説明

組み合わされたX線反射率計及び回折計

【課題】 サンプルの迅速なXRR及びXRDに基づいた分析用の装置及び方法を提供する。
【解決手段】 サンプルの分析用の装置は、サンプルの表面に向かってX線の収束ビームを案内するべく適合された放射源を含んでいる。同時に、サンプルから散乱したX線を、仰角の範囲にわたって、仰角の関数として検知し、この散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく、少なくとも1つの検出器アレイが構成されている。この検出器アレイは、グレージング角で、サンプルの表面から反射したX線を検出器アレイが検知する第1の構造と、サンプルのBragg角の近傍において、表面から回折したX線を検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備している。そして、信号プロセッサが、サンプルの表面層の特性を判定するべく、この出力信号を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、分析装置に関し、更に詳しくは、X線を使用する薄膜分析用の装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線反射率計測(X−Ray Reflectometry:XRR)は、基板上に堆積した薄膜層の厚さ、密度、及び表面品質を計測するための周知の技法である。この種の反射率計は、通常、サンプル材料の全外部反射角の近傍において、かすめ(グレージング)入射で(即ち、サンプルの表面に対して小さな角度で)X線ビームによってサンプルを照射することにより、動作する。そして、サンプルから反射したX線の強度を角度の関数として計測することにより、干渉縞のパターンを取得し、これを分析することにより、この縞パターンを生成する原因である薄膜層の特性を判定することができる。
【0003】
XRRデータを分析して薄膜の厚さを判定する方法については、例えば、Komiya他に付与された特許文献1に記述されており、本引用により、この開示内容は本明細書に包含される。即ち、角度の関数としてX線反射率を計測した後に、この縞スペクトルに対して平均反射率曲線をフィッティングする。この平均曲線は、フィルムの減衰、背景、及び表面粗度を表す式に基づいている。次いで、このフィッティングされた平均反射率曲線を使用して縞スペクトルの振動成分を抽出する。そして、この成分をフーリエ変換することにより、薄膜の厚さを検出するのである。
【0004】
Koppelに付与された特許文献2(本引用により、この開示内容は本明細書に包含される)は、反射率計測の計測値に基づいたX線厚さゲージについて記述している。即ち、湾曲反射X線モノクロメーターを使用してサンプルの表面上にX線を合焦する。そして、表面から反射したX線をフォトダイオード検出器アレイなどの位置敏感型検出器によって検知し、反射角の関数として強度信号を生成する。次いで、この角度依存信号を分析することにより、厚さ、密度、及び表面粗度を含むサンプル上の薄膜層の構造の特性を判定するのである。
【0005】
Barton他に付与された特許文献3(本引用により、この開示内容は本明細書に包含される)も、湾曲結晶モノクロメーターに基づいたX線スペクトロメーターについて記述している。このモノクロメーターは、テーパーを有する対数螺旋形状を具備しており、これにより、従来技術によるモノクロメーターと比べて、精細な焦点がサンプル表面上に実現するとしている。サンプル表面から反射又は回折したX線を位置敏感型検出器によって受光している。
【0006】
Yokhin他に付与された特許文献4及び特許文献5(本引用により、この開示内容は本明細書に包含される)は、サンプル上に入射するX線を遮断するべく調節配置可能な動的シャッタを含むX線反射率計測システムについて記述している。このシステムのその他の特徴と共に、このシャッタにより、高ダイナミックレンジを有するXRR縞パターンの検出が可能である。又、これらの特許明細書は、密度、厚さ、及び表面粗度を含む薄膜の特性を判定するためのXRR縞パターンの改善された分析方法についても開示している。即ち、このシステムは、高ダイナミックレンジにより、上部の薄膜層のみならず、サンプル表面上の1つ又は複数の下部層についても、これらの特性を正確に判定することができる。
【0007】
又、XRRは、例えば、Hayashi他による特許文献6(本引用により、この開示内容は本明細書に包含される)に記述されているように、半導体ウエハ上の製造中の薄膜層を検査するべく、堆積炉内において原位置において使用することも可能である。この炉には、その側壁にX線入射及び抽出ウィンドウが提供されている。そして、上部に薄膜が堆積された基板を入射ウィンドウを通じて照射し、基板から反射したX線をX線抽出ウィンドウを通じて検知する。
【0008】
一方、X線回折計測(X−Ray Diffractometry:XRD)は、物質の結晶構造を研究するための周知の技法である。XRDにおいては、単色のX線ビームによってサンプルを照射し、回折ピークの場所と強度を計測する。固有の散乱角及び散乱強度は、検討対象のサンプルの格子面と、それらの面を占めている原子によって左右される。そして、所与の波長λと格子面間隔dの場合に、回折ピークは、X線ビームがnλ=2dsinθというBragg条件を満足する角度θで格子面に入射した際に観察される(ここで、nは、散乱次数である)。このBragg条件を満足する角度θをBragg角と呼んでいる。応力、固溶体、又はその他の影響に起因する格子面の歪により、XRDスペクトルにおいて観察可能な変化がもたらされる。
