説明

衝突予測装置

【課題】 自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる衝突予測装置を提供する。
【解決手段】衝突予測ECU1における衝突位置分布演算部20は、衝突位置演算部19が予測した衝突予測位置に基づいて、自車両の領域を分割して得られる分割領域における衝突予測領域としての信頼度を算出する。衝突位置分布演算部20は、しきい値マップ記憶部21に衝突予測領域としての信頼度を参照して衝突予測領域を予測する。ここで、自車両の領域を分割して得られる分割領域AX,BXのうち、第1列分割領域AXは、2つの第2列分割領域BXと重なって設定されている。また、第2列分割領域BXは、2つの第1列分割領域AXと重なって設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両における他車両などの自車両の周囲における障害物との衝突位置を予測する衝突予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周囲における他車両などの障害物との衝突を予測し、交通事故の防止に寄与する交通事故防止装置がある(たとえば特許文献1)。この交通事故防止装置では、自車両の周囲における障害物である移動体の進路を予測するとともに、自車両の進路を予測する。この移動体と車両との進路に基づいて移動体と車両とが衝突する可能性を算出して、移動体と車両とが衝突する可能性が高い場合に、警報を発するなどの処理を行うものである。
【特許文献1】特開2003−81037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示された交通事故防止装置では、障害物と自車両とが衝突するか否かを判定しているのみであり、その衝突態様にまでは言及していないものである。このため、衝突態様による対応を行うことができず、たとえば自車両における障害物の衝突位置を求めることができない。したがって、衝突位置に応じた処理、たとえば衝突位置に対応するエアバッグを開放させる準備を行うなどの処理を行うことができないという問題があった。また、障害物の進路は、障害物を検出した情報に含まれる誤差により予測の精度が変動するため、衝突位置を正確に求めることができないおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明の課題は、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる衝突予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明に係る衝突予測装置は、自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、自車の走行軌道と障害物の移動軌道とに基づいて、自車両に対する障害物の衝突予測箇所を取得する衝突予測箇所取得手段と、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、複数の分割領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備え、分割領域は、他の分割領域と互いに重なるように設定されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る衝突予測装置においては、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、複数の分割領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する。このため、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる。ところで、複数の分割領域を生成した場合、隣接する分割領域の境界付近に衝突位置が位置する場合、衝突位置と予測される分割領域が分散されてしまい、衝突予測領域の予測精度の低下を招くことが懸念される。この点、本発明に係る衝突予測装置では、分割領域は、他の分割領域と互いに重なるように設定されている。このため、障害物の衝突予測位置が、隣接する分割領域の境界付近となった場合でも、これらの隣接する分割領域に重複する分割領域では、衝突予測位置が収まることになる。したがって、ある隣接する分割領域の境界付近に衝突予測位置が位置したとしても、精度よく障害物の衝突位置を検出することができる。
【0007】
また、上記課題を解決した本発明に係る衝突予測装置は、自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、自車の走行軌道と障害物の移動軌道とに基づいて、自車両に対する障害物の衝突予測箇所を複数回取得する衝突予測箇所取得手段と、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域および自車両の領域を拡張した拡張領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、複数の分割領域および拡張領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る衝突予測装置では、複数の分割領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定するため、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる。