説明

窒化物半導体素子およびその製造方法

【課題】長期間安定して高出力動作の可能な窒化物半導体素子を提供する。
【解決手段】本発明の窒化物半導体素子は、n型GaN基板601と、n型GaN基板601上に設けられた窒化物半導体の積層構造とを備え、この積層構造は、n型GaN基板601の格子定数よりも大きな格子定数を有するGaInN多重量子井戸活性層605と、n型GaN基板601とGaInN多重量子井戸活性層605との間に位置するn型GaNコンタクト層602とを有している。n型GaNコンタクト層602は、n型GaN基板601の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域614を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子およびその製造方法に関している。
【背景技術】
【0002】
V族元素として窒素(N)を含む窒化物半導体は、そのバンドギャップの大きさから、短波長発光素子の材料として有望視されている。なかでも、窒化ガリウム系化合物半導体(GaN系半導体:AlGaInN)を用いた窒化物半導体素子は、青色発光ダイオード(LED)や緑色LEDとして実用化されている。
【0003】
一方、光ディスク装置の大容量化のために、400nm帯に発振波長を有する半導体レーザが熱望されており、GaN系半導体を材料とする半導体レーザが注目され現在では実用レベルに達しつつある。特許文献1から特許文献4は、GaN系半導体レーザの従来構造を開示している。
【0004】
以下、図1を参照しながら、従来の半導体レーザ素子の構造を説明する。図1は、共振器長方向に垂直な面で切り取った断面を示している。
【0005】
図示される半導体レーザ素子は、n型GaN基板201と、基板201上に形成された積層構造とを備えている。n型GaN基板201は、サファイア基板などの表面に選択横方向成長技術およびハイドライド気相成長法(HVPE法)を用いて厚く成長させられGaN結晶から構成されており、n型GaN基板201には比較的低い密度で貫通転位215が存在している。このようにして作製されたGaN基板は、ELOG(Epitaxial Lateral Overgrown GaN)基板と称されている。
【0006】
n型GaN基板201上に設けられた積層構造は、基板201に近い側から順番に、アンドープAlGaN層、n型AlGaNコンタクト層203、n型GaInNクラック抑制層204、n型クラッド層205、n型光ガイド層206、活性層207、p型AlGaN電子閉じ込め層208、p型光ガイド層209、p型クラッド層210、およびp型コンタクト層211を有している。これらの半導体層は、有機金属気相成長法(MOVPE法)により、積層されたものである。
【0007】
p型コンタクト層211上には、幅1.5μm〜2μm程度のリッジストライプが形成され、その両側はZrO2絶縁膜212によって覆われている。ZrO2絶縁膜212上には、リッジストライプ状に加工されたp型コンタクト層211と接触するようにp型電極213が形成されている。n型電極214は、n型AlGaNコンタクト層203が露出するまでエッチングされた部分に形成されている。
【0008】
図1に示す半導体レーザ素子によれば、n型電極214を接地し、p型電極213に電圧を印加すると、活性層207に向かってp型電極213側から正孔が注入されるとともに、n型電極214側からは電子が注入されるため、活性層207内で光学利得が生じ、発振波長408nm帯のレーザ発振が生じることになる。この結果、半導体レーザ素子の活性層207の光出射端面からレーザ光が外部に放射され、例えば光ディスクのデータ記録や再生に利用されることになる。
【0009】
図1の半導体レーザ素子では、n型GaN基板201上にアンドープAlGaN層202が形成された後、その上にn型AlGaNコンタクト層203が形成されている。
【0010】
その理由を以下に示す。
【0011】
GaN基板201に接するようにしてGaN層を直接にGaN基板201上に成長させると、成長したGaN層には圧縮歪も引っ張り歪も作用しないはずであり、クラックの無いGaN層が得られるはずであるが、実際には、多くの微細なクラックがGaN層中に発生する傾向がある。このことは、GaN基板201上に接するように成長したGaN層にも、わずかに引っ張り歪が存在することを示唆している。微細なクラックは、レーザ素子の特性、特に寿命特性を大幅に悪化させるため望ましいものではない。
【0012】
このような微細なクラックの発生を防止するため、GaN基板201上にはGaN層よりも熱膨張係数の小さい半導体層をGaN基板に接するように成長することが好ましい。アンドープAlGaN層は、GaN層よりも熱膨張係数の小さい半導体層であるため、図1の半導体レーザ装置では、n型GaN基板201と接するようにアンドープAlGaN層(バッファ層)202が形成されている。
【0013】
一方、図2に示す半導体レーザ素子は、n型GaN基板201とn型AlGaNコンタクト層203の間の構成が異なる点を除いて、図1に示す半導体レーザ素子の構成と同様の構成を有している。
【0014】
図2の半導体レーザ素子では、n型GaN基板201に接するように、緩和層301が形成され、その上に第1の窒化物半導体層302が形成されている。緩和層301および第1の窒化物半導体層302は、上述した理由により、GaN層よりも熱膨張係数の小さいAlGaNから形成されている。その後、ストライプ状にパターニングされた保護膜303で第1の窒化物半導体層302の表面を覆った後、選択横方向成長法によって第2の窒化物半導体層304を形成している。この第2の窒化物半導体層304における貫通転位密度は、n型GaN基板201における貫通転位215の密度よりも更に低く、その上に成長した半導体層の結晶性をより良質なものとすることができる。
【0015】
なお、緩和層301および第1の窒化物半導体層302は、第2の窒化物半導体層304の表面モフォロジーを改善することにも寄与している。
【0016】
次に、図3を参照しながら、さらに他の従来例を説明する。
【0017】
図3に示す半導体レーザ素子は、ELO−GaN基板401と、基板401上に設けられた積層構造を有している。積層構造は、n型GaNコンタクト層402、n型クラッド層403、n型光ガイド層404、活性層405、AlGaInN応力集中抑制層406、p型AlGaNキャップ層407、p型光ガイド層408、p型クラッド層409、およびp型コンタクト層410を含んでいる。
【0018】
p型コンタクト層410上には、幅1.5μm〜2μm程度のリッジストライプが形成され、その両側はSiO2絶縁膜411によって覆われている。SiO2絶縁膜411上には、リッジストライプ状に加工されたp型コンタクト層410と接触するようにp型電極412が形成されている。n型電極413は、n型AlGaNコンタクト層402が露出するまでエッチングされた部分に形成されている。
【0019】
図3に示す半導体レーザ素子によれば、n型電極413を接地し、p型電極412に電圧を印加すると、活性層405に向かってp型電極412側から正孔が注入されるとともに、n型電極413側からは電子が注入されるため、活性層405内で光学利得が生じ、発振波長408nm帯のレーザ発振が生じることになる。
【0020】
図3の半導体レーザ素子では、活性層405とp型AlGaNキャップ層407との間における格子定数差に起因した格子歪が存在している。以下、この点をより具体的に説明する。
【0021】
図3に示す例では、活性層405が、In組成8%のGaInN井戸層およびIn組成2%のGaInN障壁層が積層された多重量子井戸構造を有しており、p型AlGaNキャップ層407は、Al組成15%のAlGaNから形成されている。In組成8%のGaInN井戸層は、ダブルへテロ構造を構成する半導体層の中で最も格子定数が大きく、Al組成15%のp型AlGaNキャップ層407はダブルへテロ構造中で最も格子定数が小さい。この2つの層が近接していることにより、In組成8%のGaInN井戸層には大きな圧縮歪がp型AlGaNキャップ層407から加えられ、活性層405中に欠陥を発生させ、レーザ素子の特性、特に寿命特性を大幅に悪化させる要因となる。この欠陥は、結晶成長中のみならず、レーザ素子の加工中にも影響を及ぼすものであり、寿命特性だけでなく、歩留まりにも悪影響を与えている。
【0022】
上記欠陥の発生を防止するためには、活性層405に加えられる圧縮歪を低減することが効果的であり、活性層405とp型AlGaNキャップ層407の間に、格子定数(組成)を連続的段階的に変化させたAlGaInN応力集中抑制層406を挿入している。このような構造を用いることにより、素子寿命の改善が達成されている。
【0023】
以上に説明してきたように、図1から図3に示す半導体レーザ素子の構造によれば、レーザ素子用ダブルへテロ構造における貫通転位密度と格子歪に着目した発明であり、格子歪に起因した欠陥の発生を抑制することにより、信頼性の改善を達成している。特に、図1や図2に示す半導体レーザ素子では、GaN基板201から加えられた引っ張り歪によるn型AlGaNコンタクト層203、n型クラッド層205に発生するクラックを抑制し、図3に示す半導体レーザ素子では、p型AlGaNキャップ層407から加えられた圧縮歪による活性層405に発生する欠陥を抑制している。
【0024】
図4は、特許文献5に開示された半導体レーザ素子を示している。この半導体レーザ素子の製造方法は、以下のとおりである。
【0025】
まず、表面に段差を形成したn型GaN基板上501にn型GaN層502、n型AlGaNクラッド層503、n型GaN光ガイド層504、活性層505、p型GaN光ガイド層506、p型第1AlGaNクラッド層507、電流狭窄層508を結晶成長する。その後、電流狭窄層の一部をp型第1AlGaNクラッド層507が露出するまでエッチングし、再びp型第2AlGaNクラッド層509、p型コンタクト層510を順次結晶成長し、ダブルへテロ構造が形成されている。
【0026】
ダブルへテロ構造の形成後、p型コンタクト層510上にp型電極511、またn型GaN基板501下部にn型電極512が形成される。
【0027】
