説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブに損傷が生じたとき、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラーで作動油を冷やすことなく潤滑部位への作動油を安定供給できること。
【解決手段】オイルクーラー2等の損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cに供給される作動油の油圧が所定の油圧よりも高くなったときには、バイパスバルブ4が開動作し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの作動油をバイパス管路16を介して所定の潤滑部位5に供給する。また、寒冷地のように作動油の通油抵抗が大きいところでは、ソレノイドバルブ9を介してバイパスバルブ4の別の入力ポート1fに作動油を入力させて、バイパスバルブ4を開動作させ、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油をバイパス管路16を介して所定の潤滑部位5に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の油圧制御装置に関し、特に、自動変速機に油圧を供給する油路の冷却管路の異常処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機の油圧制御装置としては、図3に示す特許文献1の技術が公知である。図3は従来の自動変速機の油圧制御装置のオイルクーラーとそのバイパス系の関係を説明する配管図である。
まず、特許文献1の、特に、オイルクーラー32とそのバイパス系の関係を説明する。
自動変速機内に収容している作動油を冷却するオイルクーラー32の入力として作動油が図示しないオイルポンプで送られてきて、所定の油圧以上になると、クーラー配管路30に配設した作動油を特定方向に流すクーラーインプットチェックバルブ31を押圧して、オイルクーラー32によって冷却された後、潤滑油として各潤滑要素に供給すべくオイルクーラー32の出力とされる。
通常、この状態、即ち、オイルクーラー32の入力として所定の油圧以上の作動油が送られてくると、クーラーインプットチェックバルブ31が開き、クーラー配管路30を作動油が通り、オイルクーラー32によって冷却された後、潤滑油として出力され、潤滑油として使用されている。
【0003】
ここで、作動油の油圧が更に上昇して所定の圧力以上となると、クーラーバイパスバルブ33は、その上昇した作動油の油圧が、閉弁方向の付勢力に抗して弁を移動させ、開弁状態とし、バイパス配管路34が通路となり、作動油はバイパス配管路34を通ってオイルクーラー32を介すことなく出力される。
このように、クーラーバイパスバルブ33は、オイルクーラー32内のクーラー配管路30の油圧が所定の圧力以上となったときに開弁し、クーラー配管路30の上昇によるオイルクーラー32の損傷等を回避する保護管路としての役割を果たしている。なお、このクーラーバイパスバルブ33が開弁させられる圧力は、内蔵するスプリングの設定によって調整が可能となっている。
【特許文献1】特開2007−211968
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術は、クーラー配管路30の上昇によるオイルクーラー32の損傷等を回避する保護機能を持たせるものであるから、このクーラーバイパスバルブ33が開弁させられる圧力を、通常運転に支障がないように、内蔵するスプリングの閉弁方向の抗力を高い値に設定している。
特に、クーラー配管路30の作動油は、オイルクーラー32によって冷却され、再度、通油抵抗(流体抵抗)が大きくなるから、クーラー配管路30の全体の通油抵抗は高くなり、クーラーインプットチェックバルブ31の入力ポートの油圧は高くならざるを得ない。それを受けて、クーラーバイパスバルブ33が開弁させられる油圧との差圧が僅少とならざるを得ない。したがって、仮にオイルクーラー32が損傷しても、クーラーバイパスバルブ33が内蔵するスプリングの弾性力が非常に高く設定してあるために作動しない可能性も生ずる。また、寒冷地では作動油の粘性が増し、オイルクーラーの下流管路にある潤滑部位への作動油の供給が不足する恐れがある。
【0005】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブに損傷が生じたとき、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラーで作動油を冷やすことなく潤滑部位への作動油を安定供給できる自動変速機の油圧制御装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1にかかる自動変速機の油圧制御装置は、トルクコンバータを介した作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給する自動変速機の油圧制御装置において、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧をバイパスバルブの第1の入力ポートに導入し、また、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに前記第1の閾値油圧よりも高い別の油圧を導入し、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブを開動作させ、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油が前記オイルクーラーを通る管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に供給されるものである。
ここで、上記トルクコンバータを介した作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給するとは、トルクコンバータのロックアップクラッチがオフ状態であることを前提とする。
また、上記バイパスバルブの第1の入力ポートに導入したクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧、そして、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに導入した前記第1の閾値油圧よりも高い別の油圧は、第1の入力ポートに導入したクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧よりも、第2の入力ポートに導入した別の前記第1の閾値油圧よりも高い油圧を使用するものであり、第1の入力ポートと第2の入力ポートの受圧面によっても調整できるが、通常、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い閾値油圧に設定される。
そして、上記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上とは、安全性から、前記クーラーインプットチェックバルブ、前記オイルクーラーの機械的強度から設定される。
更に、上記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、前記作動油が所定温度以下のときとは、表現的には、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき及び前記作動油が所定温度以下のときを意味するが、機械的構成は、当然、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったときで、前記作動油が所定温度以下のときも、同様に動作するものである。

【0007】
