次転写ベルト6とを挟んで、アースローラ7と対向配置された二次転写ローラ5も有している。この二次転写ローラ5も、芯金の周囲に導電性の発泡ポリウレタンが形成されたものである。
【0028】
各画像形成ステーションS1〜S4では、感光体2の表面移動方向上流側から順に、帯電ローラ31、露光装置32、現像装置33及び転写ユニットが、感光体表面の画像領域部とは非接触の状態で配設されている。これにより、本実施形態では、感光体2への静電潜像の形成処理、現像処理、一次転写処理、さらに、一次転写後に感光体2に残留された転写残トナーを現像装置33で回収する回収処理のいずれも、感光体2の表面上の画像領域部に部材を接触させない状態で行われる。よって、感光体の画像領域部の経時的な摩耗が少なく、感光体の長寿命化が図られる。
【0029】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる画像形成装置の一連の動作を説明する。
なお、スキャナ等で紙上の画像から4色分解された画像データ(イエロー用、シアン用、マゼンタ用、黒用)を生成し、各画像形成ステーションS1〜S4は、この各色の画像データに基づいて画像形成を行うものとして、まずは各画像形成ステーションS1〜S4のすべてのステーションで作像が必要な第1動作モードであるフルカラーモードについて説明する。また、中間転写ベルト1、感光体2、帯電ローラ31、現像スリーブ331等は、画像形成可能な所定のタイミングで回転駆動するものとして説明する。
【0030】
最初に、画像形成ステーションS1に注目して説明する。
まず、帯電ローラ31が感光体2を均一にマイナス帯電する。このとき、感光体2の両端に設けられた空隙形成部22と帯電ローラ31の被当接部312とが当接して形成された空隙Cb1(50[μm])によって、感光体表面の帯電不良や感光体2と帯電ローラ31との間の異常放電に伴う異常画像の発生が適切に防止される。次いで、イエロー用の画像データに基づいて、露光装置32が感光体表面に静電潜像を形成し、現像装置33がマイナスの電荷を有するトナーによって反転現像することで、感光体2の画像領域部に平均層厚が例えば16[μm]のイエロートナー像が形成される。なお、ここで感光体2上に形成されるイエロートナー像の平均層厚として、トナーの平均体積粒径8[μm]の2倍を例示したのは、トナーと感光体2との間の静電付着力を無視でき、安定した転写率を確保しやすいためであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
次いで、感光体2上のイエロートナー像を、トナーと逆極性のプラスバイアスを印加した一次転写ローラ34と感光体2の画像領域部との間で形成する転写電界によって、中間転写ベルト1上に一次転写する。この一次転写で、中間転写ベルト1に転写されずに感光体2に残留した転写残トナーは、現像装置33に移動した時点で、感光体2の帯電電位と現像スリーブ331との電位差によってケース332内に回収される。
【0032】
このようにして画像形成ステーションS1によって中間転写ベルト1上に一次転写されたイエロートナー像は、中間転写ベルト1の表面移動に伴って次の画像形成ステーションS2に向かって移動するが、これと前後して、画像形成ステーションS2において、上記と同じ一連の動作でもって感光体2上に平均層厚が例えば16[μm]のシアントナー像を形成する。シアントナー像は中間転写ベルト1上のイエロートナー像と重なり合う所定のタイミングでもって中間転写ベルト1に一次転写される。このとき、中間転写ベルト1上のトナー像の最大層厚は16[μm]であり、画像形成ステーションS2における感光体2上のトナー像の最大層厚も16[μm]である。画像形成ステーションS2における空隙Ca2は50[μm]に設定されているので、差し引き18[μm]の空隙は確保されるので、イエロートナーの逆転写が防止される。そして、この一次転写で中間転写ベルト1に転写されずに感光体2に残留したシアンの転写残トナーは、イエロートナーと混色することなく、上記と同様に、現像装置33に移動した時点でケース332に回収される。
【0033】
次いで、画像形成ステーションS3,S4において、上記と同様に、帯電から一次転写を行い、中間転写ベルト1上にフルカラートナー画像を形成する。画像形成ステーションS3の一次転写により、平均層厚が例えば16[μm]のマゼンタトナー像が、イエロートナー像及びシアントナー像が重畳した最大層厚が32[μm]である中間転写ベルト1上のトナー画像に重なり合うように転写される。本実施形態では、空隙Ca3が100[μm]に設定されていることから、差し引き52[μm]の空隙が確保される。よって、画像形成ステーションS3でも、逆転写が適切に防止される。同様に、画像形成ステーションS4でも、平均層厚が例えば16[μm]の黒トナー像が、最大層厚は48[μm]である中間転写ベルト1上のトナー画像に重なり合うように転写されるが、空隙Ca4が150[μm]に設定されていることから、差し引き86[μm]の空隙が確保され、逆転写が適切に防止される。
