説明

表示制御システム、表示制御方法、及び表示制御プログラム

【課題】画面の切替が運転者に与える影響度に基づいて表示手段の出力の切替を行うことができる、表示制御システム、表示制御方法、及び表示制御プログラムを提供すること。
【解決手段】表示制御システム1は、車両に設置されたモニタ60やインストルメント・パネル70の出力の切替を行う表示制御システム1であって、切替後にモニタ60等が出力する情報の重要度を取得する重要度取得部81aと、切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定部81bと、重要度と影響度とに基づいて、切替の態様を決定する切替態様決定部81cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御システム、表示制御方法、及び表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受像機等のAV機器において、画像情報の切り替えから視聴者が受ける不快感を抑制するため、画面に表示中の第1画像情報と、次に表示されるべき第2画像情報とのそれぞれの表示態様を、連続的に又は段階的に変更する画像制御装置が提案されている。この画像制御装置は、画面への表示における優先度を画像情報毎に設定し、第1画像情報と第2画像情報と間で優先度を比較した結果に基づいて切替時間を決定し、第1画像情報と第2画像情報とのそれぞれの表示態様を当該切替時間内に連続的に又は段階的に変更する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−4083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カーナビゲーションやカーオーディオ等の各種車載機器においては、当該車載機器に対する各種の入力操作等に基づいて、自動的に画面を切り替える場合がある。しかしながら、従来のこれらの車載機器や、上記特許文献1や特許文献2に記載の従来の装置は、画面の切り替えに際して、車両の状態や運転者等の状態を何ら考慮していなかった。このため、運転者が車両の周囲に注意を向けるべき状況であるにも関わらず、運転者の注意を引いてしまうような切替タイミングや表示形態で画面の切替を行ってしまい、運転者の注意を必要以上に引いてしまう可能性がある等、運転者の利便性等の面から更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、運転者に対して適切な切替を行うことができる態様で、出力の切替を行うことができる、表示制御システム、表示制御方法、及び表示制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の表示制御システムは、車両に設置された表示手段の出力の切替を行う表示制御システムであって、前記切替後に前記表示手段が出力する情報の重要度を取得する重要度取得手段と、前記切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定手段と、前記重要度と前記影響度とに基づいて、前記切替の態様を決定する切替態様決定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の表示制御システムは、請求項1に記載の表示制御システムにおいて、前記影響度特定手段は、前記車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルに基づいて前記影響度を特定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の表示制御システムは、請求項1又は2に記載の表示制御システムにおいて、前記影響度特定手段は、前記表示手段に対する前記運転者の視野情報に基づいて前記影響度を特定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の表示制御システムは、請求項1又は2に記載の表示制御システムにおいて、前記影響度特定手段は、前記切替に関する前記運転者の操作状態に基づいて前記影響度を特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の表示制御方法は、車両に設置された表示手段の出力の切替を行う表示制御方法であって、前記切替後に前記表示手段が出力する情報の重要度を取得する重要度取得ステップと、前記切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定ステップと、前記重要度と前記影響度とに基づいて、前記切替の態様を決定する切替態様決定ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の表示制御プログラムは、請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の表示制御システム、請求項5に記載の表示制御方法、及び請求項6に記載の表示制御プログラムによれば、切替後に表示手段が出力する情報の重要度と、出力の切替が運転者に与える影響度とに基づいて切替の態様を決定するので、切替後に表示手段が出力する情報の重要度に加えて、車両の状態や運転者の状態によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