説明

経路案内装置

【課題】駅や空港等の到着時刻に対する要求レベルが厳しい目的地の場合には、確実に到着可能な時刻を報知することが可能な経路案内装置を提供する。
【解決手段】目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S11:YES〜S13:YES、S15:YES)、CPU41は、各リンクの走行開始時刻に、リンクコストに当該リンクコストの標準偏差の2倍の時間を加算した最大所要時間を加算して、次リンクの走行開始時刻とする。そして、CPU41は、走行終了リンクの走行開始時刻に最大所要時間を加算して最大到着時刻を算出し、当該最大到着時刻と推奨経路を液晶ディスプレイ15に表示すると共に、最大到着時刻を音声案内する(S14〜S17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探索した経路を案内する経路案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、探索した経路を案内する経路案内装置に関して種々提案されている。
例えば、道路交通情報センタ(VICS(登録商標))やプローブ情報などの各種交通情報に基づいて予め作成された統計交通情報を備え、自車の走行による計測情報と該統計交通情報を利用することにより、目的地までの旅行時間を予測し、到着時刻を報知するように構成された経路案内装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−241519号公報(段落(0010)〜(0046)、図1〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した特許文献1に記載された経路案内装置では、予測した目的地までの旅行時間や到着時刻は、実際に走行した所要時間や到着時刻との間に予測誤差が必ず生じる。このため、駅や空港等の到着時刻に対する要求レベルが厳しい目的地の場合、実際に到着する時刻が遅くなると、予定した列車や飛行機に乗り遅れる等という問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、駅や空港等の到着時刻に対する要求レベルが厳しい目的地の場合には、確実に到着可能な時刻を報知することが可能な経路案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る経路案内装置は、地図情報を記憶する地図情報記憶手段(25)と、各リンクに対し、過去の交通情報を統計処理することによって得られた各時間帯の所要時間情報と該統計処理によって得られた標準偏差とを記憶する統計情報記憶手段(27)と、目的地を入力する目的地入力手段(14)と、現在の自車位置から前記目的地までの経路を前記地図情報に基づいて探索する経路探索手段(13)と、前記目的地への到着時刻を算出する到着時刻算出手段(13)と、を備え、前記到着時刻算出手段は、前記目的地が所定施設である場合には、前記統計情報記憶手段に記憶された前記経路の各リンクに対応する前記所要時間情報と前記標準偏差とに基づいて前記到着時刻を算出することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る経路案内装置は、請求項1に記載の経路案内装置(1)において、前記到着時刻算出手段(13)は、前記経路の各リンクに対応する前記所要時間情報と前記標準偏差とに基づいて、各リンク毎の最大所要時間情報を算出する最大所要時間算出手段(13)と、該経路の走行開始リンクから走行終了リンクまで前記最大所要時間算出手段によって算出された前記最大所要時間情報を前記走行開始リンクの走行開始時刻に加算した時間を次リンクの走行開始時刻として各リンクの走行開始時刻を順次決定して、前記走行終了リンクの走行開始時刻に該走行終了リンクの最大所要時間情報を加算して最大到着時刻を算出する最大到着時刻算出手段(13)と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係経路案内装置は、請求項2に記載の経路案内装置(1)において、前記最大所要時間算出手段(13)は、各リンクに対して、前記所要時間情報に前記標準偏差の2倍の値を加算して最大所要時間情報を算出することを特徴とする。
【0008】
更に、請求項4に係る経路案内装置は、請求項2又は請求項3に記載の経路案内装置(1)において、前記到着時刻算出手段(13)は、前記走行開始リンクから前記走行終了リンクまで前記所要時間情報を該走行開始リンクの走行開始時刻に加算した時間を次リンクの走行開始時刻として各リンクの走行開始時刻を順次決定して、該走行終了リンクの走行開始時刻に該走行終了リンクの前記所要時間情報を加算して平均到着時刻を算出する平均到着時刻算出手段(13)と、前記目的地が所定施設である場合には、前記平均到着時刻と前記最大到着時刻とを報知する報知手段(13、15、16)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する請求項1に係る経路案内装置では、目的地が所定施設(例えば、駅、空港、フェリー乗り場等である。)の場合には、統計処理された各時間帯の所要時間情報に、この所要時間情報の標準偏差を加味して目的地への到着時刻を算出して、確実に到着可能な時刻をユーザに報知することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に係る経路案内装置では、統計処理された各時間帯の所要時間情報と標準偏差とに基づいて、各リンク毎に最大所要時間情報を算出し、この最大所要時間情報を走行開始リンクの走行開始時刻に加算した時間を次リンクの走行開始時刻として各リンクの走行開始時刻を順次決定する。このため、目的地の所定施設に到着する到着時刻の要求レベルの厳しさに合わせて、各リンクの走行開始時刻を確実に到着可能な時刻とすることが可能となる。また、走行終了リンクの走行開始時刻に該走行終了リンクの最大所要時間情報を加算して最大到着時刻を算出するため、目的地の所定施設に到着する到着時刻に対する要求レベルの厳しさに合わせて、当該目的地に確実に到着可能な時刻を算出することが可能となる。