請求項2にかかる自動変速機の油圧制御装置は、オイルポンプから送給されたトルクコンバータを介した作動油を、前記作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給する自動変速機の油圧制御装置において、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧をバイパスバルブの第1の入力ポートに導入し、また、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートにトルクコンバータを介さない作動油を導入し、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧が、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、または前記作動油が所定温度以下のとき、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油は前記オイルクーラーをバイパスして前記所定の潤滑部位に供給するものである。
ここで、上記トルクコンバータを介した作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給するとは、トルクコンバータのロックアップがオフ状態であることを前提とする。
また、上記バイパスバルブの第1の入力ポートに導入したクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧、そして、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに導入したトルクコンバータを介さない作動油の油圧は、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに導入した油圧は第1の入力ポートに導入したクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧よりも大きい油圧を使用するものであり、第1の入力ポートと第2の入力ポートの受圧面によっても調整できるが、通常、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い閾値油圧に設定される。
そして、上記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上とは、安全性から、前記クーラーインプットチェックバルブ、前記オイルクーラーの機械的強度から設定される。
更に、上記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、前記作動油が所定温度以下のときとは、表現的には、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき及び前記作動油が所定温度以下のときを意味するが、機械的構成は、当然、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったときで、前記作動油が所定温度以下のときも、同様に動作するものである。
【0008】
請求項3にかかる自動変速機の油圧制御装置は、トルクコンバータを介した作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと、前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給する自動変速機の油圧制御装置において、前記トルクコンバータのロックアップを制御するロックアップバルブのオフのときに形成されるトルクコンバータ、クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを通り、所定の潤滑部位に作動油を供給する主作動油冷却管路と、前記ロックアップバルブのオフのときに形成される前記作動油が所定温度以下のとき、または前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、前記主作動油冷却管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に作動油を供給するバイパスバルブを有するパイパス管路とを具備するものである。
ここで、上記オイルポンプから送給されたトルクコンバータを介した作動油を、前記作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと前記作動油を冷却するオイルクーラーとを通し、前記オイルクーラーから所定の潤滑部位に供給するとは、トルクコンバータのロックアップがオフ状態であることを前提とする。
また、上記主作動油冷却管路は、前記トルクコンバータのロックアップを制御するロックアップバルブのオフのときに形成されるトルクコンバータ、クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを通って所定の潤滑部位に作動油を供給する管路であり、トルクコンバータ、クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーが直列配置された管路である。
そして、上記パイパス管路は、前記ロックアップバルブのオフのときに形成される前記作動油が所定温度以下のとき、または前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、前記主作動油冷却管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に作動油を供給する管路である。
更に、上記作動油が所定温度以下のとき、または、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のときとは、表現的には、前記作動油が所定温度以下のとき及び前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のときを意味するが、機械的構成は、当然、前記作動油が所定温度以下のときで、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のときも、同様に動作するものである。
【0009】
請求項4にかかる自動変速機の油圧制御装置の前記バイパスバルブは、油圧を検出する第1の入力ポート及び第2の入力ポート並びに前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を導入するポート及びそれを所定の潤滑部位側に出力するポートを具備するものである。
ここで、油圧を検出する第1の入力ポートと前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を導入するポートは、連結されていてもよいし、独立されていてもよい。また、具体的に、ポートの位置を特定するものではない。
【0010】
請求項5にかかる自動変速機の油圧制御装置の前記バイパスバルブは、ソレノイドバルブによって所定の油圧を導入し、それによって開閉制御されるものである。ここで、ソレノイドバルブは前記バイパスバルブに所定の油圧を導入し、または遮断することによって、前記バイパスバルブを開閉制御するものであるから、電気的制御を行うバルブであればよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の自動変速機の油圧制御装置は、作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧をバイパスバルブの第1の入力ポートに導入し、また、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに前記第1の閾値油圧よりも高い別の作動油を導入し、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブを開動作させ、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油が、前記オイルクーラーの管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に前記作動油を供給するものである。