また、衝突予測位置として、自車両の領域を分割した分割領域のみを設定した場合、障害物の幅が大きいと、自車両の衝突位置には障害物がないながらも、障害物と自車両との衝突が生じる可能性が大きくなる。この点、本発明に係る衝突予測装置では、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域のほか、自車両の領域を拡張した拡張領域をも衝突予測領域として判定している。このため、自車両の衝突位置には障害物がないながらも、障害物と自車両との衝突が生じる場合の衝突を精度よく予測することができる。
【0009】
このとき、拡張領域が複数の拡張分割領域に分割されている態様とすることができる。このように、拡張領域についても拡張分割領域に分割されていることにより、自車両に対する障害物の衝突位置をさらに精度よく予測することができる。
【0010】
さらに、上記課題を解決した本発明に係る衝突予測装置は、自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、自車の走行軌道と障害物の移動軌道とに基づいて、自車両に対する障害物の衝突予測箇所を複数回取得する衝突予測箇所取得手段と、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域およびこの分割領域に隣接する隣接分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、複数の分割領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る衝突予測装置では、複数の分割領域のうちから、障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定するため、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる。また、本発明に係る衝突予測装置では、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係のほか、分割領域に隣接する隣接分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、衝突予測領域を判定している。このため、移動速度が不安定である障害物、たとえば歩行者との衝突の場合でも、精度よく衝突予測領域を判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る衝突予測装置によれば、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0014】
図1は、本発明に係る衝突予測装置の構成を示すブロック構成図である。図1に示すように、衝突予測装置は、衝突予測ECU(Electronic Control Unit)1を備えている。衝突予測ECU1には、操舵角センサ2、ヨーレートセンサ3、車輪速センサ4、および障害物センサ5が接続されている。また、衝突予測ECU1には、警報装置31、衝突回避支援装置32、シートベルト制御装置33、シート位置制御装置34、ブレーキ制御装置35、およびエアバッグ制御装置36が接続されている。
【0015】
衝突予測ECU1は、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。衝突予測ECU1は、推定カーブ半径演算部11、自車軌道演算部12、自車速演算部13、障害物速度演算部14、相対速度演算部15を備えている。また、衝突予測ECU1は、障害物移動距離演算部16、障害物軌道演算部17、障害物幅検出部18、衝突位置演算部19、および衝突位置分布演算部20を備えている。さらに、衝突予測ECU1は、しきい値マップ記憶部21および衝突判定部22を備えている。
【0016】
操舵角センサ2は、たとえば車両におけるステアリングロッドに取り付けられており、運転者が操作したステアリングホイールの操舵角を検出する。操舵角センサ2は、検出した操舵角に関する操舵角信号を衝突予測ECU1における推定カーブ半径演算部11に送信する。
【0017】
ヨーレートセンサ3は、たとえば車体の中央位置に設けられており、車体にかかるヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ3は、検出したヨーレートに関するヨーレート信号を衝突予測ECU1における推定カーブ半径演算部11に送信する。
【0018】
車輪速センサ4は、たとえば車両のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度を検出する。車輪速センサ4は、検出した車輪速度に関する車輪速度信号を衝突予測ECU1における自車速演算部13に送信する。
【0019】
