説明

船舶安全航行ネットワークシステム

【課題】航行情報の全体の通信量を減らすとともに、船舶に搭載される装置の構成をより単純化することで、小型船舶を含めた全ての船舶に搭載可能な安価で自由にアクセス可能な船舶安全航行ネットワークシステムを構築する。
【解決手段】船舶安全航行ネットワークシステムにおいて、船舶の情報をサーバ4から放送によって配信する。船舶の移動情報の計算はサーバ4で行われる。船舶の位置情報の取得はGPSによって行われる。船舶に搭載される情報処理システムは衝突の恐れがある異常接近する他船舶を検知し、警報を発する警報装置を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶安全航行ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の衝突を防止するためには、海上を航行する自船舶の周囲の船舶の情報を知ることが重要であり、特に船舶の位置情報ならびに、移動速度や進行方向など船舶の移動に係る情報といった、船舶の航行情報を知ることが重要である。
【0003】
近年においてはVHF帯の無線通信を用いたAIS(自動船舶識別装置)と呼ばれる船舶同士、船舶・陸上間での船舶の航行情報を交換するシステムも用いられている。しかしながら、AISは、国内航路で500トン以上の船舶、国際航路で300トン以上の船舶への設置が義務付けられているだけであり、大型船舶に限られたシステムである。さらに、AISがクローズドネットワークを用いていることから、その情報の送受信は特定の船舶間に限られている。また高価な専用システムが必要となることなどから、一般の船舶、特に小型船舶には普及していない。
【0004】
また、特許文献1には、インターネットや携帯電話を用いて、AIS搭載船とAIS非搭載船の船舶情報を取得し、他船舶の航行情報を表示するシステムが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−163765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明では、システムは、AIS搭載船とAIS非搭載船の船舶情報を合わせて受信する必要があり、また、船舶の情報を得るために、船舶に搭載された複数の装置に接続する必要があるなど構成が複雑になる。また、各船舶に設置する装置も複雑で高価なものとなる。また、特許文献1に開示されているシステムのように、船舶毎に個別に情報を送信する必要のある対称ネットワークでは、サーバから全船舶への通信量は、船舶数をnとすると最大でnの2乗に比例して増加し、船舶数の増加が大きな問題となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、通信量が少なく、船舶に搭載される装置の構成が単純で、小型船舶にも搭載可能な船舶安全航行ネットワークシステムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の船舶安全航行ネットワークシステムは、複数の船舶にそれぞれ設置された情報処理システムと、情報を送信する放送局と、前記放送局とインターネットを介して接続され、前記情報処理システムと前記インターネット及び無線通信を介して接続されたサーバと、を備え、各前記情報処理システムは、前記情報処理システムが設置された前記船舶の位置情報を取得し、取得した前記船舶の位置情報と前記船舶の位置情報を取得した時刻を示す時刻情報と船舶の識別情報とを、前記インターネット及び前記無線通信を介して前記サーバに送信し、前記サーバは、前記インターネット及び前記無線通信を介して前記各情報処理システムから送信された前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを受信し、受信した情報に基づき、送信元の前記情報処理システムの設置された前記船舶の移動速度及び進行方向を算出し、算出した前記移動速度と前記進行方向を示す移動情報と前記船舶の位置情報と前記船舶の識別情報とを前記インターネットを介して前記放送局に送信し、前記放送局は、前記サーバから受信した情報を放送し、前記情報処理システムは、前記放送局からの放送を受信し、受信情報を出力する。
【0009】
また好ましくは、前記情報処理システムは、前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを前記無線通信を通じて送信する手段を備え、前記無線通信を実現するネットワークは、前記情報処理システムからの無線信号を受信し、受信した前記無線信号に含まれている前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを前記サーバに送信する基地局を備え、前記情報処理システムが前記放送局からの放送を受信できる最大距離は、前記情報処理システムと前記基地局とが通信可能な最大距離よりも大きい。
【0010】
また好ましくは、前記船舶安全航行ネットワークシステムは、前記船舶に設置された画像表示手段をさらに備え、前記画像表示手段は、前記情報処理システムが受信した前記船舶の位置情報及び前記移動情報に基づき、自船舶及び前記自船舶の周囲に存在する他船舶の位置、進行方向、及び移動速度を示す画像を表示する。
【0011】
また好ましくは、前記船舶安全航行ネットワークシステムは、前記船舶に設置された警報手段をさらに備え、前記警報手段は、前記情報受信手段が受信した前記船舶の位置情報及び前記移動情報に基づき、自船舶が内在する所定範囲内に他船舶が進入するか否かを検知し、前記他船舶が進入すると検知した場合に警報を発する。
