磁気セルを超高速制御するための方法及び装置
磁気素子の磁化を超高速で制御するための装置とその方法であって、装置(100)は表面弾性波発生手段(102)と、典型的には機能的及び部分的に構造的に前記SAW発生手段(102)内に設けられたトランスポートレイヤー(104)と、少なくとも1つの強磁性素子(106)とを備える。表面弾性波は発生された後、典型的には圧電材料より成るトランスポートレイヤー(104)内を伝播する。これにより、歪みがトランスポートレイヤー(104)及びトランスポートレイヤー(104)と接触した強磁性素子(106)内に発生する。この歪みは磁気弾性結合により強磁性素子(106)内に有効磁界を発生する。表面弾性波が強磁性共振(FMR)周波数に実質近い周波数を有する場合は、強磁性素子(106)は充分に吸収され、素子の磁化状態はFMR周波数で制御される。装置はRF磁気共振器、センサ、カメラ等に使用される。対応する方法は磁気要素及び磁気論理素子における超高速の読み出し及び切り換えに利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気学の技術分野に関する。本発明は、例えば、磁気レイヤー、磁気セル及び磁気要素などの強磁性体の磁化状態を制御操作するための方法、技術及び対応する装置に関する。また、本発明は高周波共振器と磁気論理技術及び磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
現今では、例えば強磁性MRAMセルなどの強磁性要素における磁化状態は、近傍の電流により発生された磁界又は外部磁界を付加することにより、切り換え又は改変などの操作と、読み出し又は書き込みなどの操作が行われている。
【0003】
電流導体による磁界誘起切り換え技術は広く行き渡っており、現今では広範な系列の商品において利用されている。電流導体による磁界誘起切り換え技術については数種類のものが公知である。切り換え動作は一般に静電誘導法によって行われ、素子の切り換えに必要な高電流が供給され、必要な待ち時間の後で素子が切り換えが行われる。強磁性要素の磁化読み出し駆動又は磁化状態を切り換えるための別の方法は、強磁性共振(FMR)を利用している。強磁性共振は、徹底的に研究された公知の現象であり、強磁性要素の切り換え及び判定のためにそれを利用することで、通常の方法と比較して、速度及び電力の観点からいくつかの利点がある。「歳差切換(プリセッショナル・スイッチング)」として当業者に公知の機構は、磁気装置の強磁性共振特性に基づくものであり、他の従来の切換方式を用いた場合よりも少ない電力で、且つ、更に高い頻度で、磁化の反転を可能にする。
【0004】
しかしながら、上記の全ての技術はいくつかの異なる問題点、例えば、バイアス用及び磁気判定用の両方に電流線が必要であること、ビット選択方式は厳格なタイミングが要求されること、電力消費が比較的高くなるとともに、異なったレベルのメタライゼーション(金属被覆法)が必要である、といった問題点がある。更に、読み出し動作中において状態を比較するための基準セルが必要となることがあり、このことは有効セル密度を低下させる。典型的には、データ記憶ビット当たり1つの基準ビットが使用される。
【0005】
強磁性共振周波数で動作することは、制御能力と集積化を困難にしている。また、磁気特性を制御するために一定の外部磁界を必要とし、このことは、磁界の広がりと電力消費の理由により、低周波においてさえ磁気材料の使用を制限することになる。後者はいくつかの適用においてFMR(強磁性共振)を利用することを困難にしている。
【0006】
更に、磁気材料の磁気状態が、磁気材料内に応力及び・又は歪みが存在することにより改変されることは、磁気材料の公知の特徴である。応力による状態改変に好適な典型的材料はニッケル(Ni)であり、例えば、Sander D. により "Progress in Physics 62" (1999) の809頁に記載された報告書 "The correlation between mechanical stress and magnetic anisotropy in ultrathin films"(超薄膜における機構的歪みと磁気非等方性との相関)に記載されている。典型的には、歪みは圧電性材料に電圧を印加することにより発生し、歪みを利用することで、低周波において制御可能であることだけが知られている。このため、例えば強磁性メモリセルにおいて歪み誘起切換を利用することが制約される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、制御能力の高い、磁気素子の超高速判定のための新規な方法とそれに対応する装置を提供することである。
本発明の更なる目的は、1GHzより高い周波数で動作する、例えば、MRAM型構造などで使用可能なように、バイアスされたスピンバルブ又はトンネル接合構造の交換のための読み出し方式を提供することである。
本発明の更に別の目的は、1GHzより高い周波数で動作する面内磁気センサを提供することである。更に、本発明の目的は、1GHzより高い周波数でもまた動作する面内磁気カメラを提供することである。
本発明の他の目的は、磁気レイヤー及び要素の切換方式を提供することである。
本発明の更に他の目的は、高周波機構の共振器を提供することである。
本発明の更に他の目的は、磁気論理構成における新規な駆動機構を提供することである。
本発明の更に他の目的は、磁気切換器の切換動作における変化を能動的に補正するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明による方法及び装置により達成される。
本発明は、磁気弾性エネルギー変換を利用して、強磁性素子の磁化状態を判定、識別又は変更する方法を提供するものである。磁気弾性エネルギー変換は、磁気素子の磁化状態と相互作用する圧電レイヤーにおいて、磁気素子とSAW(表面弾性波素子)との間で利用可能である。本発明は、圧電レイヤーと、磁気素子と、磁気素子の磁化状態と相互作用する圧電レイヤーにおいて磁気素子とSAW(表面弾性波素子)との間での磁気弾性エネルギー変換を行う手段とを有する電子装置に関する。
【0009】
本発明は、少なくとも1つの表面弾性波発生手段と、トランスポート・レイヤーと、強磁性共振周波数νFMRを有する少なくとも1つの強磁性素子とを備え、前記表面弾性波発生手段は、前記トランスポート・レイヤー内に波長がλSAWで周波数が前記強磁性共振周波数νFMRか又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と実質等しい周波数νSAWの表面弾性波を発生するように調整されることを特徴とする、磁気特性相互作用を可能とする装置に関する。
【0010】
また、本発明は、圧電材料で構成され、周波数νSAWの表面弾性波を搬送するように構成されたレイヤーと、強磁性共振周波数νFMRを有し、磁気弾性エネルギー変換が可能な少なくとも1つの強磁性素子とを備え、前記表面弾性波周波数νSAWが前記強磁性共振周波数νFMRか又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と実質等しく、前記表面弾性波は前記少なくとも1つの強磁性素子と相互作用して、前記強磁性素子の磁化状態に作用することを特徴とする、磁気特性相互作用を可能とする装置に関する。
【0011】
前記少なくとも1つの強磁性素子は磁歪性(磁気歪)素子であってもよい。磁化状態は装置の出力として使用される。前記整数は例えば2などの偶数であってもよい。装置は、周波数νSAWの前記表面弾性波を発生する少なくとも1つの表面弾性波発生手段を有してもよい。圧電材料で構成されたレイヤーはトランスポート・レイヤーであってもよい。磁歪性材料は磁気弾性エネルギー変換を行うための手段である。
【0012】
前記周波数νSAWは、前記強磁性共振周波数νFMRか又はその整数倍に対応する吸収ピークの幅のフラクション(分率)に対応する幅を有する範囲内に存在してもよく、該吸収ピークは前記強磁性共振周波数νFMRか又はその整数倍近傍の中心に位置し、前記フラクションは100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは10%、更に好ましくは2%、更にもっと好ましくは1%である。
【0013】
前記強磁性素子は、圧電材料で構成された前記レイヤー又は前記表面弾性波発生手段と接触してもよい。該接触は直接的な接触であってもよい。前記強磁性素子は前記表面弾性波発生手段と直接には接触しない構成でもよい。前記強磁性素子は前記表面弾性波発生手段の一部であってもよい。磁気特性相互作用を可能とする装置は、少なくとも1つの強磁性素子の磁気状態を読み出すための手段を備えてもよい。この読み出し手段は、表面弾性波に対して磁気的反応を検知できるシステムであってもよい。また、この読み出し手段は、抵抗の測定を行うシステムであってもよい。磁化状態は該システムからの読み出し(「出力」とも呼ぶ)であってもよい。読み出した状態が解釈される。出力としては、最も一般的には磁気抵抗効果などの異なった効果が、AMRなどの単一のレイヤーにおけるとともに、トンネル接合やスピンバルブなどの構成要素において使用することができる。
【0014】
更に、磁気画像形成技術に基づくかまたは磁気画像形成技術から導出される全ての技術もまた、微細区分の、磁力顕微鏡検査や、(走査)ホールプローブ顕微鏡検査や、磁気光学カー効果等の測定である必要はなく、同様に、出力として検知される。また、インダクタンスによる技術も、ピックアップ・コイル、磁界センサ(読み出しヘッド、ホールプローブ)、等、又は、例えば、パルスラインの転移特性の測定等を用いて使用可能である。その理由は、これらの検知手段は近傍の磁気膜とその特性を検知できるからである。
【0015】
表面弾性波の周波数は、強磁性共振周波数又はその整数倍近傍の狭い周波数範囲内で選択される。この周波数範囲は材料の特性であり、この説明のために吸収ピークの幅と規定されるところの磁性材料の吸収係数に依存する。幅を規定するピークの縁は、吸収が実質0、例えば0.1、好ましくは0.01、更に好ましくは0.001、更に好ましくは0.0001に低下される位置に設定される。吸収ピークの幅を表す他のパラメータとしては、減衰パラメータα又は半値全幅(FWHM)が使用可能である。吸収ピークは好ましくは可能な限り狭くされる。その場合、使用される好ましい周波数の範囲は、吸収ピークの幅のフラクションに相当する幅を有する範囲であり、最大吸収周波数の値の近傍の中心に位置する。このフラクションは例えば100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは105%、更に好ましくは2%、更に好ましくは1%である。
【0016】
SAW(表面弾性波)は、更に付加された磁界の作用がSAWがない場合と異なるように、磁気素子の特性を変更することができる。従って、このような追加磁界の存在は、本発明のある実施形態にとっては好都合である。従って、装置は、強磁性共振周波数又はその整数倍の周波数において、このような追加の磁界を発生する手段を有してもよい。装置は、追加磁界によりもたらされる弱い磁界の力によって誘起される振動がパラメトリック機構により増幅される「パラメトリック増幅」用として使用してもよい。SAWは、弱い追加磁界の力により駆動される発振システムの周波数の2倍または2n(偶数)倍(ただし、nは、限定するものではないが、例えば1,2,4,6,8などの小さな整数であることが好ましい)の周波数において、パラメトリックポンプとして機能し、該駆動力とパラメトリックポンプ間の位相同期に基づいて、例えば、吸収ピークにより示される発振振幅の増幅、又は吸収の幅に関する減衰のアクティブな補正または強化が達成される。
【0017】
これにより、表面弾性波の周波数は、強磁性素子により明示的に吸収されるようにできる。表面弾性波の吸収は、強磁性共振周波数での吸収の少なくとも1%、好ましくは25%、更に好ましくは50%、更に好ましくは75%、最も好ましくは99%である。更に、表面弾性波発生手段は、圧電材料で構成された前記レイヤーの一部を備えた構成としてもよい。伝播された表面弾性波は、前記強磁性素子内に磁気弾性エネルギー変換gによる効果的な磁界を形成し、前記強磁性素子の磁気特性を操作、変更または改変する。磁気特性は前記強磁性素子の磁化状態であってもよい。また、磁化特性は、切り換え動作、保磁度、バイアス性、透過率、磁化率、減衰動作又は吸収動作のいずれかであってもよい。
【0018】
強磁性素子の長さは表面弾性波の波長λSAWよりも小さく、好ましくは、表面弾性波の波長λSAWの1/4よりも小さい。また、強磁性素子の長さは表面弾性波の波長λSAWよりも長くてもよい。強磁性素子の幅は表面弾性波の波長λSAWよりも小さく、好ましくは、表面弾性波の波長λSAWの1/4よりも小さい。また、強磁性素子の幅は表面弾性波の波長λSAWよりも長くてもよい。
【0019】
強磁性素子は、磁気要素の機能的又は構造的な部分であってもよい。この磁気要素は、例えばAMR、TMR、又はGMR装置などの任意の磁気抵抗装置である。磁気要素は、ピン留めされたレイヤーがないスピンバルブであってもよい。磁気要素は、例えば、スピンバルブまたはトンネル接合であり、ピン留めされた磁化を有する基準レイヤーを備える。装置で使用される表面弾性波は剪断波(シャーウェーブ)及び表面波(レイリー波)のいずれでもよい。それはまた任意の他の好適な表面弾性波であってもよい。強磁性素子は、強磁性素子の磁化容易軸の方向と誘起された実効磁界の方向間の角度が0°と異なり、好ましくは45°より大、更に好ましくは80°より大、最も好ましくは90°となるように、方位決定される。
【0020】
表面弾性波発生手段は、少なくとも1つの交差指型(インターディジット構成)変換器でるか又は同変換器を備える構成である。また、更に表面弾性波発生手段を追加してもよい。例えば、装置は第2の表面弾性波発生手段を備えてもよい。第1の表面弾性波発生手段は第1の表面弾性波伝播方向に剪断波(シャーウェーブ)を発生するためであり、第2の表面弾性波発生手段は第2の表面弾性波伝播方向に表面波を発生するための手段である。第1の表面弾性波伝播方向と第2の表面弾性波伝播方向は互いに直交してもよい。また、装置は、少なくとも1つの表面弾性波発生手段に対して、磁気素子に関して表面弾性波発生手段と反対側に位置する表面弾性波検知手段を有してもよい。この表面弾性波検知手段は、強磁性素子に対して、表面弾性波発生手段と正反対に配置してもよい。この装置では、表面弾性波発生手段は磁気素子を判定する他の手段、即ち、近接した電流導体により発生する磁界などのもっと多くの従来の仕方、又は、熱的に、又はヒータやレーザパルス、又は素子を流れる電流により発生された回転トルク(角運動量)による磁気変化等、と組み合わせることができる。
【0021】
また、装置は、圧電材料で構成された前記レイヤーの上部に配列された複数の強磁性素子を有し、磁気画像を提供する構成としてもよい。複数の強磁性素子は前記表面弾性波発生手段の上部に配列してもよい。その場合、装置は磁気カメラとして機能することができる。強磁性素子は複数の行及び列状に配列してもよい。
【0022】
本発明はまた環境パラメータを検知する方法に関するもので、該方法は、少なくとも1つの強磁性素子をして、環境量が測定されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記少なくとも1つの強磁性素子と相互作用させる工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記強磁性素子の対応する物理量の値を求める工程と、を有する。
【0023】
前記強磁性素子の前記物理量は前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。また、前記物理パラメータは前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記特性パラメータの変化から、前記物理量の対応する値を求めることは、前記動的な測定から、前記少なくとも1つの強磁性素子の非等方性(アニソトロピー)の程度を求める工程と、前記非等方性(アニソトロピー)の程度から、前記物理量の対応する値を求める工程と、を有する。
【0024】
上記検知方法は前述の任意の装置に適用することができる。この方法において、表面弾性波発生手段は磁気素子を判定する他の手段、即ち、近接した電流導体により発生する磁界などのもっと多くの従来の仕方、又は、熱的に、又はヒータやレーザパルス、又は素子を流れる電流により発生された回転トルク(角運動量)による磁気変化等、と組み合わせることができる。更に、前記物理量は、電磁界、温度、圧力、密度、または応力(歪)、その他の物理特性であってもよい。前記少なくとも1つの強磁性素子の磁気抵抗の変化は、前記強磁性素子の磁化または磁化方向により引き起こされてもよい。
【0025】
また、本発明は磁気画像を形成する方法に関し、複数の配列された強磁性素子をして、その画像が形成されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記複数の配列された強磁性素子と相互作用させる工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を、前記複数の強磁性素子の好ましくは各々に対して動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記複数の強磁性素子の対応する物理量の値を求める工程と、を有する方法であってもよい。
【0026】
前記複数の強磁性素子の物理量は前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記複数の配列された強磁性素子をして環境と相互作用することを可能とすること及び前記表面弾性波を発生することは、全ての強磁性素子に対して同時に並行して行われ、前記変化を動的に測定すること及び対応する値を求めることは、各強磁性素子単位に行われてもよい。該方法は前述のカメラに適用される。
【0027】
また、本発明は、例えば、前述のような装置から読み出し値を読み出す方法に関し、前記少なくとも1つの強磁性素子における磁化の歳差運動が達成されるとともに、前記少なくとも1つの強磁性素子の対応する磁化状態は転換されないように、表面弾性波を発生する工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記読み出し値を求める工程と、を有する方法であってもよい。
【0028】
前記強磁性素子により作用される特性パラメータは、前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記特性パラメータの変化から前記読み出し値を求めることは、前記表面弾性波発生手段に供給される入力信号と前記特性パラメータの動的測定から得られる出力信号との位相差を求め、前記位相差から読み出し値を求めてもよい。
【0029】
前記対応する磁化状態は、前記少なくとも1つの強磁性素子の磁化に対応する状態である。該方法は前述の任意の装置に適用可能である。この方法において、前記読み出し値は異なる特定の値の数値のみに相当する。相違する値の個数は2つであり、その値は’1’と’0’で表すことができる。
【0030】
また、本発明は、少なくとも1つの強磁性素子を転換する方法に関し、表面弾性波を発生することで、前記強磁性素子における磁化の歳差運動を達成するとともに、前記強磁性素子の対応する磁化状態を方位決定する工程を有する方法であってもよい。ここで、対応する磁化状態は、前記強磁性素子における磁化に対応する状態である。
【0031】
前記強磁性素子の磁化状態を方位決定することは、強磁性素子独特の付加的磁界を発生することにより行われてもよい。この付加的磁界は、準静的、パルス状であり、又は強磁性共振周波数νFMR、又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と等しい周波数であってもよい。該付加的磁界は、磁気素子により検知された実効磁界を変える任意の手段により供給してもよい。表面弾性波(SAW)の磁界と付加的磁界は、また、ある時間または位相同期の間においてのみ、切り換え変換が初期化されるように同調してもよい。磁気要素の配列がアドレスされる必要がある場合は、表面弾性波SAW発生手段と付加的磁界の両者の振幅及び同期を用いて、前記配列から読み出し及び書き込み用にただ1つ磁気素子の選択を行ってもよい。
【0032】
前記表面弾性波はレイリー波であり、前記強磁性素子の磁化容易軸と有効磁界との間の角度は、該レイリー波の第1の半周期中において、0°とは異なり、好ましくは、45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である。
【0033】
前記表面弾性波はシャーウェーブ(S波)であり、前記強磁性素子の磁化容易軸の方向と前記装置により発生された前記有効磁界の方向との間のなす角度は、好ましくは、45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である。
【0034】
また、本発明は、少なくとも1つの強磁性素子の読み出しと書き込みを組み合わせた方法であってもよい。その場合、前記装置は2つの表面弾性波発生手段を有し、前述の任意の方法による転換のために第1の表面弾性波発生手段を用い、前述の任意の方法による検知又は読み出しのために第2の表面弾性波発生手段を用いる。
【0035】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数の整数倍と等しい周波数において付加的な磁界を供給してもよい。前記表面弾性波は、前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数の整数倍に実質的に等しい周波数を有してもよい。前記整数倍は例えば2などの偶数倍であってもよい。
【0036】
また、本発明は磁気共振器に関するもので、前述の装置と、磁性材料で作成され、キャンチレバー型構造で保持され、前記装置の強磁性素子の近傍に設けられた先端部を備えた磁気共振器であってもよい。この場合、該先端部は有効磁界のGHz周波数振動を検知し、対応する信号は出力される。
【0037】
また、本発明は、強磁性材料又は圧電レイヤーの上部に積層された強磁性マルチレイヤーで作成された遠距離通信用の発振器、共振器又はフィルタに関するもので、強磁性共振特性(吸収周波数または吸収ピークの幅)は、前述の装置に係る表面弾性波(SAW)により変更される構成としてもよい。
【0038】
また、本発明は前述の装置を磁気論理用に使用する方法に関する。表面弾性波を適用することは前記磁気論理の駆動装置であってもよく、その理由は、前記磁気論理の駆動装置は磁気データの搬送用のスレッショールドエネルギーを低減できるからである。
