説明

経路案内装置、経路案内方法及びプログラム

【課題】経路を的確に探索することが可能な経路案内装置、経路案内方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】操作部14を介して目的地を設定した場合には、CPU41は、目的地まで探索した仮経路に沿って該仮経路上の代表点を抽出し、この代表点を基準とする第2到達範囲を第1到達範囲に上書きして合成到達範囲を設定する。そして、CPU41は、この合成到達範囲に基づいて、各リンクの存在する範囲を判断し、各リンクのリンクコスト61Cを取得して推奨経路を探索し、目的地までの所要時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路を探索する経路案内装置、経路案内方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、目的地までの経路を探索する技術に関して種々提案されている。
例えば、メッシュ毎にエリアを区切り、出発地から目的地までの各メッシュIDを持つメッシュ領域各々の代表座標までの直線距離を順次算出し、これを基準距離とする。そして、この基準距離を移動速度で割り算することにより、この各メッシュ領域までの基準移動時間を算出する。そして、出発時刻に、この基準移動時間を加算することで、このメッシュ領域への基準到達時刻を算出する。その後、このメッシュIDを持つメッシュ領域への基準到達時刻を含む時間帯の各リンクの交通データを入手して、出発地および目的地間を結ぶ推奨経路を探索するように構成されたナビゲーション装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−301677号公報(段落(0009)〜(0073)、図1〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、各メッシュ領域間の移動速度を一律に設定して、各メッシュ領域までの基準移動時間を算出した場合には、実際に走行した場合の各エリアへの到着時刻との間に誤差が生じ、実際の到着時刻とは大幅に異なる時間帯の交通情報を用いて推奨経路を探索してしまうという問題がある。例えば、各メッシュの間に走行速度が異なる市街地と郊外とが含まれている場合や、各メッシュまで直線的に移動できない場合には、基準移動時間と実際に走行した場合の各エリアへの到着時刻との間に大きな誤差が生じる。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、経路を的確に探索することが可能な経路案内装置、経路案内方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る経路案内装置は、所定時間毎に到達する到達距離を予測距離範囲情報として記憶する予測距離範囲情報記憶手段(28)と、各リンクに対し、時間帯別の交通情報を記憶する交通情報記憶手段(27)と、前記予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定手段(13)と、前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索手段(13)と、前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出手段(13)と、
前記第1到達範囲に基づいて、前記代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定手段(13)と、前記予測距離範囲情報に基づいて、前記到達時刻を基準として前記代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定手段(13)と、前記第2到達範囲を前記第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定手段(13)と、前記合成到達範囲に基づいて前記交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索手段(13)と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る経路案内装置は、請求項1に記載の経路案内装置(1)において、前記予測距離範囲情報記憶手段(28)は、前記予測距離範囲情報を地図メッシュ毎に記憶しており、前記代表点は、前記仮経路と前記地図メッシュの境界線との交点を含むことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る経路案内装置は、請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置(1)において、前記代表点は、前記仮経路と行政区域の境界線との交点を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る経路案内装置は、請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置(1)において、前記代表点は、前記仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルを含むことを特徴とする。
【0009】
更に、請求項5に係る経路案内装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の経路案内装置(1)において、前記第2到達範囲設定手段(13)は、前記第2到達範囲を前記代表点から前記目的地まで進行方向前方に設定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る経路案内方法は、所定時間毎に到達する到達距離を表す予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定工程と、前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索工程と、前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出工程と、前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に基づいて、前記代表点抽出工程で抽出した代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定工程と、前記予測距離範囲情報に基づいて、前記代表点到達時刻設定工程で設定した到達時刻を基準として前記代表点抽出工程で抽出した代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