障害物センサ5は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)カメラと画像処理部とを備えている。CCDカメラは、車両におけるルームミラーなど、車両の前方に取り付けられる。この際、CCDカメラは、その光軸方向が車両の進行方向と一致するように取り付けられる。画像処理部では、CCDカメラで撮像した画像を画像処理することにより、相手車両などの障害物を検出する。障害物センサ5は、障害物に関する情報である障害物情報を衝突予測ECU1における障害物速度演算部14、障害物移動距離演算部16、および障害物幅検出部18に送信する。
【0020】
衝突予測ECU1における推定カーブ半径演算部11は、操舵角センサ2から出力される操舵角信号およびヨーレートセンサ3から出力されるヨーレート信号に基づいて、自車両の推定カーブ半径を演算によって算出する。推定カーブ半径演算部11は、算出した推定カーブ半径に関する推定カーブ半径信号を自車軌道演算部12に出力する。
【0021】
自車軌道演算部12は、推定カーブ半径演算部11から出力される推定カーブ半径信号に基づいて、自車両の軌道を演算によって算出する。自車軌道演算部12は、算出した自車両の軌道に関する自車軌道信号を衝突位置演算部19に出力する。
【0022】
自車速演算部13は、車輪速センサ4から出力される車輪速度信号に基づいて、自車両の車速を演算によって算出する。自車速演算部13は、算出した自車両の車速に関する自車速信号を相対速度演算部15に出力する。
【0023】
障害物速度演算部14は、障害物センサ5から送信される障害物情報に基づいて、障害物の移動速度を演算によって算出する。障害物速度演算部14は、算出した障害物の移動速度に関する障害物移動速度信号を相対速度演算部15に出力する。
【0024】
相対速度演算部15は、自車速演算部13から出力される自車速信号および障害物移動速度信号から出力される障害物移動速度信号に基づいて、自車両に対する障害物の相対速度を演算によって算出する。相対速度演算部15は、算出した自車両に対する障害物の相対速度に基づく相対速度信号を衝突位置演算部19および衝突判定部22に出力する。
【0025】
障害物移動距離演算部16は、障害物センサ5から送信された障害物情報に基づいて、障害物センサ5が障害物を検出した後における障害物の移動距離を演算によって算出する。障害物移動距離演算部16は、算出した障害物の移動距離に関する障害物移動距離信号を障害物軌道演算部17に出力する。
【0026】
障害物軌道演算部17は、障害物移動距離演算部16から出力された移動距離信号に基づいて、障害物の軌道を演算によって算出する。障害物軌道演算部17は、算出した障害物の軌道に関する障害物軌道信号を衝突位置演算部19に出力する。
【0027】
障害物幅検出部18は、障害物センサ5から送信された障害物情報に基づいて、障害物の幅である障害物幅を検出する。障害物幅検出部18は、検出した障害物幅に関する障害物幅信号を衝突判定部22に出力する。
【0028】
衝突位置演算部19は、自車軌道演算部12から出力される自車軌道信号、相対速度演算部15出力される相対速度信号、および障害物軌道演算部17から出力される障害物軌道信号に基づいて、自車両における障害物の衝突位置を演算によって予測する。衝突位置演算部19は、予測した衝突位置である衝突予測位置に基づく衝突予測位置信号を衝突位置分布演算部20に出力する。
【0029】
衝突位置分布演算部20は、図2に示すように、自車両50の領域を複数に分割して得られる分割領域AX,BX(X:任意の整数)を記憶している。なお、ここでは、自車両50の幅方向に対する分割領域のみを符号を付して示しているが、自車両50の前後方向に対する分割領域をも設定されている。この分割領域は、第1分割領域列Aを分割した第1列分割領域AXと、第2分割領域列Bを分割した第2列分割領域BXとを含んでいる。これらの分割領域AX,BXは、いずれも互いに同一幅に設定されている。
【0030】
このうち、第1列分割領域AXは、2つの第2列分割領域BXと重なって設定されている。たとえば、第1列第1分割領域A1は、第2列第1分割領域B1および第2列第2分割領域B2と重なって設定されている。また、第2列分割領域BXは、第2分割領域列Bの両端に配置された第2列第10分割領域B10および第2列第11分割領域B11を除いて、2つの第1列分割領域AXと重なって設定されている。たとえば、第2列第1分割領域B1は、第1列第1分割領域A1および第1列第2分割領域A2と重なって設定されている。
【0031】
また、分割領域AX,BXには、自車両50の領域を分割して得られた領域のほか、自車両を拡張した拡張領域をも含まれている。具体的な拡張領域は、第1分割領域列Aでは、第1列第5分割領域A5〜第1列第10分割領域A10までとされ、第2分割領域列Bでは、第2列第4,第5分割領域B4,B5のそれぞれの一部と、第2列第6分割領域B6〜第2列第11分割領域B11までとされている。また、これらの拡張領域についても、互いに同一の幅となるように分割された分割領域とされている。
【0032】
衝突位置分布演算部20は、衝突位置演算部19から出力される衝突予測位置信号に基づく衝突位置が、第1分割領域列Aおよび第2分割領域列Bのそれぞれにおけるいずれの分割領域AX,BXに属しているかを判定する。また、衝突位置分布演算部20では、判定された分割領域AX,BXに障害物が衝突する信頼度を算出する。ここでもっとも高い信頼度として算出される数値は、たとえば「15」とされる。
【0033】