【0009】
従来、XRDは、半導体ウエハ上に製造した結晶層の特性を計測するために主に使用されている。例えば、Bowen他は、非特許文献1において、高分解能のXRDを使用してSiGe構造内のゲルマニウムの濃度を計測する方法について記述している(本引用により、この内容は本明細書に包含される)。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,740,226号明細書
【特許文献2】米国特許第5,619,548号明細書
【特許文献3】米国特許第5,923,720号明細書
【特許文献4】米国特許第6,512,814号明細書
【特許文献5】米国特許第6,639,968号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2000/0043668A1号明細書
【非特許文献1】Bowen他著、「Characterization and Metrology for ULSI Technology, 2000 International Conference(American Institute of Physics, 2001)の「X−Ray metrology by Diffraction and Reflectivity」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、サンプルの迅速なXRR及びXRDに基づいた分析用の装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施例は、サンプルの迅速なXRR及びXRDに基づいた分析用の装置及び方法を提供する。放射源が、半導体ウエハなどのサンプルの表面に向かってX線の収束ビームを案内する。同時に、検出器アレイが、サンプルから散乱するX線を、仰角の一範囲にわたって、仰角の関数として検知する。この検出器アレイは、XRR及びXRD構造を具備している。そして、XRR構造においては、放射源及び検出器アレイは、グレージング角で、サンプルの表面から反射されたX線をアレイが検知するように配置されている。一方、XRD構造においては、放射源と検出器アレイは、サンプルのBragg角の近傍において、表面から回折したX線をアレイが検知するように配置されている。尚、このXRR及びXRD構造の間において、放射源と検出器アレイをシフトさせるべく、モーションアセンブリを提供可能である。
【0013】
信号プロセッサが、サンプルの1つ又は複数の表面層の特性を判定するべく、検出器アレイによって生成された出力信号を受信して処理する。これらの特性には、例えば、層の厚さ、密度、組成、及び表面粗度が含まれている。XRR及びXRD計測の組み合わせは、半導体ウエハ上での集積回路の製造プロセスにおいて形成される結晶性薄膜層などの結晶表面層の特性に関する完全且つ正確な情報を得るのに特に有用である。本発明の実施例によって提供される新しいシステム構造によれば、当技術分野における既存のXRRシステム及びXRDシステムによっては不可能な方式で、XRR及びXRDスペクトルの両方を高スループットで取得すると共に、その精度について照合確認することが可能である。
【0014】
従って、本発明の実施例によれば、表面層を具備するサンプルの分析用の装置が提供され、この装置は、X線の収束ビームをサンプルの表面に向かって案内するべく適合された放射源と;同時に、サンプルから散乱したX線を、仰角の一範囲にわたって、仰角の関数として検知し、この散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく構成された少なくとも1つの検出器アレイであって、グレージング角で、サンプルの表面から反射したX線を検出器アレイが検知する第1の構造と、サンプルのBragg角の近傍において、表面から回折したX線を検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する少なくとも1つの検出器アレイと;サンプルの表面層の特性を判定するために、第1及び第2の構造において生成された出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと;を含んでいる。
【0015】
いくつかの実施例においては、本装置は、第1の構造と第2の構造の間において、放射源と検出器アレイを移動させるべく結合されたモーションアセンブリを含んでいる。
【0016】
その他の実施例においては、放射源は、第1及び第2放射源を含んでおり、これらは、第1及び第2の構造においてサンプルに向かってX線を案内するべくそれぞれ配置されており、少なくとも1つの検出器アレイは、第1及び第2の構造において散乱したX線を受光するべくそれぞれ配置された第1及び第2検出器アレイを含んでいる。
【0017】
通常、放射源は、湾曲結晶モノクロメーターを含んでいる。
【0018】