【0012】
また好ましくは、前記情報処理システムは、衛星測位システムによって前記船舶の位置情報を取得する。
【0013】
また好ましくは、前記放送局は、地上デジタル放送により、前記船舶の位置情報と前記移動情報と前記船舶の識別情報とを放送し、前記情報処理システムは、前記放送局から放送された情報を受信する地上デジタル放送受信機を備え、前記地上デジタル放送受信機が受信した情報を出力する。
【0014】
また好ましくは、前記サーバは、海上の障害物の位置情報とその障害物の識別情報とを、前記移動情報と前記船舶の位置情報と前記船舶の識別情報とともに前記放送局に送信する。
【0015】
また好ましくは、前記無線通信を実現するネットワークは、携帯電話通信ネットワーク、無線LAN、又はWiMAXネットワークである。
【0016】
また好ましくは、同一の船舶に設置される前記情報受信手段と前記情報送信手段とは、単一の機器によって構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、航行情報の全体の通信量を抑え、船舶に搭載される装置の構成を単純化することが可能となる。従って、小型船舶等にも搭載可能な船舶安全航行ネットワークシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る船舶安全航行ネットワークシステムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態に係る船舶安全航行ネットワークシステムは図1に示すように、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載された情報処理システム21(後述の図2参照)、携帯電話基地局2A,2B、サーバ4、地上デジタル放送局15で構成されている。
【0020】
サーバ4と地上デジタル放送局15とは、インターネット3を介して接続される。また、サーバ4と船舶1A,1B,1C,1Dに搭載された情報処理システム21とは、携帯電話基地局2A,2Bを経由するインターネット3及び無線通信30を介して接続される(詳細には、サーバ4と携帯電話基地局2A,2Bとは、インターネット3を介して接続され、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載された情報処理システム21と携帯電話基地局2A,2Bとは、無線通信30を介して接続される)。無線通信30は、携帯電話通信ネットワーク、無線LAN、又はWiMAXネットワークによって実現される。
【0021】
携帯電話基地局2A,2B、サーバ4、地上デジタル放送局15は、陸上に設置されたものであって、船舶1A,1B,1C,1Dは、地上デジタル放送局15が発する電波を受信可能であるととともに、携帯電話基地局2A,2Bと無線通信30による接続が可能な水域を航行する船舶である。
【0022】
なお、本実施の形態では、理解を容易にするため、船舶を4台、携帯電話基地局を2局、地上デジタル放送局を1局として説明を行うが、数を限定するものではない。
【0023】
より詳細に説明すると、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載された情報処理システム21は、GPS(Global Positioning System) を用いて現在位置の位置情報と現在時刻の時刻情報を一定周期で取得する。情報処理システム21は、取得した位置情報と時刻情報に自機が設置されている船舶の識別情報としての船舶IDを付加し、携帯電話端末から携帯電話基地局2A,2Bを経由して、インターネット3に接続されたサーバ4に送信する。
【0024】
サーバ4は、携帯電話基地局2A,2Bを介して送信されて来た情報を受信し、船舶IDをキーとして蓄積し、蓄積した情報に基づいて、各船舶1A,1B,1C,1Dの移動速度及び進行方向を示す移動情報を求め、受信した情報に対応付けて保存する。
【0025】
サーバ4は、周期的に、船舶ID、位置情報、移動情報を含む航行情報を地上デジタル放送局15に送信する。
【0026】
地上デジタル放送局15は、地上デジタル放送により、船舶1A,1B,1C,1Dの情報処理システム21に、航行情報を送信する。地上デジタル放送局15の送信電力は、船舶1A,1B,1C,1Dに設置された情報処理システム21の送信電力より十分に大きく(10倍以上)、複数の携帯電話基地局2A、2Bを包含する広い範囲に航行情報を送信することができる。
【0027】
船舶1A,1B,1C,1Dに搭載される情報処理システム21は、地上デジタル放送局15が放送した航行情報を受信し、受信情報を処理し、表示画面に、自船舶の位置及び移動速度及び進行方向と、周囲の船舶の位置及び移動速度及び進行方向を表示する。
【0028】
次に、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載された情報処理システム21とサーバ4の構成について図2,3を参照して具体的に説明する。
【0029】
図2に示すように、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載される情報処理システム21は、自己の位置情報を取得するためのGPS8と、計算機9と、携帯電話基地局2A,2Bと通信を行うための携帯電話端末10と、音や光によって警報を発する警報装置11と、地上デジタル放送局15から航行情報を受信する地上デジタル放送受信機16とから構成される。
