説明

積層電子部品及びその製造方法

【課題】層間接続導体の径をより小さくすることができる積層電子部品を提供する。
【解決手段】セラミック材料からなり互いに積層された複数の絶縁層11〜13の少なくとも1層12に、一方の主面12pに形成された第1の開口13pに連通し他方の主面12qに向けて断面積が減少しながら延在する第1のテーパー孔14pと、他方の主面12qに形成された第2の開口13qに連通し一方の主面12pに向けて断面積が減少しながら延在する第2のテーパー孔14qとが、主面12p,12q間の中間位置において接続されるように形成されている。層間接続導体10は、第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qとが接続されてなる貫通孔14に充填された導電材料により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層電子部品及びその製造方法に関し、詳しくは、絶縁層が積層された積層電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁層が積層された積層電子部品は、セラミックグリーンシートを積層し、焼成することにより作製されている。セラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、貫通孔に導電性ペーストを充填しておくことにより、積層電子部品の内部に、絶縁層を貫通する層間接続導体を形成することができる。
【0003】
例えば図8の要部断面図に示すように、キャリアフィルム101に支持されたセラミックグリーンシート102にレーザービーム107を照射して、貫通孔108を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−304774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
層間接続導体の径を小さくするため、セラミックグリーンシートに照射するレーザービームの出力を小さくすると、セラミックグリーンシートに形成される貫通孔は、テーパー形状(円錐形状)になる。すなわち、貫通孔は、セラミックグリーンシートのレーザービーム入射側の主面に形成される開口の径(入射径)が最大となり、レーザービーム出射側の主面に形成される開口の径(出射径)が最小となる。つまり、絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積としては、レーザービーム出射側の主面に形成される開口が最小断面となる。
【0006】
出射径が小さくなりすぎると、加工のばらつきにより出射側の開口が形成されなかったり、焼成時の導電性ペーストの収縮により出射側が断線したりして、接続不良が発生する。そのため、層間接続導体の径は、ある程度までしか、小さくすることができない。しかし、積層電子部品の小型化を達成するためには、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体の径を小さくして、かつ、安定した接続を維持する必要がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体の径をより小さくすることができる積層電子部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した層間接続導体を提供する。
【0009】
積層電子部品は、(a)セラミック材料からなり、互いに積層された複数の絶縁層と、(b)少なくとも1層の前記絶縁層に当該絶縁層の互いに対向する一対の主面間を貫通するように形成された層間接続導体とを備える。少なくとも1層の前記絶縁層には、当該絶縁層の前記主面の一方に形成された第1の開口に連通し当該絶縁層の前記主面の他方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する第1のテーパー孔と、当該絶縁層の前記主面の前記他方に形成された第2の開口に連通し当該絶縁層の前記主面の前記一方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する第2のテーパー孔とが、当該絶縁層の前記主面間の中間位置において接続されるように形成される。前記層間接続導体は、前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とが接続されてなる貫通孔に充填された導電材料により形成される。
【0010】
上記構成において、第1のテーパー孔は第1の開口から断面積が減少しながら延在し、第2のテーパー孔は第2の開口から断面積が減少しながら延在するので、第1のテーパー孔と第2のテーパー孔が接続されてなる貫通孔は、中間位置における断面積が第1の開口よりも小さく、かつ第2の開口よりも小さくなる。そのため、貫通孔に充填された導電材料により形成される層間接続導体は、第1のテーパー孔に形成されたテーパー状の第1部分と、第2のテーパー孔に形成されたテーパー状の第2部分とが逆向きに接続され、中間位置において括れた形状となる。
【0011】