開示対象の実施例においては、少なくとも1つの検出器アレイは、複数の検出器要素を含んでおり、これらは、サンプルから散乱したX線を受光するべく構成されており、仰角範囲は、少なくとも2°の仰角を含んでいる。
【0019】
いくつかの実施例においては、第1の構造においてサンプルから反射したX線は、仰角の関数としての強度の振動性の変動によって特徴付けられており、プロセッサは、表面層の特性を判定するために、この振動性の変動を分析するべく適合されている。通常、信号プロセッサによって判定される特性には、表面層の密度、厚さ、及び表面粗度の中の少なくとも1つが含まれている。
【0020】
これに加えて(又は、この代わりに)、第2の構造において表面から回折したX線は、第1及び第2回折ピークによって特徴付けられており、プロセッサは、表面層の特性を判定するために、これらのピークの関係を分析するべく適合されている。通常、信号プロセッサによって判定される特性には、表面層の組成が含まれている。
【0021】
開示対象の実施例においては、サンプルは、半導体ウエハを含んでおり、信号プロセッサは、このウエハ上に形成された薄膜層の品質を判定するために、出力信号を分析するべく適合されている。
【0022】
又、本発明の実施例によれば、微小電子デバイスを製造するためのクラスタツールも提供され、このツールは、半導体ウエハの表面上に薄膜層を形成するべく適合された堆積ステーションと;ウエハの表面に向かってX線の収束ビームを案内するべく適合された放射源と、同時に、ウエハから散乱したX線を、仰角の一範囲にわたって、仰角の関数として検知し、この散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく構成された検出器アレイであって、グレージング角で、ウエハの表面から反射したX線を検出器アレイが検知する第1の構造と、ウエハのBragg角の近傍において、ウエハから回折したX線を検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する検出器アレイと、ウエハの表面層の特性を判定するために、第1及び第2の構造において生成された出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと、を含む検査ステーションと;を含んでいる。
【0023】
本発明の実施例によれば、微小電子デバイスを製造する装置が更に提供され、この装置は、半導体ウエハを受け入れるべく適合された製造チャンバと;このチャンバ内において半導体ウエハの表面上に薄膜層を堆積するべく適合された堆積装置と;チャンバ内のウエハの表面に向かってX線の収束ビームを案内するべく適合された放射源と;同時に、チャンバ内においてウエハから散乱したX線を、仰角の一範囲にわたって、仰角の関数として検知し、散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく構成された検出器アレイであって、グレージング角で、ウエハの表面から反射したX線を検出器アレイが検知する第1の構造と、ウエハのBragg角の近傍において、ウエハから回折したX線を検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する検出器アレイと;ウエハの表面層の特性を判定するために、第1及び第2の構造において生成された出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと;を含んでいる。
【0024】
更に、本発明の実施例によれば、表面層を具備するサンプルの分析用の方法が提供され、この方法は、グレージング角で、サンプルの表面に向かってX線の収束ビームを案内することにより、サンプルのX線反射率(X−Ray Reflectance:XRR)スペクトルを取得し、同時に、少なくとも1つの検出器アレイを使用して、サンプルから散乱したX線を、仰角の第1の範囲にわたって、仰角の関数として検出する段階と;サンプルのBragg角の近傍において、サンプルの表面に向かってX線の収束ビームを案内することにより、サンプルのX線回折(XRD)スペクトルを取得し、同時に、少なくとも1つの検出器アレイを使用して、サンプルから散乱したX線を、仰角の第2の範囲にわたって、仰角の関数として検出する段階と;サンプルの表面層の特性を判定するべく、XRRとXRDスペクトルを処理する段階と;を含んでいる。
【0025】
本発明は、添付図面との関連で、本発明の実施例に関する以下の詳細な説明を参照することにより、更に十分に理解することができよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、図1を参照すれば、これは、本発明の実施例によるX線反射率計測(XRR)及びX線回折計側(XRD)用のシステム20の概略側面図である。サンプル22が、モーションステージ24上に取付けられており、この結果、サンプルの位置と向きの正確な調節が可能になっている。X線源26(これは、通常、単色化オプティクス30を有するX線管である)が、サンプル22上の小さな領域32を照射する。そして、このサンプル22から散乱したX線を検出器アセンブリ38によって収集する(このアセンブリは、CCDアレイなどの検出器アレイ40から構成されている)。尚、図示を容易にするべく、図には、相対的に少ない数の検出器要素を有する単一列の検出器要素しか示されていないが、通常、アレイ40は、更に多くの数の要素を含み、線形アレイ又はマトリックス(2次元)アレイとして構成されている。尚、この検出器アセンブリ38及びアレイ40の更なる態様については、前述の米国特許第6,512,814号明細書に記述されている。
