説明

自動車用のドライブトレイン

【課題】 自動車用のドライブトレインを提供する。
【解決手段】 過給機(5)によって過給されかつ予め設定可能なトルクをドライブトレインに供給する目的を有する内燃機関(1)を有する自動車用のドライブトレインであって、内燃機関の入口側が空気流路(6)を介して過給機に結合され、かつ、空気流路が、触媒コンバータの上流で二次空気を内燃機関の出口側(21a、21b)に吹き込むために、二次空気管路(20)用の分岐管(7)を有する、ドライブトレインは、空気流路がスロットル弁なしに設けられ、ドライブトレインが、発電機として作動されることができる少なくとも1つの電気機械を備え、二次空気ポンプとして過給機が作動される間に、二次空気の吹き込みによって発生する給気圧力から生じる内燃機関の過剰トルクを電気機械の発電機モードによって補償するように構成される制御ユニットが設けられる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による自動車用のドライブトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機によって内燃機関を過給することが既知である。すなわち、空気システム内の過給機によって、上昇させた給気圧力を内燃機関の入口側に印加することにより、特に、内燃機関の出力を増大させることが可能である。さらに、内燃機関の出口側に二次空気を吹き込むために、触媒コンバータの上流で内燃機関の空気システムに二次空気ポンプを設けることも既知である。この結果、排気ガス内の酸素含有量が増大され、触媒コンバータの加熱が後燃焼を通して速められる。二次空気ポンプを省略し、その機能を過給機の機能で置き換えることが提案されている。しかし、この場合、スロットル弁に加えて、比較的複雑な調整システムと共に、別の弁が内燃機関の空気システムに必要となる。この理由は、当然、二次空気ポンプとして過給機が使用されるときに発生する望ましくない追加の給気圧力及び結果として生じる内燃機関の過剰トルクを防止する必要があるからである。このような装置は、一般型について記載した下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第19841330号明細書
【特許文献2】独国特許第4139291A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第1491735A1号明細書
【特許文献4】独国特許第102007057603A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、空気システムの改変を可能な限り小さくしつつ、過給機によって過給される内燃機関を有するドライブトレインからの二次空気ポンプの省略を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態及び発展形態に関する。
【0006】
本発明によれば、自動車用のドライブトレインが、過給機によって過給されかつ予め設定可能なトルクをドライブトレインに供給する目的を有する内燃機関を有し、内燃機関の入口側がスロットル弁なしに空気流路(an air mass flow line、圧気流路)を介して過給機に結合されること、ドライブトレインが、発電機として作動されることができる少なくとも1つの電気機械を備えること、及び、触媒コンバータの上流で二次空気を内燃機関の出口側に吹き込むことによって発生する給気圧力から生じる内燃機関の過剰トルクを、二次空気ポンプとして過給機が作動される間に電気機械の発電機モードによって補償するように、換言すれば、利用するように、構成される制御ユニットが設けられること、が意図される。本発明は、発電機として作動されることができる電気機械をドライブトレインが有する自動車では、過給機が二次空気ポンプとしても使用される場合、相応して複雑な調整システムを有する内燃機関の空気システムに追加のスロットル弁は必要でない、という認識に基づいている。その代わりに、二次空気ポンプとしての過給機の作動によって発生する過剰トルクは、「大目に見られる、許容される」ということである。すなわち、内燃機関は、自動車の運転者によって、例えば、アクセルペダルによって実際に予め設定されるトルクよりも高いトルクで作動される。しかし、自動車の運転者は、このことに気付かないが、この理由は、同時に、ドライブトレインで発電機として作動されることができる少なくとも1つの電気機械が、過剰トルクを正確に補償する(利用する)程度にちょうど十分な負荷で発電機として作動されるからである。したがって、内燃機関は、自動車の運転者によって予め設定されたトルクよりも高いトルクで作動されるが、ドライブトレインは、自動車の運転者によって予め設定されるトルクのみを供給する。過剰トルクは、発電機として作動される電気機械によって電気エネルギに変換される。
【0007】
この関連で、二次空気システムに結合部を有する出口が空気システムの過給機の下流に設けられる点で、内燃機関の空気システムは、非常に僅かな改変のみで済む。さらに、対応する制御ユニットのソフトウェアを変更することも必要である。この結果、二次空気ポンプを省略し、対応するコストを節減することができる。特に、内燃機関の入口側空気システムには、追加のスロットル弁等のようなさらなる措置の必要はない。この結果、例えば、朝に自動車を始動するとき、すなわち、触媒コンバータが低温であり、したがって二次空気を吹き込む必要があるとき、電気的な(電気を利用した)始動過程を実施することができ、この始動過程では、発電機として電気機械を作動することによって過給を実施できるようにバッテリの放電が行われる。