したがって、トルクコンバータを通過した作動油の油圧が、クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、前記クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを介して所定の潤滑部位に作動油を供給する。また、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブに損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブに供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、バイパスバルブが開動作し、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油を所定の潤滑部位に供給する。また、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに前記作動油を入力させて、前記バイパスバルブを開動作させるものであるから、この場合にも、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポートの前記作動油を前記所定の潤滑部位に供給する。
よって、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラーの下流管路にある潤滑部位への作動油を安定供給し、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブの損傷が生じたときには、オイルクーラーをバイパスさせることにより、前記所定の潤滑部位に作動油を維持できる。また、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラーで作動油を冷やすことなく潤滑部位への作動油を安定供給できる。そして、作動油の温度が低いときには、オイルクーラーの管路を回避し、バイパスするものであるから、変速機の動作に適当な作動油温度に上昇させることができる。
【0012】
請求項2の自動変速機の油圧制御装置は、バイパスバルブによって、作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を第1の入力ポートに導入し、また、作動油が所定温度以下のとき、第2の入力ポートにトルクコンバータを介さない作動油を導入し、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧が、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油を前記オイルクーラーの管路のバイパスによって前記所定の潤滑部位に前記作動油を供給するものである。
したがって、トルクコンバータを通過した作動油の油圧が、クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、前記クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを介して所定の潤滑部位に作動油を供給する。また、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブに損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブに供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、バイパスバルブが開動作し、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油を所定の潤滑部位に供給する。また、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに前記作動油を入力させて、前記バイパスバルブを開動作させるものであるから、この場合にも、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポートの前記作動油を前記所定の潤滑部位に供給する。
よって、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラーの下流管路にある潤滑部位への作動油を安定供給し、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブの損傷が生じたときには、オイルクーラーをバイパスさせることにより、前記所定の潤滑部位に供給する作動油を維持できる。また、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラーで作動油を冷やすことなく潤滑部位への作動油を安定供給できる。そして、作動油の温度が低いときには、オイルクーラーの管路を回避し、バイパスするものであるから、変速機の動作に適当な作動油温度に上昇させることができる。
【0013】
請求項3の自動変速機の油圧制御装置は、トルクコンバータのロックアップを制御するロックアップバルブのオフのときに形成されるトルクコンバータ、クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを通り、所定の潤滑部位に作動油を供給する主作動油冷却管路と、前記ロックアップバルブのオフのときに形成される前記作動油が所定温度以下のとき、または前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、前記主作動油冷却管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に作動油を供給するバイパスバルブを有するパイパス管路を具備し、通常、主作動油冷却管路が動作し、前記作動油が所定温度以下のとき、または前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、前記主作動油冷却管路をバイパスするパイパス管路が動作するものである。
したがって、トルクコンバータを通過した作動油の油圧が、クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、前記主作動油冷却管路を介して所定の潤滑部位に作動油を供給する。また、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブに損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブに供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、パイパス管路により前記作動油を所定の潤滑部位に供給する。また、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、前記作動油が所定温度以下のときにも、前記パイパス管路を介して前記作動油を前記所定の潤滑部位に作動油を供給する。
よって、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラーの下流管路にある潤滑部位への作動油を安定供給し、オイルクーラー及びクーラーインプットチェックバルブの損傷が生じたときには、オイルクーラーをバイパスさせることにより、前記所定の潤滑部位に作動油を維持できる。また、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラーで作動油を冷やすことなく潤滑部位への作動油を安定供給できる。そして、作動油の温度が低いときには、オイルクーラーの主作動油冷却管路を回避し、パイパス管路でバイパスするものであるから、変速機の動作に適当な作動油温度に上昇させることができる。
