説明

織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品

【課題】自動車や自動二輪車等の車体構成部品として好適な織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品を提供する。
【解決手段】 透過シートを少なくとも2枚用意し、同各透過シートを予熱し金型内で加圧して予備成形し、炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シートを予熱し金型内で加圧して予備成形し、予備成形された2枚の透過シートと織物シートは、該2枚の透過シートをそれぞれ織物シートの表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わせ、同重ね合わせ状態で熱加圧成形により両者を互いに融合して織物加飾樹脂製品を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や自動二輪車等の車体構成部品として好適な織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品の技術分野に属し、更に云うと、熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートを積層し含有させ、強度、意匠性、成形性に優れた織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法による織物加飾樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量な車体構成部品として、熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又はアラミド繊維を含む織物シートを積層し含有させて成る織物加飾樹脂製品が意匠的趣味感に優れたものとして知られている。この種の織物加飾樹脂製品は、内部の繊維がその表面を覆う透明又は半透明の熱可塑性樹脂から透けて見えるため意匠性に優れている。
【0003】
こうした意匠性に優れた織物加飾樹脂製品を製造する先行技術として、本出願人が出願し特許を取得した、下記の特許文献1の発明が公知である。
この先行技術は、図7A、Bに示したように、あらかじめ予備成形した一枚の熱可塑性樹脂で成る透過シート70と、同様に予備成形した炭素繊維(合成繊維を含む)に熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る一枚の織物シート71とを、透過シート70を表面側に位置させて重ね合わせ、熱加圧成形により両者を融合して、図7Bに示す加飾予備成形品Yを製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4051396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱加圧成形により透過シート70と織物シート71を融合した後に冷却させると、図7Bに示すように、上記成形品Yには矢印方向に反り返る成形歪みが生じる。
つまり、前記透過シート70は、約0.1〜0.6%の熱収縮率(成形歪み率とも云う)を有しているが、前記織物シート71には熱成形による収縮はほとんど発生しないという異なる特性を持っている。したがって、上記のように特性の異なるシート同士を対峙する配置で融合すると、表面側に配置された透過シート70が冷却後に熱収縮を生じるため、上記成形品Yは外側に向かって反り返るように歪んでしまう。これは熱収縮が片側(表面側)に偏ったためである。
このような成形歪みが生じると、含有された織物シート71の繊維形状が崩れて意匠性が低下するだけでなく、大きなサイズの織物加飾樹脂製品Yにおいては、成形歪みも大きくなり製品の歩留まりが悪化する虞がある。
【0006】
また、図示した加飾予備成形品Yは、織物シート71が1PLYしか積層されない構成とされている。したがって、期待できる強度は限られたものとなり、車体構成部品として利用できる箇所が非常に狭いという問題点もあった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、織物加飾樹脂製品を成形する工程において成形品に成形歪みが生じることを確実に防止でき、質の高い織物加飾樹脂製品を製造する方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品を提供することにある。
【0008】
本発明の次の目的は、織物加飾樹脂製品の厚みを増し、使用箇所に適した強度に自在に設定でき、車体構成部品として利用できる箇所を飛躍的に広げる織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品の製造方法は、
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートを積層し含有させた織物加飾樹脂製品を成形する方法であって、
前記透過シートを少なくとも2枚用意し、同各透過シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
前記予備成形された2枚の透過シートと織物シートは、該2枚の透過シートをそれぞれ織物シートの表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わせ、同重ね合わせ状態で熱加圧成形により両者を互いに融合して織物加飾樹脂製品を完成する工程とから成ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品の製造方法は、
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートを積層し含有させた織物加飾樹脂製品を成形する方法であって、
前記透過シートを少なくとも2枚用意し、同各透過シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シートを複数枚用意し、各織物シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