定工程と、前記第2到達範囲設定工程で設定した第2到達範囲を前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定工程と、前記合成到達範囲設定工程で設定した合成到達範囲に基づいて、各リンクに対し、到達する時間帯の交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に係るプログラムは、コンピュータに、所定時間毎に到達する到達距離を表す予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定工程と、前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索工程と、前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出工程と、前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に基づいて、前記代表点抽出工程で抽出した代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定工程と、前記予測距離範囲情報に基づいて、前記代表点到達時刻設定工程で設定した到達時刻を基準として前記代表点抽出工程で抽出した代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定工程と、前記第2到達範囲設定工程で設定した第2到達範囲を前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定工程と、前記合成到達範囲設定工程で設定した合成到達範囲に基づいて、各リンクに対し、到達する時間帯の交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に係る経路案内装置では、目的地まで探索した仮経路に沿って該仮経路上の代表点を抽出し、この代表点を基準とする第2到達範囲を第1到達範囲に上書きして合成到達範囲を設定する。これにより、目的地まで設定した第1到達範囲を仮経路に沿った代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲を正確に予測でき、経路を的確に探索することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る経路案内装置では、仮経路と地図メッシュの境界線との交点を代表点とすることによって、地図メッシュ間の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、目的地まで設定した仮経路と地図メッシュの境界線との交点を代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【0014】
また、請求項3に係る経路案内装置では、仮経路と行政区域の境界線との交点を代表点とすることによって、行政区域の境界間の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、目的地まで設定した仮経路と行政区域の境界線との交点を代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に係る経路案内装置では、仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルは、都道府県、市区町村等の行政区域の境界線上に設けられることが多い。このため、仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルを代表点とすることによって、所定長さ以上の橋又はトンネルを挟んだ領域の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、目的地まで設定した第1到達範囲に当該所定長さ以上の橋又はトンネルを代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲を上書きして補正することによって、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【0016】
更に、請求項5に係る経路案内装置では、所定時間毎に到達する第2到達範囲を代表点から目的地まで進行方向前方に設定するため、当該第2到達範囲の必要な設定範囲を狭くすることが可能となり、処理負荷の軽減化を図ることが可能となる。
【0017】
また、請求項6に係る経路案内方法では、目的地まで探索した仮経路に沿って該仮経路上の代表点を抽出し、この代表点を基準とする第2到達範囲を第1到達範囲に上書きして合成到達範囲を設定する。これにより、目的地まで設定した第1到達範囲を仮経路に沿った代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲を正確に予測でき、経路を的確に探索することが可能となる。
【0018】
また、請求項7に係るプログラムでは、コンピュータは当該プログラムを読み込むことによって、該コンピュータは、目的地まで探索した仮経路に沿って該仮経路上の代表点を抽出し、この代表点を基準とする第2到達範囲を第1到達範囲に上書きして合成到達範囲を設定する。これにより、コンピュータは、目的地まで設定した第1到達範囲を仮経路に沿った代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲を正確に予測でき、経路を的確に探索することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る経路案内装置、経路案内方法及びプログラムをナビゲーション装置について具体化した一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
[ナビゲーション装置の概略構成]
先ず、本実施例に係るナビゲーション装置の概略構成について図1に基づいて説明する。図1は本実施例に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
図1に示すように、本実施例に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在地検出処理部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーション制御部13と、操作者からの操作を受け付ける操作部14と、操作者に対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内等に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、不図示の道路交通情報センタや地図情報配信センタ等との間で携帯電話網等を介して通信を行う通信装置17とから構成されている。また、ナビゲーション制御部13には自車の走行速度を検出する車速センサ21が接続されている。