【0030】
計算機9は、制御部18と、記憶装置19と、表示装置20と、インターフェイス17とから構成される。
【0031】
インターフェイス17は、GPS8、地上デジタル放送受信機16、携帯電話端末10、警報装置11が接続され、制御部18との間のデータの送受信を可能とする。
【0032】
記憶装置19は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク装置などから構成され、制御部18が実行するプログラム、データ等を記憶すると共に制御部18のワークエリアとして機能する。
【0033】
表示装置20は、液晶表示装置などから構成され、任意の画像を表示する。
【0034】
制御部18は、記憶装置19に記憶されたプログラムを実行し、情報処理システム21全体の動作を制御する。具体的には、制御部18は、i)GPS8から、周期的に自装置の現在位置を取得し、インターフェイス17及び携帯電話端末10を介してサーバ4宛に送信し、ii)地上デジタル放送局15からの航行情報を地上デジタル放送受信機16及びインターフェイス17を介して受信し、iii)受信した航行情報に基づいて、自船舶及び近傍の船舶の移動速度及び進行方向を示すシンボルを形成して、表示装置20に表示し、iv)自船舶の航行予定領域に他の船舶が侵入する可能性の有無を判別し、可能性がある場合に、警報装置11から警報を発する。
【0035】
なお、制御部18の動作の詳細は、フローチャートを参照して後述する。
【0036】
図3に示すように、サーバ4は、プログラムを実行する制御部6、各船舶の船舶ID、船舶の位置情報、及び時刻情報を蓄積する記憶装置7、インターネット3を介して地上デジタル放送局15及び携帯電話基地局2A,2Bと接続されるインターフェイス5から構成される。
【0037】
制御部6はマイクロプロセッサ等から構成され、メモリに記憶されている制御動作を実行する。本実施形態においては、制御部6は情報処理システム21から受信した船舶の位置情報と時刻情報に基づき、各船舶の移動速度及び進行方向を求める。
【0038】
記憶装置7は、各船舶の船舶IDをキーに、情報処理システム21から受信した船舶の位置情報や時刻情報を記憶する。
【0039】
インターフェイス5は、制御部6と、記憶装置7と、インターネット3とを相互に接続する。
【0040】
以下、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載されている情報処理システム21の計算機9が実行する位置情報送信処理を図4を用いて説明する。なお位置情報送信処理は、計算機9の制御部18が、タイマ割り込み等に応答して、一定の時間間隔で繰り返すものである。
【0041】
まず、制御部18は、GPS8から船舶の現在位置情報と現在時刻情報を取得する(ステップS101)。次に、制御部18は、自船舶の船舶IDと取得した船舶の位置情報と時刻情報とを対応付けて、携帯電話端末10、携帯電話基地局2A,2B等を介して、サーバ4に送信する(ステップS102)。
【0042】
サーバ4のインターフェイス5は、インターネット3を介して情報処理システム21からの位置情報等を受信すると、制御部6にその旨を通知する。制御部6は、通知に応答して、図5に示す航行情報計算送信処理を開始する。以下、航行情報計算送信処理を説明する。
【0043】
まず、制御部6は、受信した船舶IDと船舶の位置情報と時刻情報とを取り込み、記憶装置7に保存する(ステップS201)。
【0044】
次に、制御部6は、同一船舶IDの情報を過去に受信しているか否かを判別する(ステップS202)。制御部6は、受け取っていれば(ステップS202;Yes)、今回の位置と前回の位置とから船舶の進行方向を判別し、前回の位置と今回の位置との間の距離を時刻の差で割ることにより、船舶の移動速度を算出する(ステップS203)。
【0045】
続いて、制御部6は、船舶ID、位置情報、速度情報、方向情報を含む航行情報を生成する(ステップS204)。
【0046】
次に、制御部6は、生成した航行情報を、全ての地上デジタル放送局15に送信する(ステップS205)。この送信が行われると、各地上デジタル放送局15は、受信した航行情報を放送し、船舶1A,1B,1C,1Dでは、地上デジタル放送受信機16は、前記放送された航行情報を受信し、制御部18は、地上デジタル放送受信機16が受信した最新の航行情報を記憶装置19に順次格納する。
【0047】
また、ステップS202でNoと判別された場合には、ステップS203をスキップし、位置情報のみがデジタル放送局15に送信される。
【0048】
続いて、船舶1A,1B,1C,1Dに搭載される情報処理システム21における画像表示処理を、図6を用いて説明する。この画像表示処理は、表示装置20に自船舶と近隣の船舶の位置関係を表示するものであって、制御部18により繰り返し行われる。
【0049】
まず、制御部18は、記憶装置19に格納されている航行情報に基づいて、自船舶から所定の距離以内に位置している船舶を選択する(ステップS301)。
【0050】
次に、制御部18は、自船舶の位置を基準として、各船舶の相対位置を求める(ステップS302)。
【0051】
次に、制御部18は、各船舶について、その速度を矢印の長さで、進行方向を矢印の向きで示す指標を生成する(ステップS303)。
