説明

絶縁膜エッチング装置

【課題】基板へのパーティクルの付着を効果的に防止した、優れた性能の絶縁膜エッチング装置を提供する。
【解決手段】プロセスチャンバー1内の基板ホルダー2上に基板9が保持され、エッチング用ガスがガス導入系3により導入される。プラズマ形成手段4に手段によりプラズマが形成され、プラズマ中の活性種やイオンの作用により基板9の表面の絶縁膜のエッチングが行われる。制御部8は、エッチング終了後、クリーニング用ガスをガス導入系3により導入し、プラズマ形成用手段4によりプラズマを形成して、プロセスチャンバー1内の露出面に堆積した膜をプラズマの作用により除去する。基板保持面より下方に設けられた冷却トラップ12は、強制冷却され、堆積作用のあるガス分子を捕集して多くの膜を堆積させる。冷却トラップ12は交換可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、基板の表面の絶縁膜をエッチングする絶縁膜エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対する表面処理は、LSI(大規模集積回路)やLCD(液晶ディスプレイ)のような電子デバイスの製造プロセスにおいて盛んに行われている。このうち、基板の表面の絶縁膜をエッチングするプロセスは、微細回路を形成する際の主要なプロセスの一つとなっている。例えば、表面がシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜で覆われたシリコン基板上にフォトリソグラフィによってレジストパターンを形成し、これをマスクにしてレジストパターンに沿った形状で絶縁膜のエッチングが行われる。そして、エッチングした部分にタングステンやアルミニウム等を埋め込んで微細な配線が形成される。
【0003】
絶縁膜エッチング装置は、プラズマを用いたドライエッチングを行うものが主流となっている。具体的には、プロセスチャンバー内にガスを導入し、高周波放電によりプラズマを形成する。導入されるガスは、CHFのような反応性ガスであり、反応性ガスのプラズマ中で生成される活性種の作用とイオンの作用によりエッチング(反応性イオンエッチング,RIE)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−195830号公報
【特許文献2】特開2000−150487号公報
【特許文献3】特開2001−267297号公報
【特許文献4】特開平11−150100号公報
【特許文献5】特開平8−022980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製品である電子デバイスの高機能化、高集積度化、性能の更なる向上等を背景として、絶縁膜エッチング装置への要求もますます厳しくなってきている。特に、プロセスチャンバー内の雰囲気の清浄度に関する要求は、回路の微細化を背景としてますます厳しくなってきている。この点で、絶縁膜エッチング装置で問題となるのは、エッチングに使用したガスによるプロセスチャンバー内の膜堆積である。以下、この点について、シリコン酸化膜のエッチングを例にして説明する。
【0006】
シリコン酸化膜をエッチングする場合、CHFのようなフッ化炭化水素系ガス(フロンガス)のプラズマを形成して行う。フッ化炭化水素系ガスのプラズマ中で遊離したフッ素は、シリコンと反応して揮発性のSiFを生成する。また、プラズマ中で遊離した水素や炭素は、酸素と反応して水蒸気や炭酸ガスのような揮発物を生成する。このように、シリコン酸化膜を反応によって揮発物に変換することでエッチングが行われる。
しかしながら、フッ化炭化水素系ガスを用いたエッチングでは、未反応ガスや未分解ガスの影響などにより、エッチングの過程でプロセスチャンバー内の露出面に炭素系の薄膜が堆積し易い。膜堆積は、エッチング終了後に残留ガスによって生じる場合もある。尚、堆積膜は、フッ素、炭素、水素等の材料から成る重合物の膜である。
【0007】
このようにプロセスチャンバー1内の露出面に堆積した膜は、内部応力や自重により剥離することがある。堆積膜が剥離すると、ある程度の大きさの微粒子(以下、パーティクル)が放出される。このパーティクルが基板の表面に付着すると、エッチング形状の異常の他、回路の断線や短絡のような重大な欠陥を招く恐れがある。また、剥離した堆積膜が基板ホルダーの基板保持面上に付着すると、次のエッチングの際、基板と基板保持面との接触性を低下させる問題が生ずる。基板と基板保持面との接触性が低下すると、エッチング中の基板の温度が不安定になったり不均一になったりすることがあり、エッチング特性を悪くする恐れもある。
【0008】
特に、最近では、製品の微細化や高機能化を背景として、種々の作用のあるガスを添加して用いることがあり、添加ガスの影響で膜堆積が助長される傾向がある。その一方で、エッチング処理に影響を与えるパーティクルの放出量は極力少なくすることが求められており、ある意味では相反する厳しい要請が絶縁膜エッチング装置に課せられている。