【0011】
また、請求項3に係る経路案内装置では、各リンクに対して、統計処理された各時間帯の所要時間情報に標準偏差の2倍の値を加算して最大所要時間情報を算出するため、約84%の確率で目的地に到着可能な時刻を算出することが可能となる。
尚、統計処理された各時間帯の所要時間情報に標準偏差の3倍の値を加算して最大所要時間情報を算出するようにしてもよい。これにより、約99.8%の確率で目的地に到着可能な時刻を算出することが可能となる。
【0012】
更に、請求項4に係る経路案内装置では、目的地が所定施設である場合には、統計処理された各時間帯の所要時間情報だけに基づいて算出された平均到着時刻と、この所要時間情報と標準偏差とに基づいて算出された最大到着時刻とが報知される。このため、ユーザは、平均到着時刻と最大到着時刻との時間差に基づいて、目的地の所定施設に到着する時刻に対する要求レベルに合わせて、走行計画を容易に立てることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る経路案内装置をナビゲーション装置について具体化した一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
[ナビゲーション装置の概略構成]
先ず、本実施例に係るナビゲーション装置の概略構成について図1に基づいて説明する。図1は本実施例に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
図1に示すように、本実施例に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在地検出処理部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーション制御部13と、操作者からの操作を受け付ける操作部14と、操作者に対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内等に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、不図示の道路交通情報センタや地図情報配信センタ等との間で携帯電話網等を介して通信を行う通信装置17とから構成されている。また、ナビゲーション制御部13には自車の走行速度を検出する車速センサ21が接続されている。
【0015】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出処理部11は、GPS31、方位センサ32、距離センサ33、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位、目標物(例えば、交差点)までの距離等を検出することが可能となっている。
【0016】
具体的には、GPS31は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出する。また、方位センサ32は、地磁気センサやジャイロセンサ、或いは、ステアリングホイール(図示せず)の回転部に取り付けられた光学的な回転センサ、回転抵抗センサ、車輪に取り付けられた角度センサ等により構成され、自車方位を検出する。また、距離センサ33は、例えば、自車の車輪(図示せず)の回転速度を測定し、測定した回転速度に基づいて距離を検出するセンサ、加速度を測定し、測定した加速度を2回積分して距離を検出するセンサ等から構成され、自車の移動距離を検出する。
【0017】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記憶された地図情報データベース(地図情報DB)25、交通データベース(交通DB)27及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0018】
また、地図情報DB25には、ナビゲーション装置1の走行案内や経路探索に使用されるナビ地図情報26が格納されている。ここで、ナビ地図情報26には、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されており、例えば、各新設道路を特定するための新設道路情報、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、施設の一種である道路(リンク)に関するリンクデータ、経路を探索するための探索データ、施設の一種である店舗等のPOI(Point of Interest)に関する店舗データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。また、店舗データとしては、各地域のホテル、病院、ガソリンスタンド、駐車場、駅、空港、フェリー乗り場等のPOIに関するデータがPOIを特定するIDとともに記憶されている。
また、地図情報DB25の内容は、不図示の地図情報配信センタから通信装置17を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0019】