【0027】
サンプル22から反射したX線の光子束の分布48を、所与のエネルギーにおいて(又は、エネルギーの範囲にわたって)角度の関数として判定するべく、アセンブリ38の出力を信号プロセッサ46が受信して分析する。通常、サンプル22は、領域32に薄膜などの1つ又は複数の薄い表面層を具備しており、この結果、仰角の関数としての分布48は、表面層及び層間のインターフェイスに起因する干渉及び/又は回折の特徴を示す構造を有している。プロセッサ46は、後述する分析法を使用して、層の厚さ、密度、組成、及び表面品質などのサンプルの表面層の1つ又は複数のものの特性を判定するべく、この角分布の特性を分析する。
【0028】
この図1に示されている実施例においては、X線源26及び検出器アセンブリ38は、XRR構造とXRD構造という2つの動作構造を具備している。図中には、XRR構造は、実線で放射源26及び検出器アレイ38を描くことにより、表されており、XRD構造は、破線で放射源及び検出器アセンブリを描くことにより、表されている。XRR構造においては、放射源26は、通常、約0°〜4.5°の入射角度の範囲において、グレージング角で、収束ビーム34によって領域32を照射する(但し、これよりも大きな又は小さな範囲も使用可能である)。そして、この構成においては、アセンブリ38は、約0°〜少なくとも2°(通常は、最大3°)の間の仰角(φ)の関数として、垂直方向の角度範囲にわたって、反射したX線の発散ビーム36を収集する。この範囲には、サンプルの全外部反射の臨界角ΦCの上下両方の角度が含まれている(尚、図面に示されている角度範囲は、図面をわかりやすくするべく、誇張されており、このXRR構造におけるサンプル22の面上の放射源26及び検出器アセンブリ38の仰角も誇張されている)。
【0029】
一方、XRD構造においては、放射源26及び検出器アセンブリ38の両方が、サンプル22のBragg角近傍の高角度にシフトされる。即ち、この構造においては、放射源26は、Bragg角の近傍において、収束ビーム50によって領域32を照射し、検出器アセンブリ38は、Bragg角近傍の角度範囲にわたって、発散ビーム52を受光する。この例においては、表面に対するビーム50及び52によって定義される入射及び出射角の両方がBragg角と等しくなるように、回折パターンを生成する格子面が、サンプル22の表面に対して略平行であると仮定されている。尚、この仮定は、シリコンウエハなどの半導体基板やこのような基板上に成長した結晶性薄膜層に関して、多くの場合に、当て嵌まる。或いは、この代わりに、サンプル22の表面に平行ではない格子面からの回折を計測するべく、放射源26及び検出器アセンブリ38を異なる入射及び出射角に配置することも可能である。
【0030】
モーションアセンブリ53が、XRR及びXRD構造の間において、放射源26及び検出器アセンブリ38をシフトさせる。この図1に示されている例においては、モーションアセンブリは、湾曲したトラック54、56を有しており、これに沿って、照射源26及びアセンブリ38が、それぞれ、並進運動し、領域32から一定の距離に照射源及び検出器アセンブリが維持されている。尚、この目的に適したその他のタイプのモーションアセンブリについても、当業者には明らかであろう。
【0031】
或いは、この代わりに、XRR及びXRD計測用に、2つの別個のX線源及び/又は2つの別個の検出器アセンブリを使用することも可能である。この場合には、モーションアセンブリは、不要である。又、この代わりに、単一のX線管をXRR及びXRD位置の間においてシフトさせると共に、それぞれの位置に、独自の静止オプティクスを具備することも可能である。
【0032】
次いで、放射源26のコンポーネントを再度参照すれば、X線管28は、通常、サンプル22の表面上における正確な合焦を可能にするべく、小さな放射領域を具備している。例えば、X線管28は、カリフォルニア州スコッツバレー(Scotts Valley, Carifornia)に所在するOxford Instruments社が製造するXTF5011型X線管から構成可能である。そして、このシステム20内における反射率計測及び散乱計測用の通常のX線エネルギーは、約8.05keV(CuKal)である。或いは、この代わりに、5.4keV(CrKal)などのその他のエネルギーを使用することも可能である。又、このシステム20において使用可能ないくつかの異なるタイプの単色化オプティクス30については、米国特許第6、381、303号明細書に記述されており、この開示内容は、本引用により、本明細書に包含される。例えば、このオプティクスは、ニューヨーク州アルバニーに所在するXOS Inc.(XOS Inc., of Albany, New York)が製造するDoubly−Bent Focusing Crystal Opticなどの湾曲結晶モノクロメーターから構成可能である。又、その他の適したオプティクスについては、前述の米国特許第5,619,548号及び第5,923,720号明細書に記述されている。二重湾曲合焦結晶によれば、ビーム34及び50が、領域32内の一点に略合焦するべく、水平及び垂直の両方向において収束する。或いは、この代わりに、ビームがサンプル表面上のラインに収束するように、円筒形のオプティクスを使用してビーム34及び50を合焦することも可能である。使用可能な更なる光学的構造についても、当業者には明らかであろう。