本願の発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、基板へのパーティクルの付着を効果的に防止した優れた性能の絶縁膜エッチング装置を提供する技術的意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、排気系を有するとともに内部でエッチング処理が行われるプロセスチャンバーと、プロセスチャンバー内の所定位置に基板を保持する基板ホルダーと、エッチング作用のあるガスをプロセスチャンバー内に導入するガス導入系と、導入されたガスのプラズマを形成するプラズマ形成手段と、未処理の基板をプロセスチャンバー内に搬入するとともに処理済みの基板をプロセスチャンバーから搬出する搬送系とを備え、プラズマ中で生成される種の作用により基板の表面の絶縁膜をエッチングする絶縁膜エッチング装置であって、前記プロセスチャンバー内であって前記基板ホルダーに保持された基板の表面より下方の位置を占めるようにして、強制冷却される冷却トラップが設けられており、この冷却トラップは、堆積作用のあるガス分子を捕集することで他の場所に比して多くの膜を堆積させるものであり、交換可能に取り付けられており、前記基板ホルダーは上面において前記基板を保持するものであり、前記冷却トラップは、前記基板ホルダーの側面に取り付けられており、前記プラズマ形成手段は、前記基板ホルダーに対向するようにして設けられた対向電極と、対向電極に高周波電圧を印加するプラズマ形成用高周波電源とから成っており、さらに、前記基板ホルダーには、前記基板ホルダーに高周波電圧を印加することで形成される自己バイアス電圧によりプラズマ中からイオンを引き出して入射させるバイアス用電源が接続されているとともに、前記基板ホルダーとバイアス用電源との間又は対向電極とプラズマ形成用高周波電源との間には可変キャパシタと、この可変可変キャパシタを制御する制御部とが設けられており、この制御部は、前記基板ホルダーと前記対向電極との間の放電空間のうち周辺部におけるプラズマ密度が前記エッチング処理の際に比べて高くなるよう可変キャパシタを制御するものであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、堆積作用のあるガス分子を冷却トラップが捕集するので、問題となる箇所への膜の堆積量が相対的に少なくなる。
また、上記効果に加え、放電空間のうち周辺部におけるプラズマ密度がエッチング処理の際に比べて高くなるので、基板ホルダーの基板保持面の外側の部分の膜が効率良く除去される。このため、クリーニングが短時間に終了し、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の実施形態の絶縁膜エッチング装置の主要部の構成を示した正面断面概略図である。
【図2】図1に示す装置の全体を概略的に示した平面図である。
【図3】制御部8が備えたシーケンス制御プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図4】プラズマ密度の分布の調整について確認した実験の結果について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明の実施の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態の絶縁膜エッチング装置の主要部の構成を示した正面断面概略図である。図1に示す装置は、排気系11を備えて内部でエッチング処理が行われるプロセスチャンバー1と、プロセスチャンバー1内の所定位置に基板9を保持する基板ホルダー2と、プロセスチャンバー1内にエッチング作用のあるガスを導入するガス導入系3と、導入されたガスのプラズマを形成するプラズマ形成手段4と、未処理の基板9をプロセスチャンバー1内に搬入するとともに処理済みの基板9をプロセスチャンバー1から搬出する搬送系とを備えている。
【0013】
プロセスチャンバー1は、気密な真空容器である。プロセスチャンバー1は、ステンレス等の金属で形成されており、電気的には接地されている。排気系11は、ドライポンプ等の真空ポンプ111及び排気速度調整器112を備えており、プロセスチャンバー1内を10−3Pa〜10Pa程度の真空圧力に維持することが可能になっている。
基板ホルダー2は、主ホルダー部21と、主ホルダー部21に接して設けられた基板保持ブロック22とから構成されている。主ホルダー部21は、アルミニウム又はステンレス等の金属で形成されている。基板保持ブロック22は、アルミナ等の誘電体で形成されており、その上面が基板保持面になっている。
基板ホルダー2には、基板9を静電気によって吸着させる基板吸着機構28が設けられている。基板吸着機構28は、基板保持ブロック22の内部に設けられた基板吸着電極282と、基板吸着電極282に所定の負の直流電圧を印加する基板吸着電源281とから構成されている。
基板ホルダー2には、内部を貫き基板保持ブロック22に通じるように絶縁管284が設けられている。絶縁管284の内部には、導入部材283が挿通されており、一端が基板吸着電極282に接続されている。導入部材283の他端は、基板吸着電源281に接続されている。尚、基板吸着電極282が無く、主ホルダー21全体が静電吸着電極として用いられる場合もある。
【0014】
基板保持ブロック22は、全体としては凸状の断面形状となっており、周状に段差が形成されている。基板保持面は、突出部分の表面である。基板保持ブロック22の周辺部分の段差に載るようにして補正リング25が設けられている。補正リング25は、単結晶シリコン等の基板9と同じ材料で形成されている。