【0052】
続いて、制御部18は、図7に示すように、表示装置20上に、自船舶12を基準として、他の船舶13のステップS302で求めた位置に、ステップS303で生成した指標(矢印)を配置して表示する。さらに、各指標に近接してその船舶の船舶IDと移動速度を表示する(ステップS304)。この表示により、自船舶12の乗組員は、自船舶12の近隣の他船舶13が、どこに位置して、どの方向にいくらの速度で航行しているかを、容易に判別できる。これにより、乗組員は、他船舶13との衝突の可能性を事前に推定することができる。
【0053】
また、図7に示す破線14は、地上デジタル放送受信機16に受信された最新の航行情報に基づき、制御部18により表示装置20に表示された警報境界を示している。警報境界14は、自船舶12の位置を中心とする円であり、その半径は、乗組員により任意に設定される。そして、制御部18は、警報境界14内に他船舶13が進入するか否かを検知し、進入すると検知した場合には、警報装置11に警報を発信させる。
【0054】
本実施の形態によれば、各船舶は互いの位置や移動速度や進行方向を知ることができるため、衝突を防ぐことが出来る。そして、サーバ4から船舶への通信が放送により行われているので大量の船舶情報を高速に効率よくサーバ4から全船舶へ送ることが可能となる。すなわち、サーバ4から船舶への情報送信が放送により同報的に行われるため、船舶数をnとすると、通信量はnに比例した増加にとどまる。また、約416kbpsの通信速度を持つ地上デジタル放送の1セグメントを用いることで、1秒毎に1000隻以上の船舶の情報を送信することができる。複数セグメントを組み合わせることで、さらに多くの船舶情報を得ることが可能となる。このように地上デジタル放送を用いることで、大量の船舶情報を取得しながら輻輳の回避を行うことを可能とする。
【0055】
本実施形態の船舶安全航行ネットワークシステムは、安価な民生機器や広く普及しているインターネット・携帯電話通信ネットワークなどを用いるため、オープンなシステムを安価に構成できる。
【0056】
また、船舶1A,1B,1C,1Dからの位置情報をもとに、サーバ4上で船舶1A,1B,1C,1Dの移動情報を計算することで、通信量を減らすとともに、船舶1A,1B,1C,1D上のシステムを簡単化する。これによって船舶に搭載する機器の小型化、低価格化が可能となり、小型船舶への搭載が容易な船舶安全航行ネットワークシステムを構築することが可能となる。
【0057】
以上のように本実施形態の船舶安全航行ネットワークシステムは、既存のAISと比較しても、構成が簡単で、大量の船舶情報を高速に扱うことができる。
【0058】
また無線通信を利用して周囲の位置情報や移動情報などの航行情報を取得することから、夜間や霧などで視界が悪い場合においても機能を発揮することが期待できる。
【0059】
本実施形態によって、小型船舶を含めた多くの船舶が、自船舶の周囲の船舶の航行情報を得ることができるため、船舶の衝突を防ぐことが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲において種々改変することが出来る。
【0061】
例えば、サーバ4が航行情報を送信するタイミングは任意であり、サーバ4は、情報処理システム21から位置情報等を受信すると、記憶装置7に一旦格納し、周期的に、各船舶について、順番に最新の位置情報、速度情報、方向情報等を更新し、周期的に更新された情報を送信するようにしてもよい。
【0062】
また、例えば、位置情報などを送信する送信手段は、イカダや岩礁など、船舶1A,1B,1C,1Dが航行する水域内に存在して、船舶航行の妨げとなる海上の障害物に設置されてもよい。この場合には、障害物の位置情報と前記位置情報を取得した時刻を示す時刻情報とその障害物の識別情報とが送信手段によってサーバ4に送信された結果、サーバ4において障害物の移動速度や移動方向が算出され、さらにこの移動速度や移動方向を示す移動情報が、障害物の位置情報とともに、地上デジタル放送局15を通じて各船舶の情報処理システム21へ送信される。これにより、各船舶は、障害物の位置、移動速度、移動方向を知ることが出来るため、船舶が障害物と衝突することが防止される。
【0063】
また上述の岩礁のように移動を行わない障害物については、その障害物の位置情報と識別情報とを予めサーバ4の記憶装置7に格納しておき、定期的に地上デジタル放送局15を通じて船舶の情報処理システムへ配信するようにしてもよい。
【0064】
その他、システムの構成、データの処理の手順等は同様の作用と効果が得られるならば、任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の船舶安全航行ネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】船舶に搭載される情報処理システムの構成図の一例である。
【図3】サーバの構成図の一例である。
【図4】位置情報送信処理を説明するフローチャートである。
【図5】航行情報計算送信処理を説明するフローチャートである。
【図6】画像表示処理を説明するフローチャートである。
【図7】船舶の航行情報の表示例である。
【符号の説明】
【0066】
1A,1B,1C,1D 船舶
2A,2B 携帯電話基地局
3 インターネット
4 サーバ
5 サーバのインターフェイス