図4に示される半導体レーザ素子では、n型電極512を接地し、p型電極511に電圧を印加すると、活性層505に向かってp型電極511側から正孔が、またn型電極512側から電子が注入され、活性層505内で光学利得を生じ、レーザ発振を起こす。
【0028】
図4の半導体レーザ素子の特徴は、表面に段差を形成したn型GaN基板501を用いることにより、段差部分の貫通転位を屈曲させ、低貫通転位密度領域を形成することである。電流狭窄層508の開口部をこの低貫通転位密度領域に形成することで、高温動作可能な高信頼性レーザ素子を実現している。
【0029】
次に、図5を参照しながら特許文献1に開示されている半導体レーザ素子を説明する。この半導体レーザ素子は、高出力動作時に基板とダブルへテロ構造との間に発生する応力を緩和する構造を備えている。
【0030】
このダブルへテロ構造は、AlGaAsから形成されたクラッド層、光ガイド層、および活性層から構成されている。GaAs層とAlGaAs層との間には、ほとんど格子定数差がないため、格子歪による応力は無視され得るが、熱膨張係数に差があるため、レーザ動作、特に高出力動作のような高電流注入状態で発熱量が多くなると、熱膨張係数差に起因した応力が発生する。この応力により、GaAs層とAlGaAs層との界面に転位が発生し、これが活性層まで到達すると、光学利得が生じえなくなり、レーザ発振が停止してしまう。
【0031】
図5の半導体レーザ素子において特徴的な点は、熱膨張係数差による応力が歪緩和膜102によって緩和されていることにある。n型基板101表面には、周期的に歪緩和膜102が堆積されている。n型クラッド層103は、n型基板101の上面のうち歪緩和膜102が堆積されていない領域で、n型基板101上にエピタキシャル成長している。一方、歪緩和膜102上においては、n型クラッド層103と歪緩和膜102とがファンデルワールス力によって結合している。
【0032】
通電時における発熱により、熱膨張係数差に起因する歪が発生した場合、n型クラッド層103と歪緩和膜102との間におけるファンデルワールス力による結合は容易に切断されるため、歪緩和膜102上の構造が歪緩和膜102上を発生した歪を吸収するように水平方向に移動する。
【0033】
AlGaAs系の半導体レーザ素子では、GaAs基板とAlAs層との間において熱膨張係数差による歪が最も大きくなる。レーザ動作中の素子温度が300℃程度まで上昇すると仮定した場合、AlAs層に0.05%の引っ張り歪が作用することになる。
【0034】
この引っ張り歪を歪緩和膜102上の構造で緩和し、活性層105の電流が注入される領域の歪を低減することにより、高電流注入状態によって発生する転位を抑制することが可能となり、高出力動作時の信頼性向上を達成することができる。
【特許文献1】特開2002−270965号公報
【特許文献2】特開2000−299497号公報
【特許文献3】特開2001−196700号公報
【特許文献4】特開2002−368343号公報
【特許文献5】特許3201475号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
GaN系光素子の長寿命化には貫通転位密度の低減が必要不可欠であり、多くの研究者により、エピタキシャル成長に関する様々の発明がなされてきた。また、低貫通転位密度のエピタキシャル成長用基板も発明され、市場に供給されるようになってきた。
【0036】
しかしながら、本願発明者らの検討により、GaN系半導体を用いる場合、低貫通転位密度のホモエピタキシャル成長用GaN基板を用いても、高出力で長寿命化を実現できるダブルへテロ構造を形成すると、応力の問題が充分に解決できないことがわかった。
【0037】
図1および図2に示す半導体レーザ素子では、n型GaN基板201からn型AlGaNコンタクト層203やn型クラッド層205に加えられる格子定数差による歪を緩和しても、長寿命化には不充分であることがわかった。また、図3に示す半導体レーザ素子においても、p型AlGaNキャップ層407から活性層405に加えられる格子定数差による歪を緩和するだけでは十分ではないことも見出した。
【0038】
特許文献1に開示されている半導体レーザ素子では、基板とダブルへテロ構造との間の熱膨張係数差による歪は0.05%であるのに対して、例えばGaN基板上に形成したIn組成8%のGaInN層の格子定数差による歪は約0.90%とAlGaAs系に比べて10倍以上と非常に大きくなる。逆に、GaN基板とGaInN層と熱膨張係数がほとんど等しいため、熱膨張係数差に起因した歪の影響は無視できるほど小さい。
【0039】
本発明者の検討により、GaN系半導体による素子では、格子定数差による歪の低減抑制が特に重要であることがわかった。
【0040】
なお、特許文献5に開示されている半導体レーザ素子のように、加工された基板を用いることは貫通転位密度の低減には有効であるが、歪の緩和・低減にはほとんど寄与しないこともわかった。
【0041】
図6は、本願発明者らが開発した半導体レーザ素子の断面を示している。この半導体レーザ素子は、n型GaN基板601上のダブルへテロ構造を設けた構成を備えている。
【0042】
n型GaN基板601の貫通転位は8×105cm-2以下に低減されているが、格子定数差に起因してn型GaN基板601がGaInN多重量子井戸活性層605に印加する圧縮歪により半導体レーザ素子の活性層近傍に多くの欠陥が発生し、この欠陥が光出力30mW以上の高出力動作時における信頼性に悪影響を及ぼすことがわかってきた。
【0043】
以下、上記欠陥の発生機構を列挙する。
【0044】
(1) 熱処理工程による欠陥発生増殖機構
GaN系半導体を用いたレーザ素子では、p型半導体層の不純物活性化やドライエッチング面のダメージを回復するために製造工程途中で複数回の熱処理(400℃〜800℃)を行う必要がある。しかし、このような熱処理を行なうと、圧縮歪による応力を緩和しようとして欠陥が発生する。
【0045】
(2) プラズマ処理工程による欠陥発生増殖機構
GaN系半導体を用いたレーザ素子では、ウェットエッチングによる加工が非常に困難であるため、ドライエッチングによる微細加工が施される。このドライエッチング工程などで使用されるプラズマ処理を行なうと、圧縮歪による応力を緩和しようとして欠陥が発生する。
【0046】
(3) 素子加工工程による欠陥発生増殖機構
研削研磨工程や、素子分離のためのへき開工程を行なうと、圧縮歪による応力を緩和しようとして欠陥が発生する。
【0047】
(4) 通電中の欠陥発生増殖機構
半導体素子に電流を流すことによって熱が発生し、結晶の温度が上昇すると、圧縮歪による応力を緩和しようとして欠陥が発生する。
【0048】
このように、活性層に圧縮歪が存在すると、製造段階または動作段階で、種々の機構により、結晶欠陥が発生するため、GaN系半導体レーザ素子の作製において、活性層に加えられる圧縮歪を低減することは不可欠である。
【0049】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、特に高出力動作において信頼性の高い窒化物半導体素子を歩留まり良く作製する方法を提供するものである。その結果、光ディスク用レーザ、レーザディスプレイ装置や医療用レーザを高い歩留まりで作製することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0050】
本発明の窒化物半導体素子は、窒化物半導体基板と、前記窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体の積層構造とを備えた窒化物半導体素子であって、前記積層構造は、前記窒化物半導体基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層と、前記半導体基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層とを有しており、前記第2窒化物半導体層は、前記窒化物半導体基板の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる。
【0051】
本発明の他の窒化物半導体素子は、結晶性を有する基板と、前記基板上に設けられた窒化物半導体の積層構造とを備えた窒化物半導体素子であって、前記積層構造は、前記基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層と、前記基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層とを有しており、前記第2窒化物半導体層と前記基板との間に設けられた第3半導体層を更に備え、前記第2窒化物半導体層は、前記第3窒化物半導体層の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる。
【0052】
好ましい実施形態において、前記転位密度は貫通転位密度である。
【0053】
好ましい実施形態において、前記欠陥導入領域は、貫通転位密度が1×106cm-2以上の高貫通転位密度部分を有している。
【0054】
好ましい実施形態において、前記第1窒化物半導体層の少なくとも一部は、キャリアの注入によって発光する活性領域として機能する。
【0055】
好ましい実施形態において、前記活性領域と前記高貫通転位密度部分との距離は、2μm以上20μm以下の範囲内にある。
【0056】
好ましい実施形態において、前記第1窒化物半導体層の圧縮歪は、前記欠陥導入領域の存在により、前記欠陥導入領域が存在しない場合に比べて低減されている。
【0057】
好ましい実施形態において、前記圧縮歪の低減は異方的である。
【0058】
好ましい実施形態において、前記第2窒化物半導体層は、AlxGa1-x-yInyN(0≦x、y≦1、0≦x+y≦1)から形成されている。
【0059】
好ましい実施形態において、前記窒化物半導体基板は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、または窒化アルミニウムガリウムから形成されている。
【0060】
好ましい実施形態において、前記基板は、サファイアから形成されている。
【0061】