エッチングの際のエッチング用ガスの消費と反応生成物の発生については、基板9の外側部分は、基板9の中央部分とは異なる。このため、プラズマの成分も、基板9の中央部分を臨む領域と、基板9の外側部分を臨む領域では異なる。この影響で、基板9の表面のうち周辺部ではエッチング特性が変化してしまうことがある。このような周辺部におけるエッチング特性のバラツキを補正する目的で、補正リング25が設けられている。
また、補正リング25は、基板9と同様にホルダー冷却機構27により冷却され、基板9と同じ温度になるよう温度制御される。この結果、補正リング25は、基板9の端面からの熱放散に見合うだけの熱を基板9に与えることになり、基板9の周辺部の温度低下を抑制する。温度にバラツキがあれば、反応生成物の発生等にもバラツキが生じ、同様にエッチング特性が不均一になるが、補正リング25によりこれも防止されている。
【0015】
尚、基板ホルダー2は、基板保持面と基板9との間の隙間に熱伝達用ガスを導入する不図示の熱伝達用ガス導入系を備えている。熱伝達用ガスとしては、通常、ヘリウムが使用される。
基板ホルダー2は、絶縁ブロック26を介してプロセスチャンバー1に取り付けされている。絶縁ブロック26は、アルミナ等の絶縁材で形成されており、主ホルダー部21とプロセスチャンバー1とを絶縁するとともに、主ホルダー部21をプラズマから保護するようになっている。尚、プロセスチャンバー1内に真空リークが生じないようにするため、基板ホルダー2と絶縁ブロック26との間及びプロセスチャンバー1と絶縁ブロック26との間に不図示のOリング等の封止部材が設けられている。
【0016】
また、基板ホルダー2には、冷却機構27が設けられている。この冷却機構(以下、ホルダー冷却機構)27は、主ホルダー部21内に設けられた空洞に冷媒を流通させる機構となっている。ホルダー冷却機構27は、主ホルダー21内の空洞に冷媒を供給する冷媒供給管271と、空洞から冷媒を排出する冷媒排出管272と、冷媒の供給及び排出のためのポンプ又はサーキュレータ273等から構成されている。冷媒としては、例えば20〜80℃程度の3M社製のフロリナート(商品名)が使用され、エッチング処理中に基板ホルダー2を全体に同程度の温度に冷却するよう構成されている。これにより、基板9は、エッチング中、70〜130℃程度に冷却される。
【0017】
ガス導入系3が導入するエッチング作用のあるガス(以下、エッチング用ガス)は、C、CF又はCHFを等のフッ化炭化水素系ガスである。また、アルゴンや酸素等が使用されることもある。ガス導入系3は、エッチング用ガスを溜めた不図示のガスボンベと、ガスボンベとプロセスチャンバー1とを繋ぐ配管31と、配管31上に設けられたバルブ32や流量調整器33等から構成されている。
【0018】
プラズマ形成手段4は、導入されたエッチング用ガスに高周波放電を生じさせてプラズマを形成するようになっている。プラズマ形成手段4は、基板ホルダー2に対向するようにして設けられた対向電極41と、対向電極41に高周波電圧を印加するプラズマ形成用高周波電源42とから主に構成されている。
対向電極41と基板ホルダー2とは、いわゆる平行平板電極を構成するものである。対向電極41と基板ホルダー2との間の放電空間は、プラズマ形成用高周波電源42による高周波回路を容量的に結合するものである。つまり、プラズマ形成手段4は、容量結合性プラズマを形成するものである。
【0019】
対向電極41は、絶縁ブロック44を介してプロセスチャンバー1の上部器壁に気密に嵌め込まれている。対向電極41は、ガス導入系3によるガスの導入経路にも兼用されている。即ち、図1に示すように、対向電極41の前面には、前面板411が固定されている。前面板411は、中空の断面形状となっており、基板ホルダー2に対向する面には、多数のガス吹き出し孔が形成されている。ガス導入系3は、前面板411内にガスを一旦溜めた後、各吹き出し孔から吹き出させるようになっている。
プラズマ形成用高周波電源42は、周波数10MHz〜600MHz程度、出力0〜5000W程度のものが使用されている。対向電極41とプラズマ形成用高周波電源42との間には、整合器421が設けられている。
【0020】
また、対向電極41にも、冷却機構43が設けられている。この冷却機構(以下、電極冷却機構)43は、対向電極41内に設けられた空洞に冷媒を流通させる機構となっている。電極冷却機構43は、対向電極41内の空洞に冷媒を供給する冷媒供給管431と、空洞から冷媒を排出する冷媒排出管432と、冷媒の供給及び排出のためのポンプ又はサーキュレータ433等から構成されている。冷媒としては、同様に20〜80度程度のフロリナートが使用され、エッチング処理中に対向電極41は90〜150度程度に冷却される。
【0021】
また、本実施形態では、基板ホルダー2に高周波電圧を印加することで形成される自己バイアス電圧によりプラズマ中からイオンを引き出して基板の表面に入射させるバイアス用電源6が接続されている。バイアス用電源6は、プラズマ形成用高周波電源42とは別の高周波電源である。バイアス用電源6は、周波数400kHz〜13.56MHz、出力0〜5000W程度である。また、基板ホルダー2とバイアス用電源6との間には可変キャパシタ61が設けられている。尚、バイアス用電源6と基板ホルダー2との間には不図示の整合器が設けられており、可変キャパシタ61は整合器の一部の場合もある。
【0022】
プロセスチャンバー1内にプラズマが形成されている状態で、キャパシタンスを介して基板9に高周波電圧を印加すると、プラズマと高周波電界の相互作用により、基板9の表面の電位は、高周波に負の直流電圧を重畳した変化となる。この負の直流分の電圧が自己バイアス電圧である。自己バイアス電圧により、プラズマから基板9に向かう電界が形成され、この電界によりプラズマ中のイオンが引き出されて基板9に効率よく入射する。