力の切替を行うことができ、運転者に対して適切な切替を行うことができる態様で、出力の切替を行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載の表示制御システムによれば、影響度特定手段は、車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルに基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、車両が走行する際に必要な注意のレベルによって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の表示制御システムによれば、影響度特定手段は、表示手段に対する運転者の視野情報に基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、運転者の視野における表示手段の位置によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の表示制御システムによれば、影響度特定手段は、切替に関する運転者の操作状態に基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、運転者の操作の種類や有無によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る表示制御システム、表示制御方法、及び表示制御プログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この形態は、切替に関する運転者の操作状態に基づいて切替が運転者に与える影響度を特定する形態である。
【0018】
(構成)
図1は、実施の形態1に係る表示制御システムを例示するブロック図である。この表示制御システム1は、車両に搭載されるシステムであって、視野検知部10、操作部20、車速センサ30、照度センサ40、現在地検出処理部50、モニタ60、インストルメント・パネル(以下「パネル」)70、及び表示制御装置80を備えている。
【0019】
(構成−視野検知部)
視野検知部10は、モニタ60やパネル70に対する使用者(車両の運転者や、当該車両におけるその他の同乗者。以下同じ)の視野情報を取得する視野情報取得手段である。視野情報とは、使用者の視野範囲を特定するための情報であり、当該視野情報に基づき、使用者の視野におけるモニタ60やパネル70の位置を特定し、当該使用者がモニタ60やパネル70を見ているか否か、あるいは見ていないが視野内にモニタ60やパネル70が存在しているか否かを特定することができる。視野検知部10の具体的な構成は任意であり、例えば、使用者の眼球をカメラで撮影し、車内に設置した点光源の角膜表面における反射像(角膜反射像)と瞳孔との位置関係に基づき視線を特定する方法(角膜反射法)を用いた手段等、公知の視線検知手段を用いて視線を検知し、当該視線を中心とした所定の範囲を視野範囲として特定することができる。この視野検知部10は、例えば、車両の各座席毎に設けられており、各座席に座っている使用者の視野をそれぞれ検知する。
【0020】
(構成−操作部)
操作部20は、モニタ60やパネル70の出力に関連する使用者からの操作入力を受け付ける操作手段である。この操作部20が受け付ける操作の具体的な内容としては、例えば、経路案内の目的地の設定やオーディオ機器の操作等、操作内容に対応する内容の情報が直接モニタ60やパネル70に出力される操作の他、ヘッドライトの点灯状態に基づいてパネル70のバックライト点灯状態が調整される場合における当該ヘッドライトに対する操作等、操作内容が間接的にモニタ60やパネル70の出力に反映される操作が含まれる。
【0021】
(構成−車速センサ)
車速センサ30は、車輪の回転速度等を表示制御装置80に出力するものであり、公知の車速センサを用いることができる。
【0022】
(構成−照度センサ)
照度センサ40は、車外、あるいはモニタ60周辺等の車内の照度を検出して表示制御装置80に出力するものであり、公知の照度センサを用いることができる。
【0023】
(構成−現在地検出処理部)
現在地検出処理部50は、表示制御装置80が取り付けられた車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在地検出処理部50は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0024】
(構成−モニタ)
モニタ60は、経路案内情報や警告情報等の各種の情報を表示するためのものであり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイ、又は車両のフロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を使用することができる。
【0025】
(構成−パネル)
パネル70は、主に車両の状態に関する情報を表示するための各種機器を備えた表示手段であり、例えば、スピードメータ、タコメータ、燃料計等を備えている。また、トンネル内走行時や夜間走行時における各種計器の視認性確保のためのバックライトを備えており、表示制御装置80の制御に基づいて当該バックライトの輝度が調整される。
