説明

繊維強化樹脂の成形品とその製造方法

【課題】ガラス繊維の含有量を増加することなく強度を高めることができ、良好な外観を得ることができる繊維強化樹脂の成形品とその製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む繊維強化樹脂の成形品1であって、繊維束であるガラス繊維3を含む表面層2と、モノフィラメント化したガラス繊維5を含む裏面層4とを備え、ガラス繊維の全含有量が10〜30質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂の成形品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は、ガラス繊維等の補強繊維を樹脂で固めた材料であり、機械的強度、耐薬品性、耐熱性、電気的性質に優れた複合材料として様々な分野で用いられている。
【0003】
FRPの成形方法としては、各種のものが知られているが、中でもシートモールディングコンパウンド(SMC)を用いた加熱加圧成形法は、簡便なことから幅広く用いられている。
【0004】
SMCを調製する際には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物(コンパウンド)をドクターブレードでフィルムに塗布し、その上にガラス繊維ロービングを切断、散布する。そして、その上面を同じく熱硬化性樹脂組成物を塗布したフィルムで挟み、ロールで含浸、脱泡し、厚さ1〜5mm程度のシート状に加工する。
【0005】
加工したSMCは35〜50℃で数日間養生させ、十分に増粘させたものを成形に用いる。成形は、金型を用いた圧縮成形により高温・高圧で行われることが多く、所望の形状に成形することが可能である。従来、この方法により成形した成形品は、浴槽、洗面化粧台、キッチンのカウンター等の住宅設備機器として用いられるため、強度および外観に優れた成形品が望まれている。
【0006】
成形品の強度は、補強繊維であるガラス繊維に大きく依存するため、従来、高強度化の手段としてはガラス繊維の含有量を増加する方法が採られていた。しかしながら、ガラス繊維の含有量が多いとガラス繊維の含浸が悪く、成形品の外観が悪化するなどの不具合が発生する。また、ガラス繊維を多く含有した場合、圧縮成形法ではガラス繊維を分散させることが難しい。
【0007】
ガラス繊維の含有量を増加したときに成形品の外観を向上させる方法としては、例えば特許文献1には、開繊度の低いガラス繊維を含むSMCと開繊度の高いガラス繊維を含むSMCを積層して加熱加圧する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−127445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、強度を保つためにある程度の量のガラス繊維を配合したときの外観向上を目的としているが、強度を保つためにある程度の量のガラス繊維が配合されているため、その外観向上には限度がある。また、特許文献1ではガラス繊維の配合量を低減したときの成形品の強度に関しては確認されていない。
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ガラス繊維の含有量を増加することなく強度を高めることができ、良好な外観を得ることができる繊維強化樹脂の成形品とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成形品は、熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む繊維強化樹脂の成形品であって、繊維束であるガラス繊維を含む表面層と、モノフィラメント化したガラス繊維を含む裏面層とを備え、ガラス繊維の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする。
【0012】
この成形品において、シャルピー衝撃強度が50kJ/m2以上、かつ測定角20°での光沢度が70以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の成形品の製造方法は、前記の成形品を製造する方法であって、不飽和ポリエステル樹脂および低開繊度であるガラス繊維を含む表面層用のシートモールディングコンパウンドと、不飽和ポリエステル樹脂および前記低開繊度であるガラス繊維よりも高開繊度であるガラス繊維を含む裏面層用のシートモールディングコンパウンドとを積層し、加熱加圧成形する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成形品によれば、ガラス繊維の含有量を増加することなく強度を高めることができ、良好な外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の成形品の実施形態を模式的に示した断面である。
【図2】繊維束であるガラス繊維を含む表面層の拡大SEM像である。
【図3】モノフィラメント化したガラス繊維を含む裏面層の拡大SEM像である。
【図4】SMCの成形方法の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の成形品の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0018】
この成形品1は、熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む繊維強化樹脂であり、表面層2と裏面層4とを備えている。