【0034】
このようにして中間転写ベルト1の表面に形成されるフルカラートナー像は、中間転写ベルト1の表面移動に伴って二次転写ローラ5に向かって移動し、これに並行して二次転写ベルト6上の記録紙が二次転写ローラ5に向かって搬送される。そして、中間転写ベルト1上のフルカラートナー像と二次転写ベルト6上の記録紙は、二次転写ローラ5とアースローラ7との間に形成した転写電界によって、フルカラートナー像が記録紙上に二次転写される。その後、フルカラートナー像が転写された記録紙は、二次転写ベルト6の表面移動に伴って定着装置8に向かって移動し、定着装置8で加圧及び加熱されることで、記録紙上にフルカラーの固定画像が形成され、一連の動作が終了する。
【0035】
次に、4つの画像形成ステーションS1〜S4のうちの一部の画像形成ステーションを用いないで画像形成を行う第2動作モードについて説明する。ここでは、第2動作モードの一例として、レッド(赤)色モードを例に挙げて説明する。なお、レッド色モードでは、イエロー像を作像する画像形成ステーションS1とマゼンタ像を作像する画像形成ステーションS3のみ用い、シアン像を作像する画像形成ステーションS2と黒像を作像する画像形成ステーションS4は用いないで、画像形成を行う2色モードである。ただし、いずれか1つの画像形成ステーションのみ用いて画像形成を行う単色モードや、いずれか1つの画像形成ステーションのみ用いないで画像形成を行う3色モードでも、同様である。
【0036】
まず、スキャナ等で紙上の画像から画像データ(イエロー用、マゼンタ用)を生成し、その画像データに基づいて、イエロー像を作像する画像形成ステーションS1及びマゼンタ像を作像する画像形成ステーションS3が、上記と同様の動作により中間転写ベルト上にトナー像を形成する。また、本レッド色モードでは用いられない2つの画像形成ステーションS2,S4については、駆動を完全に停止した状態にする。本実施形態では、感光体2の回転駆動、現像装置の回転駆動(現像スリーブの回転駆動と、現像剤攪拌手段である現像剤攪拌スクリューの回転駆動)、帯電ローラ31の回転駆動、各種バイアスの印加駆動のすべてを停止させるが、感光体2の短寿命化を抑制するのであれば、少なくとも感光体2の回転駆動を停止すればよい。また、現像剤の早期劣化を抑制するのであれば、少なくとも現像装置の現像剤攪拌スクリューの回転駆動を停止すればよい。
【0037】
作像に使用しない2つの画像形成ステーションS2,S4について駆動を完全に停止すると、その感光体2の回転駆動も停止した状態になるが、その感光体2に設けられる空隙形成部22によって感光体2の本体部21における画像領域部と中間転写ベルト1の表面との非接触状態が維持される。よって、画像形成ステーションS2,S4の感光体2の画像領域部と中間転写ベルト1の表面とが摺擦する事態は生じない。このとき、空隙形成部22は中間転写ベルト1の表面に当接した状態となっているが、空隙形成部22は感光体2の回転軸とは独立して回転する構成となっており、中間転写ベルト1の表面移動に伴って連れ回り回転する。よって、画像形成ステーションS2,S4の感光体2の画像領域部と中間転写ベルト1の表面との空隙Ca2,Ca4を維持するための空隙形成部22が、中間転写ベルト1の表面との摺擦により摩耗することはない。
【0038】
本実施形態にかかる画像形成装置によれば、帯電ローラ31の帯電部311と感光体2の画像領域部21との空隙Cb1〜Cb4、感光体2と中間転写ベルト1との空隙Ca1〜Ca4とを独立に設定可能であることから、逆転写現象を全く発生させない空隙Ca1〜Ca4の形成と、感光体表面の帯電不良や感光体2と帯電ローラ31との間の異常放電に伴う異常画像を発生させない空隙Cb1〜Cb4の形成とを、簡単な構成で両立することができる。すなわち、帯電能力制御と逆転写防止制御を独立に行うことができるため、帯電ムラによる画像劣化もなく、逆転写による混色のない画像形成装置とすることができる。
また、感光体2と接触する部材を完全に排除したことから、画像形成ステーションS1〜S4の更なる長寿命化を達成できる。
しかも、感光体2と中間転写ベルト1との空隙Ca2〜Ca4を、それぞれの通過前のトナー像の厚さよりも大きく形成(Ca2<Ca3<Ca4)し、画像形成ステーションS2〜S4において最適な空隙を形成して、これらの画像形成ステーションS2〜S4での逆転写トナーを抑制したから、逆転写による混色を抑制して極めて良好な画質が形成できる。
また、本実施形態の構成によれば、帯電ローラ31の帯電部311と感光体2との間の空隙Cb1〜Cb4を安定して保持することができるので、空隙変動を原因とした画像濃度変動を生じるおそれがない。
【0039】
〔変形例〕
以下、上述した実施形態にかかる画像形成装置の一変形例について説明する。
図3は、本変形例に係る画像形成装置の主要部の概略構成を示す説明図である。
