説明

筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置

【課題】筒内噴射エンジンに於いて、蓄圧室内にベーパーが発生している場合を的確に判断して蓄圧室内のベーパーを短時間で排出して燃料の昇圧時間を短縮する。
【解決手段】低圧燃料ポンプが作動しており、かつ、蓄圧室内の燃圧がフィード圧よりも低い圧力値として設定されている所定圧に達していなかった場合には、排気行程気筒に於ける燃料噴射弁の強制駆動を開始する。そして、蓄圧室内の燃圧が所定圧に達した場合、或いは排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動が所定回数または所定時間以上継続された場合に強制駆動を終了する。又、燃料タンク内の燃料残量が所定量を下回っているときには燃料噴射弁の強制駆動は禁止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧の燃料を気筒内に直接噴射する筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置、特に、蓄圧室内にベーパーが発生している際に、蓄圧室内のベーパー排出と燃料の昇圧とを迅速に行う燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、燃焼室内へ直接燃料を噴射するように燃料噴射弁を備えた筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置では、燃料を気筒内に十分細かな霧状に噴射できるようにその噴射燃料の圧力(以下、燃圧と称する)を十分高く確保する必要があるため、低圧燃料ポンプから吐出された燃料は、低圧プレッシャレギュレータによって所定の低圧値に設定されたフィード圧に調整され、更に、高圧燃料ポンプにより所望の高圧値に昇圧される。そして、高圧燃料ポンプにより昇圧された高圧の燃料は蓄圧室に蓄えられ、燃料噴射弁を介してエンジンの各気筒の燃焼室内に直接噴射される。蓄圧室は、ある程度以上の容積とされ、噴射による蓄圧室内の圧力降下を小さくして噴射圧力を一定に保持するようにしている。
【0003】
前述の高圧燃料ポンプは、通常、エンジンのカムシャフトと作動連結されており、エンジンと同期した回転数で駆動される。又、高圧燃料ポンプ1回転当たりの燃料吐出量は蓄圧室の容積に比べるとかなり小さい。そのため、エンジン始動中のようにエンジン回転数の低い状態に於いては、蓄圧室への単位時間当たりの燃料圧送量はかなり低くなり、例えば蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下しているような場合では、蓄圧室内の燃圧が上昇するのに数秒を要する。
【0004】
そこで、高圧燃料ポンプの燃料吐出量が小さくなるエンジン始動時に於いて、蓄圧室内の燃圧が所定値よりも低い場合に、低圧燃料ポンプから吐出された燃料を蓄圧室に直接供給し、燃圧が所定値に達してから高圧燃料ポンプで加圧された燃料を蓄圧室に供給して昇圧を行うという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来の技術によれば、蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下しているような場合であっても、蓄圧室の燃圧がフィード圧まで昇圧するまでの時間を短縮することができ、結果的に、高圧燃料ポンプによる燃料の昇圧時間も短縮することができる。
【0005】
一方、燃料タンク内の燃料が空の状態から燃料を充填したときでは、蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下しているだけでなく、蓄圧室内にべーパーが存在している。又、高温環境下でエンジンを負荷運転した後にエンジンを停止したときでは、蓄圧室内の燃料の圧力がそのときの燃料温度に対する飽和蒸気圧を下回り、蓄圧室内にべーパーが発生する。これらの状況では、燃料の圧力によって蓄圧室内のベーパーを圧縮して押し潰さなければならなくなり、蓄圧室内に燃料が充満している場合に比べると燃料の昇圧に要する時間が大幅に長くなる。
【0006】
そこで、蓄圧室と燃料タンクとを接続する燃料配管、並びに、その燃料配管の途中に開閉弁を設け、エンジンの始動時に、この開閉弁を開弁制御して蓄圧室に存在するベーパーを迅速に排出させるという技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この従来の技術によれば、蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下しているだけでなく、蓄圧室内にべーパーが存在しているような場合であっても、蓄圧室の外にベーパーを排出することによって、蓄圧室の燃圧を昇圧させる時間を大幅に短縮することができ、その結果、高圧燃料ポンプによる燃料の昇圧時間も短縮される。
【0007】
又、従来、エンジン始動時、始動要求噴射量に相当する燃料噴射弁駆動時間よりも十分に長い燃料噴射弁駆動時間で燃料噴射弁を駆動するという技術が提案されており(例えば、特許文献3参照)、この技術によっても、前述の特許文献2と同様、蓄圧室の外にベーパーを排出することによって、蓄圧室の燃圧を昇圧させる時間を大幅に短縮することができ、その結果、高圧燃料ポンプによる燃料の昇圧時間も短縮される。