【0014】
請求項4の自動変速機の油圧制御装置の前記バイパスバルブは、油圧を検出する第1の入力ポート及び第2の入力ポート並びに前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を導入するポート及びそれを所定の潤滑部位側に出力するポートを具備するものであるから請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、簡単な構成で、間違いのない動作を行うことができる。
【0015】
請求項5の自動変速機の油圧制御装置の前記バイパスバルブは、ソレノイドバルブによって所定の油圧を導入し、それによって開閉制御されるものであるから、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、ソレノイドバルブによる外部からの油圧の導入によって、自在に外的要件、例えば温度条件等を前記バイパスバルブの制御に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、図中、実施の形態において、同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここでは重複する説明を省略する。
[実施の形態1]
【0017】
図1は本発明の実施の形態にかかる自動変速機の油圧制御装置の接続関係を示す配管図である。図2は本発明の実施の形態にかかる自動変速機の油圧制御装置の動作のタイミングを説明する説明図である。
図1において、流れを単一方向とする逆止弁からなるクーラーインプットチェックバルブ1は、入力ポート1cに印加された油圧が第1の閾値油圧以上になったとき、ピストン1aをスプリング1bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート1cと出力ポート1dが連通するバルブである。オイルクーラー2は、熱交換器で作動油を冷却するものである。
また、流れを単一方向とする逆止弁からなるアウトプットチェックバルブ3は、入力ポート3cに印加された油圧が所定以上になったとき、ピストン3aをスプリング3bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート3cと出力ポート3dが連通するバルブである。
【0018】
逆止弁からなるバイパスバルブ4は、第1の入力ポートとしての入力ポート4cにクーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cに印加された油圧が、第1の閾値油圧より高い第2の閾値油圧以上になったとき、ピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dが連通するバルブである。入力ポート4eに導かれた油圧は、出力ポート4dから変速機構の各潤滑部位(LUBE)5及びその他の部位に導かれている。入力ポート4fにはソレノイドモジュレータバルブからの油圧がリニアソレノイドバルブからなるソレノイドバルブ9を介して導かれており、ロックアップバルブ7がOFF状態のとき、所定の温度以下で開となるソレノイドモジュレータバルブからの油圧が加えられる。この入力ポート4fに加えられる油圧は、スプールとしてのピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dを連通させる。特に、入力ポート4fには、ソレノイドバルブ9から出力される図示しないソレノイドモジュレータバルブからの作動油の油圧が、補充管路11を介して入力されている。
【0019】
この補充管路11の油圧は、通常運転の油圧に設定されている前記第1の閾値油圧よりも高い油圧であればよく、本実施の形態では、図示しないソレノイドモジュレータバルブからの作動油の油圧を導いているが、本発明を実施する場合には、トルクコンバータ8に供給する図示しないセカンダリーバルブからの供給またはプライマリーバルブからの供給された油圧であればよい。即ち、入力ポート4cに印加される第1の閾値油圧より高い第2の閾値油圧に近似した油圧以上であればよく、第2の閾値油圧の設定値によってはトルクコンバータ8を介さない作動油とすることができる。勿論、バイパスバルブ4の第1の入力ポートとしての入力ポート4cと第1の入力ポートとしての入力ポート4fのスプールの断面積によって、導入する油圧の高低を変化させることができる。
【0020】
ロックアップバルブ7は、ソレノイドバルブ6によりロックアップバルブ7の受圧ポート7cに油圧が導入されていないとき、ロックアップバルブ7がOFF状態であり、ソレノイドバルブ6がON状態のとき、ロックアップバルブ7の受圧ポート7cに油圧が導入され、ロックアップバルブ7がON状態となる。即ち、ロックアップバルブ7は、受圧ポート7cに印加された油圧が所定以上のとき、スプールとしてのピストン7aをスプリング7bの弾性力に抗して押圧する切替バルブである。ロックアップバルブ7がOFF状態のときは、入力ポート7dと出力ポート7eが連通し、入力ポート7fと出力ポート7gが連通し、ロックアップクラッチ8aをOFF状態とする。受圧ポート7cに印加された油圧が所定以上になっており、ロックアップバルブ7がON状態のとき、入力ポート7dと出力ポート7eが遮断状態となり、また、入力ポート7fと出力ポート7gが遮断状態となると、ロックアップクラッチ8aがON状態とする。
【0021】
ソレノイドバルブ9は変速機内の作動油の温度を検出する温度センサの出力によって制御されるもので、図示しないソレノイドモジュレータバルブから供給されている作動油をON・OFF制御するものである。所定の温度以下、例えば、20℃以下のとき、ロックアップクラッチ8aをOFF状態としているロックアップバルブ7の入力ポート7mと出力ポート7nを通過し、出力ポート7nから入力ポート4fまでの補充管路11を介してバイパスバルブ4の入力ポート4fにソレノイドモジュレータバルブから供給されている作動油の油圧が導かれる。
【0022】
したがって、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧がバイパスバルブ4に設定された第1の閾値油圧よりも高くないときでも、バイパスバルブ4の入力ポート4fに導入されるソレノイドバルブ9から出力される図示しないソレノイドモジュレータバルブからの作動油の油圧によって、バイパスバルブ4のピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dを連通させ、バイパス管路16を介して作動油を直接変速機構の各潤滑部位5に供給することができる。なお、バイパス管路16は、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側からバイパスバルブ4の入力ポート4eから出力ポート4dを経た変速機構の各潤滑部位5に至る管路である。
【0023】
トルクコンバータ8は、作動油が供給される係合側油室及び解放側油室との圧力差に応じて係合または解除されるロックアップクラッチ8aを内蔵している。ロックアップクラッチ8aは、解放側ポート8bから係合側ポート8cに作動油を供給すると開放状態となり、逆に、係合側ポート8cから解放側ポート8bに作動油を供給すると係合状態となる。なお、図1においては、ロックアップクラッチ8aが係合状態となる係合側ポート8cから解放側ポート8bに作動油を供給する油路については、詳しい図示を省略している。
【0024】
