説明

磁気メモリ

【課題】 書き込み電流の大きさを低減可能な磁気メモリを提供する。
【解決手段】 読み出し時のスピンフィルタを構成する読み出し用強磁性体5の磁化の向きは、固定層1の磁化の向きと同一である。この場合、スピン分極電流によってフリー層3のスピンに働くトルクが「零」となる。磁気メモリの集積度を向上させるように、素子寸法を小さくすると、スケーリング則に従って、書き込み電流を小さくすることができる。本発明では、読み出し電流によるスピン注入磁化反転に対する耐性が高くなっているため、書き込み電流の大きさを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリとしてMRAM(Magnetic Random Access Memory)が注目されている。MRAMは、フリー層(感磁層)の磁化の向きを制御することで情報を記憶し、このフリー層を透過する電子量を測定することで、記憶された情報を読み出す記憶素子である。当初、記憶素子への書き込みにおいては、記憶素子近傍に電線を配置し、電流を流すことによって生じる誘導磁界によって、フリー層の磁化の向きを変化させていた。しかしながら、誘導磁界による書き込みは、隣接する記憶素子への誤書き込みが生じやすい。この手法では、空間へ磁気エネルギーが発散するため、書き込み効率が悪く、書き込み電流が大きくなるという欠点がある。
【0003】
そこで、軟磁性体等により磁路を構築し、この磁路内に磁界を通して、磁界を集中的に記憶素子へ供給すると、書き込み効率を改善することも可能である。しかしながら、軟磁性体そのものを駆動するために、大きなエネルギーが必要であり、書き込み効率を大きく上げることは困難である。
【0004】
そこで、近年、スピン注入法による書き込み方法に注目が集まっている。すなわち、フリー層の磁化の向きは、スピン注入法によって変化させることができる。なお、磁化とは、磁性材料中の電子スピンの向きが揃った状態のことである。磁性体内に逆向きのスピンを有する電子を注入すると、注入スピンに応じて磁性材料内の磁化の向きが反転する(スピン注入磁化反転)。スピン注入磁化反転を生じさせるためには、一般には比較的大きな電流が必要と思われていたが、比較的小さな電流であっても磁化反転が生じること知られるようになった。
【0005】
この分野における学術的な研究としては、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載のものが知られている。非特許文献1では、複数の磁性体層を有するデバイスについて説明されており、鏡対称構造の場合にトルクについて議論されている。また、非特許文献2にはスピントランジスタが開示されているが、このトランジスタにおける磁化反転は外部磁場を用いて行っている。非特許文献3では、2つの磁性膜が非磁性膜を介して積層された系のスピントルクが示されている。
【0006】
次に、スピン注入を用いた書き込み方法について説明する。
【0007】
図11は、スピン注入を用いた従来の磁気抵抗効果素子(メモリ素子)の断面図である。
【0008】
メモリ素子10は、フリー層3と、強磁性体からなる固定層1と、フリー層3と固定層1との間に介在する中間非磁性層2とを備えている。フリー層3の中間非磁性層2とは反対側の面には、非磁性層4及び強磁性層5からなるスピンフィルタが設けられている。
【0009】
データの書き込み時において、端子Aと端子Bとの間にバイアス電圧を与えると、各層の厚み方向に電流が流れる。電流を流すことにより、スピンフィルタを介して或いはスピンフィルタで反射されてフリー層3内に注入された特定の極性のスピンが、フリー層3の磁化の向きにトルクを与え、この磁化の向きが注入されたスピンの極性に一致してくる。
【0010】
データの読み出し時において、固定層1の磁化の向きとフリー層3の磁化の向きが一致している場合、中間非磁性層2を通過するスピン分極電流は大きく、この場合、例えば「1」が書き込まれている。また、固定層1の磁化の向きとフリー層3の磁化の向きが逆転している場合、中間非磁性層2を通過するスピン分極電流は小さく、この場合、例えば「0」が書き込まれている。
【0011】
ここで、固定層1の磁化の向きと、強磁性層5の磁化の向きとは反対である。
【0012】
図12は、上述のメモリ素子10を複数配列してなる磁気メモリの回路図である。
【0013】
ワード線W1にHレベルの制御信号を与えると、トランジスタQ1がONし、ビット線B1からメモリ素子10及びトランジスタQ1を介してグランドに電流が流れる。X座標指定回路20によってビット線B1の電位を制御し、Y座標指定回路30によってワード線W1の電位を制御する。
【0014】
データの読み出し時において、これらの回路によって、特定のアドレスのワード線W1とビット線B1の電位を共に上昇させると、トランジスタQ1がONし、このアドレスに位置するメモリ素子10の抵抗値に応じた電流がビット線B1に流れる。この電流を抵抗に流し、この抵抗の電圧降下をコンパレータに入力すれば、コンパレータからは、電流の大きさに応じたデジタル値、すなわち、メモリ素子10に記憶された情報が出力される。
【0015】