上記構成によれば、層間接続導体が接続される両方の端面を同程度に大きくすることができるので、接続信頼性を確保しつつ、層間接続導体の径をより小さくすることができる。
【0012】
また、絶縁層の両方の主面に形成された開口(第1の開口と第2の開口)を同程度の大きさにし、層間接続導体が一つのテーパー状の部分のみからなる場合よりも、貫通孔の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくすることができるので、貫通孔に導電材料を充填して層間接続導体を形成することが容易である。
【0013】
好ましくは、前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔の形状とは、形状が互いに異なる。
【0014】
第1のテーパー孔と第2のテーパー孔とは、例えば、第1のテーパー孔が連通する第1の開口と第2のテーパー孔が連通する第2の開口の大きさや、円錐角(内周面の傾きの角度)や、絶縁層が積層される積層方向の寸法などが異なる。
【0015】
この場合、レーザービームの出力を変えて第1のテーパー孔と第2のテーパー孔を形成し、レーザー加工により絶縁層に与えるダメージを小さくすることができる。
【0016】
好ましくは、前記第1のテーパー孔の前記第1の開口の中心と前記第2のテーパー孔の前記第2の開口の中心とは、前記絶縁層の積層方向に透視した場合に、互いにずれている。
【0017】
この場合、第1のテーパー孔の第1の開口の中心と第2のテーパー孔の前記第2の開口の中心とが一致している場合よりも、第1のテーパー孔と第2のテーパー孔とが接続されてなる貫通孔の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくすることができる。これにより、層間接続導体の接続信頼性を高めることができる。
【0018】
好ましくは、互いに隣接する前記絶縁層にそれぞれ前記層間接続導体が形成され、当該層間接続導体同士は、前記絶縁層が積層された積層方向に連続するように接続されている。
【0019】
この場合、層間接続導体の両端を同程度の大きさにすることにより、小径の層間接続導体を複数層に渡って容易に接続することができる。また、層間接続導体の最大径と最小径の差を小さくすることができるので、信号伝送ラインの連続性が向上し、信号伝送特性が向上する。
【0020】
また、本発明は、以下のように構成した積層電子部品の製造方法を提供する。
【0021】
電子部品の製造方法は、(i) セラミックグリーンシートが積層された未焼成の積層体を形成する第1の工程と、(ii)前記未焼成の積層体を焼成する第2の工程とを備える。前記第1の工程において、(a)未焼成の前記積層体を形成する前の少なくとも1つの前記セラミックグリーンシートについて、互いに対向する一対の主面の両方にレーザービームを照射することにより、前記主面の一方から前記主面の他方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少する第1のテーパー孔と、前記主面の前記他方から前記主面の前記一方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少する第2のテーパー孔とを、前記主面間の中間位置において互いに接続されるように形成した後、(b)前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とが接続されてなる貫通孔に導電材料を充填して層間接続導体を形成する。
【0022】
上記方法により形成された層間接続導体は、第1のテーパー孔に形成されたテーパー状の第1部分と、第2のテーパー孔に形成されたテーパー状の第2部分とが逆向きに接続され、中間位置において括れた形状となる。
【0023】
上記方法によれば、層間接続導体が接続される両方の端面を同程度に大きくすることができので、接続信頼性を確保しつつ、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体の径をより小さくすることができる。
【0024】
また、セラミックグリーンシートの両方の主面に形成された開口(第1の開口と第2の開口)を同程度の大きさにし、層間接続導体が一つのテーパー状の部分のみからなる場合よりも、貫通孔の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくすることができるので、貫通孔に導電材料を充填して層間接続導体を形成することが容易である。
【0025】
好ましくは、前記第1の工程において、前記セラミックグリーンシートに前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とを形成するとき、前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔との少なくとも一方は、前記セラミックグリーンシートの前記主面間を貫通する貫通孔を形成することができる出力のレーザービームを照射する。
【0026】