【0039】
また、本発明は表面弾性波の使用周波数の能動的同調方法に関し、表面弾性波発生手段により発生された表面弾性波の吸収を強磁性素子でモニターする工程と、前記吸収特性から、前記表面弾性波の使用周波数と前記強磁性素子の強磁性共振周波数との差を求める工程と、前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させる工程と、を有する方法であってもよい。
【0040】
前記方法は、表面弾性波検知手段を備えたシステムにおいて実効され、前述の装置のいずれかを備えたシステムにおいて実効される。更に、前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させることは、前記使用周波数を前記強磁性共振周波数と僅かに異なる周波数に同調させることであってもよい。更に、前記周波数は、前記強磁性素子の強磁性共振周波数での表面弾性波の吸収の1%から99%、好ましくは50%から90%、更に好ましくは70%から90%の範囲内で、前記強磁性素子による前記表面弾性波の吸収に対応してもよい。
【0041】
また、本発明は発振器に関し、該発振器は、例えば、遠距離通信用の共振器又はフィルタであってもよく、該発振器は、強磁性材料又は圧電レイヤーの上部に積層された強磁性マルチレイヤーで形成され、表面弾性波を発生して前記強磁性材料に作用し、該作用は強磁性共振特性を変えることを含む。
【0042】
本発明では、強磁性共振周波数は0.5GHzよりも大きく、好ましくは1GHzよりも大きい。本発明の種々の実施形態で述べられる角度は絶対角度である。また、磁気抵抗の動的な測定について述べる場合は、これは磁気抵抗のある時間中の連続した測定、又は規則的な時刻ごとの測定を意味している。
【0043】
尚、本適用例では表面弾性手段について述べているが、パルスレーザもまた、搬送レイヤーに応力又は歪を誘起することで磁気歪による実効的な磁界を生成する表面弾性波(SAW)の発生をもたらすために使用されること以外に、材料の熱膨張用としても利用可能である。
【0044】
また、本実施の形態では、1次元及び2次元センサ、カメラ及び装置について述べているが、本発明は、例えば、2次元構造の異なる複数の装置を互いに上部に配置すること等によりまた立体的なセンサを構成するように使用することもできる。
【0045】
特に好ましい本発明の態様は独立および従属の請求項で記載されている。従属項で記載した特徴は、独立項の特徴、及び他の従属項の特徴と適宜組み合わせることができ、請求項に明記されたものだけに限定すべきではない。
【0046】
本発明の実施形態の利点は、装置を動作させるために、外部誘起磁界または入射磁気波などの外部磁化の印加を必要としないことである。また、本発明の実施形態の利点は、システムが磁気素子の磁化に作用することを可能にすることである。
【0047】
特定の実施形態で記載された特徴は、それら特定の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて本発明の他の実施形態にも適用または導入することができる。同様に、特定の独立項の従属項の特徴もまた他の独立項と組み合わせることができる。この分野における方法及び装置の一定の改善、変更及び展開があるが、本発明の概念は、実質的に新規な改善を示すとともに、従来の方式とは相違した概念を含み、この特質の更に効率的で安定した信頼性の高い方法及び装置を提供するものである。本発明の開示により、磁気素子を高制御性で超高速判定するための改善された方法及び装置を設計することが可能となる。
【0048】
本発明のこれら及びその他の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を例示的に示す添付の図面を参照した以下の詳細な説明により明らかとなるであろう。ここでの記載は単に例示のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施の形態の好ましい特徴について添付の図面を参照して以下に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定するものではなく、請求項によってのみ限定される。添付の全ての図面において、同様の構成要素に対しては同じ参照番号を付している。図面は概略的であり、本発明を限定するものではない。素子の構成は図示において誇張したものがあり、特定のサイズを示すものではない。以下の説明及び請求項で記載した用語「有する(又は、で構成される)」(comprising)は、他の素子または工程を除外するものではない。
【0050】
また、明細書及び請求の範囲で記載した「第1」、「第2」、「第3」等の用語は同様の要素を区別するために使用したもので、必ずしも連続した順番または年代順を記載するものではない。上記用語は状況により適宜入れ替え可能であり、以下に述べる本発明の実施形態はここで記載又は図示した以外の順序でも動作可能であることを理解すべきである。
【0051】
更に、明細書及び請求の範囲で記載した「上部」、「下部」、「上部に」、「下部に」等の用語は説明のために使用したものであり、必ずしも相対的な位置関係を記載したものではない。上記用語は状況により適宜入れ替え可能であり、ここで述べる本発明の実施形態はここで記載又は図示した以外の位置関係でも動作可能であることを理解すべきである。
【0052】
本発明の説明用として記載した表現である「AはBと接触」は、AとBの空間的または構造上の構成について述べたもので、AとB間に表面弾性波及び/又は応力波の伝播が可能であることを示している。
【0053】
第1の実施形態では、強磁性要素の磁化状態を、切り換え、決定、操作、及び/又は変更するための装置100について説明する。装置100は、表面弾性波(SAW)発生手段102と、発生された応力及び/又は応力波の形態でSAWが伝播することを可能にするトランスポートレイヤー104と、磁気セル又は単にセルとも呼ばれる磁気素子106とを備え、該磁気素子106の磁気状態が応力及び/又は応力波を用いて切り換え、決定又は判定される。厳密には、トランスポートレイヤー104はまたSAW発生手段102の一部でもある。表面弾性波はSAW発生手段102で発生され、その伝送に必要な媒体材料がトランスポートレイヤー104である。従って、SAW発生手段102とトランスポートレイヤー104は同じ部類に入り不可分である。ただし、説明を簡単にするために、以下の説明では、SAW発生手段102とトランスポートレイヤー104は立て分けて説明している。
【0054】
本発明によれば、磁気素子は典型的には強磁性共振周波数を有する強磁性材料で構成される。装置100は他の周波数領域でも動作することができるが、FMR(強磁性共振)に典型的な高周波(RF)は高速度の切り換えや検知等を可能とするので、関心がもたれている。SAW発生手段102は例えばインターデジタル変換器(IDT)であってもよく、これはトランスポートレイヤー104上に物理的に接触して配置される。ただし、本発明はこれに限定するものではない。また、SAW発生手段102は、例えば、トランスポートレイヤー104上に配置されたレーザであってもよく、この場合、SAWはレーザパルスにより発生される。
【0055】
IDTはRF(高周波)フィルタとして使用されることで知られている。それらは開発段階を超えて、今や広く製品として使用されている。それらは、数GHzの周波数領域においてさえ、市販されており、当業者に公知の製品である。原理的には、全ての種類の表面弾性波を使用することができるが、SAWの選択は、主として、レイリー波とシャー波、即ち、表面に直交するSAWと面内波のSAWとの区別に限定される。トランスポートレイヤー104は典型的には圧電材料を有してもよく、又は、圧電材料で形成されることが好ましいが、SAWが伝播可能な他の任意の材料であってもよく、ここでSAW波は応力波の特性を有する。位置特定される磁気素子106はトランスポートレイヤー104の上部に物理的に接触して配置される。
【0056】
本実施形態では、磁気素子106はSAW発生手段102とは接触していない、即ち、分離されている。磁気素子106は磁気要素の一部であってもよい。本発明の実施形態では、例えば、トンネル接合、スピンバルブ、信号レイヤー等の広範な磁気要素が使用可能である。使用可能な磁気要素の典型例がMRAM装置である。本発明による装置100において使用される磁気素子106と可能な磁気要素の選択は、適用分野によって決まる。
【0057】
上記装置100を使用するため、即ち、磁気素子の状態を切り換え、判定又は決定するために以下の方法が用いられる。SAW発生手段102は周波数がνSAWのSAWを発生する。このSAWは、SAW発生手段102と物理的に接触しているトランスポートレイヤー104内に伝播する。SAWはトランスポートレイヤー104の各スポットにおいて時間依存性の歪を発生する。磁気素子106(即ち、セル)はトランスポートレイヤー104と物理的に接触して配置されているので、SAWにより誘発された応力波は磁気素子106内にも伝播する。応力波はそれに付随して磁気素子106内に有効磁界を発生し、この磁界がセルの磁化状態と相互作用することができる。
【0058】
磁気素子106の磁化状態との相互作用は、例えば、磁化状態の判定、決定、操作又は変更を意味するものである。磁気素子106はSAWを効果的に吸収できること、即ち、SAWの周波数が磁気素子106のFMR周波数に相当に近い場合、磁気素子106は対応する応力波により効果的に作用されることが判明した。このエネルギー欠損は、レイヤーの一部である磁気素子106において、磁気状態の変更をもたらすエネルギーに変換される。即ち、SAW発生手段102で発生されたSAWは、磁気素子106がその磁化状態を変化させるのに必要な歪を発生する。
【0059】
そこで、高周波SAW装置を用いて、磁気レイヤーをFMR周波数で動作させるのに必要な刺激を与えることができ、その特性、ここでは特に磁化方向であるが、切り換え動作、保持力、偏倚、透過、磁化率、減衰又は吸収等の動作特性、も変更することができる。後者の動作は吸収ピークの幅を目視で確認することで成される。これらの特性は全て磁化、即ち、磁気素子の磁化状態に対応するものである。このように特性を変更することにより、典型的には1GHz以上の非常に高い周波数で磁気素子の磁化状態を切り換え、判定又は決定することが可能となる。
【0060】
従って、本発明は、外部磁界を使用することなく、磁気弾性エネルギー変換を用いて強磁性素子106の磁化状態を変える新規な方法を開示するもので、換言すれば、この方法は磁気素子106と圧電レイヤー内のSAWとの間の磁気弾性エネルギー変換を利用して、磁気素子106の磁化状態と相互作用を行うものである。
【0061】
本発明の装置100の構成は異なってもよい。これらの変形は、SAWの種類、即ち、レイリー波かシャー波の選択、圧電材料を設ける方法、及び選択された磁気素子106等により決められる。特定の選択を組み合わせたいくつかの好ましい構成例を図1〜4に示す。ただし、本発明は図示の構成に限定されるものではなく、請求項の記載によってのみ限定されるものである。
【0062】
図1〜図3では、圧電膜であるトランスポートレイヤー104は基板108上に形成される。この基板108は、ガラス材や任意の種類のプラスチック材、又はシリコンやゲルマニウムやガリウム砒素(GaAs)等の半導体基板など任意の基板が可能である。圧電膜は、窒化ガリウム(GaN)や石英など、膜内に応力及び/又は歪の形成を伴う応力波に対応するSAWを形成することが可能である任意の圧電材料で作成される。また、図1に示す構成では、SAW発生手段102と磁気素子106は圧電膜104の異なる部分を覆っており、SAW発生手段102と磁気素子106は少なくとも部分的には同一面に配置されている。原理的には、SAW発生手段102単独で、圧電膜内とともに磁気素子106内にその磁気状態に作用するのに必要な歪を発生するのに充分である。特に上記の構成では、少なくとも2個のSAW発生手段102が設けられ、磁気素子106の両側に、必ずしも必要というわけではないが、好ましくは対称位置に配置される。
【0063】
図2では、磁気素子106はパターン形成されるとともに、圧電膜であるトランスポートレイヤー104と基板108との間に埋設されるが、SAW発生手段102は依然として圧電膜であるトランスポートレイヤー104上に配置された状態である。
【0064】
図3では、パターン化されていない磁気素子106、即ち、完全な層が基板108と圧電膜であるトランスポートレイヤー104との間に全面的に形成され、SAW発生手段102は依然として圧電膜であるトランスポートレイヤー104上に配置された状態である。
【0065】
図4では別の構成例が示され、圧電材料が基板110として形成されている。この基板110は、窒化ガリウム(GaN)や石英など、膜内に応力及び/又は歪の形成を伴う応力波に対応するSAWを形成することが可能である任意の圧電材料で構成される。その後、SAW発生手段102と磁気素子106が、パターン化された仕方で圧電基板110の上部に配置又は堆積される。図1〜図4に示すように、SAW発生手段102と磁気素子106間は物理的に直接接触していないことが好都合である。後者の構成ではIDT間の短絡を防止することができる。SAWを発生させるのに使用される電場は異なる変換器間に印加されるので、フィンガー(触針)間の短絡は解消される。また、ある実施の形態では、磁気素子はIDTと同一の電場の作用下に位置していないことが好ましい。これにより個々の判定が更に簡単になる。
【0066】
別の観点から、このことは、SAW及びそれに付随する応力波が磁気素子に到達するための搬送手段またはレイヤーを有する必要があることが分かる。その理由は、SAW発生手段は、IDTの場合のように、磁気素子内に直接SAWを発生することが殆どできないためである。
【0067】
本発明の第2の実施形態は、強磁性要素の磁化状態を切り換え、決定、操作、及び/又は変更するための装置100に関し、該装置は前述の第1の実施形態と同じ構成要素及び機能を有するが、磁気素子106はIDT等のSAW発生手段102と直接接触しているか、又はIDT自体が関心の磁気素子106である。SAW発生手段102と直接接触している磁気素子106は、例えば、SAW発生手段102の上部に直接形成してもよい。このような構成を図5〜図8に示す。
【0068】
図5は磁気素子106がSAW発生手段102の上部に形成された構成を示し、図6は注目の磁気素子106がSAW発生手段102自体である場合を示している。両構成ともトランスポートレイヤー104と基板108を有している。図7と図8は同様の構成を示すもので、ここでは基板110は圧電材料で構成され、トランスポートレイヤー104を設ける必要はなくなっている。これらの構成では、SAW発生手段102は、SAW発生手段102の一部か又は基板110の一部であるトランスポートレイヤー内にSAW及びそれに伴う応力波を発生する。この応力波はSAW発生手段102により検知され、その効果はIDTに対して実験的に証明されている。SAW発生手段102は、このような応力の作用下において変形し、SAW発生手段102と直接接触している磁気素子内に応力を発生する。注目の磁気レイヤーが、例えば、それ自体がIDT等のSAW発生手段102である場合は、応力は直接に検知される。
【0069】
シュミレーションによる実験データでは、歪はIDT等のSAW発生手段102内に発生されることを示している。対応するシュミレーション結果を図9に示す。図9のAは、2本のフィンガーを2組有する構成と、それらフィンガーによってある瞬間に検知され、SAWの電場を発生するSAWの最大振幅で決定される電位を示す。図9のBとCは、Aで示す電位に対するフィンガーのそれぞれ長さ方向と幅方向における歪を示す。図9のDは、逆電位の幅方向における歪を示す。これらの図は、フィンガーがその上部のレイヤー内にSAWが発生する応力に対応する交互に変わる歪を受けることを示す。IDTの上部に磁気素子を直接配置することで、IDTに発生された歪は磁気素子と結合され、必要な刺激を与えている。図10は、磁気IDTに印加される電場の作用の磁気IDTにおける抵抗値の変化を示している。歪は磁石内で効果的に磁気特性と結合し(AMR効果)、注目の磁気素子としてIDTを使用することが可能であることを示している。
【0070】
本発明は異なった利点をもたらすものである。例えば、磁化の切り換えを行う大電流や基準セルを使用する必要がないことである。また、厳重な時間的調節の問題を低減し、読み出しと書き込みを同時に行うことを可能にしている。外部磁界も必要としない。更に、殆どの適用例では、正確な読み出し値は必要ではなく、位相のみでよい。
【0071】
本発明の第3の実施形態では、装置100は前述の実施形態の構成と同じ構成要素を有し、SAW発生手段102はシャー波のSAWを使用することができる。図11aに示すようなシャー波のSAWは、IDTなどのSAW発生手段102で発生され、平面(X−Y面)内にシヌソイド状の表面変形を形成し、SAWが通過するあらゆるスポットに剪断歪を発生する表面弾性波である。特定の時間及び場所における剪断歪の大きさはいくつかのパラメータに依存して決まり、それらの内最も重要なパラメータはSAW発生手段102に印加される電圧と該表面弾性波の位相である。従って、SAWの経路に形成されたレイヤーは、その経路の所定場所において、時間の経過に伴って大きさが変化する剪断歪を検知する。
【0072】
このレイヤーが強磁性レイヤーである場合は、剪断歪は図11bに示すような有効磁界をレイヤー内に発生する。磁気素子106は歪波を受けるトランスポートレイヤー又は歪波を受けるSAW発生手段102と物理的に直接接触してその上部に配置されているので、本発明の種々の実施形態の磁気素子106は歪波とそれに付随して誘起された有効磁界を受ける。具体的には、剪断歪は図11bに示すような圧縮及び引っ張り歪成分に分解される。これらの成分は、磁気素子106の磁化容易軸と平行な成分と、この成分と直交する成分とによって表すことができる。容易軸は磁性材料の好ましい磁化方向を規定する。従って、この容易軸に平行な歪成分と直角方向の歪成分とは区別される。この歪は磁気素子106内に付随の磁界を誘起する。
【0073】
典型的な材料特性は磁性材料106の磁気歪みの符号に依存し、即ち、SAWにより発生される歪みは、材料が負の磁気歪み係数を有する場合はx方向の磁界を発生し、材料が正の磁気歪み係数を有する場合はy方向の磁界を発生する。歪みの大きさは時間経過に依存することを考慮すると、有効磁界の大きさも時間的に変化する。これにより磁化と磁気特性全体に変化をもたらす。このSAWの励起が磁気材料106のFMR周波数又はその近傍で行われる場合は、SAWの吸収は高くなり、磁化は図11cに示すように同様の仕方で反応することができる。ここで、波の方向の場合と異なり、磁気歪みや容易軸方向のいずれにも仮定条件は成されていないことに留意すべきである。図11cの左側の図では、SAWは磁化に作用し始める状態である。SAWの動作開始時点では振幅は小さいので、磁化は有効磁界の方向に引き寄せられる。歪みが大きくなるにつれて磁化の回転が速くなり、図11cの中央の図に示すように、オーバーシュート(行き過ぎ)を発生する。次いで、歪みをゼロまで下げることにより、磁化が元の状態に戻り、その結果、図11cの右側の図に示すように、有効磁界の周囲を歳差運動し始める。
【0074】
磁化に対する剪断歪波の影響についての説明では、磁気素子106は無限に小さいものと見なしているが、これは理想的な場合である。実際的には、磁気素子106をSAWの波長λSAWに関して可能な限り小さくすることにより同様の動作が得られる。このような小さなサイズを選択することは、歪みが比較可能なように大きいか又は1セル内の全ての位置で基本的に同じであることを意味する。セルサイズが大きくなれば歪みを有するようになり、それに伴って1セル内の2点間で実質的に異なる有効磁界を誘起することになる。換言すれば、セルサイズが大きいほど、不均一な磁化分布を有することになり、その結果、SAWの波長λSAWの周期で磁化が回転することになる。SAWの波長λSAWの1/4より小さい素子サイズでは問題は起こらない。
【0075】
この励起の重要なパラメータは、図12に示すように、磁気レイヤー106の容易軸と有効磁界の方向とのなす角度θである。最大のレスポンス(応答性)は、モーメントが最大となる角度、即ち、θ=90°に対して得られる。θ=0°に対しては、磁化はすでに発生された有効磁界の方向に存在するので、作用は観測されない。負の磁気歪みの材料に対しては、これは、磁性材料をSAW方向と直角方向の容易軸を有するように配置すべきであることを意味する。正の磁気歪み材料では、容易軸がSAW方向と平行となる必要がある。一般に、負の磁気歪みの材料に対しては、容易軸はSAW方向と平行となるべきではなく、正の磁気歪み材料では、容易軸はSAW方向と直角方向となるべきではない。
【0076】
例えば、負の磁気歪みを有する磁性材料が使用される場合は、引っ張り応力は該応力の方向と垂直方向に有効磁界を形成し、圧縮応力は該応力の方向と平行方向に有効磁界を形成する。図11bでは、x方向の歪波はx方向に圧縮応力を発生し、引っ張り応力はy方向に発生することを示している。このことは、応力の両成分で形成された磁界がx方向に向いていることを意味する。有効磁界が磁化の方位の変化に作用する影響は、有効磁界の方向と磁化の方向とのなす角度に依存する。この場合、容易軸がy方向、即ち、x方向に直角方向であり、これは有効磁界の方向と一致する場合は、作用は最大となる。従って、磁化の方向は歪波の方向と直角方向となるべきである。正の磁気歪み材料に対しては、磁化の方向は、同様の推論により、歪波と平行となるべきである。
【0077】
従って、シャー波のSAWを適用することにより、磁気レイヤー/要素106のFMR周波数を直接利用することが可能となり、その結果、磁気レイヤー/要素の特性を変化させる、即ち、切り換え作用、保持力、偏倚、感受性、RF周波数即ち1GHzより高周波で例えば減衰をもたらす吸収作用を行う。
【0078】
本発明の第4の実施形態では、装置100は前述の第1又は第2の実施形態の構成と同じ構成要素を有し、SAW発生手段102はレイリー波のSAWを使用するように構成されている。図13aに示すように、レイリー波のSAWは、IDTなどのSAW発生手段102で発生され、平面に垂直にシヌソイド状の表面変形を形成し、SAWが通過するあらゆるスポットに歪みを発生する表面弾性波である。特定の時間及び場所におけるレイリー歪みの大きさは、いくつかのパラメータに依存して決まり、それらの内で最も重要なパラメータはSAW発生手段102に印加される電圧と該表面弾性波の位相である。従って、SAWの経路に形成されたレイヤーは、その経路の所定場所において、符号とともに大きさが変化する歪みを検知する。
