説明

表示装置および表示装置の製造方法、ならびに薄膜トランジスタ基板および薄膜トランジスタ基板の製造方法

【課題】容量素子の容量を確保しながらも、発光素子間の輝度ムラが防止された表示特性の良好な表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタTr2と容量素子Csとを設けた画素回路を、薄膜トランジスタTrのゲート電極14bの線幅方向に配列した薄膜トランジスタ基板1aを備えてた表示装置である。薄膜トランジスタTr2は、ゲート電極14b上にゲート絶縁膜を介して半導体薄膜32Aを設けて構成されたものである。特にゲート電極14bは、所定線幅にパターニングされている。容量素子Csは、ゲート電極14bから延設された下部電極21c上にゲート絶縁膜を介して上部電極22cを設けて構成されたものである。そして特に、下部電極21cは、ゲート電極14bの線幅方向に隣接させた状態でゲート電極14bに対して離間して配置されている。また上部電極22cは、ソース電極22sまたはドレイン電極22dと同一層を用いた連続的パターンとして設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置および表示装置の製造方法、ならびに薄膜トランジスタ基板および薄膜トランジスタ基板の製造方法に関し、特には有機電界発光素子を備えたアクティブマトリックス駆動の表示装置およびその製造方法、ならびにこの表示装置に好適に用いられる薄膜トランジスタ基板および薄膜トランジスタ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子とこれに接続された画素回路とを基板上に配列形成してなるアクティブマトリックス駆動の表示装置においては、画素回路を構成する薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)の電流量によって有機電界発光素子の輝度が決定される。有機電界発光素子に供給する電流量を決定する画素回路は映像信号をサンプリングするTFTと映像信号を保持する容量と保持された映像信号に基づいて有機電界発光素子を電流駆動する駆動TFTの最低でも3素子が必要であり、液晶素子と比較すると画素回路のレイアウト密度が大きくなる。
【0003】
そこで、基板上において走査線方向に隣接配置された画素回路のレイアウトを反転させた、いわゆるミラー反転構造とすることで、2つの画素回路で1本の電源線を共通化し、レイアウト密度を低くする構成が提案されている(下記特許文献1〜5参照)。
【0004】
図15には、このようなミラー反転構造の表示装置用の薄膜トランジスタ基板のレイアウト図を示す。この図に示すように、基板10上の表示領域内には、走査線11および電源線12が平行に配線され、これらと垂直に信号線13が配線されている。そして、走査線11および電源線12と、信号線13との各交差部に対応して、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に対応する各副画素a(R),a(G),a(B)が順に配列されている。これらの副画素a(R),a(G),a(B)は、3色を1組とした略正方形の表示画素Aを構成している。
【0005】
各色の副画素a内には、薄膜トランジスタTr1,Tr2’および容量素子Csを備えた画素回路が配置されている。各薄膜トランジスタTr1,Tr2’は、信号線13と平行に延設されたゲート電極14a,14b’を備えている。このうち一方の薄膜トランジスタTr2’のゲート電極14b’は、容量素子Csの下部電極21cと一体に形成されている。そして薄膜トランジスタTr2’が、隣接する副画素a間において、1本の電源線12部分をドレイン側において共有した構成となっている。このような各副画素aは、薄膜トランジスタTr2’に有機電界発光素子(図示省略)を接続させる構成となっている。
【0006】
また上述したように、画素回路を構成する薄膜トランジスタの電流量によって有機電界発光素子の輝度が決定される表示装置においては、輝度ムラを抑えた良好な表示を行なうために、薄膜トランジスタの特性ばらつきを抑えることが重要である。
【0007】
ところが薄膜トランジスタのチャネル領域を多結晶シリコンで構成する場合、チャネル領域内に存在する結晶粒の大きさが不均一なためトランジスタ特性がばらつきやすい。そこで、チャネル領域を構成する半導体薄膜を結晶粒の大きさが不均一にならない程度に微結晶化する方法として、固体レーザを用いて非晶質薄膜を微結晶化する結晶化アニールが行われている。
【0008】
ここで先の図15を用いて説明したミラー反転構造の薄膜トランジスタ基板を作製する場合、このような結晶化アニール工程は、例えば次のように行なわれる。先ず、図16に示すように、基板10上に、第1電極パターン(21)からなるゲート電極14a,14b’、さらには下部電極21cおよびその他の電極を形成した後、これらの第1電極パターン(21)を覆う状態で、ゲート絶縁膜、および非晶質の半導体薄膜を成膜する。次に、必要に応じて半導体薄膜上にバッファ層や光熱変換層を成膜した後、これらの層を介して固体レーザから発生させたレーザ光を半導体薄膜に対して走査させながら照射する。これにより、レーザ光の照射部に対応する半導体薄膜部分を微結晶化させた半導体薄膜32Aとする。この際、レーザ光の走査方向(v)は、走査線11に沿った方向、すなわち薄膜トランジスタTr1,Tr2’のチャネル長方向でありゲート電極14a,14b’の線幅方向とする。
【0009】
【特許文献1】特許第4036235号
【特許文献2】特開2005−266830号公報
【特許文献3】特開2006−11429号公報
【特許文献4】特開2006−343768号公報
【特許文献5】特開2008−33091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した固体レーザを用いた半導体薄膜の結晶化アニールは、エキシマレーザを用いた結晶化アニールと比較して、半導体薄膜の結晶化に必要な熱量を供給した場合の熱拡散長が長くなる。このため、半導体薄膜の下層に設けられているゲート電極による熱伝導の影響が顕著であり、ゲート電極の配置状態が薄膜トランジスタを構成する半導体薄膜部分の結晶性に影響を及ぼすことになる。