【0023】
図2は、図1に示す装置の全体を概略的に示した平面図である。図2に示すように、この装置では、中央に搬送チャンバー50が設けられ、その周囲にプロセスチャンバー1やロードロックチャンバー7が設けられている。各チャンバーの境界部分には、ゲートバルブ10が設けられている。尚、図2には複数のプロセスチャンバー1が示されているが、同様のエッチング処理を行うものである場合もあるし、エッチング処理の前工程又は後工程の処理を行うものである場合もある。
【0024】
搬送系としては、本実施形態では、多関節アーム型のロボット51が使用されている。ロボット(以下、搬送ロボット)51は、アームの先端に基板9を保持し、アームの伸縮運動、垂直な軸の周りの回転運動、アームの昇降運動を行って基板9を任意の位置に搬送するようになっている。
搬送ロボット51は、中央の搬送チャンバー50内に設けられている。未処理の基板9は、大気側からロードロックチャンバー7に搬入される。搬送ロボット51は、ロードロックチャンバー7から基板9を取り出し、プロセスチャンバー1内に搬入し、基板ホルダー2上に載置する。エッチング処理後、搬送ロボット51は、基板9を基板ホルダー2から取り去り、ロードロックチャンバー7に戻すようになっている。
尚、ロードロックチャンバー7の外側(大気側)には、オートローダ52が設けられている。オートローダ52は、大気側に配置されたカセット53から未処理の基板9をロードロックチャンバー7に搬入するとともに、処理済みの基板9をロードロックチャンバー7から大気側のカセット53に搬出する。
【0025】
また、図1に示すように、絶縁膜エッチング装置は、各部を制御する制御部8を備えている。制御部8は、排気系11、ガス導入系3、基板吸着機構28、プラズマ形成用高周波電源42、バイアス用電源6、ホルダー冷却機構27、搬送系等の動作を制御する。
本実施形態の装置の大きな特徴点の一つは、エッチング処理の際にプロセスチャンバー1内の露出面に堆積した膜(以下、堆積膜)を除去するクリーニングが行えるようになっている点である。以下、この点について詳説する。
【0026】
まず、ガス導入系3は、前述したエッチング用ガスに加え、クリーニング作用のあるガス(以下、クリーニング用ガス)を導入することが可能となっている。クリーニング用ガスとしては、本実施形態では酸素が採用されている。ガス導入系3は、制御部8による制御に従いバルブ32を開閉して、エッチング用ガスとクリーニング用ガスのどちらかを導入するようになっている。
【0027】
クリーニングは、導入された酸素のプラズマを形成することで行われる。酸素プラズマの形成は、エッチングの際と同様、高周波放電により行われる。本実施形態では、プラズマ形成用高周波電源42がクリーニングにも兼用されている。プラズマ形成用高周波電源42により酸素プラズマが形成されると、酸素イオンや酸素活性種がプラズマ中で盛んに生成される。プロセスチャンバー1内の露出面の堆積物は、これらのイオンや活性種の到達により除去される。
【0028】
具体的に説明すると、本実施形態では、前述したのと同様に、シリコン酸化膜をエッチングすることが想定されており、エッチング用ガスはフッ化炭化水素系(フロン系)ガスである。従って、堆積膜は、炭素、炭化水素等より成る。プラズマ中の酸素イオンや酸素活性種は、こられの材料と反応して炭酸ガスや水蒸気のような揮発物を生成する。揮発物は、排気系11によってプロセスチャンバー1外に排出される。
【0029】
また、制御部8は、クリーニングのための装置各部の最適制御を含む制御を行うシーケンス制御プログラムを備えている。図3は、制御部8が備えたシーケンス制御プログラムの概略を示すフローチャートである。以下、本装置の動作の説明も兼ねて、制御部8が備えたシーケンス制御プログラムについて図3を使用して説明する。
【0030】
装置の稼働が開始されると、シーケンス制御プログラムは、各チャンバーをそれぞれの排気系によって排気させ、所定の真空圧力になっているか確認する。次に、搬送系を動作させて、一枚目の基板9をプロセスチャンバー1内に搬入して基板ホルダー2上に載置する。制御部8は、静電吸着機構28を動作させて基板9を基板ホルダー2上に静電吸着するとともに、ガス導入系3を動作させてエッチング用ガスを所定の流量で導入する。プロセスチャンバー1内の圧力及びエッチング用ガスの流量が所定の値になっているのを確認した後、プラズマ形成用高周波電源42を動作させてプラズマを形成するとともに、バイアス用電源6を動作させる。これにより、プラズマ中のイオンや活性種の作用により基板9の表面の絶縁膜がエッチングされる。尚、ホルダー冷却機構27及び電極冷却機構43は、装置の稼働中、基本的には常時動作しており、基板ホルダー2及び対向電極41の冷却が行われている。
【0031】
エッチングの開始後、シーケンス制御プログラムは、タイマーをスタートさせ、タイマーのカウントが所定の値に達すると、バイアス用電源6、静電吸着機構28及びプラズマ形成用高周波電源42の動作をこの順に止める。そして、ガス導入系3によるエッチング用ガスの導入も止め、排気系11によってプロセスチャンバー1内を再度排気する。その後、搬送系を制御して基板9をプロセスチャンバー1から取り出し、ロードロックチャンバー7に戻す。