【0021】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出処理部11は、GPS31、方位センサ32、距離センサ33等からなり、自車位置、自車方位、走行距離等を検出することが可能となっている。
【0022】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記憶された地図情報データベース(地図情報DB)25、スライス幅データベース(スライス幅DB)27、交通データベース(交通DB)28、及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0023】
また、地図情報DB25には、ナビゲーション装置1の走行案内や経路探索に使用されるナビ地図情報26が格納されている。ここで、ナビ地図情報26には、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されており、例えば、各新設道路を特定するための新設道路情報、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、道路(リンク)に関するリンクデータ、トンネルや橋等に関する施設情報データ、経路を探索するための探索データ、施設の一種である店舗等のPOI(Pointof Interest)に関する店舗データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。そして、地図情報DB25の内容は、不図示の地図情報配信センタから通信装置17を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0024】
ここで、特に地図表示データとしては、約10km×10kmで区画された2次メッシュをベースに4分割(長さ1/2)、16分割(1/4)、64分割(1/8)されたユニットで構成されており、各ユニットのデータ量が略同レベルになるように、各地のユニットが設定されている。最も小さい64分割サイズのユニットは、約1.25km四方の大きさである。また、約10km×10kmで区画された各2次メッシュには、各2次メッシュを識別するメッシュIDがそれぞれ付されている。
【0025】
また、スライス幅DB27には、予測距離範囲情報としてのスライス幅データテーブル270(図2参照)が格納されている。また、スライス幅データテーブル270の内容は、不図示の地図情報配信センタから通信装置17を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0026】
また、交通DB28には、各メッシュID毎に生成され、過去の交通情報を統計処理することによって得られた交通データテーブル280(図3参照)が格納されている。また、交通データテーブル280の内容は、不図示の地図情報配信センタから通信装置17を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0027】
また、図1に示すように、ナビゲーション装置1を構成するナビゲーション制御部13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の目的地までの推奨経路の所要時間を算出する所要時間算出処理のプログラム(図4参照)等が記憶されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置や、時間を計測するタイマ45等を備えている。
【0028】
更に、前記ナビゲーション制御部13には、操作部14、液晶ディスプレイ15、スピーカ16、通信装置17の各周辺装置(アクチュエータ)が電気的に接続されている。
【0029】
この操作部14は、走行開始時の現在地を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際や施設に関する情報の検索を行う場合等に操作され、各種のキーや複数の操作スイッチから構成される。そして、ナビゲーション制御部13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。更に、液晶ディスプレイ15の前面部には、タッチパネルが設けられ、画面に表示されたボタンや地図上を押下することによって各種指示コマンドを入力することが可能に構成されている。
【0030】
また、液晶ディスプレイ15には、現在走行中の地図情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの推奨経路、推奨経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0031】
また、スピーカ16は、ナビゲーション制御部13からの指示に基づいて、推奨経路に沿った走行を案内する音声ガイダンス等を出力する。ここで、案内される音声ガイダンスとしては、例えば、「200m先、○○交差点を右方向です。」等がある。
【0032】
また、通信装置17は、不図示の地図情報配信センタと通信を行う携帯電話網等による通信手段であり、地図情報配信センタとの間で最もバージョンの新しい更新地図情報等の送受信を行う。また、通信装置17は地図情報配信センタに加えて、道路交通情報センタ等から送信された渋滞情報やサービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を受信する。
【0033】
ここで、スライス幅DB27に格納される予測距離範囲情報としてのスライス幅データテーブル270の一例について図2に基づいて説明する。図2はスライス幅DB27に格納されるスライス幅データテーブル270のデータ構造の一例を示す図である。
【0034】
図2に示すように、予測距離範囲情報としてのスライス幅データテーブル270は、メッシュID51A、季節51B、曜日51C、時刻毎に到達する距離範囲としてのスライス幅51Dから構成されている。上記の通りメッシュID51Aは、全国を10km四方に区画した各2次メッシュに割り当てられたIDである。このメッシュID51Aの下位のデータは、季節51Bとなっている。季節51Bは、スライス幅51Dを春・夏・秋・冬・長期連休に分けている。更に下位にある曜日51Cは、スライス幅51Dを各曜日と、祝日とに分けている。
【0035】