【0026】
(構成−表示制御装置)
表示制御装置80は、表示制御を行う装置であり、制御部81、及びデータ記録部82を備えている。
【0027】
(構成−表示制御装置−制御部)
制御部81は、表示制御装置80を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る表示制御プログラムが、任意の記録媒体又はネットワークを介して表示制御装置80にインストールされることで、制御部81の各部を実質的に構成する。
【0028】
この制御部81は、機能概念的に、重要度取得部81a、影響度特定部81b、切替態様決定部81c、及び経路案内部81dを備えている。重要度取得部81aは、モニタ60やパネル70の出力の切替後にモニタ60やパネル70が出力する情報の重要度を取得する重要度取得手段である。影響度特定部81bは、切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定手段である。切替態様決定部81cは、重要度と影響度とに基づいて、切替の態様を決定する切替態様決定手段である。経路案内部81dは、出発地から目的地に至る経路を探索し、モニタ60を介して経路案内情報を出力させる経路案内手段である。この経路案内部81dの具体的な経路案内方法としては、カーナビゲーション装置で用いられている公知の方法を用いることができる。これらの制御部81の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0029】
(構成−表示制御装置−データ記録部)
データ記録部82は、表示制御装置80の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0030】
このデータ記録部82は、重要度データベース(以下、データベースを「DB」と称する)82a、地図情報DB82b、影響度マップ82e、及び制御テーブル82fを備えている。重要度DB82aは、モニタ60やパネル70が出力する情報と、当該情報の使用者にとっての重要度を特定する重要度情報とを、相互に関連付けて格納する重要度情報格納手段である。図2は、重要度DB82aに格納されている情報を例示した図である。図2に示すように、重要度DB82aは、DB項目として項目「出力内容」及び項目「重要度」を含み、これらに対応する情報が相互に対応付けて格納されている。項目「出力内容」に対応して格納される情報は、モニタ60やパネル70が出力する情報や、出力状態を特定する情報であり、例えば各情報や出力状態の名称を格納することができる。図2の例では、情報の名称として「車両接近警告」、出力状態として「モニタ輝度」等が格納されている状態を示す。項目「重要度」に対応して格納される情報は、モニタ60やパネル70が出力する情報や出力状態の重要度を特定する重要度情報であり、例えば当該情報や出力状態が重要であるか否かを示す数値や識別情報を格納することができる。図2に示した例では、重要度が「小」の場合は当該情報や出力状態の重要度が小さく、「中」の場合は重要度が中程度であり、「大」の場合は重要度が大きいことを示している。この重要度の決定方法は任意であるが、例えば、使用者(ここでは特に運転者)に即座に通知する必要性の程度に基づいて決定するこができ、必要性が高い情報(例えば警告情報)は重要度を高く設定し、必要性の低い情報(例えば出力状態)は重要度を低く設定する。
【0031】
図1に戻り、地図情報DB82bは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えば経路案内部81dが経路を探索したり案内したりするための探索データ及び地図データ等を含んでいると共に、注意レベル情報82cや履歴情報82dを含んで構成されている。この内、注意レベル情報82cは、所定の領域を車両が走行する際に必要な注意のレベルを特定する情報であり、例えば、スクールゾーン、交差点、あるいは事故多発エリア等、運転者が特に注意を払って走行すべき領域について注意レベルを高く設定することができる。この注意レベルの具体的な設定方法は任意であるが、ここでは、後述する図3の横軸に示すように、「1」「2」「3」の数値のいずれかにより設定されている。また、履歴情報82dは、所定の領域を車両が走行した履歴に関する履歴情報82dであり、例えば、道路の走行頻度や目的地の設定頻度を特定する情報を含んでいる。ただし、走行頻度が高いと想定される所定の名称(例えば「自宅」)で登録されている地点が存在する場合には、当該名称によって履歴情報82dを代替してもよい。
【0032】