【0008】
ドライブトレインは、ハイブリッド車両に設けられることが好ましいが、この理由は、この場合、例えばクランクシャフト始動−発電機として相応して寸法決めされた電気機械、及びこのような電気機械が発電機として作動されるときに生成される電気エネルギ量を貯蔵するための相応して高出力のバッテリが通常すでに存在しているからである。
【0009】
本発明の第1の好ましい実施形態では、過給機はコンプレッサとして具体化される。内燃機関によるベルト駆動によって又は電気モータによって駆動されるこのようなコンプレッサは、内燃機関を過給する実証済みの方法である。
【0010】
本発明の第2の好ましい実施形態では、過給機は排気ガスターボ過給機として具体化される。内燃機関の排気ガスエネルギにより、タービンが回転され、したがって過給機が駆動されるので、特に高いエネルギ利用率が得られる。
【0011】
二次空気管路は、少なくともある部分において、ホース(結合)として設けられることが好ましい。本発明は、二次空気管路に追加のスロットル弁を必要としないので、本発明は、既存の取り付け空間によく適合できる簡単な方法で実施することができる。
【0012】
二次空気管路が弁を有することが有利である。これにより、内燃機関の出口側に二次空気を吹き込むことが必要な場合、二次空気管路の容易な開放が可能になる。さらに、これにより、空気システムに対する内燃機関の出口側の反応(Reactions)を確実に防止することができる(ブローバックに対する保護)。
【0013】
弁及び/又はおそらくは既存の二次空気弁は、電気的に作動される制御弁によって空気圧式に作動されることができる。このような空気圧式に作動される弁はしばしば使用され、そして、制御ユニットにより、個々に電気的に作動される制御弁によって作動されることができる。
【0014】
代わりに、弁及び/又は二次空気弁は電気的に作動される弁とすることができる。その場合には、制御ユニットに結合するために対応する電気導線が必要であり、この関連で、空気圧式に作動される弁と対照的に、空気圧管路、適切ならば、付設された低圧リザーバさえも省略することができる。
【0015】
本発明の特に好ましい一実施形態では、ドライブトレインは、単一シャフトのパラレルハイブリッドとして具体化されるハイブリッド車に設けられる。この関連で、内燃機関及び発電機として又はモータとして作動されることができる単一の電気機械は、ハイブリッド車両を駆動するための共通のシャフトに配置される。内燃機関と電気機械との間に対応する連携が設けられるので、ハイブリッド車両の少なくとも1つの車輪を駆動するために、電気機械及び/又は内燃機関によって、予め設定可能なトルクをドライブトレインに供給することができる。
【0016】
二次空気ポンプとしての本発明による過給機の使用は、特に、触媒コンバータの温度が限界温度の下方にあるときに行われ、その結果、二次空気の吹き込みの結果として、触媒コンバータが迅速に加熱され、したがって、その最適な動作温度に到達する。電気機械が発電機として作動される間に生成される電気エネルギ量は、また、貯えることができ、そして、例えば、高電圧バッテリなどのバッテリの充電状態(SOC)が閾値の下方にあり、したがって、バッテリを充電しなければならない場合にのみ、本発明を使用することができ、さもなければ、生成される電気エネルギ量は、他のある方法で放電されなければならないであろう。例えば、比較的長い停止時間の後に、本発明をハイブリッド車両の始動過程に使用することが意図される。
【0017】
図面を参照して本発明について以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の特に好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図は、自動車の内燃機関1の空気システム2を示している。この場合、元となる空気(raw air)はエアフィルタ3を介して空気システムに導入される。スロットル弁4はエアフィルタ3の下流に配置される。次に、過給機5がスロットル弁4の下流に設けられる。過給機5は、スロットル弁4から流出する空気の給気圧力を高める。過給機5の下流に、内燃機関1の2つのシリンダバンク11a、11bに供給するために、2つの接続された給気冷却器6a、6bを有する空気流路(an air mass flow line、圧気流路)6が配置される。したがって、コンプレッサ5は内燃機関1の入口側に空気を供給し、一方、空気流路6は、過給機5と内燃機関1の入口側との間にスロットル弁なしに具体化される。過給機5が、内燃機関1によりチェーン駆動又はベルト駆動によって駆動される場合、過給機5を通した空気量を正確に調整するために、また、過給機制御弁25が空気流路に配置される。このことは、電気的に駆動される過給機5では省略することができる。
【0020】
次に、分岐管7が空気流路6に設けられ、この分岐管を介して空気システムが過給機5の下流で内燃機関1の出口側21a、21bに結合される。このため、ホースとしてある部分に具体化される二次空気管路20が設けられ、この管路により、分岐管7が2つの二次空気弁22a、22bに結合される。二次空気弁22a、22bは、内燃機関1のそれぞれの出口側21a、21bの新鮮な空気量を制御するために設けられる。さらに、必要に応じて二次空気管路20を開閉するために、したがって、内燃機関1の排気ガス側21a、21bに二次空気を吹き込むために、弁23、例えば、ダイバータ弁が設けられる。さらに、二次空気管路20の空気流に影響を及ぼすために、スロットル24が設けられる。例えば、二次空気管路20が大きな断面を有する場合、スロットル24によって、一定圧力を予め設定することができる。