この場合、第1のテーパー孔と第2のテーパー孔とを形成するときのレーザービームの出力を変え、レーザー加工によりセラミックグリーンシートに与えるダメージを小さくすることができる。また、層間接続導体の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくして、接続信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体の径をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】積層電子部品の要部断面図である。(実施例1)
【図2】積層電子部品の要部断面図である。(比較例1)
【図3】積層電子部品の製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図4】積層電子部品の要部断面図である。(変形例1)
【図5】積層電子部品の要部断面図である。(変形例2)
【図6】積層電子部品の要部断面図である。(実施例2)
【図7】積層電子部品の要部断面図である。(比較例2)
【図8】積層電子部品の製造工程を示す要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0030】
<実施例1> 実施例1の積層電子部品について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、実施例1の積層電子部品の要部断面図である。図1に示すように、積層電子部品は、セラミック材料からなり、互いに積層された複数の絶縁層11,12,13を備え、少なくとも1層の絶縁層12に層間接続導体10が形成されている。層間接続導体10は、絶縁層12の互いに対向する一対の主面12p,12q間を貫通するように形成されている。層間接続導体10の一方の端面11pは、互いに隣接する絶縁層11,12の間に形成された面内接続導体20pに接続されている。層間接続導体10の他方の端面11qは、互いに隣接する絶縁層12,13の間に形成された面内接続導体20qに接続されている。
【0032】
詳しくは、絶縁層12には、第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qとが形成されている。第1のテーパー孔14pは、絶縁層12の一方の主面12pに形成された第1の開口13pに連通し、絶縁層12の他方の主面12qに向けて、絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する。第2のテーパー孔14qは、絶縁層12の他方の主面12qに形成された第2の開口13qに連通し、絶縁層12の一方の主面12pに向けて、絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する。第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qとは、絶縁層12の主面12p,12q間の中間位置において接続されている。ここで中間位置とは、絶縁層12の主面12p,12q間のいずれかの位置のことである。
【0033】
層間接続導体10は、第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qとが接続されてなる貫通孔14に充填された導電材料により形成されている。層間接続導体10は、テーパー状に形成された第1部分10pと第2部分10qとが逆向きに接続され、中間位置で括れた形状である。
【0034】
次に、積層電子部品の製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、積層電子部品の製造工程を示す主要部断面図である。
【0035】
(1)まず、層間接続導体及び/又は面内接続導体が形成されたセラミックグリーンシートを準備する。必要に応じて、層間接続導体も面内接続導体も形成されていないセラミックグリーンシートも準備する。
【0036】
例えば図3に示すように、層間接続導体10と面内接続導体20pとが形成された未焼成の絶縁層12であるセラミックグリーンシート12を準備する。
【0037】
すなわち、図3(a)に示すように、セラミックグリーンシート12の一方の主面12p側からレーザービームを照射して、セラミックグリーンシート12に第1のテーパー孔14pを形成する。
【0038】
次いで、図3(b)に示すように、セラミックグリーンシート12の他方の主面12q側からレーザービームを照射して、第1のテーパー孔14pに接続するように、第2のテーパー孔14qを形成する。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qが接続されてなる貫通孔14に、導電性ペーストを充填し、未焼結の層間接続導体10を形成する。導電性ペーストはAg、Cu等からなる金属粒子と樹脂等の有機物を混合したものである。
【0040】
次いで、図3(d)に示すように、セラミックグリーンシート12の一方の主面12p上に、導電性ペーストをスクリーン印刷等の方法により塗布して、未焼結の面内接続導体20pを形成する。なお、ここでは、貫通孔14への導電性ペーストの充填と、セラミックグリーンシート12の一方の主面12p上への導電性ペーストの塗布とを分けて行ったが、同時に行ってもよい。
【0041】