デジタル値の書き込み時において、上記回路によって、特定のアドレスのワード線W1の電位を上昇させるとトランジスタQ1がONし、このときビット線B1の電位を大きく上昇又は下降させると、このアドレスに位置するメモリ素子10に電流が流れる。このときの電流は読み出し時よりも大きく設定される。したがって、メモリ素子10の内部においてスピン注入が行われ、注入されたスピンの極性に応じてフリー層の磁化の向きが決定される。
【0016】
図13は、メモリ素子10に流す電流IとMR比(抵抗変化率)との関係を示すグラフである。
【0017】
このグラフにはヒステリシス曲線が描かれている。図から理解できるように、絶対値が閾値ITH以上の大きさの電流を流すと、フリー層の磁化の向きを反転させることができる。すなわち、データの書き込みには、スピン注入磁化反転が生じる大きさ電流(ΔI以上ΔI以下)をメモリ素子10に供給し、データ読み出しにはスピン注入磁化反転が生じない大きさの電流(ΔI未満)を、メモリ素子10に供給する。
【非特許文献1】L.Berger, 「Spin−wave emitting diodes and spin diffusion in magnetic multilayers」, IEEE Trans. Mag. Vol.34, Issue 6, p.3837−3841, 1998
【非特許文献2】M. Johnson, 「Bipolar spin switch」, Science, Vol.260, pp.320−322, 1993
【非特許文献3】J. C. Slonczewski, 「Current−Driven Excitation of Magnetic Multilayer」, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, vol. 159, p 159, L1−L5,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述の構造の素子の場合、例えば、読み出し電流は書き込み電流の1/10以下の値に設定するが、小さな電流は測定が困難であるので、読み出し時には0.2〜0.5mA以上の電流が必要となる。この場合、書き込み電流は5mA程度に設定する必要がある。上述の構造の場合、書き込み電流は基本的には、これ以上小さくすることができない。なお、集積度を高めるために素子寸法を小さくすると、書き込み電流は低下させることが可能であるが、読み出し電流は検出限界よりも小さくなってしまう。
【0019】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、書き込み電流の大きさを低減可能な磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するため、本発明に係る磁気メモリは、磁気抵抗効果素子を有する記憶領域を1又は複数配置してなる磁気メモリにおいて、個々の磁気抵抗効果素子は、フリー層と、強磁性体からなる固定層と、フリー層と固定層との間に介在する中間非磁性層と、固定層とは逆の磁化の向きを有し、固定層との間の電流経路内にフリー層が位置し、且つ、フリー層との間の電流経路内に第1非磁性層が位置するように設けられた書き込み用強磁性体と、固定層と同一の磁化の向きを有し、固定層との間の電流経路内にフリー層が位置し、且つ、フリー層との間の電流経路内に第2非磁性層が位置するように設けられた読み出し用強磁性体とを備えることを特徴とする。
【0021】
磁気抵抗効果素子は、フリー層の磁化の向きと、固定層の磁化の向きに応じて、デジタルデータを記憶する。すなわち、固定層の磁化の向きとフリー層の磁化の向きが一致している場合、中間非磁性層を通過するスピン分極電流は大きく、この場合、例えば「1」が書き込まれているとする。固定層の磁化の向きとフリー層の磁化の向きが逆転している場合、中間非磁性層を通過するスピン分極電流は小さく、この場合、例えば「0」が書き込まれているとする。
【0022】
この素子においては、フリー層への注入電流を与える書き込み時の電流経路内に、第1非磁性層及び書き込み用強磁性体が位置している。これらはスピンフィルタとして機能し、フリー層へ注入されるスピン分極電流を生成する。
【0023】
この素子においては、フリー層への注入電流を与える読み出し時の電流経路内に、第2非磁性層及び読み出し用強磁性体が位置している。これらもスピンフィルタとして機能し、フリー層を通過するスピン分極電流を生成する。
【0024】
ここで、読み出し時のスピンフィルタを構成する読み出し用強磁性体の磁化の向きは、固定層の磁化の向きと同一である。この場合、スピン分極電流によってフリー層のスピンに働くトルクが「零」となる。すなわち、読み出し電流を大きくしても、スピン注入磁化反転が生じない。換言すれば、書き込み時のスピンフィルタを構成する書き込み用磁性体の磁化の向きは、固定層の磁化の向きとは逆であり、スピン分極電流によってフリー層のスピンにトルクが働くこととなる。このように、この素子では、素子寸法を小さくして書き込み電流の大きさを低減しても、従来のように読み出し電流を検出限界以下まで低減させる必要がないため、書き込み電流の大きさを低減することができる。
【0025】
この素子が、固定層と読み出し及び書き込み用の強磁性体だけでなく、他の強磁性層を備えている場合においても、読み出し電流を低減しないですむ構造を採用することができる。
【0026】