【0033】
このXRR構造におけるシステム20は、前述の米国特許第6、512、814号明細書に記述されているXRRシステムに類似しているが、本明細書に記述されている機能と能力が付加されている。即ち、このシステムにおいては、動的なナイフエッジ44及びシャッタ42を使用することにより、垂直(即ち、サンプル22の面に対して垂直)方向におけるX線入射ビーム34の角度範囲を制限することができる。要すれば、0°に近い低角度の反射を最適に検出するには、シャッタ42を入射ビーム34の範囲の外に引っ込めると共に、ナイフエッジ44を領域32の上方に配置して降下させることにより、ビームの垂直方向の有効断面を低減する。この結果、領域32上に入射するX線スポットの横方向寸法が低減される。一方、XRR構造内において、弱い高角度の反射を効果的に検出するには、ナイフエッジ44をビーム34から引っ込めると共に、ビームの低角度の部分をカットオフするべくシャッタ42を配置する(或いは、この代わりに、反射したビーム36の低角度の部分をカットオフするべくシャッタを配置することも可能である)。
【0034】
図2は、本発明の実施例によるXRR構造においてシステム20が取得した鏡面反射スペクトル60を示す概略プロットである。このスペクトルは、ビーム36内の反射したX線の仰角φに対してプロットされている。それぞれのデータポイントは、アレイ40の対応する要素(即ち、ピクセル)が受光するカウントの合計に対応している。そして、前述の米国特許第6,512、814号明細書に記述されている技法を使用することにより、スペクトルの信号/雑音比を向上させている。このスペクトル60は、0°の近傍から2.5°まで延長する明確な縞パターンを示している。そして、このスペクトルは、臨界角ΦCにおいて、特徴的な肩部62を具備しており、角度が増大するに伴って振動パターンを描いて降下している。このスペクトル60の肩部の場所を分析することにより、臨界角と、従って、サンプル22の表面層の密度を判定することが可能であり、振動の周期と振幅は、サンプルの表面層の厚さと表面粗度を表している。スペクトル60にフィッティングした減衰曲線64によって示されている低次の縞と高次の縞の相対的な強度は、一義的には、サンプルの外側表面の粗度によって決定され、二義的には、サンプルの薄膜層間のインターフェイスの粗度によって決定される。
【0035】
図3は、本発明の実施例によるXRD構造においてシステム20が取得可能な回折スペクトル70を示す概略プロットである。この場合に、このスペクトルは、ビーム52内の回折したX線の仰角φに対してプロットされている。このスペクトル70は、Siウエハの表面上に形成された厚さが約100nmのSiGeの薄い結晶層から取得されたものである。このスペクトルは、約34.5°において、鋭い第1ピーク72を有しており、これは、8.05keV(CuKal)におけるSiのBragg角である。又、Ge原子によるSi結晶構造の変形に起因する第2ピーク74も観測することができる。このピーク72と74の間の変位Δφは、SiGe層内におけるGeの濃度を表している。そして、十分に高い信号/雑音比で、このスペクトル70を取得した場合には、このスペクトルのその他の特徴を解明し、数学モデルにフィッティングすることにより、その厚さやGe濃度の傾きなどのSiGe層のその他のパラメータを層内の深さの関数として抽出することができる。尚、この種の分析において使用可能な方法については、前述のBowen他による文献と、「Workshop on X−ray Characterization of Thin Layers」(Ucklay、2003年5月21〜23日)のUlyanenkovによる「Introduction to High Resolution X−Ray Diffraction」という名称のプレゼンテーション資料に記述されている(本引用により、この内容は本明細書に包含される)。
【0036】
又、前述のように、XRRスペクトル60を使用して、SiGe層の厚さを判定可能であり、肩部62の位置によって示される密度を使用して、Geの濃度を推定することも可能である。そして、これらのXRRスペクトルのパラメータを、XRDスペクトル70から導出されたパラメータと比較することにより、計測の精度を検証し改善することができる。
【0037】
又、別の模範的なアプリケーションとして、集積回路の製造過程において半導体基板上に形成される銅層内の粒度の分析に、このシステム20によって取得されたXRR及びXRDスペクトルを使用可能である。この粒度特性は、電子移動特性に影響を及ぼすため、重要である。
【0038】