本発明による窒化物半導体素子の製造方法は、窒化物半導体基板を用意する工程と、前記窒化物半導体基板上に窒化物半導体の積層構造を形成する工程とを含む窒化物半導体素子の製造方法であって、前記積層構造を形成する工程は、前記窒化物半導体基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層を形成する工程と、前記半導体基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層を形成する工程とを含み、前記第2窒化物半導体層は、前記窒化物半導体基板の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる。
【0062】
本発明による窒化物半導体素子の製造方法は、結晶性を有する基板を用意する工程と、前記基板上に窒化物半導体の積層構造を形成する工程とを含む窒化物半導体素子の製造方法であって、前記積層構造を形成する工程は、前記基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層を形成する工程と、前記基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層を形成する工程と、前記第2窒化物半導体層と前記基板との間に設けられた第3半導体層を形成する工程とを含み、前記第2窒化物半導体層は、前記第3窒化物半導体層の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる。
【0063】
好ましい実施形態において、前記欠陥導入領域を含む第2窒化物半導体層を形成する工程は、前記第2窒化物半導体層となる結晶の層を第1温度以上の温度で成長させる工程と、前記結晶を前記第1温度よりも低い温度に低下させるとき、前記結晶の層内に前記欠陥導入領域を形成する工程とを含む。
【0064】
好ましい実施形態において、前記欠陥導入領域を含む第2窒化物半導体層を形成する工程を実行する前に、前記欠陥導入領域を形成すべき領域を規定する凹部および/または凸部を下地表面に形成する工程を行なう。
【0065】
好ましい実施形態において、前記欠陥導入領域は、貫通転位密度が1×106cm-2以上の前記高貫通転位密度部分を有している。
【0066】
好ましい実施形態において、前記積層構造を形成した後、前記高貫通転位密度部分から外れた位置に発光領域を形成する工程を実行する。
【0067】
好ましい実施形態において、前記発光領域と前記高貫通転位密度部分との距離は、2μm以上20μm以下の範囲にある。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、活性層を含む窒化物半導体層の格子定数が窒化物半導体基板の格子定数よりも大きく、窒化物半導体基板によって窒化物半導体層に圧縮歪が印加される場合であっても、その圧縮歪を効果的に抑制することができる。このため、圧縮歪に起因して素子作製時や通電動作時に形成される欠陥の密度を低減することができ、窒化物半導体素子の信頼性や製造歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
図7を参照しながら、本発明による半導体レーザ素子の構成例を説明する。
【0070】
図7に示す半導体レーザ素子は、n型GaN基板601と、その上に設けられた窒化物半導体の積層構造を有している。積層構造は、n型GaNコンタクト層602、n型AlGaNクラッド層603、GaN光ガイド層604、GaInN多重量子井戸活性層605、GaInN第1光ガイド層606、GaN第2光ガイド層607、p型AlGaN電子オーバーフロー抑制層608、p型AlGaN超格子クラッド層609、およびp型GaNコンタクト層610を有しており、内部ダブルへテロ構造が形成されている。
【0071】
p型コンタクト層610には、幅1.4〜1.8μm程度のリッジストライプが設けられており、活性層605の所定領域に電流を狭窄する。リッジストライプの両側はSiO2絶縁膜611で被覆されている。リッジストライプおよびSiO2絶縁膜611上にはp型電極612、また一部をn型GaNコンタクト層602が露出するまでエッチングした表面にn型電極613が形成されている。
【0072】
この半導体レーザ素子によれば、n型電極613を接地し、p型電極612に電圧を印加すると、GaInN多重量子井戸活性層605に向かってp型電極612側から正孔が注入され、またn型電極613側から電子が注入される。その結果、GaInN多重量子井戸活性層605内で光学利得を生じ、閾値電流38mAで発振波長408nm帯のレーザ発振を起こす。
【0073】
図7に示す半導体レーザ素子で最も特徴的な点は、活性層605とn型GaN基板601との間に位置する窒化物半導体層(n型GaNコンタクト層602)が欠陥導入領域614を有していることである。以下、この欠陥導入領域614の役割を説明する。
【0074】
n型GaN基板601とGaInN多重量子井戸活性層605の間には、前述したように、格子定数の差に起因する大きな格子歪が存在する。例えばIn組成8%のGaInN層には、n型GaN基板501から約0.90%の圧縮歪が加えられる。GaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪は、レーザ素子の作製時およびレーザ素子動作時において、欠陥の発生・増殖原因となる。本発明者は、欠陥導入領域を意図的に設けることにより、上記の圧縮歪を低減することができ、それによって半導体レーザ素子の信頼性を改善し、歩留まりを向上させることができることを見出した。
【0075】
図7に示す構成例では、貫通転位615が基板601における密度よりも高い密度で存在する欠陥導入領域614を、n型GaNコンタクト層602の一部に形成している。貫通転位615の密度は、欠陥導入領域614の全体において基板よりも高い値を示す必要はなく、欠陥導入領域614の一部で局所的に高密度の貫通転位615が存在していても良い。本明細書では、基板601よりも高い密度で貫通転位615が存在する部分を「高貫通転位密度部分」と称する場合がある。
【0076】
図7に示す構造では、GaInN多重量子井戸活性層605の発光領域を規定するリッジストライプは、発光領域が高貫通転位密度部分の近傍に位置するように形成されており、これにより、GaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪が低減される。
【0077】
n型GaN基板601の貫通転位密度が1×106cm-2未満である場合、欠陥導入領域614における貫通転位密度は1×106cm-2以上であることが好ましい。
【0078】
欠陥導入領域614の形成により、GaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪を、欠陥導入領域614を設けない場合における圧縮歪の90%以下に低減することができる。この圧縮歪は、欠陥導入領域614を設けない場合における圧縮歪の70%以下に低減することが好ましい。
【0079】
GaInN多重量子井戸活性層605に生じる圧縮歪は、通常、基板主面に平行な面内において、等方的である。すなわち上記面内において、共振器長方向(リッジストライプと平行な方向)に平行な圧縮歪と、共振器長方向垂直な圧縮歪とは、相互に略等しい大きさを有していると考えられる。
【0080】
一方、欠陥導入領域614は、半導体レーザ素子の共振器長方向に延びている。このため、貫通転位密度が他の部分よりも局所的に高い領域(高貫通転位密度領域)も、共振器長方向に沿って形成される。その結果、欠陥導入領域614は、GaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪のうち、共振器長方向に垂直な方向の圧縮歪の低減に寄与することになる。言い換えると、共振器長方向に垂直な方向の圧縮歪が低減される割合は、共振器長方向の圧縮歪が低減される割合よりも大きくなる。従って、本発明の典型的な実施形態では、共振器長方向の圧縮歪は、欠陥導入領域614を有しない場合における圧縮歪と同等な値を示し、かつ、共振器長方向に垂直な方向における圧縮歪は、欠陥導入領域614を有しない場合における圧縮歪の90%以下の値を示すことになる。このように非等方的に圧縮歪が低減されても、本発明の効果は充分に発揮される。
【0081】
図7に示す例では、n型GaN基板601上でGaInN多重量子井戸活性層605の間に欠陥導入領域614が設けられているが、欠陥導入領域614は、n型GaN基板601、n型GaNコンタクト層602、およびn型AlGaNクラッド層603の少なくとも1つに形成されていればよい。ただし、再現性良く高貫通転位密度部分を作製し、かつ、制御性良く活性層に作用する圧縮歪を低減するため、欠陥導入領域614は、n型GaN基板601に接していることが望ましい。
【0082】
好ましい実施形態では、n型GaN基板601上に形成された欠陥導入領域614の結晶軸が、n型GaN基板601の主面にほぼ垂直な結晶軸(例えばC面基板ならc軸([0001]軸)、A面基板ならa軸(<11−20>軸)、M面基板ならm軸(<1−100>軸))に対して0°より大きく0.3°以下の傾きを有している。この傾きは、0.005°以上0.2°以下の範囲内にあることが好ましく、0.005°以上0.1°以下の範囲内にあることが更に好ましい。
【0083】
本発明では、表面に凹部および/または凸部が形成されているか、あるいは、選択成長のマスクが形成されたn型GaN基板601上に窒化物半導体層を成長させることにより、その窒化物半導体層の一部に欠陥導入領域614を設けている。
【0084】
本実施形態における欠陥導入領域614は、AlxGa1-z-yInyN(0≦x、y≦1、0≦x+y≦1)から構成されており、好ましい例では、GaNから構成される。
【0085】
本実施形態の欠陥導入領域614には、n型不純物がドープされ、伝導性を示す。望ましくはn型不純物としてシリコン、酸素、ゲルマニウム、セレン、硫黄が添加されているが、意図的に不純物を添加しなくても良い。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、窒化物半導体の積層構造がGaN基板上に作製されるが、用いる基板としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、サファイアから形成されたものであってもよい。また、GaN基板上にGaN層やAlN層、AlGaN層、AlGaInN層を一度形成したもの、サファイア基板上にGaN層やAlN層、AlGaN層、AlGaInN層を形成したものを用いても良い。導電性を示す半導体基板を用いると、基板裏面に電極を形成することができる。