さらに、衝突位置分布演算部20では、所定の時間内に出力される衝突位置信号に基づく各分割領域AX,BXにおける信頼度を積算している。ここでの積算回数は、たとえば過去10回分を最大としている。こうして、衝突位置分布演算部20では、各分割領域AX,BXにおける信頼度の積算値を算出する。衝突位置分布演算部20は、算出した各分割領域AX,BXにおける信頼度に基づく信頼度信号を衝突判定部22に出力する。
【0034】
しきい値マップ記憶部21は、図3(a)に示す第1しきい値マップと、図3(b)に示す第2しきい値マップとを記憶している。しきい値マップ記憶部21は、衝突判定部22からの読込信号に応じて、衝突判定部22に対して第1しきい値マップまたは第2しきい値マップを提供する。
【0035】
衝突判定部22は、相対速度演算部15からしきい値マップ記憶部21から読み込むしきい値マップを、第1しきい値マップと第2しきい値マップのいずれにするかを決定し、決定したしきい値マップをしきい値マップ記憶部21から読み込む。ここでは、最初に第1しきい値マップを読み出して第1衝突判定を行い、第1衝突判定で衝突しないと判定した後、障害物が対向車両であると判断した場合に、第2しきい値マップを読み出して第2衝突判定を行う。
【0036】
また、衝突判定部22は、障害物幅検出部18から出力された障害物幅信号に基づく障害物幅および衝突位置分布演算部20から出力された信頼度信号に基づく各分割領域AX,BXにおける信頼度をしきい値マップ記憶部21から読み込んだしきい値マップに参照して自車両における障害物との衝突位置を判定する。衝突判定部22は、障害物が衝突すると判定した場合に、自車両における衝突位置に関する衝突位置信号を警報装置31、衝突回避支援装置32、シートベルト制御装置33、シート位置制御装置34、ブレーキ制御装置35、およびエアバッグ制御装置36にそれぞれ出力する。
【0037】
警報装置31は、警告音を発するスピーカおよびスピーカを制御するスピーカ制御装置、警報を表示するモニタおよびモニタ制御装置を備えている。警報装置31は、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、スピーカから発生させる警告音およびモニタに表示する警報をそれぞれスピーカ制御装置およびモニタ制御装置で生成して、それぞれスピーカに発生させ、モニタに表示させる。
【0038】
衝突回避支援装置32は、自動操舵制御装置および自動操舵装置を備えている。衝突回避支援装置32は、自動操舵制御装置において、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、衝突を回避し、または衝突による衝撃を緩和するための自動操舵装置における操舵方向および操舵量を算出する。衝突回避支援装置32は、自動操舵制御装置によって算出した操舵方向および操舵量に基づいて自動操舵装置を制御する。
【0039】
シートベルト制御装置33は、シートベルトの締付力を制御している。シートベルト制御装置33は、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、シートベルトの締付力を算出し、必要に応じてシートベルトに締付力を付加する。
【0040】
シート位置制御装置34は、車両のシート位置を自動的に調整するシート位置移動装置の制御を行う。シート位置制御装置34は、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、衝突による乗員への衝撃を緩和するためのシート位置を算出する。シート位置制御装置34は、算出したシート位置に基づいて、シート位置移動装置の制御を行う。
【0041】
ブレーキ制御装置35は、自動的にブレーキを制御して車両減速力を付与するものである。ブレーキ制御装置35は、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、車両に付与する減速力を算出し、算出した減速力に基づいてブレーキを制御する。
【0042】
エアバッグ制御装置36は、エアバッグの展開およびその展開準備を制御している。エアバッグ制御装置36は、衝突判定部22から出力された衝突位置信号に基づいて、エアバッグを展開させるかまたはその展開準備を行わせるかを決定し、その決定に基づいてエアバッグを制御する。
【0043】
続いて、本実施形態に係る衝突予測装置の制御手順について説明する。図4は本実施形態に係る衝突予測装置の制御手順を示すフローチャート、図5は図4に続く本実施形態に係る衝突予測装置の制御手順を示すフローチャートである。
【0044】
図4に示すように、衝突予測ECU1では、まず、障害物センサ5から出力された障害物情報を取得する(S1)。障害物情報としては、具体的には、障害物速度演算部14において障害物移動速度を算出するとともに、障害物移動距離演算部16において障害物の移動距離を算出する。また、障害物幅検出部18において、障害物幅を算出する。ここでの障害物幅は、代表値として算出される。具体的には両隣の代表値を線形補間してすることによってしきい値を算出し、このしきい値に応じて障害物幅を算出する。
【0045】