【0032】
シーケンス制御プログラムは、次に、クリーニングのための制御に移る。具体的には、排気系11を動作させてプロセスチャンバー1内を再度排気する。不図示の真空計により所定の圧力まで排気されたことを確認した後、ガス導入系3に信号を送ってバルブ32を切り替え、酸素ガスを所定の流量で導入させる。酸素ガスの導入量及びプロセスチャンバー1内の圧力が所定の値に維持されていることを確認した後、シーケンス制御プログラムは、プラズマ形成用高周波電源42を動作させ、プラズマを形成する。この結果、前述したように、酸素プラズマの作用により堆積膜が除去される。シーケンス制御プログラムは、プラズマ形成用高周波電源42の動作とほぼ同時に、ホルダー冷却機構27及び電極冷却機構43の動作を止める。即ち、冷媒の流通を停止させる。
【0033】
シーケンス制御プログラムは、クリーニングの開始とともにタイマーのカウントをスタートさせ、タイマーのカウントが所定の値に達したら、プラズマ形成用高周波電源42の動作を停止させる。同時に、ガス導入系3の動作を停止させる。また、ホルダー冷却機構27及び電極冷却機構43の動作を再開させる。
次に、シーケンス制御プログラムは、次の基板9を処理する準備を行う。即ち、排気系11を動作させてプロセスチャンバー1内を再度排気し、所定の圧力まで排気されているのを確認した後、搬送系を動作させて次の基板9をプロセスチャンバー1内に搬入する。以降は、前述したのと同様のシーケンスでエッチングを行う。そして、処理終了後、処理枚数カウンタを1を加えて更新する。
【0034】
このようにして、毎回の処理のたびごとにクリーニングを行いながら、枚葉処理にて基板9のエッチングを行う。本実施形態では、カセット53には25枚の基板9が収容されており、25枚の基板9のエッチングが終了すると、1ロットの処理が終了したことになる。本実施形態では、次のロットの処理に移る前にも、クリーニングを行うようになっている。即ち、図3には図示が省略されているが、シーケンス制御プログラムは、処理枚数カウンタが25に達したら、次のロットの最初の基板9の搬入の前に、もう一度クリーニングを行う。
【0035】
また、図3では示されていないが、シーケンス制御プログラムは、装置の稼働を開始した後、最初のロットの処理を始める前にもクリーニングを行うようになっている。即ち、本実施形態では、各基板9の処理の合間、及び、各ロットの処理の合間にクリーニングを行うようになっている。
制御部8は、具体的には、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えたマイクロコンピュータである。上述したシーケンス制御プログラムは、ハードディスクにインストールされており、装置の稼働時には、ハードディスクから読み出されてメモりに記憶され、CPUで実行されるようになっている。
【0036】
本実施形態の絶縁膜エッチング装置では、堆積膜がクリーニングによって除去されるので、堆積膜の剥離によるパーティクル発生が抑制される。このため、パーティクルが基板9の表面に付着することによる回路欠陥等の異常の発生が効果的に防止される。また、パーティクルが基板保持面に付着することで次のエッチングの際に基板9の温度が不均一になったり不安定になったりすることがない。特に、基板と基板保持面との間にヘリウムのような熱伝達用ガスを導入する構成では、熱伝達用ガスが界面に閉じ込められる必要があるが、パーティクルが付着するとこの閉じ込めがエラーになる恐れがある。本実施形態では、このような熱伝達用ガスの閉じ込めエラーも防止される。
ちなみに、プラズマ形成用高周波電源42を60MHz,1500Wで動作させ、クリーニング用ガスとして酸素ガスを100sccmの流量で導入し、圧力5Paとしてクリーニングを行うと、基板9に付着する粒径0.2μm以上のパーティクルの数は、20個未満に安定して抑えられる。
【0037】
本実施形態では、基板9のエッチングのたびにクリーニングが行われるので、上述した効果が高くなっている。また、ロット毎にもクリーニングが行われるので、上記効果はさらに高くなっている。つまり、基板9のエッチングのたびに行われるクリーニングの際に堆積膜が完全には除去しきれない場合、処理枚数が増えるにつれて残留する堆積膜が多くなる。そこで、1ロットの処理が終了したタイミングで付加的なクリーニングを行い、残留した堆積膜を完全に除去するようにする。
尚、一回のエッチングの際に堆積する堆積膜の量がそれほど多くない場合、クリーニングの頻度を上述したものより少なくすることはあり得る。例えば、数回のエッチングのたびにクリーニングを行ったり、1ロット毎のクリーニングのみとしたりである。
【0038】
装置がある程度の長時間稼働した後、プロセスチャンバー1内をウェットクリーニングが行われる場合がある。この場合でも、上述したようなドライクリーニングを行っておくと、ウェットクリーニングに要する全体の時間は飛躍的に短くできる。一例を示せば、200時間の稼働時間の後ウェットクリーニングを行うような装置でも、上述した条件でクリーニングを行っておくと、ウェットクリーニングに要する全体の時間は、3時間未満となり、装置の稼働効率が大きく向上する。
【0039】
上述したシーケンス制御プログラムの構成で重要な点の一つは、エッチングの際にはホルダー冷却機構27及び電極冷却機構43を動作させているが、クリーニング中は動作させない点である。この点は、クリーニングの効率を向上させてクリーニングを短時間に終了させる技術的意義を有する。