【0087】
半導体基板としてGaN基板を用いる場合は、基板上に欠陥導入領域や積層構造を形成する前に、窒素雰囲気中で200℃から900℃の範囲内で熱処理を実行し、残留歪を除去するとともに、表面モフォロジーの改善を行うことが好ましい。この熱処理は、窒素ガス雰囲気中で行うことが好ましいが、アルゴンやヘリウム、ネオンなどの希ガス中で行っても良い。また、雰囲気ガスには、全体の50%以下であれば。アンモニアガスや水素ガスを混入しても良い。
【0088】
本発明では、n型GaN基板601において半導体層の積層構造が形成される主面として、C面を選んだ場合、a軸方向またはm軸方向に平行な方向に、n型GaN基板601のダブルへテロ構造を形成する主面としてA面を選んだ場合、c軸方向またはm軸方向に平行な方向に、n型GaN基板601のダブルへテロ構造を形成する主面としてM面を選んだ場合、c軸方向またはa軸方向に平行な方向に電流の狭窄構造として機能するリッジストライプを形成することが好ましい。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、1×106cm-2以上の貫通転位密度を有する部分が積層構造中に形成されており、欠陥導入領域が1×106cm-2以上の貫通転位密度を有する部分を含んでいる。欠陥導入領域の上方にも、1×106cm-2以上の貫通転位密度を有する部分が形成されていることが望ましい。1×106cm-2以上で貫通転位密度を有する部分の幅は、0.1μm以上50μm以下のサイズを有していることが好ましい。欠陥導入領域の上方に位置する高貫通転密度部分の幅は、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、更に好ましくは、0.1μm以上2.0μm以下である。高貫通転密度部分における転位密度は、1×106cm-2以上1×108cm-2以下であることが好ましく、1×106cm-2以上1×107cm-2以下であることがさらに好ましい。
【0090】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の各実施形態では、窒化物半導体の成長方法として、MOVPE法を用いるが、本発明の窒化物半導体素子は、MOVPE法の半導体成長方法、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などを広く用いることができる。なお、MOVPE法における結晶成長時の成長ガス圧力は減圧(大気圧未満)または大気圧以上のいずれであっても良く、各半導体層の結晶成長に最適な圧力に適宜に設定してもよい。また、原料を基板に供給するためのキャリアガスは、少なくとも窒素(N2)または水素(H2)等の不活性ガスを含むガスである。
【0091】
(実施形態1)
まず、図8を参照して、本実施形態に係る半導体レーザ素子の構成を説明する。
【0092】
本実施形態の半導体レーザ素子は、n型GaN基板601と、基板601上に形成された積層構造とを備えている。n型GaN基板601は、ELOG基板である。
【0093】
n型GaN基板601上に設けられた積層構造は、基板601に近い側から順番に、n型GaNコンタクト層602、n型AlGaNクラッド層603、n型GaN光ガイド層604、GaInN多重量子井戸活性層605、GaInN第1光ガイド606、GaN第2光ガイド607、p型AlGaN電子オーバーフロー抑制層608、p型AlGaN超格子クラッド層609、およびp型GaNコンタクト層610を有している。これらの半導体層は、有機金属気相成長法(MOVPE法)により、積層されたものである。 p型GaNコンタクト層610およびp型AlGaN超格子クラッド層609の上部には、幅1.5μm〜2μm程度のリッジストライプが形成され、その両側はSiO2絶縁膜611によって覆われている。SiO2絶縁膜611上には、リッジストライプ状に加工されたp型GaNコンタクト層610と接触するようにp型電極312が形成されている。n型電極6134は、n型GaNコンタクト層602が露出するまでエッチングされた部分に形成されている。
【0094】
図8に示す半導体レーザ素子によれば、n型電極613を接地し、p型電極612に電圧を印加すると、活性層605に向かってp型電極612側から正孔が注入されるとともに、n型電極613側からは電子が注入されるため、活性層605内で光学利得が生じ、発振波長408nm帯のレーザ発振が生じることになる。この結果、半導体レーザ素子の活性層605の光出射端面からレーザ光が外部に放射され、例えば光ディスクのデータ記録や再生に利用されることになる。
【0095】
図8に示す半導体レーザ素子に特徴的な点は、活性層605と基板601との間に位置する半導体層(本実施形態ではn型GaNコンタクト層602)が一部にn型GaN欠陥導入領域714を含んでいることにある。
【0096】
n型GaNコンタクト層602のうち、n型GaN欠陥導入領域714が形成されている部分の上面は、基板601に向かって凹んだ形状を有しており、リッジストライプは、このn型GaN欠陥導入領域714の上方に配置されている。図8では、基板主面を横切るように貫通転位615が存在しているが、n型GaN欠陥導入領域714の中央部には、基板601には無かった転位欠陥が導入されている。この欠陥の意図的な導入により、活性層605に印加される応力が緩和されている。
【0097】
次に、図8および図9を参照しながら、本実施形態の半導体レーザ素子の製造方法を説明する。
【0098】
まず、図9(a)を参照する。図9(a)は、本実施形態で用いるn型GaN基板601の一部の断面を示している。このn型GaN基板601は、c軸に配向したGaN基板であり、貫通転位密度は1×106cm-2未満である。n型GaN基板601は、結晶軸がc軸に正確に一致したジャスト基板であってもよいが、a軸方向に0.05°〜0.20°のオフ角度を有するオフ基板であることが好ましい。
【0099】
n型GaN基板601の表面を有機溶剤や酸によって清浄化した後、成膜装置におけるチャンバ内のサセプター上に設置し、チャンバ内部をN2で充分に置換する。N2置換が終了した後、N2雰囲気中、10℃/10秒の昇温レートで800℃まで昇温する。その後、n型GaN基板601の主面に対して、800℃で20分間の熱処理(サーマルクリーニング)を施すことにより、表面研磨などによってn型GaN基板601に生じた残留歪を除去する。
【0100】
次に、チャンバ内部における雰囲気ガスの10%をアンモニア(NH3)で置き換え、さらに800℃で10分間の熱処理を実行する。このNH3を加えた雰囲気ガス中で熱処理工程により、基板表面におけるマストランスポート現象が引き起こされるため、n型GaN基板601の主面(研磨面)に存在していた微小な凹凸が均され、表面が平坦化される。
【0101】
その後、新たな残留歪が発生しないように5℃/10秒の降温レートで400℃まで降温する。そして、400℃でNH3の供給を停止、N2に置換し引き続き室温まで降温する。
【0102】
次に、図9(a)に示すように、そのn型GaN基板601のm軸方向と平行に延びる幅約1μm、深さ0.5μmのストライプ状のV字型溝1501を50μm間隔でn型GaN基板601の主面に形成する。V字型溝1501は、V字型溝1501が形成されるべき領域に開口部を有するマスクでn型GaN基板601の主面を覆った後、n型GaN基板601の露出部分をエッチングすることにより、形成される。
【0103】
図9(b)では、1本のV字型溝1501のみが示されているが、実際のn型GaN基板601の主面には、並行する多数のV字型溝1501が周期的に配列されている。このV字型溝1501の幅は、0.1μm以上2.0μm以下であればよく、その深さは0.1μm以上1.0μm以下であればよい。隣接する2つのV字型溝1501の間隔は10μm以上500μm以下の範囲内に設定されることが好ましい。
【0104】
なお、本実施形態におけるV字型溝1501は周期的に配列されているが、本発明は、このような場合に限定されず、隣接するV字型溝1501の間隔はn型GaN基板601上の位置に応じて変化していても良い。後述するように、V字型溝1501の位置は、半導体レーザ素子のリッジストライプ構造の位置に基づいて決定される。
【0105】
次に、V字型溝1501が表面に形成されたn型GaN基板601を、再び有機溶剤や酸によって清浄化した後、薄膜堆積装置のチャンバ内のサセプター上に設置し、チャンバ内部をN2で充分に置換する。
【0106】
2置換が終了した後、N2雰囲気中、10℃/10秒の昇温レートで1000℃まで昇温する。その後、キャリアガスをH2に切り替え、同時にNH3をも供給し、1分間、基板表面のサーマルクリーニングを行う。
【0107】
その後、トリメチルガリウム(TMG)とモノシラン(SiH4)を基板表面に供給することにより、図9(c)に示す厚さ3μmの再成長n型GaN層1502をn型GaN基板601の主面上に成長させる。
【0108】
再成長n型GaN層1502の成長条件(結晶成長温度、V/III比)を調節することにより、n型GaN基板601のV字型溝1501に対応したV字型溝1503が、成長途中の再成長n型GaN層1502の上面に形成される。このため、再成長n型GaN層1502の形成が完了した段階では、n型GaN基板601のV字型溝1501のほぼ真上に、再成長n型GaN層1502のV字型溝1503が存在することになる。
【0109】
再成長n型GaN層1502の成長温度では、結晶に応力が生じないため、n型GaN基板601のc軸1511は、再成長n型GaN層のc軸にほとんど平行である。その後、成長温度から400℃まで10℃/10秒の降温レートで冷却し、400℃でNH3の供給を停止し、キャリアガスを全てN2に切り替える。n型GaN基板601及び再成長n型GaN層1502は、高温(成長温度)状態では熱膨張していたが、降温過程において収縮する。このとき、再成長n型GaN層1502の表面に形成されているV字型溝1503の影響により、再成長n型GaN層1502は全体に均一に熱収縮するのではなく、V字型溝1503が形成されている領域付近の結晶軸を傾けながら熱収縮が小さい領域と熱収縮が大きい領域とに分かれる。この結果、図9(d)に示すように、再成長n型GaN層1502の形態が変化する。そして、V字型溝1503が形成されている領域付近における熱収縮が小さい領域が欠陥導入領域1504に変化する。