ここで、特に地図表示データとしては、約10km×10kmで区画された2次メッシュをベースに4分割(長さ1/2)、16分割(1/4)、64分割(1/8)されたユニットで構成されており、各ユニットのデータ量が略同レベルになるように、各地のユニットが設定されている。最も小さい64分割サイズのユニットは、約1.25km四方の大きさである。また、約10km×10kmで区画された各2次メッシュ(以下、「メッシュ」という。)には、各メッシュを識別するメッシュIDがそれぞれ付されている。
【0020】
また、交通DB27には、各メッシュID毎に生成され、後述の過去の交通情報を統計処理することによって得られた交通データテーブル100(図2参照)が格納されている。また、交通データテーブル100の内容は、不図示の地図情報配信センタから通信装置17を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0021】
また、図1に示すように、ナビゲーション装置1を構成するナビゲーション制御部13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の目的地までの推奨経路の所要時間を算出する所要時間算出処理のプログラム(図3参照)等が記憶されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置や、時間を計測するタイマ45等を備えている。
【0022】
更に、前記ナビゲーション制御部13には、操作部14、液晶ディスプレイ15、スピーカ16、通信装置17の各周辺装置(アクチュエータ)が電気的に接続されている。
【0023】
この操作部14は、走行開始時の現在地を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際や施設に関する情報の検索を行う場合等に操作され、各種のキーや複数の操作スイッチから構成される。そして、ナビゲーション制御部13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。更に、液晶ディスプレイ15の前面部には、タッチパネルが設けられ、画面に表示されたボタンや地図上を押下することによって各種指示コマンドを入力することが可能に構成されている。
【0024】
また、液晶ディスプレイ15には、現在走行中の地図情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの推奨経路、推奨経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0025】
また、スピーカ16は、ナビゲーション制御部13からの指示に基づいて、推奨経路に沿った走行を案内する音声ガイダンス等を出力する。ここで、案内される音声ガイダンスとしては、例えば、「200m先、○○交差点を右方向です。」等がある。
【0026】
また、通信装置17は、地図情報配信センタと通信を行う携帯電話網等による通信手段であり、地図情報配信センタとの間で最もバージョンの新しい更新地図情報等の送受信を行う。また、通信装置17は地図情報配信センタに加えて、道路交通情報センタ等から送信された渋滞情報やサービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を受信する。
【0027】
ここで、交通DB27に格納される過去の交通情報を統計処理することによって得られた交通データテーブル100について図2に基づいて説明する。図2は交通DB27に格納される交通データテーブル100の一例を示す図である。
【0028】
図2に示すように、過去の交通情報を統計処理することによって得られた交通データテーブル100は、例えば、メッシュID毎に生成されると共に、各リンクに付されたリンクIDを表す「リンクID」と、時間帯100A毎の「リンクコスト」及び「標準偏差(σ)」とから構成されている。
【0029】
この時間帯100Aは、15分毎に設定され(例えば「0:00〜0:14」等)、24時間分のデータが記憶されている。また、各「リンクID」に対応する「リンクコスト」は、各時間帯100Aにおいて、そのリンクを通過する際にかかる統計処理して得られた平均旅行時間を示すデータであって、例えば「120(秒)」等になっている。また、「標準偏差(σ)」は、各時間帯100Aにおいて、そのリンクを通過する際にかかる統計処理して得られた平均旅行時間の標準偏差のデータであって、例えば「36秒」等になっている。
【0030】
[所要時間算出処理]
次に、上記のように構成されたナビゲーション装置1のCPU41が実行する処理であって、目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」について図3乃至図6に基づいて説明する。
図3は本実施例に係るナビゲーション装置1のCPU41が実行する目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」を示すメインフローチャートである。図4は図3の「標準偏差による所要時間算出処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。図5は図3の「通常の所要時間算出処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
尚、図3にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーション装置1のナビゲーション制御部13が備えているROM43に記憶されており、CPU41により所定時間毎に(例えば、約10ミリ秒毎乃至100ミリ秒毎である。)実行される。