本変形例に係る画像形成装置は、上記実施形態における各画像形成ステーションS1〜S4に、感光体2上の転写残トナーを感光体から除去して保持し、保持した転写残トナーを所定の非画像形成タイミングで感光体表面に戻す一時保持手段9を追加した点が、上記実施形態の構成と異なっている。その他の構成は、上記実施形態の構成と同様であるため、以下の説明では一時保持手段9について詳述する。
【0040】
一時保持手段9は、ケース92に回転可能に支持され、トナーの正規帯電極性と同極性のバイアスが印加される導電性ブラシ部材91を備えており、感光体2と中間転写ベルト1との最近接部(一次転写部)に対して感光体表面移動方向下流側近傍に設けられている。一時保持手段9は、画像形成動作中に、導電性ブラシ部材91が回転駆動するとともに、現像装置33のケース332内のトナーの正規帯電極性と同極性のバイアスを印加して、一次転写時の放電によって極性が反転した転写残トナーを一時保持手段9のケース92内に回収する。また、一時保持手段9のケース92内に回収したトナーは、画像形成動作が行われていない所定の非画像タイミングにおいて、帯電ローラ31をONにし、現像装置33、感光体2、中間転写ベルト1等の各構成部を駆動した状態で、導電性ブラシ部材91にトナーの正規帯電極性とは逆極性のバイアスを印加しながら導電性ブラシ部材91を回転駆動することで、感光体2上に戻される。感光体2上に戻されたトナーは、未だ正規帯電極性から極性反転した状態であるが、帯電ローラ31を通過する際にマイナス帯電される。これにより、現像装置33を通過する際に通常の現像バイアスによってケース332内に回収される。
【0041】
以上、本実施形態(変形例を含む。以下同じ。)に係る画像形成装置は、表面移動する複数の潜像担持体としての4つの感光体2と、これらの感光体2の表面上の画像領域部分(本体部21の外周面)に潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置32と、これらの感光体2の表面に形成された潜像を、表面移動する現像剤担持体としての現像スリーブ331の表面に担持された現像剤によってそれぞれ現像してトナー像化する複数の現像手段としての4つの現像装置33と、これらの感光体2の表面上のトナー像を、表面移動する中間転写体である中間転写ベルト1の表面上に中間転写した後に記録材としての記録紙上に転写する転写手段としての転写ユニットと、すべての感光体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードとしてのフルカラーモードと、一部の感光体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとしてのレッド色モードとを切り替えて画像形成動作を制御する制御手段としての図示しない制御部とを有している。この画像形成装置は、少なくともレッド色モードでの画像形成ではトナー像が形成されないシアン及び黒の感光体2については、フルカラーモード及びレッド色モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、シアン及び黒の感光体2の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間を非接触状態に維持する非接触状態維持手段としての空隙形成部22を備えている。よって、少なくともレッド色モードでの画像形成ではトナー像が形成されないシアンの感光体2については、逆転写を有効に防止でき、混色の問題を軽減できる。本実施形態では、すべての感光体2がシアンの感光体と同じように、中間転写ベルト1の表面との間で非接触状態が維持されるため、混色が生じ得るすべての感光体2について混色問題を軽減できる。
そして、本実施形態では、レッド色モードで画像形成を行う場合、トナー像が形成されないシアン及び黒の感光体2の表面移動を停止した状態で画像形成を行う。よって、レッド色モードで画像形成が行われることが多い場合でも、そのレッド色モードに用いないシアン及び黒の感光体2の寿命が短くなる事態を防止できる。しかも、本実施形態では、シアン及び黒の感光体2の表面上の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間が非接触状態であるため、シアン及び黒の感光体2の表面移動を停止しても、その感光体表面上の画像領域部分が中間転写ベルト1により摺擦されることはない。よって、シアン及び黒の感光体2の画像領域部分を傷つけることなく、その感光体2の長寿命化を図ることができる。しかも、シアン及び黒の感光体2の表面上の画像領域部分は、もともと中間転写ベルト1の表面と離間した状態に維持されているため、レッド色モード時にシアン及び黒の感光体2を離間させるための接離機構が不要である。