【0110】
熱収縮の大きい領域および熱収縮の小さい領域(欠陥導入領域1504)における格子定数のうち、V字型溝1503が延びる方向(紙面に垂直な方向:以下、「ストライプ方向」)と平行な方向における格子定数は、いずれも、n型GaN基板601の格子定数と等しい。しかし、ストライプ方向に垂直な方向における格子定数は、熱収縮が大きい領域ではn型GaN基板601の格子定数よりも小さくなる。逆に、欠陥導入領域1504(熱収縮が小さい領域)におけるストライプ方向に垂直な方向の格子定数は、n型GaN基板601の格子定数よりも大きくなる。
【0111】
欠陥導入領域1504における結晶軸の傾斜は、V字型溝1503を中心としたその両側近傍の結晶に存在する熱収縮により発生した大きな応力を緩和するべく起こり、V字型溝1503に向かってその両側の結晶軸が引き寄せられるように微傾斜することで生じる。この結果、V字型溝1503付近が窪んだ形状が形成される。このとき、応力の集中を緩和するため、V字型溝1503の下方に高密度の貫通転位1505が形成される。貫通転位1505は、n型GaN基板601の表面付近から延び、再成長n型GaN層1502をほとんど貫通している。V字型溝1503付近には、集中的に転位が発生し、その部分の転位密度は2×106cm-2程度になる。この転位密度は、下地となるn型GaN基板601の転位密度よりも高い。一方、貫通転位1505が集中している領域以外の領域における貫通転位密度は、n型GaN基板601とほとんど同じである。
【0112】
再び図8を参照し、その後の製造工程を説明する。
【0113】
n型GaN基板601上にn型GaN欠陥導入領域714を形成した後は、いったん温度を低下させても良いし、温度を低下させることなく、引き続き結晶成長を行なっても良い。
【0114】
本実施形態では、図9(d)に示す再成長n型GaN層1502から構成される厚さ3μmのn型GaNコンタクト層602の上に、TMGおよびSiH4にトリメチルアルミニウム(TMA)を加えたガスを供給し、厚さ1.8μmのn型AlGaNクラッド層603を成長させる。
【0115】
その後、TMAおよびSiH4の供給を停止し、厚さ0.1μmのノンドープGaN光ガイド層604を成長させる。GaN光ガイド層604の成長後、キャリアガスをN2に変え、NH3の供給を停止し、成長温度を820℃まで降温する。成長温度が820℃で安定した後、まずNH3を供給し、続いてTMGおよびトリメチルインジウム(TMI)を供給することにより、GaInN多重量子井戸活性層605を形成する。このGaInN多重量子井戸活性層605は、In組成5%、厚さ4nmのGa0.95In0.05N井戸層とIn組成1%、厚さ6nmのGa0.99In0.01N障壁層とを3周期積層することによって作製することができる。GaInN多重量子井戸活性層605もノンドープ層である。
【0116】
次に、In組成1%で厚さ10nmのノンドープGaInN第1光ガイド層606を成長させた後、その上に、厚さ90nmのノンドープGaN第2光ガイド層607を成長する。その後、TMGおよびNH3を供給した状態で厚さ10nmのノンドープGaN第2光ガイド層607を成長しながら、980℃まで急速に昇温し、成長温度が980℃に到達した後、いったんTMGの供給を停止する。そして、キャリアガスをN2とH2の混合ガスに変更することにより、N2、H2、およびNH3を供給する。そして直ちにTMG、TMA、およびビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)をMg原料として供給し、MgがドープされたAl組成10%で厚さ10nmのp型AlGaN電子オーバーフロー抑制層608を成長させる。この後、速やかにキャリアガスをH2のみに切り替え、引き続きp型AlGaN超格子クラッド層609、および厚さ50nmのp型GaNコンタクト層610を順次積層する。
【0117】
次に、p型AlGaN電子オーバーフロー抑制層608、p型AlGaN超格子クラッド層609、およびp型GaNコンタクト層610をエッチングすることにより、n型GaN欠陥導入領域714の上方に、幅1.6μmのリッジストライプを形成する。リッジストライプの両側をSiO2絶縁膜611で覆い、電流注入領域を形成する。
【0118】
その後、p型GaNコンタクト層610の露出表面と接触するように、SiO2絶縁膜611のストライブ状の開口部を覆うようにp型電極612が設けられる。エッチングによって露出したn型GaNコンタクト層602の表面には、n型電極613が形成されている。本実施形態では、導電性を有するn型GaN基板601を用いているため、n型電極613をn型GaN基板601の裏面に形成して良い。
【0119】
p型GaNコンタクト層610とp型電極612とのコンタクト抵抗を低減するため、p型GaNコンタクト層610には、濃度が1×1020cm-3〜5×1020cm-3のMgがドープされることが好ましい。
【0120】
積層構造の上部に形成したリッジストライプは、n型GaN欠陥導入領域714の真上に形成されているが、貫通転位密度が2×106cm-2以上となる領域(貫通転位集中領域)からは2μm程度離れた位置に配置されている。リッジストライプの位置は、貫通転位集中領域から1μm以上10μm以内の位置に設置されることが望ましい。
【0121】
本実施形態では、GaInN多重量子井戸活性層605に含まれるGaInN井戸層として、In組成8%、厚さ3nmのGa0.92In0.08N井戸層が用いられる代わりに、In組成5%、厚さ4nmのGa0.95In0.05N井戸層を用いている。これにより、GaInN井戸層に加わる圧縮歪を低減することができる。
【0122】
本実施形態によれば、n型GaN欠陥導入領域714上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.3%の圧縮歪となっている。
【0123】
本実施形態では、ノンドープGaN第2光ガイド層607を成長した後、TMGの供給を継続したままノンドープGaN第2光ガイド層607を成長しながらすばやく980℃まで昇温したが、いったんTMGの供給を停止して、N2とNH3を供給した状態ですばやく昇温しても良い。結晶中に非発光再結合中心の原因となるような欠陥が生成されない方法であればどのような昇温方法でも構わない。
【0124】
なお、本実施形態では、n型GaN基板601を用いているが、本発明の結晶成長は、基板材料はGaNに限定されない。基板は、例えば、窒化物半導体基板、サファイア基板、炭化珪素基板、シリコン基板などであってもよい。窒化物半導体基板としては、AlGaN、InGaN、AlGaInNなどから形成されたバルク基板が好適に用いられる。また、GaN等の窒化物半導体が表面に成長したガリウム砒素基板や、選択横方向成長を用いて作製されたELO−GaN基板であってもよい。
【0125】
また、本実施形態では、n型のクラッド層をAlGaNバルク結晶から形成し、p型のクラッド層をAlGaNおよびGaNから構成される超格子から形成しているが、p型のクラッド層をAlGaNバルク結晶から形成し、n型のクラッド層をAlGaNおよびGaNから構成される超格子から形成してもよい。また、n型およびp型の両方のクラッド層をAlGaNバルク結晶層から形成してもよいし、あるいは、AlGaNおよびGaNから構成される超格子から形成してもよい。更に、これらのクラッド層には、In、ホウ素(B)砒素(As)、および/またはリン(P)を添加しても良く、クラッド層は、光とキャリアの閉じ込めが効果的に実現できる構成であれば何でも良い。
【0126】
本実施形態では、Gaの原料としてTMG、Alの原料としてTMA、Inの原料としてTMI、Mgの原料としてCp2Mg、Nの原料としてNH3を用いているが。他の原料ガスを用いて結晶成長を行なっても良い。例えば、Gaの原料としてトリエチルガリウム(TEG)や塩化ガリウム(GaClやCaCl3)、Alの原料としてトリエチルアルミニウム(TEA)やジメチルアルミハイドライド(DMAH)、ジメチルアルミクロライド(DMACl)、トリメチルアミンアラン(TMAA)、Inの原料としてトリエチルインジウム(TEI)、Mgの原料としてビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)やビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウム(MeCp2Mg)、Nの原料としてヒドラジン(N24)やモノメチルヒドラジン(MMH)、ジメチルヒドラジン(DMH)を用いても良い。
【0127】
本実施形態に係る半導体素子は、半導体レーザ素子であるが、本発明はこれに限定されず、発光ダイオード素子や受光素子などの、pn接合を有する全ての半導体素子に適用され得る。また半導体素子の材料となる窒化物半導体としては、AlGaInNや、AsおよびPを含有するAlGaInNAsP混晶化合物半導体など、広い範囲から選択され得る。このことは、以下に説明する他の実施形態の場合についても成立する。
【0128】
(実施形態2)
次に、図10を参照しながら、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0129】
本実施形態における半導体レーザ素子の構成が実施形態1における半導体レーザ素子の構成と異なる点は、n型GaN基板601の表面に凹部が形成されている点と、半導体の積層構造がこの凹部の上方に位置している点にある。より具体的には、n型GaNコンタクト層602に含まれるn型GaN欠陥導入領域814は、n型GaN基板601の凹部の真上に位置し、このn型GaN欠陥導入領域814とn型GaN基板601との間にはエアギャップ815が存在している。
【0130】
次に、図11(a)〜(c)を参照しつつ、本実施形態の半導体レーザ素子を製造する方法を説明する。
【0131】
まず、実施形態1と同様に、n型GaN基板601を用意する。本実施形態で用いるn型GaN基板601は、c軸に配向したGaN基板であり、貫通転位密度は8×105cm-2以下である。n型GaN基板601は、結晶軸がc軸に正確に一致したジャスト基板であってもよいが、a軸方向に0.05°〜0.20°のオフ角度を有するオフ基板であることが好ましい。