エッチング中に基板ホルダー2を冷却する点は、主に、プラズマからの熱によって基板9が限度以上に加熱されないようにするためである。対向電極41についても、熱的損傷を受けないよう加熱する。一方、クリーニングの際には、基板ホルダー2上には基板9は無く、クリーニングの所要時間もエッチングに比較して短い。そして、クリーニングは、酸素イオンや酸素活性種との反応によるので、温度が高いほど効果が上がる。
【0040】
そこで、本実施形態では、エッチングの際よりも基板ホルダー2や対向電極41の温度が高くなるよう、ホルダー冷却機構27や電極冷却機構43の動作をクリーニング中は停止させている。基板ホルダー2の補正リング25の表面や対向電極41の対向面(下面)には、膜が多く堆積しているが、これらの膜は、高温と酸素イオン・酸素活性種に晒され、迅速に除去される。尚、ホルダー冷却機構27や電極冷却機構43をクリーニング中に完全に停止させる場合の他、エッチングの際に比べて能力を落として動作させる場合もある。能力を落とすとは、冷媒の温度を上げたり、冷媒の流通量を減らしたりである。
【0041】
また、上記シーケンス制御プログラムの構成でもう一つ重要な点は、クリーニング中は、バイアス用電源6を動作させない点である。この点は、クリーニング中に基板ホルダー2に過剰にイオンが入射するのを防止することで基板ホルダー2を保護する技術的意義がある。
前述したように、バイアス用電源6は、プラズマからイオンを引き出して基板9に入射させることでエッチングの効率を高める作用を有する。しかしながら、クリーニング中は基板9が無いので、イオンを過剰に引き出してしまうと、基板ホルダー2の基板保持面がイオン入射によって損傷を受ける場合がある。そこで、クリーニング中はバイアス用電源6を動作させないようにしている。
【0042】
但し、基板保持面以外には膜が堆積しているので、ある程度バイアス用電源6を動作させるようにする場合もある。この場合でも、基板ホルダー2の表面に生ずる自己バイアス電圧は、基板保持面の損傷が無い程度にエッチングの場合より小さくなるようにする。どの程度の自己バイアス電圧であれば基板保持面の損傷が無いかは、圧力にも依存するので、一概に言えないが、クリーニング時の圧力として通常考えられる1〜100Paの範囲では、自己バイアス電圧は0〜100V程度にしておけばよい。
【0043】
また、本実施形態の装置は、上述したクリーニングを行いつつも、生産性の低下が抑えられるよう、特別の工夫を凝らしている。以下、この点について説明する。
生産性低下を抑制する技術手段として、本実施形態の装置は、堆積膜を積極的に堆積させる冷却トラップ12を備えている。冷却トラップ12は、基板9の表面よりも下方の位置に設けられている。具体的には、図1に示すように、冷却トラップ12は、基板ホルダー2の側面に設けられている。
【0044】
また、冷却トラップ12を冷却する部材として、装置は、冷媒ブロック121を有している。冷媒ブロック121は、内部に冷媒が流通することで直接的に冷却される部材である。冷媒ブロック121は、基板ホルダー2の下端部分を取り囲むリング状の部材である。そして、冷媒ブロック121内の空洞に冷媒を供給する冷媒供給管122と、空洞から冷媒を排出する冷媒排出管123と、冷媒の供給及び排出のためのポンプ又はサーキュレータ124が設けられている。尚、排出される冷媒を所定温度まで冷却して供給するための不図示の温調部が設けられている。
【0045】
冷却トラップ12は、基板ホルダー2を取り囲む形状の筒状である。冷却トラップ12は、図1に示すように、下端部分にフランジ部を有している。冷却トラップ12は、フランジ部の部分が冷媒ブロック121にネジ止めされることで冷媒ブロック121に対して熱接触性良く固定されている。尚、両者の熱接触性をさらに向上させるよう、不図示の薄いシート状の部材(例えばカーボンシート)が界面に挟み込まれている。冷却トラップ12や冷媒ブロック121の表面は完全な平坦面ではなく微小な凹凸がある。従って、両者の界面には、微小な空間が形成される。この空間は、真空圧力であるので、熱伝導性が良くない。シート状の部材はこの空間を埋めて熱伝達性を向上させる。
【0046】
冷媒としては例えばフロリナート又はガルデンが使用され、供給される冷媒の温度は20〜80℃程度である。これにより、冷却トラップ12は、エッチング中に40〜100℃程度に冷却される。尚、冷却トラップ12の強制冷却は、エッチング中に行われることが必須であるが、装置の稼働中に常時強制冷却するようにしても良い。
【0047】
エッチング中の膜の堆積は、プロセスチャンバー1内で温度の低い所の露出面に生じ易い。これは、堆積作用をもつ未反応・未分解のエッチング用ガスの分子が、温度の低い所でエネルギーを奪われて露出面に捕らえられる結果である。温度の高い所では、堆積作用のあるガス分子は、露出面に達しても高いエネルギーを維持するため露出面から離れて再びプロセスチャンバー1内を浮遊する。
本実施形態の装置によれば、堆積作用のあるガス分子は、冷却トラップ12に多く捕集されて膜に成長する。このため、プロセスチャンバー1内の他の箇所への膜堆積は相対的に少なくなる。従って、冷却トラップ12が無い場合に比べ、1回のエッチング処理の際に堆積する膜(エッチング後の残留ガスによる堆積も含む)の量も少なくなる。このことは、クリーニングの頻度が少なくて済むことを意味している。つまり、冷却トラップ12を設けた本実施形態によれば、クリーニングを行うことによってパーティクルの少ない良質なエッチング処理を可能にしつつも、クリーニングの頻度が多くなることによる生産性の低下を効果的に抑制する技術的意義がある。