次に、推定カーブ半径の算出を行う(S2)。推定カーブ半径の算出は、推定カーブ半径演算部11において、操舵角センサ2から出力された操舵角情報およびヨーレートセンサ3から出力されたヨーレート信号に基づいて行われる。推定カーブ半径の算出が済んだら、自車軌道線を算出する(S3)。自車軌道線の算出は、自車軌道演算部12において、推定カーブ半径演算部11から出力された推定カーブ半径に基づいて行われる。
【0046】
自車軌道線の算出が済んだら、障害物軌道線を算出する(S4)。障害物軌道線は、障害物軌道演算部17において、障害物移動距離演算部16から出力された移動距離信号に基づいて算出される。
【0047】
それから、衝突位置演算部19において、衝突位置の予測を行う(S5)。衝突位置演算部19では、自車軌道演算部12から出力される自車軌道信号、障害物軌道演算部17から出力される障害物軌道信号、および相対速度演算部15から出力される相対速度信号に基づいて、自車両における障害物の衝突位置を演算によって求める。ここで、図2に示す分割領域AX,BXのうち、いずれの分割領域が衝突位置となるかの予測を行う。
【0048】
続いて、衝突位置分布演算部20において、衝突位置の信頼度を算出する(S6)。衝突位置の信頼度は、自車両から障害物までの距離、その距離変位、障害物軌跡線の形状等によって適宜設定される。たとえば、自車両から障害物までの距離が近い場合には信頼度が高く、距離が遠い場合には信頼度が低く算出される。また、自車両から障害物までの距離変位が大きい場合には信頼度が高く、距離変位が小さい場合には信頼度が低く算出される。さらに、障害物軌道線が直線に近い場合には信頼度が高く、直線から遠い場合には信頼度が低く算出される。
【0049】
衝突位置の信頼度を算出したら、各分割領域における衝突位置の信頼度を積算する(S7)。ここでは、ステップS5で予測された分割領域における信頼度に対して、ステップS6で算出された信頼度を積算する。こうして、衝突位置分布演算部20では、所定時間内における過去10回分の信頼度を積算した各分割領域AX,BXにおける衝突位置としての信頼度が算出される。
【0050】
衝突位置の信頼度を積算したら、衝突判定部22において、第1しきい値マップを選択し(S8)、しきい値マップ記憶部21から第1しきい値マップを読み出す。それから、第1衝突判定を行い、障害物が自車両に衝突するか否かを判断する(S9)。第1衝突判定では、衝突位置分布演算部20から出力された信頼度信号に基づく分割領域の信頼度および障害物幅検出部18から出力された障害物幅信号に基づく障害物幅を第1しきい値マップに参照し、衝突すると判定するしきい値を求める。たとえば、障害物幅が1.0mである場合について説明すると、第1列第1分割領域A1〜第1列第6分割領域A6、第2列第1分割領域B1〜第2列第7分割領域B7では、信頼度が50以上である場合に、信頼度が求められた分割領域が衝突予測領域となり、障害物が衝突すると判定する。
【0051】
また、第1列第7分割領域A7および,第1列第8分割領域A8では、信頼度が75以上である場合に、信頼度が求められた分割領域が衝突予測領域となり、障害物が衝突すると判定する。さらに、第1列第9分割領域A9、第1列第10分割領域A10、第2列第8分割領域B8〜第2列第11分割領域B11では、信頼度が110以上である場合に、信頼度が求められた分割領域が衝突予測領域となり、障害物が衝突すると判定する。ここで、複数の分割領域においてしきい値以上となった場合には、積算値がしきい値に対してもっとも大きく離れた分割領域を衝突位置と判定することができる。なお、第1しきい値マップに記憶されたしきい値の一般的傾向として、自車両の中央に近い方が、しきい値が低く設定されている。
【0052】
こうして衝突判定を行った結果、自車両に対して障害物が衝突すると判定した場合には、衝突位置とされた分割領域およびその分割領域に対する積算値、並びに自車両に対して障害物が衝突するまでの衝突時間に基づいて、警報装置31、衝突回避支援装置32、シートベルト制御装置33、シート位置制御装置34、ブレーキ制御装置35、およびエアバッグ制御装置36といった各デバイスを作動させる(S10)。こうして、衝突予測装置による制御を終了する。
【0053】
一方、ステップS9において、障害物が自車両に衝突しないと判定した場合には、図5に示すフローに進み、検出された障害物が対向車両であるか否かを判断する(S11)。対向車両であるか否かの判断は、自車両に対する障害物の相対速度が所定のしきい値以上となっているか否かによって行う。その結果、自車両に対する障害物の相対速度が所定のしきい値以上となっており、障害物が対向車両であると判断した場合には、障害物は自車両に衝突しないと判断して、そのまま衝突予測装置による制御を終了する。
【0054】
また、自車両に対する障害物の相対速度が所定のしきい値以上となっておらず、障害物が対向車両でないと判断した場合には、隣接する分割領域の信頼度を積算する(S12)。具体的に、たとえばステップS9の第1衝突判定において第1列第1分割領域A1に対する信頼度の判定を行った場合には、第1列第1分割領域A1に隣接する第1列第2分割領域A2および第1列第3分割領域A3の信頼度を第1列第1分割領域A1の信頼度に加算する。
【0055】