【0132】
n型GaN基板601の表面を有機溶剤や酸によって清浄化した後、成膜装置におけるチャンバ内のサセプター上に設置し、チャンバ内部をN2で充分に置換する。N2置換が終了した後、N2雰囲気中、10℃/10秒の昇温レートで800℃まで昇温する。その後、n型GaN基板601の主面に対して、800℃で20分間の熱処理(サーマルクリーニング)を施すことにより、表面研磨などによってn型GaN基板601に生じた残留歪を除去する。
【0133】
次に、チャンバ内部における雰囲気ガスの10%をアンモニア(NH3)で置き換え、さらに800℃で10分間の熱処理を実行する。このNH3を加えた雰囲気ガス中で熱処理工程により、基板表面におけるマストランスポート現象が引き起こされるため、n型GaN基板601の主面(研磨面)に存在していた微小な凹凸が均され、表面が平坦化される。
【0134】
その後、新たな残留歪が発生しないように5℃/10秒の降温レートで400℃まで降温する。そして、400℃でNH3の供給を停止、N2に置換し引き続き室温まで降温する。
【0135】
このような処理を経たn型GaN基板601を、図11(a)に示すように、n型GaN基板601のm軸方向と平行に延びる幅約15μm、深さ3μmのストライプ状の溝1601を100μm間隔でn型GaN基板601の主面に形成する。溝1601は、溝1601が形成されるべき領域に開口部を有するマスクでn型GaN基板601の主面を覆った後、n型GaN基板601の露出部分をエッチングすることにより、形成される。
【0136】
図11(a)では、1本の溝1601のみが示されているが、実際のn型GaN基板601の主面には、並行する多数の溝1601が周期的に配列されている。この溝1601の幅は、8μm以上30μm以下であればよく、その深さは0.1μm以上15μm以下であればよい。隣接する2つの溝1601の間隔は10μm以上500μm以下の範囲内に設定されることが好ましい。
【0137】
なお、本実施形態における溝1601は周期的に配列されているが、本発明は、このような場合に限定されず、隣接する溝1601の間隔はn型GaN基板601上の位置に応じて変化していても良い。後述するように、溝1601の位置は、半導体レーザ素子のリッジストライプ構造の位置に基づいて決定される。
【0138】
次に、溝1601が表面に形成されたn型GaN基板601を、再び有機溶剤や酸によって清浄化した後、薄膜堆積装置のチャンバ内のサセプター上に設置し、チャンバ内部をN2で充分に置換する。
【0139】
2置換が終了した後、N2雰囲気中、10℃/10秒の昇温レートで1000℃まで昇温する。その後、キャリアガスをH2に切り替え、同時にNH3をも供給し、1分間、基板表面のサーマルクリーニングを行う。
【0140】
その後、TMGとSiH4を基板表面に供給することにより、図11(b)に示す厚さ5μmの再成長n型GaN層1502をn型GaN基板601の主面上に成長させる。再成長n型GaN層1502の結晶成長は、基板主面における凸部から生じ、溝1601の上方にエアブリッジ構造を形成しながら横方向成長し、最終的に溝1601の中央付近で合体する。このため、再成長n型GaN層1502の結晶成長が終了した段階で、溝1601はエアギャップ1602となり、このエアギャップ1602の上方に、再成長n型GaN層1502の表面にV字型溝1503が形成される。
【0141】
本実施形態では、このように縦方向だけではなく横方向にも結晶成長が進むように、再成長n型GaN層1502の成長条件(結晶成長温度、V/III比)を調節する。このとき、エアギャップ1602の部分に結晶成長が生じないようにするには、溝1601の表面を絶縁膜で被覆することが好ましい。ただし、溝1601にGaNの結晶成長が生じても良い。その場合、溝1602の深さを再成長nGaN層1502の厚さの同程度または、厚さよりも大きく設定しておくことが好ましい。そのようにすれば、溝1601に成長したGaNが再成長n型GaN層1502の横方向成長の障害となることを確実に防止できる。
【0142】
再成長n型GaN層1502の成長温度では、結晶に応力が生じないため、n型GaN基板601のc軸1511は、再成長n型GaN層のc軸にほとんど平行である。その後、成長温度から400℃まで10℃/10秒の降温レートで冷却し、400℃でNH3の供給を停止し、キャリアガスを全てN2に切り替える。n型GaN基板601及び再成長n型GaN層1502は、高温(成長温度)状態では熱膨張していたが、降温過程において収縮する。このとき、再成長n型GaN層1502の表面に形成されているV字型溝1503の影響により、再成長n型GaN層1502は全体に均一に熱収縮するのではなく、V字型溝1503が形成されている領域付近の結晶軸を傾けながら熱収縮が小さい領域と熱収縮が大きい領域とに分かれる。この結果、図11(c)に示すように、再成長n型GaN層1502の形態が変化する。そして、V字型溝1503が形成されている領域付近における熱収縮が小さい領域が欠陥導入領域1504に変化する。
【0143】
熱収縮の大きい領域および熱収縮の小さい領域(欠陥導入領域1504)における格子定数のうち、ストライプ方向と平行な方向における格子定数は、いずれも、n型GaN基板601の格子定数と等しい。しかし、ストライプ方向に垂直な方向における格子定数は、熱収縮が大きい領域ではn型GaN基板601の格子定数よりも小さくなる。逆に、欠陥導入領域1504(熱収縮が小さい領域)におけるストライプ方向に垂直な方向の格子定数は、n型GaN基板601の格子定数よりも大きくなる。
【0144】
また、結晶軸の傾きはV字型溝1503に向かってその両側から起こり、V字型溝1503付近が窪んだ形状となる。また、このとき、V字型溝1503の下方には、応力の集中を緩和するため、多くの結晶欠陥が新たに発生する。結晶欠陥は貫通転位であり、V字型溝1503付近に集中して3×106cm-2の貫通転位密度であった。
【0145】
この貫通転位密度は、下地となるn型GaN基板601の貫通転位密度よりも高密度であり、貫通転位が集中している領域以外の貫通転位密度はn型GaN基板601とほとんど同じである。
【0146】
この後、実施形態1における製造工程と同様の製造工程により、図10に示す半導体レーザ素子が作製される。
【0147】
図10の半導体レーザ素子でも、n型電極613とp型電極612の間に電圧を印加すると、GaInN多重量子井戸活性層605に向かってp型電極612側から正孔が注入され、またn型電極613側から電子が注入される。その結果、GaInN多重量子井戸活性層605内で光学利得を生じ、閾値電流38mAで発振波長408nm帯のレーザ発振を起こす。
【0148】
本実施形態のリッジストライプ構造は、n型GaN欠陥導入領域814及びエアギャップ815の上方に形成されるが、3×106cm-2の貫通転位密度が集中した領域から3μm離れた位置に設置されている。このリッジストライプ構造の形成位置は、貫通転位集中領域から1μm以上15μm以内の位置に設置されることが望ましい。
【0149】
n型GaN欠陥導入領域814上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.3%の圧縮歪となっている。
【0150】
本実施形態におけるn型GaN基板601の溝1601の表面は、前述したように、絶縁膜でマスクしてもよい。図12は、凹部の全面または一部分を、SiNx絶縁膜で被覆した半導体レーザ素子を示している。このような絶縁膜は、SiO2、SiONx、AlOx、AlONx、GaOx、TiO2、ZrO2、NbO3、TiNx、およびWNxからなる群から選択された材料から好適に形成される。
【0151】
溝1601の全面または一部分を上述の絶縁膜で被覆することにより、溝1601の幅を40μm程度にまで広げることができ、凹部の深さを2μm程度にまで浅くすることができる。絶縁膜として望ましくは、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiO2)、酸化窒化シリコン(SiONx)、酸化アルミニウム(AlOx)、窒化酸化アルミニウム(AlONx)、酸化ガリウム(GaOx)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(NbO3)、窒化チタン(TiNx)、窒化タングステン(WNx)である。
【0152】
(実施形態3)
次に、図13を参照しながら、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0153】
本実施形態における半導体レーザ素子の構成が実施形態1における半導体レーザ素子の構成と異なる点は、n型GaN欠陥領域をSiO2絶縁膜1015上に形成していることにある。
【0154】
以下、図14(a)〜(c)を参照して、本実施形態に特有な点のみを説明する。
【0155】
まず、前述の実施形態と同様の処理を施したn型GaN基板601の表面に、図14(a)に示すようにパターニングされたSiO2絶縁膜1701を形成する。SiO2絶縁膜1701は、複数のストライプからなり、各ストライプは、m軸方向に平行であり、その幅は15μm、深さは3μmである。ストライプの幅は8μm以上20μm以下であればよく、ストライプの間隔は10μm以上500μm以下の間隔で形成されていれば良い。SiO2絶縁膜1701の厚さは0.005μm以上0.2μm以下であればよい。
【0156】
この後、実施形態1、2について説明した方法と同一の方法により、5μm厚の再成長n型GaN層1502の結晶成長を行う(図14(b))。再成長n型GaN層1502は、n型GaN基板601上のSiO2絶縁膜1701が形成されていない開口領域から結晶成長が起こり、SiO2絶縁膜1701の上方をすべるように横方向成長し、最終的にSiO2絶縁膜1701の中央付近で合体する。ここで横方向成長をする再成長n型GaN層1502とSiO2絶縁膜1701の間にはせん断応力が作用するため、再成長n型GaN層1502の成長終了段階で、再成長n型GaN層1502のc軸はn型GaN基板601のc軸に対して傾き、かつ横方向成長した領域同士の合体部分には3×106cm-2の貫通転位密度が形成されている。このとき、ここで形成されている貫通転位密度は下地となるn型GaN基板601の貫通転位密度よりも高密度であり、貫通転位が集中している領域以外の貫通転位密度はn型GaN基板601とほとんど同じである。