すなわち、本発明の磁気メモリにおいて、個々の前記記憶領域は、フリー層を通る第1電流経路の一端に設けられた書き込み用端子と、フリー層を通る第2電流経路の一端に設けられた読み出し用端子と、第1又は第2電流経路の他端に設けられた共通端子とを備えている。
【0027】
ここで、各層は以下の対称性の条件を満たしている。
【0028】
すなわち、第1電流経路内において、フリー層から書き込み用端子へ向かう間に存在するグループW(書き込み)に属する強磁性体の数と、フリー層から共通端子へ向かう間に存在するグループC(共通)に属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、グループWに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、フリー層からみて互いに逆である。
【0029】
また、第2電流経路内において、フリー層から読み出し用端子へ向かう間に存在するグループR(読み出し)に属する強磁性体の数と、グループCに属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、グループRに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、フリー層からみて同一である。
【0030】
この場合、データの読み出し時においては、グループRの強磁性層とグループCの強磁性層の磁化の向きの配列は、フリー層からみて同一であるため、フリー層のスピンに働くトルクを「零」とすることができる。一方、データ書き込み時においては、グループWの強磁性層とグループCの強磁性層の磁化の向きの配列は、フリー層からみて逆であるため、フリー層のスピンに効果的にトルクを与えることができる。
【0031】
なお、固定層をシンセティック型の構造としてもよい。
【0032】
すなわち、グループCに属する強磁性体は、固定層と、固定層とは反平行に磁化した第1強磁性層とであり、第1強磁性層と固定層との間には第3非磁性層が介在している。固定層、第1強磁性層、及び第1強磁性層と固定層との間に介在する第3非磁性層はシンセティック構造を構成している。この場合、2つの強磁性膜(固定層、第1強磁性層)が互いに反平行に磁化配向されて反強磁性的に強く結合し、かつ両強磁性膜の磁気モーメントが互いに打ち消し合うことにより、フリー層への静磁的作用による悪影響が解消され又は低減される。
【0033】
このようなシンセティック型の構造を採用する場合、スピンフィルタは上述の対称性の条件を満たすため、以下の構造を採用する。
【0034】
すなわち、グループWに属する強磁性体は、固定層とは逆の磁化の向きを有する書き込み用強磁性体と、第1強磁性層とは逆の磁化の向きを有する第2強磁性層とであり、書き込み用強磁性体と第2強磁性層との間には第4非磁性層が介在し、グループRに属する強磁性体は、固定層と同一の磁化の向きを有する読み出し用強磁性体と、第1強磁性層と同一の磁化の向きを有する第3強磁性層とであり、読み出し用強磁性体と第3強磁性層との間には第5非磁性層が介在していることを特徴とする。
【0035】
すなわち、上述の対称性の条件を満たすように、シンセティック型の構造における第1強磁性層の磁化の向きは、書き込み時においては、第2強磁性層の磁化の向きと逆であり、第3非磁性層に対応して第4非磁性層が位置している。したがって、書き込み時においては、フリー層のスピンにトルクが働く。
【0036】
一方、シンセティック型の構造における第1強磁性層の磁化の向きは、読み出し時においては、第3強磁性層の磁化の向きと同一であり、対称性の観点から、第3非磁性層に対応して第5非磁性層が位置している。したがって、書き込み時においては、フリー層のスピンに働くトルクが「零」となる。
【0037】
また、個々の記憶領域は、半導体層と、半導体層上に設けられた絶縁層と、絶縁層上に設けられた磁気抵抗効果素子とを有しており、書き込み用端子は、第1半導体スイッチ部を介して第1ビット線に接続され、読み出し用端子は、第2半導体スイッチ部を介して第2ビット線に接続され、第1及び第2半導体スイッチ部の制御端子は、第1及び第2コントロール線にそれぞれ接続されている。
【0038】
この構造の場合、第1ビット線を介して書き込み用端子に書き込み電流を供給することができ、第2ビット線を介して読み出し用端子に読み出し電流を供給することができる。各ビット線を流れる電流の有無は、制御端子に接続された第1及び第2コントロール線の電位を制御し、第1及び第2半導体スイッチ部をON/OFF制御することによって制御することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の磁気メモリによれば、書き込み電流の大きさを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、実施の形態に係る磁気メモリについて説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。実施の形態に係る磁気メモリは、1又は複数の記憶領域を配置してなり、各記憶領域はデジタル値を記憶する磁気抵抗効果素子(メモリ素子)を有している。
【0041】
図1は、各記憶領域が有するメモリ素子10の断面図である。
【0042】