図4は、本発明の実施例による半導体装置製造において使用するクラスタツール80の概略平面図である。このクラスタツールは、半導体ウエハ90上に薄膜を堆積する堆積ステーション82、検査ステーション84、及びクリーニングステーションなどの当技術分野において周知のその他のステーション86、88を含む複数のステーションを有している。検査ステーション84は、前述のシステム20と同様の方式で、構築され、動作する。ロボット88は、システムコントローラ92の制御下において、ステーション82、84、86、...間においてウエハ90を搬送する。そして、このツール80の動作は、コントローラ92に接続されたワークステーション94を使用することにより、オペレータが制御及び監視可能である。
【0039】
検査ステーション84を使用し、XRR及びXRDによるウエハのX線検査を実行する。このような検査は、通常、製造プロセスにおいて選択された段階が、ツール80内の堆積ステーション82やその他のステーションによって実行される前後において、実行される。模範的な実施例においては、堆積ステーション82を使用することより、ウエハ90上に結晶性の薄膜を生成し、検査ステーション84によって、XRR及びXRDを適用し、前述のように、この薄膜の厚さ、密度、及び組成を評価する。或いは、この代わりに、プロセスのいくつかの段階において、検査ステーション84によって、XRR及びXRDのいずれか1つのみを適用することも可能である。このステーション84を使用することにより、コントローラ92(並びに、多くの場合に、ワークステーション94)を使用して、プロセスの逸脱の早期検出と製造ウエハのプロセスパラメータの簡便な調節及び評価を実行可能である。
【0040】
図5は、本発明の別の実施例による半導体ウエハ製造及び原位置における検査用のシステム100の概略側面図である。このシステム100は、当技術分野において周知のように、ウエハ90上に薄膜を生成する堆積装置104を含む真空チャンバ102を有している。そして、このチャンバ102内のモーションステージ24上には、ウエハが取り付けられている。このチャンバは、通常、X線ウィンドウ106を有しており、これは、前述の米国特許出願公開第2001/0043558A1号明細書に記述されているタイプのものであってよい。X線源26が、前述の方式により、XRR又はXRD構造のいずれかにおいて、ウィンドウ106の1つを介して、ウエハ90上の領域32を照射する。尚、この図5においては、わかりやすくするべく、図1に示されている要素のいくつかが省略されているが、通常、このシステム100には、それらの要素も含まれている。
【0041】
領域32から反射又は回折したX線は、ウィンドウ106の別のものを介して、検出器アセンブリ38内のアレイ40によって受光される。そして、この検出器アセンブリ38から信号をプロセッサ46が受信し、前述のように、ウエハ90のXRD及び/又はXRRを計測することにより、チャンバ102内において製造中の薄膜層の特性を評価するべく、この信号を処理する。この結果、堆積装置104を制御する際に、この評価の結果を使用することにより、システム100によって製造されるフィルムが、厚さ、密度、組成、及び表面粗度などの所望の特性を具備するようにすることができる。
【0042】
尚、前述の実施例においては、半導体ウエハの表面層特性の判定を主に取り扱っているが、本発明の原理は、X線に基づいた分析のその他のアプリケーションだけでなく、X線のみならずその他の電離放射帯域を使用するその他のタイプの放射に基づいた分析にも、同様に使用可能である。又、システム20、並びに、前述のXRR及びXRD技法を変更することにより、放射に基づいたその他の分析法を内蔵することも同様に可能である。例えば、このシステムは、前述の米国特許第6,381,303号明細書に記述されているX線蛍光計測及び/又は、2003年2月12日付けで出願され、本出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/364,883号明細書(本引用により、この開示内容は、本明細書に包含される)に記述されている小さな角度の散乱計測を内蔵可能である。或いは、この代わりに(又は、これに加えて)、システム20は、2004年7月30日付けで出願され、同様に、本出願の譲受人に譲渡された「Enhancement of X−ray reflectometry by measurement of diffuse reflections」という名称の米国特許出願明細書(本引用により、この開示内容は本明細書に包含される)に記述されている拡散XRR計測を実行するべく構成することも可能である。
【0043】
このため、前述の実施例は、一例として引用されたものであり、本発明は、本明細書に具体的に図示及び記述された内容に限定されるものではないことを理解されたい。従って、本発明の範囲には、前述の様々な特徴の組み合わせ及び副次的な組み合わせと、前述の説明を参照することによって当業者が想起する従来技術には開示されていないその変形及び変更の両方が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例によるX線反射率計測(XRR)及びX線回折計側(XRD)用のシステムの概略側面図。
【図2】本発明の実施例によるXRRスペクトルの概略プロット。
【図3】本発明の実施例によるXRDスペクトルの概略プロット。
【図4】本発明の実施例による検査ステーションを含む半導体デバイス製造用のクラスタツールの概略平面図。