また、曜日51Cの下位データは、スライス幅51Dとなっている。このスライス幅51Dは、2次メッシュ毎に記憶されており、その2次メッシュにおいて、所定時間としての15分の間に自動車が走行可能な距離範囲を予測した予測距離範囲情報であり、15分間の時間帯毎に、24時間分のデータが記憶されている。
【0036】
次に、交通DB28に格納される各メッシュID毎に生成され、過去の交通情報を統計処理することによって得られた交通データテーブル280の一例について図3に基づいて説明する。図3は交通DB28に格納される交通データテーブル280のデータ構造の一例を示す図である。
【0037】
図3に示すように、交通データテーブル280は、例えば、エリアとしての各2次メッシュに付されたメッシュID毎に生成され、時間帯61B毎に、各リンクのリンクID61Aに対するリンクコスト61Cを有している。時間帯61Bは、15分毎に設定された時間帯(例えば「9:00」〜「9:14」等)になっている。また、このリンクコスト61Cは、その時間帯61Bにおいて、そのリンクを通過する際にかかる平均旅行時間を示すデータであって、例えば「3(min)」等になっている。このリンクコスト61Cは、不図示の地図情報配信センタにより、道路交通情報センタからの交通情報や、各プローブカーから収集したプローブ情報等の過去の交通情報に基づいて生成された統計交通情報である。
【0038】
[所要時間算出処理]
次に、上記のように構成されたナビゲーション装置1のCPU41が実行する処理であって、目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」について図4乃至図9に基づいて説明する。
【0039】
図4は本実施例に係るナビゲーション装置1のCPU41が実行する目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」を示すメインフローチャートである。図5は図4の「合成到達範囲設定処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
尚、図4にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーション装置1のナビゲーション制御部13が備えているROM43に記憶されており、CPU41により目的地が設定された時に実行される。
【0040】
図4に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU41は、タッチパネル、操作スイッチ等の操作部14の入力操作等によって、目的地が設定された場合には、その目的地の座標等をRAM42に一時格納後、現在地検出処理部11の検出結果に基づいて自車の現在位置(以下、「自車位置」という。)を検出してRAM42に記憶する。
【0041】
続いて、CPU41は、自車位置を含む地図データをナビ地図情報26から読み出し、地図データに基づいて自車位置が位置する2次メッシュのメッシュIDを取得してRAM42に記憶する。また、CPU41は、タイマ45から現在の年月日及び時刻を取得して、RAM42に記憶する。そして、CPU41は、スライス幅データテーブル270のメッシュID51A、季節51B、曜日51C、時間帯の要因を特定すると、メッシュID51Aが紐付けされたスライス幅データテーブル270のスライス幅51Dを取得して、RAM42に記憶する。
【0042】
例えば、メッシュID51Aが「1」、季節51Bが「春」、曜日51Cが「月曜日」、現在時刻が9時00分、つまり、「9時00分〜9時14分」の時間帯に含まれる時刻であった場合、CPU41は、図2に示す「1」→「春」→「月曜日」に対応するスライス幅51Dのうち、「9時00分〜9時14分」、「9時15分〜9時29分」、「9時30分〜9時44分」、・・・のスライス幅51Dを順次読み出して、RAM42に記憶する。
【0043】
従って、このメッシュID51Aが「1」の2次メッシュにおいて、「9時00分〜9時14分」、「9時15分〜9時29分」、「9時30分〜9時44分」、・・・のスライス幅51Dが、「4km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・の場合には、CPU41は、「9:00」から連続する15分毎の各時間帯内において、車両が進行する到達距離が「4km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・と予測されたスライス幅51Dを取得する。
【0044】
続いて、S12において、上記S11で取得したスライス幅51DをRAM42から再度、読み出し、現在の自車位置から所定時間毎(15分毎)に車両が到達する第1到達エリア(第1到達範囲)を現在時刻を基準として設定してRAM42に記憶する。
【0045】
ここで、スライス幅が「4km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・の場合に、CPU41が、現在時刻を基準として設定する第1到達範囲の一例を図6に基づいて説明する。図6は現在の自車位置を中心として半径方向外側に各スライス幅で設定される第1到達範囲の一例を説明する説明図である。
【0046】
図6に示すように、CPU41は、各スライス幅「4km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・をRAM42から読み出し、現在(9時00分)の自車位置71を中心に、自車位置71から半径「4.0km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・の円形をなす各第1到達範囲72、73、74、75、・・・を順次設定してRAM42に記憶する。
【0047】
この第1到達範囲72内は、車両が「9時00分〜9時14分」内に到達する到達範囲である。また、第1到達範囲73内は、車両が「9時15分〜9時29分」内に到達する到達範囲である。また、第1到達範囲74内は、車両が「9時30分〜9時44分」内に到達する到達範囲である。また、第1到達範囲75内は、車両が「9時45分〜9時59分」内に到達する到達範囲である。
【0048】
そして、図4に示すように、S13において、CPU41は、上記S12でRAM42に記憶した現在の自車位置から所定時間毎(15分毎)に車両が到達する第1到達範囲に基づいて、各リンクがどの範囲に存在するか判別し、各リンクに到達する到達時刻範囲を設定して、RAM42に記憶する。
【0049】
続いて、CPU41は、各リンク毎の到達時刻範囲を、再度RAM42から順次読み出し、各リンクが存在する2次メッシュのメッシュIDに対応する交通データテーブル280から、この到達時刻範囲に該当する時間帯61Bの各リンクコスト61Cを順次読み出し、各リンクのリンクコスト61Cとして設定して、RAM42に記憶する。