前記予備成形した複数の織物シートを重ね合わせ、熱加圧成形により同複数の織物シートを融合した織物シート体に成形する工程と、
前記予備成形された2枚の透過シートと織物シート体は、該2枚の透過シートをそれぞれ織物シート体の表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わせ、同重ね合わせ状態で熱加圧成形により両者を互いに融合して織物加飾樹脂製品を完成する工程とから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法において、
合成繊維はアラミド繊維又はガラス繊維等の強化繊維材であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法において、
2枚の透過シートは、熱加圧成形後の成形歪みを均等化させる厚さ又は熱収縮率であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法において、
透過シートと織物シートとは、同形同大に予備成形されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法において、
複数枚の織物シートは、それぞれ同形同大に予備成形されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品は
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートが積層され含有された織物加飾樹脂製品であって、
予熱され金型内で加圧されて予備成形された少なくとも2枚の透過シートと、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成り、予熱され金型内で加圧されて予備成形された織物シートとから成るもので、
前記予備成形された2枚の透過シートがそれぞれ、前記予備成形された織物シートの表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わされて熱加圧成形され、両者が融合されて成ることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品は、
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートが積層され含有された織物加飾樹脂製品であって、
予熱され金型内で加圧されて予備成形された少なくとも2枚の透過シートと、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成り、予熱され金型内で加圧されて予備成形された織物シートが複数枚重ね合わされ、熱加圧成形により融合された織物シート体とから成るもので、
前記予備成形された透過シートがそれぞれ、前記織物シート体の表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わされて熱加圧成形され、両者が融合されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1又は3〜5及び7に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品によれば、熱可塑性樹脂で成り、熱加圧成形後の成形歪みを均等化する厚み又は熱収縮率を有する2枚の透過シート1、1を予備成形し、炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シート4を予備成形し、前記予備成形した2枚の透過シート1’、1’をそれぞれ織物シート4’の表面側と裏面側へ挟むように配置して重ね合わせ、熱加圧成形により両者を融合する方法とした。つまり、織物シート4’の表面側と裏面側の両面に上記透過シート1’、1’を配置して、織物シート4’の表面側と裏面側に位置する熱可塑性樹脂の熱収縮が片側に偏ることなくバランスされ、織物加飾樹脂製品Xの成形歪みを確実に防止することができる。もっては、質の高い織物加飾樹脂製品に寄与する。
【0018】
また、請求項2又は6及び8記載の発明は、複数の織物シート4…を予備成形し、前記予備成形した複数の織物シート4’を重ね合わせて融合した織物シート体5に成形し、熱可塑性樹脂で成る2枚の透過シート1’、1’間に前記織物シート体5を介在し、両者を融合することにより織物加飾樹脂製品X’を完成する手法としたので、重ね合わせる織物シートの枚数を調整することで、織物加飾樹脂製品の厚みを増し、強度を自在に設定できる。したがって、車体構成部品として利用できる箇所が非常に広がるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】A〜Cは、透過シートを予備成形する工程を示した概略図である。
【図2】A〜Cは、織物シートを予備成形する工程を示した概略図である。
【図3】Aは、織物シートの形状の概要を示した図である。BはAの拡大図を示した図である。Cは、Bの部分拡大図である。
【図4】A〜Cは、2枚の透過シートと1枚の織物シートとを融合して織物加飾樹脂製品を完成する工程を示した概略図である。
【図5】A〜Cは、実施例2の複数の織物シートを重ね合わせて織物シート体を予備成形する工程を示した概略図である。
【図6】実施例2の発明に係る織物加飾樹脂製品の製造方法により成形した織物加飾樹脂製品の一例を示す図である。
【図7】A、Bは従来例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シート1に炭素繊維及び/又は合成繊維から成る織物シート4を積層し含有させた織物加飾樹脂製品Xを製造する方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品である。
第1工程では、前記透過シート1を少なくとも2枚用意し、同各透過シート1を予熱し金型3内で加圧して予備成形する。
第2工程では、炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シート4を予熱し金型3内で加圧して予備成形する。