【0079】
このレイヤーが強磁性レイヤー106である場合は、歪は図13bに示すような有効磁界をレイヤー内に発生する。ある位置において強磁性材料を通過するレイリー波に対して、該波は最初(第1の半周期)に磁石内に引っ張り応力を発生し、次に、第2の半周期で圧縮応力を発生する。これにより、負の磁気歪み材料に対しては、最初にSAWと直角方向(y方向)に有効磁界を発生し、次いで、SAWと平行方向(x方向)に有効磁界を発生する。正の磁気歪み材料に対しては、有効磁界の方向はこれらと反対方向となる。
【0080】
このSAWの励起が磁気材料のFMR周波数で行われる場合は、SAWの吸収はもっと高くなり、磁化は図13cに示すように同様の仕方で反応することができる。ここでは、負の磁気歪み材料に対してSAWの第1の期間の場合、又は、正の磁気歪み材料に対して位相が180°ずれたSAWの場合を示す。図13cの左側の図では、SAWはその有効磁界により、y方向の磁化に作用する。これにより磁化は有効磁界の回りを回転し、その結果、磁化を切り換えることになる。材料の磁化が切り換えられると、SAWは容易軸の方向(x方向)に磁界を印加し、図13cの右側の図に示すように、磁化はその切り替わった平衡状態の周囲で弛緩する。
【0081】
このように切り換えることの利点は、電流を流す導体により磁界により引き起こされる切り換えと比べて、タイミング的に厳重でなければならない要件を低減できることである。例えば、SAWの周波数がFMR周波数にあまり近い値でない場合は、磁化は正確には切り換えられず、第2の周期の開始時点で切り換えスレッショールドを通過してしまうか、又は、磁化は、磁化の初期値に戻らない値だけ平衡位置をオーバーシュートしてしまうであろう。ここでは、x方向の磁界が、磁化を切り換え位置に戻すのに重要な役割を担っている。有効磁化は磁化をx方向に引き寄せ、これにより切り換え動作を安定させるとともに、改良減衰機構によりリンギングを低減させている。リンギングにより、磁化が、典型的には容易軸方向である平衡状態の方向の回りを回転することを意味する。
【0082】
磁化の減衰、即ち、その平衡状態のリラクセーション(緩和)は、平衡状態の方向に有効磁界を印加することにより促進される。ここでは、磁化に作用するレイリー歪波の効果は、素子が微小である場合について説明するものである。実際的には、素子を波長λSAWに関して可能な限り小さくすることで、同様の動作が得られる。このようにサイズを選定することは、SAW又は歪波が全ての位置で比較的大きいことを意味している。サイズが大きくなるにつれて不均一な磁化分布となり、磁化はSAWの周期で説明したような周期毎に回転する。SAWの周期の1/4より小さいサイズの素子に対しては問題は起こらない。
【0083】
このアクチベーション(活性化又は励起)の重要なパラメータは、磁気レイヤー106の容易軸と歪波の位相とのなす角度である。負の磁気歪みを有する磁性材料に対しては、このことは正弦波の第1の周期を用いて容易軸を磁性材料と平行に配置することを意味する。第1の周期を用いるときは、正の磁気歪み材料はSAWと垂直な容易軸が必要となる。これは、シャー波について説明したものと同じ原理で得られる。このことは、例えば、負の磁気歪み材料に対しては、最適な磁気モーメントを得るためには、容易軸は有効磁界と垂直方向でなければならないという事実に基づいている。波の第1の半周期中では、有効磁界はSAW波の方向と垂直な方向を向いているので、後者はx方向であり、従って、容易軸はSAWの方向と平行となる必要がある。このことは図12から明らかである。正の磁気歪み材料に対しては、第1の半周期中では、有効磁界はx方向を向いており、従って、容易軸はy方向に向いている。
【0084】
従って、レイリー波のSAWを使用することで磁気レイヤー/要素106のFMR周波数を直接得ることができ、従って、その特性、即ち、切り換え動作、保持力、偏倚、感受性、透過、等の動作特性を高周波で変更することができる。
【0085】
例えば、SAW発生手段102の位置を、例えば、それらの配置をx方向ではなくy方向とする等のように変えることで、他の構成も可能であることは、当業者に明らかであろう。その場合、磁気素子106の配置、より具体的には、それらの容易軸も必要に応じて変更される。
【0086】
また別の実施形態では、面内磁気センサ200が1GHzよりも高い周波数でも作動していることが記載される。磁気センサ200は数個の異なるパラメータを検知するために使用される。ここで、磁界センサと同様に応力センサを使用することは、同じ形態として取り扱われる。その理由は、磁気弾性の相互作用により、それらは一般に相互変換されるからである。主な相違点は応力の検知がないことである。磁化は一つの特定方向に向いているが、応力は両検知方向、例えば、x方向の+及び−方向に働く。
【0087】
例えば、スピンバルブやトンネル接合またはAMRセンサ等の磁気センサ200に作用するSAWの効果は、その一定の磁化が得られることである。例えばスピンバルブであるセンサ200は、検知レイヤー202と、バリアレイヤー204と、第2レイヤー206と偏倚レイヤー208とを備えてもよい。単一のセンサ素子200に対する不安は、自由レイヤーがその磁化を、有効磁界(対応する応力)の角度とその大きさで決まる2つの状態の間で回転させることである。これを図14aに示している。これは、図14bに示すような磁気抵抗効果(MR効果)により、抵抗値の変化に変換する。抵抗値の変化を観測することにより、センサについての情報が得られる。従って、センサ200を変化する環境に配置する場合、SAWを励起することに対する反応を含み、その特性が変化する。
【0088】
図14cには、この変化反応を示している。図から分かるように、2つの主要な特性の変化、即ち、反応の勾配とその大きさ、及び初期地点の変化がある。反応の傾きは平衡状態の方向での非等方性の量により決まる。このことは、要素が平衡状態で大きな非等方性を有すると、それをSAWで励起することが困難となることを意味している。これは傾きを小さくすることに対応し、従って、SAWに対するセンサ200の反応を低下させることになる。第2の変化は平衡状態の方向に関するものである。この方向がセンサ200の容易軸に一致していない場合は、センサ200はその平行な検知レイヤー固定型のレイヤー位置には戻らない。これら2つのパラメータは環境の変化に対する測定方法である。
【0089】
換言すれば、磁気要素であるスピンバルブやトンネル接合はその磁気状態に対して一定の特定の小さな角度的摂動となる。外部磁界や応力等により発生される非等方性の全ての変化は、要素の反応の変化をもたらす。この反応を読み取ることで、システムにおける非等方性の量とその方向に関する結論が引き出される。これら2つの特性は環境の変化に対する測定方法を付与するものである。この原理は超高速の磁界センサや応力センサ等に利用される。
【0090】
前述の説明は、センサ200の大きさが、磁化がSAWの励起に空間的に均一な仕方で応答するのに充分に小さいことを意味する。好ましくは、SAWの波長の4分の1までの大きさのものが使用される。より大きなセンサが必要な場合は、パターン化され、直列に接続されたセンサが使用される。このようなセンサ300を図15aに示す。これにより、大型センサ内で発生されたスピン波が平均がゼロのMR反応を生成するといった、単体の大きな要素を使用する場合に起こるであろう課題を避けることができる。又別の実施形態では、第2の実施形態と同じく、SAW発生手段と直接接触したセンサを使用することもできる。
【0091】
本発明によるパターン化された要素を使用する利点は、ミクロン解像度の磁気カメラを構成できることである。複合センサを別々に読み出すとにより、磁気環境の2次元画像を生成することができる。読み出しは1GHzより高い周波数で行われるので、一度の読み出しで毎秒109個の素子が読み出される。これにより、高速で高解像度のセンサが作成される。
【0092】
一続きのセンサで構成される巨大センサとカメラの両方で起こり得る問題点は、FMRの周波数が環境特性の変更と共にずれることである。これを避けるために、フィードバック方式を設けることでこの問題を解決している。また、周波数のズレはカメラや巨大センサ内に存在する全体的な有効磁界の大きさと方向を測定する方法となり得る。これを別のセンサで測定された小磁界の反応に追加することで、広範なセンサ動作が確保される。
【0093】
本発明はまた交換された偏倚スピンバルブ又はトンネル接合の構造の読み出し方式に関するものである。交換偏倚スピンバルブ又はトンネル接合の構造の読み出し方式は、磁性材料に及ぼす表面弾性波の作用に直接基づいている。可能な構成が図15aの装置300内に示されている。ここでは、いくつかの要素200が、SAWを発生する一組のIDT等のSAW発生手段102の間に配置されている。これらの要素200の密度は、強磁性材料に与えるSAWの作用について記載で成される考慮によって決まる。従って、素子はSAWの波長の4分の1のピッチで容易に配置することができる。このことは、換言すれば、磁気素子のFMR周波数で示される。いくつかの典型的な材料の典型的な値は約2ミクロンである。
【0094】
磁気要素200に与えるSAWの作用を図15bに示す。この図では、要素を構成する複数の複合レイヤーが図示されている。異なる磁気素子に使用される材料は異なったものであり、例えば、トンネル接合に対してはバリヤは最も一般的には酸化物であるが、スピンバルブに対しては、これは非磁性金属である。SAWは磁化の摂動を発生し、これは強磁性材料が異なることにより違ってくる。応力検知材料の選定、即ち、検知レイヤー202として非等方性の値に対する磁気歪みの比率が高い材料を選択するとともに、第2のレイヤー206として非等方性の値に対する磁気歪みの比率が低い材料、即ち、歪み非感受性材料を選択することで、1つのレイヤーにおいてのみ磁化が作用を受けることができる。
【0095】
対応する要素の一例を図15bに示しており、構造体の底部レイヤーは検知レイヤー202であり、第2のレイヤー206は応力非感受性レイヤーである。これらの材料特性もまた本発明のセンサの実施形態に有効である。バリヤレイヤー204もまた設けられている。反強磁性レイヤーが要素208を偏倚するためにスタック内に設けられる。このレイヤーもまた応力非感受性である。アクチベーションはシャー波とレイリー波の両方によって成すことができる。ここで、要素を切り換えてその状態を破壊してしまわないように注意しなければならない。
【0096】
摂動を知覚する方法を図15cに示す。図では磁気抵抗の測定法が示されている。これは抵抗の変化を印加応力の関数で示している。この応力はSAWにより発生される。要素に対して2つの可能な状態が存在する。下部の上昇線は「1」の状態に属してレイヤーの平行磁化に対応し、上部の下降線は「0」の状態に属してレイヤーの非平行構成に対応する。図15cの左側の図示の波形のSAWは、要素を通過する場合は、2つの可能性がある。スピンバルブが「1」の状態の場合は、有効磁界はダークグレイのマーカで示すような抵抗値の変化をもたらす。これは図15cの中央に示すような抵抗値の変化をもたらす。「0」の状態は、図15cの右側に示すように、活性化信号と逆位相の抵抗値の変化をもたらす。入力信号と出力信号の位相を比較することで、抵抗の絶対値の測定や出力を基準セルと比較する必要なしに、読み出しを行うことができる。入力信号の位相は演算により容易に求めることができる。
【0097】
本発明はまた磁気要素を切り換える方式又は方法に関するものである。これは磁性材料に与えるSAWの作用から直接もたらされる。該方法は第1乃至第3の実施形態で説明した装置に基づくものである。僅かな相違点はシャー波かレイリー波かの選択によるものである。
【0098】
シャー波を使用する場合は、該シャー波は磁化にインパルスを与えることができ、磁化の方向と有効磁界の成す角度が90°のときに運動量は最大になる。SAWを付与すると磁化に摂動を与えることになる。これの大きさはSAW形成手段に印加される電圧によって決まる。あるスレッショールド電圧より高くなるとき、即ち、SAWのある振幅値を超えると、磁化の摂動(プレセッション)が更に充分に回転して、磁化を非平行な磁化の方向に更に近づけるであろう。このことは、励起SAWがOFFとなると、磁化は切り換え平衡状態に向けて緩和されることを意味する。この切り換え方法を用いることで、タイミングが重要なファクタとなる。SAWのONとOFFの切り換え(即ち、その大きさの増減)は、切り換えスレッショールドに到達しなかったり、切り換え位置を過ぎてしまわないように、正確な正しい設定時間に行わねばならない。
【0099】
レイリー波を使用する場合もまた、インパルスが付与される。インパルスは反応として2個の直交する有効磁界を有する。充分な大きさのSAWを付与することで切り換えが発生し、これにより第1の半周期で磁化を切り換え位置に摂動(プレセッション)し、その結果、磁化を切り換え位置の方向に引き出す。この場合は、SAWの第2の全半周期は基準の切り換えを満足しているので、タイミングはあまり問題とはならない。このことは、切り換えのためには、レイリー波構成は最も有効であり、実現し易いことを意味する。
【0100】
上記説明は単一の素子に関する記載である。磁気要素200の配列はアドレス設定される必要がある場合、特定の素子を表す追加のパラメータを含まねばならない。従って、図16に示すように、読み出し接触部210が使用できる。図16に示すように、スピンバルブなどの素子を通過する電流を流すことで磁界を発生し、これは容易軸方向の非等方性を低減することにより、切り換えを支援することができる。そこで、全ての素子を同時に切り換えることを避けるために、SAWの大きさは安全な距離にあるように、即ち、意図しない切り換えを避けるために、そのスレッショールド以下に選択される。電流により発生された磁界は、このスレッショールドをSAWの振幅以下に低減して、選択された素子を切り換える。この処理方法の素子の特定以外に、タイミングの問題が別に解決される。計時されねばならない(SAWの性質とその単一の応答のために困難であり得るもの)はSAWではなく、計時されねばならないのは電流の選択である。これはシャー波にとって特に重要なことである。
【0101】
この方式による他の利点は、いくつかの異なった動作を組み合わせることができることである。使用されるSAWは読み出し動作及び書き込み動作に必要な摂動(動揺)を引き起こす。読み出し/書き込み電流の大きさのみが読み出しか又は書き込みのどちらを選択するかを決定している。更に、異なる書き込み動作も共に行うことができる。このように、磁気レイヤー及び要素の切り換え方式は、SAWによるアクチベーション(励起又は活性化)を示すものである。FMR周波数で、磁気レイヤー/要素は、磁化を切り換えるのに充分大きな励起が付与される。更に、レイリー波では直交する有効磁界を発生するので、付随の切り換え動作のオーバーシュートも防止される。MRAM型方式におけるビット選択性は非切換えSAWを使用するとともに、小磁界を部分的に印加することにより得ることができる。これは処理対象の構造に電流を通すことにより実現される。同じ時間スロットで複数の素子を読み出すことは、いくらかの処理論理を必要とする。
【0102】
更に別の実施形態400では、レイリーSAWとシャーSAWの両方が同一面上で使用される。これは、レイリーSAWとシャーSAWの例えばIDTで構成されるSAW発生手段102と402が実質90°の角度を成すように設計することで可能となる。これを図17に示す。このように設計することで、レイリー波はシャー波と90°の方向に進行している。シャー波は、読み出し用アクチベーションに好適となる小さい方の摂動を発生する。次いで書き込みをレイリー波で行うことができる。ビット選択性は、磁界を発生するために素子に電流を流すことにより得られる。電流を流すことの代わりに、1つの磁気素子の有効磁界を変えて切り換えスレッショールド値を低減する他の任意の手段、即ち、近接した電流導体により発生した磁界、ヒータやレーザパルス又は素子を流れる電流により発生された熱的または回転トルク(角運動量)による磁気変化などの方法で置き換えることもできる。このように設計することで読み出しと書き込み動作を同時に行うことが可能となる。異なった書き込み動作も共に行うことができる。同一の時間スポットで複数の素子を読み出すことは、いくつかの処理論理を必要とする。同じ設計のIDTでは、シャー波の速度がレイリー波の速度よりも速いので、レイリー波に関して90°の角度及びそれより僅かに高い周波数で(吸収ピークの位置以外で)進行するシャー波を有することが可能である。従って、シャー波の周波数はより小さい磁気摂動を有する読み出し用の周波数であり、レイリー波の周波数は書き込み用の周波数とすることが可能である。
【0103】
他の実施形態では、RF機構の共振器500が提供される。RF機構の共振器500は、前述の実施形態で説明した強磁性要素の磁化状態を切り換え及び判定する装置に基づくものである。SAWの磁気レイヤー502に働く作用は、磁化の摂動を引き起こすことが述べられている。レイリー波及びシャー波に対して、この磁化の変化はまた面外の成分を有することである。プレセッション(摂動)は有効磁界と直角な面で発生する傾向があるので、大きな面外成分が発生され、これは薄膜磁気レイヤー502により発生された大きな減磁界により殆ど完全に逆向きとされる。磁界と力のこの相互作用により、図18aに示すように、磁気レイヤー502から立ち上がるネットの漂遊磁界を形成する。ここで、レイリー波は図18aに示すような磁化の回転を引き起こし、漂遊磁界の変化を引き起こす。シャー波に対しても、同じ理由付けが成される。
【0104】
漂遊磁界はそこでは共振器の起動用に使用される。図18bに示すように、例えばAFM状のチップ504等のチップが磁気レイヤー502に近接位置に設けられる。漂遊磁界をチップ504と相互作用させるために、チップ504は磁性体であるように選択されている。これはGHz適用のチップ504であり、典型的には磁性材料で被覆されている。これにより、チップ504は磁界を感知し、この磁界の周期性により、片持ち梁型の構造体506に装着されたチップ504は、SAWにより励起された磁気レイヤーにより吸引及び反発される。選択されたチップ504が正確な周波数の範囲、即ち、磁気レイヤー502のFMR周波数近傍で共振するように設計されている場合は、チップ504は共振状態となることができる。チップ504により発生されるこのような機構的共振はそのときシステムから出力され得る。換言すれば、磁界により働く磁力はチップ504で検知され、機構の共振に変換される。
【0105】
本発明のまた別の実施形態では、磁気論理における駆動力としてSAWを使用することが記載されている。磁気論理を用いることは、例えば、Cowburn等によるScience287,(2000)p1466に公知である。磁気論理素子は電子構成品と磁気的に等価である。磁気論理素子では、素子の状態は素子の変化により規定されるのではなく、素子の磁化により規定される。このためには一定の駆動磁界が存在することが必要である。電力消費が重大な役割を成すことをいくらか考慮することから、外部磁界を用いることは好ましい状態ではない。本発明による実施形態では、切り換えに必要な磁界は、SAWにより誘起された有効磁界、即ち、前述の実施形態での装置、を用いることにより生成される。
【0106】
図19では、可能な磁気論理回路の小部分を示している。これらの磁気ネットワークにおける磁気情報の伝達は、外部から印加される磁界を用いるのではなく、このようなSAWにより発生された磁気的切り換えを利用することにより助けとなり得る。これはまた、局所的な磁界を介するとともに、SAWを磁気論理アレーに通過又は非通過かにより磁界が切り替わるSAW吸収磁気レイヤーを使用することにより、特別な入力を追加する機会を与えるものである。磁気論理回路は磁気情報を搬送することにより機能する。これらの論理アレーは、情報が線上を上方又は下方に移動できるかについて決定する入力ビットを有する。移動のための駆動力が磁界である。このようにSAWを駆動力として使用することにより、外部磁界のない論理システムが形成される。
【0107】
この例では、これは入力ビットと「クロック」(SAW)間に設けられる論理ANDゲートである。出力は、図19に示すようにSAWがオンのときに交番出力を有するのみであり、入力ビットは図19に示すように線を通過する励起子(エクシトン)のリップリングを可能とするように設定される。入力の他の全ての設定では、可能なリップリングはないので、ANDゲートの特性を満足している。NOTゲートもまた、例えば、Cowburn等によるScience287,(2000)p1466に公知である。これらのゲートには交番磁界が必要である。SAWもまたこの利用に適している。一般的には、SAW−FMRの原理は外部磁界を取り替える全ての磁気論理に適用可能である。SAWの適用はまた動作周波数がGHzの領域内であることを意味している。これは現在の電子論理が磁気論理を可変代替物として動作する周波数領域である。
【0108】
本発明のまた別の実施形態では、切り換え動作の変化の能動的補正の方法を提供する。SAW−FMR装置はその理想的な動作設定である周波数で動作されなければならない。この周波数は、磁気素子で記載されたようなFMR周波数に等しいか又はそれに近い周波数である必要がある。使用の装置を同調することは、材料、素子の形状、素子の厚み等の選択により成され、これらのパラメータは全て設計パラメータであり、動作周波数を決定するために選択されねばならない。即ち、動作を可能とするために、SAW装置は磁気素子のFMR周波数近傍の共振可能な帯域幅を有する必要がある。
【0109】
切り換え動作の変化を補償するとともに、安定した状態で動作することを可能とするために、SAWはFMR周波数直下に固定されねばならない。この周波数で、SAWは図20に示すような半直線状の周波数/減衰応答グラフを示す。周波数の固定は×印で示されている。周波数の固定を最大ではない減衰位置で行うことで、SAWの減衰を観測することによりシステムの状態の変化を検知する手段を構成する。例えば減衰が高くなると、システムのFMR周波数が低下するといった状態に変化が起こり、このため周波数は低下することになる。減衰が少なくなると、FMR周波数は増加してSAW周波数は増加することになる。このような補償方法を使用することは、SAWの減衰にのみ基づいており、特性の変化を補正する容易な方法を提供する。例えば、熱的な効果及び環境からの磁界が説明される。この方法は本発明の種々の実施形態で記載された種々の方法に適用される。対応する装置もまた本実施形態により動作するように構成される。
【0110】