【0048】
冷却トラップ12の表面には、捕集したガス分子により薄膜が堆積して成長する。このため、ある程度の回数のエッチング処理に使用された後、冷却トラップ12は交換される。プロセスチャンバー1は、不図示の分割部で分割可能となっている。冷却トラップ12を交換する場合、プロセスチャンバー1内をベントして大気圧に戻した後、プロセスチャンバー1を分割し、冷却トラップ12を冷媒ブロック121から取り外す。そして、新しい又は表面の堆積膜が除去された冷却トラップ12を取り付ける。
【0049】
本実施形態では、冷却トラップ12内に直接冷媒を流通させて冷却するのではなく、冷媒ブロック121内に冷媒を流通させ、冷媒ブロック121に対して冷却トラップ12を着脱自在に取り付けている。冷却トラップ12に直接冷媒を流通させる構成であると、冷却トラップ12の交換の際には冷媒を流通を止めて冷媒を冷却トラップ12から抜き取る作用が必要になるが、本実施形態ではこのような面倒はない。
【0050】
また、冷却トラップ12の表面は、図1中に拡大して示すように、微小な凹凸が形成されている。この凹凸は、堆積膜の剥離を防止するものである。平坦な表面であると堆積膜は剥離し易いが、凹凸が設けられていると、凹凸に食い込んで捉えられるため、剥離が防止される。
このような凹凸は、例えば加熱・融解させたアルミナを噴射するアルミナ熔射により形成される。また、アルミニウムの表面にサンドブラスト法により凹凸を形成した後、表面をアルマイト処理する場合もある。
【0051】
いずれにしても、冷却トラップ12の表面は酸化物又は絶縁物より成っていることが好ましい。これは、絶縁膜エッチングに使用されるガスの種類との関係から、堆積膜は有機系の場合が多いからである。有機系の膜の場合、アルミニウムやステンレスのよりも酸化物や絶縁物の方が親和性が高く、剥離が少ないからである。従って、冷却トラップ12の表面にフッ素樹脂製のコーティングが施される場合もある。尚、冷却トラップ12の本体や冷媒ブロック121は、熱伝導性を考慮し、アルミニウム、ステンレス又は銅のような金属製である。
【0052】
尚、冷却トラップ12が基板9の表面よりも下方の位置に設けられている点は、冷却トラップ12から万が一パーティクルが放出された場合の問題を考慮した
ものである。冷却トラップ12は、上述したように、堆積膜の剥離が少なくなっているが、それでも剥離する可能性はゼロではない。もし堆積膜が剥離した場合、冷却トラップ12が基板9の表面よりも高い位置にあると、落下の際に基板9の表面に付着する可能性が高い。また、排気系11による排気経路の点を考慮すると、冷却トラップ12は、プロセスチャンバー1の器壁に設けられた排気口に対して、基板9の表面によりも近い位置に設けられることが好ましい。これは、もし堆積膜が剥離したとしても、パーティクルが基板9の表面に到達せずに排気系11によって排気される可能性を高くするためである。図1に示すように、本実施形態の装置は、この構成も満足している。
【0053】
また、本実施形態の装置は、クリーニングの効果をより高くするため、プラズマの形成の仕方について特別の工夫を凝らしている。以下、この点について説明する。
前述したように、堆積膜が問題となるのは、剥離によりパーティクルを生じ、それが基板9の表面に付着するためである。従って、基板ホルダー2に保持される基板9に近い場所に堆積する堆積膜ほど、問題を生じやすい。本実施形態の構成では、基板ホルダー2の基板保持面を取り囲む補正リング25及びその付近に堆積する膜がこれに当たる。そして、クリーニングは、プラズマ中で生成される酸素イオンや酸素活性種の作用による。このようなことから、プラズマ密度は、基板ホルダー2の周辺部分を臨む空間で高くしておくことが好ましいことになる。
【0054】
発明者の研究によると、本実施形態のような平行平板型の容量結合型高周波プラズマにおいて、電源と電極との間に設けた可変キャパシタのキャパシタンスの大きさを調整すると、電極(対向電極41及び基板ホルダー2)に平行な方向でのプラズマ密度の分布を調整できることが解っている。
【0055】
図4は、この点を確認した実験の結果について示した図である。図4に示す実験は、以下の条件により行われた。尚、バイアス用電源6を動作させているが、自己バイアス電圧はエッチングの際よりも小さいのは、前述した通りである。尚、「sccm」は、0度1気圧に換算した気体の流量(standard cubic centimeter par minute)である。
プラズマ形成用高周波電源42:周波数60MHz,出力1800W
バイアス用電源6:周波数1.6MHz,出力1800W
プロセスチャンバー1内の圧力:3.3Pa
導入されたガス:酸素
ガス流量:100sccm
【0056】
図4の横軸は、放電空間における電極に平行な方向での位置、縦軸はプラズマ密度(電子又はイオンの数密度)である。図4中、●でプロットされたデータは、可変キャパシタ61におけるキャパシタンスをゼロにした場合、■でプロットされたデータは、55pF程度にした場合である。尚、可変キャパシタ61のキャパシタンスがゼロの場合でも、浮遊容量や基板保持ブロック22の静電容量等があるため、基板9とアースの間にはある程度のキャパシタンスが存在している。