リニアソレノイドバルブからなるソレノイドバルブ6は、トルクコンバータ8が内蔵するロックアップクラッチ8aの制御用のバルブである。トルクコンバータ8に付設したロックアップクラッチ8aは、ソレノイドバルブ6がOFF状態のとき、ロックアップバルブ7の受圧ポート7cに油圧が導入されないから、ロックアップバルブ7がOFF状態であり、ソレノイドバルブ6がON状態のとき、ロックアップバルブ7の受圧ポート7cに油圧が導入され、ロックアップバルブ7がON状態となる。
なお、ソレノイドバルブ6がON状態のとき、図1の右側のロックアップバルブ7のスプール位置に示すようになり、ソレノイドバルブ6はOFF状態のとき、図1の左側のロックアップバルブ7のスプール位置に示すようになる。
【0025】
本実施の形態の自動変速機の油圧制御装置では、クーラーインプットチェックバルブ1からオイルクーラー2を介して変速機構の各潤滑部位5までの配管路によって、本実施の形態の作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブ1を配設し、作動油をオイルクーラー2で冷却し、アウトプットチェックバルブ3を介して作動油を直接変速機構の各潤滑部位5に供給する主作動油冷却管路13を構成している。
また、バイパスバルブ4の入力ポート4e、出力ポート4dから変速機構の各潤滑部位5までの配管路は、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧を同時に入力ポート4cに導入し、クーラーインプットチェックバルブ1の動作圧力よりも大きい第2の閾値油圧で開動作するバイパスバルブ4を有し、オイルクーラー2を通すことなく作動油を出力する本実施の形態のバイパス管路16を構成している。
【0026】
このように構成された本実施の形態の自動変速機の油圧制御装置は、次のように動作する。
車両のエンジンを駆動させた初期には、ソレノイドバルブ6は、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aを開放すべく、ロックアップOFF信号が入力される。したがって、図示しないプライマリーバルブからの作動油をロックアップバルブ7の受圧ポート7cに導入していないから、ロックアップバルブ7のスプールは、図1において左側の位置となる。
【0027】
このとき、図示しないセカンダリーバルブから供給されている作動油は、ロックアップバルブ7の入力ポート7dに入力され、出力ポート7eから出力され、トルクコンバータ8の解放側ポート8bを通過し、ロックアップクラッチ8aを開放状態とする。係合側ポート8cから流れ出る作動油は、ロックアップバルブ7の入力ポート7fから出力ポート7gを通って、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c及びバイパスバルブ4の入力ポート4cに印加される。
【0028】
クーラーインプットチェックバルブ1は、第1の閾値油圧以上の油圧が加わると、その入力ポート1cと出力ポート1dが連通する。クーラーインプットチェックバルブ1の出力ポート1dを通過した作動油は、オイルクーラー2によって、作動油を冷却し、逆流を防止するアウトプットチェックバルブ3を介して、変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも冷却された作動油を供給する。即ち、主作動油冷却管路13のオイルクーラー2によって、作動油を冷却する管路を作動油が流れる。
【0029】
ここで、例えば、オイルクーラー2の故障、クーラーインプットチェックバルブ1の故障、主作動油冷却管路13に異物が詰まる等の損傷が生ずると、主作動油冷却管路13の通油抵抗が増加し、クーラーインプットチェックバルブ1が開かなくなる。このとき、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧は、バイパスバルブ4に設定された第2の閾値油圧よりも油圧が高くなる。仮に、クーラーインプットチェックバルブ1が開いていても、通油抵抗が高く、バイパスバルブ4に設定された第2の閾値油圧よりも、油圧が高くなる。
このとき、バイパスバルブ4は、入力ポート4cに印加された油圧がクーラーインプットチェックバルブ1の第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、ピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、出力ポート4eと入力ポート4dが連通することになる。
【0030】
バイパスバルブ4の入力ポート4eに至った作動油は、オイルクーラー2によって冷却されることなく、バイパスバルブ4の出力ポート4dから変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも供給される。即ち、バイパスバルブ4を含むパイパス管路16によって作動油が変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位に供給されることになる。
したがって、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧が、バイパスバルブ4に設定された第2の閾値油圧よりも高くなったとき、クーラーインプットチェックバルブ1側のクーラー配管路13の損傷と解して、バイパスバルブ4の動作により、作動油を直接変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも供給することができ、変速機構の各潤滑部位5に潤滑油不足が生じない。
【0031】
一方、車両のエンジンを駆動させた初期に、作動油が低温状態で粘性が高く、通油抵抗(流体抵抗)が大きいときがある。このとき、変速機内の作動油の温度を検出している温度センサにより、例えば、変速機内の作動油の温度が20℃以下のとき、ソレノイドバルブ9がON状態となり、OFF状態のロックアップバルブ7の入力ポート7mと出力ポート7nを介して、即ち、ロックアップバルブ7を有する補充管路11を介してバイパスバルブ4の入力ポート4fにソレノイドモジュレータバルブからの作動油が導かれる。
【0032】
したがって、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧がバイパスバルブ4に設定された第1の閾値油圧よりも高くないときでも、バイパスバルブ4の入力ポート4fに導入されるソレノイドバルブ9から出力されるトルクコンバータ8を介さない高い油圧によって、バイパスバルブ4のピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dを連通させ、バイパス管路16を介して作動油を直接変速機構の各潤滑部位5に供給することができる。
【0033】
よって、作動油が低温状態で粘性が高く、通油抵抗が大きいときには、変速機内の作動油の温度を検出している温度センサにより、ソレノイドバルブ9がON状態となり、OFF状態のロックアップバルブ7の入力ポート7mと出力ポート7nを介して、補充管路11を介してバイパスバルブ4の入力ポート4fにソレノイドモジュレータバルブからの作動油が導かれるから、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧がバイパスバルブ4に設定された閾値油圧よりも高くないときでも、バイパスバルブ4の入力ポート4fに加わるから、バイパスバルブ4のピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dが連通し、作動油を直接変速機構の各潤滑部位5に追加供給することができ、各潤滑部位5に潤滑油不足が生じない。
【0034】