(2)次に、準備したセラミックグリーンシートを積層し、圧着することにより、未焼成の積層体を作製する。
【0042】
(3)次に、未焼成の積層体を焼成する。焼成により焼結したセラミックグリーンシートによって、セラミック材料からなり、互いに積層された複数の絶縁層が形成され、焼成により焼結した導電性ペーストによって、層間接続導体や面内接続導体が形成される。
【0043】
(4)必要に応じて、外部電極のめっきや電子部品の実装などを行い、積層電子部品が完成する。
【0044】
セラミックグリーンシート12に形成する第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qの少なくとも一方は、セラミックグリーンシート12の主面12p,12q間を貫通する形状に形成してもよい。
【0045】
例えば、第1のテーパー孔14pは、図1において破線で示すように、先端11kが他方の主面12qに達し、主面12p,12q間を貫通する貫通孔を形成することができる出力のレーザービームを照射することにより、形成する。このとき、実際に貫通孔を形成する必要はなく、貫通孔が形成されない出力のレーザービームを照射しても構わない。
【0046】
この場合、第1のテーパー孔14pと第2のテーパー孔14qとを形成するときにレーザービームの出力を変え、レーザー加工により絶縁層12に与えるダメージを小さくすることができる。また、層間接続導体10の括れを太くし、層間接続導体10の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくして、接続信頼性や信号伝送特性を高めることができる。
【0047】
図2は、比較例1の積層電子部品の要部断面である。図2に示した比較例1において、絶縁層12xには、絶縁層12xの主面12m,12n間を貫通する一つのテーパー孔14xのみが形成され、テーパー孔14xに充填された導電材料により、層間接続導体10xが形成されている。層間接続導体10xは、一つのテーパー状の部分のみからなり、層間接続導体10xの一方の端面11mが相対的に大きく、他方の端面11nが相対的に小さい。層間接続導体10xの一方の端面11mは、互いに隣接する絶縁層11,12xの間に形成された面内接続導体20mに接続されている。層間接続導体10xの他方の端面11nは、互いに隣接する絶縁層12x,13の間に形成された面内接続導体20nに接続されている。
【0048】
図2に示した比較例1では、テーパー孔14xの径を小さくすると絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面が小さくなり、加工のばらつきにより絶縁層12の他方の主面12nに開口13nが形成されなかったり、未焼成の層間接続導体10xが焼成時に収縮することにより層間接続導体10xの他方の端面11nと面内接続導体20nとの接続が断線したりして、接続不良が発生する。そのため、層間接続導体10xの径は、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面において接続不良が発生しない大きさとする必要があり、小さくすることができない。
【0049】
これに対し、図1に示した実施例1の積層電子部品では、面内接続導体20p,20qに接続される層間接続導体10の両方の端面11p,11qが同程度に大きいため、接続信頼性を確保しつつ、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体10の径を小さくすることができる。
【0050】
また、図1に示した実施例1の積層電子部品では、絶縁層12の主面12p,12qに形成される開口13p,13qの両方が同程度に大きく、図2の比較例1のように絶縁層12の主面12m,12nに形成される一方の開口13mが相対的に大きく、他方の開口13nが相対的に小さい場合よりも、貫通孔14の絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくすることができるため、絶縁層12に形成された貫通孔14に導電性ペーストを充填することが容易となり、最小断面を小さくすることなく層間接続導体10の径を小さく形成することが容易である。
【0051】
<変形例1> 図4は、変形例1の積層電子部品の要部断面図である。
【0052】
図4に示すように、変形例1の積層電子部品は、絶縁層12aの一方の主面12rに形成された第1の開口13rに連通する第1のテーパー孔14rと、絶縁層12aの他方の主面12sに形成された第2の開口13sに連通する第2のテーパー孔14sとが、互いに接続するように形成されている。第1のテーパー孔14rと第2のテーパー孔14sとが接続されてなる貫通孔14aには、第1部分10rと第2部分10sとを有する層間接続導体10aが形成されている。層間接続導体10aの端面11r,11sは、互いに隣接する絶縁層11,12a;12a,13の間に形成された面内接続導体20r,20sに接続されている。
【0053】