それから、衝突判定部22では、第2しきい値マップを選択して(S13)、しきい値マップ記憶部21から第2しきい値マップを読み出す。続いて、第2衝突判定を行い、障害物が自車両に衝突するか否かを判断する(S14)。第2衝突判定では、隣接する分割領域の信頼度を積算した分割領域の信頼度の積算値および障害物幅検出部18から出力された障害物幅信号に基づく障害物幅を第2しきい値マップに参照し、衝突すると判定するしきい値を求める。ここでしきい値を求める手順は、ステップS9で説明した手順と同様である。
【0056】
こうして衝突判定を行った結果、自車両に対して障害物が衝突すると判定した場合には、衝突位置とされた分割領域およびその分割領域に対する積算値、並びに自車両に対して障害物が衝突するまでの衝突時間に基づいて、警報装置31、衝突回避支援装置32、シートベルト制御装置33、シート位置制御装置34、ブレーキ制御装置35、およびエアバッグ制御装置36といった各デバイスを作動させて(S10)、衝突予測装置による制御を終了する。一方、自車両に対して障害物が衝突しないと判定した場合にはそのまま衝突予測装置による制御を終了する。
【0057】
このように、本実施形態に係る衝突予測装置では、自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域と、その分割領域に対する積算値との関係に基づいて、衝突予測領域を判定する。このため、自車両と障害物との衝突を予測する際に、自車両における障害物の衝突位置を精度よく検出することができる。
【0058】
ここで、本実施形態に係る衝突予測装置では、分割領域は、第1分割領域列Aを分割した第1列分割領域AXと、第2分割領域列Bを分割した第2列分割領域BXとを含んでおり、第1列分割領域AXは、2つの第2列分割領域BXと重なって設定されている。このため、たとえば第1分割領域列における隣接する分割領域AX,A(X+1)の境界付近に衝突位置が位置する場合、第1分割領域列Aでは衝突位置と予測される衝突予測領域が分散されてしまい、分割領域の予測精度の低下を招くことが懸念される。
【0059】
この点、分割領域としては第2分割領域列Bが設定されており、第2分割領域列Bにおける分割領域BXは、第1分割領域列Aにおける隣接する分割領域AX,BXの境界線と互いに重なるように設定されている。このため、障害物の衝突予測位置が、第1分割領域列Aにおいて、隣接する分割領域の境界付近となった場合でも、第2分割領域列Bでは、衝突予測位置が収まることになる。この関係は、第1分割領域列Aと第2分割領域列Bとが逆転した場合でも同様となる。したがって、一方の分割領域列における隣接する分割領域の境界付近に衝突予測位置が位置したとしても、精度よく障害物の衝突位置を検出することができる。
【0060】
また、上記実施形態に係る衝突予測装置では、自車両を複数に分割して得られる分割領域のほか、自車両を拡張した拡張領域である第1列第5分割領域A5〜第1列第10分割領域A10までの領域、並びに第2列第4分割領域B4および第2列第5分割領域B5のそれぞれの一部から第2列第11分割領域B11までの領域をも衝突予測領域として判定している。このため、自車両の衝突位置には障害物がないながらも、障害物と自車両との衝突が生じる場合の衝突を精度よく予測することができる。
【0061】
しかも、拡張領域についても第1列第5分割領域A5〜第1列第10分割領域A10までの領域、並びに第2列第4分割領域B4および第2列第5分割領域B5に分割された拡張分割領域とされている。このため、自車両に対する障害物の衝突位置をさらに精度よく予測することができる。
【0062】
さらに、上記実施形態に係る衝突予測装置では、自車両を複数に分割して得られる分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係のほか、分割領域に隣接する隣接分割領域と、衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、衝突予測領域を判定している。このため、移動速度が不安定である障害物、たとえば歩行者との衝突の場合でも、精度よく衝突予測領域を判定することができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、衝突予測領域を分割領域ごとに積算された信頼度に基づいて予測しているが、衝突予測位置が含まれる分割領域と判定された回数を単純に加算し、この加算値に基づいて衝突予測領域を予測することもできる。また、上記実施形態では、衝突位置と予測された分割領域にのみ信頼度を付与しているが、衝突位置と予測された分割領域の近傍における分割領域にも信頼度を付与する態様とすることもできる。
【0064】
たとえば、第1列第1分割領域A1および第2列第1分割領域B1に衝突位置が属すると判定した場合には、第1列第1分割領域A1および第2列第1分割領域B1にそれぞれ信頼度「15」を付与する。また、第1列第1分割領域A1の両隣に位置する第1列第2分割領域A2および第1列第3分割領域A3、並びに第2列第1分割領域B1の両隣に位置する第2列第2分割領域B2および第2列第3分割領域B3に対して、それぞれ信頼度「5」を付与する。さらに、それらの外側に並んで位置する第1列第4分割領域A4および第1列第5分割領域A5、並びに第2列第4分割領域B4および第2列第5分割領域B5に対して、それぞれ信頼度「1」を付与する態様とすることもできる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、分割領域の幅は互いに同一とされているが、分割領域の幅を適宜変えることもできる。