【0011】
つまり上述したように、図15に示す走査線11に沿った方向、すなわちゲート電極14a,14b’の線幅方向(チャネル長方向)がレーザ光の走査方向(v)である場合、走査方向の上流側ではゲート電極14a,14b’が熱的に飽和し難く、レーザ光の走査方向(v)の下流側ではゲート電極14a,14b’が熱的に飽和し易い。
【0012】
このため、ゲート電極14a,14b’を挟んでレーザ光の走査方向(v)の上流側では、レーザ光照射によってゲート電極14a,14b’が十分に加熱される前に半導体薄膜の結晶化が行われるため、結晶性が疎になる。これに対して、ゲート電極14a,14b’を挟んでレーザ光の走査方向(v)の下流側では、レーザ光照射によってゲート電極が十分に加熱された状態で半導体薄膜の結晶化が行われるため、結晶性が密になる。つまり、図15の左側画素A内のa(R)、a(B)、および右側画素A内のa(G)の駆動トランジスタTr2’においては、ソース側の熱拡散が進み易く結晶性が疎である。これに対して、図15の左側画素A内のa(G)、および右側画素A内のa(R)、a(B)の駆動トランジスタTr2’においては、逆にソース側の結晶性が密になる。このようなチャネル領域におけるチャネル長方向での結晶性の疎密は、薄膜トランジスタのオン電流に大きな影響を及す。
【0013】
したがって、隣接する副画素aのレイアウトがミラー反転している構成であれば、走査線11方向に隣接する表示画素A間において同一色の副画素a[例えば副画素a(G)]の薄膜トランジスタTr1,Tr2’のレイアウトが反転する。このため同一色の副画素a間の薄膜トランジスタTr1,Tr2’においては、上述したチャネル長方向の端部での結晶性の疎密に起因するトランジスタ特性、例えばオン電流に差が生じる。これにより、隣接する表示画素A間における同一色の副画素aでは薄膜トランジスタTr1,Tr2’に接続された発光素子に輝度差が生じ、結果として走査線11方向に隣接する表示画素A間の輝度差が、走査線11方向の輝度ムラとして視認されてしまう。
【0014】
そこで本発明は、画素回路のレイアウトに依存することなく薄膜トランジスタのオン電流を均一にすることが可能で、これにより薄膜トランジスタに接続された発光素子の輝度ムラが防止された表示特性の良好な表示装置を提供すること、さらにはこのような表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、薄膜トランジスタと容量素子とを設けた画素回路を、薄膜トランジスタのゲート電極の線幅方向に配列したものであり、次のように構成されている。薄膜トランジスタは、ゲート電極上にゲート絶縁膜を介して半導体薄膜を設けて構成されたものである。特にゲート電極は、所定線幅にパターニングされている。容量素子は、ゲート電極から延設された下部電極上に前記ゲート絶縁膜を介して上部電極を設けて構成されたものである。そして特に、下部電極は、ゲート電極の線幅方向に隣接させた状態で当該ゲート電極に対して離間して配置されている。また上部電極は、ソース電極またはドレイン電極と同一層を用いた連続的パターンとして設けられている。
【0016】
尚、本発明は、以上のような構成の薄膜トランジスタと容量素子と備えた回路を配列してなる薄膜トランジスタ基板でもある。
【0017】
このような構成の表示装置および薄膜トランジスタ基板では、薄膜トランジスタのゲート電極が、容量素子の下部電極と線幅方向に離間して設けられ、所定線幅でパターニングされたものである。このため、半導体薄膜の下層のゲート電極が、ソース側とドレイン側とで不均等であることに起因して発生する半導体薄膜におけるソース側とドレイン側との結晶性のばらつきを防止することができる。しかも、下部電極は、ゲート電極の線幅方向に隣接して延設されているため大面積を維持でき、この下部電極を用いて構成された容量素子における容量を確保することができる。したがって、薄膜トランジスタおよび容量素子のレイアウト方向に左右されずに、オン電流が均等な薄膜トランジスタと大容量が確保された容量素子とによって、これらに接続された発光素子を駆動することが可能になる。
【0018】
また本発明の表示装置の製造方法は、次のような工程を行なう。先ず、所定線幅のゲート電極と、当該ゲート電極から延設され当該ゲート電極の線幅方向に当該ゲート電極に対して離間して配置された下部電極とからなる電極パターンを、当該ゲート電極の線幅方向に配列形成する。次に、配列形成された電極パターンを覆う状態でゲート絶縁膜および非晶質の半導体薄膜をこの順に成膜する。次いで、ゲート電極の線幅方向にエネルギー線を走査させながら照射することにより半導体薄膜を結晶化させる。その後、ゲート電極上において結晶化させた半導体薄膜にソース電極とドレイン電極とを接続させて薄膜トランジスタを形成する。また、下部電極上にソース電極またはドレイン電極と同一層からなる連続的パターンとして上部電極を設けることで容量素子を形成する。
【0019】
尚、本発明は、以上のような工程を行う薄膜トランジスタ基板の製造方法でもある。
【0020】