ところで、本実施の形態のアウトプットチェックバルブ3は、入力ポート3cに印加された油圧のみが所定以上になったとき、ピストン3aをスプリング3bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート3cと出力ポート3dが連通する流れを単一方向とする逆止弁である。したがって、バイパスバルブ4の出力ポート4dの油圧が上昇しても、出力ポート4dから出力された作動油をオイルクーラー側に逆流させることがない。
【0035】
なお、ソレノイドバルブ6がロックアップON信号を入力すると、図示しないプライマリーバルブからの出力をロックアップバルブ7の入力ポート7cに入力され、セカンダリーバルブから供給されている作動油が、ロックアップバルブ7の入力ポート7d及び入力ポート7hに入力されているから、入力ポート7hから導入された作動油は入力ポート7fを出力ポートとして出力され、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aを係合する係合側ポート8cに作動油を通過させ、ロックアップクラッチ8aを係合状態とし、出力ポート7eが入力ポートとなり、図示しない変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも作動油が供給される。
【0036】
この実施の形態の自動変速機の油圧制御装置の動作を整理して説明すると、図2のようになる。なお、ここで温度は、説明のための目安として示した例示である。
図2において、ソレノイドバルブ6は、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aを制御するものであり、本実施の形態では、ロックアップクラッチのOFF状態で動作するものである。したがって、ロックアップクラッチのON状態には関係がない。ソレノイドバルブ6によってトルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aを開放しているとき、変速機内の作動油の温度を検出している温度センサが、例えば、20℃以下と判断したとき、ソレノイドバルブ9がON状態となり、OFF状態のロックアップバルブ7を有する補充管路11を介してバイパスバルブ4の入力ポート4fにソレノイドモジュレータバルブからの作動油が導かれ、バイパスバルブ4のピストン4aをスプリング4bの弾性力に抗して押圧し、入力ポート4eと出力ポート4dを連通させ、バイパス管路16を介して温度の低い作動油を直接変速機構の各潤滑部位5に供給することができる。
なお、図中、バイパスバルブ作動範囲では、バイパスバルブ4が動作する条件下を示すものである。また、ソレノイドバルブ6は温度依存情報ではないが、仮に温度で示した場合を示すものである。
【0037】
また、ソレノイドバルブ9がOFF状態のとき、クーラーインプットチェックバルブ1は、第1の閾値油圧以上の油圧が加わると、その入力ポート1cと出力ポート1dが連通し、クーラーインプットチェックバルブ1の出力ポート1dを通過した作動油は、オイルクーラー2によって、作動油を冷却し、アウトプットチェックバルブ3を介して、変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも冷却された作動油を供給する。即ち、通常状態では、主作動油冷却管路13のオイルクーラー2によって、作動油を冷却し、それを変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位に供給する。
そして、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの油圧が、バイパスバルブ4に設定された第2の閾値油圧よりも高くなったとき、クーラーインプットチェックバルブ1側のクーラー配管路13の損傷と解して、バイパスバルブ4の動作により、作動油を直接変速機構の各潤滑部位5及びその他の部位にも供給することができ、変速機構の各潤滑部位5に潤滑油不足が生じないようにできる。
【0038】
殊に、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1の損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cに供給される作動油の油圧が所定の油圧よりも高くなったときには、バイパスバルブ4が開動作し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油をパイパス管路16を介して所定の潤滑部位5に供給することができる。
また、寒冷地のように作動油の通油抵抗が大きいところでは、作動油が所定温度以下のとき、ソレノイドバルブ9を介してバイパスバルブ4の第2の入力ポートとなる入力ポート1fに作動油を入力させて、バイパスバルブ4を開動作させるものであるから、この場合にも、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの作動油をパイパス管路16を介して所定の潤滑部位5に供給することができる。
【0039】
このように、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラー2の下流管路にある潤滑部位5への作動油を安定供給し、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1の損傷が生じたときには、的確にパイパス管路16を動作させることができ、所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。よって、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1の損傷が生じたときには、的確にそのパイパス管路16を生かすことができ、オイルクーラー2の下流管路にある潤滑部位5への作動油を安定供給できる。
【0040】
そして、本実施の形態では、ロックアップバルブ7がOFF状態のとき、ロックアップ解除に使用する作動油をクーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cとバイパスバルブ4の入力ポート4cに導入することにより、熱エネルギの比較的発生量の多いトルクコンバータ8によって作動油が温度上昇させられるので、作動油の温度が低いときには、速やかに所定の通油抵抗になるように作動油の温度を上昇するように導くことができる。
【0041】
更に、主作動油冷却管路13とパイパス管路16との間にアウトプットチェックバルブ3を配設したものでは、作動油の圧力が高い方の主作動油冷却管路13またはパイパス管路16の配管路からの一方のみの作動油を出力するものであるから、単一の配管路の作動油出力に対する選択が簡単な構成で逆流防止でき、全体の構成が簡単化できる。
【0042】
更にまた、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aの解除状態で、バイパスバルブ4からパイパス管路16に出力するものであるから、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aの解除状態で、潤滑油の不足等が発生する場合や、作動油の温度が所定値よりも低い場合にパイパス管路16を作動させることにより、トルクコンバータ8のロックアップクラッチ8aの解除状態で、作動油の使用量に応じた供給が可能となると共に、低温時における作動油の通油抵抗に影響されることなく、的確にパイパス管路16を生かすことができる。
【0043】