また、本実施形態においては、中間転写ベルト1の表面に対向する感光体表面上の画像領域部分と当該感光体2の回転軸との距離(感光体の径)よりも大きい径を有し、当該感光体2の画像領域部分よりも軸方向両側外方の回転軸部分に、該回転軸とは独立した状態で中間転写ベルト1の表面移動方向と連れ回る方向へ回転可能に設けられた回転体としての空隙形成部22の周面を、中間転写ベルト1の表面に当接させることで、上記非接触状態を維持している。このように感光体2の回転軸に設けられた空隙形成部22を中間転写ベルト1の表面に当接させることで、感光体2と中間転写ベルト1との空隙Ca1〜Ca4を形成しているので、この空隙Ca1〜Ca4の大きさを所望の距離に高い精度でかつ安定して保持することができる。よって、この空隙Ca1〜Ca4の変動に起因した画像濃度変動が少なく、高品質な画像形成を実現できる。しかも、空隙形成部22が感光体2の回転軸に対して独立して回転可能な構成となっているため、他の感光体2を用いて画像形成を行う場合にこれに用いられない感光体2の回転駆動を停止させても、その空隙形成部22が作像時に常時駆動する中間転写ベルト1の表面に連れ回る方向に回転でき、空隙形成部22と中間転写ベルト1との間の摺擦を軽減できる。すなわち、空隙形成部22を感光体の回転軸と一体的に回転する構成とした場合には、感光体の回転駆動を停止したときにその感光体の空隙形成部22の回転も停止するため、中間転写ベルト1の表面移動により空隙形成部22が摺擦される。このような摺擦が生じると、空隙形成部22が摩耗して所望する一定の空隙距離が維持できなくなり、空隙の大きさが周期的に変動して画像濃度ムラを引き起こしたり、逆転写抑制効果が失われたりする不具合が発生する。また、中間転写ベルト1の表面も摩耗してしまうので、中間転写ベルト1の寿命が短くなるという不具合も発生する。更には、その摺擦により中間転写ベルト1に振動が生じて、適正な画像形成動作を妨げ、画像品質を低下させるという不具合が発生する。本実施形態においては、上記のような摺擦が起きないので、このような不具合の発生が防止される。空隙形成部22を感光体の回転軸と一体的に回転する構成とした場合でも、画像形成に用いない感光体を中間転写ベルト1から離間させる接離機構を設ければ、上述した不具合を防止できるが、このような接離機構を設けることは、コストの増大を招くとともに、装置内の省スペース化の妨げとなって画像形成装置の小型化を困難にするという新たな問題を引き起こす。本実施形態では、このような接離機構を設けることなく、上述した不具合を防止できる点で、非常に有益である。
また、本実施形態においては、感光体表面上の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間の各離間距離(空隙Ca2〜Ca4の大きさ)が、それぞれの感光体表面上の画像領域部分と対向する各転写領域に搬送されてくる中間転写ベルト1の表面面に形成されたトナー像の厚さよりも大きくなるように(Ca2<Ca3<Ca4)、構成されている。よって、中間転写ベルト1上のトナー像が感光体表面に接触しないようにして、逆転写による混色を安定して防止することができる。
また、本実施形態においては、中間転写ベルト1の表面移動方向下流側に位置する感光体2ほど、その表面上の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間の離間距離(空隙の大きさ)が大きくなるように構成されている。転写効率を考えれば、感光体表面上の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との間の空隙Ca2〜Ca4は小さい方が有利であるが、この空隙を小さくしすぎると、中間転写ベルト1上のトナー像が感光体表面に接触して逆転写が起きやすくなる。したがって、中間転写ベルト1上のトナー像が感光体表面に接触しない大きさの範囲内で、なるべく空隙Ca2〜Ca4を小さくすることが望まれる。一方、本実施形態のようなタンデム型の画像形成装置は、中間転写ベルト1の表面移動方向上流側の感光体から順にトナー像が重なり合うように中間転写ベルト1上に転写されるため、下流側の一次転写部ほど、多くのトナー像が重なった状態のトナー像が送り込まれることになる。よって、各一次転写部に形成される空隙Ca2〜C4の最適値は下流側ほど大きいものとなる。したがって、本実施形態のように、空隙Ca2〜C4のうち下流側のものほど、その大きさが大きくなるように構成することで、いずれの空隙Ca2〜C4も、中間転写ベルト1上のトナー像が感光体表面に接触しない範囲内でなるべく小さい最適な大きさに設定することが可能となる。
また、本実施形態において、レッド色モードにおいて用いられないシアン及び黒の画像形成ステーションにおいては、その感光体2の回転駆動を停止するだけでなく、現像装置33の現像剤攪拌駆動も停止している。これにより、現像剤の無駄な攪拌が抑制され、現像剤の早期劣化を防止できる。なお、現像剤の早期劣化の防止に着目するのであれば、レッド色モードにおいて用いられないシアン及び黒の画像形成ステーションにおいては、感光体の回転駆動は停止させずに、現像装置33の現像剤攪拌駆動を停止させるようにしてもよい。この構成においては、空隙形成部22と中間転写ベルト1との摺擦を考慮する必要がなくなり、感光体の画像領域部分と中間転写ベルト1の表面との非接触状態を維持する手段の制限が緩和され、より多様な非接触状態維持手段を利用することができる。