【図5】本発明の実施例によるX線検査能力を有する半導体処理チャンバの概略側面図。
【符号の説明】
【0045】
20 システム
22 サンプル
24 モーションステージ
26 X線源
28 X線管
30 単色化オプティクス
32 領域
34 収束ビーム
38 検出器アセンブリ
40 検出器アレイ
46 プロセッサ
54、56 湾曲トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層を具備するサンプルの分析用の装置であって、
X線の収束ビームを前記サンプルの表面に向かって案内するべく適合された放射源と、
前記サンプルから散乱した前記X線を仰角の一範囲にわたって、仰角の関数として同時に検知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく構成された少なくとも1つの検出器アレイであって、グレージング角で、前記サンプルの表面から反射したX線を前記検出器アレイが検知する第1の構造と、前記サンプルのBragg角の近傍において、前記表面から回折した前記X線を前記検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する少なくとも1つの検出器アレイと、
前記サンプルの前記表面層の特性を判定するために、前記第1及び第2の構造において生成された前記出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと、
を含む分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第1の構造と前記第2の構造の間において、前記放射源と前記検出器アレイを移動させるべく結合されたモーションアセンブリを含む分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記放射源は、第1及び第2の放射源を有し、これらは、前記第1及び第2の構造において前記X線を前記サンプルに向かって案内するべくそれぞれ配置されており、前記少なくとも1つの検出器アレイは、第1及び第2の検出器アレイを有し、これらは、前記第1及び第2の構造において前記散乱したX線を受光するべくそれぞれ配置されている分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記放射源は、湾曲結晶モノクロメーターを含む分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記少なくとも1つの検出器アレイは、複数の検出器要素を有しており、これらは、前記サンプルから散乱した前記X線を受光するべく構成されており、前記仰角の範囲は、少なくとも2°の仰角を含む分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記第1の構造において前記サンプルから反射した前記X線は、前記仰角の関数としての強度の振動性の変動によって特徴付けられており、前記プロセッサは、前記表面層の特性を判定するために、前記振動性の変動を分析するべく適合されている分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、前記信号プロセッサによって判定される前記特性は、前記表面層の密度、厚さ、及び表面粗度の中の少なくとも1つを含む分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記第2の構造において前記表面から回折した前記X線は、第1及び第2回折ピークによって特徴付けられており、前記プロセッサは、前記表面層の特性を判定するために、前記ピークの関係を分析するべく適合されている分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記信号プロセッサによって判定される前記特性は、前記表面層の組成を含む分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において、前記サンプルは半導体ウエハを含み、前記信号プロセッサは、前記ウエハ上に形成された薄膜層の品質を判定するために前記出力信号を分析するベく適合されている分析装置。
【請求項11】
微小電子デバイスを製造するためのクラスタツールであって、
半導体ウエハの表面上に薄膜層を形成するべく適合された堆積ステーションと、
検査ステーションであって、
前記ウエハの表面に向かってX線の収束ビームを案内するべく適合された放射源と、
前記ウエハから散乱した前記X線を、仰角の一範囲にわたって仰角の関数として同時に検知し、散乱した前記X線に応答して出力信号を生成するべく構成された検出器アレイであって、グレージング角で、前記ウエハの表面から反射した前記X線を前記検出器アレイが検知する第1の構造と、前記ウエハのBragg角の近傍において、前記ウエハから回折した前記X線を前記検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する検出器アレイと、
前記ウエハの前記表面層の特性を判定するために、前記第1及び第2の構造において生成された前記出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと、を含む検査ステーションと、