図4に示すように、可変キャパシタ61のキャパシタンスがゼロの場合に比べ、キャパシタンスを50〜60pF程度にすると、周辺部分でのプラズマ密度の突出が確認される。
【0057】
本実施形態では、このような点を考慮し、バイアス用電源6と基板ホルダー2との間に可変キャパシタ61を設け、所望のプラズマ密度分布になるようキャパシタンスの調整を可能としている。どの程度のキャパシタンスにすると周辺部におけるプラズマ密度の突出があるかは、圧力、プラズマ形成用高周波電源42の周波数や出力等にもよる。従って、最適なクリーニング条件下においてプラズマ密度の突出が観察されるキャパシタンスを予め実験的に調べておく。そして、そのキャパシタンスになるようクリーニングの際に制御部8に制御を行わせる。つまり、エッチングとクリーニングとのそれぞれについて最適なキャパシタンスになるよう制御部8は個別に可変キャパシタ61を制御する。尚、プラズマ形成用高周波電源42と対向電極41との間に可変キャパシタを設け、これを制御するようにしても良い。
【0058】
尚、上述した条件において、55pFのキャパシタンスは、実は、基板ホルダー2と下方のアース部との間でプラズマ形成用高周波電源42の周波数の高周波が共振するためのものとして採用されている。但し、この共振が達成されることは、上述した周辺部のプラズマ密度の突出にとって必須の条件という訳ではない。
【0059】
上述した本実施形態の絶縁膜エッチング装置において、クリーニング中に基板ホルダー2の基板保持面を保護するため、基板9と同様の形状寸法の被覆部材を基板保持面に配置するようにしても良い。被覆部材は、エッチング中は、ロードロックチャンバー7等に待機させておき、クリーニングの際に搬送系によって搬送して基板9と同様に基板保持面に配置する。このようにすると、基板保持面は保護されるので、エッチング時と同程度の自己バイアス電圧を生じさせてイオン入射を多くさせても問題はなくなる。被覆部材は、汚染物質を放出することがないよう、酸素プラズマによってエッチングされない材料か、もしくはシリコンやカーボンのようなエッチングされても問題とならない材料で形成される。
【0060】
本願発明の絶縁膜エッチング装置でエッチングされる絶縁膜は、上述したシリコン酸化膜やシリコン窒化膜には限られない。また、クリーニング用ガスとしては、酸素の他、N、H、NH、HO、CF、CHF等が使用されることもある。
【符号の説明】
【0061】
1 プロセスチャンバー
11 排気系
12 冷却トラップ
2 基板ホルダー
25 補正リング
27 ホルダー冷却機構
28 静電吸着機構
3 ガス導入系
32 バルブ
4 プラズマ形成手段
41 対向電極
42 プラズマ形成用高周波電源
43 電極冷却機構
51 搬送ロボット
6 バイアス用電源
61 可変キャパシタ
7 ロードロックチャンバー
8 制御部
9 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系を有するとともに内部でエッチング処理が行われるプロセスチャンバーと、プロセスチャンバー内の所定位置に基板を保持する基板ホルダーと、エッチング作用のあるガスをプロセスチャンバー内に導入するガス導入系と、導入されたガスのプラズマを形成するプラズマ形成手段と、未処理の基板をプロセスチャンバー内に搬入するとともに処理済みの基板をプロセスチャンバーから搬出する搬送系とを備え、プラズマ中で生成される種の作用により基板の表面の絶縁膜をエッチングする絶縁膜エッチング装置であって、
前記プロセスチャンバー内であって前記基板ホルダーに保持された基板の表面より下方の位置を占めるようにして、強制冷却される冷却トラップが設けられており、この冷却トラップは、堆積作用のあるガス分子を捕集することで他の場所に比して多くの膜を堆積させるものであり、交換可能に取り付けられており、
前記基板ホルダーは上面において前記基板を保持するものであり、前記冷却トラップは、前記基板ホルダーの側面に取り付けられており、
前記プラズマ形成手段は、前記基板ホルダーに対向するようにして設けられた対向電極と、対向電極に高周波電圧を印加するプラズマ形成用高周波電源とから成っており、
さらに、前記基板ホルダーには、前記基板ホルダーに高周波電圧を印加することで形成される自己バイアス電圧によりプラズマ中からイオンを引き出して入射させるバイアス用電源が接続されているとともに、前記基板ホルダーとバイアス用電源との間又は対向電極とプラズマ形成用高周波電源との間には可変キャパシタと、この可変可変キャパシタを制御する制御部とが設けられており、この制御部は、前記基板ホルダーと前記対向電極との間の放電空間のうち周辺部におけるプラズマ密度が前記エッチング処理の際に比べて高くなるよう可変キャパシタを制御するものであることを特徴とする絶縁膜エッチング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−93293(P2010−93293A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5449(P2010−5449)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【分割の表示】特願2006−333816(P2006−333816)の分割
【原出願日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】