【0031】
図3に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU41は、タッチパネル、操作スイッチ等の操作部14の入力操作等によって、目的地が設定されたか否かを判定する判定処理を実行する。
そして、目的地が設定されていない場合には(S11:NO)、CPU41は、当該処理を終了する。
【0032】
一方、目的地が設定された場合には(S11:YES)、CPU41は、その目的地の座標等をRAM42に一時格納後、S12の処理に移行する。S12において、CPU41は、現在地検出処理部11の検出結果に基づいて自車の現在位置(以下、「自車位置」という。)を検出してRAM42に記憶する。そして、CPU41は、自車位置からRAM42に記憶された目的地への経路探索をデータ記録部12のナビ地図情報26に基づいて、例えばダイクストラ法等によって行う。そして、CPU41は、自車位置から目的地まで探索した経路を推奨経路としてRAM42に記憶する。
【0033】
続いて、S13において、CPU41は、RAM42から目的地を再度読み出し、当該目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の施設であって、到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設か否か、即ち、到着する時刻に遅れると列車、飛行機やフェリーに乗り遅れるため、到着する時刻の要求の厳しい施設か否かを判定する判定処理を実行する。尚、到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設として、駅、空港、フェリー乗り場等のPOIを特定するIDが予めROM43に記憶されている。
【0034】
そして、RAM42から読み出した目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の施設であって、到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設の場合には(S13:YES)、CPU41は、S14の処理に移行する。S14において、CPU41は、後述の「標準偏差による所要時間算出処理」のサブ処理を実行後、S17の処理に移行する。
【0035】
一方、RAM42から読み出した目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設でない場合には(S13:NO)、CPU41は、S15の処理に移行する。
S15において、CPU41は、この目的地が駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内にある施設か否かを判定する判定処理を実行する。
【0036】
そして、目的地が駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S15:YES)、CPU41は、当該駅、空港、フェリー乗り場等の施設に行く可能性が高いと判断してS14の処理に移行する。S14において、CPU41は、後述の「標準偏差による所要時間算出処理」のサブ処理を実行後、S17の処理に移行する。
【0037】
一方、目的地が駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1kmを超えた距離にある施設の場合には(S15:NO)、CPU41は、当該駅、空港、フェリー乗り場等の施設に行く可能性が低いと判断してS16の処理に移行する。S16において、CPU41は、後述の「通常の所要時間算出処理」のサブ処理(図5参照)を実行後、S17の処理に移行する。
【0038】
S17において、CPU41は、自車位置から目的地までの推奨経路を液晶ディスプレイ15に表示すると共に、後述のようにS14で算出した標準偏差を使用しない通常の所要時間による平均到着時刻と、標準偏差を使用した所要時間による最大到着時刻、又は、後述のようにS16で算出した標準偏差を使用しない通常の所要時間による平均到着時刻をRAM42から読み出し、液晶ディスプレイ15に表示する。また同時に、CPU41は、スピーカ16によってこの平均到着時刻や最大到着時刻の音声案内を行った後、当該処理を終了する。
【0039】
[標準偏差による所要時間算出処理]
次に、CPU41が上記S14において実行する「標準偏差による所要時間算出処理」のサブ処理について図4に基づいて説明する。
図4に示すように、S111において、CPU41は、上記S12で探索した推奨経路の全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出したか否か、即ち、該推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出したか否かを判定する判定処理を実行する。
【0040】
そして、全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出していない場合、即ち、推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出していない場合には(S111:NO)、CPU41は、S112の処理に移行する。
【0041】