このメモリ素子10は、フリー層3と、固定層1と、フリー層3と固定層1との間に接触して介在する中間非磁性層2とを備えている。フリー層3の中間非磁性層2とは反対側の面には、非磁性層4が接触しており、非磁性層4のフリー層3とは反対側の面には、書き込み用強磁性体5と読み出し用強磁性体5とが接触している。固定層1には共通端子Tが電気的に接続され、書き込み用強磁性体5には書き込み用端子Tが電気的に接続され、読み出し用強磁性体5には読み出し用端子Tが電気的に接続されている。
【0043】
詳説すれば、この記憶領域は、フリー層3を通る第1電流経路Pの一端に設けられた書き込み用端子Tと、フリー層3を通る第2電流経路Pの一端に設けられた読み出し用端子Tと、第1又は第2電流経路の他端に設けられた共通端子Tとを備えている。
【0044】
各層の属性は以下の通りである。なお、層の厚み方向をX軸方向とし、これに垂直な方向をZ軸方向する。
・固定層1:磁化の向きが−Z軸方向に固定された強磁性体であり、Coなどからなる。
・中間非磁性層2:トンネル効果が生じる厚さ(数nm)の非磁性絶縁層(Al又はMgO)又はスピンフィルタとして機能するCuなどの導電層
・フリー層3:軟磁性の強磁性体からなり、磁化の向きは注入されたスピンに応じて自由に回転可能な磁性層
・非磁性層4:Cu又はRuなどの導電体(又はトンネル効果が生じる厚さの絶縁体)
・書き込み用強磁性体5:磁化の向きが+Z軸方向に固定された強磁性体
・読み出し用強磁性体5:磁化の向きが−Z軸方向に固定された強磁性体
【0045】
なお、強磁性とは、隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質の磁性であり、強磁性体は外部磁場が無い場合においても自発磁化を有する。室温で強磁性を示す物質としては、Fe、Co、Ni及びGdがある。強磁性体としては、Co、Ni−Fe合金、Co−Fe合金を好適に用いることができる。
【0046】
書き込み用強磁性体5は、固定層1とは逆の磁化の向き(+Z)を有しており、書き込み用強磁性体5と固定層1との間の電流経路P内にフリー層3が位置し、且つ、書き込み用強磁性体5とフリー層3との間の電流経路P内に、非磁性層4における書き込み側の部分(第1非磁性層4)が位置するように設けられている。
【0047】
読み出し用強磁性体5は、固定層1と同一の磁化の向き(−Z)を有しており、読み出し用強磁性体5と固定層1との間の電流経路P内にフリー層3が位置し、且つ、読み出し用強磁性体5とフリー層3との間の電流経路P内に、非磁性層4における読み出し側の部分(第2非磁性層4)が位置するように設けられている。
【0048】
メモリ素子10は、フリー層3の磁化の向きと、固定層1の磁化の向きに応じて、デジタルデータを記憶する。すなわち、固定層1の磁化の向きとフリー層3の磁化の向きが一致している場合、中間非磁性層2を通過するスピン分極電流は大きくなり、この場合、例えば「1」が書き込まれていることとなる。固定層1の磁化の向きとフリー層3の磁化の向きが逆転している場合、中間非磁性層2を通過するスピン分極電流は小さく、この場合、例えば「0」が書き込まれていることとなる。
【0049】
メモリ素子10においては、フリー層3への注入電流を与える書き込み時の電流経路P内に、第1非磁性層4及び書き込み用強磁性体5が位置している。これらはスピンフィルタとして機能し、スピンフィルタは端子Tから入力された電子のうち特定の極性のスピンを透過させてフリー層3内へ注入する又は端子Tから入力された電子のうち逆極性のスピンをフリー層3内へ反射して注入する。このように、スピンフィルタは、スピン分極電流を生成している。
【0050】
メモリ素子10においては、フリー層3への注入電流を与える読み出し時の電流経路P内に、第2非磁性層4及び読み出し用強磁性体5が位置している。これらも同様にスピンフィルタとして機能し、フリー層3を通過するスピン分極電流を生成する。
【0051】
ここで、読み出し時のスピンフィルタを構成する読み出し用強磁性体5の磁化の向きは、固定層1の磁化の向きと同一である。この場合、スピン分極電流によってフリー層3のスピンに働くトルクが「零」となる。すなわち、共通端子Tと読み出し用端子Tとの間に流れる読み出し電流を大きくしても、フリー層3においてスピン注入磁化反転が生じない。換言すれば、書き込み時のスピンフィルタを構成する書き込み用磁性体5の磁化の向きは、固定層1の磁化の向きとは逆であり、スピン分極電流によってフリー層3のスピンにトルクが働くこととなる。
【0052】
上述のメモリ素子10においては、磁気メモリの集積度を向上させるように、素子寸法を小さくすると、スケーリング則に従って、書き込み電流を小さくすることができるが、読み出し電流によるスピン注入磁化反転に対する耐性が高くなっているため、従来のように、書き込み電流に併せて読み出し電流を検出限界以下まで低減させる必要がない。したがって、書き込み電流の大きさを低減することができる。
【0053】
図2は、別の実施形態に係るメモリ素子10の断面図である。
【0054】
この実施形態のメモリ素子10は、図1に示したものと比較して、書き込み用強磁性体5と読み出し用強磁性体5の取り付け位置のみが異なり、他の構成は同一である。すなわち、