上記実施の形態の自動変速機の油圧制御装置は、オイルポンプから送給された作動油は、トルクコンバータ8を介し、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブ1と、その作動油の冷却を行うオイルクーラー2とを通り、所定の潤滑部位5にその冷却されたその作動油を供給する自動変速機の油圧制御装置において、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧をバイパスバルブ4の第1の入力ポートとなる入力ポート4cに導入し、また、作動油が所定温度以下のとき、バイパスバルブ4の第2の入力ポートとなる入力ポート4fに第1の閾値油圧よりも高いソレノイドモジュレータバルブからの作動油等の別の油圧を導入し、第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、作動油が所定温度以下のとき、バイパスバルブ4を開とし、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油がオイルクーラー2をバイパスして所定の潤滑部位5に供給されるものである。
【0044】
このように、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧は、バイパスバルブ4の第1の入力ポートとなる入力ポート4cに導入しており、また、変速機内の作動油が所定温度以下のとき、バイパスバルブ4の第2の入力ポートとなる入力ポート4fに第1の閾値油圧よりも高い別のソレノイドモジュレータバルブからの作動油を導入しているから、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、変速機内の作動油が所定温度以下のとき、バイパスバルブ4を開動作させ、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油を、オイルクーラー2の管路をバイパスして所定の潤滑部位5に供給することができる。
【0045】
したがって、トルクコンバータ8を通過した作動油の油圧が、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、クーラーインプットチェックバルブ1、オイルクーラー2を介して所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。
また、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1に損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブ1に供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、バイパスバルブ4が開動作し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。
そして、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、バイパスバルブ4の第2の入力ポートとなる入力ポート4fに作動油を入力させて、バイパスバルブ4を開動作させるものであるから、この場合にも、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの作動油を所定の潤滑部位5に供給できる。
【0046】
よって、作動油の通油抵抗に影響されることなく、オイルクーラー2の下流管路にある潤滑部位5への作動油を安定供給し、特に、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1の損傷が生じたときには、オイルクーラー2をバイパスさせることにより、所定の潤滑部位5に作動油を維持できる。また、作動油の温度が低いときにも、オイルクーラー2で作動油を冷やすことなく潤滑部位5への作動油を安定供給できる。
【0047】
上記実施の形態の自動変速機の油圧制御装置は、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧を第1の入力ポートとなる入力ポート4cに導入し、また、作動油が所定温度以下のとき、第2の入力ポートとなる入力ポート4fにトルクコンバータ8を介さない作動油の油圧を導入し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧が、第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油を、オイルクーラー2を有する管路である主作動油冷却管路13をバイパスさせて、所定の潤滑部位5に供給するバイパスバルブ4を具備するものである。
【0048】
このように、上記実施の形態の自動変速機の油圧制御装置は、バイパスバルブ4によって、作動油の第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧を第1の入力ポートとなる入力ポート4cに導入し、また、作動油が所定温度以下のとき、第2の入力ポートとなる入力ポート4fにトルクコンバータ8を介さない作動油を導入し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧が、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、または、作動油が所定温度以下のとき、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油をオイルクーラー2の管路のバイパスによって所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。
【0049】
したがって、トルクコンバータ8を通過した作動油は、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、クーラーインプットチェックバルブ1、オイルクーラー2を介して所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。また、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1に損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブ1に供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、バイパスバルブ4が開動作し、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の作動油を所定の潤滑部位5に供給できる。また、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、作動油が所定温度以下のとき、バイパスバルブ4の第2の入力ポートとなる入力ポート4fに作動油を入力させて、バイパスバルブ4を開動作させるものであるから、この場合にも、クーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1cの作動油を所定の潤滑部位5に供給できる。
【0050】
上記実施の形態の自動変速機の油圧制御装置は、トルクコンバータ8のロックアップを制御するロックアップバルブ7と、ロックアップバルブ7のオフのときに形成されるトルクコンバータ8、クーラーインプットチェックバルブ1、オイルクーラー2を通り、所定の潤滑部位5に作動油を供給する主作動油冷却管路13と、ロックアップバルブ7のオフのときに形成される作動油が所定温度以下のとき、または、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、主作動油冷却管路13をバイパスして所定の潤滑部位5に作動油を供給するバイパスバルブ4を有するパイパス管路16を具備するものである。
【0051】