S112において、CPU41は、対象リンクが走行開始リンクの場合には、現在の時刻を走行開始時刻とし、対象リンクが走行開始リンクの次のリンク以降の場合には、後述のS114で算出する走行開始時刻を、交通DB27に格納される交通データテーブル100の時間帯100Aとして設定する。そして、CPU41は、対象リンクのリンクIDを交通データテーブル100の「リンクID」として、該当する時間帯100Aにおける対象リンクの「リンクコスト」及び「標準偏差(σ)」の各データを交通データテーブル100から読み出し、対象リンクのリンクコスト及び標準偏差としてRAM42に記憶する。
【0042】
続いて、S113において、CPU41は、RAM42から対象リンクのリンクコスト及び標準偏差を読み出し、このリンクコストに標準偏差の2倍の時間を加算した時間を当該リンクの最大所要時間としてRAM42に記憶する。
そして、S114において、CPU41は、当該対象リンクの走行開始時刻に最大所要時間を加算した時刻を次リンクの走行開始時刻としてRAM42に記憶後、再度S111以降の処理を実行する。
【0043】
一方、上記S111で、全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出した場合、即ち、推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出した場合には(S111:YES)、CPU41は、S115の処理に移行する。
【0044】
S115において、CPU41は、走行終了リンクの走行開始時刻をRAM42から読み出し、この走行開始時刻を交通データテーブル100の時間帯100Aとして設定する。そして、CPU41は、走行終了リンクのリンクIDを交通データテーブル100の「リンクID」として、該当する時間帯100Aにおける走行終了リンクの「リンクコスト」及び「標準偏差(σ)」の各データを交通データテーブル100から読み出し、当該走行終了リンクのリンクコスト及び標準偏差としてRAM42に記憶する。
【0045】
続いて、CPU41は、当該走行終了リンクのリンクコスト及び標準偏差をRAM42から再度読み出し、このリンクコストに標準偏差の2倍の時間を加算した時間を走行終了リンクリンクの最大所要時間としてRAM42に記憶する。その後、CPU41は、当該走行終了リンクの走行開始時刻と最大所要時間とをRAM42から読み出し、この走行開始時刻に最大所要時間を加算した時刻を最大到着時刻としてRAM42に記憶する。
【0046】
そして、S116において、CPU41は、後述の「通常の所要時間算出処理」のサブ処理(図5参照)を実行後、メインフローチャートに戻る。
【0047】
[通常の所要時間算出処理]
次に、CPU41が上記S16及びS116において実行する「通常の所要時間算出処理」のサブ処理について図5に基づいて説明する。
図5に示すように、CPU41は、S211において、上記S111の処理を実行する。
そして、全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出していない場合、即ち、推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出していない場合には(S211:NO)、CPU41は、S212の処理に移行する。
【0048】
S212において、CPU41は、対象リンクが走行開始リンクの場合には、現在の時刻を走行開始時刻とし、対象リンクが走行開始リンクの次のリンク以降の場合には、後述のS213で算出する走行開始時刻を、交通DB27に格納される交通データテーブル100の時間帯100Aとして設定する。そして、CPU41は、対象リンクのリンクIDを交通データテーブル100の「リンクID」として、該当する時間帯100Aにおける対象リンクの「リンクコスト」のデータを交通データテーブル100から読み出し、対象リンクのリンクコストとしてRAM42に記憶する。
【0049】
そして、S213において、CPU41は、RAM42から対象リンクのリンクコストを読み出し、当該対象リンクの走行開始時刻にリンクコストを加算した時刻を次リンクの走行開始時刻としてRAM42に記憶後、再度S211以降の処理を実行する。
一方、上記S211で、全リンクについて各リンクの走行開始時刻を算出した場合、即ち、推奨経路における走行終了リンクの走行開始時刻を算出した場合には(S211:YES)、CPU41は、S214の処理に移行する。
【0050】
S214において、CPU41は、走行終了リンクの走行開始時刻をRAM42から読み出し、この走行開始時刻を交通データテーブル100の時間帯100Aとして設定する。そして、CPU41は、走行終了リンクのリンクIDを交通データテーブル100の「リンクID」として、該当する時間帯100Aにおける走行終了リンクの「リンクコスト」のデータを交通データテーブル100から読み出し、当該走行終了リンクのリンクコストとしてRAM42に記憶する。
【0051】
続いて、CPU41は、当該走行終了リンクのリンクコストと走行開始時刻とをRAM42から読み出し、この走行開始時刻にこのリンクコストを加算した時刻を平均到着時刻としてRAM42に記憶後、メインフローチャートに戻る。
【0052】
[具体的表示例]
ここで、上記S17において、CPU41が上記S14のサブ処理を実行後、推奨経路の平均到着時刻と最大到着時刻をRAM42から読み出し、液晶ディスプレイ15に表示した一例を図6に基づいて説明する。
図6はCPU41がS14のサブ処理を実行後、推奨経路の平均到着時刻と最大到着時刻を液晶ディスプレイ15に表示した一例を示す図である。
【0053】