【0050】
その後、CPU41は、各リンクに設定されたリンクコスト61Cに基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの仮経路を探索して、RAM42に記憶する。
【0051】
続いて、S14において、CPU41は、仮経路を再度RAM42から読み出し、この仮経路に沿ってナビ地図情報26から「代表点」を抽出する。
【0052】
この「代表点」とは、(1)当該仮経路と各2次メッシュの境界線との交点、(2)当該仮経路上又は当該仮経路から所定距離以内(例えば、約1km以内である。)に存在する所定長さ以上の橋(例えば、約10m以上の橋である。)やトンネル(例えば、約500m以上のトンネルである。)等である。
【0053】
尚、CPU41は、当該仮経路に沿った「代表点」を抽出する場合には、(1)各2次メッシュの境界線との交点、(2)当該仮経路上又は当該仮経路から所定距離以内(例えば、約1km以内である。)に存在する所定長さ以上の橋やトンネル等の順に抽出する。
【0054】
ここで、仮経路に沿って抽出された代表点の一例を図7に基づいて説明する。図7は仮経路に沿って抽出された代表点の一例を示す図である。
図7に示すように、CPU41は、先ず、ナビ地図情報26に基づいて、仮経路81と2次メッシュの境界線との交点を自車位置71から目的地77に向かって検出し、自車位置71が存在する2次メッシュ82の境界線との交点を代表点85として抽出し、代表点85の座標位置(例えば、緯度と経度である。)をRAM42に記憶する。
【0055】
次に、CPU41は、ナビ地図情報26に基づいて、仮経路81上又は当該仮経路81から所定距離以内(例えば、約1km以内である。)に存在する所定長さ以上の橋やトンネル等を検出し、所定距離以内にあるトンネルを代表点86として抽出し、代表点86の座標位置(例えば、緯度と経度である。)をRAM42に記憶する。
【0056】
続いて、図4に示すように、S15において、CPU41は、仮経路に沿って代表点があるか否か、つまり、上記S14で代表点が抽出されたか否かを判定する判定処理を実行する。
そして、仮経路に沿って代表点が無い場合には(S15:NO)、CPU41は、この仮経路を推奨経路としてRAM42に記憶後、後述のS19の処理に移行する。
【0057】
一方、仮経路に沿って代表点がある場合には(S15:YES)、CPU41は、S16の処理に移行する。S16において、CPU41は、「合成到達範囲設定処理」のサブ処理を実行後、S17の処理に移行する。
【0058】
ここで、「合成到達範囲設定処理」のサブ処理について図5に基づいて説明する。図5は図4の「合成到達範囲設定処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
図5に示すように、S111において、CPU41は、上記S14で抽出した代表点の各座標位置をRAM42から再度読み出し、仮経路上で自車位置から道なり距離が最も近い代表点について、この代表点に到達する到達時刻を上記S12で設定した第1到達範囲から取得して、RAM42に記憶する。
【0059】
例えば、出発時刻が「9:00」で、仮経路上で自車位置から最も近い代表点までの直線距離が「2.7km」で、当該代表点が存在する第1到達範囲のスライス幅51Dが「4km」の場合には、CPU41は、15分間に「4km」走行することから、代表点に到達する到達時刻を「9:10」と算出し、RAM42に記憶する。
【0060】
そして、S112において、CPU41は、この代表点が位置する2次メッシュのメッシュIDをナビ地図情報26から読み出して、RAM42に記憶する。そして、CPU41は、この代表点が位置する2次メッシュのメッシュIDと、上記S11で取得した年月日と、代表点に到達する到達時刻から、スライス幅データテーブル270のメッシュID51A、季節51B、曜日51C、時間帯の要因を特定する。そして、この特定したメッシュID51Aが紐付けされたスライス幅データテーブル270のスライス幅51Dを取得して、RAM42に記憶する。
【0061】
例えば、メッシュID51Aが「1」、季節51Bが「春」、曜日51Cが「月曜日」、到達時刻が9:10、つまり、9:00〜9:14の時間帯に含まれる時刻であった場合、CPU41は、図2に示す「1」→「春」→「月曜日」に対応するスライス幅51Dのうち、「9時00分〜9時14分」、「9時15分〜9時29分」、「9時30分〜9時44分」、・・・のスライス幅51Dを順次読み出して、RAM42に記憶する。
【0062】
続いて、S113において、CPU41は、上記S112で取得したスライス幅51DをRAM42から再度、読み出し、代表点から目的地に向かって進行方向前方に仮経路を含む扇形の範囲で、所定時間毎(15分毎)に車両が到達する第2到達エリア(第2到達範囲)を当該代表点に到達する到達時刻を基準として、目的地が含まれるまで順次設定して、RAM42に記憶する。
【0063】
具体的には、スライス幅51Dは、「9:00〜9:14」、「9:15〜9:29」、「9:30〜9:44」、・・・・の各時間帯毎に設定され、それぞれ15分間に車両が走行する距離を表している。このため、例えば、代表点に到達する時刻が「9:10」の場合には、CPU41は、第2到達範囲の走行開始時刻を「9:10」とし、この走行開始時刻が属する「9:00〜9:14」のスライス幅51Dを読み出し、「9:10〜9;14」の5分間に走行する距離、つまり、「9:00〜9:14」のスライス幅51Dの1/3の走行距離を、第2到達範囲の「9:10〜9;14」のスライス幅51Dとして設定し、RAM42に記憶する。また、それ以降の第2到達範囲のスライス幅51Dは、「9:15〜9:29」、「9:30〜9:44」、・・・の各時間帯のスライス幅51Dを順次読み出し、当該第2到達範囲のスライス幅51Dとして、目的地が含まれるまで順次設定して、RAM42に記憶する。
【0064】
そして、S114において、CPU41は、上記S12で設定した第1到達範囲と、上記S113で設定した第2到達範囲とをRAM42から読み出し、この第1到達範囲に新たに設定した第2到達範囲を上書きした合成到達範囲を設定して、RAM42に記憶する。
【0065】
続いて、上記S114の処理を実行後、CPU41は、仮経路上で自車位置から直線距離が次に遠い代表点があるか否かを判定する判定処理を実行する。そして、仮経路上で自車位置から直線距離が次に遠い代表点が無い場合には、CPU41は、上記S14で抽出した全代表点について、合成到達範囲の設定処理を実行したと判断して、当該ループを終了して、メインフローチャートに戻り、S17の処理に移行する。