図4に示すように、絶縁層12aに形成された第1のテーパー孔14rと第2のテーパー孔14sとは、互いに形状が異なる。すなわち、層間接続導体10aの端面11rが形成される第1の開口13rが相対的に大きく、層間接続導体10aの端面11sが形成される第2の開口13sが相対的に小さい。また、層間接続導体10aの第1部分10rと第2部分10sが形成される第1のテーパー孔14rと第2のテーパー孔14sとは、円錐角(内周面の傾きの角度)と、絶縁層11,12a,13の積層方向の寸法とが互いに異なる。そのため、層間接続導体10aは、第1部分10rと第2部分10sの形状が互いに異なる。
【0054】
変形例1の積層電子部品は、第1のテーパー孔14rを形成するときのレーザービームの出力と、第2のテーパー孔14sを形成するときのレーザービームの出力とを変えて、レーザー加工により絶縁層12aに与えるダメージを小さくすることができる。
【0055】
<変形例2> 図5は、変形例2の積層電子部品の要部断面図である。
【0056】
図5に示すように、変形例2の積層電子部品は、絶縁層12bの一方の主面12uに形成された第1の開口13uに連通する第1のテーパー孔14uと、絶縁層12bの他方の主面12vに形成された第2の開口13vに連通する第2のテーパー孔14vとが、互いに接続するように形成されている。第1のテーパー孔14uと第2のテーパー孔14vとが接続されてなる貫通孔14bに、第1部分10uと第2部分10vとを有する層間接続導体10bが形成されている。層間接続導体10bの端面11u,11vは、互いに隣接する絶縁層11,12b;12b,13の間に形成された面内接続導体20u,20vに接続されている。
【0057】
変形例2の積層電子部品では、第1のテーパー孔14uにおける第1の開口13uの中心16uと第2のテーパー孔14vにおける第2の開口13vの中心16vとが、絶縁層の積層方向に透視した場合にずれており、一致していない。そのため、第1のテーパー孔14uと第2のテーパー孔14vとが接続されてなる貫通孔14bは、第1のテーパー孔の開口の中心と第2のテーパー孔の開口の中心とが、絶縁層の積層方向に透視した場合に一致している場合よりも、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を大きくすることができる。
【0058】
変形例2の積層電子部品は、第1のテーパー孔14uの中心16uと第2のテーパー孔14vの中心16vとがずれることにより、貫通孔14bに形成される層間接続導体10bの絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面が大きくなり、接続信頼性や信号伝送特性が向上する。
【0059】
<実施例2> 実施例2の積層電子部品について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0060】
図6は、実施例2の積層電子部品の要部断面図である。図6に示すように、互いに隣接する絶縁層16a〜16dにそれぞれ層間接続導体18a〜18dが形成され、層間接続導体18a〜18d同士は、絶縁層15,16a〜16d,17が積層された積層方向(図6において上下方向)に連続するように接続されている。接続された層間接続導体18a〜18dのうち、両端の層間接続導体18a,18dは、互いに隣接する絶縁層15,16a;16d,17の間に形成された面内接続導体22a,22bに接続されている。
【0061】
各層間接続導体18a〜18dは、実施例1と同じ構成であり、テーパー形状の第1部分と第2部分とが逆向きに接続され、両端の径が大きく、中間位置で括れた形状である。
【0062】
図7は、比較例2の積層電子部品の要部断面である。図7に示すように、比較例2の積層電子部品において、互いに隣接する絶縁層16p〜16sに形成された層間接続導体18p〜18sは、それぞれ一つのテーパー状の部分のみから、同じ向きに揃えて互いに接続されている。そのため、層間接続導体18p〜18sを小径にすると、隣り合う層間接続導体18p,18q;18q,18r;18r,18s同士が接続される部分や、層間接続導体18sと面内接続導体22bとが接続される部分の断面積が小さくなるため、加工のばらつきや焼成時の導電性ペーストの収縮により、接続が確保できなくなり、接続不良が発生する。そのため、層間接続導体18p〜18sの径は、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面において接続不良が発生しない大きさとする必要があり、小さくすることができない。
【0063】
これに対し、図6に示す実施例2の積層電子部品は、各層間接続導体18a〜18dの両方の端面を同程度の大きさにすることにより、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体18a〜18dの径を小さくして接続信頼性を確保することができ、小径の層間接続導体18a〜18dを複数層16a〜16dに渡って容易に接続することができる。
【0064】
また、図6に示す実施例2の積層電子部品では、各層間接続導体18a〜18dの最大径と最小径の差が小さくなるため、信号伝送ラインの連続性が向上し、信号伝送特性が向上する。
【0065】