以上のような製造方法により、上述した構成の表示装置や薄膜トランジスタ基板を得ることができる。特にこの製造方法では、ゲート電極の線幅方向に沿ってエネルギー線を走査させることで、薄膜トランジスタを構成する半導体薄膜を結晶化させている。このため、この配列方向に沿って設けられた画素回路を構成する薄膜トランジスタは、ソース側を上流としてエネルギー線が照射されたものと、ドレイン側を上流としてエネルギー線が照射されたものとが交互に配置されることになる。しかしながら、この方法によって得られる上述した本発明構成の表示装置は、薄膜トランジスタのゲート電極が、容量素子の下部電極と線幅方向に離間して設けられ、所定線幅でパターニングされたものである。このため、結晶化の際には、半導体薄膜の下層のゲート電極は、ソース側とドレイン側とに対して均等に影響を及ぼすことになる。したがって、下層のゲート電極の形状に起因して発生する半導体薄膜におけるソース側とドレイン側との結晶性のばらつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、エネルギー線を走査させて結晶化した半導体薄膜を用いて薄膜トランジスタを構成する場合であっても、そのレイアウト方向に依存することなく薄膜トランジスタのオン電流を均一にすることができる。また、このような薄膜トランジスタと大容量が確保された容量素子とによって、これらに接続された発光素子を駆動することが可能になる。したがって、発光素子の輝度ムラが防止された表示特性の良好な表示装置を得ることが可能になる。さらに、レイアウト方向に依存することなく薄膜トランジスタのオン電流を均一にすることができるため、このレイアウト方向において往復でエネルギー線の走査を行なうこともでる。この結果、半導体薄膜の結晶化アニール工程を短縮化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、薄膜トランジスタに有機電界発光素子を接続させたアクティブマトリックス型の表示装置、およびこの表示装置に用いる薄膜トランジスタ基板に適用した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、図15を用いて説明した従来の構成と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を行う。
【0023】
<表示装置の全体構成>
図1は、第1実施形態の表示装置1の全体構成を示す平面図である。
【0024】
この図に示すように、表示装置1は、表示パネル2と、この周縁部に接続されたフレキシブルプリント基板3,4,5とを備えて構成されている。フレキシブルプリント基板3,4,5は、例えば映像信号供給用基板3、電源供給用基板4、および走査信号及び電源制御信号供給用基板5である。
【0025】
表示パネル2は、平面矩形形状であり、その中央部には表示パネル2と略相似形の表示領域2aが設定されている。表示領域2a内には、表示領域2aの長辺方向xに沿って走査線11および電源線12が配線され、これと垂直に信号線13が配線されている。そして、これらの走査線11および電源線12と、信号線13との各交差部に対応して副画素aが配置されている。尚、各走査線11及び電源線12には、走査信号及び電源制御信号供給用基板5から信号が入力される。信号線13には映像信号供給用基板3から信号が入力される。また、後述する有機電界発光素子の陰極(または陽極)で全画素に共通の電極に電源供給用基板4から信号が入力される。
【0026】
副画素aは、それぞれが矩形形状であって、信号線13に対して長辺を平行に保って配置される。さらにこれらの副画素aは、走査線11方向に配列された3つの副画素aを1組とした略正方形の表示画素Aを構成している。
【0027】
ここでは、各表示画素Aを構成する3つの副画素は、赤(R),緑(G),青(B)の3つの副画素a(R),a(G),a(B)であることとする。尚、表示画素Aを構成する副画素aは、これに限定されることはなく、さらに白(W)の表示を行う副画素を走査線11方向に加えた4つの画素を用いても良い。
【0028】
また各表示画素Aを構成する3つの副画素は、信号線13方向を対象線とし、走査線11方向に交互にレイアウトを反転させたミラー反転構造で配置されていることとする。これにより、2つの画素回路で1本の電源線を共通化し、レイアウト密度を低くすることができる。
【0029】
そして表示領域2aには、以上のような3つの副画素a(R),a(G),a(B)(代表してaと記す)を走査線11方向に配列した表示画素Aが、走査線11および電源線12方向、さらには信号線13方向に沿ってマトリックス状に配列されている。
【0030】
<表示装置の回路構成>
図2には、表示装置1における表示領域の回路構成図を示す。
【0031】
この図に示すように、各副画素aには、スイッチング用の薄膜トランジスタTr1、駆動用の薄膜トランジスタTr2、さらには容量素子Csが配置され、これらによって画素回路が構成されている。尚、薄膜トランジスタTr1,Tr2は、ここではnチャンネルのMOSトランジスタであることとする。
【0032】
各画素回路は、駆動用の薄膜トランジスタTr2のソースSにおいて、各発光色の発光素子EL(R),EL(G),EL(B)に接続されている。このような画素回路においては、走査線11で選択されたスイッチング用の薄膜トランジスタTr1を介して信号線13から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持される。そして、保持容量Csに保持された信号量に応じた電流が、駆動用の薄膜トランジスタTr2のソースSから、各発光素子EL(R),EL(G),EL(B)に供給される。これにより、供給された電流値に応じた輝度で各発光素子EL(R),EL(G),EL(B)が発光する構成となっている。
【0033】
<表示装置に用いる薄膜トランジスタ基板の構成>
図3には、以上のような表示装置において各副画素aに設けた画素回路を有する薄膜トランジスタ基板のレイアウト図を示す。ここでは、走査線11方向に隣接する2つの表示画素A分部に対応するレイアウト図を示す。また図4には図3における要部拡大図を示し、図5には図3および図4におけるA−A’断面に相当する表示装置の要部断面図を示す。
【0034】
これらの図に示すように、薄膜トランジスタ基板1aを構成するガラス基板10上の各副画素a内には、薄膜トランジスタTr1,Tr2と容量素子Csとからなる画素回路が配置されている。
【0035】