【0019】
表面層2は、製品表面側の層であり、繊維束であるガラス繊維3を含む。この表面層2は、変形や歪みに対する強度が劣る傾向があるが、亀裂が発生しても繊維束であるガラス繊維3と衝突するため、亀裂の進展を抑制することができる。
【0020】
裏面層4は、モノフィラメント化したガラス繊維5を含む。この裏面層4は、変形や歪みに対する強度が優れている。しかし、亀裂はモノフィラメント化したガラス繊維5を避けて進展できるため、亀裂が進展し易い傾向がある。
【0021】
そして本発明では、繊維束であるガラス繊維3を含む表面層2と、モノフィラメント化したガラス繊維5を含む裏面層4とを積層することで、表面層2による亀裂進展抑制作用と裏面層4による耐変形・耐歪み作用とが相俟って、全体として機械的強度が大幅に向上する。また、このように高い機械的強度が得られるため、同程度の強度を有する従来品、すなわち厚み方向全体に開繊度が均一なガラス繊維を含む成形品に比べてガラス繊維の含有量を少なくすることができる。
【0022】
すなわち、本発明では繊維束であるガラス繊維3およびモノフィラメント化したガラス繊維5を含むガラス繊維の全含有量を合計で10〜30質量%としている。当該含有量をこの範囲内とすることで、成形品の強度を低下することなく表面が平滑になり、光沢のある良好な外観を得ることができる。当該含有量が少な過ぎると、成形品1の強度が十分でない箇所が生じる場合がある。当該含有量が多過ぎると、繊維量が多いために、平滑性が低下し光沢等の外観が悪化する場合がある。
【0023】
次に、本発明における繊維束であるガラス繊維3およびモノフィラメント化したガラス繊維5の開繊状態について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したSEM像により説明する。
【0024】
図2は、繊維束であるガラス繊維3を含む表面層2の拡大SEM像である。このように、繊維束であるガラス繊維3は、繊維の内部に樹脂が浸透せず、繊維が束として存在している状態のことを示す。
【0025】
図3は、モノフィラメント化したガラス繊維5を含む裏面層4の拡大SEM像である。このように、モノフィラメント化したガラス繊維5は、繊維の内部まで樹脂が浸透し、繊維がモノフィラメント化した状態のことを示す。
【0026】
ただし、表面層2および裏面層4の各層で全てのガラス繊維が繊維束やモノフィラメントとして存在している必要はなく、一部混合した部分を含んでいても構わない。
本発明の成形品は、不飽和ポリエステル樹脂および低開繊度であるガラス繊維を含む表面層用のシートモールディングコンパウンドと、不飽和ポリエステル樹脂および前記低開繊度であるガラス繊維よりも高開繊度であるガラス繊維を含む裏面層用のシートモールディングコンパウンドとを積層し、加熱加圧成形して得られたものであることが好ましい。
【0027】
この場合、表面層の繊維束であるガラス繊維3は、原料のガラス繊維として低開繊度のものを用い、個々の繊維を分散し過ぎないように調整したものを用いることが好ましい。一方、裏面層のモノフィラメント化したガラス繊維5は、原料のガラス繊維として高開繊度のものを用いて個々の繊維の分散性を良くしたものを用いることが好ましい。
【0028】
原料のガラス繊維は、シートモールディングコンパウンドが、加圧ロールに通される時、養生時、加圧プレス時等に開繊度に応じて開繊し、上記構成の成形品が得られる。
原料の低開繊度であるガラス繊維および高開繊度であるガラス繊維は、ガラスロービングを所定寸法に切断したチョップドストランドである。このガラスロービングを得る際には、ノズルから引き出された数百本から数千本の多数のガラスフィラメントに集束剤を塗布した後に集束機で集束してストランドを作製する。このストランドをトラバースにより綾掛けしながらワインダーに取り付けた紙管に巻き取る。このようにして作製した複数のケーキをロービングワインダーにより解繊し、複数本引き揃えて再度巻き取ることによりガラスロービングが得られる。
【0029】
集束剤の成分には、例えば、フィルム形成剤、表面処理剤、潤滑剤、静電防止剤、水等が含まれる。
【0030】
フィルム形成剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。
【0031】
表面処理剤としては、例えば、シラン系表面処理剤、チタン系表面処理剤等を用いることができる。シラン系表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、アミノシラン等を用いることができる。
【0032】
低開繊度であるガラス繊維および高開繊度であるガラス繊維の切断寸法は、10〜50mm程度が好ましく、より好ましくは20〜30mmである。
【0033】
一般に、カットして得られたチョップドストランドは解繊されるが、この開繊度はガラスロービングの集束剤の種類および目付量により調整することができる。
【0034】
表面層2および裏面層4の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0035】
不飽和ポリエステル樹脂は、脂肪族不飽和ポリカルボン酸、脂肪族飽和ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等の不飽和または飽和のポリカルボン酸と、ジオール、トリオール、テトラオール等の有機ポリオールとの縮合反応により得られる熱硬化性樹脂である。