影響度マップ82eは、影響度特定部81bが影響度を特定する際に参照するマップである。図3は、影響度マップ82eを例示した図である。図3の例では、影響度マップ82eは、注意レベル情報82cに基づき特定される「注意レベル」を横軸、操作部20を介して取得されたモニタ60やパネル70の出力に関する所定の操作の有無に基づき特定される「操作状態」を縦軸とした場合における、これらの「注意レベル」及び「操作状態」に対応する影響度の大きさを示している。図3に示した例では、横軸「注意レベル」は、注意レベル情報82cにて特定される注意レベルの大きさに対応しており、数値が大きいほど注意レベルが高いことを示している。また、縦軸「操作状態」は、モニタ60やパネル70の出力に関する所定の操作の有無(例えば、ナビ画面を直接変化させる操作の有無、ヘッドライトの操作等の操作内容が間接的にモニタ60やパネル70の出力に反映される操作の有無等)に対応しており、数値が小さいほどモニタ60やパネル70の出力との関連性が高い操作があったことを示している。例えば、「操作状態」の「3」はモニタ60等の出力に関する操作が無かった場合、「2」は間接的にモニタ60等の出力に反映される操作があった場合、「1」はモニタ60等の出力を直接変化させる操作があった場合に、それぞれ対応付けることができる。ここでは省略しているが、実際には、各操作と操作状態とを相互に関連付けて構成された操作状態テーブルをデータ記録部82に格納しておき、運転者による操作があった場合には、この操作に対応する操作状態を操作状態テーブルから取得するようにしてもよい。
【0033】
これらの「注意レベル」及び「操作状態」を特定することで、対応する影響度を特定することができる。例えば、図3において「注意レベル」及び「操作状態」が共に「1」の場合、影響度は「小」である。これは、運転者が特に高い注意を払う必要が無い領域を走行している場合はモニタ60等を見る余裕を運転者が有している状況であり、モニタ60等の出力を直接変化させる操作を運転者が行った場合は出力の切替が発生することを運転者自身が予測していると考えられることから、モニタ60等の出力の切替が運転者に与える影響が小さいことを示している。
【0034】
図1に戻り、制御テーブル82fは、切替態様決定部81cがモニタ60等の出力の切替態様を決定する際に参照するためのものである。図4は、制御テーブル82fに格納されている情報を例示した図である。図4に示したように、制御テーブル82fは、テーブル項目として項目「影響度」及び項目「重要度」を備え、これらの「影響度」や「重要度」のレベル(図4の例では、「影響度」及び「重要度」のそれぞれについて「大」「中」「小」)に対応する切替態様を特定する情報(図4の例では、「即時」及び「スロー」)が格納されている。この切替態様を特定する情報の意味については後述する。
【0035】
(処理)
このように構成される表示制御システム1によって実行される表示切替処理について説明する。図5は表示切替処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この表示切替処理は、表示制御システム1への電源投入後に自動的に起動される。この電源投入後、切替態様決定部81cは、所定の表示切替タイミングが到来したか否かを監視する(SA1)。具体的には、切替態様決定部81cは、車両の位置、車速等の車両状態、周囲を監視するセンサからの障害物情報、あるいは公知の図示しないタイマが計時している時間等に基づき、表示切替タイミングが到来したか否かを判定する。
【0036】
例えば、公知の車間センサや障害物センサによって自車両が他の車両や障害物に接近したものと判定された場合、切替態様決定部81cは、モニタ60の出力やパネル70の警告灯を、車両接近警告や障害物接近警告を行う表示内容に切り替える表示切替タイミングが到来したものと判定する。
【0037】
また、経路案内部81dが経路案内情報をモニタ60に出力させている場合において、現在地検出処理部50が検出した車両の現在位置に基づき、車両が交差点に接近したものと経路案内部81dが判定した場合には、一般の地図表示から交差点拡大図にモニタ60の出力を切り替える旨の指示を経路案内部81dが切替態様決定部81cに対して行うことにより、切替態様決定部81cは表示切替タイミングが到来したものと判定する。また、車両が県境を通過したものと経路案内部81dが判定した場合には、県境通過を示す案内情報を一般の地図表示に重畳表示させるように、モニタ60の出力を切り替える旨の指示を経路案内部81dが切替態様決定部81cに対して行うことにより、切替態様決定部81cは表示切替タイミングが到来したものと判定する。
【0038】
また、照度センサ40によって検出された車外の照度に基づいてヘッドライトの点灯状態が自動的に変更された場合、あるいは操作部20を介して運転者がヘッドライトの点灯状態を変更する操作入力を行った場合、切替態様決定部81cは、モニタ60やパネル70の輝度をヘッドライトの点灯状態に対応した輝度に切り替える表示切替タイミングが到来したものと判定する。
【0039】
さらに、視野検知部10によって検知された運転者の視野に関する情報(例えば運転者の瞬きの回数や時間、あるいは瞳孔径等)に基づいて、当該運転者の疲労度を特定する公知の方法に基づき、運転者の疲労度の変化が検出された場合、切替態様決定部81cは、モニタ60に表示されているフォントの大きさ、線の太さ、あるいはモニタ60の配色等を運転者の疲労度に対応した状態に切り替える表示切替タイミングが到来したものと判定する。
【0040】
また、カーオーディオやカーエアコン等の車載機器に対して操作部20を介して使用者が所定の操作入力を行った場合、切替態様決定部81cは、この操作入力に対応するガイダンス等にモニタ60の出力を切り替える表示切替タイミングが到来したものと判定する。
【0041】
上記の如き判定基準に基づき表示切替タイミングが到来したものと判定した場合(SA1、Yes)、重要度取得部81aは、表示切替後にモニタ60やパネル70が出力する情報や出力状態に対応する重要度を重要度DB82aから取得する(SA2)。
【0042】