【0008】
【特許文献1】特開平9−250426号公報
【特許文献2】特開平7−77119号公報
【特許文献3】特開2003−166435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1に記載の技術では、蓄圧室内にベーパーが存在していない状態で燃圧が大気圧付近まで低下している場合には燃料の昇圧時間を短縮することができる。しかし、蓄圧室内にベーパーが存在している場合には、低圧燃料ポンプから供給されるフィード圧の燃料によってベーパーを圧縮し、ベーパーが押し潰されて燃料中に溶け込んでしまうまでは燃料の昇圧が鈍くなり、昇圧時間が大幅に長くなるという課題があった。
【0010】
一方、前述の特許文献2に記載の技術では、開閉弁を通じてベーパーを燃料タンクへ排出することができ、昇圧時間を短縮することが可能である。但し、この特許文献2に記載された技術を実現するには、蓄圧室と燃料タンクとを接続するための燃料配管や開閉弁を追加しなくてはならず、大幅なコストアップを招くという課題があった。
【0011】
又、前述の特許文献3に記載の技術では、燃料噴射弁を通じてベーパーを燃焼室内へ排出することができ、特許文献2に記載の技術のようなコストアップを招くこともなく、昇圧時間を短縮することが可能である。しかしながら、特許文献3記載の技術では、エンジンの要求する噴射量に相当する駆動時間よりも十分に長い駆動時間で燃料噴射弁を駆動するため、燃圧が予想以上に早く上昇したときには、燃料噴射量が過剰に多くなり、リッチ失火やエンジンオイル希釈を招くという課題があった。
【0012】
更に、特許文献3の技術は、エンジンの吸気管に燃料を噴射するポート噴射式エンジンを前提とした技術であるため、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式エンジンに対しては、そのまま適用できないという課題もある。即ち、吸気管内へ燃料を噴射するポート噴射式エンジンに於いては、燃焼室の行程状態に係わらず、吸気管内の圧力が大気圧以上に上昇することがないため、燃料噴射弁の駆動時間を正規の駆動時間よりも長くしても問題とならない。ところが、燃焼室内へ燃料を直接噴射する筒内噴射エンジンに於いては、燃料噴射弁の駆動時間を長くしていくと、燃焼室が吸気行程から圧縮行程へ移行したときに燃焼室内の圧力上昇によって、最悪の場合、一旦、燃焼室へ排出されたベーパーが蓄圧室へ逆流することも懸念される。
【0013】
この発明は、従来の装置におけるこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、筒内噴射式エンジンに於いて、燃料タンク内の燃料が空の状態から燃料を充填したときや、高温環境下でエンジンを負荷運転した後にエンジンを停止したときのように、蓄圧室内にベーパーが存在する状態に於いて、蓄圧室内に存在するベーパーを短時間で排出して燃料の昇圧時間を短縮することのできる筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明による筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置は、燃焼室内へ燃料を直接噴射するように気筒毎に配置された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁と共通に接続され高圧の燃料を蓄える蓄圧室と、前記蓄圧室の燃料の圧力を検出する燃圧センサと、燃料タンクの燃料を汲み上げて低圧通路へ吐出する低圧燃料ポンプと、前記低圧通路内の燃料をフィード圧に調整する低圧プレッシャレギュレータと、前記低圧通路内の燃料を吸入して前記蓄圧室へ吐出する高圧燃料ポンプと、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧室へ向かう燃料の流通のみを許す吐出弁と、前記蓄圧室内の燃料の圧力を調整するための燃圧制御弁とを備えた筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置において、前記低圧燃料ポンプが作動しており、かつ、前記燃圧センサによって検出された前記蓄圧室内の燃圧が所定圧を下回っているときに、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を開始することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明による筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、低圧燃料ポンプが作動しており、かつ、前記燃圧センサによって検出された蓄圧室内の燃圧が所定圧を下回っているときに、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を開始するようにしているので、蓄圧室内に発生しているベーパーを排気行程気筒の燃料噴射弁を通じて燃焼室内へ排出することが可能となり、コストアップ無しに蓄圧室内の燃料の昇圧時間を短縮することができる。