書き込み用強磁性体5は、非磁性層4のフリー層3とは反対側の面の全面に接触して設けられており、読み出し用強磁性体5は、非磁性層4の前記全面に垂直な側面に接触して設けられている。このように、本例では書き込み用強磁性体5と読み出し用強磁性体5の取り付け位置のみが異なり、機能は上述のものと同一であり、書き込み電流の低減効果を奏する。
【0055】
なお、メモリ素子10が、固定層1、書き込み用強磁性体5及び読み出し用強磁性体5だけでなく、他の強磁性層を備えている場合においても、読み出し電流を低減しないですむ構造を採用することができる。
【0056】
次に、固定層1からのフリー層への影響を抑制するため、シンセティック型の構造を採用したものについて説明する。
【0057】
図3は、図1に示したメモリ素子にシンセティック型の固定層を付加したメモリ素子の断面図である。なお、この素子の機能は図1のものと同一である。
【0058】
シンセティック型の固定層Sは、上述の固定層1と、固定層1とは反平行に磁化した第1強磁性層1bを備えており、第1強磁性層1bと固定層1との間には第3非磁性層1aが介在している。この場合、2つの強磁性膜(固定層1、第1強磁性層1b)が互いに反平行に磁化配向されて反強磁性的に強く結合し、かつ両強磁性膜の磁気モーメントが互いに打ち消し合うことにより、フリー層3への静磁的作用による悪影響が解消され又は低減される。
【0059】
ここで、複数の強磁性層を有するメモリ素子において、フリー層3のスピンへのトルクが零となる対称性について説明する。
【0060】
フリー層3からみて、共通端子T側の材料層をグループC、書き込み用端子T側の材料層をグループW、読み出し用端子T側の材料層をグループRとする。
【0061】
シンセティック型の固定層を採用する場合、グループCに属する強磁性体は、固定層1と、固定層1とは反平行に磁化した第1強磁性層1bであり、第1強磁性層1bと固定層1との間には非磁性層(第3非磁性層)1aが介在している。
【0062】
ここで、各層は以下の対称性の条件を満たしている。
【0063】
すなわち、第1電流経路P内において、フリー層3から書き込み用端子Tへ向かう間に存在するグループW(書き込み)に属する強磁性体の数と、フリー層3から共通端子Tへ向かう間に存在するグループC(共通)に属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、グループWに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、フリー層3からみて互いに逆である。
【0064】
また、第2電流経路P内において、フリー層3から読み出し用端子Tへ向かう間に存在するグループR(読み出し)に属する強磁性体の数と、グループCに属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、グループRに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、フリー層3からみて同一である。
【0065】
この場合、データの読み出し時においては電流経路Pを用いるが、グループRの強磁性層とグループCの強磁性層の磁化の向きの配列は、フリー層からみて同一であって対称性を有しているため、フリー層3のスピンに働くトルクを「零」とすることができる。一方、データ書き込み時においては電流経路Pを用いるが、グループWの強磁性層とグループCの強磁性層の磁化の向きの配列は、フリー層3からみて逆であるため、フリー層のスピンに効果的にトルクを与えることができる。
【0066】
シンセティック構造を採用する本例の場合、グループWに属する強磁性体は、固定層1とは逆の磁化の向きを有する書き込み用強磁性体5と、第1強磁性層1bとは逆の磁化の向きを有する第2強磁性層5Wbであり、書き込み用強磁性体5と第2強磁性層5Wbとの間には第4非磁性層5Waが介在している。
【0067】
また、グループRに属する強磁性体は、固定層1と同一の磁化の向きを有する読み出し用強磁性体5と、第1強磁性層1bと同一の磁化の向きを有する第3強磁性層5Rbとであり、読み出し用強磁性体5と第3強磁性層5Rbとの間には第5非磁性層5Raが介在している。
【0068】
この場合、上述の対称性の条件が満たされている。すなわち、シンセティック型の構造における第1強磁性層1bの磁化の向き(+Z)は、書き込み時においては、第2強磁性層5Wbの磁化の向き(−Z)と逆であり、第3非磁性層1aに対応して第4非磁性層5Waが位置している。したがって、書き込み時においては、フリー層3のスピンにトルクが働く。
【0069】
一方、シンセティック型の構造における第1強磁性層1bの磁化の向きは、読み出し時においては、第3強磁性層5Rbの磁化の向きと同一であり、対称性の観点から、第3非磁性層1aに対応して第5非磁性層5Raが位置している。したがって、書き込み時においては、フリー層3のスピンに働くトルクが「零」となる。
【0070】
図4は、別の実施形態に係るメモリ素子10の断面図である。
【0071】
この実施形態のメモリ素子10は、図3に示したものと比較して、グループWの材料層とグループRの材料層の取り付け位置のみが異なり、他の構成は同一である。すなわち、書き込み用強磁性体5は、非磁性層4のフリー層3とは反対側の面の全面に接触して設けられており、読み出し用強磁性体5は、非磁性層4の前記全面に垂直な側面に接触して設けられている。