続いて、影響度特定部81bは、地図情報DB82bから取得した注意レベル情報82cに基づいて、現在地検出処理部50にて検出された車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルを取得する(SA3)。さらに、影響度特定部81bは、操作部20を介してモニタ60やパネル70の出力に関する所定の操作の有無を判定し、この操作の有無に対応する操作状態を取得する(SA4)。
【0043】
影響度特定部81bは、影響度マップ82eを参照し、SA3で取得した注意レベルとSA4で取得した操作状態とに基づいて、モニタ60等の出力の切替が運転者に与える影響度を特定する(SA5)。さらに、切替態様決定部81cは、制御テーブル82fを参照し、SA2で重要度取得部81aが取得した重要度と、SA5で影響度特定部81bが特定した影響度とに基づいて切替態様を決定する(SA6)。図4に示した例では、重要度が「大」である場合や影響度が「小」である場合等は、切替態様を「即時」に決定する。また、重要度が「小」であり、且つ影響度が「大」や「中」である場合等は、切替態様を「スロー」に決定する。ここで、切替態様が「即時」とは、表示切替タイミングが到来した時点(厳密にはSA6の処理が終了した時点)で、モニタ60やパネル70の出力内容を切替えることを意味する。また、切替態様が「スロー」とは、「即時」に比べて、出力の切替による運転者への影響を軽減し得る切替態様を意味し、例えば、切替後にモニタ60に表示される画面の透過率を段階的に増加させたり、画面サイズを徐々に拡大したりする。
【0044】
例えば図2に示した例では、例えば表示切替後にモニタ60が交差点拡大図を出力する場合、対応する重要度情報は「1」であり、当該表示切替後の情報の重要度は中程度であることが特定される。また、図3に示した例において、スクールゾーンを走行中の場合等、車両の現在位置に設定されている注意レベルが最も高いレベル(図3における注意レベル=「3」)であり、モニタ60等の出力に関する操作が全く無い操作状態であった場合(図3における操作状態=「3」)、影響度は最も大きいレベルであることが特定される。このような場合、切替態様決定部81cは、重要度が中程度、且つ影響度が大きいことから、切替態様を「スロー」に決定する。あるいは、図3に示した例において、注意レベルが最も低いレベルに設定されている領域を走行中であり(図3における注意レベル=「1」)、ヘッドライトの操作等、モニタ60等の出力に間接的に反映される操作を運転者が行った場合には(図3における操作状態=「2」)、影響度は中程度のレベルであることが特定される。このような場合、切替態様決定部81cは、重要度及び影響度が中程度であることから、切替態様を「即時」に決定する。
【0045】
図5に戻り、切替態様決定部81cは、SA6で決定した切替態様に基づき、モニタ60やパネル70の切替を開始する(SA7)。そして、切替が完了したか否かを判定し(SA8)、切替が完了していない場合は(SA8、No)、SA3に戻り、影響度特定部81bが車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルを取得する。以降、SA8において出力の切替が完了したと判定されるまで、SA3からSA8の処理を切替が完了するまで繰り返す。なお、SA6で切替態様を「スロー」に決定した場合において、当該「スロー」の切替が完了したと判定される前に、SA3で取得された注意レベルやSA4で取得された操作状態が変化し、SA5にて特定された影響度が変化して、SA6で切替の態様が「即時」に決定された場合は、当該「即時」の切替態様にて出力の切替を行う(SA7)。
【0046】
例えば、車両がスクールゾーン等の特に注意を払って走行すべき領域を走行しており(図3における注意レベル=「3」)、且つ運転者がモニタ60の輝度を変更させる操作を行った場合(図3における操作状態=「1」)について説明する。この場合、図2に示す重要度DB82aにより、表示切替後の情報の重要度が最も小さいレベルであるとともに、図3に示す影響度マップ82eにより、影響度が最も大きいレベルであることが特定される。従って、図4に示す制御テーブル82fに基づいて、切替態様は「スロー」に決定される。この決定に基づいてスロー表示切替を行っている途中において、車両がスクールゾーン等を抜けて特に注意を要しない領域に入った場合(図3における注意レベル=「1」)、図3に示す影響度マップ82eにより、影響度は最も小さいレベルとなるため、図4に示す制御テーブルに基づいて、切替態様が「即時」に決定される。この場合は、スロー表示切替を中断して即時表示切替を行う。これにより、運転者が車両の周囲に注意を向けるべき状況から、モニタを見る余裕を運転者が有している状況に変わった場合に、出力を極力迅速に切り替えることができる。
【0047】
図5に戻り、モニタ60やパネル70の出力の切替が完了したと判定した場合(SA8、Yes)、SA1に戻り、切替態様決定部81cは、所定の表示切替タイミングが到来したか否かを監視する(SA1)。以降、同様にSA1からSA8までの処理を繰り返す。
【0048】
(効果)
このように実施の形態1によれば、切替後にモニタ60やパネル70が出力する情報の重要度と、出力の切替が運転者に与える影響度とに基づいて切替の態様を決定するので、車両の状態や運転者の状態によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力の切替を行うことができ、運転者に与える影響を低減することができる。