また、本実施形態においては、感光体2の表面上に付着しているトナーを、その感光体表面に対応する現像装置33の現像スリーブ331表面上に又は現像スリーブ331に担持された現像剤中に回収するトナー回収手段を有している。これにより、転写残トナーを除去するための専用の機構(クリーニング装置)を設ける必要のないクリーナレス方式の画像形成装置を実現でき、装置のコンパクト化にメリットがある。このようなクリーナレス方式の画像形成装置は、特に混色の問題が最終出力画像の色再現性の低下に結びつきしやすいが、本実施形態によれば混色の問題が有効に防止されるため、最終出力画像の色再現性の低下が有効に防止されたクリーナレス方式の画像形成装置が実現される。
特に、本実施形態においては、感光体2の表面上に付着しているトナーを感光体表面から除去して保持し、保持したトナーを所定の非画像形成タイミングで感光体2表面に戻す一時保持手段9を有しているので、転写残トナーによる露光障害や帯電ムラが起きにくい。
また、本実施形態において、現像装置33は、感光体表面に形成されるトナー像の厚さが少なくともトナーの体積平均粒子径の2倍以上となるように現像処理を行うので、一次転写部において感光体表面上のトナー像を構成するトナーのうち中間転写ベルト1側に近いトナーは感光体との間の非静電付着力が小さい又は無いので、高い転写率を安定して確保することができる。
また、本実施形態においては、トナーとして、ワーデル実用球形度が0.95以上のトナーを用いている。このワーデル実用球形度Ψは、粒子の投影面積に等しい面積の円の直径を粒子の投影像に外接する最小円の直径で割ることによって算出される値であるが、上記したワーデル実用球形度Ψを0.95以上とした算出方法は、スライドガラス上に摂取したトナーから無作為に200個のトナーを摘出し、光学顕微鏡で500倍に拡大して求めた値の平均値を用いている。このようなトナーを用いることで、転写残トナー量を低下させることができ、転写残トナーによる露光障害や帯電ムラに起因する画像劣化を低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 中間転写ベルト
2 感光体
21 本体部
22 空隙形成部
31 帯電ローラ
32 露光装置
33 現像装置
331 現像スリーブ
332 ケース
9 一時保持手段
91 導電性ブラシ部材
92 ケース
Ca1,Ca2,Ca3,Ca4 空隙
S1,S2,S3,S4 画像形成ステーション
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開平11−161024号公報
【特許文献2】特開2003−156947号公報
【特許文献3】特開2008−256922号公報
【特許文献4】特開2006−171233号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する複数の潜像担持体と、
該複数の潜像担持体の表面上の画像領域部分に潜像を形成する潜像形成手段と、
該複数の潜像担持体の表面に形成された潜像を、表面移動する現像剤担持体の表面に担持された現像剤によってそれぞれ現像してトナー像化する複数の現像手段と、
該複数の潜像担持体の表面上のトナー像を、表面移動する中間転写体の表面上に中間転写した後に記録材上に転写するか、又は、表面移動する記録材搬送部材の表面上に担持された記録材上に転写する転写手段と、
すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて、画像形成動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
少なくとも上記第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用潜像担持体については、上記第1動作モード及び上記第2動作モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分と上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材に担持される記録材の表面との間を非接触状態に維持する非接触状態維持手段を有し、
上記転写手段は、少なくとも上記第2動作モード時不使用潜像担持体については、非接触状態であっても該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分に形成されたトナー像を該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持される記録材の表面に転写可能な非接触転写方式の転写手段であり、