【0016】
又、この発明による筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、排気行程気筒における燃料噴射弁を強制駆動することで蓄圧室内のベーパー排出を促進することができるので、吸気行程気筒における燃料噴射弁の駆動時間はエンジンの要求する噴射量に相当する駆動時間のまま変更しなくて済ませることができる。そのため、蓄圧室内の燃圧が予想以上に早く上昇したときであっても燃焼に寄与する噴射量(吸気行程気筒で噴射された燃料量)が過剰になることは無く、その結果、リッチ失火やエンジンオイル希釈を招くこともない。
【0017】
更に、この発明による筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、燃焼室内の圧力がフィード圧よりも高くなることのない排気行程気筒の燃料噴射弁を強制駆動するようにしているので、一旦、燃焼室へ排出したベーパーが蓄圧室へ逆流することも回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置について詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置を示すブロック構成図である。
【0019】
図1に於いて、エンジン40の気筒毎に設けられた燃料噴射弁39(図では4個)は、その一端には共通の高圧燃料配管である蓄圧室36が接続されており、この蓄圧室36内の燃料が各燃料噴射弁39に分配供給される。又、燃料噴射弁39の各他端は、エンジン40の各燃焼室内に燃料を直接噴射するように配置されている。各燃料噴射弁39は開閉制御されることにより、対応する気筒の燃焼室内に高圧燃料を直接噴射供給する。各燃料噴射弁39から噴射された燃料は、燃焼室内の空気と混ざり合って混合気となる。蓄圧室36には、その内部の燃圧を検出するための手段として、燃圧センサ61が取付けられている。
【0020】
エンジン40には、その始動時にクランキングによってクランクシャフトに回転力を付与するためのスタータ(図示せず)が設けられている。このスタータは、運転者によるイグニションスイッチ(図示せず)の操作に応じて作動する。即ち、イグニションスイッチは、周知のようにOFF位置とON位置、及びON位置とSTART位置、との間を移動自在とされている。そして、イグニションスイッチがON位置からSTART位置に操作されている間はスタータが作動される。
【0021】
低圧燃料ポンプ31は、バッテリを電源とする電動モータ(図示せず)によって駆動される。この実施の形態1では、低圧燃料ポンプ31は、イグニションスイッチがOFF位置からON位置に操作されると作動を開始し、ON位置からOFF位置へ操作されると停止される。低圧燃料ポンプ31は、低圧通路33を介して高圧燃料ポンプ20に接続されている。又、低圧燃料ポンプ31は、燃料タンク30内から燃料を汲み上げ、高圧燃料ポンプ20に向けて燃料を吐出する。
【0022】
低圧燃料ポンプ31は、吐出量が多く吐出圧が低いという特徴がある。又、電動モータによって駆動されるため、始動時の低圧燃料ポンプ31の吐出特性がエンジン40の回転変動の影響を受けないという特徴もある。低圧通路33の途中には、その低圧通路33内の燃圧を一定値(フィード圧)に調整するための低圧プレッシャレギュレータ32が設けられている。
【0023】
高圧燃料ポンプ20は、ポンププランジャ22、加圧室23及び燃圧制御弁10を備えている。ポンププランジャ22は、エンジン40のカムシャフト24に取付けられたカム25の回転に基づいてポンプシリンダ21内を往復移動する。従って、ポンププランジャ22の作動開始タイミングは、カムシャフト24が回転を始めるタイミング、即ち、イグニションスイッチがON位置からSTART位置に操作されてスタータが作動を開始するタイミングと同じである。
【0024】
加圧室23は、ポンプシリンダ21及びポンププランジャ22によって区画されており、前述した低圧通路33がこの加圧室23に接続されている。加圧室23に於いて、低圧通路33との接続箇所は燃料吸入口23aとなっている。又、加圧室23は、高圧燃料通路35を介して蓄圧室36に接続されている。高圧燃料通路35の途中には、高圧燃料ポンプ20から吐出された燃料の逆流を防止するための吐出弁34が設けられている。
【0025】
燃圧制御弁10は電磁ソレノイド11を備え、この電磁ソレノイド11への通電制御により開閉動作を行う。電磁ソレノイド11に対する通電が停止された状態では、燃圧制御弁10は、ばね12によって開弁する。即ち、燃料吸入口23aが開放され、低圧通路33及び加圧室23間が連通した状態になる。この状態にあって、加圧室23の容積が大きくなる方向(図5の下方)へポンププランジャ22が移動するとき(吸入行程中)には、低圧燃料ポンプ31から送り出された燃料が低圧通路33を介して加圧室23内に吸入される。
【0026】
又、加圧室23の容積が収縮する方向(図5の上方)にポンププランジャ22が移動するとき(圧送行程中)には、電磁ソレノイド11に対する通電により、燃圧制御弁10は、ばね12に抗して閉弁される。即ち、燃料吸入口23aが閉鎖され、低圧通路33及び加圧室23間の連通が遮断される。ポンププランジャ22の移動に伴い、加圧室23内の燃圧が上昇して吐出弁34を開弁させることにより、燃料が高圧燃料通路35を通じて蓄圧室36内へ供給される。