【0036】
脂肪族不飽和ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸等を用いることができる。脂肪族飽和ポリカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、(無水)コハク酸、アジピン酸等を用いることができる。芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
有機ポリオールとしては、例えば、脂肪族ポリオール、芳香族ポリオール等を用いることができる。脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、水素化ビスフェノールA等を用いることができる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
SMCには、上記の成分以外に、必要に応じて他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、重合性単量体、硬化剤、低収縮剤、増粘剤、充填剤、着色剤、重合禁止剤、重合遅延剤、硬化促進剤、製造上の粘度調製のための減粘剤、トナーの分散性向上のための分散調整剤、離型剤等を挙げることができる。
【0039】
重合性単量体としては、特に限定されず、一般に繊維強化樹脂に用いられるもの、例えば熱硬化性樹脂と架橋可能な不飽和単量体等を用いることができる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を用いることができる。
【0040】
硬化剤としては、例えば、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
低収縮剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、セルロース・アセテート・ブチレート、ポリカプロラクタン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、マイカ、ガラスビーズ等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
着色剤としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
そして本発明の成形品1は、例えば、上記の各成分を含有するSMCを加圧加熱成形することにより得ることができる。
【0046】
SMCは、例えば、公知のSMC製造装置により作製することができる。その一例を説明すると、不飽和ポリエステル樹脂と架橋性モノマーと硬化剤とを含有する樹脂組成物(コンパウンド)を、フィルム上に均一の厚さになるように塗布する。。 その上に高開繊度、もしくは低開繊度であるガラス繊維ロービングを1インチ程度の長さに切断、散布する。その後、その片側に同じく樹脂組成物を塗布したフィルムを、散布したガラス繊維が挟まれるように重ねる。これを加圧ロールで含浸し、脱泡を行い1〜5mm程度の所定厚みのシート状にする。これを35℃〜50℃程度で一定期間熟成させ、コンパウンドを増粘させることにより、SMCを得ることができる。
【0047】
このSMCを用いて成形を行う際には、例えば、図4に示すように、上金型6、下金型7を用いて行うことができる。下金型(コア)7の製品表面側を成形する面に向けて低開繊度であるガラス繊維を含むSMC2aを配置する。そして高開繊度であるガラス繊維を含むSMC4aを上金型(キャビティ)6の製品裏面側を成形する面に向けて配置する。上金型6、下金型7によりSMC2a、4aを加熱加圧することによりこれらが積層される。成形条件は、特に限定されないが、例えば、成形圧力3〜10MPa、金型温度125〜150℃、成形時間3〜7分で行うことができる。
【0048】
このようにして、強度および外観の両方に優れた成形品1を得ることができる。例えば、シャルピー衝撃強度が50kJ/m2、かつ測定角20°での光沢度が70以上である成形品1を得ることができる。本発明の成形品1は、各種の用途、例えば、浴槽、洗面化粧台、キッチンのカウンター等の住宅設備機器等に好適である。
【0049】
以上に、本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、上記においては、2枚のSMCを積層した場合について説明したが、2枚に限らず、各SMCに含ませるガラス繊維の開繊度を異ならせて3枚以上を積層するようにしてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、各SMCのガラス繊維の含有量を変更してもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
不飽和ポリエステル樹脂80質量部、低収縮剤としてポリスチレン樹脂20質量部、硬化剤としてt−アミルパーオキシイソピルカーボネート1質量部、重合禁止剤としてp−ベンゾキノン0.1質量部、離型剤としてステアリン酸7質量部、充填剤として炭酸カルシウム160質量部、増粘剤として酸化マグネシウム1質量部、着色剤としてトナー7質量部をよく混合し、SMC用のコンパウンドを得た。なお、不飽和ポリエステル樹脂は、溶媒としてのスチレンモノマーを40質量%含有する樹脂溶液であり、昭和高分子(株)製 M−640LSを用いた。
【0051】