このとき、たとえば、中央部を狭く、外側部を広くすることができる 他方、上記実施形態では隣接する分割領域の信頼度を加味して衝突予測領域を予測しているが、単純に各分割領域の信頼度を比較して衝突予測領域を予測することもできる。また、上記実施形態では、第1分割領域列Aおよび第2分割領域列Bの2列の分割領域列を設定しているが、3列以上の分割領域列を設定することもできる。また、複数の分割領域列を設定するにあたり、拡張領域を設定せず、自車両の領域を分割した分割領域のみとすることもできる。その一方、拡張領域を設定するにあたり、複数列の分割領域を設定することなく、1列の分割領域列のみとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る衝突予測装置の構成を示すブロック構成図である。
【図2】自車両における分割領域を説明する説明図である。
【図3】(a)は第1衝突判定に用いる第1しきい値マップを示す図、(b)は第2衝突判定に用いる第2しきい値マップを示す図である。
【図4】衝突予測装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】図4に続く衝突予測装置の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1…衝突予測ECU、2…操舵角センサ、3…ヨーレートセンサ、4…車輪速センサ、5…障害物センサ、11…推定カーブ半径演算部、12…自車軌道演算部、13…自車速演算部、14…障害物速度演算部、15…相対速度演算部、16…障害物移動距離演算部、17…障害物軌道演算部、18…障害物幅検出部、19…衝突位置演算部、20…衝突位置分布演算部、21…しきい値マップ記憶部、22…衝突判定部、31…警報装置、32…衝突回避支援装置、33…シートベルト制御装置、34…シート位置制御装置、35…ブレーキ制御装置、36…エアバッグ制御装置、50…自車両、A…第1分割領域列、AX(A1〜A10)…第1列分割領域、B…第2分割領域列、BX(B1〜B11)…第2列分割領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、
前記自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、
前記自車の走行軌道と前記障害物の移動軌道とに基づいて、前記自車両に対する前記障害物の衝突予測箇所を取得する衝突予測箇所取得手段と、
前記自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域と、前記衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、前記複数の分割領域のうちから、前記障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備え、
前記分割領域は、他の分割領域と互いに重なるように設定されていることを特徴とする衝突予測装置。
【請求項2】
自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、
前記自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、
前記自車の走行軌道と前記障害物の移動軌道とに基づいて、前記自車両に対する前記障害物の衝突予測箇所を複数回取得する衝突予測箇所取得手段と、
前記自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域および前記自車両の領域を拡張した拡張領域と、前記衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、前記複数の分割領域および拡張領域のうちから、前記障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備えることを特徴とする衝突予測装置。
【請求項3】
前記拡張領域が複数の拡張分割領域に分割されている請求項2に記載の衝突予測装置。
【請求項4】
自車両の走行軌道を取得する自車走行軌道取得手段と、
前記自車両の周辺に存在する障害物の移動軌道を取得する障害物移動軌道取得手段と、
前記自車の走行軌道と前記障害物の移動軌道とに基づいて、前記自車両に対する前記障害物の衝突予測箇所を複数回取得する衝突予測箇所取得手段と、
前記自車両の領域を複数に分割して得られる分割領域およびこの分割領域に隣接する隣接分割領域と、前記衝突予測箇所取得手段によって取得された衝突予測箇所の取得結果との関係に基づいて、前記複数の分割領域のうちから、前記障害物が衝突すると予測される衝突予測領域を判定する衝突予測領域取得手段と、を備えることを特徴とする衝突予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−214832(P2009−214832A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63098(P2008−63098)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】