【0027】
尚、高圧燃料ポンプ20に於ける燃料吐出量の調整は、燃圧制御弁10の閉弁開始時期を制御し、圧送行程中に於ける燃圧制御弁10の閉弁期間を調整することによって行われる。即ち、燃圧制御弁10の閉弁開始時期を早めて閉弁期間を長くすると燃料吐出量が増加する。これとは逆に、燃圧制御弁10の閉弁開始時期を遅らせて閉弁期間を短くすると燃料吐出量が減少する。そして、前述のように高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を調整することにより、蓄圧室36内の燃圧が制御される。
【0028】
この実施の形態1に於いては、エンジン40が4気筒エンジンであり、高圧燃料ポンプ20がクランクシャフトの2回転に対して燃料の圧送を2回行うように構成されている。即ち、エンジン40の2気筒に於ける2回の燃料噴射に対して、高圧燃料ポンプ20は燃料の圧送を1回行うようになっている。このようにして構成された高圧燃料ポンプ20では、1回当たりの燃料吐出量が低圧燃料ポンプ31に比べ少ない(低圧燃料ポンプ31の吐出量の数十分の1)が、吐出圧が低圧燃料ポンプ31に比べて高い(低圧燃料ポンプ31の吐出圧の数十倍)という特徴がある。
【0029】
尚、蓄圧室36と燃料タンク30とを接続するリリーフ通路38には、リリーフ弁37が配置されている。そして、蓄圧室36内の燃圧が過度に高くなると、リリーフ弁37が開いて蓄圧室36内の高圧燃料が燃料タンク30へ流出する。従って、蓄圧室36内の燃圧が過度に高圧になることが抑制される。
【0030】
電子制御ユニット(以下、ECUと称する)60は、燃料噴射弁39からの燃料の噴射量、噴射時期、燃圧制御弁10の通電を制御する。ECU60は、蓄圧室36の燃圧を検出する燃圧センサ61の検出信号のほか、例えば、エンジン回転速度、吸入空気量、エンジン水温等のエンジンの運転状態を検出する後述の各種センサの検出信号を読込んで、エンジン40の要求する燃料噴射量及び適正な燃料噴射時期を演算し、その演算結果に応じた噴射信号を燃料噴射弁39に出力して、燃料噴射を実行する。又、ECU60は、エンジン始動時に燃料を昇圧させるための制御を行う。この制御は、エンジン始動時の燃料噴射圧力を上げることで噴霧の微粒化を促進し、もって始動時の噴射量を低減して黒煙の発生を低減するために行われる。
【0031】
次に、ECU60の具体的な構成について説明する。図2は、この発明に係るECU60の具体的構成を示すブロック図であり、前述の図1と同一部分についてはそれと同一の符号を付している。図2に於いて、位相検出手段602は、クランク角度センサ64とカム角度センサ65の出力信号に基づいて、エンジン40の軸位置PHを検出しその検出した軸位置PHを出力する。位相検出手段602から出力された軸位置PHは、後述するベーパー排出制御手段601及び燃料噴射弁駆動手段604へ入力される。尚、エンジン40の軸位置PHが判明すれば、どの気筒がどの行程状態にあるかが判別可能となる。
【0032】
燃料噴射量演算手段603は、クランク角度センサ64の出力信号から得られるエンジン回転速度NEとエアーフローセンサ66の出力信号から得られる吸入空気量QAとから、1気筒当たりの燃料噴射量(エンジン40の要求噴射量)QFを演算する。そして、燃料噴射量演算手段603によって演算された1気筒当たりの燃料噴射量QFは、後述する燃料噴射弁駆動手段604へ出力される。
【0033】
燃料噴射弁駆動手段604は、前述の位相検出手段602によって検出されたエンジン40の軸位置PHと、前述の燃料噴射量演算手段603によって演算された1気筒当たりの燃料噴射量QFとが入力され、所定の駆動時期と燃料噴射量QFに相当する駆動時間にて、燃料噴射弁39を駆動制御する。尚、筒内噴射エンジンの場合、燃料噴射弁39は燃焼に寄与させる燃料量として吸気行程もしくは圧縮行程で駆動される。
【0034】
ベーパー排出制御手段601は、燃圧センサ61によって検出される蓄圧室39内の燃圧PFと、イグニションスイッチ62のON/OFF状態を示す信号IGと、燃料温度検出手段としての燃料温度推定手段63によって検出される推定燃料温度TFと、クランク角度センサ63の出力信号から得られるエンジン回転速度NEと、前述の位相検出手段602によって検出されたエンジン40の軸位置PHと、燃料残量センサ67によって検出された燃料残量LFとが入力され、後述するベーパー排出制御を行う。
【0035】
尚、前述の燃料温度推定手段63は、エンジン水温、吸気温度等のエンジンの温度情報を検出するセンサを用いて蓄圧室36内の燃料温度を間接的に推定するよう構成されているが、前述の燃料温度推定手段63に代えて、蓄圧室36内の燃料温度を直接計測することが可能な燃料温度センサを用いてもよい。
【0036】
内燃機関の気筒内に噴射される燃料は、図3に示すような飽和蒸気圧特性を備えている。即ち、図3に於いて、横軸は燃料温度、縦軸は燃圧を示し、例えば、燃料温度がTXのとき、飽和蒸気圧となる燃圧はPXとなる。このとき、燃料の物性上、燃圧がPXより高圧側の領域はベーパー非発生領域であり、燃料の気化は発生せず気化成分は無いが、燃圧がPXより低圧側の領域はベーパー発生領域であり、燃料の気化が発生し気化成分が存在することとなる。