<まとめ> 以上に説明したように、セラミックグリーンシートの主面の両側からテーパー孔を形成し、テーパー孔に導電材料を充填することにより層間接続導体を形成すると、接続信頼性を確保しつつ、絶縁層の積層方向と垂直な面における最小断面を小さくすることなく層間接続導体の径をより小さくすることができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10,10a,10b,10x 層間接続導体
11 絶縁層
11k 先端
11m,11n,11p〜11s,11u,11v 端面
12,12a,12b,12x 絶縁層
12m,12n,12p〜12s,12u,12v 主面
13 絶縁層
13m,13n,13p〜13s,13u,13v 開口
14,14a,14b 貫通孔
14p〜14s,14u,14v,14x テーパー孔
15 絶縁層
16a〜16d,16p〜16s 絶縁層
16u,16v 中心
17 絶縁層
18a〜18d,18p〜18s 層間接続導体
20m,20n,20p〜20s,20u,20v,22a,22b 面内接続導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料からなり、互いに積層された複数の絶縁層と、
少なくとも1層の前記絶縁層に当該絶縁層の互いに対向する一対の主面間を貫通するように形成された層間接続導体と、
を備えた積層電子部品において、
少なくとも1層の前記絶縁層には、当該絶縁層の前記主面の一方に形成された第1の開口に連通し当該絶縁層の前記主面の他方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する第1のテーパー孔と、当該絶縁層の前記主面の前記他方に形成された第2の開口に連通し当該絶縁層の前記主面の前記一方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少しながら延在する第2のテーパー孔とが、当該絶縁層の前記主面間の中間位置において接続されるように形成され、
前記層間接続導体は、前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とが接続されてなる貫通孔に充填された導電材料により形成されることを特徴とする、積層電子部品。
【請求項2】
前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔の形状とは、形状が互いに異なることを特徴とする、請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項3】
前記第1のテーパー孔の前記第1の開口の中心と前記第2のテーパー孔の前記第2の開口の中心とは、前記絶縁層の積層方向に透視した場合に、互いにずれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層電子部品。
【請求項4】
互いに隣接する前記絶縁層にそれぞれ前記層間接続導体が形成され、当該層間接続導体同士は、前記絶縁層が積層された積層方向に連続するように接続されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の積層電子部品。
【請求項5】
セラミックグリーンシートが積層された未焼成の積層体を形成する第1の工程と、
前記未焼成の積層体を焼成する第2の工程と、
を備え、
前記第1の工程において、
未焼成の前記積層体を形成する前の少なくとも1つの前記セラミックグリーンシートについて、互いに対向する一対の主面の両方にレーザービームを照射することにより、前記主面の一方から前記主面の他方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少する第1のテーパー孔と、前記主面の前記他方から前記主面の前記一方に向けて、前記絶縁層の積層方向と垂直な面における断面積が減少する第2のテーパー孔とを、前記主面間の中間位置において互いに接続されるように形成した後、
前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とが接続されてなる貫通孔に導電材料を充填して層間接続導体を形成することを特徴とする、積層電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程において、前記セラミックグリーンシートに前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔とを形成するとき、前記第1のテーパー孔と前記第2のテーパー孔との少なくとも一方は、前記セラミックグリーンシートの前記主面間を貫通する貫通孔を形成することができる出力のレーザービームを照射することを特徴とする、請求項5に記載の積層電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227207(P2012−227207A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90950(P2011−90950)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】