【0049】
また、影響度特定部81bは、車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルに基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、車両が走行する際に必要な注意のレベルによって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0050】
また、影響度特定部81bは、切替に関する運転者の操作状態に基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、運転者の操作の種類や有無によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0051】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、モニタ60やパネル70に対する運転者の視野情報に基づいて影響度を特定する形態である。なお、実施の形態2及びそれ以降の実施の形態の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0052】
(構成−影響度マップ)
実施の形態2に係る表示制御装置80のデータ記録部82に格納されている影響度マップについて説明する。図6は、影響度マップを例示した図である。図6に示すように、影響度マップは、注意レベル情報82cに基づき特定される「注意レベル」を横軸、視野検知部10を介して取得された運転者の視野情報に基づき特定される「視野」を縦軸とした場合における、これらの「注意レベル」及び「視野」に対応する影響度の大きさを示している。図6に示した例では、縦軸「視野」は、視野情報から特定される運転者の視野範囲におけるモニタ60やパネル70の位置に対応しており、数値が小さいほどモニタ60やパネル70の位置が運転者の視野中心から離れていることを示している。例えば、「視野」の「3」は、運転者の視野の中心近傍にモニタ60やパネル70が位置しており、運転者が当該モニタ60等を見ていると推測される場合、「2」は運転者の視野の周縁部にモニタ60やパネル70が位置しており、運転者が当該モニタ60等を見てはいないが視認可能と推測される場合、「1」は運転者の視野にモニタ60やパネル70が含まれておらず、運転者が当該モニタ60等を視認不可能と推測される場合に、それぞれ対応付けることができる。
【0053】
これらの「注意レベル」及び「視野」を特定することで、対応する影響度を特定することができる。図6の例では、「注意レベル」及び「視野」が共に「1」の場合、影響度は「小」である。これは、運転者が特に高い注意を払う必要が無い領域を走行している場合はモニタ60等に運転者の注意を必要以上に引くことがなく、運転者はモニタ60等を視野の中で視認することもできないと考えられることから、モニタ60等の出力の切替が運転者に与える影響が小さいことを示している。また、「注意レベル」が「1」で「視野」が「3」の場合も、影響度は「小」である。これは、運転者がモニタ60を既に見ていると考えられることから、モニタ60等の出力の切替が運転者の注意を引くことによる影響度は相対的に低下することを示している。一方、「注意レベル」が「1」で「視野」が「2」の場合、影響度は「中」である。これは、運転者がモニタ60等を見ていないものの、視野の中で当該モニタ60等を視認可能であることから、モニタ60等の出力の切替を行うことによって他の対象からモニタ60等へ運転者の注意を引く可能性があり、当該切替による影響度が相対的に上昇することを示している。
【0054】
(処理)
次に、実施の形態2に係る表示制御システム1によって実行される表示切替処理について説明する。なお、本実施の形態2における表示切替処理は、以下に説明する内容を除いて実施の形態1で説明した表示切替処理と同様であるので、フローチャートの図示を省略する。
【0055】
実施の形態1で説明した表示切替処理のSA4において、影響度特定部81bは、視野検知部10を介してモニタ60やパネル70に対する運転者の視野情報を取得する(SA4)。そして、影響度特定部81bは影響度マップを参照し、SA3で取得した注意レベルとSA4で取得した視野情報とに基づいて、モニタ60等の出力の切替が運転者に与える影響度を特定する(SA5)。
【0056】
(効果)
このように実施の形態2によれば、影響度特定部81bは、モニタ60やパネル70に対する運転者の視野情報に基づいて出力の切替が運転者に与える影響度を特定するので、運転者の視野におけるモニタ60等の位置によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0057】
〔各実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0059】
(スロー表示切替について)