図6に示すように、CPU41は、液晶ディスプレイ15に表示される道路地図上に推奨経路52を表示する。また、CPU41は、自車位置を示す車両位置マーク51を推奨経路52の左端部に表示する。また、CPU41は、目的地53である○○空港を推奨経路52の右端部に表示する。そして、CPU41は、平均到着時刻61Aである「7時00分」と最大到着時刻61Bである「7時10分」をRAM42から読み出した後、画面の左上側に時計61を表示して、平均到着時刻61Aである「7時00分」を太い実線の長針及び短針で示し、最大到着時刻61Bである「7時10分」を太い破線の長針で識別可能に表示する。また、CPU41は、スピーカ16を介して、「遅くとも7時10分に○○空港に到着可能です。」と音声案内を行う。
【0054】
尚、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設でなく、且つ、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1kmを超えた距離にある施設の場合には(S13:NO〜S15:NO)、CPU41は、液晶ディスプレイ15に推奨経路52を表示すると共に、当該時計61に平均到着時刻61Aだけを太い実線の長針及び短針で示す。また、CPU41は、当該平均到着時刻61Aだけを音声案内する(S16〜S17)。
【0055】
[上記実施例の効果]
従って、本実施例に係るナビゲーション装置1では、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、各リンクの走行開始時刻に、リンクコストに標準偏差の2倍の時間を加算した最大所要時間を加算して、次リンクの走行開始時刻とし、走行終了リンクの走行開始時刻に当該最大所要時間を加算して目的地に到着する時刻とするため、約84%の確率で当該目的地に到着可能な最大到着時刻を算出することが可能となる。
【0056】
また、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、平均到着時刻と最大到着時刻を液晶ディスプレイ15に表示すると共に音声案内するため、ユーザは、この平均到着時刻と最大到着時刻との時間差に基づいて、走行計画を容易に立てることが可能となる。
【0057】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0058】
(A)上記S113において、CPU41は、RAM42から対象リンクのリンクコスト及び標準偏差を読み出し、このリンクコストに標準偏差の3倍の時間を加算した時間を当該リンクの最大所要時間としてRAM42に記憶するようにしてもよい。
これにより、CPU41は、各リンクの走行開始時刻に、リンクコストに標準偏差の3倍の時間を加算した最大所要時間を加算して、次リンクの走行開始時刻とし、走行終了リンクの走行開始時刻に当該最大所要時間を加算して目的地に到着する時刻とするため、約99.8%の確率で当該目的地に到着可能な最大到着時刻を算出することが可能となる。
【0059】
(B)また、上記S14において、S116のサブ処理を実行しないようにしてもよい。これにより、上記S17において、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、推奨経路と最大到着時刻を液晶ディスプレイ15に表示すると共に、この最大到着時刻を音声案内するため、ユーザは、この最大到着時刻に基づいて、走行計画を容易に立てることが可能となる。
【0060】
(C)また、上記S113において、CPU41は、RAM42から対象リンクのリンクコスト及び標準偏差を読み出し、このリンクコストに標準偏差の2倍の時間を加算した時間を当該リンクの最大所要時間としてRAM42に記憶する。それと共に、CPU41は、当該対象リンクが走行開始リンクの次のリンク以降の場合には、走行開始リンクの最大所要時間に当該対象リンクの最大所要時間を加算して「推奨経路の最大所要時間」としてRAM42に記憶するようにしてもよい。
【0061】
そしてまた、上記S212において、CPU41は、対象リンクが走行開始リンクの場合には、現在の時刻を走行開始時刻とし、対象リンクが走行開始リンクの次のリンク以降の場合には、後述のS213で算出する走行開始時刻を、交通DB27に格納される交通データテーブル100の時間帯100Aとして設定する。そして、CPU41は、対象リンクのリンクIDを交通データテーブル100の「リンクID」として、該当する時間帯100Aにおける対象リンクの「リンクコスト」のデータを交通データテーブル100から読み出し、対象リンクのリンクコストとしてRAM42に記憶する。それと共に、CPU41は、RAM42から対象リンクのリンクコストを読み出し、このリンクコストを当該リンクの平均所要時間としてRAM42に記憶する。そして、CPU41は、当該対象リンクが走行開始リンクの次のリンク以降の場合には、走行開始リンクの平均所要時間に当該対象リンクの平均所要時間を加算して「推奨経路の平均所要時間」としてRAM42に記憶するようにしてもよい。
【0062】
そして、上記S17において、CPU41は、自車位置から目的地までの推奨経路を液晶ディスプレイ15に表示する。そして、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、前記S212で算出した標準偏差を使用しない通常の「推奨経路の平均所要時間」と、前記S113で算出した標準偏差を使用した「推奨経路の最大所要時間」とをRAM42から読み出し、液晶ディスプレイ15に表示する。また同時に、CPU41は、スピーカ16によってこの「推奨経路の平均所要時間」と「推奨経路の最大所要時間」との音声案内を行うようにしてもよい。
【0063】