【0072】
更に、グループWの非磁性層5Waが書き込み用強磁性体5の非磁性層4とは反対側の面に接触しており、強磁性層5Wbが非磁性層5Waの書き込み用強磁性体5とは反対側の面に接触している。また、グループRの非磁性層5Raが、読み出し用強磁性体5の非磁性層4との界面とは反対側の面に接触しており、強磁性層5Rbが非磁性層5Raの読み出し用強磁性体5とは反対側の面に接触している。
【0073】
このように、本例ではグループWの材料層とグループRの材料層の取り付け位置のみが異なり、機能は上述のものと同一であり、書き込み電流の低減効果を奏する。
【0074】
図5は、磁気メモリの回路図である。
【0075】
磁気メモリは、1又は複数の記憶領域Mを備えている。個々の記憶領域Mは、上述のメモリ素子10を備えており、書き込み用端子Tは、第1半導体スイッチ部(トランジスタ)Qを介して第1ビット線B1に接続され、読み出し用端子Tは、第2半導体スイッチ部(トランジスタ)Qを介して第2ビット線B2に接続されている。また、トランジスタQ,Qの制御端子(ゲート)は、第1コントロール線(ワード線)W1及び第2コントロール線(ワード線)W2にそれぞれ接続されている。
【0076】
この構造の場合、第1ビット線B1して書き込み用端子Tに書き込み電流を供給することができ、第2ビット線B2を介して読み出し用端子Tに読み出し電流を供給することができる。各ビット線を流れる電流の有無は、制御端子に接続されたワード線W1,W2の電位を制御し、トランジスタQ,QをON/OFF制御することによって制御することができる。
【0077】
ワード線W1にHレベルの制御信号を与えると、トランジスタQがそれぞれONし、ビット線B1から、トランジスタQ及び書き込み用端子Tを介してメモリ素子10に電流が流れ、この電流は共通端子Tを介してグランドに電流が流れる。X座標指定回路20によってビット線B1の電位を制御し、Y座標指定回路30によってワード線W1の電位を制御する。
【0078】
デジタル値の書き込み時において、X座標指定回路20及びY座標指定回路30によって、特定のアドレスのワード線W1の電位を上昇させるとトランジスタQがONし、このときビット線B1の電位を大きく上昇又は下降させると、このアドレスに位置するメモリ素子10に書き込み用端子Tを介して電流が流れる。したがって、メモリ素子10の内部においてスピン注入が行われ、注入されたスピンの極性に応じてフリー層3の磁化の向きが決定される。
【0079】
データの読み出し時において、X座標指定回路20及びY座標指定回路30によって、特定のアドレスのワード線W2とビット線B2の電位を共に上昇させると、トランジスタQがONし、このアドレスに位置するメモリ素子10の抵抗値に応じた電流が、読み出し用端子Tを介してビット線B2に流れる。この電流をビット線B2に直接に接続された抵抗R1に流し、この抵抗R1の電圧降下を基準電位Vrefと比較するコンパレータCOMPに入力すれば、コンパレータCOMPからは、電流の大きさに応じたデジタル値、すなわち、メモリ素子10に記憶された情報が出力される。
【0080】
図6は、記憶領域Mの断面図である。
【0081】
この記憶領域Mは、半導体層100と、半導体層100上に設けられた絶縁層200と、絶縁層200上に設けられたメモリ素子10とを有している。半導体層100には、MOSトランジスタQとQが形成されており、これらのゲートは半導体層100上に設けられたSiO層101上に形成され、それぞれワード線W2、W1を兼用している。なお、ビット線B1,B2は絶縁層200内に埋設されている。トランジスタQ,QWのドレイン(又はソース領域RR,RW)からは絶縁層200の厚み方向に沿って、絶縁層200内を貫通する垂直電極P1、P2が延びており、垂直電極P1、P2はそれぞれメモリ素子10の端子T、Tに電気的に接続されている。
【0082】
次に、上述の対称性の原理について若干の補足説明をしておく。
【0083】
本発明は多層膜のトルクを利用するが、従来、多層膜に適用できる精密な理論は知られていない。本発明は積層膜構造に対する群論を適用して考案され、対称性だけを用いているため、理論の詳細には拠らない一般的な結論を拠り所とし、それを実験的に確認して本発明がなされた。
【0084】
図7は2つの強磁性膜を有する素子を示す図である。また、図8は3つの強磁性膜を有する素子を示す図である。
【0085】
F1、F2、F3は強磁性体を示し、N、N1、N2は非磁性導電体を示す。図7(a)に示すように、積層中心となる非磁性体Nに対して対称に強磁性体F1,F2を配置する。
図8(a)では、積層中心となる強磁性体F2に対して対称に強磁性体F1,F3及び非磁性体N1,N2を配置する。図7では2枚、図8では3枚の強磁性体を示すが、それぞれ任意の偶数枚、奇数枚であってもよい。対称関係にある膜は、厚さ、組成、磁気異方性が等しいものとする。中心軸Oをはさんで向かい合う面に働くスピントルクの関係を、対称性を使って一般的に調べる。
【0086】