【0066】
一方、仮経路上で自車位置から直線距離が次に遠い代表点がある場合には、CPU41は、この次に遠い代表点についてS111以降のループを実行する。
【0067】
ここで、上記S111〜S114において、CPU41が図7に示す各代表点85、86について合成到達範囲を設定した一例を図8及び図9に基づいて説明する。
図8は図7の自車位置に最も近い代表点86について合成到達範囲95を設定した一例を示す図である。図9は図8の次に遠い代表点85について合成到達範囲を設定した一例を示す図である。
【0068】
図8に示すように、CPU41は、出発時刻が「9:00」で、仮経路81上で自車位置71から最も近い代表点86までの直線距離が「2.7km」で、当該代表点86が存在する第1到達範囲72のスライス幅51Dが「4km」の場合には、CPU41は、15分間に「4km」走行することから、代表点86に到達する到達時刻を「9:10」と算出し、RAM42に記憶する。
【0069】
そして、CPU41は、この代表点86が位置する2次メッシュ82のメッシュIDをナビ地図情報26から読み出して、RAM42に記憶する。そして、CPU41は、この代表点86が位置する2次メッシュ82のメッシュIDと、上記S11で取得した年月日と、代表点に到達する到達時刻「9:10」から、スライス幅データテーブル270のメッシュID51A、季節51B、曜日51C、時間帯の要因を特定する。
【0070】
その後、CPU41は、この特定したメッシュID51Aが紐付けされたスライス幅データテーブル270のスライス幅51Dを取得して、RAM42に記憶する。例えば、CPU41は、図2に示す「1」→「春」→「月曜日」に対応するスライス幅51Dのうち、「9:00〜9:14」、「9:15〜9:29」、「9:30〜9:44」、・・・の各スライス幅51Dとして「4km」、「6.0km」、「5.6km」、・・・を順次読み出して、RAM42に記憶する。
【0071】
ここで、CPU41は、代表点86が位置する「9:00〜9:14」のスライス幅51Dは、「4km」であることから、当該代表点86の到達時刻9:10から9:14までの5分間に走行する距離「1.3km」を算出し、代表点86が位置する「9:00〜9:14」のスライス幅51Dを1.3kmに補正し、補正した「9:00〜9:14」のスライス幅51DをRAM42に記憶する。
【0072】
続いて、CPU41は、RAM42から各スライス幅51Dとして「1.3km」、「6.0km」、「5.6km」を順次読み出して、代表点86から目的地77に向かって進行方向前方に仮経路81を含む扇形の範囲で、15分毎に車両が到達する各第2到達範囲91、92、93を当該代表点86に到達する到達時刻「9:10」を基準として、「9:10〜9:14」の第2到達範囲91を「1.3km」、「9:15〜9:29」の第2到達範囲92を「6.0km」、「9:30〜9:44」の第2到達範囲93を「5.6km」とし、目的地77が含まれるまで順次設定して、RAM42に記憶する。従って、代表点86から最初のエリアまでの第2到達範囲91は、代表点86に到達する到達時刻によって変化する。
【0073】
そして、CPU41は、上記S12の処理で設定した各第1到達範囲72、73、74と、各第2到達範囲91、92、93とをRAM42から読み出し、この各第1到達範囲72、73、74に各第2到達範囲91、92、93を上書きした合成到達範囲95を設定して、RAM42に記憶する。
【0074】
次に、図9に示すように、代表点86から代表点85までの直線距離が「5.3km」である場合、CPU41は、「9:10〜9:14」の第2到達範囲91のスライス幅51Dが「1.3km」で、「9:15〜9:29」の第2到達範囲92のスライス幅51Dが「6km」であることから、「9:10〜9:14」の5分間に「1.3km」走行し、更に、代表点85までの残り「4km」を走行するため、仮経路81上で自車位置71から次に遠い代表点85に到達する到達時刻を「9:25」と算出し、RAM42に記憶する。
【0075】
そして、この代表点85は、2次メッシュ82の境界線と仮経路81との交点であることから、CPU41は、この代表点85は、2次メッシュ82に隣接する2次メッシュ88に位置すると判断して、2次メッシュ88のメッシュIDをナビ地図情報26から読み出して、RAM42に記憶する。
【0076】
続いて、CPU41は、この代表点85が位置する2次メッシュ88のメッシュIDと、上記S11で取得した年月日と、代表点に到達する到達時刻「9:25」から、スライス幅データテーブル270のメッシュID51A、季節51B、曜日51C、時間帯の要因を特定する。
【0077】
その後、CPU41は、この特定したメッシュID51Aが紐付けされたスライス幅データテーブル270のスライス幅51Dを取得して、RAM42に記憶する。例えば、CPU41は、図2に示す「10」→「春」→「月曜日」に対応するスライス幅51Dのうち、「9:15〜9:29」、「9:30〜9:44」、・・・の各スライス幅51Dとして「6km」、「3km」、「4km」、・・・を順次読み出して、RAM42に記憶する。
【0078】
ここで、CPU41は、代表点85が位置する「9:15〜9:29」のスライス幅51Dは、「6km」であることから、当該代表点85の到達時刻9:25から9:30までの5分間に走行する距離「2km」を算出し、代表点85が位置する「9:15〜9:29」のスライス幅51Dを2kmに補正し、補正した「9:15〜9:29」のスライス幅51DをRAM42に記憶する。
【0079】
続いて、CPU41は、RAM42から各スライス幅51Dとして「2km」、「3km」を順次読み出して、代表点85から目的地77に向かって進行方向前方に仮経路81を含む扇形の範囲で、15分毎に車両が到達する各第2到達範囲97、98を当該代表点85に到達する到達時刻「9:25」を基準として、目的地77が含まれるまで順次設定して、RAM42に記憶する。
【0080】
そして、CPU41は、上記合成到達範囲95と各第2到達範囲97、98とをRAM42から読み出し、この合成到達範囲95に各第2到達範囲97、98を上書きした合成到達範囲101を設定して、RAM42に記憶後、ループを終了して、メインフローチャートに戻り、S17の処理に移行する。
【0081】
次に、図4に示すように、S17において、CPU41は、上記S16で取得した合成到達範囲に基づいて、各リンクの存在する範囲を判断し、各リンクに到達する到達時刻範囲を設定して、RAM42に記憶する。
続いて、CPU41は、各リンク毎の到達時刻範囲を、再度RAM42から順次読み出し、各リンクが存在する2次メッシュのメッシュIDに対応する交通データテーブル280から、この到達時刻範囲に該当する各リンクの時間帯61Bの各リンクコスト61Cを順次読み出し、各リンクのリンクコスト61Cとして設定して、RAM42に記憶する。