【0037】
図4は、ベーパー排出手段601のベーパー排出制御を説明するタイムチャートであって、(a)は、イグニションスイッチ62のON/OFF状態を示す信号IGの状態を示し、ONはイグニションスイッチ62がON位置にあるときの信号レベル、OFFはイグニションスイッチ62がOFF位置にあるときの信号レベルである。(b)は低圧燃料ポンプ31の作動、停止の状態を示し、(c)は排気行程気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動の状態を示し、(d)は蓄圧室36内の燃圧PFの挙動を示している。
【0038】
図4に於いて、蓄圧室36内の燃圧PFの初期値は大気圧の場合を示している。又、蓄圧室36内の燃圧PFの挙動については、ベーパーが発生していないときを一点鎖線で示し、ベーパーが発生しているときを二点鎖線で示し、ベーパーが発生しているときに燃料噴射弁の強制駆動を実行したときを実線で示している。
【0039】
いま、図4に於いて、時刻T1にてイグニションスイッチ62がOFFからONに操作され、その動作状態を示す信号IGがOFFレベルからONレベルに変化したとすると、これに同期して低圧燃料ポンプ31も作動を開始する。このとき、蓄圧室36内の燃圧PFは、低圧燃料ポンプ31が作動を始めることによって大気圧からフィード圧へ上昇し始める。
【0040】
ここで、蓄圧室36内にベーパーが発生してない場合では、図4の(d)に一点鎖線で示すように、低圧燃料ポンプ31が所定時間TPだけ作動することによって燃圧PFはいち早く上昇し、時刻T2の時点までにフィード圧に達する。
【0041】
一方、蓄圧室36内にベーパーが発生している場合では、蓄圧室36内に存在するベーパーの圧縮に時間を取られて燃圧PFの上昇が大幅に遅くなり、二点鎖線で示すように、時刻T5の時点にてようやくフィード圧に達する。
【0042】
又、蓄圧室36内にベーパーが発生しているときに燃料噴射弁の強制駆動を実行した場合では、実線にて示すように、低圧燃料ポンプ31が時間TP以上作動した時点である時刻T2の時点に於いても燃圧PFが所定圧PXに達していないので、図4の(c)に示すように時刻T2〜T3の間、排気行程気筒の燃料噴射弁39を強制駆動し、この強制駆動した燃料噴射弁39を通じて蓄圧室36内のベーパーを排出させる。その結果、燃圧PFが迅速に上昇して時刻T5よりも早い時刻T4の時点にてフィード圧に達する。
【0043】
又、ベーパー排出制御手段601は、低圧燃料ポンプ31が所定時間TP以上作動したことをもって低圧燃料ポンプ31が作動していると判定したときに、燃圧センサ61によって検出された蓄圧室39内の燃圧PFが燃料温度検出手段63によって検出された燃料温度に対する飽和蒸気圧に達していなかった場合にも、排気行程にある気筒における燃料噴射弁39を強制駆動するよう、燃料噴射弁駆動手段604に対して排気行程気筒の強制駆動指令を出力し、その燃料噴射弁39を強制駆動させる。その結果、強制駆動された燃料噴射弁39を通じて蓄圧室36内のベーパーが排出され、燃圧PFが迅速に上昇して時刻T5よりも早い時刻T4の時点にてフィード圧に達する。
【0044】
以上のように動作するベーパー排出制御手段601は、イグニションスイッチ62がOFFからONへ状態変化してからの経過時間、即ち、低圧燃料ポンプ31の作動が所定時間TP以上経過したことをもって低圧燃料ポンプ31が作動していることを判定する。
【0045】
又、ベーパー排出制御手段601は、燃圧センサ61によって検出された蓄圧室39内の燃圧PFが所定圧PXに達した場合に、排気行程気筒の強制駆動指令の出力を終了するように構成されている。その結果、燃料噴射弁駆動手段604は、排気行程にある気筒における燃料噴射弁39の強制駆動制御を終了する。
【0046】
更に、ベーパー排出制御手段601は、排気行程気筒の強制駆動指令を出力してから、排気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動が所定回数、又は所定時間以上継続された場合にも、排気行程気筒の強制駆動指令の出力を終了するように構成されている。その結果、燃料噴射弁駆動手段604は、排気行程にある気筒における燃料噴射弁39の強制駆動制御を終了する。
【0047】
又、ベーパー排出制御手段601は、燃料残量センサによって検出された燃料残量FLが所定量を下回っているときには、排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動を禁止するように構成されている。
【0048】
前述の燃料噴射弁駆動手段604は、ベーパー排出制御手段601から排気行程気筒の強制駆動指令が入力されたときに、排気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動を開始する。尚、エンジン40が回転している場合には、排気行程にある気筒における燃料噴射弁39を強制駆動制御する際、同時期に吸気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁39の駆動制御もエンジン40が要求する燃料噴射量QFに相当する駆動時間で駆動される。