図7(a)、図8(a)において座標系を積層方向X、面内の磁化容易軸をZと定義する。磁化ベクトルはXZ面内で回転する。Z方向から(−Z)方向に磁化反転する際、Z軸の周りに歳差運動で回転するが、磁化反転は任意の角で歳差運動を停止して扱ってよいことがLLG(ランダウ−リフシッツ−ギルバート)方程式から証明されているので、ここではZX面で反転するとして、一般性を失わない。中心の膜面の位置における鏡映対称操作をσxとする。Rx、Ry、Rzは、それぞれX、Y,Z軸回りの回転対称操作を示し、Tは時間反転操作を示す。TRx、TRy、TRzは、それぞれ、Rx、Ry、Rzの回転対称操作(180度回転)させた後の時間反転操作を示す。なお、物理現象の検討においては、磁化と電流の不変性を同時に満たさねばならない。
【0087】
図9に、対称操作を施したときのX方向の電流Ix、X方向の磁化Sx、Y方向の磁化Sz、X方向のトルクTx、Z方向のトルクTzを示す。これらのパラメータの変換性が異なる理由は、電流は時間反転奇のベクトル、磁化は時間反転奇の擬ベクトル、トルクは時間反転偶の擬ベクトルであることによる。パラメータが反転すればマイナスとなる。1次元表現なので、変換はプラスまたはマイナス符号が付くだけである。正しい対称操作はIxが不変であること、3層膜ではSx、Szが不変になるものである。
【0088】
図9において、Rxは向かい合う面の情報を与えないので除かれる。結論として、2層膜ではTσx、TRzが適用され、3層膜ではSxとSzが不変のTRyが適用される。
【0089】
図7(b)に示すように、電流Ixを流すと、強磁性体F2内のスピン(spin)に対してトルク(torque)が働く。これに、対称操作Tσxを行うと、図7(c)に示すように、等価な強磁性体F1のスピンには同じ大きさ、同じ向き(左回転)のトルクが働く。また、図7(e)に示すように、図7(d)のものに、対称操作TRzを行うと、等価な強磁性体F1には同じ大きさで同じ向き(右回り)のトルクが働く。図7(b)〜図7(e)の結果は、Slonczewskiの理論と一致する。
【0090】
図8(b)のものに対称操作TRyを適用すると、図8(c)に示すように、強磁性体F1とF3のスピンが平行な場合、中心の強磁性体F2において、大きさが同じで逆向きのトルクが働く。この原理は、今回初めて発見した。
【0091】
本発明は、図8の構造において、向かい合った層のスピンを平行にすると、中心の膜(強磁性体F2)においてトルクが打ち消しあうことを利用する。すなわち、図8における中心の膜F2をフリー層とし場合、それに対して鏡映対称の関係にある層の磁化を平行にすることによって、フリー層のトルクをゼロにできる。この原理は任意の奇数層の磁性多層膜に適用できる。さらに、この原理は磁性層や非磁性層の材質によらない。また、非磁性層N1.N2はCuのような金属膜でもアルミナやMgOのような絶縁トンネル膜でもかまわない。
【0092】
ここで、図11の層構造モデルにおいてスピン注入磁化反転を考えると、フィルタ層(強磁性体5)の磁化の向きが、固定層1の磁化の向きと異なる方向である場合には、電流Ixを流すとフリー層3のスピンにトルクがはたらき、磁化方向が反転する。しかし、フィルタ層(強磁性体5)の磁化の向きが固定層1の磁化の向きと同方向である場合には、トルクが相殺するため磁化方向が反転しない。
【0093】
この現象は、図1に示した3層構造ばかりでなく、フリー層3を対称軸とした鏡面構造であれば成立する。磁化の向きも含めて鏡面対称であれば、フリー層3においてトルクは発生せず、磁化反転しない。しかしながら、層構造は対称であっても、軸の向きが反対方向を向いているとトルクが発生して磁化反転する。
【0094】
この現象を用いると、固定層1の磁化の向きとフィルタ層(強磁性体5)の磁化の向きを調整することにより、図13に示したヒステリシスに影響されず、書き込み電流を下げつつ読み出し電流を精度よく読みとることが可能である。
【0095】
図1(第1実施形態)、図2(第2実施形態)、図3(第3実施形態)、図4(第4実施形態)に示したメモリ素子を作製した。電子線リソグラフイとイオンミリングを用いて大きさ60〜150nmの楕円形の試料を作製した。この試料はリフトオフ法により絶縁膜で被覆し、最後に絶縁膜上に電極膜を成膜した。試料は磁性膜(強磁性体)と非磁性膜からなる。磁性膜はCoとし、非磁性膜はCuとした。
【0096】
図10は、この試料に1mAを通電したときの磁化反転の有無を示す。いずれの場合も書き込み時は磁化反転を起こし、読み出しでは磁化反転が起こらなかった。また、強磁性体の材料をCoFe又はCoFeBとした場合も同様の結果が得られた。したがって、本発明は強磁性体や非磁性体の材料によらず適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】各記憶領域が有するメモリ素子10の断面図である。
【図2】別の実施形態に係るメモリ素子10の断面図である。
【図3】図1に示したメモリ素子にシンセティック型の固定層を付加したメモリ素子の断面図である。
【図4】別の実施形態に係るメモリ素子10の断面図である。
【図5】磁気メモリの回路図である。
【図6】記憶領域Mの断面図である。
【図7】2つの強磁性膜を有する素子を示す図である。
【図8】3つの強磁性膜を有する素子を示す図である。
【図9】対称操作を施したときのX方向の電流Ix、X方向の磁化Sx、Y方向の磁化Sz、X方向のトルクTx、Z方向のトルクTzを示す表である。