【0021】
本発明の特に好ましいこの実施形態では、内燃機関1によりチェーン駆動又はベルト駆動によって駆動される過給機5を有する内燃機関1の従来の空気システムから二次空気ポンプを省略する場合の単一の改変は、対応する分岐管7及び弁23及びスロットル24を備える二次空気管路20を設けることを含む。ホースとして具体化される二次空気管路20は、予め設定された取り付け空間に応じて、柔軟に、空気システムから内燃機関1の排気ガス側に導くことができる。特に、二次空気管路20は、また、部分的に管として具体化することができる。そして、すべての場合に、エアフィルタ3とスロットル弁4との間の出口を介して空気が供給されるであろうもはや不必要な二次空気ポンプは、省略される。
【0022】
二次空気弁22a、22b及び弁23は、本実施形態において、低圧リザーバ29によって圧力が供給される空気圧弁として設けられる。対応する制御ユニットと電気接続する電気制御弁28は、作動のために使用される。代わりに、制御弁28及び低圧リザーバ29は、弁23及び二次空気弁22a、22bが電気弁として具体化される場合、省略することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 内燃機関
5 過給機
6 空気流路
7 分岐管
20 二次空気管路
21a、21b 出口側
22a、22b 二次空気弁
23 弁
28 電気制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機(5)によって過給されかつ予め設定可能なトルクをドライブトレインに供給する目的を有する内燃機関(1)を有する自動車用のドライブトレインであって、前記内燃機関の入口側が空気流路(6)を介して前記過給機に結合され、かつ空気流路が、触媒コンバータの上流で二次空気を前記内燃機関の出口側(21a、21b)に吹き込むために、二次空気管路(20)用の分岐管(7)を有する、ドライブトレインにおいて、
前記空気流路がスロットル弁なしに設けられ、前記ドライブトレインが、発電機として作動されることができる少なくとも1つの電気機械を備え、二次空気ポンプとして前記過給機が作動される間に、二次空気の吹き込みによって発生する給気圧力から生じる前記内燃機関の過剰トルクを前記電気機械の発電機モードによって補償するように構成される制御ユニットが設けられる、ことを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
前記過給機がコンプレッサとして具体化される、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記過給機が排気ガスターボ過給機として具体化される、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記二次空気管路が、少なくとも所定部分において、ホースとして設けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記二次空気管路が弁(23)を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
前記弁及び/又は二次空気弁(22a、22b)が、電気的に作動可能な制御弁(28)によって空気圧式に作動されることができる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記弁及び/又は二次空気弁(22a、22b)が、電気式に作動されることができる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
内燃機関及び電気機械が単一の共通シャフトに配置される、単一シャフトのパラレルハイブリッドドライブトレインとして具体化される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項9】
過給機によって過給される内燃機関と、発電機として作動されることができる少なくとも1つの電気機械とを有するハイブリッド車両に二次空気を吹き込むための方法であって、少なくとも前記内燃機関が、予め設定可能なトルクを自動車の少なくとも1つの車輪に供給することができ、前記内燃機関の入口側が、触媒コンバータの上流で二次空気を前記内燃機関の出口側に吹き込むために二次空気管路用の分岐管を有する、スロットル弁なしの空気流路を介して前記過給機に結合され、かつ、二次空気ポンプとして前記過給機が作動される間に、二次空気の吹き込みによって発生する給気圧力から生じる前記内燃機関の過剰トルクが前記電気機械の発電機モードによって補償される方法。
【請求項10】
少なくとも前記触媒コンバータの温度が限界温度よりも低いときに実施される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−38153(P2010−38153A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162745(P2009−162745)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】