【0049】
次に、前述の様に構成されたベーパー排出制御手段62の一連の動作について説明する。図5は、その動作を説明するフローチャートである。図5のサブルーチは、信号IGがイグニションスイッチ62がON位置になったことを示した時点から実行されるものとする。又、以下の動作の説明に於いて、エンジンの始動前には、高圧燃料ポンプ20では燃圧制御弁10は開弁しているものとし、低圧燃料ポンプ31は、信号IGがイグニションスイッチ62がON位置になったことを示した時点から作動開始するものとする。
【0050】
図5に於いて、ステップS101では、イグニションスイッチ62のON/OFFを示す信号IGが、イグニションスイッチ62がOFF位置からON位置に操作された直後を示しているか否かを判定する。ここで、イグニションスイッチ62がOFF位置からON位置に操作された直後の場合(YES)には、ステップS102へ進んで低圧燃料ポンプ31の作動時間TPを零クリアし、続いてステップS103へ進んで排気行程気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動回数Cを零クリアし、更にステップS104へ進んで排気行程気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動指令フラグFを零クリアし、そしてステップS106へと進む。
【0051】
一方、前述のステップS101に於いてイグニションスイッチ62がOFF位置からON位置に操作された直後ではないと判定した場合(NO)には、ステップS101からステップS105へ進んで、低圧燃料ポンプ31の作動時間TPをインクリメントして[TP=TP+1]とし、ステップS106へと進む。
【0052】
ステップS106では、位相検出手段602によってエンジン40の軸位置PHが検出済みか否か、即ち、各気筒の行程を検知可能か否かを判定する。ここで、エンジン40の軸位置PHが検出済みの場合(YES)には、ステップS107へ進む。一方、軸位置PHが検出済みでない場合(NO)には、何もせずに処理を抜けてリターンとなる。
【0053】
ステップS107では、低圧燃料ポンプ31の作動時間TPが所定時間以上経過しているか否かを判定する。ここで、低圧燃料ポンプ31の作動時間TPが所定時間以上経過している場合(YES)には、ステップS108へ進んで蓄圧室36内の燃圧PFを読み込んでステップS109へと進む。一方、作動時間TPが所定時間以上経過していない場合(NOの場合)には、ステップS107からステップS115へと進む。
【0054】
ステップS109では、ステップS108にて読み込んだ蓄圧室36内の燃圧PFが所定圧PXに達していないか否かを判定する。ここで、蓄圧室36内の燃圧PFが所定圧PXに達していない場合(YES)には、ステップS110へ進む。一方、燃圧PFが所定圧PXに達していた場合(NO)には、ステップS115へと進む。
【0055】
ステップS110では、排気行程気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動回数Cが所定回数CXに達していないか否かを判定する。ここで、強制駆動回数Cが所定回数CXに達していない場合(YES)には、ステップS111へ進む。一方、強制駆動回数Cが所定回数CXに達していた場合(NO)には、ステップS114に進んで排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動指令フラグFを零クリアしてステップS115へと進む。
【0056】
ステップS111では、燃料残量センサ67によって検出された燃料残量LFが所定量LX以上か否かを判定する。ここで、燃料残量LFが所定量LX以上の場合(YES)には、ステップS112へ進み排気行程気筒における燃料噴射弁39の強制駆動指令フラグFを「1」にセットし、続いてステップS113へ進んで強制駆動回数Cをインクリメントして[C=C+1]とし、ステップS115へと進む。
【0057】
一方、ステップS111に於いて、燃料残量LFが所定量LXを下回っていると判定した場合(NO)には、ステップS111からステップS114へ進んで排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動指令フラグFを零クリアしてステップS115へと進む。
【0058】
ステップS115では、排気行程気筒における燃料噴射弁39の強制駆動指令フラグFが「1」にセットされているか否かを判断する。ここで、強制駆動指令フラグFが[F=1]の場合(YES)には、ステップS116へ進んで燃料噴射弁駆動手段604による排気行程気筒に於ける燃料噴射弁39の強制駆動が実行されて処理を抜けリターンとなる。
【0059】
一方、ステップS115に於いて、強制駆動指令フラグFが[F=0]であると判断した場合(NO)には、ステップS117へ進んで燃料噴射弁駆動手段604による排気行程気筒における燃料噴射弁39の強制駆動が禁止されて処理を抜けリターンとなる。
【0060】