このうち、薄膜トランジスタTr1,Tr2はボトムゲート構造のものであり、ガラス基板10の直上に設けた第1電極パターン(21)からなるゲート電極14a,14bを備えている。各ゲート電極14a,14bは、薄膜トランジスタTr1、Tr2のチャネル長と同程度の各所定線幅Wにパターニングされている。これらのゲート電極14a,14b上には、ゲート絶縁膜31を介してチャネル領域を構成する半導体薄膜32Aが設けられている。この半導体薄膜32Aは、薄膜トランジスタTr1、Tr2毎にゲート電極14a,14bを覆う形状にパターン形成されている。このような半導体薄膜32A上には、エッチングストッパ層33と、不純物を含有する半導体層34からなるソースS(34)およびドレインD(34)が配置されている。そして、このソースS/ドレインDに接続された状態で、第2電極パターン(22)からなるソース電極22sおよびドレイン電極22dがパターン形成されている。尚、図面においては、駆動用の薄膜トランジスタTr2の一部においてゲート電極14bが所定線幅にパターニングされている状態を図示しているが、ゲート線幅方向の全体にわたってゲート電極14bが所定線幅にパターニングされていることが好ましい。
【0036】
また、容量素子Csは、発光素子に接続される駆動用の薄膜トランジスタTr2のソースS側と一体に形成されており、第1電極パターン(21)からなる下部電極21cと、第2電極パターン(22)からなる上部電極22cとの間に、ゲート絶縁膜31を挟持してなる。
【0037】
そして特に、下部電極21cは、駆動用の薄膜トランジスタTr2のゲート電極14bから延設され、ゲート電極14bと同一層で形成されている。この下部電極21cは、ゲート電極14bの線幅方向に隣接する位置にまで延設されるが、隣接する位置においてはゲート電極14bに対して離間して配置される。また上部電極22cは、駆動用の薄膜トランジスタTr2のソース電極22sと同一層を用いた連続的パターンとして設けられている。この上部電極22cは、下部電極21cと駆動用の薄膜トランジスタTr2のゲート電極14bとが離間している分部上においても、駆動用の薄膜トランジスタTr2のソース電極22sと連続的に一体形成されていて良い。
【0038】
以上のような薄膜トランジスタTr1,Tr2と容量素子Csとを用いて各副画素a内に設けられた画素回路は、ゲート電極14a,14bの線幅方向に配列されている。そして、これらの薄膜トランジスタTr1,Tr2は、そのチャネル長方向を走査線11と平行にして配置されている。これにより、各薄膜トランジスタTr1,Tr2は、走査線11方向にソースSとドレインDとが順に配列された状態となっている。
【0039】
尚、各副画素aは、信号線13方向にも配列されており、この内部にも同一構成の画素回路が設けられている。信号線13方向には、同一のレイアウト方向で画素回路が配列されていても良いし、電源線12を共有する状態で電源線12方向を対象線としてミラー反転させて配列されていても良い。これにより、信号線13方向に隣接する2つの画素回路で1本の電源線を共通化し、レイアウト密度を低くすることができる。
【0040】
このような状態において、各副画素aは、上述したように信号線13方向を対象線として走査線11方向に交互にレイアウトを反転させたミラー反転構造で配置されている。したがって、各副画素aを構成する画素回路は、薄膜トランジスタTr1,Tr2のソースSとドレインDとが、これらの配列方向を交互に反転させた状態で当該配列方向に沿って順次レイアウトされることになる。
【0041】
また隣接して配置された画素回路における駆動用の薄膜トランジスタTr2では、電源線12から延設された1本の電源線12部分を、共通したドレイン電極22dとして共有していることとする。これにより、画素回路のレイアウト密度を抑えることが可能である。尚、隣接する副画素aは、この電源線12部分に対して対象にレイアウトされていることになる。
【0042】
さらに、各副画素aに設けた画素回路においては、この画素回路に接続される発光素子の発光色毎に、薄膜トランジスタTr1,Tr2のチャネル幅と、容量素子Csのレイアウト面積とが調整されていることとする。
【0043】
一般的に、有機電界発光素子(発光素子)は、発光色毎に発光効率が異なる。このため、相対的に発光効率の低い発光色の発光素子が設けられる副画素aほど、画素回路における薄膜トランジスタTr1,Tr2のチャネル幅および容量素子Csのレイアウト面積が大きく設定されていることとする。一例としてここでは、赤色の副画素a(R)<緑色の副画素a(G)<青色の副画素a(B)の順に、薄膜トランジスタTr1,Tr2のチャネル幅および容量素子Csのレイアウト面積が大きくなるように、画素回路が設計されていることとする。
【0044】
ここで、これらの薄膜トランジスタTr1,Tr2は、上述したようなボトムゲート構造であると共に、ゲート電極14a,14b上に成膜した半導体薄膜32Aが、エネルギー線の照射によって結晶化された微結晶性の薄膜トランジスタであることとする。この際、エネルギー線として照射するレーザ光の走査方向vは、薄膜トランジスタTr1,Tr2におけるソースSとドレインDの配列方向、すなわち走査線11に沿った方向であって、ゲート電極14a,14bの線幅方向である。
【0045】
<表示装置の要部断面構成>
以上のような構成の薄膜トランジスタ基板1a上には、次のような状態で発光素子が設けられている。
【0046】
薄膜トランジスタTr1,Tr2を備えた画素回路を有する薄膜トランジスタ基板1a上は、パッシベーション膜51で覆われ、さらにこの上部に平坦化絶縁膜52が設けられている。この平坦化絶縁膜52上において各副画素aに対応する位置に、発光素子ELが設けられている。
【0047】
各発光素子ELは、副画素a毎にパターン形成された下部電極53、この上部に設けられた有機材料からなる発光機能層54、および発光機能層54上に設けられた上部電極55で構成されている。
【0048】
このうち下部電極53は陽極(または陰極)として用いられるものである。また発光機能層54は、少なくとも有機発光層を備えており、例えば陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層などを必要に応じて積層された構成となっている。この発光機能層54は、各発光素子ELの発光色毎に異なる構成となっている。そして上部電極55は、有機電界発光素子ELの陰極(または陽極)として用いられるものであり、全画素に共通の電極として設けられている。
【0049】