本発明のまた別の実施形態では、レイリーSAWにおけるいくつかの実験結果について述べる。この実施形態では、SAW発生手段はGaNレイヤー上に配置されたIDTである。装置は2.7GHzで作動する。図21は本実施形態による装置の変換特性(又は転移特性)を示す。IDTは4ミクロンの波長を有する。挿入損のピークはSAW装置の動作周波数である。2つの主なピークの1.46GHzと2.8GHzが観測され、前者は第1の高調波(倍振動)に相当する周波数であり、後者は第2の高調波(倍振動)に相当する周波数である。
【0111】
また、磁性材料及び磁性材料を有する要素の歪み依存性について調べられている。この歪みは3点の曲げ(図22a,22b)及び圧電レイヤー(図23)で発生される。磁化の回転が達成され、磁界と応力との相互変換の可能性を示している。図22a,22b及び図23に示す結果は低周波で得られた結果である。全ての結果は単体のレイヤー及び磁気要素で立証された。図22aは下記のレイヤーシーケンス:Ta/Ni80Fe20/IrMn/Co90Fe10/AlOx/Co90Fe10/Ni/Siを有するトンネル接合の容易軸方向での測定結果を示す。フリーレイヤー(略ゼロ磁界)から始まるヒステリシスループと固定レイヤーは分離されている。固定レイヤーの応力依存性は実際的にはゼロであるが、フリーレイヤーは単体のNiレイヤーと同様の応力反応がある。引っ張り応力は磁化を応力方向から離れるように回転させるが、圧縮応力は磁化を応力方向に引き出す傾向がある。
【0112】
図22bは、図の中央部(−4kA/mと4kA/mの間)に示すフリーレイヤーとこの領域外の部分である固定レイヤーの困難軸を示す。再度、固定レイヤーは応力の付加状態においてその磁気特性を保持するが、フリーレイヤーは上述のように反応する。固定レイヤーとの結合により、応力のない硬質と軟質のフリーレイヤーが存在することを知らねばならない。図23は、バイモルフ基板上に設けられたNi基材のトンネル接合での測定結果を示す。Niはフリーレイヤーの磁化を表すので、それの電圧感度を付与している。
【0113】
更に、低周波で実験が行われ、印加された磁界によるSAWの相依存性により明らかな、シャーSAWの吸収を示している(図24)。図24に示すように、シャー波の位相は印加磁界に依存している。変化量は4度までである。異なる複数の曲線は異なる偏倚磁界に対応する。磁界はホールプローブにより測定される。全ての測定ループは−100から100ガウスの間である。SAW動作では磁性材料のヒステリシスの存在に気づくべきである。これは歪みが相互作用することを意味する。全ての結果は単体のレイヤー及び磁気要素で証明された。
【0114】
本発明による、共振周波数での付加的磁界と共振周波数の2倍でのSAW磁界との結合の磁気素子に与える影響を調べるためのシュミレーションが行われた。これらのシュミレーションでは、SAWは、例えば、磁界で駆動された振動の振幅と減衰を増幅するなどの変化を行うことを示している。また、理論的には、SAW磁界は強磁性共振周波数の偶数倍に実質的に等しい周波数を有することができる。図25に示すように、SAW磁界の印加により、磁性材料の振動振幅が吸収ピークとして明らかなように大きくなることを示している。振動振幅は、磁界の振幅の種々の値でのプロット(凡例)により、また、SAWと磁界の位相関係は固定した状態で、SAWの振幅対磁界の振幅の比の関数として表されている。SAWの振幅がゼロでは、励起された共振は従来の強磁性共振ピークに等しい。更に高いSAWの値では、振動振幅はSAW磁界の印加により増大される。その増加量はSAWと磁界の間の位相関係の値を調整することで変えることができる。
【0115】
他の例示を図26に示しており、ギルバートダンピングパラメータ(Gilbert damping parameter)αで表される磁気運動の平衡状態に向かう減衰は、SAWの振幅により能動的に制御される。このようにSAWは強磁性材料の共振特性を変えることができ、従って、SAWはまた磁気素子の切り換え動作も変更することができる。このように、SAWは強磁性材料における減衰処理の制御に役立つものである。減衰パラメータに対する制御は、例えば、磁気素子の切り換え速度を最適化するのに重要である。あまりにも低すぎる減衰値に対しては、磁気素子は非常に高速で切り替わることができるが、リンギング(呼び出し)即ちプレセッション(摂動)を止めることはなく、一方、あまりにも高すぎる減衰値に対しては、磁気素子は非常に遅い速度で切り替わる。
【0116】
ここで記載した本発明の装置、システム及び方法に関する実施形態では、特定の構成及び材料について記載したが、これらは単に例示として説明したものであり、その種々の変形および追加の形態も請求範囲で規定する発明から外れることのない範囲で可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態において、SAW発生手段内に歪が発生した場合の装置に対するシュミレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態において、SAW発生手段内の抵抗値変化が印加電界の機能としての磁気IDTであるグラフ図である。
【図11a】シャー波のSAW発生手段を示す概略図である。
【図11b】本発明により生成された磁気素子内に誘起された応力及び・又は応力波と対応する有効磁界を示す概略図である。
【図11c】本発明に係る装置においてシャー波のSAWにより誘起された磁化の変化を示す概略図である。
【図12】本発明に係る装置においてSAWにより誘起された有効磁界と磁気素子の磁化を示す概略図である。
【図13a】レイリー波のSAWが誘起される本発明の装置を示す概略図である。
【図13b】本発明の装置において応力及び・又は歪と有効磁界成分を示す概略図である。
【図13c】本発明に係る装置においてレイリー波のSAWにより誘起された磁化の変化を示す概略図である。
【図14a】1GHzより高い周波数で使用される本発明による面内磁気センサを示す図である。
【図14b】本発明による装置における磁気素子の応力の関数としての磁気抵抗の変化を示すグラフ図である。
【図14c】本発明に係る装置において磁気素子内の非等方性の値の作用を示す概略図である。
【図15a】本発明の実施形態によるSAW発生手段間の磁気要素の密度を表す概略図である。
【図15b】本発明による例えばスピンバルブ等の磁気要素を示す概略図である。
【図15c】本発明によるスピンバルブの磁気要素の応力の関数としての磁気抵抗の変化を示すグラフ図である。
【図15d】レイヤーの例えば並列磁化の”1”の状態における磁気素子の応答変化(中央のグラフ)、レイヤーの非並列磁化の”0”の状態における磁気素子の応答変化(右側のグラフ)、及び別個の表面弾性波(左側のグラフ)を示す概略図である。
【図16】本発明に係るSAW励起により磁気レイヤー及び要素の切り換え方式を示す概略図である。
【図17】本発明に係る装置においてレイリー波のSAWとシャー波のSAWの両方が適用される場合を示す概略図である。
【図18a】本発明に係るSAW励起により磁気素子内に発生する磁界を示す概略図である。
【図18b】本発明に係る誘起された漂遊磁界を利用した高周波構成の共振器示す概略図である。
【図19】磁気論理用の駆動力としてSAWによる磁化を適用した場合を示す概略図である。
【図20】SAW用に使用可能な周波数の範囲を示すグラフ図である。
【図21】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図22a】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図22b】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図23】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図24】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図25】本発明による実施形態においてギルバート減衰パラメータαで表される平衡状態に向かう減衰がSAWの振幅及び位相により能動的に制御可能であることを示すグラフ図である。
【図26】本発明による実施形態においてギルバート減衰パラメータαで表される平衡状態に向かう減衰がSAWの振幅及び位相により能動的に制御可能であることを示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0118】
100 装置
102 表面弾性波発生手段
104 トランスポートレイヤー
106 強磁性素子
108 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気学の技術分野に関する。本発明は、例えば、磁気レイヤー、磁気セル及び磁気要素などの強磁性体の磁化状態を制御操作するための方法、技術及び対応する装置に関する。また、本発明は高周波共振器と磁気論理技術及び磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
現今では、例えば強磁性MRAMセルなどの強磁性要素における磁化状態は、近傍の電流により発生された磁界又は外部磁界を付加することにより、切り換え又は改変などの操作と、読み出し又は書き込みなどの操作が行われている。
【0003】
電流導体による磁界誘起切り換え技術は広く行き渡っており、現今では広範な系列の商品において利用されている。電流導体による磁界誘起切り換え技術については数種類のものが公知である。切り換え動作は一般に静電誘導法によって行われ、素子の切り換えに必要な高電流が供給され、必要な待ち時間の後で素子が切り換えが行われる。強磁性要素の磁化読み出し駆動又は磁化状態を切り換えるための別の方法は、強磁性共振(FMR)を利用している。強磁性共振は、徹底的に研究された公知の現象であり、強磁性要素の切り換え及び判定のためにそれを利用することで、通常の方法と比較して、速度及び電力の観点からいくつかの利点がある。「歳差切換(プリセッショナル・スイッチング)」として当業者に公知の機構は、磁気装置の強磁性共振特性に基づくものであり、他の従来の切換方式を用いた場合よりも少ない電力で、且つ、更に高い頻度で、磁化の反転を可能にする。
【0004】
しかしながら、上記の全ての技術はいくつかの異なる問題点、例えば、バイアス用及び磁気判定用の両方に電流線が必要であること、ビット選択方式は厳格なタイミングが要求されること、電力消費が比較的高くなるとともに、異なったレベルのメタライゼーション(金属被覆法)が必要である、といった問題点がある。更に、読み出し動作中において状態を比較するための基準セルが必要となることがあり、このことは有効セル密度を低下させる。典型的には、データ記憶ビット当たり1つの基準ビットが使用される。
【0005】
強磁性共振周波数で動作することは、制御能力と集積化を困難にしている。また、磁気特性を制御するために一定の外部磁界を必要とし、このことは、磁界の広がりと電力消費の理由により、低周波においてさえ磁気材料の使用を制限することになる。後者はいくつかの適用においてFMR(強磁性共振)を利用することを困難にしている。
【0006】
更に、磁気材料の磁気状態が、磁気材料内に応力及び・又は歪みが存在することにより改変されることは、磁気材料の公知の特徴である。応力による状態改変に好適な典型的材料はニッケル(Ni)であり、例えば、Sander D. により "Progress in Physics 62" (1999) の809頁に記載された報告書 "The correlation between mechanical stress and magnetic anisotropy in ultrathin films"(超薄膜における機構的歪みと磁気非等方性との相関)に記載されている。典型的には、歪みは圧電性材料に電圧を印加することにより発生し、歪みを利用することで、低周波において制御可能であることだけが知られている。このため、例えば強磁性メモリセルにおいて歪み誘起切換を利用することが制約される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、制御能力の高い、磁気素子の超高速判定のための新規な方法とそれに対応する装置を提供することである。
本発明の更なる目的は、1GHzより高い周波数で動作する、例えば、MRAM型構造などで使用可能なように、バイアスされたスピンバルブ又はトンネル接合構造の交換のための読み出し方式を提供することである。
本発明の更に別の目的は、1GHzより高い周波数で動作する面内磁気センサを提供することである。更に、本発明の目的は、1GHzより高い周波数でもまた動作する面内磁気カメラを提供することである。
本発明の他の目的は、磁気レイヤー及び要素の切換方式を提供することである。
本発明の更に他の目的は、高周波機構の共振器を提供することである。
本発明の更に他の目的は、磁気論理構成における新規な駆動機構を提供することである。
本発明の更に他の目的は、磁気切換器の切換動作における変化を能動的に補正するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明による方法及び装置により達成される。
本発明は、磁気弾性エネルギー変換を利用して、強磁性素子の磁化状態を判定、識別又は変更する方法を提供するものである。磁気弾性エネルギー変換は、磁気素子の磁化状態と相互作用する圧電レイヤーにおいて、磁気素子とSAW(表面弾性波素子)との間で利用可能である。本発明は、圧電レイヤーと、磁気素子と、磁気素子の磁化状態と相互作用する圧電レイヤーにおいて磁気素子とSAW(表面弾性波素子)との間での磁気弾性エネルギー変換を行う手段とを有する電子装置に関する。
【0009】
本発明は、少なくとも1つの表面弾性波発生手段と、トランスポート・レイヤーと、強磁性共振周波数νFMRを有する少なくとも1つの強磁性素子とを備え、前記表面弾性波発生手段は、前記トランスポート・レイヤー内に波長がλSAWで周波数が前記強磁性共振周波数νFMRか又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と実質等しい周波数νSAWの表面弾性波を発生するように調整されることを特徴とする、磁気特性相互作用を可能とする装置に関する。
【0010】
また、本発明は、圧電材料で構成され、周波数νSAWの表面弾性波を搬送するように構成されたレイヤーと、強磁性共振周波数νFMRを有し、磁気弾性エネルギー変換が可能な少なくとも1つの強磁性素子とを備え、前記表面弾性波周波数νSAWが前記強磁性共振周波数νFMRか又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と実質等しく、前記表面弾性波は前記少なくとも1つの強磁性素子と相互作用して、前記強磁性素子の磁化状態に作用することを特徴とする、磁気特性相互作用を可能とする装置に関する。
【0011】
前記少なくとも1つの強磁性素子は磁歪性(磁気歪)素子であってもよい。磁化状態は装置の出力として使用される。前記整数は例えば2などの偶数であってもよい。装置は、周波数νSAWの前記表面弾性波を発生する少なくとも1つの表面弾性波発生手段を有してもよい。圧電材料で構成されたレイヤーはトランスポート・レイヤーであってもよい。磁歪性材料は磁気弾性エネルギー変換を行うための手段である。
【0012】
前記周波数νSAWは、前記強磁性共振周波数νFMRか又はその整数倍に対応する吸収ピークの幅のフラクション(分率)に対応する幅を有する範囲内に存在してもよく、該吸収ピークは前記強磁性共振周波数νFMRか又はその整数倍近傍の中心に位置し、前記フラクションは100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは10%、更に好ましくは2%、更にもっと好ましくは1%である。
【0013】
前記強磁性素子は、圧電材料で構成された前記レイヤー又は前記表面弾性波発生手段と接触してもよい。該接触は直接的な接触であってもよい。前記強磁性素子は前記表面弾性波発生手段と直接には接触しない構成でもよい。前記強磁性素子は前記表面弾性波発生手段の一部であってもよい。磁気特性相互作用を可能とする装置は、少なくとも1つの強磁性素子の磁気状態を読み出すための手段を備えてもよい。この読み出し手段は、表面弾性波に対して磁気的反応を検知できるシステムであってもよい。また、この読み出し手段は、抵抗の測定を行うシステムであってもよい。磁化状態は該システムからの読み出し(「出力」とも呼ぶ)であってもよい。読み出した状態が解釈される。出力としては、最も一般的には磁気抵抗効果などの異なった効果が、AMRなどの単一のレイヤーにおけるとともに、トンネル接合やスピンバルブなどの構成要素において使用することができる。
【0014】
更に、磁気画像形成技術に基づくかまたは磁気画像形成技術から導出される全ての技術もまた、微細区分の、磁力顕微鏡検査や、(走査)ホールプローブ顕微鏡検査や、磁気光学カー効果等の測定である必要はなく、同様に、出力として検知される。また、インダクタンスによる技術も、ピックアップ・コイル、磁界センサ(読み出しヘッド、ホールプローブ)、等、又は、例えば、パルスラインの転移特性の測定等を用いて使用可能である。その理由は、これらの検知手段は近傍の磁気膜とその特性を検知できるからである。
【0015】
表面弾性波の周波数は、強磁性共振周波数又はその整数倍近傍の狭い周波数範囲内で選択される。この周波数範囲は材料の特性であり、この説明のために吸収ピークの幅と規定されるところの磁性材料の吸収係数に依存する。幅を規定するピークの縁は、吸収が実質0、例えば0.1、好ましくは0.01、更に好ましくは0.001、更に好ましくは0.0001に低下される位置に設定される。吸収ピークの幅を表す他のパラメータとしては、減衰パラメータα又は半値全幅(FWHM)が使用可能である。吸収ピークは好ましくは可能な限り狭くされる。その場合、使用される好ましい周波数の範囲は、吸収ピークの幅のフラクションに相当する幅を有する範囲であり、最大吸収周波数の値の近傍の中心に位置する。このフラクションは例えば100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは105%、更に好ましくは2%、更に好ましくは1%である。
【0016】
SAW(表面弾性波)は、更に付加された磁界の作用がSAWがない場合と異なるように、磁気素子の特性を変更することができる。従って、このような追加磁界の存在は、本発明のある実施形態にとっては好都合である。従って、装置は、強磁性共振周波数又はその整数倍の周波数において、このような追加の磁界を発生する手段を有してもよい。装置は、追加磁界によりもたらされる弱い磁界の力によって誘起される振動がパラメトリック機構により増幅される「パラメトリック増幅」用として使用してもよい。SAWは、弱い追加磁界の力により駆動される発振システムの周波数の2倍または2n(偶数)倍(ただし、nは、限定するものではないが、例えば1,2,4,6,8などの小さな整数であることが好ましい)の周波数において、パラメトリックポンプとして機能し、該駆動力とパラメトリックポンプ間の位相同期に基づいて、例えば、吸収ピークにより示される発振振幅の増幅、又は吸収の幅に関する減衰のアクティブな補正または強化が達成される。
【0017】
これにより、表面弾性波の周波数は、強磁性素子により明示的に吸収されるようにできる。表面弾性波の吸収は、強磁性共振周波数での吸収の少なくとも1%、好ましくは25%、更に好ましくは50%、更に好ましくは75%、最も好ましくは99%である。更に、表面弾性波発生手段は、圧電材料で構成された前記レイヤーの一部を備えた構成としてもよい。伝播された表面弾性波は、前記強磁性素子内に磁気弾性エネルギー変換gによる効果的な磁界を形成し、前記強磁性素子の磁気特性を操作、変更または改変する。磁気特性は前記強磁性素子の磁化状態であってもよい。また、磁化特性は、切り換え動作、保磁度、バイアス性、透過率、磁化率、減衰動作又は吸収動作のいずれかであってもよい。
【0018】
強磁性素子の長さは表面弾性波の波長λSAWよりも小さく、好ましくは、表面弾性波の波長λSAWの1/4よりも小さい。また、強磁性素子の長さは表面弾性波の波長λSAWよりも長くてもよい。強磁性素子の幅は表面弾性波の波長λSAWよりも小さく、好ましくは、表面弾性波の波長λSAWの1/4よりも小さい。また、強磁性素子の幅は表面弾性波の波長λSAWよりも長くてもよい。
【0019】
強磁性素子は、磁気要素の機能的又は構造的な部分であってもよい。この磁気要素は、例えばAMR、TMR、又はGMR装置などの任意の磁気抵抗装置である。磁気要素は、ピン留めされたレイヤーがないスピンバルブであってもよい。磁気要素は、例えば、スピンバルブまたはトンネル接合であり、ピン留めされた磁化を有する基準レイヤーを備える。装置で使用される表面弾性波は剪断波(シャーウェーブ)及び表面波(レイリー波)のいずれでもよい。それはまた任意の他の好適な表面弾性波であってもよい。強磁性素子は、強磁性素子の磁化容易軸の方向と誘起された実効磁界の方向間の角度が0°と異なり、好ましくは45°より大、更に好ましくは80°より大、最も好ましくは90°となるように、方位決定される。
【0020】
表面弾性波発生手段は、少なくとも1つの交差指型(インターディジット構成)変換器でるか又は同変換器を備える構成である。また、更に表面弾性波発生手段を追加してもよい。例えば、装置は第2の表面弾性波発生手段を備えてもよい。第1の表面弾性波発生手段は第1の表面弾性波伝播方向に剪断波(シャーウェーブ)を発生するためであり、第2の表面弾性波発生手段は第2の表面弾性波伝播方向に表面波を発生するための手段である。第1の表面弾性波伝播方向と第2の表面弾性波伝播方向は互いに直交してもよい。また、装置は、少なくとも1つの表面弾性波発生手段に対して、磁気素子に関して表面弾性波発生手段と反対側に位置する表面弾性波検知手段を有してもよい。この表面弾性波検知手段は、強磁性素子に対して、表面弾性波発生手段と正反対に配置してもよい。この装置では、表面弾性波発生手段は磁気素子を判定する他の手段、即ち、近接した電流導体により発生する磁界などのもっと多くの従来の仕方、又は、熱的に、又はヒータやレーザパルス、又は素子を流れる電流により発生された回転トルク(角運動量)による磁気変化等、と組み合わせることができる。
【0021】
また、装置は、圧電材料で構成された前記レイヤーの上部に配列された複数の強磁性素子を有し、磁気画像を提供する構成としてもよい。複数の強磁性素子は前記表面弾性波発生手段の上部に配列してもよい。その場合、装置は磁気カメラとして機能することができる。強磁性素子は複数の行及び列状に配列してもよい。
【0022】