このトルクコンバータ8のロックアップを制御するロックアップバルブ7のオフのときに形成されるトルクコンバータ8、クーラーインプットチェックバルブ1、オイルクーラー2を通り、所定の潤滑部位5に作動油を供給する主作動油冷却管路13と、ロックアップバルブ7のオフのときに形成される作動油が所定温度以下のとき、またはクーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、主作動油冷却管路13をバイパスして所定の潤滑部位に作動油を供給するバイパスバルブ4を有するパイパス管路16を具備し、通常、主作動油冷却管路13が動作し、作動油が所定温度以下のとき、またはクーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、主作動油冷却管路13をバイパスするパイパス管路16が動作するものである。
【0052】
したがって、トルクコンバータ8を通過した作動油の油圧が、クーラーインプットチェックバルブ1が開動作する第1の閾値油圧よりも高く、第2の閾値油圧よりも低い油圧では、主作動油冷却管路13を介して所定の潤滑部位5に作動油を供給できる。また、オイルクーラー2及びクーラーインプットチェックバルブ1に損傷が生じたときのように、クーラーインプットチェックバルブ1に供給される作動油の油圧が第2の閾値油圧以上になったときには、パイパス管路16により作動油を所定の潤滑部位5に供給できる。そして、温度が低く、作動油の通油抵抗が大きい寒冷地等では、作動油が所定温度以下のときも、パイパス管路16を介して作動油を所定の潤滑部位5に供給できる。
【0053】
この自動変速機の油圧制御装置のバイパスバルブ4は、油圧を検出する第1の入力ポートとなる入力ポート4c及び第2の入力ポートとなる入力ポート4f並びにクーラーインプットチェックバルブ1の入力ポート1c側の油圧を導入する入力ポート4e及びそれを所定の潤滑部位5側に出力する出力ポート4dを具備するものであるから簡単な構成で、間違いのない動作を行うことができる。
なお、少なくとも、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと冷却を行うオイルクーラーとを通し、所定の潤滑部位に冷却された前記作動油を供給するとは、クーラーインプットチェックバルブとオイルクーラーとの組み合わせ以外の構成要件が付加される可能性を示唆するものである。
【0054】
更に、本実施の形態の自動変速機の油圧制御装置のバイパスバルブ4は、ソレノイドバルブ9によって所定の油圧、即ち、ソレノイドモジュレータバルブからの作動油の油圧を導入し、それによって温度条件等の外的要件によって開閉制御されるものである。したがって、ソレノイドバルブ9による外的要件、例えば、温度条件等によって外部から油圧を導入することによって、自在にバイパスバルブ4の制御に使用することができる。なお、ここでは温度を使用したが、粘度を基にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる自動変速機の油圧制御装置の接続関係を示す配管図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態にかかる自動変速機の油圧制御装置の動作のタイミングを説明する説明図である。
【図3】図3は従来の自動変速機の油圧制御装置のオイルクーラーとそのバイパス系の関係を説明する配管図である。
【符号の説明】
【0056】
1 クーラーインプットチェックバルブ
2 オイルクーラー
4 バイパスバルブ
7 ロックアップバルブ
8 トルクコンバータ
9,10 ソレノイドバルブ
13 主作動油冷却管路
16 バイパス管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプから送給されたトルクコンバータを介した作動油を、少なくとも、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと冷却を行うオイルクーラーとを通し、所定の潤滑部位に冷却された前記作動油を供給する自動変速機の油圧制御装置において、
前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧をバイパスバルブの第1の入力ポートに導入し、また、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブの第2の入力ポートに前記第1の閾値油圧よりも高い別の油圧の作動油を導入し、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、前記バイパスバルブを開動作させ、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油が、前記オイルクーラーをバイパスして前記所定の潤滑部位に供給されることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
オイルポンプから送給されたトルクコンバータを介した作動油を、少なくとも、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと冷却を行うオイルクーラーとを通し、所定の潤滑部位に冷却された前記作動油を供給する自動変速機の油圧制御装置において、
前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を第1の入力ポートに導入し、また、前記作動油が所定温度以下のとき、第2の入力ポートにトルクコンバータを介さない作動油の油圧を導入し、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧が、前記第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上になったとき、または、前記作動油が所定温度以下のとき、前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の前記作動油を、前記オイルクーラーを有する管路をバイパスさせて、前記所定の潤滑部位に供給するバイパスバルブを具備することを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
オイルポンプから送給されたトルクコンバータを介した作動油を、少なくとも、第1の閾値油圧以上で開動作するクーラーインプットチェックバルブと冷却を行うオイルクーラーとを通し、所定の潤滑部位に冷却された前記作動油を供給する自動変速機の油圧制御装置において、
前記トルクコンバータのロックアップを制御するロックアップバルブと、
前記ロックアップバルブのオフ状態のときに形成されるトルクコンバータ、クーラーインプットチェックバルブ、オイルクーラーを通り、所定の潤滑部位に作動油を供給する主作動油冷却管路と、
前記ロックアップバルブのオフ状態のときに形成される前記作動油が所定温度以下のとき、または、前記クーラーインプットチェックバルブが開動作する第1の閾値油圧よりも高い第2の閾値油圧以上のとき、前記主作動油冷却管路をバイパスして前記所定の潤滑部位に作動油を供給するバイパスバルブを有するパイパス管路と
を具備することを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記バイパスバルブは、油圧を検出する第1の入力ポート及び第2の入力ポート並びに前記クーラーインプットチェックバルブの入力ポート側の油圧を導入するポート及びそれを所定の潤滑部位側に出力するポートを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記バイパスバルブは、ソレノイドバルブによって所定の油圧を導入し、それによって開閉制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−150528(P2009−150528A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336203(P2007−336203)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】