次に、このようにして調製したコンパウンドをドクターブレードでフィルムに塗布し、。 高開繊度、もしくは低開繊度であるガラス繊維60質量部を散布した。その後、その上面を、同じくコンパウンドを塗布したフィルムで挟み、これをロールで押さえることにより、ガラス繊維にコンパウンドを含浸させた。その後、40℃で24時間熟成処理を行い、開繊度の異なるSMCを得た。なお、ガラス繊維は、1インチにカットしたガラスロービングを用いた。
【0052】
以上のようにして作製した、低開繊度であるガラス繊維を含むSMCを下金型に配置し、その上に高開繊度であるガラス繊維を含むSMCを積層し、下記条件にて成形し、目的とする成形品を得た。
[成形条件]
SMC質量:低開繊度であるガラス繊維を含むSMC 450g
高開繊度であるガラス繊維を含むSMC 450g
金型サイズ:300×300mm(成形品板厚6mm)
成形温度:表面側(下金型)145℃、裏面側(上金型)135℃
成形圧力:7MPa
成形時間:4分
<実施例2、3および比較例1、2>
ガラス繊維の配合量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
<比較例3>
ガラス繊維の配合量を表1に示すように変更し、高開繊度であるガラス繊維のみを含むSMCを金型に配置して成形を行った。それ以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
<比較例4〜7>
ガラス繊維の配合量を表1に示すように変更し、低開繊度であるガラス繊維のみを含むSMCを金型に配置して成形を行った。それ以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
<比較例8>
実施例1において、高開繊度であるガラス繊維を含むSMCを下金型に配置し、その上に低開繊度であるガラス繊維を含むSMCを積層して成形を行った。それ以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
【0053】
上記のようにして作製した実施例および比較例の成形品について次の評価を行った。
[シャルピー衝撃強度]
成形品のシャルピー衝撃強度は、JIS K 7061「ガラス繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法」に準拠して測定した。衝撃面は表面側とした。
[光沢]
成形品表面の光沢度を光沢計にて測定角20°で測定した。光沢度70以上のものを「○」、光沢度70未満のものを「×」とした。
[外観]
成形品の外観を目視で観察し、ガラス繊維目が現われる等の成形欠陥が全く観察されず、外観のよいものを「○」、欠陥が観察されるものを「×」とした。
【0054】
評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果より、実施例1〜3は全てシャルピー衝撃強度が50kJ/m2以上、かつ、光沢度が70以上であり、高強度で外観の良好な成形品を得ることができた。
【0057】
これに対して、比較例1は、ガラス繊維の含有量が少ないために、部位による強度バラツキが大きく、品質の悪いものであった。比較例2は、ガラス繊維の含有量が多いために、光沢が低下し、ガラス繊維目が現われるなど外観が悪化した。
【0058】
比較例3〜6は、光沢、外観が良好であるが、シャルピー衝撃強さは、ガラス繊維の含有量が全体として同じである実施例1〜3と比べて低いものであった。
【0059】
比較例7は、実施例1と同等のシャルピー衝撃強さになるように、ガラス繊維含有量を多くしたものであるが、光沢が低下し、ガラス繊維目が現われるなど外観が悪化した。
【0060】
比較例8は、繊維束であるガラス繊維を含む層を裏面側に、モノフィラメント化したガラス繊維を含む層を表面側に配置したが、シャルピー衝撃強度が低いものであった。このことより、強度向上効果は、実施例1〜3の構造の表面側からの衝撃強度について発現することが示された。
【符号の説明】
【0061】
1 成形品
2 表面層
3 繊維束であるガラス繊維
4 裏面層
5 モノフィラメント化したガラス繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む繊維強化樹脂の成形品であって、繊維束であるガラス繊維を含む表面層と、モノフィラメント化したガラス繊維を含む裏面層とを備え、ガラス繊維の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする成形品。
【請求項2】
シャルピー衝撃強度が50kJ/m2以上、かつ測定角20°での光沢度が70以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形品を製造する方法であって、不飽和ポリエステル樹脂および低開繊度であるガラス繊維を含む表面層用のシートモールディングコンパウンドと、不飽和ポリエステル樹脂および前記低開繊度であるガラス繊維よりも高開繊度であるガラス繊維を含む裏面層用のシートモールディングコンパウンドとを積層し、加熱加圧成形する工程を含むことを特徴とする成形品の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1606(P2012−1606A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136551(P2010−136551)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】