【0157】
その後、成長温度から400℃まで10℃/10秒の降温レートで冷却し、400℃でNH3の供給を停止し、キャリアガスを全てN2に切り替える。n型GaN基板601及び再成長n型GaN層1502は高温(成長温度)状態では熱膨張していたが、この降温過程において収縮する。このとき、図14(c)に示すように、再成長n型GaN層1502のc軸の傾きはさらに傾きを大きくしながら、熱収縮が大きい領域と小さい領域に分かれる。この熱収縮が小さい、SiO2絶縁膜1701上の領域が欠陥導入領域1504である。 この後、前述の実施形態と同様の方法により、図13の半導体レーザ素子を作製することができる。
【0158】
本実施形態の半導体レーザ素子でも、n型電極613とp型電極612の間に電圧を印加すると、GaInN多重量子井戸活性層605に向かってp型電極612側から正孔が、またn型電極613側から電子が注入され、GaInN多重量子井戸活性層605内で光学利得を生じ、閾値電流38mAで発振波長408nm帯のレーザ発振を起こす。
【0159】
リッジストライプ構造はn型GaN欠陥導入領域1014及びSiO2絶縁膜1015の上方に形成されるが、3×106cm-2の貫通転位密度が集中した領域から2μm離れた位置に設置されている。このリッジストライプ構造の形成位置は貫通転位集中領域から1μm以上9μm以内の位置に設置されることが望ましい。
【0160】
n型GaN欠陥導入領域1014上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.15%の圧縮歪となっている。
【0161】
また、本構造において絶縁膜として、SiO2を用いたが、絶縁膜としてSiNx、SiONx、AlOx、AlONx、GaOx、TiO2、ZrO2、NbO3、TiNx、WNxを用いてももちろん良い。
【0162】
(実施形態4)
次に、図15を参照しながら、本発明の第4の実施形態を説明する。
【0163】
本実施形態では、欠陥導入領域がn型GaN基板601に近いn型AlGaN第1欠陥導入領域1115と、その上に位置するn型GaN第2欠陥導入領域1114から構成されている。n型GaN基板601に近い側に、格子定数の小さいn型AlGaN第1欠陥導入領域1115を配置することにより、局所的に基板の貫通転位密度8×105cm-2よりも高密度の2×106cm-2の貫通転位615を導入することができ、この高貫通転位密度に近接して活性層の発光領域を配置することで、欠陥導入領域のc軸の傾きをさらに大きくすることが可能であり、より効果的にGaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪を低減することができる。このときn型GaN第2欠陥導入領域1114上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.2%の圧縮歪となっている。
【0164】
(実施形態5)
次に、図16を参照しながら、本発明の第5の実施形態を説明する。
【0165】
本実施形態における半導体レーザ素子の構成は、欠陥導入領域を除いて、実施形態1における半導体レーザ素子の構成と同一である。
【0166】
本実施形態に特徴的な点は、欠陥導入領域がn型GaN基板601に近いn型AlGaN第1欠陥導入領域1215とその主面に対する上方側のn型GaN第2欠陥導入領域1214から構成されている。n型AlGaN第1欠陥導入領域1215中にはエアギャップ1217が形成されている、エアギャップの下部にはSiNx絶縁膜1216が形成されているが、エアギャップ1217が形成されればこのSiNx絶縁膜1216はなくても良い。欠陥導入領域のn型GaN基板601に近い側に、格子定数の小さいn型AlGaN第1欠陥導入領域1215とエアギャップ1217を配置することで、局所的に基板の貫通転位密度5×105cm-2よりも高密度の1×106cm-2の貫通転位615を導入することができ、この高貫通転位密度に近接して活性層の発光領域を配置することで、欠陥導入領域のc軸の傾きをさらに大きくすることが可能であり、より効果的にGaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪を低減することができる。このときn型GaN第2欠陥導入領域1214上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.1%の圧縮歪となっている。
【0167】
(実施形態6)
次に、図17を参照しながら、本発明の第6の実施形態を説明する。
【0168】
本実施形態では、積層構造を形成した後、貫通転位が集中した領域にプロトン注入を行い、5×106cm-2の貫通転位密度まで転位密度を増加させている。注入するイオン種は、リンや砒素等、伝導性に影響を与えるもの以外であれば何でも良い。貫通転位密度が高くなりことにより、欠陥導入領域のc軸の傾きをさらに大きくすることができるため、GaInN多重量子井戸活性層605に加わる圧縮歪を、より効果的に低減することができる。
【0169】
n型GaN欠陥導入領域1314上に形成されたGaInN多重量子井戸活性層605はリッジストライプ構造と平行な方向には0.6%の圧縮歪が加わっているが、リッジストライプ構造と垂直な方向には圧縮歪が低減され、0.1%の圧縮歪となっている。
【0170】
また、本実施形態では、図8に示すようにあらかじめn型GaN欠陥導入領域714が形成され、下地であるn型GaN基板よりも高密度の貫通転位密度集中領域が形成されたレーザ素子用ダブルへテロ構造を用いているが、イオン注入を行うことで1×106cm-2から5×106cm-2の貫通転位密度を発生させることが可能であれば、n型GaN欠陥導入領域714の形成されていない図6で示すようなレーザ素子用ダブルへテロ構造を用いても良い。
【0171】
(実施形態7)
図18(a)から(c)を参照しながら、欠陥誘発領域1801を形成する他の方法を説明する。
【0172】
まず、前述の各実施形態と同様に、n型GaN基板601を用意した後、図18(a)に示すように、n型GaN基板601の主面に欠陥誘発領域1801を形成する。
【0173】
次に、図18(b)に示すように、再生長n型GaN層1502を成長させると、再生長n型GaN層1502中に2×106cm-2程度の貫通転位615を有する欠陥導入領域1504を形成することができる。
【0174】
本実施形態の方法によっても、欠陥導入領域1504のc軸の傾きを大きくすることが可能であり、その上に形成するGaInN多重量子井戸活性層に加わる圧縮歪を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の窒化物半導体素子および製造方法によれば、基板上に形成した積層構造に含まれる活性層に印加させる圧縮応力を緩和することが可能になるため、応力に起因した特性の劣化や歩留まりの低下を抑制し、種々の電子機器に好適に用いられる。本発明によれば、高い出力で信頼性の高いGaN系半導体レーザ素子を歩留まり良く実現することができるため、例えば大容量高速光記録装置やレーザディスプレイ装置等の光源として好適に用いられる。その他、加工用や医療用の高出力レーザ素子として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】n型GaN基板上に作製されたn型AlGaNコンタクト層を有する窒化物半導体レーザ素子(従来例)の断面構造図である。
【図2】n型GaN基板上に作製されたn型AlGaNコンタクト層と緩和層を有する窒化物半導体レーザ素子(他の従来例)の断面構造図である。
【図3】ELO−GaN基板上に作製されたAlGaInN応力集中抑制層を有する窒化物半導体レーザ素子(更に他の従来例)の断面構造図である。
【図4】段差を有するn型GaN基板上に作製された窒化物半導体レーザ素子(更に他の従来例)の断面構造図である。
【図5】歪緩和膜を有する半導体レーザ素子(更に他の従来例)の断面構造図である。
【図6】n型GaN基板上に作製された窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域を有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域を有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図9】(a)から(d)は、本発明の一実施形態に係るn型GaN基板上への高貫通転位密度領域の作製方法を示す工程断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域とエアギャップを有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図11】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係るn型GaN基板上へのエアギャップを有する高貫通転位密度領域の作製方法を示す工程断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域とエアギャップを有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域と絶縁膜を有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図14】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係るn型GaN基板上への絶縁膜を有する高貫通転位密度領域の作製方法を示す工程断面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域を有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域とエアギャップを有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る欠陥導入領域を有する窒化物半導体レーザ素子の断面構造図である。