6 サーバの制御部
7 サーバの記憶装置
8 GPS
9 計算機
10 携帯電話端末
11 警報装置
12 自船舶
13 他船舶
14 警報境界
15 地上デジタル放送局
16 地上デジタル放送受信機
17 船舶に搭載される情報処理システムの計算機のインターフェイス
18 船舶に搭載される情報処理システムの計算機の制御部
19 船舶に搭載される情報処理システムの計算機の記憶装置
20 船舶に搭載される情報処理システムの計算機の表示装置
21 情報処理システム
1 無線通信

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の船舶にそれぞれ設置された情報処理システムと、
情報を送信する放送局と、
前記放送局とインターネットを介して接続され、前記情報処理システムと前記インターネット及び無線通信を介して接続されたサーバと、を備え、
各前記情報処理システムは、前記情報処理システムが設置された前記船舶の位置情報を取得し、取得した前記船舶の位置情報と前記船舶の位置情報を取得した時刻を示す時刻情報と船舶の識別情報とを、前記インターネット及び前記無線通信を介して前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記インターネット及び前記無線通信を介して前記各情報処理システムから送信された前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを受信し、受信した情報に基づき、送信元の前記情報処理システムの設置された前記船舶の移動速度及び進行方向を算出し、算出した前記移動速度と前記進行方向を示す移動情報と前記船舶の位置情報と前記船舶の識別情報とを前記インターネットを介して前記放送局に送信し、
前記放送局は、前記サーバから受信した情報を放送し、
前記情報処理システムは、前記放送局からの放送を受信し、受信情報を出力する、
ことを特徴とする船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項2】
前記情報処理システムは、前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを前記無線通信を通じて送信する手段を備え、
前記無線通信を実現するネットワークは、前記情報処理システムからの無線信号を受信し、受信した前記無線信号に含まれている前記船舶の位置情報と前記時刻情報と前記船舶の識別情報とを前記サーバに送信する基地局を備え、
前記情報処理システムが前記放送局からの放送を受信できる最大距離は、前記情報処理システムと前記基地局とが通信可能な最大距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項3】
前記船舶に設置された画像表示手段をさらに備え、
前記画像表示手段は、前記情報処理システムが受信した前記船舶の位置情報及び前記移動情報に基づき、自船舶及び前記自船舶の周囲に存在する他船舶の位置、進行方向、及び移動速度を示す画像を表示する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項4】
前記船舶に設置された警報手段をさらに備え、
前記警報手段は、前記情報受信手段が受信した前記船舶の位置情報及び前記移動情報に基づき、自船舶が内在する所定範囲内に他船舶が進入するか否かを検知し、前記他船舶が進入すると検知した場合に警報を発する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項5】
前記情報処理システムは、衛星測位システムによって前記船舶の位置情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項6】
前記放送局は、地上デジタル放送により、前記船舶の位置情報と前記移動情報と前記船舶の識別情報とを放送し、
前記情報処理システムは、前記放送局から放送された情報を受信する地上デジタル放送受信機を備え、前記地上デジタル放送受信機が受信した情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項7】
前記サーバは、海上の障害物の位置情報とその障害物の識別情報とを、前記移動情報と前記船舶の位置情報と前記船舶の識別情報とともに前記放送局に送信する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項8】
前記無線通信を実現するネットワークは、携帯電話通信ネットワーク、無線LAN、又はWiMAXネットワークである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。
【請求項9】
同一の船舶に設置される前記情報受信手段と前記情報送信手段とは、単一の機器によって構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の船舶安全航行ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−92245(P2010−92245A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261093(P2008−261093)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(596053079)
【Fターム(参考)】