本発明はまた環境パラメータを検知する方法に関するもので、該方法は、少なくとも1つの強磁性素子をして、環境量が測定されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記少なくとも1つの強磁性素子と相互作用させる工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記強磁性素子の対応する物理量の値を求める工程と、を有する。
【0023】
前記強磁性素子の前記物理量は前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。また、前記物理パラメータは前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記特性パラメータの変化から、前記物理量の対応する値を求めることは、前記動的な測定から、前記少なくとも1つの強磁性素子の非等方性(アニソトロピー)の程度を求める工程と、前記非等方性(アニソトロピー)の程度から、前記物理量の対応する値を求める工程と、を有する。
【0024】
上記検知方法は前述の任意の装置に適用することができる。この方法において、表面弾性波発生手段は磁気素子を判定する他の手段、即ち、近接した電流導体により発生する磁界などのもっと多くの従来の仕方、又は、熱的に、又はヒータやレーザパルス、又は素子を流れる電流により発生された回転トルク(角運動量)による磁気変化等、と組み合わせることができる。更に、前記物理量は、電磁界、温度、圧力、密度、または応力(歪)、その他の物理特性であってもよい。前記少なくとも1つの強磁性素子の磁気抵抗の変化は、前記強磁性素子の磁化または磁化方向により引き起こされてもよい。
【0025】
また、本発明は磁気画像を形成する方法に関し、複数の配列された強磁性素子をして、その画像が形成されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記複数の配列された強磁性素子と相互作用させる工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を、前記複数の強磁性素子の好ましくは各々に対して動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記複数の強磁性素子の対応する物理量の値を求める工程と、を有する方法であってもよい。
【0026】
前記複数の強磁性素子の物理量は前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記複数の配列された強磁性素子をして環境と相互作用することを可能とすること及び前記表面弾性波を発生することは、全ての強磁性素子に対して同時に並行して行われ、前記変化を動的に測定すること及び対応する値を求めることは、各強磁性素子単位に行われてもよい。該方法は前述のカメラに適用される。
【0027】
また、本発明は、例えば、前述のような装置から読み出し値を読み出す方法に関し、前記少なくとも1つの強磁性素子における磁化の歳差運動が達成されるとともに、前記少なくとも1つの強磁性素子の対応する磁化状態は転換されないように、表面弾性波を発生する工程と、前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、前記特性パラメータの変化から、前記読み出し値を求める工程と、を有する方法であってもよい。
【0028】
前記強磁性素子により作用される特性パラメータは、前記強磁性素子の磁気抵抗であってもよい。この方法において、前記特性パラメータの変化から前記読み出し値を求めることは、前記表面弾性波発生手段に供給される入力信号と前記特性パラメータの動的測定から得られる出力信号との位相差を求め、前記位相差から読み出し値を求めてもよい。
【0029】
前記対応する磁化状態は、前記少なくとも1つの強磁性素子の磁化に対応する状態である。該方法は前述の任意の装置に適用可能である。この方法において、前記読み出し値は異なる特定の値の数値のみに相当する。相違する値の個数は2つであり、その値は’1’と’0’で表すことができる。
【0030】
また、本発明は、少なくとも1つの強磁性素子を転換する方法に関し、表面弾性波を発生することで、前記強磁性素子における磁化の歳差運動を達成するとともに、前記強磁性素子の対応する磁化状態を方位決定する工程を有する方法であってもよい。ここで、対応する磁化状態は、前記強磁性素子における磁化に対応する状態である。
【0031】
前記強磁性素子の磁化状態を方位決定することは、強磁性素子独特の付加的磁界を発生することにより行われてもよい。この付加的磁界は、準静的、パルス状であり、又は強磁性共振周波数νFMR、又は強磁性共振周波数νFMRの整数倍と等しい周波数であってもよい。該付加的磁界は、磁気素子により検知された実効磁界を変える任意の手段により供給してもよい。表面弾性波(SAW)の磁界と付加的磁界は、また、ある時間または位相同期の間においてのみ、切り換え変換が初期化されるように同調してもよい。磁気要素の配列がアドレスされる必要がある場合は、表面弾性波SAW発生手段と付加的磁界の両者の振幅及び同期を用いて、前記配列から読み出し及び書き込み用にただ1つ磁気素子の選択を行ってもよい。
【0032】
前記表面弾性波はレイリー波であり、前記強磁性素子の磁化容易軸と有効磁界との間の角度は、該レイリー波の第1の半周期中において、0°とは異なり、好ましくは、45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である。
【0033】
前記表面弾性波はシャーウェーブ(S波)であり、前記強磁性素子の磁化容易軸の方向と前記装置により発生された前記有効磁界の方向との間のなす角度は、好ましくは、45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である。
【0034】
また、本発明は、少なくとも1つの強磁性素子の読み出しと書き込みを組み合わせた方法であってもよい。その場合、前記装置は2つの表面弾性波発生手段を有し、前述の任意の方法による転換のために第1の表面弾性波発生手段を用い、前述の任意の方法による検知又は読み出しのために第2の表面弾性波発生手段を用いる。
【0035】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数の整数倍と等しい周波数において付加的な磁界を供給してもよい。前記表面弾性波は、前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数の整数倍に実質的に等しい周波数を有してもよい。前記整数倍は例えば2などの偶数倍であってもよい。
【0036】
また、本発明は磁気共振器に関するもので、前述の装置と、磁性材料で作成され、キャンチレバー型構造で保持され、前記装置の強磁性素子の近傍に設けられた先端部を備えた磁気共振器であってもよい。この場合、該先端部は有効磁界のGHz周波数振動を検知し、対応する信号は出力される。
【0037】
また、本発明は、強磁性材料又は圧電レイヤーの上部に積層された強磁性マルチレイヤーで作成された遠距離通信用の発振器、共振器又はフィルタに関するもので、強磁性共振特性(吸収周波数または吸収ピークの幅)は、前述の装置に係る表面弾性波(SAW)により変更される構成としてもよい。
【0038】
また、本発明は前述の装置を磁気論理用に使用する方法に関する。表面弾性波を適用することは前記磁気論理の駆動装置であってもよく、その理由は、前記磁気論理の駆動装置は磁気データの搬送用のスレッショールドエネルギーを低減できるからである。
【0039】
また、本発明は表面弾性波の使用周波数の能動的同調方法に関し、表面弾性波発生手段により発生された表面弾性波の吸収を強磁性素子でモニターする工程と、前記吸収特性から、前記表面弾性波の使用周波数と前記強磁性素子の強磁性共振周波数との差を求める工程と、前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させる工程と、を有する方法であってもよい。
【0040】
前記方法は、表面弾性波検知手段を備えたシステムにおいて実効され、前述の装置のいずれかを備えたシステムにおいて実効される。更に、前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させることは、前記使用周波数を前記強磁性共振周波数と僅かに異なる周波数に同調させることであってもよい。更に、前記周波数は、前記強磁性素子の強磁性共振周波数での表面弾性波の吸収の1%から99%、好ましくは50%から90%、更に好ましくは70%から90%の範囲内で、前記強磁性素子による前記表面弾性波の吸収に対応してもよい。
【0041】
また、本発明は発振器に関し、該発振器は、例えば、遠距離通信用の共振器又はフィルタであってもよく、該発振器は、強磁性材料又は圧電レイヤーの上部に積層された強磁性マルチレイヤーで形成され、表面弾性波を発生して前記強磁性材料に作用し、該作用は強磁性共振特性を変えることを含む。
【0042】
本発明では、強磁性共振周波数は0.5GHzよりも大きく、好ましくは1GHzよりも大きい。本発明の種々の実施形態で述べられる角度は絶対角度である。また、磁気抵抗の動的な測定について述べる場合は、これは磁気抵抗のある時間中の連続した測定、又は規則的な時刻ごとの測定を意味している。
【0043】
尚、本適用例では表面弾性手段について述べているが、パルスレーザもまた、搬送レイヤーに応力又は歪を誘起することで磁気歪による実効的な磁界を生成する表面弾性波(SAW)の発生をもたらすために使用されること以外に、材料の熱膨張用としても利用可能である。
【0044】
また、本実施の形態では、1次元及び2次元センサ、カメラ及び装置について述べているが、本発明は、例えば、2次元構造の異なる複数の装置を互いに上部に配置すること等によりまた立体的なセンサを構成するように使用することもできる。
【0045】
特に好ましい本発明の態様は独立および従属の請求項で記載されている。従属項で記載した特徴は、独立項の特徴、及び他の従属項の特徴と適宜組み合わせることができ、請求項に明記されたものだけに限定すべきではない。
【0046】
本発明の実施形態の利点は、装置を動作させるために、外部誘起磁界または入射磁気波などの外部磁化の印加を必要としないことである。また、本発明の実施形態の利点は、システムが磁気素子の磁化に作用することを可能にすることである。
【0047】
特定の実施形態で記載された特徴は、それら特定の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて本発明の他の実施形態にも適用または導入することができる。同様に、特定の独立項の従属項の特徴もまた他の独立項と組み合わせることができる。この分野における方法及び装置の一定の改善、変更及び展開があるが、本発明の概念は、実質的に新規な改善を示すとともに、従来の方式とは相違した概念を含み、この特質の更に効率的で安定した信頼性の高い方法及び装置を提供するものである。本発明の開示により、磁気素子を高制御性で超高速判定するための改善された方法及び装置を設計することが可能となる。
【0048】
本発明のこれら及びその他の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を例示的に示す添付の図面を参照した以下の詳細な説明により明らかとなるであろう。ここでの記載は単に例示のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施の形態の好ましい特徴について添付の図面を参照して以下に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定するものではなく、請求項によってのみ限定される。添付の全ての図面において、同様の構成要素に対しては同じ参照番号を付している。図面は概略的であり、本発明を限定するものではない。素子の構成は図示において誇張したものがあり、特定のサイズを示すものではない。以下の説明及び請求項で記載した用語「有する(又は、で構成される)」(comprising)は、他の素子または工程を除外するものではない。
【0050】
また、明細書及び請求の範囲で記載した「第1」、「第2」、「第3」等の用語は同様の要素を区別するために使用したもので、必ずしも連続した順番または年代順を記載するものではない。上記用語は状況により適宜入れ替え可能であり、以下に述べる本発明の実施形態はここで記載又は図示した以外の順序でも動作可能であることを理解すべきである。
【0051】
更に、明細書及び請求の範囲で記載した「上部」、「下部」、「上部に」、「下部に」等の用語は説明のために使用したものであり、必ずしも相対的な位置関係を記載したものではない。上記用語は状況により適宜入れ替え可能であり、ここで述べる本発明の実施形態はここで記載又は図示した以外の位置関係でも動作可能であることを理解すべきである。
【0052】
本発明の説明用として記載した表現である「AはBと接触」は、AとBの空間的または構造上の構成について述べたもので、AとB間に表面弾性波及び/又は応力波の伝播が可能であることを示している。
【0053】
第1の実施形態では、強磁性要素の磁化状態を、切り換え、決定、操作、及び/又は変更するための装置100について説明する。装置100は、表面弾性波(SAW)発生手段102と、発生された応力及び/又は応力波の形態でSAWが伝播することを可能にするトランスポートレイヤー104と、磁気セル又は単にセルとも呼ばれる磁気素子106とを備え、該磁気素子106の磁気状態が応力及び/又は応力波を用いて切り換え、決定又は判定される。厳密には、トランスポートレイヤー104はまたSAW発生手段102の一部でもある。表面弾性波はSAW発生手段102で発生され、その伝送に必要な媒体材料がトランスポートレイヤー104である。従って、SAW発生手段102とトランスポートレイヤー104は同じ部類に入り不可分である。ただし、説明を簡単にするために、以下の説明では、SAW発生手段102とトランスポートレイヤー104は立て分けて説明している。
【0054】
本発明によれば、磁気素子は典型的には強磁性共振周波数を有する強磁性材料で構成される。装置100は他の周波数領域でも動作することができるが、FMR(強磁性共振)に典型的な高周波(RF)は高速度の切り換えや検知等を可能とするので、関心がもたれている。SAW発生手段102は例えばインターデジタル変換器(IDT)であってもよく、これはトランスポートレイヤー104上に物理的に接触して配置される。ただし、本発明はこれに限定するものではない。また、SAW発生手段102は、例えば、トランスポートレイヤー104上に配置されたレーザであってもよく、この場合、SAWはレーザパルスにより発生される。
【0055】
IDTはRF(高周波)フィルタとして使用されることで知られている。それらは開発段階を超えて、今や広く製品として使用されている。それらは、数GHzの周波数領域においてさえ、市販されており、当業者に公知の製品である。原理的には、全ての種類の表面弾性波を使用することができるが、SAWの選択は、主として、レイリー波とシャー波、即ち、表面に直交するSAWと面内波のSAWとの区別に限定される。トランスポートレイヤー104は典型的には圧電材料を有してもよく、又は、圧電材料で形成されることが好ましいが、SAWが伝播可能な他の任意の材料であってもよく、ここでSAW波は応力波の特性を有する。位置特定される磁気素子106はトランスポートレイヤー104の上部に物理的に接触して配置される。
【0056】
本実施形態では、磁気素子106はSAW発生手段102とは接触していない、即ち、分離されている。磁気素子106は磁気要素の一部であってもよい。本発明の実施形態では、例えば、トンネル接合、スピンバルブ、信号レイヤー等の広範な磁気要素が使用可能である。使用可能な磁気要素の典型例がMRAM装置である。本発明による装置100において使用される磁気素子106と可能な磁気要素の選択は、適用分野によって決まる。
【0057】
上記装置100を使用するため、即ち、磁気素子の状態を切り換え、判定又は決定するために以下の方法が用いられる。SAW発生手段102は周波数がνSAWのSAWを発生する。このSAWは、SAW発生手段102と物理的に接触しているトランスポートレイヤー104内に伝播する。SAWはトランスポートレイヤー104の各スポットにおいて時間依存性の歪を発生する。磁気素子106(即ち、セル)はトランスポートレイヤー104と物理的に接触して配置されているので、SAWにより誘発された応力波は磁気素子106内にも伝播する。応力波はそれに付随して磁気素子106内に有効磁界を発生し、この磁界がセルの磁化状態と相互作用することができる。
【0058】
磁気素子106の磁化状態との相互作用は、例えば、磁化状態の判定、決定、操作又は変更を意味するものである。磁気素子106はSAWを効果的に吸収できること、即ち、SAWの周波数が磁気素子106のFMR周波数に相当に近い場合、磁気素子106は対応する応力波により効果的に作用されることが判明した。このエネルギー欠損は、レイヤーの一部である磁気素子106において、磁気状態の変更をもたらすエネルギーに変換される。即ち、SAW発生手段102で発生されたSAWは、磁気素子106がその磁化状態を変化させるのに必要な歪を発生する。
【0059】
そこで、高周波SAW装置を用いて、磁気レイヤーをFMR周波数で動作させるのに必要な刺激を与えることができ、その特性、ここでは特に磁化方向であるが、切り換え動作、保持力、偏倚、透過、磁化率、減衰又は吸収等の動作特性、も変更することができる。後者の動作は吸収ピークの幅を目視で確認することで成される。これらの特性は全て磁化、即ち、磁気素子の磁化状態に対応するものである。このように特性を変更することにより、典型的には1GHz以上の非常に高い周波数で磁気素子の磁化状態を切り換え、判定又は決定することが可能となる。
【0060】
従って、本発明は、外部磁界を使用することなく、磁気弾性エネルギー変換を用いて強磁性素子106の磁化状態を変える新規な方法を開示するもので、換言すれば、この方法は磁気素子106と圧電レイヤー内のSAWとの間の磁気弾性エネルギー変換を利用して、磁気素子106の磁化状態と相互作用を行うものである。
【0061】
本発明の装置100の構成は異なってもよい。これらの変形は、SAWの種類、即ち、レイリー波かシャー波の選択、圧電材料を設ける方法、及び選択された磁気素子106等により決められる。特定の選択を組み合わせたいくつかの好ましい構成例を図1〜4に示す。ただし、本発明は図示の構成に限定されるものではなく、請求項の記載によってのみ限定されるものである。
【0062】
図1〜図3では、圧電膜であるトランスポートレイヤー104は基板108上に形成される。この基板108は、ガラス材や任意の種類のプラスチック材、又はシリコンやゲルマニウムやガリウム砒素(GaAs)等の半導体基板など任意の基板が可能である。圧電膜は、窒化ガリウム(GaN)や石英など、膜内に応力及び/又は歪の形成を伴う応力波に対応するSAWを形成することが可能である任意の圧電材料で作成される。また、図1に示す構成では、SAW発生手段102と磁気素子106は圧電膜104の異なる部分を覆っており、SAW発生手段102と磁気素子106は少なくとも部分的には同一面に配置されている。原理的には、SAW発生手段102単独で、圧電膜内とともに磁気素子106内にその磁気状態に作用するのに必要な歪を発生するのに充分である。特に上記の構成では、少なくとも2個のSAW発生手段102が設けられ、磁気素子106の両側に、必ずしも必要というわけではないが、好ましくは対称位置に配置される。
【0063】
図2では、磁気素子106はパターン形成されるとともに、圧電膜であるトランスポートレイヤー104と基板108との間に埋設されるが、SAW発生手段102は依然として圧電膜であるトランスポートレイヤー104上に配置された状態である。
【0064】
図3では、パターン化されていない磁気素子106、即ち、完全な層が基板108と圧電膜であるトランスポートレイヤー104との間に全面的に形成され、SAW発生手段102は依然として圧電膜であるトランスポートレイヤー104上に配置された状態である。
【0065】
図4では別の構成例が示され、圧電材料が基板110として形成されている。この基板110は、窒化ガリウム(GaN)や石英など、膜内に応力及び/又は歪の形成を伴う応力波に対応するSAWを形成することが可能である任意の圧電材料で構成される。その後、SAW発生手段102と磁気素子106が、パターン化された仕方で圧電基板110の上部に配置又は堆積される。図1〜図4に示すように、SAW発生手段102と磁気素子106間は物理的に直接接触していないことが好都合である。後者の構成ではIDT間の短絡を防止することができる。SAWを発生させるのに使用される電場は異なる変換器間に印加されるので、フィンガー(触針)間の短絡は解消される。また、ある実施の形態では、磁気素子はIDTと同一の電場の作用下に位置していないことが好ましい。これにより個々の判定が更に簡単になる。
【0066】
別の観点から、このことは、SAW及びそれに付随する応力波が磁気素子に到達するための搬送手段またはレイヤーを有する必要があることが分かる。その理由は、SAW発生手段は、IDTの場合のように、磁気素子内に直接SAWを発生することが殆どできないためである。
【0067】
本発明の第2の実施形態は、強磁性要素の磁化状態を切り換え、決定、操作、及び/又は変更するための装置100に関し、該装置は前述の第1の実施形態と同じ構成要素及び機能を有するが、磁気素子106はIDT等のSAW発生手段102と直接接触しているか、又はIDT自体が関心の磁気素子106である。SAW発生手段102と直接接触している磁気素子106は、例えば、SAW発生手段102の上部に直接形成してもよい。このような構成を図5〜図8に示す。
【0068】
図5は磁気素子106がSAW発生手段102の上部に形成された構成を示し、図6は注目の磁気素子106がSAW発生手段102自体である場合を示している。両構成ともトランスポートレイヤー104と基板108を有している。図7と図8は同様の構成を示すもので、ここでは基板110は圧電材料で構成され、トランスポートレイヤー104を設ける必要はなくなっている。これらの構成では、SAW発生手段102は、SAW発生手段102の一部か又は基板110の一部であるトランスポートレイヤー内にSAW及びそれに伴う応力波を発生する。この応力波はSAW発生手段102により検知され、その効果はIDTに対して実験的に証明されている。SAW発生手段102は、このような応力の作用下において変形し、SAW発生手段102と直接接触している磁気素子内に応力を発生する。注目の磁気レイヤーが、例えば、それ自体がIDT等のSAW発生手段102である場合は、応力は直接に検知される。