以上のような構成の発光素子ELは、下部電極53の周囲を覆う絶縁性パターン56によって素子分離されている。また、各発光素子ELは、ここでの図示を省略した接続孔を介して、下部電極53において駆動用の薄膜トランジスタTr2のソースSに接続された構成となっている。尚、平坦化絶縁膜52上には、下部電極53と同一層で構成された補助電極53aが設けられ、この補助電極53aを上部電極55に接続させることにより、上部電極55における電圧降下を防止する構成であることが好ましい。
【0050】
またここでの図示は省略したが、以上のような構成の発光素子ELは、接着性の封止剤を介して貼り合わされた対向基板によって封止されていることが好ましい。この場合、薄膜トランジスタ基板1aにおける発光素子ELの形成面側に、接着剤を介して対向基板を貼り合わせた構成とすれば良い。
【0051】
このような構成の実施形態の表示装置1およびこれに用いられる薄膜トランジスタ基板1aでは、駆動用の薄膜トランジスタTr2のゲート電極14bが、容量素子Csの下部電極21cと線幅方向に離間して設けられ、所定線幅でパターニングされている。このため、半導体薄膜32aの下層のゲート電極14bが、ソース側とドレイン側とで不均等であることに起因して発生する半導体薄膜32Aにおけるソース側とドレイン側との結晶性のばらつきを防止することができる。
【0052】
したがって、次の製造方法で詳細に説明する、レーザアニールによって結晶化された半導体薄膜32Aを用いた場合であっても、特にミラー反転構造において問題となる、ソースS/ドレインDの配列方向に起因する同一色の輝度ムラが防止される。尚、特に容量素子Csと一体形成された状態で、発光素子ELに接続された駆動用のトランジスタTr2の電流特性が、同一色の発光素子ELの輝度ムラを防止する上では重要である。従来構成においては、この駆動用のトランジスタTr2の電流特性のばらつきにより、信号線13方向に伸びる縦縞の輝度ムラが発生していた。
【0053】
しかも、容量素子Csの下部電極21cは、駆動用の薄膜トランジスタTr2のゲート電極14bの線幅方向に隣接する位置にまで延設されており、さらに上部電極22cも薄膜トランジスタTr2のソース電極22sと連続的に一定形成されている。このため、容量素子Csの面積を十分に広く維持することができ、容量素子Csの容量を確保することができる。したがって、薄膜トランジスタTr2および容量素子Csのレイアウト方向に左右されずに、オン電流が均等な薄膜トランジスタTr2と大容量が確保された容量素子Csとによって、これらに接続された発光素子ELを駆動することが可能になる。
【0054】
したがって、ミラー反転構造であってもレイアウト方向に依存することなく、輝度が高く発光素子の輝度ムラが防止された表示特性の良好な表示を行うことが可能になる。尚、スイッチング用の薄膜トランジスタTr1のゲート電極14aもチャネル長と同程度の所定線幅にパターニングされている。このため、この薄膜トランジスタTr1においても、半導体薄膜32aの下層のゲート電極14aが、ソース側とドレイン側とで不均等であることに起因して発生する半導体薄膜32Aにおけるソース側とドレイン側との結晶性のばらつきを防止することができる。これにより、薄膜トランジスタTr1の特性ばらつきも抑えられる。
【0055】
<薄膜トランジスタ基板および表示装置の製造方法>
次に、上述した構成の薄膜トランジスタ基板の製造方法および表示装置の製造方法を説明する。
【0056】
先ず、図6に示すように、平面矩形形状のガラス基板10を用意する。そして、このガラス基板10に対して、例えば2枚の表示パネル2の形成領域を設定する。この際、1枚のガラス基板10に対して、効率よく2枚の表示パネル2を配置できるように、ガラス基板10の長辺に対して、表示パネル2の短辺を平行に配置する。そして、各表示パネル2内には、各表示パネル2と略相似形で平面矩形形状の表示領域2aを設定する。
【0057】
さらに表示領域2a内には、平面矩形形状の副画素aを配列設定する。これらの副画素aは、表示領域2aの短辺方向yに対して、各副画素aの長辺を平行にして配置される。さらにこれらの副画素aは、これらの短辺方向に配列された赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの副画素aを1組とした略正方形の表示画素Aを構成することは、上述した通りである。
【0058】
次に、図7の平面図、および図8(1)の断面図(図7の平面図のA−A’断面図に相当する)に示すように、ガラス基板10上の各表示領域に、第1電極パターン(21)からなるゲート電極14a,14bおよび下部電極21cを形成する。また同一工程で、第1電極パターン(21)からなる他の配線部分、例えば信号線13の一部を形成する。
【0059】
この際、薄膜トランジスタ(Tr1)のゲート電極14aおよび薄膜トランジスタ(Tr2)のゲート電極14bは、チャネル長と同程度の所定線幅で、表示領域2aの短辺方向yと平行に延設されるようにパターニングされる。また、下部電極21cは、駆動用の薄膜トランジスタ(Tr2)のゲート電極14bから延設し、ゲート電極14bの線幅方向に隣接する位置にまで延設されるが、隣接する位置においてはゲート電極14bに対して離間して配置されるようにパターニングされる。さらに信号線13の一部は、表示領域2aの短辺方向yと平行となるようにパターニングされる。そして、これらのゲート電極14a,14bおよび下部電極21cを構成する第1電極パターン(21)は、ゲート電極14a,14bの線幅方向(表示領域2aの長辺方向x)に配列形成されると共に、表示領域2aの短辺方向yにも複数列が配列形成される。
【0060】
このような、ゲート電極14a,14bおよび下部電極21cを含む第1電極パターン(21)は、例えばスパッタ法により成膜したモリブデン(Mo)膜を、レジストパターンをマスクにしてパターンエッチングすることによって形成する。尚、第1電極パターン(21)は、モリブデン(Mo)により構成されているとは限らず、後の熱工程において変質しにくい高融点の金属であればよい。
【0061】