【0082】
その後、S18において、CPU41は、各リンクに設定されたリンクコスト61Cに基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索して、RAM42に記憶する。
【0083】
そして、S19において、CPU41は、推奨経路をRAM42から読み出し、現在時刻を出発時刻とする。そして、CPU41は、RAM42から走行開始リンクのリンクコスト61Cを読み出し、現在時刻に加算した時刻を次リンクの走行開始時刻としてRAM42に記憶する。
【0084】
また、推奨経路の走行開始リンクの次のリンク以降については、CPU41は、RAM42から順次対象リンクのリンクコスト61Cを読み出し、当該対象リンクの走行開始時刻にリンクコスト61Cを加算した時刻を次のリンクの走行開始時刻としてRAM42に順次記憶する。
【0085】
そして、推奨経路の全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出した場合、即ち、推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出した場合には、CPU41は、当該走行終了リンクのリンクコスト61CをRAM42から読み出して、この走行終了リンクの走行開始時刻に加算した時刻を目的地に到達する目的地到達時刻とし、RAM42に記憶する。また、CPU41は、この目的地到達時刻から走行開始時刻を減算した時間を自車位置から目的地までの所要時間として、RAM42に記憶後、当該処理を終了する。
【0086】
従って、本実施例に係るナビゲーション装置1では、操作部14を介して目的地を設定した場合には、CPU41は、目的地まで探索した仮経路に沿って該仮経路上の代表点を抽出し、自車位置から直線距離の近い代表点から順次、当該代表点を基準とする第2到達範囲を設定する。そして、この第2到達範囲を順次第1到達範囲に上書きして合成到達範囲を設定する。そして、CPU41は、この合成到達範囲に基づいて、各リンクの存在する範囲を判断し、各リンクのリンクコスト61Cを取得して推奨経路を探索し、目的地までの所要時間を算出する。
【0087】
これにより、目的地まで設定した第1到達範囲を仮経路に沿った代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲を正確に予測でき、推奨経路を的確に探索し、目的地までの正確な所要時間を算出することが可能となる。
【0088】
また、CPU41は、仮経路と2次メッシュの境界線との交点を代表点とすることによって、2次メッシュ間の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、CPU41は、目的地まで設定した仮経路と2次メッシュの境界線との交点を代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲によって補正して、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【0089】
また、仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルは、都道府県、市区町村等の行政区域の境界線上に設けられることが多い。このため、CPU41は、仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルを代表点とすることによって、所定長さ以上の橋又はトンネルを挟んだ領域の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、CPU41は、目的地まで設定した第1到達範囲に当該所定長さ以上の橋又はトンネルを代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲を上書きして補正することによって、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【0090】
更に、CPU41は、所定時間毎に到達する第2到達範囲を代表点から目的地まで進行方向前方に仮経路を含む扇形に設定するため、当該第2到達範囲の必要な設定範囲を狭くすることが可能となり、処理負荷の軽減化を図ることが可能となる。
【0091】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0092】
(A)上記S13に替えて、CPU41は、自車位置から目的地までの仮経路をスライス幅データテーブル270及び交通データテーブル280を用いることなく、ナビ地図情報27だけを使用して仮経路を探索するようにしてもよい。
【0093】
(B)上記S16において、CPU41は、仮経路の道なりに2等分した地点を代表点として設定するようにしてもよい。また、仮経路を道なりに3等分や4等分等、3個以上に等分する地点を代表点として設定するようにしてもよい。また、出発地から目的地までの距離に対応して等分地点数を設定するようにしてもよい。
【0094】
(C)上記S14において、CPU41は、(1)仮経路と各2次メッシュの境界線との交点、(2)仮経路と都道府県や市区町村等の各行政区域の境界線との交点を「代表点」として抽出するようにしてもよい。尚、CPU41は、仮経路に沿った「代表点」を抽出する場合には、(1)各2次メッシュの境界線との交点、(2)各行政区域の境界線との交点、の順に抽出する。
【0095】
これにより、CPU41は、仮経路と都道府県や市区町村等の行政区域の境界線との交点を代表点とすることによって、行政区域の境界間の各リンクに到達する到達時刻の不連続性を補正する代表点を適切に選択することが可能となる。また、CPU41は、目的地まで設定した仮経路と行政区域の境界線との交点を代表点とし、この代表点を基準とする第2到達範囲を上書きして補正することによって、時刻毎に到着する範囲をより正確に予測でき、推奨経路を更に的確に探索することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施例に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】スライス幅DBに格納されるスライス幅データテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】交通DBに格納される交通データテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」を示すメインフローチャートである。