【0069】
シュミレーションによる実験データでは、歪はIDT等のSAW発生手段102内に発生されることを示している。対応するシュミレーション結果を図9に示す。図9のAは、2本のフィンガーを2組有する構成と、それらフィンガーによってある瞬間に検知され、SAWの電場を発生するSAWの最大振幅で決定される電位を示す。図9のBとCは、Aで示す電位に対するフィンガーのそれぞれ長さ方向と幅方向における歪を示す。図9のDは、逆電位の幅方向における歪を示す。これらの図は、フィンガーがその上部のレイヤー内にSAWが発生する応力に対応する交互に変わる歪を受けることを示す。IDTの上部に磁気素子を直接配置することで、IDTに発生された歪は磁気素子と結合され、必要な刺激を与えている。図10は、磁気IDTに印加される電場の作用の磁気IDTにおける抵抗値の変化を示している。歪は磁石内で効果的に磁気特性と結合し(AMR効果)、注目の磁気素子としてIDTを使用することが可能であることを示している。
【0070】
本発明は異なった利点をもたらすものである。例えば、磁化の切り換えを行う大電流や基準セルを使用する必要がないことである。また、厳重な時間的調節の問題を低減し、読み出しと書き込みを同時に行うことを可能にしている。外部磁界も必要としない。更に、殆どの適用例では、正確な読み出し値は必要ではなく、位相のみでよい。
【0071】
本発明の第3の実施形態では、装置100は前述の実施形態の構成と同じ構成要素を有し、SAW発生手段102はシャー波のSAWを使用することができる。図11aに示すようなシャー波のSAWは、IDTなどのSAW発生手段102で発生され、平面(X−Y面)内にシヌソイド状の表面変形を形成し、SAWが通過するあらゆるスポットに剪断歪を発生する表面弾性波である。特定の時間及び場所における剪断歪の大きさはいくつかのパラメータに依存して決まり、それらの内最も重要なパラメータはSAW発生手段102に印加される電圧と該表面弾性波の位相である。従って、SAWの経路に形成されたレイヤーは、その経路の所定場所において、時間の経過に伴って大きさが変化する剪断歪を検知する。
【0072】
このレイヤーが強磁性レイヤーである場合は、剪断歪は図11bに示すような有効磁界をレイヤー内に発生する。磁気素子106は歪波を受けるトランスポートレイヤー又は歪波を受けるSAW発生手段102と物理的に直接接触してその上部に配置されているので、本発明の種々の実施形態の磁気素子106は歪波とそれに付随して誘起された有効磁界を受ける。具体的には、剪断歪は図11bに示すような圧縮及び引っ張り歪成分に分解される。これらの成分は、磁気素子106の磁化容易軸と平行な成分と、この成分と直交する成分とによって表すことができる。容易軸は磁性材料の好ましい磁化方向を規定する。従って、この容易軸に平行な歪成分と直角方向の歪成分とは区別される。この歪は磁気素子106内に付随の磁界を誘起する。
【0073】
典型的な材料特性は磁性材料106の磁気歪みの符号に依存し、即ち、SAWにより発生される歪みは、材料が負の磁気歪み係数を有する場合はx方向の磁界を発生し、材料が正の磁気歪み係数を有する場合はy方向の磁界を発生する。歪みの大きさは時間経過に依存することを考慮すると、有効磁界の大きさも時間的に変化する。これにより磁化と磁気特性全体に変化をもたらす。このSAWの励起が磁気材料106のFMR周波数又はその近傍で行われる場合は、SAWの吸収は高くなり、磁化は図11cに示すように同様の仕方で反応することができる。ここで、波の方向の場合と異なり、磁気歪みや容易軸方向のいずれにも仮定条件は成されていないことに留意すべきである。図11cの左側の図では、SAWは磁化に作用し始める状態である。SAWの動作開始時点では振幅は小さいので、磁化は有効磁界の方向に引き寄せられる。歪みが大きくなるにつれて磁化の回転が速くなり、図11cの中央の図に示すように、オーバーシュート(行き過ぎ)を発生する。次いで、歪みをゼロまで下げることにより、磁化が元の状態に戻り、その結果、図11cの右側の図に示すように、有効磁界の周囲を歳差運動し始める。
【0074】
磁化に対する剪断歪波の影響についての説明では、磁気素子106は無限に小さいものと見なしているが、これは理想的な場合である。実際的には、磁気素子106をSAWの波長λSAWに関して可能な限り小さくすることにより同様の動作が得られる。このような小さなサイズを選択することは、歪みが比較可能なように大きいか又は1セル内の全ての位置で基本的に同じであることを意味する。セルサイズが大きくなれば歪みを有するようになり、それに伴って1セル内の2点間で実質的に異なる有効磁界を誘起することになる。換言すれば、セルサイズが大きいほど、不均一な磁化分布を有することになり、その結果、SAWの波長λSAWの周期で磁化が回転することになる。SAWの波長λSAWの1/4より小さい素子サイズでは問題は起こらない。
【0075】
この励起の重要なパラメータは、図12に示すように、磁気レイヤー106の容易軸と有効磁界の方向とのなす角度θである。最大のレスポンス(応答性)は、モーメントが最大となる角度、即ち、θ=90°に対して得られる。θ=0°に対しては、磁化はすでに発生された有効磁界の方向に存在するので、作用は観測されない。負の磁気歪みの材料に対しては、これは、磁性材料をSAW方向と直角方向の容易軸を有するように配置すべきであることを意味する。正の磁気歪み材料では、容易軸がSAW方向と平行となる必要がある。一般に、負の磁気歪みの材料に対しては、容易軸はSAW方向と平行となるべきではなく、正の磁気歪み材料では、容易軸はSAW方向と直角方向となるべきではない。
【0076】
例えば、負の磁気歪みを有する磁性材料が使用される場合は、引っ張り応力は該応力の方向と垂直方向に有効磁界を形成し、圧縮応力は該応力の方向と平行方向に有効磁界を形成する。図11bでは、x方向の歪波はx方向に圧縮応力を発生し、引っ張り応力はy方向に発生することを示している。このことは、応力の両成分で形成された磁界がx方向に向いていることを意味する。有効磁界が磁化の方位の変化に作用する影響は、有効磁界の方向と磁化の方向とのなす角度に依存する。この場合、容易軸がy方向、即ち、x方向に直角方向であり、これは有効磁界の方向と一致する場合は、作用は最大となる。従って、磁化の方向は歪波の方向と直角方向となるべきである。正の磁気歪み材料に対しては、磁化の方向は、同様の推論により、歪波と平行となるべきである。
【0077】
従って、シャー波のSAWを適用することにより、磁気レイヤー/要素106のFMR周波数を直接利用することが可能となり、その結果、磁気レイヤー/要素の特性を変化させる、即ち、切り換え作用、保持力、偏倚、感受性、RF周波数即ち1GHzより高周波で例えば減衰をもたらす吸収作用を行う。
【0078】
本発明の第4の実施形態では、装置100は前述の第1又は第2の実施形態の構成と同じ構成要素を有し、SAW発生手段102はレイリー波のSAWを使用するように構成されている。図13aに示すように、レイリー波のSAWは、IDTなどのSAW発生手段102で発生され、平面に垂直にシヌソイド状の表面変形を形成し、SAWが通過するあらゆるスポットに歪みを発生する表面弾性波である。特定の時間及び場所におけるレイリー歪みの大きさは、いくつかのパラメータに依存して決まり、それらの内で最も重要なパラメータはSAW発生手段102に印加される電圧と該表面弾性波の位相である。従って、SAWの経路に形成されたレイヤーは、その経路の所定場所において、符号とともに大きさが変化する歪みを検知する。
【0079】
このレイヤーが強磁性レイヤー106である場合は、歪は図13bに示すような有効磁界をレイヤー内に発生する。ある位置において強磁性材料を通過するレイリー波に対して、該波は最初(第1の半周期)に磁石内に引っ張り応力を発生し、次に、第2の半周期で圧縮応力を発生する。これにより、負の磁気歪み材料に対しては、最初にSAWと直角方向(y方向)に有効磁界を発生し、次いで、SAWと平行方向(x方向)に有効磁界を発生する。正の磁気歪み材料に対しては、有効磁界の方向はこれらと反対方向となる。
【0080】
このSAWの励起が磁気材料のFMR周波数で行われる場合は、SAWの吸収はもっと高くなり、磁化は図13cに示すように同様の仕方で反応することができる。ここでは、負の磁気歪み材料に対してSAWの第1の期間の場合、又は、正の磁気歪み材料に対して位相が180°ずれたSAWの場合を示す。図13cの左側の図では、SAWはその有効磁界により、y方向の磁化に作用する。これにより磁化は有効磁界の回りを回転し、その結果、磁化を切り換えることになる。材料の磁化が切り換えられると、SAWは容易軸の方向(x方向)に磁界を印加し、図13cの右側の図に示すように、磁化はその切り替わった平衡状態の周囲で弛緩する。
【0081】
このように切り換えることの利点は、電流を流す導体により磁界により引き起こされる切り換えと比べて、タイミング的に厳重でなければならない要件を低減できることである。例えば、SAWの周波数がFMR周波数にあまり近い値でない場合は、磁化は正確には切り換えられず、第2の周期の開始時点で切り換えスレッショールドを通過してしまうか、又は、磁化は、磁化の初期値に戻らない値だけ平衡位置をオーバーシュートしてしまうであろう。ここでは、x方向の磁界が、磁化を切り換え位置に戻すのに重要な役割を担っている。有効磁化は磁化をx方向に引き寄せ、これにより切り換え動作を安定させるとともに、改良減衰機構によりリンギングを低減させている。リンギングにより、磁化が、典型的には容易軸方向である平衡状態の方向の回りを回転することを意味する。
【0082】
磁化の減衰、即ち、その平衡状態のリラクセーション(緩和)は、平衡状態の方向に有効磁界を印加することにより促進される。ここでは、磁化に作用するレイリー歪波の効果は、素子が微小である場合について説明するものである。実際的には、素子を波長λSAWに関して可能な限り小さくすることで、同様の動作が得られる。このようにサイズを選定することは、SAW又は歪波が全ての位置で比較的大きいことを意味している。サイズが大きくなるにつれて不均一な磁化分布となり、磁化はSAWの周期で説明したような周期毎に回転する。SAWの周期の1/4より小さいサイズの素子に対しては問題は起こらない。
【0083】
このアクチベーション(活性化又は励起)の重要なパラメータは、磁気レイヤー106の容易軸と歪波の位相とのなす角度である。負の磁気歪みを有する磁性材料に対しては、このことは正弦波の第1の周期を用いて容易軸を磁性材料と平行に配置することを意味する。第1の周期を用いるときは、正の磁気歪み材料はSAWと垂直な容易軸が必要となる。これは、シャー波について説明したものと同じ原理で得られる。このことは、例えば、負の磁気歪み材料に対しては、最適な磁気モーメントを得るためには、容易軸は有効磁界と垂直方向でなければならないという事実に基づいている。波の第1の半周期中では、有効磁界はSAW波の方向と垂直な方向を向いているので、後者はx方向であり、従って、容易軸はSAWの方向と平行となる必要がある。このことは図12から明らかである。正の磁気歪み材料に対しては、第1の半周期中では、有効磁界はx方向を向いており、従って、容易軸はy方向に向いている。
【0084】
従って、レイリー波のSAWを使用することで磁気レイヤー/要素106のFMR周波数を直接得ることができ、従って、その特性、即ち、切り換え動作、保持力、偏倚、感受性、透過、等の動作特性を高周波で変更することができる。
【0085】
例えば、SAW発生手段102の位置を、例えば、それらの配置をx方向ではなくy方向とする等のように変えることで、他の構成も可能であることは、当業者に明らかであろう。その場合、磁気素子106の配置、より具体的には、それらの容易軸も必要に応じて変更される。
【0086】
また別の実施形態では、面内磁気センサ200が1GHzよりも高い周波数でも作動していることが記載される。磁気センサ200は数個の異なるパラメータを検知するために使用される。ここで、磁界センサと同様に応力センサを使用することは、同じ形態として取り扱われる。その理由は、磁気弾性の相互作用により、それらは一般に相互変換されるからである。主な相違点は応力の検知がないことである。磁化は一つの特定方向に向いているが、応力は両検知方向、例えば、x方向の+及び−方向に働く。
【0087】
例えば、スピンバルブやトンネル接合またはAMRセンサ等の磁気センサ200に作用するSAWの効果は、その一定の磁化が得られることである。例えばスピンバルブであるセンサ200は、検知レイヤー202と、バリアレイヤー204と、第2レイヤー206と偏倚レイヤー208とを備えてもよい。単一のセンサ素子200に対する不安は、自由レイヤーがその磁化を、有効磁界(対応する応力)の角度とその大きさで決まる2つの状態の間で回転させることである。これを図14aに示している。これは、図14bに示すような磁気抵抗効果(MR効果)により、抵抗値の変化に変換する。抵抗値の変化を観測することにより、センサについての情報が得られる。従って、センサ200を変化する環境に配置する場合、SAWを励起することに対する反応を含み、その特性が変化する。
【0088】
図14cには、この変化反応を示している。図から分かるように、2つの主要な特性の変化、即ち、反応の勾配とその大きさ、及び初期地点の変化がある。反応の傾きは平衡状態の方向での非等方性の量により決まる。このことは、要素が平衡状態で大きな非等方性を有すると、それをSAWで励起することが困難となることを意味している。これは傾きを小さくすることに対応し、従って、SAWに対するセンサ200の反応を低下させることになる。第2の変化は平衡状態の方向に関するものである。この方向がセンサ200の容易軸に一致していない場合は、センサ200はその平行な検知レイヤー固定型のレイヤー位置には戻らない。これら2つのパラメータは環境の変化に対する測定方法である。
【0089】
換言すれば、磁気要素であるスピンバルブやトンネル接合はその磁気状態に対して一定の特定の小さな角度的摂動となる。外部磁界や応力等により発生される非等方性の全ての変化は、要素の反応の変化をもたらす。この反応を読み取ることで、システムにおける非等方性の量とその方向に関する結論が引き出される。これら2つの特性は環境の変化に対する測定方法を付与するものである。この原理は超高速の磁界センサや応力センサ等に利用される。
【0090】
前述の説明は、センサ200の大きさが、磁化がSAWの励起に空間的に均一な仕方で応答するのに充分に小さいことを意味する。好ましくは、SAWの波長の4分の1までの大きさのものが使用される。より大きなセンサが必要な場合は、パターン化され、直列に接続されたセンサが使用される。このようなセンサ300を図15aに示す。これにより、大型センサ内で発生されたスピン波が平均がゼロのMR反応を生成するといった、単体の大きな要素を使用する場合に起こるであろう課題を避けることができる。又別の実施形態では、第2の実施形態と同じく、SAW発生手段と直接接触したセンサを使用することもできる。
【0091】
本発明によるパターン化された要素を使用する利点は、ミクロン解像度の磁気カメラを構成できることである。複合センサを別々に読み出すとにより、磁気環境の2次元画像を生成することができる。読み出しは1GHzより高い周波数で行われるので、一度の読み出しで毎秒109個の素子が読み出される。これにより、高速で高解像度のセンサが作成される。
【0092】
一続きのセンサで構成される巨大センサとカメラの両方で起こり得る問題点は、FMRの周波数が環境特性の変更と共にずれることである。これを避けるために、フィードバック方式を設けることでこの問題を解決している。また、周波数のズレはカメラや巨大センサ内に存在する全体的な有効磁界の大きさと方向を測定する方法となり得る。これを別のセンサで測定された小磁界の反応に追加することで、広範なセンサ動作が確保される。
【0093】
本発明はまた交換された偏倚スピンバルブ又はトンネル接合の構造の読み出し方式に関するものである。交換偏倚スピンバルブ又はトンネル接合の構造の読み出し方式は、磁性材料に及ぼす表面弾性波の作用に直接基づいている。可能な構成が図15aの装置300内に示されている。ここでは、いくつかの要素200が、SAWを発生する一組のIDT等のSAW発生手段102の間に配置されている。これらの要素200の密度は、強磁性材料に与えるSAWの作用について記載で成される考慮によって決まる。従って、素子はSAWの波長の4分の1のピッチで容易に配置することができる。このことは、換言すれば、磁気素子のFMR周波数で示される。いくつかの典型的な材料の典型的な値は約2ミクロンである。
【0094】
磁気要素200に与えるSAWの作用を図15bに示す。この図では、要素を構成する複数の複合レイヤーが図示されている。異なる磁気素子に使用される材料は異なったものであり、例えば、トンネル接合に対してはバリヤは最も一般的には酸化物であるが、スピンバルブに対しては、これは非磁性金属である。SAWは磁化の摂動を発生し、これは強磁性材料が異なることにより違ってくる。応力検知材料の選定、即ち、検知レイヤー202として非等方性の値に対する磁気歪みの比率が高い材料を選択するとともに、第2のレイヤー206として非等方性の値に対する磁気歪みの比率が低い材料、即ち、歪み非感受性材料を選択することで、1つのレイヤーにおいてのみ磁化が作用を受けることができる。
【0095】
対応する要素の一例を図15bに示しており、構造体の底部レイヤーは検知レイヤー202であり、第2のレイヤー206は応力非感受性レイヤーである。これらの材料特性もまた本発明のセンサの実施形態に有効である。バリヤレイヤー204もまた設けられている。反強磁性レイヤーが要素208を偏倚するためにスタック内に設けられる。このレイヤーもまた応力非感受性である。アクチベーションはシャー波とレイリー波の両方によって成すことができる。ここで、要素を切り換えてその状態を破壊してしまわないように注意しなければならない。
【0096】
摂動を知覚する方法を図15cに示す。図では磁気抵抗の測定法が示されている。これは抵抗の変化を印加応力の関数で示している。この応力はSAWにより発生される。要素に対して2つの可能な状態が存在する。下部の上昇線は「1」の状態に属してレイヤーの平行磁化に対応し、上部の下降線は「0」の状態に属してレイヤーの非平行構成に対応する。図15cの左側の図示の波形のSAWは、要素を通過する場合は、2つの可能性がある。スピンバルブが「1」の状態の場合は、有効磁界はダークグレイのマーカで示すような抵抗値の変化をもたらす。これは図15cの中央に示すような抵抗値の変化をもたらす。「0」の状態は、図15cの右側に示すように、活性化信号と逆位相の抵抗値の変化をもたらす。入力信号と出力信号の位相を比較することで、抵抗の絶対値の測定や出力を基準セルと比較する必要なしに、読み出しを行うことができる。入力信号の位相は演算により容易に求めることができる。
【0097】
本発明はまた磁気要素を切り換える方式又は方法に関するものである。これは磁性材料に与えるSAWの作用から直接もたらされる。該方法は第1乃至第3の実施形態で説明した装置に基づくものである。僅かな相違点はシャー波かレイリー波かの選択によるものである。
【0098】
シャー波を使用する場合は、該シャー波は磁化にインパルスを与えることができ、磁化の方向と有効磁界の成す角度が90°のときに運動量は最大になる。SAWを付与すると磁化に摂動を与えることになる。これの大きさはSAW形成手段に印加される電圧によって決まる。あるスレッショールド電圧より高くなるとき、即ち、SAWのある振幅値を超えると、磁化の摂動(プレセッション)が更に充分に回転して、磁化を非平行な磁化の方向に更に近づけるであろう。このことは、励起SAWがOFFとなると、磁化は切り換え平衡状態に向けて緩和されることを意味する。この切り換え方法を用いることで、タイミングが重要なファクタとなる。SAWのONとOFFの切り換え(即ち、その大きさの増減)は、切り換えスレッショールドに到達しなかったり、切り換え位置を過ぎてしまわないように、正確な正しい設定時間に行わねばならない。
【0099】
レイリー波を使用する場合もまた、インパルスが付与される。インパルスは反応として2個の直交する有効磁界を有する。充分な大きさのSAWを付与することで切り換えが発生し、これにより第1の半周期で磁化を切り換え位置に摂動(プレセッション)し、その結果、磁化を切り換え位置の方向に引き出す。この場合は、SAWの第2の全半周期は基準の切り換えを満足しているので、タイミングはあまり問題とはならない。このことは、切り換えのためには、レイリー波構成は最も有効であり、実現し易いことを意味する。
【0100】
上記説明は単一の素子に関する記載である。磁気要素200の配列はアドレス設定される必要がある場合、特定の素子を表す追加のパラメータを含まねばならない。従って、図16に示すように、読み出し接触部210が使用できる。図16に示すように、スピンバルブなどの素子を通過する電流を流すことで磁界を発生し、これは容易軸方向の非等方性を低減することにより、切り換えを支援することができる。そこで、全ての素子を同時に切り換えることを避けるために、SAWの大きさは安全な距離にあるように、即ち、意図しない切り換えを避けるために、そのスレッショールド以下に選択される。電流により発生された磁界は、このスレッショールドをSAWの振幅以下に低減して、選択された素子を切り換える。この処理方法の素子の特定以外に、タイミングの問題が別に解決される。計時されねばならない(SAWの性質とその単一の応答のために困難であり得るもの)はSAWではなく、計時されねばならないのは電流の選択である。これはシャー波にとって特に重要なことである。
【0101】
この方式による他の利点は、いくつかの異なった動作を組み合わせることができることである。使用されるSAWは読み出し動作及び書き込み動作に必要な摂動(動揺)を引き起こす。読み出し/書き込み電流の大きさのみが読み出しか又は書き込みのどちらを選択するかを決定している。更に、異なる書き込み動作も共に行うことができる。このように、磁気レイヤー及び要素の切り換え方式は、SAWによるアクチベーション(励起又は活性化)を示すものである。FMR周波数で、磁気レイヤー/要素は、磁化を切り換えるのに充分大きな励起が付与される。更に、レイリー波では直交する有効磁界を発生するので、付随の切り換え動作のオーバーシュートも防止される。MRAM型方式におけるビット選択性は非切換えSAWを使用するとともに、小磁界を部分的に印加することにより得ることができる。これは処理対象の構造に電流を通すことにより実現される。同じ時間スロットで複数の素子を読み出すことは、いくらかの処理論理を必要とする。
【0102】