尚、前述の一連のベーパー排出制御手段601による動作は、エンジン40が停止しているときの位相位置が検出可能な場合にあっては、エンジン40が停止中であっても機能させることができる。
【0061】
この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、低圧燃料ポンプが作動しており、かつ、前記燃圧センサによって検出された蓄圧室内の燃圧が所定圧を下回っているときに、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を開始するようにしているので、蓄圧室内に発生しているベーパーを排気行程気筒の燃料噴射弁を通じて燃焼室内へ排出することが可能となり、コストアップ無しに蓄圧室内の燃料の昇圧時間を短縮することができる。
【0062】
又、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、排気行程気筒における燃料噴射弁を強制駆動することで蓄圧室内のベーパー排出を促進することができるので、吸気行程気筒における燃料噴射弁の駆動時間はエンジンの要求する噴射量に相当する駆動時間のまま変更しなくて済ませることができる。そのため、蓄圧室内の燃圧が予想以上に早く上昇したときであっても燃焼に寄与する噴射量(吸気行程気筒で噴射された燃料量)が過剰になることは無く、その結果、リッチ失火やエンジンオイル希釈を招くこともない。
【0063】
更に、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、燃焼室内の圧力がフィード圧よりも高くなることのない排気行程気筒の燃料噴射弁を強制駆動するようにしているので、一旦、燃焼室へ排出したベーパーが蓄圧室へ逆流することも回避される。
【0064】
又、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、蓄圧室内の燃圧が、フィード圧よりも低い圧力値として設定されている所定値を下回っているときに、蓄圧室内にベーパーが発生していると判断するようにしているので、燃料タンク内の燃料が空の状態から燃料を充填したときのように、蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下している状態で蓄圧室内にべーパーが存在しているということを的確に判断したうえで排気行程気筒の燃料噴射弁を強制駆動することができる。
【0065】
更に、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、検出された蓄圧室内の燃圧が、蓄圧室内の燃料温度に対応する飽和蒸気圧を下回っているときに、蓄圧室内にベーパーが発生していると判断するようにしているので、高温環境下でエンジンを負荷運転した後にエンジンを停止したときのように、蓄圧室内の燃圧が大気圧付近まで低下していない状態であっても蓄圧室内にべーパーが存在しているということを的確に判断したうえで排気行程気筒の燃料噴射弁を強制駆動することができる。
【0066】
ところで、排気行程にある気筒における燃料噴射弁を強制駆動することで燃焼室内へベーパーが排出され、蓄圧室内の燃圧は迅速に昇圧する。しかし、ベーパーが排出されて蓄圧室内が燃料で充満し始めると、ベーパーに代わって燃料自体が燃焼室内へ排出され、更に、この燃料が排気管へ流出することで排ガスを悪化させる恐れが出てくる。この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、蓄圧室内の燃圧が前述の所定圧以上となったときにいち早く排気行程気筒の燃料噴射弁の強制駆動を終了するようにしているので、前述のような懸念を回避することができる。尚、排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動を終了する際の所定圧は、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を開始する際の所定圧と同じ圧力値であるものとして説明したが、同じ圧力値である必要はなく、制御動作の安定化や効果の最適化を図るために、予め実機挙動に基づいて両所定値間にヒステリシスを設定してもよい。
【0067】
一方、例えば、ガス欠のままエンジンの始動操作を続けたときや、燃圧センサの出力値が大気圧相当の値で固着故障していたときや、燃料系が破損して燃料が大量に漏れているとき等、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を続けても燃圧が上昇しないという状況が予想される。その場合、蓄圧室内に燃料が無い状態で燃料噴射弁の開閉駆動(いわゆる、燃料噴射弁のカラ打ち)が長時間継続され、燃料噴射弁の異常発熱や磨耗に起因した性能劣化をもたらす恐れがある。この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動が、所定回数又は所定時間以上継続されたときに、排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動を終了するようにしているので、前述のような懸念を回避することができる。尚、ここで言う所定回数又は所定時間とは、例えば燃料の流通が無い状態で燃料噴射弁を断続駆動しても燃料噴射弁の信頼性を損なわない程度の動作回数以下の値として予め設定される。