次に、これらの第1電極パターン(21)を覆う状態で、例えば酸化シリコンや窒化シリコンを用いたゲート絶縁膜31を成膜し、さらに続けて非晶質シリコンからなる半導体薄膜32を成膜する。
【0062】
その後、図8(2)に示すように、半導体薄膜32上を覆う状態で、酸化シリコンや窒化シリコンを用いたバッファ層41を成膜し、さらに続けてモリブデン(Mo)を用いた光熱変換層42を成膜する。尚、この光熱変換層42は、後述するレーザ光などのエネルギー線を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換するためのものである。したがって、この光熱変換層42としては、次に行う結晶化アニールの際に使用するレーザ光(エネルギー線)の吸収率が高いこと、バッファ層41や半導体薄膜32への熱拡散速度が低いこと、後の結晶化の際に生じる熱によっても変質しにくい高融点の材料であること、などの条件を満たせばどのような材料であってもよく、例えば他に炭素(C)などを用いるようにしてもよい。
【0063】
以上の後、図7の平面図および図8(3)に示すように、光熱変換層42およびバッファ層41を介して半導体薄膜32に間接的にレーザ光Lhを照射し、この半導体薄膜32に加熱処理を施す。この際、固体レーザを発信源としたレーザ光Lhを照射する。これにより半導体薄膜32におけるレーザ光Lhの照射部を、ナノメートルオーダーの結晶粒に結晶化させた半導体薄膜(微結晶シリコン薄膜)32Aとする。
【0064】
またここでのレーザ光Lhの照射においては、ゲート電極14a,14bの線幅方向にレーザ光Lhを走査させながら照射する。この際、線幅方向に配列された複数列のゲート電極14a,14bに対して、線幅方向に沿ってレーザ光Lhを走査させる。これにより、レーザ光の走査方向vは、表示領域2aの長辺方向xに対して平行、つまり図6に示すようにガラス基板10の短辺に対して平行としている。これにより、レーザ光の走査距離が長いことによるレーザ光Lhのエネルギーばらつきを防止し、より均一な結晶が得られるようにしている。
【0065】
またここでは、線幅方向に配列された複数列のゲート電極14a,14bに対して、列間で往復する走査方向(v)および逆の走査方向(−v)となるように、レーザ光Lhを走査させる。これにより、このレーザ光Lh照射による半導体薄膜32の結晶化アニール工程を短縮化することが可能である。尚、このようなレーザ光Lhの照射は、一度に複数の列部分に対してレーザ光Lhを照射できる、マルチへッド方式で行われても良い。また、レーザ光Lhを往復で走査させる方式に限定されることはなく、一方向のみに走査させる、いわゆるラスタスキャンであっても良い。
【0066】
尚、レーザ光Lhの走査方向(±v)と垂直な方向の照射幅は、トランジスタ(Tr1),(Tr2)の形成部を覆う程度であれば良い。そして、ここでのレーザ光Lhの照射は、図3を用いて説明したように配置形成される薄膜トランジスタ(Tr1),(Tr2)の形成位置に対応する部分のみに、すなわちゲート電極14a,14bの上方を含む領域に対して選択的に照射されれば良い。
【0067】
以上のようなレーザ光Lh照射の後、図8(4)に示すように、半導体薄膜32A上の光熱変換層42およびバッファ層41をエッチングにより除去する。
【0068】
次に、図9(1)に示すように、半導体薄膜32A上においてゲート電極14a,14bに重なる位置で、チャネル領域となる半導体薄膜32A部分の上部に、絶縁性のストッパ層33をパターン形成する。
【0069】
次いで、図9(2)に示すように、ストッパ層33を覆う状態で、例えばn型の不純物を含有するシリコンからなるn型半導体層34を成膜する。
【0070】
その後、図9(3)に示すように、n型半導体層34と半導体薄膜32Aとを、ゲート電極14a,14bの上方において島状にパターニングする。
【0071】
しかる後、図9(4)に示すように、n型半導体層34を覆う金属膜を形成してこれをパターニングすることにより、第2電極パターン(22)からなるソース電極22sとドレイン電極22d、さらには上部電極22cを形成する。また同一工程で、第2電極パターン(22)からなる他の配線部分、例えば図3に示した走査線11、電源線12、および信号線13の一部分等を形成する。
【0072】
この際、ソース電極22s/ドレイン電極22dは、ストッパ層33上において分割する状態でパターニングする。また、n型半導体層34も、ストッパ層33上で分離するようにパターニングし、このn型半導体層34からなるソースS/ドレインDを形成する。これにより、微結晶性の半導体薄膜32Aによってチャネル領域が構成され、このチャネル領域に接するソースS/ドレインDにソース電極22s/ドレイン電極22dが接続された薄膜トランジスタTr1,Tr2を得る。
【0073】
また上部電極22cは、下部電極21c上に重なる位置に形成される。これにより、下部電極21cと上部電極22cとの間にゲート絶縁膜31を狭持してなる容量素子Csを得る。この上部電極22cは、先に述べたように、下部電極21cと駆動用の薄膜トランジスタ(Tr2)のゲート電極14bとが離間している分部上においても、駆動用の薄膜トランジスタ(Tr2)のソース電極22sと連続的に一体形成された連続的パターンとして形成する。
【0074】
以上により、図3に示したように、ガラス基板10上に走査線11、電源線12、および信号線13を形成し、さらに各副画素aに薄膜トランジスタTr1,Tr2および容量素子Csを形成した画素回路を有する薄膜トランジスタ基板1aを得る。各画素回路の形成においては、薄膜トランジスタTr1,Tr2のソースSとドレインDとがゲート電極14a,14bの線幅方向に交互に反転するように配線が成されることとする。
【0075】
次に、以上のようにして作製した薄膜トランジスタ基板の上部に発光素子を形成する。この工程を、先の図4に基づいて説明する。
【0076】