更に別の実施形態400では、レイリーSAWとシャーSAWの両方が同一面上で使用される。これは、レイリーSAWとシャーSAWの例えばIDTで構成されるSAW発生手段102と402が実質90°の角度を成すように設計することで可能となる。これを図17に示す。このように設計することで、レイリー波はシャー波と90°の方向に進行している。シャー波は、読み出し用アクチベーションに好適となる小さい方の摂動を発生する。次いで書き込みをレイリー波で行うことができる。ビット選択性は、磁界を発生するために素子に電流を流すことにより得られる。電流を流すことの代わりに、1つの磁気素子の有効磁界を変えて切り換えスレッショールド値を低減する他の任意の手段、即ち、近接した電流導体により発生した磁界、ヒータやレーザパルス又は素子を流れる電流により発生された熱的または回転トルク(角運動量)による磁気変化などの方法で置き換えることもできる。このように設計することで読み出しと書き込み動作を同時に行うことが可能となる。異なった書き込み動作も共に行うことができる。同一の時間スポットで複数の素子を読み出すことは、いくつかの処理論理を必要とする。同じ設計のIDTでは、シャー波の速度がレイリー波の速度よりも速いので、レイリー波に関して90°の角度及びそれより僅かに高い周波数で(吸収ピークの位置以外で)進行するシャー波を有することが可能である。従って、シャー波の周波数はより小さい磁気摂動を有する読み出し用の周波数であり、レイリー波の周波数は書き込み用の周波数とすることが可能である。
【0103】
他の実施形態では、RF機構の共振器500が提供される。RF機構の共振器500は、前述の実施形態で説明した強磁性要素の磁化状態を切り換え及び判定する装置に基づくものである。SAWの磁気レイヤー502に働く作用は、磁化の摂動を引き起こすことが述べられている。レイリー波及びシャー波に対して、この磁化の変化はまた面外の成分を有することである。プレセッション(摂動)は有効磁界と直角な面で発生する傾向があるので、大きな面外成分が発生され、これは薄膜磁気レイヤー502により発生された大きな減磁界により殆ど完全に逆向きとされる。磁界と力のこの相互作用により、図18aに示すように、磁気レイヤー502から立ち上がるネットの漂遊磁界を形成する。ここで、レイリー波は図18aに示すような磁化の回転を引き起こし、漂遊磁界の変化を引き起こす。シャー波に対しても、同じ理由付けが成される。
【0104】
漂遊磁界はそこでは共振器の起動用に使用される。図18bに示すように、例えばAFM状のチップ504等のチップが磁気レイヤー502に近接位置に設けられる。漂遊磁界をチップ504と相互作用させるために、チップ504は磁性体であるように選択されている。これはGHz適用のチップ504であり、典型的には磁性材料で被覆されている。これにより、チップ504は磁界を感知し、この磁界の周期性により、片持ち梁型の構造体506に装着されたチップ504は、SAWにより励起された磁気レイヤーにより吸引及び反発される。選択されたチップ504が正確な周波数の範囲、即ち、磁気レイヤー502のFMR周波数近傍で共振するように設計されている場合は、チップ504は共振状態となることができる。チップ504により発生されるこのような機構的共振はそのときシステムから出力され得る。換言すれば、磁界により働く磁力はチップ504で検知され、機構の共振に変換される。
【0105】
本発明のまた別の実施形態では、磁気論理における駆動力としてSAWを使用することが記載されている。磁気論理を用いることは、例えば、Cowburn等によるScience287,(2000)p1466に公知である。磁気論理素子は電子構成品と磁気的に等価である。磁気論理素子では、素子の状態は素子の変化により規定されるのではなく、素子の磁化により規定される。このためには一定の駆動磁界が存在することが必要である。電力消費が重大な役割を成すことをいくらか考慮することから、外部磁界を用いることは好ましい状態ではない。本発明による実施形態では、切り換えに必要な磁界は、SAWにより誘起された有効磁界、即ち、前述の実施形態での装置、を用いることにより生成される。
【0106】
図19では、可能な磁気論理回路の小部分を示している。これらの磁気ネットワークにおける磁気情報の伝達は、外部から印加される磁界を用いるのではなく、このようなSAWにより発生された磁気的切り換えを利用することにより助けとなり得る。これはまた、局所的な磁界を介するとともに、SAWを磁気論理アレーに通過又は非通過かにより磁界が切り替わるSAW吸収磁気レイヤーを使用することにより、特別な入力を追加する機会を与えるものである。磁気論理回路は磁気情報を搬送することにより機能する。これらの論理アレーは、情報が線上を上方又は下方に移動できるかについて決定する入力ビットを有する。移動のための駆動力が磁界である。このようにSAWを駆動力として使用することにより、外部磁界のない論理システムが形成される。
【0107】
この例では、これは入力ビットと「クロック」(SAW)間に設けられる論理ANDゲートである。出力は、図19に示すようにSAWがオンのときに交番出力を有するのみであり、入力ビットは図19に示すように線を通過する励起子(エクシトン)のリップリングを可能とするように設定される。入力の他の全ての設定では、可能なリップリングはないので、ANDゲートの特性を満足している。NOTゲートもまた、例えば、Cowburn等によるScience287,(2000)p1466に公知である。これらのゲートには交番磁界が必要である。SAWもまたこの利用に適している。一般的には、SAW−FMRの原理は外部磁界を取り替える全ての磁気論理に適用可能である。SAWの適用はまた動作周波数がGHzの領域内であることを意味している。これは現在の電子論理が磁気論理を可変代替物として動作する周波数領域である。
【0108】
本発明のまた別の実施形態では、切り換え動作の変化の能動的補正の方法を提供する。SAW−FMR装置はその理想的な動作設定である周波数で動作されなければならない。この周波数は、磁気素子で記載されたようなFMR周波数に等しいか又はそれに近い周波数である必要がある。使用の装置を同調することは、材料、素子の形状、素子の厚み等の選択により成され、これらのパラメータは全て設計パラメータであり、動作周波数を決定するために選択されねばならない。即ち、動作を可能とするために、SAW装置は磁気素子のFMR周波数近傍の共振可能な帯域幅を有する必要がある。
【0109】
切り換え動作の変化を補償するとともに、安定した状態で動作することを可能とするために、SAWはFMR周波数直下に固定されねばならない。この周波数で、SAWは図20に示すような半直線状の周波数/減衰応答グラフを示す。周波数の固定は×印で示されている。周波数の固定を最大ではない減衰位置で行うことで、SAWの減衰を観測することによりシステムの状態の変化を検知する手段を構成する。例えば減衰が高くなると、システムのFMR周波数が低下するといった状態に変化が起こり、このため周波数は低下することになる。減衰が少なくなると、FMR周波数は増加してSAW周波数は増加することになる。このような補償方法を使用することは、SAWの減衰にのみ基づいており、特性の変化を補正する容易な方法を提供する。例えば、熱的な効果及び環境からの磁界が説明される。この方法は本発明の種々の実施形態で記載された種々の方法に適用される。対応する装置もまた本実施形態により動作するように構成される。
【0110】
本発明のまた別の実施形態では、レイリーSAWにおけるいくつかの実験結果について述べる。この実施形態では、SAW発生手段はGaNレイヤー上に配置されたIDTである。装置は2.7GHzで作動する。図21は本実施形態による装置の変換特性(又は転移特性)を示す。IDTは4ミクロンの波長を有する。挿入損のピークはSAW装置の動作周波数である。2つの主なピークの1.46GHzと2.8GHzが観測され、前者は第1の高調波(倍振動)に相当する周波数であり、後者は第2の高調波(倍振動)に相当する周波数である。
【0111】
また、磁性材料及び磁性材料を有する要素の歪み依存性について調べられている。この歪みは3点の曲げ(図22a,22b)及び圧電レイヤー(図23)で発生される。磁化の回転が達成され、磁界と応力との相互変換の可能性を示している。図22a,22b及び図23に示す結果は低周波で得られた結果である。全ての結果は単体のレイヤー及び磁気要素で立証された。図22aは下記のレイヤーシーケンス:Ta/Ni80Fe20/IrMn/Co90Fe10/AlOx/Co90Fe10/Ni/Siを有するトンネル接合の容易軸方向での測定結果を示す。フリーレイヤー(略ゼロ磁界)から始まるヒステリシスループと固定レイヤーは分離されている。固定レイヤーの応力依存性は実際的にはゼロであるが、フリーレイヤーは単体のNiレイヤーと同様の応力反応がある。引っ張り応力は磁化を応力方向から離れるように回転させるが、圧縮応力は磁化を応力方向に引き出す傾向がある。
【0112】
図22bは、図の中央部(−4kA/mと4kA/mの間)に示すフリーレイヤーとこの領域外の部分である固定レイヤーの困難軸を示す。再度、固定レイヤーは応力の付加状態においてその磁気特性を保持するが、フリーレイヤーは上述のように反応する。固定レイヤーとの結合により、応力のない硬質と軟質のフリーレイヤーが存在することを知らねばならない。図23は、バイモルフ基板上に設けられたNi基材のトンネル接合での測定結果を示す。Niはフリーレイヤーの磁化を表すので、それの電圧感度を付与している。
【0113】
更に、低周波で実験が行われ、印加された磁界によるSAWの相依存性により明らかな、シャーSAWの吸収を示している(図24)。図24に示すように、シャー波の位相は印加磁界に依存している。変化量は4度までである。異なる複数の曲線は異なる偏倚磁界に対応する。磁界はホールプローブにより測定される。全ての測定ループは−100から100ガウスの間である。SAW動作では磁性材料のヒステリシスの存在に気づくべきである。これは歪みが相互作用することを意味する。全ての結果は単体のレイヤー及び磁気要素で証明された。
【0114】
本発明による、共振周波数での付加的磁界と共振周波数の2倍でのSAW磁界との結合の磁気素子に与える影響を調べるためのシュミレーションが行われた。これらのシュミレーションでは、SAWは、例えば、磁界で駆動された振動の振幅と減衰を増幅するなどの変化を行うことを示している。また、理論的には、SAW磁界は強磁性共振周波数の偶数倍に実質的に等しい周波数を有することができる。図25に示すように、SAW磁界の印加により、磁性材料の振動振幅が吸収ピークとして明らかなように大きくなることを示している。振動振幅は、磁界の振幅の種々の値でのプロット(凡例)により、また、SAWと磁界の位相関係は固定した状態で、SAWの振幅対磁界の振幅の比の関数として表されている。SAWの振幅がゼロでは、励起された共振は従来の強磁性共振ピークに等しい。更に高いSAWの値では、振動振幅はSAW磁界の印加により増大される。その増加量はSAWと磁界の間の位相関係の値を調整することで変えることができる。
【0115】
他の例示を図26に示しており、ギルバートダンピングパラメータ(Gilbert damping parameter)αで表される磁気運動の平衡状態に向かう減衰は、SAWの振幅により能動的に制御される。このようにSAWは強磁性材料の共振特性を変えることができ、従って、SAWはまた磁気素子の切り換え動作も変更することができる。このように、SAWは強磁性材料における減衰処理の制御に役立つものである。減衰パラメータに対する制御は、例えば、磁気素子の切り換え速度を最適化するのに重要である。あまりにも低すぎる減衰値に対しては、磁気素子は非常に高速で切り替わることができるが、リンギング(呼び出し)即ちプレセッション(摂動)を止めることはなく、一方、あまりにも高すぎる減衰値に対しては、磁気素子は非常に遅い速度で切り替わる。
【0116】
ここで記載した本発明の装置、システム及び方法に関する実施形態では、特定の構成及び材料について記載したが、これらは単に例示として説明したものであり、その種々の変形および追加の形態も請求範囲で規定する発明から外れることのない範囲で可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接には接触していない構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による磁気素子の超高速判定装置であって、磁気素子がSAW発生手段と直接接触している構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態において、SAW発生手段内に歪が発生した場合の装置に対するシュミレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態において、SAW発生手段内の抵抗値変化が印加電界の機能としての磁気IDTであるグラフ図である。
【図11a】シャー波のSAW発生手段を示す概略図である。
【図11b】本発明により生成された磁気素子内に誘起された応力及び・又は応力波と対応する有効磁界を示す概略図である。
【図11c】本発明に係る装置においてシャー波のSAWにより誘起された磁化の変化を示す概略図である。
【図12】本発明に係る装置においてSAWにより誘起された有効磁界と磁気素子の磁化を示す概略図である。
【図13a】レイリー波のSAWが誘起される本発明の装置を示す概略図である。
【図13b】本発明の装置において応力及び・又は歪と有効磁界成分を示す概略図である。
【図13c】本発明に係る装置においてレイリー波のSAWにより誘起された磁化の変化を示す概略図である。
【図14a】1GHzより高い周波数で使用される本発明による面内磁気センサを示す図である。
【図14b】本発明による装置における磁気素子の応力の関数としての磁気抵抗の変化を示すグラフ図である。
【図14c】本発明に係る装置において磁気素子内の非等方性の値の作用を示す概略図である。
【図15a】本発明の実施形態によるSAW発生手段間の磁気要素の密度を表す概略図である。
【図15b】本発明による例えばスピンバルブ等の磁気要素を示す概略図である。
【図15c】本発明によるスピンバルブの磁気要素の応力の関数としての磁気抵抗の変化を示すグラフ図である。
【図15d】レイヤーの例えば並列磁化の”1”の状態における磁気素子の応答変化(中央のグラフ)、レイヤーの非並列磁化の”0”の状態における磁気素子の応答変化(右側のグラフ)、及び別個の表面弾性波(左側のグラフ)を示す概略図である。
【図16】本発明に係るSAW励起により磁気レイヤー及び要素の切り換え方式を示す概略図である。
【図17】本発明に係る装置においてレイリー波のSAWとシャー波のSAWの両方が適用される場合を示す概略図である。
【図18a】本発明に係るSAW励起により磁気素子内に発生する磁界を示す概略図である。
【図18b】本発明に係る誘起された漂遊磁界を利用した高周波構成の共振器示す概略図である。
【図19】磁気論理用の駆動力としてSAWによる磁化を適用した場合を示す概略図である。
【図20】SAW用に使用可能な周波数の範囲を示すグラフ図である。
【図21】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図22a】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図22b】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図23】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図24】本発明の実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図25】本発明による実施形態においてギルバート減衰パラメータαで表される平衡状態に向かう減衰がSAWの振幅及び位相により能動的に制御可能であることを示すグラフ図である。
【図26】本発明による実施形態においてギルバート減衰パラメータαで表される平衡状態に向かう減衰がSAWの振幅及び位相により能動的に制御可能であることを示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0118】
100 装置
102 表面弾性波発生手段
104 トランスポートレイヤー
106 強磁性素子
108 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気特性相互作用を可能とする装置(100)であって、
圧電材料を含み、周波数νSAWの表面弾性波を搬送するように構成されたレイヤーと、
強磁性共振周波数νFMRを有し、磁気弾性エネルギー変換が可能である、少なくとも1つの強磁性素子(106)と、を備え、
前記表面弾性波の周波数νSAWは、実質的には前記強磁性共振周波数νFMR又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍に等しく、前記表面弾性波は前記少なくとも1つの強磁性素子(106)と相互作用して前記強磁性素子(106)の磁化状態に作用することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記装置が、更に、前記周波数νSAWの表面弾性波を発生する少なくとも1つの表面弾性波発生手段(102)を有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記周波数νSAWは、前記強磁性共振周波数νFMR又はその整数倍に対応する吸収ピークの幅の一定部分に対応する幅を含む範囲にあり、前記強磁性共振周波数νFMR又はその整数倍の値近傍に中心を置き、前記部分は100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは10%、更に好ましくは2%又は更に好ましくは1%である請求項1〜2のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記整数は例えば2などの偶数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記強磁性素子(106)は、前記圧電材料を含むレイヤー又は前記表面弾性波発生手段(102)と接触する請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記強磁性素子(106)は、前記表面弾性波発生手段(102)と直接には接触しない請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記強磁性素子(106)は、前記表面弾性波発生手段(102)の一部である請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記表面弾性波発生手段(102)は、前記圧電材料を含むレイヤーの一部を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記伝搬される表面弾性波は、前記強磁性素子(106)における磁気弾性エネルギー変換により有効磁界を形成し、前記強磁性素子(106)の磁気特性を操作する請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍において付加的な磁界を発生する手段を更に有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記磁気特性は前記強磁性素子(106)の磁化状態である請求項9又は10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記強磁性素子(106)は、磁気要素(200)の機能部分又は構造部分である請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記磁気要素(200)は磁気抵抗装置であるか、又は前記磁気要素はスピンバルブ又はトンネル接合を備える請求項12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記強磁性素子(106)の磁化容易軸の方向と前記有効磁界の方向との間のなす角度は、0°とは異なり、好ましくは45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記表面弾性波発生手段(102)は、少なくとも1つの鉗合変換器(インターディジテッド・トランスデューサ)である請求項2〜14のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記装置が更に別の表面弾性波発生手段(402)を有する請求項2〜15のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記表面弾性波発生手段(102)は、第1の表面弾性波伝搬方向にシャーウェーブ(S波)を発生し、前記更に別の表面弾性波発生手段(402)は、第2の表面弾性波伝搬方向にレイリー波を発生する請求項16に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記第1の表面弾性波伝搬方向と前記第2の表面弾性波伝搬方向は互いに直交する請求項17に記載の装置(100)。
【請求項19】
前記装置が、少なくとも1つの表面弾性波発生手段(102)に対して、前記強磁性素子に関して前記表面弾性波発生手段と反対側に配置された表面弾性波検知手段を有する請求項2〜18のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項20】
圧電材料を含む前記レイヤー又は前記表面弾性波発生手段の上部に配列された複数の強磁性素子(106)を有する請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項21】
環境パラメータを検知する方法であって、
少なくとも1つの強磁性素子(106)をして、環境量が測定されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、
圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)と相互作用させる工程と、
前記強磁性素子(106)により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記強磁性素子(106)の対応する物理量の値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記強磁性素子(106)の前記物理量は前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記磁気抵抗の変化から、前記量の対応する値を求めることは、