上記の各実施の形態では、切替態様決定部81cが切替態様を「スロー」に決定した場合、切替後にモニタ60に表示される画面の透過率を段階的に減少させたり、画面サイズを徐々に拡大したりすると説明したが、影響度特定部81bに特定された影響度が変化し、切替の態様を「即時」に決定して出力の即時切替を行うまで、出力の切替を開始せず、切替前の画面を継続して表示させてもよい。これにより、例えば車両がスクールゾーン等の特に注意を払って走行すべき領域を走行している場合、当該車両がスクールゾーンから退出して安全な領域に進入するまでは切替を行わず、安全な領域に進入した後に切替を行わせることができる。
【0060】
(影響度マップについて)
上記の各実施の形態では、「注意レベル」を横軸、「操作状態」又は「視野」を縦軸とした2次元の影響度マップに基づいて影響度特定部81bが影響度を特定すると説明したが、「注意レベル」、「操作状態」、及び「視野」を相互に直交する軸とした3次元の影響度マップに基づいて影響度を特定してもよい。
【0061】
また、所定の領域を車両が走行した履歴に関する履歴情報82dに基づいて特定される道路の走行頻度や目的地の設定頻度を影響度マップの軸として設定し、これに基づいて影響度を特定してもよい。これにより、道路の走行頻度等によって異なる影響度を考慮した切替態様にて出力を切り替えることができる。
【0062】
また、運転者の操作状態としては、表示の切替に関する操作状態に基づいて影響度を特定する例を示したが、車両に関する運転者の操作状態を考慮してもよく、例えば、車両の速度やハンドル角度に基づいて影響度を特定してもよい。すなわち、車両の速度と注意レベル又は視野との関係を影響度マップとしてデータ記録部82に記録しておき、表示切替タイミングが到来した時点における車両の速度に基づいて影響度を特定したり、ハンドル角度と注意レベル又は視野との関係を影響度マップとしてデータ記録部82に記録しておき、表示切替タイミングが到来した時点におけるハンドル角度に基づいて影響度を特定してもよい。
【0063】
(制御テーブルについて)
上記の各実施の形態では、制御テーブルに格納されている切替態様を特定する情報は「即時」及び「スロー」の二種類と説明したが、例えば、これら二種類の全部又は一部を、これら「即時」と「スロー」の間の速度で画面を切り替える「中間」の如き切替態様や「表示OFF」のような切替態様等に代えたり、他の切替態様を加えて三種類以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施の形態1に係る表示制御システムを例示するブロック図である。
【図2】重要度DBに格納されている情報を例示した図である。
【図3】影響度マップを例示した図である。
【図4】制御テーブルに格納されている情報を例示した図である。
【図5】表示切替処理のフローチャートである。
【図6】影響度マップを例示した図である。
【符号の説明】
【0065】
1 表示制御システム
10 視野検知部
20 操作部
30 車速センサ
40 照度センサ
50 現在地検出処理部
60 モニタ
70 パネル
80 表示制御装置
81 制御部
81a 重要度取得部
81b 影響度特定部
81c 切替態様決定部
81d 経路案内部
82 データ記録部
82a 重要度DB
82b 地図情報DB
82c 注意レベル情報
82d 履歴情報
82e 影響度マップ
82f 制御テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された表示手段の出力の切替を行う表示制御システムであって、
前記切替後に前記表示手段が出力する情報の重要度を取得する重要度取得手段と、
前記切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定手段と、
前記重要度と前記影響度とに基づいて、前記切替の態様を決定する切替態様決定手段と、
を備えることを特徴とする表示制御システム。
【請求項2】
前記影響度特定手段は、前記車両の現在位置が含まれる領域に設定されている注意レベルに基づいて前記影響度を特定すること、
を特徴とする請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項3】
前記影響度特定手段は、前記表示手段に対する前記運転者の視野情報に基づいて前記影響度を特定すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御システム。
【請求項4】
前記影響度特定手段は、前記切替に関する前記運転者の操作状態に基づいて前記影響度を特定すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御システム。
【請求項5】
車両に設置された表示手段の出力の切替を行う表示制御方法であって、
前記切替後に前記表示手段が出力する情報の重要度を取得する重要度取得ステップと、
前記切替を行うタイミングにおける当該切替が運転者に与える影響度を特定する影響度特定ステップと、
前記重要度と前記影響度とに基づいて、前記切替の態様を決定する切替態様決定ステップと、
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−118024(P2010−118024A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292799(P2008−292799)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】