第3工程では、前記予備成形された2枚の透過シート1’と織物シート4’とは、該2枚の透過シート1’、1’をそれぞれ織物シート4’の表面側と裏面側へ挟むように配置して重ね合わせ、同重ね合わせた状態で熱加圧成形により両者を融合する。
上記の工程により、成形歪みのない高品質の織物加飾樹脂製品Xが完成する。
【実施例1】
【0021】
次に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本実施例1の織物加飾樹脂製品は、自動車や自動二輪車等の車体構成製品として好適に使用されるもので、表面側と裏面側が透明又は半透明の熱可塑性樹脂で、その内部に炭素及び/又は合成繊維を繊維状に織り込んだ織物シートを積層し融合させて強度と意匠性を発揮させるものである。
【0022】
実施例1に示す織物加飾樹脂製品の製造方法は、端的に云うと3つの工程から成る。
第1工程を図1A〜Cに示す。
この第1工程では、透過シート1の予備成形を行う。
先ず、透明又は半透明の熱可塑性樹脂で成る透過シート1を2枚用意する。前記熱可塑性樹脂として例えば、ポリスレチン、ポリエチレン、EVA樹脂、ポリカーボネート等であり、2枚の透過シート1は、同厚のものを使用した。本実施例の透過シート1の厚みは、1.0mmとした。勿論、同質の熱可塑性樹脂である場合は、同厚であることが好ましいが、異なる材質の透過シートを使用する場合は、熱加圧成形後の成形歪みを均等化させる厚さのものか、熱収縮率が同じものが使用される。
【0023】
上記構成の2枚の透過シート1をそれぞれ、図1Aに示すように、その上下面を加熱ヒータ2、2で可塑化する温度(例えば120℃〜180℃)に予熱する。
図1Bでは、前記予熱した透過シート1をあらかじめ予熱した一対の加圧成形金型3(以下、単に金型3と云う。)内にセットし、加圧成形加工して所望の形態に予備成形する。熱可塑性樹脂材が冷却硬化した後に、同金型3を開放して取り出した成形品を図1Cに示す。こうして、予備成形した2枚の透過シート1’、1’が完成する。該透過シート1’の成形板厚は、雄型金型31と雌型金型32とで構成された金型3の雄型金型31のストロークと加圧圧力で管理される。
【0024】
次に、第2工程を図2A〜Cに示す。
第2工程では炭素繊維及び/又は合成繊維で成る織物シート4の予備成形を行う。
前記合成繊維とは例えばアラミド繊維、ガラス繊維などの繊維強化材であることが好ましい。
前記織物シート4は具体的には図3に示すように、炭素繊維及びアラミド繊維の繊維フィラメントの束40が、縦・横に織られた繊維状をなすもので、意匠性に優れた形状とされている。前記繊維束40は、図3B、Cの拡大図に示すように、前記した2種類の繊維フィラメント40aと略同形の熱可塑性樹脂フィラメント10aを互い違いに配置して織り込んだ構成としている。熱可塑性樹脂フィラメント10aは、上記透過シート1の熱可塑性樹脂と同質の樹脂材料である。
前記繊維束に織り込んだ2種類の繊維フィラメント40aは略同形としているが、熱可塑性樹脂フィラメント10aの方が大径でもよい。また2種類の繊維フィラメントは互い違いの配置としているがランダムな配置としても良い。また、前記熱可塑性樹脂フィラメント10a及び両繊維フィラメント40aの断面形状は円形に限らない。
【0025】
上記構成の織物シート4は、図2Aに示すように、やはりその上下面を加熱ヒータ2、2で予熱し、前記熱可塑性樹脂フィラメント10aが可塑化する温度(例えば120℃〜180℃)に予熱する。図2Bでは、前記織物シート4をあらかじめ予熱された金型内3にセットし、加圧成形する。すると、上記熱可塑性樹脂フィラメント10aが可塑化して両隣の繊維フィラメント40aと融着することで、繊維の捻りや解れを防ぎ、織物シート4の予備成形を容易に行える。また、繊維シート4の厚さは、前記金型3の雄型金型31のストロークで管理される。因みに、本実施例の織物シート4の厚みは、0.21mm程度である。
【0026】
前記熱可塑性樹脂フィラメント10aの熱硬化時間が経過した後、金型3を開放して取り出した成形品を図2Cに示す。これは、図1で成形した予備成形品1’と略同形同大の予備成形品としての織物シート4’である。
【0027】
次に、第3工程を図4A〜Cに基づいて説明する。
この第3工程は、端的に云うと、上記予備成形した2枚の透過シート1’、1’と織物シート4’を一体的に融合し織物加飾樹脂製品Xを完成する工程である。
即ち、図4Aでは、前記予備成形した2枚の透過シート1’、1’を、それぞれ織物シート4’の表面側と裏面側へ挟むように配置して重ね合わせた状態で、上記金型3内へセットする。そして、図4Bで熱加圧成形により両者を融合する。この際、織物シート4’の表面側と裏面側に位置する透過シート1’の熱可塑性樹脂と、内側の織物シート4’の熱可塑性樹脂フィラメント10aとが各々可塑化して融合する。
熱可塑性樹脂が冷却硬化した後に金型3を開放し取り出すと、熱収縮のない図4Cに示す熱可塑性樹脂内に織物シート4’が含有された織物加飾樹脂製品Xが完成する。必要に応じて、取り付けボスやリブを取り付けることが好適に実施される。
【0028】
上記のように、織物シート4’の表面側と裏面側の両面に同じ厚さ(上記熱加圧成形後の成形歪みを均等化する厚さ又は同じ熱収縮率であることも含む)の透過シート1’、1’を配置した織物加飾樹脂製品Xは、織物シートの表面側と裏面側に位置する熱可塑性樹脂の熱収縮が片側に偏ることなくバランスされて成形歪みを防止できる。また、織物シート4内の繊維形状が成形時に崩れる虞もなく、高品質で高い意匠性の完成品を成形できる。
【実施例2】
【0029】
次に、請求項2、6及び8に記載した発明に係る織物加飾樹脂製品の製造方法及び同方法により製造した織物加飾樹脂製品X’を説明する。
本実施例2は上述した実施例1と略同様の技術的思想に基づいており、以下に、その相違点を中心に説明する。
端的に云うと、透過シート1’、1’に挟み込まれる織物シート4’の代わりとして、その強度を高めた織物シート体5を成形する工程が加算される。