上記制御手段は、上記第2動作モードで画像形成を行う場合、上記第2動作モード時不使用潜像担持体の表面移動を停止した状態で画像形成を行うように、画像形成動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記非接触状態維持手段は、上記中間転写体又は上記記録材搬送部材の表面に対向する潜像担持体表面上の画像領域部分と当該潜像担持体の回転軸との距離よりも大きい径を有し、当該潜像担持体の画像領域部分よりも軸方向両側外方の回転軸部分に、該回転軸とは独立した状態で該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面移動方向と連れ回る方向へ回転可能に設けられた回転体の周面を、該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面に当接させることで、上記非接触状態を維持するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
上記非接触状態維持手段は、潜像担持体表面上の画像領域部分と上記中間転写体又は上記記録材搬送部材の表面との間の各離間距離が、それぞれの潜像担持体表面上の画像領域部分と対向する各転写領域に搬送されてくる該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持された記録材の表面に形成されたトナー像の厚さよりも大きくなるように、上記非接触状態を維持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記非接触状態維持手段は、上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材の表面移動方向下流側に位置する潜像担持体ほど、その表面上の画像領域部分と該中間転写体又は該記録材搬送部材の表面との間の離間距離が大きくなるように、上記非接触状態を維持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
表面移動する複数の潜像担持体と、
該複数の潜像担持体の表面上の画像領域部分に潜像を形成する潜像形成手段と、
現像剤攪拌手段により攪拌された現像剤を、表面移動する現像剤担持体の表面に担持させ、該複数の潜像担持体の表面に形成された潜像を、該現像剤担持体上の現像剤によってそれぞれ現像してトナー像化する複数の現像手段と、
該複数の潜像担持体の表面上のトナー像を、表面移動する中間転写体の表面上に中間転写した後に記録材上に転写するか、又は、表面移動する記録材搬送部材の表面上に担持された記録材上に転写する転写手段と、
すべての潜像担持体表面にトナー像を形成して画像形成を行う第1動作モードと、一部の潜像担持体の表面にトナー像を形成して画像形成を行う第2動作モードとを切り替えて、画像形成動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
少なくとも上記第2動作モードでの画像形成ではトナー像が形成されない第2動作モード時不使用潜像担持体については、上記第1動作モード及び上記第2動作モードのいずれの動作モードで画像形成を行う場合でも、該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分と上記中間転写体の表面又は上記記録材搬送部材に担持される記録材の表面との間を非接触状態に維持する非接触状態維持手段を有し、
上記転写手段は、少なくとも上記第2動作モード時不使用潜像担持体については、非接触状態であっても該第2動作モード時不使用潜像担持体の画像領域部分に形成されたトナー像を該中間転写体の表面又は該記録材搬送部材に担持される記録材の表面に転写可能な非接触転写方式の転写手段であり、
上記制御手段は、上記第2動作モードで画像形成を行う場合、上記第2動作モード時不使用潜像担持体に対応する現像手段における現像剤攪拌手段の攪拌動作を停止した状態で画像形成を行うように、画像形成動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記潜像担持体の表面上に付着しているトナーを、該潜像担持体表面に対応する現像手段の現像剤担持体表面上に又は該現像剤担持体に担持された現像剤中に回収するトナー回収手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記潜像担持体の表面上に付着しているトナーを該潜像担持体表面から除去して保持し、保持したトナーを所定の非画像形成タイミングで該潜像担持体表面に戻す一時保持手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記現像手段は、上記潜像担持体表面に形成されるトナー像の厚さが少なくともトナーの体積平均粒子径の2倍以上となるように現像処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記トナーとして、ワーデル実用球形度が0.95以上のトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−145611(P2011−145611A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8238(P2010−8238)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】