【図18】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係るn型GaN基板上への高貫通転位密度領域の作製方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0177】
101 n型基板
102 歪緩和膜
103 n型クラッド層
104 n型光ガイド層
105 活性層
106 p型光ガイド層
107 p型クラッド層
108 p型コンタクト層
109 n型電流ブロック層
110 p型電極
111 n型電極
201 n型GaN基板
202 アンドープAlGaN層
203 n型AlGaNコンタクト層
204 n型GaInNクラック抑制層
205 n型クラッド層
206 n型光ガイド層
207 活性層
208 p型AlGaN電子閉じ込め層
209 p型光ガイド層
210 p型クラッド層
211 p型コンタクト層
212 ZrO2絶縁膜
213 p型電極
214 n型電極
215 貫通転位
301 緩和層
302 第1の窒化物半導体層
303 保護膜
304 第2の窒化物半導体層
401 ELO−GaN基板
402 n型GaNコンタクト層
403 n型クラッド層
404 n型光ガイド層
405 活性層
406 AlGaInN応力集中抑制層
407 p型AlGaNキャップ層
408 p型光ガイド層
409 p型クラッド層
410 p型コンタクト層
411 SiO2絶縁膜
412 p型電極
413 n型電極
414 貫通転位
501 n型GaN基板
502 n型GaNコンタクト層
503 n型AlGaNクラッド層
504 n型GaN光ガイド層
505 活性層
506 p型GaN光ガイド層
507 p型第1AlGaNクラッド層
508 電流狭窄層
509 p型第2AlGaNクラッド層
510 p型コンタクト層
511 p型電極
512 n型電極
513 貫通転位
601 n型GaN基板
602 n型GaNコンタクト層
603 n型AlGaNクラッド層
604 n型GaN光ガイド層
605 GaInN多重量子井戸活性層
606 GaInN第1光ガイド層
607 GaN第2光ガイド層
608 p型AlGaN電子オーバーフロー抑制層
609 p型AlGaN超格子クラッド層
610 p型GaNコンタクト層
611 SiO2絶縁膜
612 p型電極
613 n型電極
614 欠陥導入領域
615 貫通転位
714 n型GaN欠陥導入領域
814 n型GaN欠陥導入領域
815 エアギャップ
916 SiNx絶縁膜
1014 n型GaN欠陥導入領域
1015 SiO2絶縁膜
1114 n型GaN第2欠陥導入領域
1115 n型AlGaN第2欠陥導入領域
1214 n型GaN第2欠陥導入領域
1215 n型AlGaN第2欠陥導入領域
1216 SiNx絶縁膜
1217 エアギャップ
1314 n型GaN欠陥導入領域
1315 転位導入領域
1501 V字型溝
1502 再成長n型GaN層
1503 V字型溝
1504 再成長n型GaNによる欠陥導入領域
1505 貫通転位
1511 n型GaN基板のc軸
1512 再成長n型GaN層のc軸(成長温度付近)
1513 再成長n型GaN層のc軸(室温付近)
1601 凹凸構造
1602 エアギャップ
1612 再成長n型GaN層のc軸(成長温度付近)
1613 再成長n型GaN層のc軸(室温付近)
1701 SiO2絶縁膜
1712 再成長n型GaN層のc軸(成長温度付近)
1713 再成長n型GaN層のc軸(室温付近)
1801 欠陥誘発領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体の積層構造と、
を備えた窒化物半導体素子であって、
前記積層構造は、
前記窒化物半導体基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層と、
前記半導体基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層と、
を有しており、
前記第2窒化物半導体層は、前記窒化物半導体基板の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる、窒化物半導体素子。
【請求項2】
結晶性を有する基板と、
前記基板上に設けられた窒化物半導体の積層構造と、
を備えた窒化物半導体素子であって、
前記積層構造は、
前記基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層と、
前記基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層と、
を有しており、
前記第2窒化物半導体層と前記基板との間に設けられた第3半導体層を更に備え、
前記第2窒化物半導体層は、前記第3窒化物半導体層の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる、窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記転位密度は貫通転位密度である、請求項1または2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記欠陥導入領域は、貫通転位密度が1×106cm-2以上の高貫通転位密度部分を有している請求項3に記載の窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記第1窒化物半導体層の少なくとも一部は、キャリアの注入によって発光する活性領域として機能する、請求項1から4のいずれかに記載の窒化物半導体素子。
【請求項6】
前記活性領域と前記高貫通転位密度部分との距離は、2μm以上20μm以下の範囲内にある請求項5に記載の窒化物半導体素子。
【請求項7】
前記第1窒化物半導体層の圧縮歪は、前記欠陥導入領域の存在により、前記欠陥導入領域が存在しない場合に比べて低減されている請求項1から6のいずれかに記載の窒化物半導体素子。
【請求項8】
前記圧縮歪の低減は異方的である請求項7に記載の窒化物半導体素子。
【請求項9】
前記第2窒化物半導体層は、AlxGa1-x-yInyN(0≦x、y≦1、0≦x+y≦1)から形成されている請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項10】
前記窒化物半導体基板は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、または窒化アルミニウムガリウムから形成されている請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項11】
前記基板はサファイアから形成されている請求項2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項12】
窒化物半導体基板を用意する工程と、
前記窒化物半導体基板上に窒化物半導体の積層構造を形成する工程と、
を含む窒化物半導体素子の製造方法であって、
前記積層構造を形成する工程は、
前記窒化物半導体基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記半導体基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層を形成する工程と
を含み、前記第2窒化物半導体層は、前記窒化物半導体基板の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる、窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項13】
結晶性を有する基板を用意する工程と、
前記基板上に窒化物半導体の積層構造を形成する工程と、
を含む窒化物半導体素子の製造方法であって、
前記積層構造を形成する工程は、
前記基板の格子定数よりも大きな格子定数を有する第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記基板と前記第1窒化物半導体層との間に位置する第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層と前記基板との間に設けられた第3半導体層を形成する工程とを含み、
前記第2窒化物半導体層は、前記第3窒化物半導体層の転位密度よりも高い転位密度を有する欠陥導入領域を含んでいる、窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記欠陥導入領域を含む第2窒化物半導体層を形成する工程は、
前記第2窒化物半導体層となる結晶の層を第1温度以上の温度で成長させる工程と、
前記結晶を前記第1温度よりも低い温度に低下させるとき、前記結晶の層内に前記欠陥導入領域を形成する工程と、
を含む、請求項12または13に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項15】
前記欠陥導入領域を含む第2窒化物半導体層を形成する工程を実行する前に、前記欠陥導入領域を形成すべき領域を規定する凹部および/または凸部を下地表面に形成する工程を行なう、請求項12から14のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項16】
前記欠陥導入領域は、貫通転位密度が1×106cm-2以上の前記高貫通転位密度部分を有している請求項12から15のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項17】
前記積層構造を形成した後、前記高貫通転位密度部分から外れた位置に発光領域を形成する工程を実行する請求項16に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項18】
前記発光領域と前記高貫通転位密度部分との距離は、2μm以上20μm以下の範囲にある請求項17に記載の窒化物半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−24713(P2006−24713A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201003(P2004−201003)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】