【図5】図4の「合成到達範囲設定処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図6】現在の自車位置を中心として半径方向外側に各スライス幅で設定される第1到達範囲の一例を説明する説明図である。
【図7】仮経路に沿って抽出された代表点の一例を示す図である。
【図8】図7の自車位置に最も近い代表点について合成到達範囲を設定した一例を示す図である。
【図9】図8の次に遠い代表点について合成到達範囲を設定した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 ナビゲーション装置
11 現在地検出処理部
12 データ記録部
13 ナビゲーション制御部
14 操作部
25 地図情報DB
41 CPU
42 RAM
43 ROM
71 自車位置
72〜75 第1到達範囲
77 目的地
81 仮経路
82、88 2次メッシュ
91〜93、97、98 第2到達範囲
95、101 合成到達範囲
270 スライス幅データテーブル
280 交通データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間毎に到達する到達距離を予測距離範囲情報として記憶する予測距離範囲情報記憶手段と、
各リンクに対し、時間帯別の交通情報を記憶する交通情報記憶手段と、
前記予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定手段と、
前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索手段と、
前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出手段と、
前記第1到達範囲に基づいて、前記代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定手段と、
前記予測距離範囲情報に基づいて、前記到達時刻を基準として前記代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定手段と、
前記第2到達範囲を前記第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定手段と、
前記合成到達範囲に基づいて前記交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
を備えたことを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記予測距離範囲情報記憶手段は、前記予測距離範囲情報を地図メッシュ毎に記憶しており、
前記代表点は、前記仮経路と前記地図メッシュの境界線との交点を含むことを特徴とする請求項1に記載の経路案内装置。
【請求項3】
前記代表点は、前記仮経路と行政区域の境界線との交点を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
前記代表点は、前記仮経路上及び該仮経路周辺の所定長さ以上の橋又はトンネルを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置。
【請求項5】
前記第2到達範囲設定手段は、前記第2到達範囲を前記代表点から前記目的地まで進行方向前方に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の経路案内装置。
【請求項6】
所定時間毎に到達する到達距離を表す予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定工程と、
前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索工程と、
前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出工程と、
前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に基づいて、前記代表点抽出工程で抽出した代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定工程と、
前記予測距離範囲情報に基づいて、前記代表点到達時刻設定工程で設定した到達時刻を基準として前記代表点抽出工程で抽出した代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定工程と、
前記第2到達範囲設定工程で設定した第2到達範囲を前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定工程と、
前記合成到達範囲設定工程で設定した合成到達範囲に基づいて、各リンクに対し、到達する時間帯の交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索工程と、
を備えたことを特徴とする経路案内方法。
【請求項7】
コンピュータに、
所定時間毎に到達する到達距離を表す予測距離範囲情報に基づいて、出発時刻を基準として出発地から時刻毎の第1到達範囲を設定する第1到達範囲設定工程と、
前記出発地から目的地までの仮経路を探索する仮経路探索工程と、
前記仮経路上の代表点を抽出する代表点抽出工程と、
前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に基づいて、前記代表点抽出工程で抽出した代表点への到達時刻を設定する代表点到達時刻設定工程と、
前記予測距離範囲情報に基づいて、前記代表点到達時刻設定工程で設定した到達時刻を基準として前記代表点抽出工程で抽出した代表点から時刻毎の第2到達範囲を設定する第2到達範囲設定工程と、
前記第2到達範囲設定工程で設定した第2到達範囲を前記第1到達範囲設定工程で設定した第1到達範囲に上書きして、時刻毎の合成到達範囲を設定する合成到達範囲設定工程と、
前記合成到達範囲設定工程で設定した合成到達範囲に基づいて、各リンクに対し、到達する時間帯の交通情報を取得して、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索工程と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−236836(P2009−236836A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85950(P2008−85950)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】