先ず、以上の画素回路(薄膜トランジスタTr2および容量素子Csのみ図示)を備えた薄膜トランジスタ基板1a上を覆う状態で、パッシベーション膜51を成膜し、この上部に平坦化絶縁膜52を形成する。次に、平坦化絶縁膜52およびパッシベーション膜51に、薄膜トランジスタTr2のソース電極22s/ドレイン電極22dの一方(例えばソース電極22s)に達する接続孔(図示所略)を形成する。次に、接続孔を介してソース電極22sおよびソースSに接続された下部電極53を、平坦化絶縁膜52上にパターン形成する。また同一工程で、補助配線53aを形成する。
【0077】
次に、下部電極53の中央部分を広く露出して周縁を覆うと共に、補助配線53aの一部を露出させる形状の絶縁性パターン56を形成する。この絶縁性パターン56において下部電極53を露出させた開口部分が画素開口となる。
【0078】
その後、絶縁性パターン56から露出した下部電極53を覆う状態で、有機材料を用いて構成される発光機能層54を形成する。この発光機能層54は、ここで形成する発光素子の発光色毎に異なる工程で個別に形成することとする。ただし、共通で用いることができる材料層は、同一工程で連続形成しても良い。次いで、発光機能層54を覆うと共に補助配線53aに接続された状態で、全画素に共通の上部電極55を形成する。
【0079】
以上により、平坦化絶縁膜52上に、下部電極53と上部電極55との間に有機発光層を含む発光機能層54を挟持してなる各色発光の発光素子ELを形成する。これらの発光素子ELは、下部電極53において薄膜トランジスタTr2に接続された構成となっている。
【0080】
以上の後、ここでの図示は省略したが、ガラス基板10の発光素子EL形成面側に対向基板を配置し、接着性の封止剤を介してガラス基板10と対向基板とを貼合せる。そして、図6に示したように、1枚のガラス基板10に複数の表示パネル2の形成領域が設定されている場合であれば、表示パネル2毎にガラス基板10および対向基板を分割し、各分割部分に対して必要に応じて所定手順でフレキシブルプリント基板を接続させて表示装置1を完成させる。
【0081】
以上説明した第1実施形態の製造方法により、図1〜図5を用いて説明したようにミラー反転構造で画素回路が配列された表示装置1を得ることができる。
【0082】
特にこの製造方法では、薄膜トランジスタTr1,Tr2のチャネル領域を構成する半導体薄膜32の結晶化アニールの際には、図3および図6に示されるように、ゲート電極14a,14bの線幅方向(走査線11方向)に沿ってレーザ光を走査させている。このため、この配列方向に沿ってミラー反転構造で配列された画素回路を構成する薄膜トランジスタTr1,Tr2は、ソース側を上流としレーザ光Lhが照射されたものと、ドレイン側を上流としてレーザ光Lhが照射されたものとが交互に配置されることになる。
【0083】
しかしながら、上述した製造方法によって得られる表示装置1では、特に発光素子ELの輝度に大きな影響を及ぼす薄膜トランジスタTr2のゲート電極14bが、容量素子Csの下部電極21cと線幅方向に離間して設けられ、所定線幅でパターニングされている。このため、結晶化アニールにおいてのレーザ光Lh照射の際のゲート電極14bの熱拡散の影響は、半導体薄膜32のソース側とドレイン側とに対して均等に影響を及ぼすことになる。したがって、半導体薄膜32におけるソース側とドレイン側との結晶性のばらつきを防止することができる。そして、レーザ光Lhの走査方向に隣接する表示画素Aに設けられた同一色の副画素に、レイアウト反転した画素回路が設けられていても、電流特性が均一な駆動用のトランジスタTr2を得ることができる。尚、特に容量素子Csと一体形成されて発光素子ELに接続された駆動用のトランジスタTr2の電流特性が、同一色の発光素子ELの輝度ムラを防止する上で重要である。
【0084】
この結果、ミラー反転構造であってもレイアウト方向に依存ぜずに、輝度ムラなく発光素子ELを駆動することが可能な薄膜トランジスタ基板1aを得ることが可能であり、またこれを用いて表示特性の良好な表示を行う表示装置1を得ることが可能である。
【0085】
尚、以上説明した実施形態においては、ミラー反転構造で画素回路を配置した薄膜トランジスタ基板1aとこれを設けた表示装置を例示した。しかしながら、本発明は、薄膜トランジスタのゲート電極と容量素子の下部電極とが連続して形成され、かつ薄膜トランジスタのソース電極はたまドレイン電極と容量素子の上部電極とが一体に形成された回路を備えた構成に広く適用可能である。
【0086】
<適用例>
以上説明した本発明に係る製造方法によって得られる表示装置は、図10〜図14に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。以下に、本発明が適用される電子機器の一例について説明する。
【0087】
図10は、本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明に係る表示装置を用いることにより作成される。
【0088】
図11は、本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0089】
図12は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0090】
図13は、本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0091】
図14は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態の表示装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】実施形態の表示装置の回路構成図である。
【図3】実施形態の表示装置における薄膜トランジスタ基板の構成図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図4のA−A’断面図に相当する表示装置の要部断面図である。
【図6】本発明の表示装置の製造工程を説明するための基板構成図である。
【図7】実施形態の製造工程の一部を説明するための要部平面工程図である。
【図8】実施形態の表示装置の製造工程を説明するための断面工程図(その1)である。