また、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設でない場合で、且つ、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1kmを超えた距離にある施設の場合には(S13:NO〜S15:NO)、CPU41は、前記S212で算出した標準偏差を使用しない通常の「推奨経路の平均所要時間」をRAM42から読み出し、液晶ディスプレイ15に表示する。また同時に、CPU41は、スピーカ16によってこの「推奨経路の平均所要時間」の音声案内を行うようにしてもよい。
【0064】
これにより、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、約84%の確率で当該目的地に到着可能な現在からの所要時間を算出することが可能となる。
【0065】
また、目的地が、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設、又は、駅、空港、フェリー乗り場等の到着する時刻に対する要求レベルが厳しい施設から1km以内の距離にある施設の場合には(S13:YES、S15:YES)、CPU41は、「推奨経路の平均所要時間」と「推奨経路の最大所要時間」とを液晶ディスプレイ15に表示すると共に音声案内するため、ユーザは、この「推奨経路の平均所要時間」と「推奨経路の最大所要時間」との時間差に基づいて、走行計画を容易に立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施例に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】交通DBに格納される交通データテーブルの一例を示す図である。
【図3】ナビゲーション装置のCPUが実行する処理である、目的地までの推奨経路の所要時間を算出する「所要時間算出処理」を示すメインフローチャートである。
【図4】図3の「標準偏差による所要時間算出処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図5】図3の「通常の所要時間算出処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図6】CPUが推奨経路の平均到着時刻と最大到着時刻を液晶ディスプレイに表示した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ナビゲーション装置
11 現在地検出処理部
12 データ記録部
13 ナビゲーション制御部
14 操作部
15 液晶ディスプレイ
25 地図情報DB
27 交通DB
41 CPU
42 RAM
43 ROM
51 車両位置マーク
52 推奨経路
53 目的地
61 時計
61A 平均到着時刻
61B 最大到着時刻
100 交通データテーブル
100A 時間帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
各リンクに対し、過去の交通情報を統計処理することによって得られた各時間帯の所要時間情報と該統計処理によって得られた標準偏差とを記憶する統計情報記憶手段と、
目的地を入力する目的地入力手段と、
現在の自車位置から前記目的地までの経路を前記地図情報に基づいて探索する経路探索手段と、
前記目的地への到着時刻を算出する到着時刻算出手段と、
を備え、
前記到着時刻算出手段は、前記目的地が所定施設である場合には、前記統計情報記憶手段に記憶された前記経路の各リンクに対応する前記所要時間情報と前記標準偏差とに基づいて前記到着時刻を算出することを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記到着時刻算出手段は、
前記経路の各リンクに対応する前記所要時間情報と前記標準偏差とに基づいて、各リンク毎の最大所要時間情報を算出する最大所要時間算出手段と、
該経路の走行開始リンクから走行終了リンクまで前記最大所要時間算出手段によって算出された前記最大所要時間情報を前記走行開始リンクの走行開始時刻に加算した時間を次リンクの走行開始時刻として各リンクの走行開始時刻を順次決定して、前記走行終了リンクの走行開始時刻に該走行終了リンクの最大所要時間情報を加算して最大到着時刻を算出する最大到着時刻算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の経路案内装置。
【請求項3】
前記最大所要時間算出手段は、各リンクに対して、前記所要時間情報に前記標準偏差の2倍の値を加算して最大所要時間情報を算出することを特徴とする請求項2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
前記到着時刻算出手段は、
前記走行開始リンクから前記走行終了リンクまで前記所要時間情報を該走行開始リンクの走行開始時刻に加算した時間を次リンクの走行開始時刻として各リンクの走行開始時刻を順次決定して、該走行終了リンクの走行開始時刻に該走行終了リンクの前記所要時間情報を加算して平均到着時刻を算出する平均到着時刻算出手段と、
前記目的地が所定施設である場合には、前記平均到着時刻と前記最大到着時刻とを報知する報知手段と、
を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−241605(P2008−241605A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85281(P2007−85281)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】