したがって、上述した実施例の第2工程までは略同様の工程であるが、第2工程において成形する予備成形品の織物シート4’は、実施例1のように1枚ではなく、複数枚成形される。成形される枚数は、織物加飾樹脂製品Xを使用する箇所が必要とする強度に合わせて調整される。これら予備成形される複数枚の織物シート4’は全て同形同大に成形されている。
上記工程で複数枚成形した織物シート4’(実施例2では3枚)を、図5に示すように、全て重ね合わせ金型3内へセットする。そして、図5Bで熱加圧成形により3枚の織物シート4’を融合し織物シート体5を成形する。
【0030】
その後、上述した実施例1の第3工程(図4参照)と同じ手法により、透過シート1’と織物シート体5を一体的に融合し、図6に示す織物加飾樹脂製品X’を完成する。
即ち、2枚の透過シート1’、1’をそれぞれ、織物シート体5の表面側と裏面側へ挟むように配置して重ね合わせ、同重ね合わせた状態で熱加圧成形により、両者の熱可塑性樹脂が可塑化して融合することにより織物加飾樹脂製品X’を完成するのである。
上記の成形方法により、重ね合わせる織物シートの枚数を調整することで、織物加飾樹脂製品の強度を自在に設定でき、車体構成部品として利用できる箇所が非常に広がる。 因みに、織物加飾樹脂製品X’の強度の調整方法としては、複数成形する織物シート4’…を、それぞれ繊維方向を変えて成形し、重ね合わせることで強度を強めることも可能である。
【0031】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため付言する。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 透過シート
3 金型
4、4’ 織物シート
X 織物加飾樹脂製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートを積層し含有させた織物加飾樹脂製品を成形する方法であって、
前記透過シートを少なくとも2枚用意し、同各透過シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
前記予備成形された2枚の透過シートと織物シートは、該2枚の透過シートをそれぞれ織物シートの表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わせ、同重ね合わせ状態で熱加圧成形により両者を互いに融合して織物加飾樹脂製品を完成する工程とから成ることを特徴とする、織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートを積層し含有させた織物加飾樹脂製品を成形する方法であって、
前記透過シートを少なくとも2枚用意し、同各透過シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成る織物シートを複数枚用意し、各織物シートを予熱し金型内で加圧して予備成形する工程と、
前記予備成形した複数の織物シートを重ね合わせ、熱加圧成形により同複数の織物シートを融合した織物シート体に成形する工程と、
前記予備成形された2枚の透過シートと織物シート体は、該2枚の透過シートをそれぞれ織物シート体の表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わせ、同重ね合わせ状態で熱加圧成形により両者を互いに融合して織物加飾樹脂製品を完成する工程とから成ることを特徴とする、織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
合成繊維はアラミド繊維又はガラス繊維等の強化繊維材であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
2枚の透過シートは、熱加圧成形後の成形歪みを均等化させる厚さ又は熱収縮率であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
透過シートと織物シートとは、同形同大に予備成形されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項6】
複数枚の織物シートは、それぞれ同形同大に予備成形されていることを特徴とする、請求項2に記載した織物加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートが積層され含有された織物加飾樹脂製品であって、
予熱され金型内で加圧されて予備成形された少なくとも2枚の透過シートと、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成り、予熱され金型内で加圧されて予備成形された織物シートとから成るもので、
前記予備成形された2枚の透過シートがそれぞれ、前記予備成形された織物シートの表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わされて熱加圧成形され、両者が融合されて成ることを特徴とする、織物加飾樹脂製品。
【請求項8】
熱可塑性樹脂で成る透明又は半透明の透過シートに炭素繊維及び/又は合成繊維からなる織物シートが積層され含有された織物加飾樹脂製品であって、
予熱され金型内で加圧されて予備成形された少なくとも2枚の透過シートと、
炭素繊維及び/又は合成繊維の繊維束内に前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂フィラメントを織り込んで成り、予熱され金型内で加圧されて予備成形された織物シートが複数枚重ね合わされ、熱加圧成形により融合された織物シート体とから成るもので、
前記予備成形された透過シートがそれぞれ、前記織物シート体の表面側と裏面側を挟む配置に重ね合わされて熱加圧成形され、両者が融合されて成ることを特徴とする、織物加飾樹脂製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−158831(P2010−158831A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2381(P2009−2381)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【Fターム(参考)】