を含むクラスタツール。
【請求項12】
微小電子デバイスを製造する装置であって、
半導体ウエハを受け入れるべく適合された製造チャンバと、
前記チャンバ内において、前記半導体ウエハの表面上に薄膜層を堆積するべく適合された堆積装置と、
前記チャンバ内の前記ウエハの表面に向かってX線の収束ビームを案内するべく適合された放射源と、
前記チャンバ内において前記ウエハから散乱した前記X線を、仰角の一範囲にわたって仰角の関数として同時に検知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するべく構成された検出器アレイであって、グレージング角で、前記ウエハの表面から反射した前記X線を前記検出器アレイが検知する第1の構造と、前記ウエハのBragg角の近傍において、前記ウエハから回折した前記X線を前記検出器アレイが検知する第2の構造と、を具備する検出器アレイと、
前記ウエハの前記表面層の特性を判定するために、前記第1及び第2の構造において生成された前記出力信号を受信して処理するべく接続された信号プロセッサと、
を含む分析装置。
【請求項13】
表面層を具備するサンプルの分析用の方法であって、
グレージング角で、前記サンプルの表面に向かってX線の収束ビームを案内することにより、前記サンプルのX線反射率(X−Ray Reflectance:XRR)スペクトルを取得し、少なくとも1つの検出器アレイを使用して前記サンプルから散乱した前記X線を、仰角の一範囲にわたって仰角の関数として同時に検出する段階と、
前記サンプルのBragg角の近傍において、前記サンプルの前記表面に向かってX線の収束ビームを案内することにより、前記サンプルのX線回折(XRD)スペクトルを取得し、前記少なくとも1つの検出器アレイを使用して、前記サンプルから散乱した前記X線を、仰角の第2の範囲にわたって、仰角の関数として同時に検出する段階と、
前記サンプルの前記表面層の特性を判定するために、前記XRR及びXRDスペクトルを処理する段階と、
を含む分析方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記少なくとも1つの検出器アレイは、単一の検出器アレイを有しており、前記第1の範囲の仰角内に散乱した前記X線を前記検出器アレイが受光する第1の構造と、前記第2の範囲の仰角内に散乱した前記X線を前記検出器アレイが受光する第2の構造間で、前記検出器アレイを移動させる段階を含む分析方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記少なくとも1つの検出器アレイは、第1及び第2の検出器アレイを有しており、これらは、前記第1及び第2の範囲の仰角において、前記散乱したX線を受光するべくそれぞれ配置されている分析方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記収束ビームを案内する段階は、湾曲結晶モノクロメーターを使用して前記X線を合焦する段階を含む分析方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記少なくとも1つの検出器アレイは、複数の検出器要素を有しており、これらは、前記サンプルから散乱した前記X線を受光するべく構成されており、前記仰角の範囲は、少なくとも2°の仰角を含む分析方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法において、前記XRRスペクトルは、前記仰角の関数としての強度の振動性の変動によって特徴付けられており、前記スペクトルを処理する段階は、前記表面層の特性を判定するべく、前記振動性の変動を分析する段階を含む分析方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記表面層の前記特性は、前記表面層の密度、厚さ、及び表面粗度の中の少なくとも1つを含む分析方法。
【請求項20】
請求項13に記載の方法において、前記XRDスペクトルは、第1及び第2の回折ピークによって特徴付けられており、前記スペクトルを処理する段階は、前記表面層の特性を判定するべく、前記ピークの関係を分析する段階を含む分析方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記表面層の前記特性は、前記表面層の組成を含む分析方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法において、前記サンプルは、半導体ウエハを有しており、前記スペクトルを処理する段階は、前記ウエハ上に形成された薄膜層の品質を判定するべく、前記出力信号を分析する段階を含む分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−91017(P2006−91017A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273641(P2005−273641)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(504390894)ジョーダン バリー アプライド レイディエイション リミティド (4)
【Fターム(参考)】