【図9】実施形態の表示装置の製造工程を説明するための断面工程図(その2)である。
【図10】本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。
【図11】本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図12】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図13】本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。
【図14】本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図15】従来のミラー反転構造の表示装置用の薄膜トランジスタ基板のレイアウト図である。
【図16】従来の製造工程を説明するための要部平面工程図である。
【符号の説明】
【0093】
1…表示装置、1a…薄膜トランジスタ基板、12…電源線、14a,14b…ゲート電極、21c…下部電極、31…ゲート絶縁膜、32…非晶質の半導体薄膜、32A…結晶化させた半導体薄膜、Cs…容量素子、EL…発光素子、EL(R)…赤色発光素子、EL(G)…緑色発光素子、EL(B)…青色発光素子、…発光素子、Lh…レーザ光(エネルギー線)、Tr1,Tr2…薄膜トランジスタ、±v…走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定線幅にパターニングされたゲート電極上にゲート絶縁膜を介して半導体薄膜が配置され、当該半導体薄膜にソース電極とドレイン電極とを接続させた薄膜トランジスタと、
前記ゲート電極から延設された下部電極上に前記ゲート絶縁膜を介して上部電極を設けてなり、当該下部電極が当該ゲート電極の線幅方向に隣接させた状態で当該ゲート電極に対して離間して配置されると共に、前記上部電極が前記ソース電極またはドレイン電極と同一層を用いた連続的パターンとして設けられた容量素子と、
前記薄膜トランジスタと容量素子とを用いて構成され前記ゲート電極の線幅方向に配列された画素回路とを備えた
表示装置。
【請求項2】
前記ゲート電極上における前記半導体薄膜は、当該ゲート電極の線幅方向に沿ってエネルギー線を走査させながら照射することで結晶化されたものである
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記配列方向に隣接して配置された前記画素回路は、1本の電源線を共有する状態で当該電源線に対して対象にレイアウトされている
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記薄膜トランジスタおよび前記容量素子に発光素子が接続されている
請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
所定線幅のゲート電極と、当該ゲート電極から延設され当該ゲート電極の線幅方向に当該ゲート電極に対して離間して配置された下部電極とからなる電極パターンを、当該ゲート電極の線幅方向に配列形成する工程と、
前記電極パターンを覆う状態でゲート絶縁膜および非晶質の半導体薄膜をこの順に成膜する工程と、
前記ゲート電極の線幅方向にエネルギー線を走査させながら照射することにより前記半導体薄膜を結晶化させる工程と、
前記ゲート電極上において結晶化させた半導体薄膜にソース電極とドレイン電極とを接続させて薄膜トランジスタを形成すると共に、前記下部電極上に前記ソース電極またはドレイン電極と同一層からなる連続的パターンとして上部電極を設けることで容量素子を形成する工程とを行なう
表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記エネルギー線の照射は、前記電極パターンを配列させた列間で往復させて行なう
請求項5記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜トランジスタおよび前記容量素子に接続させた発光素子を形成する工程を行なう
請求項5または6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
所定線幅にパターニングされたゲート電極上にゲート絶縁膜を介して半導体薄膜が配置され、当該半導体薄膜にソース電極とドレイン電極とを接続させた薄膜トランジスタと、
前記ゲート電極から延設された下部電極上に前記ゲート絶縁膜を介して上部電極を設けてなり、当該下部電極が当該ゲート電極の線幅方向に隣接させた状態で当該ゲート電極に対して離間して配置されると共に、前記上部電極が前記ソース電極またはドレイン電極と同一層を用いた連続的パターンとして設けられた容量素子と、
前記薄膜トランジスタと容量素子とを用いて構成され前記ゲート電極の線幅方向に配列された回路とを備えた
薄膜トランジスタ基板。
【請求項9】
所定線幅のゲート電極と、当該ゲート電極から延設され当該ゲート電極の線幅方向に当該ゲート電極に対して離間して配置された下部電極とからなる電極パターンを、当該ゲート電極の線幅方向に配列形成する工程と、
前記電極パターンを覆う状態でゲート絶縁膜および非晶質の半導体薄膜をこの順に成膜する工程と、
前記ゲート電極の線幅方向にエネルギー線を走査させながら照射することにより前記半導体薄膜を結晶化させる工程と、
前記ゲート電極上において結晶化させた半導体薄膜にソース電極とドレイン電極とを接続させて薄膜トランジスタを形成すると共に、前記下部電極上に前記ソース電極またはドレイン電極と同一層からなる連続的パターンとして上部電極を設けることで容量素子を形成する工程とを行なう
薄膜トランジスタ基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−151866(P2010−151866A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326859(P2008−326859)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】