前記動的な測定から、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)の非等方性(アニソトロピー)の程度を求める工程と、
前記非等方性(アニソトロピー)の程度から、前記物理量の対応する値を求める工程と、を有する請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの強磁性素子(106)により作用された前記パラメータの変化は、前記強磁性素子(106)の磁化または磁化方向により引き起こされる請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
磁気画像を形成する方法であって、
複数の配列された強磁性素子(106)をして、その画像が形成されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、
圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記複数の配列された強磁性素子(106)と相互作用させる工程と、
前記強磁性素子(106)により作用された特性パラメータの変化を、前記複数の強磁性素子(106)の各々に対して動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記複数の強磁性素子(106)の対応する物理量の値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項26】
前記強磁性素子(106)の各々の前記物理量は前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記複数の配列された強磁性素子(106)をして環境と相互作用することを可能とすること及び前記表面弾性波を発生することは、全ての強磁性素子(106)に対して同時に並行して行われ、前記変化を動的に測定すること及び対応する値を求めることは、各強磁性素子(106)単位に行われる請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの強磁性素子(106)からの読み出し値を読み出す方法であって、
前記少なくとも1つの強磁性素子(106)における磁化の歳差運動が達成されるとともに、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)の対応する磁化状態は転換されないように、表面弾性波を発生する工程と、
前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記読み出し値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項29】
前記強磁性素子(106)により作用される特性パラメータは、前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記特性パラメータの変化から前記読み出し値を求めることは、
前記表面弾性波発生手段に供給される入力信号と前記特性パラメータの動的測定から得られる出力信号との位相差を求める工程と、
前記位相差から読み出し値を求める工程と、を有する請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記読み出し値は異なる特定の値の数値のみに相当する請求項28〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの強磁性素子(106)を転換する方法であって、
表面弾性波を発生することで、前記強磁性素子(106)における磁化の歳差運動を達成するとともに、前記強磁性素子(106)の対応する磁化状態を方位決定する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項33】
前記強磁性素子(106)の磁化状態を方位決定することは、強磁性素子(106)独特の付加的磁界を発生することにより行われる請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記表面弾性波はレイリー波であり、該レイリー波の第1の半周期中における前記強磁性素子(106)の磁化容易軸と有効磁界との間の角度は90°であるか、又は、
前記表面弾性波はシャーウェーブ(S波)であり、前記強磁性素子(106)の磁化容易軸の方向と前記装置により発生された前記有効磁界の方向との間のなす角度は45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの強磁性素子の読み出しと書き込みを組み合わせた方法であって、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法による転換のために第1の表面弾性波発生手段(102)を用い、請求項21〜23又は請求項26〜28のいずれか一項に記載の方法により検知又は読み出しのために第2の表面弾性波発生手段(402)を用いることを特徴とする方法。
【請求項36】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍において付加的な磁界を供給する請求項21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記表面弾性波は、前記強磁性共振周波数νFMR又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍に実質的に等しい周波数νSAWを有する請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記整数倍は例えば2などの偶数倍である請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜20のいずれかに記載の装置(100)と、磁性材料で作成され、キャンチレバー型(506)構造で保持され、前記装置(100)の強磁性素子(502)の近傍に設けられた先端部(504)を備えた磁気共振器(500)。
【請求項40】
表面弾性波を適用することは前記磁気論理の駆動力である請求項1〜20のいずれかに記載の装置(100)を磁気論理用に使用する方法。
【請求項41】
表面弾性波の使用周波数の能動的同調方法であって、
表面弾性波発生手段(102)により発生された表面弾性波の吸収を強磁性素子(106)でモニターする工程と、
前記吸収特性から、前記表面弾性波の使用周波数と前記強磁性素子(106)の強磁性共振周波数との差を求める工程と、
前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させる工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項42】
前記表面弾性波発生手段(102)の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させることは、前記使用周波数を前記強磁性共振周波数と僅かに異なる周波数に同調させることである請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記周波数は、前記強磁性素子(106)の強磁性共振周波数での表面弾性波の吸収の1%から99%、好ましくは50%から90%、更に好ましくは70%から90%の範囲内で、前記強磁性素子による前記表面弾性波の吸収に対応する請求項42記載の方法。
【請求項1】
磁気特性相互作用を可能とする装置(100)であって、
圧電材料を含み、周波数νSAWの表面弾性波を搬送するように構成されたレイヤーと、
強磁性共振周波数νFMRを有し、磁気弾性エネルギー変換が可能である、少なくとも1つの強磁性素子(106)と、を備え、
前記表面弾性波の周波数νSAWは、実質的には前記強磁性共振周波数νFMR又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍に等しく、前記表面弾性波は前記少なくとも1つの強磁性素子(106)と相互作用して前記強磁性素子(106)の磁化状態に作用することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記装置が、更に、前記周波数νSAWの表面弾性波を発生する少なくとも1つの表面弾性波発生手段(102)を有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記周波数νSAWは、前記強磁性共振周波数νFMR又はその整数倍に対応する吸収ピークの幅の一定部分に対応する幅を含む範囲にあり、前記強磁性共振周波数νFMR又はその整数倍の値近傍に中心を置き、前記部分は100%、好ましくは50%、更に好ましくは25%、更に好ましくは10%、更に好ましくは2%又は更に好ましくは1%である請求項1〜2のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記整数は例えば2などの偶数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記強磁性素子(106)は、前記圧電材料を含むレイヤー又は前記表面弾性波発生手段(102)と接触する請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記強磁性素子(106)は、前記表面弾性波発生手段(102)と直接には接触しない請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記強磁性素子(106)は、前記表面弾性波発生手段(102)の一部である請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記表面弾性波発生手段(102)は、前記圧電材料を含むレイヤーの一部を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記伝搬される表面弾性波は、前記強磁性素子(106)における磁気弾性エネルギー変換により有効磁界を形成し、前記強磁性素子(106)の磁気特性を操作する請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍において付加的な磁界を発生する手段を更に有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記磁気特性は前記強磁性素子(106)の磁化状態である請求項9又は10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記強磁性素子(106)は、磁気要素(200)の機能部分又は構造部分である請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記磁気要素(200)は磁気抵抗装置であるか、又は前記磁気要素はスピンバルブ又はトンネル接合を備える請求項12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記強磁性素子(106)の磁化容易軸の方向と前記有効磁界の方向との間のなす角度は、0°とは異なり、好ましくは45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記表面弾性波発生手段(102)は、少なくとも1つの鉗合変換器(インターディジテッド・トランスデューサ)である請求項2〜14のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記装置が更に別の表面弾性波発生手段(402)を有する請求項2〜15のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記表面弾性波発生手段(102)は、第1の表面弾性波伝搬方向にシャーウェーブ(S波)を発生し、前記更に別の表面弾性波発生手段(402)は、第2の表面弾性波伝搬方向にレイリー波を発生する請求項16に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記第1の表面弾性波伝搬方向と前記第2の表面弾性波伝搬方向は互いに直交する請求項17に記載の装置(100)。
【請求項19】
前記装置が、少なくとも1つの表面弾性波発生手段(102)に対して、前記強磁性素子に関して前記表面弾性波発生手段と反対側に配置された表面弾性波検知手段を有する請求項2〜18のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項20】
圧電材料を含む前記レイヤー又は前記表面弾性波発生手段の上部に配列された複数の強磁性素子(106)を有する請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項21】
環境パラメータを検知する方法であって、
少なくとも1つの強磁性素子(106)をして、環境量が測定されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、
圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)と相互作用させる工程と、
前記強磁性素子(106)により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記強磁性素子(106)の対応する物理量の値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記強磁性素子(106)の前記物理量は前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記磁気抵抗の変化から、前記量の対応する値を求めることは、
前記動的な測定から、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)の非等方性(アニソトロピー)の程度を求める工程と、
前記非等方性(アニソトロピー)の程度から、前記物理量の対応する値を求める工程と、を有する請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの強磁性素子(106)により作用された前記パラメータの変化は、前記強磁性素子(106)の磁化または磁化方向により引き起こされる請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
磁気画像を形成する方法であって、
複数の配列された強磁性素子(106)をして、その画像が形成されるべきである環境と相互作用することを可能とする工程と、
圧電材料を含むレイヤー内に表面弾性波を発生し、前記複数の配列された強磁性素子(106)と相互作用させる工程と、
前記強磁性素子(106)により作用された特性パラメータの変化を、前記複数の強磁性素子(106)の各々に対して動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記複数の強磁性素子(106)の対応する物理量の値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項26】
前記強磁性素子(106)の各々の前記物理量は前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記複数の配列された強磁性素子(106)をして環境と相互作用することを可能とすること及び前記表面弾性波を発生することは、全ての強磁性素子(106)に対して同時に並行して行われ、前記変化を動的に測定すること及び対応する値を求めることは、各強磁性素子(106)単位に行われる請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの強磁性素子(106)からの読み出し値を読み出す方法であって、
前記少なくとも1つの強磁性素子(106)における磁化の歳差運動が達成されるとともに、前記少なくとも1つの強磁性素子(106)の対応する磁化状態は転換されないように、表面弾性波を発生する工程と、
前記強磁性素子により作用された特性パラメータの変化を動的に測定する工程と、
前記特性パラメータの変化から、前記読み出し値を求める工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項29】
前記強磁性素子(106)により作用される特性パラメータは、前記強磁性素子(106)の磁気抵抗である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記特性パラメータの変化から前記読み出し値を求めることは、
前記表面弾性波発生手段に供給される入力信号と前記特性パラメータの動的測定から得られる出力信号との位相差を求める工程と、
前記位相差から読み出し値を求める工程と、を有する請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記読み出し値は異なる特定の値の数値のみに相当する請求項28〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの強磁性素子(106)を転換する方法であって、
表面弾性波を発生することで、前記強磁性素子(106)における磁化の歳差運動を達成するとともに、前記強磁性素子(106)の対応する磁化状態を方位決定する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項33】
前記強磁性素子(106)の磁化状態を方位決定することは、強磁性素子(106)独特の付加的磁界を発生することにより行われる請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記表面弾性波はレイリー波であり、該レイリー波の第1の半周期中における前記強磁性素子(106)の磁化容易軸と有効磁界との間の角度は90°であるか、又は、
前記表面弾性波はシャーウェーブ(S波)であり、前記強磁性素子(106)の磁化容易軸の方向と前記装置により発生された前記有効磁界の方向との間のなす角度は45°より大きく、更に好ましくは80°より大きく、最も好ましくは90°である請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの強磁性素子の読み出しと書き込みを組み合わせた方法であって、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法による転換のために第1の表面弾性波発生手段(102)を用い、請求項21〜23又は請求項26〜28のいずれか一項に記載の方法により検知又は読み出しのために第2の表面弾性波発生手段(402)を用いることを特徴とする方法。
【請求項36】
前記強磁性共振周波数又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍において付加的な磁界を供給する請求項21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記表面弾性波は、前記強磁性共振周波数νFMR又は前記強磁性共振周波数νFMRの整数倍に実質的に等しい周波数νSAWを有する請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記整数倍は例えば2などの偶数倍である請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜20のいずれかに記載の装置(100)と、磁性材料で作成され、キャンチレバー型(506)構造で保持され、前記装置(100)の強磁性素子(502)の近傍に設けられた先端部(504)を備えた磁気共振器(500)。
【請求項40】
表面弾性波を適用することは前記磁気論理の駆動力である請求項1〜20のいずれかに記載の装置(100)を磁気論理用に使用する方法。
【請求項41】
表面弾性波の使用周波数の能動的同調方法であって、
表面弾性波発生手段(102)により発生された表面弾性波の吸収を強磁性素子(106)でモニターする工程と、
前記吸収特性から、前記表面弾性波の使用周波数と前記強磁性素子(106)の強磁性共振周波数との差を求める工程と、
前記表面弾性波発生手段の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させる工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項42】
前記表面弾性波発生手段(102)の使用周波数を前記強磁性共振周波数に向けて同調させることは、前記使用周波数を前記強磁性共振周波数と僅かに異なる周波数に同調させることである請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記周波数は、前記強磁性素子(106)の強磁性共振周波数での表面弾性波の吸収の1%から99%、好ましくは50%から90%、更に好ましくは70%から90%の範囲内で、前記強磁性素子による前記表面弾性波の吸収に対応する請求項42記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
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【図13b】
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【図17】
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【図18b】
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【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2007−517389(P2007−517389A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546103(P2006−546103)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014815
【国際公開番号】WO2005/064590
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014815
【国際公開番号】WO2005/064590
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【Fターム(参考)】
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