【図10】この試料に1mAを通電したときの磁化反転の有無を示す。
【図11】スピン注入を用いた従来の磁気抵抗効果素子(メモリ素子)の断面図である。
【図12】上述のメモリ素子10を複数配列してなる磁気メモリの回路図である。
【図13】メモリ素子10に流す電流IとMR比(抵抗変化率)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1・・・固定層、1a・・・非磁性層、2・・・中間非磁性層、3・・・フリー層、4・・・・非磁性層、4・・・非磁性層、4・・・非磁性層、5・・・強磁性層、5・・・書き込み用強磁性体、5・・・読み出し用強磁性体、5Wb・・・強磁性層、5Rb・・・強磁性層、5Wa・・・非磁性層、5Ra・・・非磁性層、10・・・メモリ素子、20・・・X座標指定回路、30・・・Y座標指定回路、100・・・半導体層、200・・・絶縁層、B1,B2・・・ビット線、COMP・・・コンパレータ、M・・・記憶領域、P1・・・垂直電極、P・・・電流経路、P・・・電流経路、Q1・・・トランジスタ、Q,Q・・・トランジスタ、R1・・・抵抗、T・・・共通端子、T・・・端子、T・・・端子、W1,W2・・・ワード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果素子を有する記憶領域を1又は複数配置してなる磁気メモリにおいて、
個々の前記磁気抵抗効果素子は、
フリー層と、
強磁性体からなる固定層と、
前記フリー層と前記固定層との間に介在する中間非磁性層と、
前記固定層とは逆の磁化の向きを有し、前記固定層との間の電流経路内に前記フリー層が位置し、且つ、前記フリー層との間の電流経路内に第1非磁性層が位置するように設けられた書き込み用強磁性体と、
前記固定層と同一の磁化の向きを有し、前記固定層との間の電流経路内に前記フリー層が位置し、且つ、前記フリー層との間の電流経路内に第2非磁性層が位置するように設けられた読み出し用強磁性体と、
を備えることを特徴とする磁気メモリ。
【請求項2】
個々の前記記憶領域は、
前記フリー層を通る第1電流経路の一端に設けられた書き込み用端子と、
前記フリー層を通る第2電流経路の一端に設けられた読み出し用端子と、
前記第1又は第2電流経路の他端に設けられた共通端子と、
を備え、
前記第1電流経路内において、
前記フリー層から前記書き込み用端子へ向かう間に存在するグループWに属する強磁性体の数と、前記フリー層から前記共通端子へ向かう間に存在するグループCに属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、前記グループWに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、前記グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、前記フリー層からみて互いに逆であり、
前記第2電流経路内において、
前記フリー層から前記読み出し用端子へ向かう間に存在するグループRに属する強磁性体の数と、前記グループCに属する強磁性体の数とは同一であり、且つ、前記グループRに属する強磁性体の磁化の向きの配列と、前記グループCに属する強磁性体の磁化の向きの配列とは、前記フリー層からみて同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項3】
前記グループCに属する強磁性体は、
前記固定層と、
前記固定層とは反平行に磁化した第1強磁性層と、
であり、
前記固定層、前記第1強磁性層、及び前記第1強磁性層と前記固定層との間に介在する第3非磁性層はシンセティック構造を構成しており、
前記グループWに属する強磁性体は、
前記固定層とは逆の磁化の向きを有する前記書き込み用強磁性体と、
前記第1強磁性層とは逆の磁化の向きを有する第2強磁性層と、
であり、
前記書き込み用強磁性体と前記第2強磁性層との間には第4非磁性層が介在し、
前記グループRに属する強磁性体は、
前記固定層と同一の磁化の向きを有する前記読み出し用強磁性体と、
前記第1強磁性層と同一の磁化の向きを有する第3強磁性層と、
であり、
前記読み出し用強磁性体と前記第3強磁性層との間には第5非磁性層が介在している、
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ。
【請求項4】
個々の前記記憶領域は、
半導体層と、
前記半導体層上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた前記磁気抵抗効果素子と、
を有しており、
前記書き込み用端子は、第1半導体スイッチ部を介して第1ビット線に接続され、
前記読み出し用端子は、第2半導体スイッチ部を介して第2ビット線に接続され、
前記第1及び第2半導体スイッチ部の制御端子は、第1及び第2コントロール線にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−317798(P2007−317798A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144530(P2006−144530)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】