【0068】
又、この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置によれば、燃料タンク内の燃料残量が所定量を下回っているときに、排気行程気筒における燃料噴射弁の強制駆動自体を禁止することで、燃料噴射弁のカラ打ちに起因する燃料噴射弁の異常発熱や磨耗を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置に於けるECUの構成を示すブロック図である。
【図3】燃料の飽和蒸気圧特性を示す特性図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係る筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 燃圧制御弁
11 電磁ソレノイド
12 ばね
20 高圧燃料ポンプ
21 ポンプシリンダ
22 ポンププランジャ
23 加圧室
23a 燃料吸入口
24 カム軸
25 ポンプカム
30 燃料タンク
31 低圧燃料ポンプ
32 低圧プレッシャレギュレータ
33 低圧通路
34 吐出弁
35 高圧燃料通路
36 蓄圧室
37 リリーフ弁
38 リリーフ通路
39 燃料噴射弁
40 エンジン
60 ECU
61 燃圧センサ
62 イグニションスイッチ
63 燃料温度推定手段
64 クランク角度センサ
65 カム角センサ
66 エアーフローセンサ
67 燃料残量センサ
601 ベーパー排出制御手段
602 位相検出出手段
603 燃料噴射量演算手段
604 燃料噴射弁駆動手段
TP 低圧燃料ポンプの作動時間
PF 蓄圧室内の燃圧
LF 燃料タンク内の燃料残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内へ燃料を直接噴射するように気筒毎に配置された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁と共通に接続され高圧の燃料を蓄える蓄圧室と、前記蓄圧室の燃料の圧力を検出する燃圧センサと、燃料タンクの燃料を汲み上げて低圧通路へ吐出する低圧燃料ポンプと、前記低圧通路内の燃料をフィード圧に調整する低圧プレッシャレギュレータと、前記低圧通路内の燃料を吸入して前記蓄圧室へ吐出する高圧燃料ポンプと、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧室へ向かう燃料の流通のみを許す吐出弁と、前記蓄圧室内の燃料の圧力を調整するための燃圧制御弁とを備えた筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置において、前記低圧燃料ポンプが作動しており、かつ、前記燃圧センサによって検出された前記蓄圧室内の燃圧が所定圧を下回っているときに、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を開始することを特徴とする筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記所定圧が、前記低圧通路内に配置された低圧プレッシャレギュレータによって調整されるフィード圧より低い圧力値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項3】
直接又は間接的に前記蓄圧室内の燃料の温度を検出する燃料温度検出手段を備え、前記所定圧が、前記燃料温度検出手段によって検出された燃料温度に対応する飽和蒸気圧に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記燃圧センサによって検出された前記蓄圧室内の燃圧が前記所定圧以上となったときに、排気行程にある気筒における燃料噴射弁の強制駆動を終了することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記排気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁の強制駆動が所定回数又は所定時間以上経過したときに、前記排気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁の強制駆動を終了することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量センサを備え、前記燃料残量センサによって検出された燃料残量が所定量を下回っているときには、排気行程にある気筒に於ける燃料噴射弁の強制駆動を禁止することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の筒内噴射エンジンの燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185662(P2009−185662A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25241(P2008−25241)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】